JP2008266206A - エーテル化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 遷移元素化合物を触媒に用いた、エーテル化合物の製造方法の提供。
【解決手段】 遷移元素化合物の存在下、特定の構造を持つアリルエステル化合物と、下記式(2) HO−Z−COR7 (2)で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
Figure 2008266206

で表されるアリル基含有化合物を得、この二重結合部位を還元して下記式(4)
Figure 2008266206

で表されるエーテル化合物を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、香料や有機合成の中間体等として有用なエーテル化合物の製造方法に関する。
従来より、アルキルエーテルやアルキルエステル等のアルコキシ基を含有する化合物は、香料や有機合成の中間体等として有用であり、例えば、本発明に係る製造方法により合成されるカルボキシル基を有するエーテルは医薬の中間体として有用である。
アルキルエーテルの製造法としては、ハロゲン化アルキルのハロゲンをアルコキシドで置換する方法等が知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしこの方法は、原料と当量の塩基が用いられる結果、反応系が塩基性となり、特に、香料に用いられるような複雑な構造を有する化合物は分解されやすくなる。また、塩基性条件下で不安定な官能基(たとえば、カルボン酸エステル基や、アルデヒド基、ケトン基など)を有する化合物では、同時にエステル交換反応やアルドール反応が起こり、目的とするエーテル体は非常に低収率でしか合成することができなかった。また、脱離により生じる多量のハロゲン含有廃液の後処理を要する等の問題があった。
社団法人日本化学会編,「実験化学講座(第20巻)」,第4版,丸善株式会社,平成4年6月5日,p.188−193
従って、本発明の目的は、遷移元素化合物を用いた触媒的な反応により、有用なエーテル化合物を温和な条件下で、簡易に且つ高収率に製造できる方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、汎用性に優れたエーテル化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アリルエステル化合物と、塩基性条件下で不安定な官能基(例えば、カルボン酸エステル基、アルデヒド基、ケトン基など)と水酸基の両方を持つ化合物とを、特定の触媒の存在下で反応させると、温和な条件下で対応するアリル基含有化合物を簡易に得ることができ、さらに該アリル基含有化合物の二重結合部位を還元することで合成中間体として有用なエーテル化合物を高収率で合成することができることを見いだし本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、遷移元素化合物の存在下、下記式(1)
Figure 2008266206
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す)
で表されるアリルエステル化合物と、下記式(2)
HO−Z−COR7 (2)
(式中、Zは2価の有機基を示し、R7は水素原子又は−OR8基又は有機基を示し、R8は有機基を示す)
で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
Figure 2008266206
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びZは前記に同じ)
で表されるアリル基含有化合物を得て、さらに、前記アリル基含有化合物の二重結合部位を還元して下記式(4)
Figure 2008266206
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びZは前記に同じ)
で表されるエーテル化合物を得ることを特徴とするエーテル化合物の製造方法を提供する。
前記遷移元素化合物について、周期表VIII族元素化合物が好ましく、なかでも、イリジウム化合物が好ましい。
また、前記還元反応は、遷移元素化合物の存在下で行うことが好ましい。
なお、本明細書におけるアリルエステル化合物、アリル基含有化合物には、アリル基(−CH2−CH=CH2)の水素原子が置換基で置換された化合物も含まれるものとする。また、遷移元素とは、周期表IIIA族元素、IVA族元素、VA族元素、VIA族元素、VIIA族元素、VIII族元素、IB族元素を意味する。また、本明細書における「有機基」とは、炭素原子含有基だけでなく、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基などの非金属原子含有基を含む広い意味で用いる。
本発明に係るエーテル化合物の製造方法は、遷移元素化合物を触媒として用いるため、式(1)で表されるアリルエステル化合物と式(2)で表される化合物を反応させて、式(3)で表されるアリル基含有化合物を合成し、次いで、式(3)で表されるアリル基含有化合物の二重結合を還元して、式(4)で表されるエーテル化合物を製造する工程を温和な条件下で、簡易に且つ高収率に製造できる。また、本発明に係る製造方法は汎用性に優れ、広範なエーテル化合物を効率よく製造できる。
本発明は、式(1)で表されるアリルエステル化合物と式(2)で表される化合物を反応させて、式(3)で表されるアリル基含有化合物を合成する工程(「第一の工程」と称する場合がある)と、続いて、式(3)で表されるアリル基含有化合物の二重結合を還元して、式(4)で表されるエーテル化合物を製造する工程(「第二の工程」と称する場合がある)の2つの工程からなる。
[遷移元素化合物]
本発明の第一の工程では、遷移元素化合物(遷移元素の単体を含む)を触媒として用いる。遷移元素化合物は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。遷移元素には、ランタン、セリウムなどのIIIA族元素(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどのIVA族元素;バナジウムなどのVA族元素;クロム、モリブデン、タングステンなどのVIA族元素;マンガンなどのVIIA族元素;鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などのVIII族元素;銅、銀などのIB族元素が含まれる。これらの中でもVIII族元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)、とりわけイリジウムが好ましい。
