JP5116349B2 - ビニルエーテル化合物の製造方法 - Google Patents

ビニルエーテル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、医薬品、農薬、ポリマーなどの原料として有用なビニルエーテル化合物の製造方法に関する。
ビニルエーテル化合物は、医薬品や農薬等の精密化学品の原料のほか、例えばレジスト用樹脂、光学樹脂、透明性樹脂、架橋性樹脂などのポリマー原料として有用である。特に、脂環式骨格やラクトン骨格などの非芳香族性の環式骨格を有するビニルエーテル化合物は、ポリマーのコモノマーとして使用した場合、透明性及びドライエッチング性を向上できるため、レジスト用樹脂の原料モノマーとして期待できる。また、ビニル基を複数個有するビニルエーテル化合物は、高い耐溶剤性を有するため、架橋性樹脂の原料モノマーとして好適である。さらに、ビニルエーテル化合物はアクリル系化合物と比較して低臭気性で且つ皮膚刺激性が少ないため、取扱性や作業性に優れるという利点もある。ところが、市場では、ビニルエーテル化合物はアクリル系化合物(単量体)に比べてその種類が少なく価格的にも高価であるため、十分ニーズに対応できていないのが現状である。
ビニルエーテル化合物の製造方法としては、イリジウム化合物などの遷移金属化合物触媒の存在下で、カルボン酸ビニルエステル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。また、この触媒系における反応において、副生する水を除去しながら反応させると、反応が速やかに進行し、対応するビニルエーテル化合物がより高い収率で得られることが知られている(特許文献2参照)。
しかし、上記製造方法においては、収率にばらつきが生じ、常に安定して且つ高収率でビニルエーテル化合物を得ることが困難であり、工業化の妨げとなっていた。
特開2003−073321号公報 特開2005−126395号公報
従って、本発明の目的は、温和な条件下で常に安定して、且つ高収率でビニルエーテル化合物を製造する方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、反応時において、攪拌速度が遅い場合、例えば、ある反応条件において300rpm以下である場合、使用する無機塩基の粒子径がビニルエーテル化合物の収率に顕著な影響を及ぼすことを見いだした。つまり、ビニルエステル化合物とヒドロキシ化合物との反応によりビニルエーテル化合物とカルボン酸が生成し、このカルボン酸は系内の無機塩基により中和され、カルボン酸塩と水が副生するが、この中和反応は固体−液体反応であり、反応規模や攪拌速度がその反応率に影響を及ぼす。そして攪拌速度が非常に遅いと、生成したビニルエーテル化合物のビニル基に、副生したカルボン酸の付加反応が起こり、ビニルエーテル化合物の収率が低下することを見いだした。