遷移元素化合物としては、例えば、遷移元素の単体(金属)、酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、遷移元素を含むオキソ酸又はその塩、無機錯体などの無機化合物;シアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などの有機化合物が挙げられる。これらのなかでも特に有機錯体が好ましい。錯体の配位子には公知の配位子が含まれる。遷移元素化合物における遷移元素の価数は0〜6程度、好ましくは0〜3価であり、特にイリジウム化合物などの場合には1価又は3価が好ましい。
遷移元素化合物の代表的な例をイリジウムを例にとって示すと、例えば、金属イリジウム、酸化イリジウム、硫化イリジウム、水酸化イリジウム、フッ化イリジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、硫酸イリジウム、イリジウム酸又はその塩(例えば、イリジウム酸カリウムなど)、無機イリジウム錯体[例えば、ヘキサアンミンイリジウム(III)塩、クロロペンタアンミンイリジウム(III)塩等]などの無機化合物;シアン化イリジウム、有機イリジウム錯体[例えば、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム、ドデカカルボニル四イリジウム(0)、クロロトリカルボニルイリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロジクロロビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)二イリジウム(III)、トリクロロトリス(トリエチルホスフィン)イリジウム(III)、ペンタヒドリドビス(トリメチルホスフィン)イリジウム(V)、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、クロロエチレンビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルイリジウム(I)、ビス{1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}イリジウム(I)塩化物、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、カルボニルメチルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(1,5−シクロオクタジエン)(ジホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、1,5−シクロオクタジエン(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)イリジウム(I)ヘキサフルオロリン酸塩、(1,5−シクロオクタジエン)ビス(トリアルキルホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]などの有機化合物が挙げられる。
好ましいイリジウム化合物にはイリジウム錯体が含まれる。これらの中でも、有機イリジウム錯体、特に、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機イリジウム錯体[例えば、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]が好ましい。本発明においては、特に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等のカチオン性イリジウム錯体が好適に用いられる。イリジウム化合物は単独で又は2以上を混合して使用することができる。また、イリジウム化合物と他の遷移元素化合物とを併用することもできる。
カチオン性イリジウム錯体を触媒に用いる場合、カチオン性イリジウム錯体自体を触媒として使用する代わりに、その合成原料を触媒として用いることができる。たとえば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレートを触媒として用いる場合、その合成原料であるジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I):[Ir(cod)Cl]2とテトラフルオロホウ酸塩(例えば、テトラフルオロホウ酸銀、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム等)と1,5−シクロオクタジエンとを混合したものを触媒として使用することができる。それにより、別途触媒を合成する手間を省くことができ、簡易な製造方法として有用である。
イリジウム化合物以外の遷移元素化合物としては、上記イリジウム化合物に対応する化合物、例えば、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、ジクロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二ロジウム等などが例示できる。イリジウム化合物以外の遷移元素化合物においても、例えば、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機錯体が特に好ましく、なかでもカチオン性錯体が用いられる場合が多い。
遷移元素化合物は、そのままで又は担体に担持した形態で使用できる。前記担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの無機の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。担体担持型触媒において、遷移元素化合物の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。触媒の担持は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
遷移元素化合物の使用量は、反応成分として用いる式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.1モル程度である。
[アリルエステル化合物]
式(1)で表されるアリルエステル化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基など)、N,N−ジ置換アミノ基(N,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基など)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が挙げられる。これらの有機基のなかでも、炭化水素基、複素環式基などが好ましい。
前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
前記R1等における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
好ましいR1、R2、R3、R4、R5、R6には、水素原子及び炭化水素基(例えば、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基など)などが含まれる。特に、R1として、メチル基などのC1-3アルキル基及びフェニル基が好ましい。また、R2、R3、R4、R5、R6として、水素原子、メチル基などのC1-3アルキル基が特に好ましい。
式(1)で表されるアリルエステル化合物の代表的な例として、酢酸アリル、酢酸メタリル、酢酸−2−ブテニル、酢酸−1−メチル−2−ブテニル、酢酸−2−メチル−2−ブテニル、酢酸−1,2−ジメチル−2−ブテニル、ギ酸アリル、プロピオン酸アリル、安息香酸アリルなどが挙げられる。さらに、酢酸リナリル、酢酸d−シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸フィチル、酢酸ルペオリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、安息香酸ゲラニル、安息香酸ネリルなどのテルペン系アリルエステル化合物などが挙げられる。
また、本発明におけるアリルエステル化合物は、反応系中で生成させて反応に用いることもできる。例えば、対応するアリルアルコール類[R56C=C(R4)−C(R2)(R3)−OH]とカルボン酸(R1−COOH)を添加することにより反応系中でアリルエステルを生成し、原料として用いることも可能である。このようなアリルアルコール類の代表的な例として、アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、1−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、1,2−ジメチル−2−ブテン−1−オールなどの不飽和脂肪族アルコール等の他、リナロール、d−シトロネロール、ゲラニオール、ネロールなどのテルペン系アルコールが挙げられる。カルボン酸の代表的な例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などが挙げられる。
[式(2)で表される化合物]
式(2)で表される化合物としては、塩基性条件下で不安定な官能基:−COR7(たとえば、カルボン酸エステル基(R7=−OR8)、アルデヒド基(R7=H)、ケトン基(R7:有機基)が挙げられ、中でもカルボン酸エステル基が好ましい)と水酸基の両方を有する化合物を用いることができる。式(2)中、Z及びR7、R8における有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6における有機基と同様のもの、又は、対応する2価の基が例示される。代表的な有機基には炭化水素基、複素環式基が含まれる。炭化水素基、複素環式基としては、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6における炭化水素基、複素環式基と同様のもの、又は、対応する2価の基を例示できる。前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基(これらに環が縮合している場合も含む)も含まれる。置換基としては反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば、前記R1等における炭化水素基及び複素環式基が有していてもよい置換基と同様のものを例示できる。
式(2)で表される化合物には、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、フェノール類等が含まれる。また、アルコール化合物は複数のヒドロキシル基を有していてもよく、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール、1価フェノール、2価フェノール、多価フェノール等の何れであってもよい。式(2)で表される化合物は、少なくとも塩基性条件下で不安定な官能基、たとえば、カルボン酸エステル基(アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル等)や、アルデヒド基(ホルミル基)、ケトン基(アシル基)等を有する。
代表的な第1級アルコールであって、塩基性条件下で不安定な官能基としてメトキシカルボニル基を有する化合物としては、例えば、1−メトキシカルボニル−1−メタノール、2−メトキシカルボニル−1−エタノール、3−メトキシカルボニル−1−プロパノール、4−メトキシカルボニル−1−ブタノール、2−メチル−2−メトキシカルボニル−1−プロピルアルコール(ヒドロキシ−ピバリン酸メチル)、3−メトキシカルボニル−2−メチル−1−プロパノール、5−メトキシカルボニル−1−ペンタノール、8−メトキシカルボニル−1−オクタノール、10−メトキシカルボニル−1−デカノール、16−メトキシカルボニル−1−ヘキサデカノール、4−メトキシカルボニル−2−ブテン−1−オール、2−メトキシカルボニル−1,3−プロパンジオール、2−メトキシカルボニル−1,6−ヘキサンジオールなどのメトキシカルボニル基を有する炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;(3−メトキシカルボニル−シクロペンチル)−メチルアルコール、(4−メトキシカルボニル−シクロヘキシル)−エチルアルコールなどのメトキシカルボニル基を有する飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;p−メトキシカルボニル−ベンジルアルコール、3−メトキシカルボニル−1,2−ビス(ヒドロキシルメチル)ベンゼン、4−メトキシカルボニル−1,2,3−トリス(ヒドロキシルメチル)ベンゼン、2−メトキシカルボニル−2−フェニル−エチルアルコール、2−メトキシカルボニル−3−フェニルプロピルアルコール、2−メトキシカルボニル−3−フェニル−2−プロペン−1−オールなどのメトキシカルボニル基を有する芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−メチルピリジンなどのメトキシカルボニル基を有する複素環式第1級アルコールなどが挙げられる。また、炭化水素部位にメトキシカルボニル基に加えて他の置換基を有する第1級アルコールとして、例えば、メトキシカルボニル−エチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシカルボニル−エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;メトキシカルボニル−エチレングリコールモノアセテート等のアルキレングリコールモノエステル等が挙げられる。
代表的な第2級アルコールであって、塩基性条件下で不安定な官能基としてメトキシカルボニル基を有する化合物としては、例えば、1−メトキシカルボニル−2−プロパノール、3−メトキシカルボニル−2−ブチルアルコール、4−メトキシカルボニル−2−ペンタノール、2−メトキシカルボニル−3−ペンタノール、1−メトキシカルボニル−3,3−ジメチル−2−ブタノール、6−メトキシカルボニル−2−ヘキサノール(6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチル)、1−メトキシカルボニル−7−オクタノール、10−メトキシカルボニル−2−デカノール、15−メトキシカルボニル−2−ヘキサデカノール、1−メトキシカルボニル−2−ペンテン−4−オール、1−メトキシカルボニル−2,3−ブタンジオール、5−メトキシカルボニル−2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などのメトキシカルボニル基を有する炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチル−2−メトキシカルボニル−エタノール、1−シクロヘキシル−2−メトキシカルボニル−エタノールなどの、メトキシカルボニル基を有し、且つヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基など)とが結合している第2級アルコール;2−メトキシカルボニル−1−シクロブタノール、2−メトキシカルボニル1−シクロペンタノール、2−メトキシカルボニル−1−シクロへキサノール、2−メトキシカルボニル−1−シクロオクタノール、2−メトキシカルボニル−1−シクロドデカノール、4−メトキシカルボニル−2−シクロヘプテン−1−オール、4−メトキシカルボニル−2−シクロヘキセン−1−オール、アダマンタン環にオキソ基を有する1−メトキシカルボニル−2−アダマンタノール、1−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシノルボルナン、1−メトキシカルボニル−2,5−ジヒドロキシノルボルナンなどのメトキシカルボニル基を有する3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);2−メトキシカルボニル−1−フェニルエタノール、2−メトキシカルボニル−1−フェニルプロパノールなどのメトキシカルボニル基を有する芳香族第2級アルコール;2−メトキシカルボニル−1−(2−ピリジル)エタノールなどのメトキシカルボニル基を有する複素環式第2級アルコールなどが例示される。
代表的な第3級アルコールであって、塩基性条件下で不安定な官能基としてメトキシカルボニル基を有する化合物としては、例えば、1−メトキシカルボニル−2−メチル−2−エタノールなどのメトキシカルボニル基を有する炭素数4〜30(好ましくは4〜20、さらに好ましくは4〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第3級アルコール;1−(4−メトキシカルボニル−シクロヘキシル)−1−メチルエタノールなどの、メトキシカルボニル基を有し、且つヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、橋かけ環式炭化水素基など)とが結合している第2級アルコール;2−メトキシカルボニル−1−メチル−1−シクロヘキサノールなどの、メトキシカルボニル基を有し、且つ脂環式環(シクロアルカン環、橋かけ炭素環など)を構成する1つの炭素原子にヒドロキシル基と脂肪族炭化水素基とが結合している第3級アルコール;3−メトキシカルボニル−1−アダマンタノール、5−メトキシカルボニル−1,3−アダマンタンジオールなどのメトキシカルボニル基を有し、且つ橋かけ炭素環の橋頭位にヒドロキシル基を有する橋かけ炭素環含有第3級アルコール;2−メトキシカルボニル−1−フェニル−1−メチルエタノールなどのメトキシカルボニル基を有する芳香族第3級アルコール;2−メトキシカルボニル−1−メチル−1−(2−ピリジル)−エタノールなどのメトキシカルボニル基を有する複素環式第3級アルコールなどが挙げられる。
上記に例示のアルコールのほかに、水酸基と塩基性条件下で不安定な官能基としてメトキシカルボニル基を有する化合物は、例えば、メトキシカルボニル−グルコース、メトキシカルボニル−フルクトース、メトキシカルボニル−ソルビトール、メトキシカルボニル−イソソルバイド、メトキシカルボニル−アミロース、メトキシカルボニル−セルロースなどの鎖状又は環式の単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコールなどのヒドロキシル基を有する糖類;メトキシカルボニル−エタノールアミン、メトキシカルボニル−ジエタノールアミン、メトキシカルボニル−トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類などが挙げられる。
代表的なフェノール類であって、塩基性条件下で不安定な官能基としてメトキシカルボニル基を有する化合物としては、例えば、メトキシカルボニル−フェノール、メトキシカルボニル−クレゾール、メトキシカルボニル−ハイドロキノン、メトキシカルボニル−レゾルシノール、メトキシカルボニル−カテコール、メトキシカルボニル−1−ヒドロキシナフタレンなどの芳香族炭素環にヒドロキシル基が結合している化合物;メトキシカルボニル−2−ヒドロキシピリジン、メトキシカルボニル−3−ヒドロキシピリジン、メトキシカルボニル−4−ヒドロキシピリジン、メトキシカルボニル−3−ヒドロキシフラン、メトキシカルボニル−3−ヒドロキシチオフェンなどの芳香族複素環にヒドロキシル基が結合している化合物などが挙げられる。上記のヒドロキシ化合物の各代表的化合物は、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。
また、好ましいアルコール化合物で、塩基性条件下で不安定な官能基としてメトキシカルボニル基を有する化合物としては、上記に例示した化合物のほか、メトキシカルボニル−リナロール、メトキシカルボニル−d−シトロネロール、メトキシカルボニル−カルベオール、メトキシカルボニル−メントール、メトキシカルボニル−ゲラニオール、メトキシカルボニル−ネロールなどのモノテルペン;メトキシカルボニル−フィトールなどのジテルペン;メトキシカルボニル−コレステロール、メトキシカルボニル−ルペオールなどのトリテルペンなどのテルペン系アルコールが含まれる。
式(2)で表される化合物中、塩基性条件下で不安定な官能基としては、R7=−OR8で表されるカルボン酸エステル基の場合、メトキシカルボニル基以外にも、たとえばエトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基などの脂肪族カルボン酸エステル基;シクロヘキシルカルボニル基等の脂環式カルボン酸エステル基;ベンゾイルカルボニル基等の芳香族カルボン酸エステル基等が挙げられる。R7=Hで表される場合は、上記官能基はアルデヒド基(ホルミル基)を示す。R7が有機基で表されるアシル基の場合、上記官能基としては、たとえば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル等が挙げられる。
[第一の工程]
式(1)で表されるアリルエステル化合物と式(2)で表される化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
式(1)で表されるアリルエステル化合物の使用量は、式(2)で表される化合物1当量に対して、例えば0.8〜15当量、好ましくは1〜12当量、さらに好ましくは3〜10当量程度である。式(1)で表されるアリルエステル化合物を大過剰量用いてもよい。
本発明の反応では、目的生成物の収率などの点から、反応系に存在する塩基(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基;酢酸ナトリウム、ナトリウムエトキシドなどの有機塩基)は少ないほど好ましく、式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.001モル未満、特に0.0001モル以下であるのが好ましい。反応は、通常、塩基の非存在下で行われる。
また、前記アリルアルコール類とカルボン酸を系内に添加して、原料としてのアリルエステル化合物を反応系中で生成させる場合、カルボン酸の添加量は特に制限はなく、アリルアルコール類1モルに対して、例えば0.01〜2モル程度、好ましくは0.05〜1モル程度である。カルボン酸を触媒量用いても反応は進行する。また、モレキュラーシーブなどの脱水剤の存在下で反応を行ってもよく、副生する水を留出させながら反応を行ってもよい。なお、必要に応じて、硫酸、p−トルエンスルホン酸などの強酸を触媒として用いてもよい。
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
反応後の反応混合液については、第一の工程終了後にそのまま第二の工程である還元反応を行ってもよく、未反応原料を留去したり、溶媒交換をした後に、第二の工程である還元反応を行ってもよく、反応生成物を単離した後に第二の工程である還元反応を行ってもよい。
[第二の工程]
式(3)で表されるアリル基含有化合物を還元して、式(4)で表されるエーテル化合物を得る反応は、溶媒の存在下で行われる。該溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でもメタノール、イソプロピルアルコールが好ましく、特にメタノールが好ましい。一方、イソプロピルアルコールを溶媒として用いると、還元反応において、イソプロピルアルコールは還元剤(水素供与体)としての働きも有し、第一の工程で用いられた遷移元素化合物、特にイリジウム化合物、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレートをそのまま還元触媒としても使用することができ、より簡易に反応を行うことができる点で好ましい。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
式(3)で表されるアリル基含有化合物を還元して、式(4)で表されるエーテル化合物を得る反応は、遷移元素化合物(遷移元素の単体を含む)を触媒として用いてもよい。遷移元素化合物は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。遷移元素には、ランタン、セリウムなどのIIIA族元素(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどのIVA族元素;バナジウムなどのVA族元素;クロム、モリブデン、タングステンなどのVIA族元素;マンガンなどのVIIA族元素;鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などのVIII族元素;銅、銀などのIB族元素が含まれる。これらの中でもVIII族元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)、とりわけイリジウム又はパラジウムが好ましい。また、第一の工程で用いた遷移元素化合物をそのまま第二の工程の触媒として用いることもできる。その場合、他の触媒を併用してもよい。
遷移元素化合物は、そのままで又は担体に担持した形態で使用できる。前記担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの無機の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。担体担持型触媒において、遷移元素化合物の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。触媒の担持は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
前記触媒の使用量は、反応成分として用いる式(3)で表されるアリル基含有化合物1当量に対して、例えば0.0001〜1当量、好ましくは0.001〜0.3当量、さらに好ましくは0.005〜0.1当量程度である。
還元反応の反応温度としては、反応成分や触媒の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、−10〜200℃、好ましくは0〜180℃、さらに好ましくは15〜120℃程度である。また、還元反応は、常圧下で行ってもよいし、加圧下又は減圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい.
還元剤(水素供与体)としては、特に限定されず、公知慣用の還元剤等を使用できる。例えば、水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールを使用することができ、なかでも、水素、イソプロピルアルコールが好ましい。また、上記で述べたようにイソプロピルアルコールは、還元反応の溶媒としても使用することができる。
本発明に係る製造方法によれば、式(1)で表されるアリルエステル化合物と式(2)で表される化合物との反応により、温和な条件下で、対応する式(3)で表されるアリル基含有化合物が生成する(第一の工程)。さらに、アリル基含有化合物の二重結合を還元することで、対応する式(4)で表されるエーテル化合物が生成する(第二の工程)。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチル(146g、1mol)に酢酸アリル(1000g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート[Ir(cod)2+BF4 -(0.01mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。第1生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−アリロキシ−ヘプタン酸メチルが収率90%で生成していた。
その後、過剰の酢酸アリルを減圧留去し、メタノール(500g)を加え、水素加圧下(4MPa)、80℃で12時間オートクレーブ中で攪拌した。次に、メタノールを留去して、第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−プロポキシ−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、65%の収率で生成していた。
実施例2
実施例1と同様にして、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸アリルを減圧留去し、イソプロピルアルコール(500g)を加え、80℃で24時間攪拌した。次にイソプロピルアルコールを留去して、第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−プロポキシ−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、56%の収率で生成していた。
実施例3
実施例1と同様にして、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸アリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で、12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度98%の6−プロポキシ−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、81%の収率で生成していた。
実施例4
酢酸アリル(1000g、10mol)の代わり酢酸メタリル(1140g、10mol)を用いた以外は実施例1と同様にして、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で、12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−(2−メチルプロポキシ)−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、52%の収率で生成していた。
実施例5
6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチル(146g、1mol)に酢酸メタリル(1140g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、[Ir(cod)Cl]2(0.01mol)とAgBF4(0.01mol)、1,5−シクロオクタジエン(0.05mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−(2−メチルプロポキシ)−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、50%の収率で生成していた。
実施例6
6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチル(146g、1mol)に酢酸メタリル(1140g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、[Ir(cod)Cl]2(0.01mol)とKBF4(0.01mol)、1,5−シクロオクタジエン(0.05mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−(2−メチルプロポキシ)−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、23%の収率で生成していた。
実施例7
6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチル(146g、1mol)に酢酸メタリル(1140g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、[Ir(cod)Cl]2(0.01mol)とNH4BF4(0.01mol)、1,5−シクロオクタジエン(0.05mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−(2−メチルプロポキシ)−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、21%の収率で生成していた。
実施例8
6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチル(146g、1mol)に酢酸メタリル(1140g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、[Ir(cod)Cl]2(0.01mol)とNaBF4(0.01mol)、1,5−シクロオクタジエン(0.05mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、6−(2−メチルプロポキシ)−ヘプタン酸メチルが6−ヒドロキシ−ヘプタン酸メチルを基準として、13%の収率で生成していた。
実施例9
ヒドロキシピバリン酸メチル(146g、1mol)に酢酸アリル(1000g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート[Ir(cod)2+BF4 -(0.01mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸アリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−プロポキシ−ピバリン酸メチルがヒドロキシピバリン酸メチルを基準として、80%の収率で生成していた。
実施例10
ヒドロキシピバリン酸メチル(146g、1mol)に酢酸メタリル(1000g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート[Ir(cod)2+BF4 -(0.01mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−(2−メチルプロポキシ)−ピバリン酸メチルがヒドロキシピバリン酸メチルを基準として、55%の収率で生成していた。
実施例11
ヒドロキシピバリン酸ブチル(188g、1mol)に酢酸メタリル(1000g、10mol)を加え、窒素気流下で、100℃まで昇温した後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート[Ir(cod)2+BF4 -(0.01mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、メタノール(500g)と、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。次に、Pd/Cを濾別し、メタノールを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−(2−メチルプロポキシ)−ピバリン酸ブチルがヒドロキシピバリン酸ブチルを基準として、51%の収率で生成していた。
実施例12
ヒドロキシピバリン酸メチル(146g、1mol)を酢酸メタリル(1140g、10mol)に加え、窒素気流下で100℃まで昇温した後、[Ir(cod)Cl]2(0.01mol)とNaBF4(0.01mol)、1,5−シクロオクタジエン(0.05mol)を加えて5時間攪拌し、第1生成物を得た。その後、過剰の酢酸メタリルを減圧留去し、ナトリウムメトキシド(0.1mol)、メタノール(300g)を加え、還流条件下で3時間攪拌した。メタノールを留去後、水100gとヘキサン500gを加え、ヘキサン層を水で2回洗浄した。その後、5重量%−Pd/C(7.3g)を加え、常圧水素下(0.1MPa)、60℃で12時間攪拌した。Pd/Cを濾別し、ヘキサンを留去して、蒸留精製を行い第2生成物を得た。第2生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度99%の3−(2−メチルプロポキシ)−ピバリン酸メチルが、ヒドロキシピバリン酸メチルを基準として58%の収率で生成していた。
実施例1〜12より、遷移元素化合物を触媒として用いることで、または、遷移元素化合物の代わりにその合成原料を触媒として用いることで、温和な条件下で、簡易に且つ高収率にエーテル化合物を製造することができた。

Claims (4)

  1. 遷移元素化合物の存在下、下記式(1)
    Figure 2008266206
    (式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す)
    で表されるアリルエステル化合物と、下記式(2)
    HO−Z−COR7 (2)
    (式中、Zは2価の有機基を示し、R7は水素原子又は−OR8基又は有機基を示し、R8は有機基を示す)
    で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
    Figure 2008266206
    (式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びZは前記に同じ)
    で表されるアリル基含有化合物を得て、さらに、前記アリル基含有化合物の二重結合部位を還元して下記式(4)
    Figure 2008266206
    (式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びZは前記に同じ)
    で表されるエーテル化合物を得ることを特徴とするエーテル化合物の製造方法。
  2. 遷移元素化合物が周期表VIII族元素化合物である請求項1記載のエーテル化合物の製造方法。
  3. 遷移元素化合物がイリジウム化合物である請求項1記載のエーテル化合物の製造方法。
  4. 還元反応を遷移元素化合物の存在下で行う請求項1〜3の何れかの項に記載のエーテル化合物の製造方法。
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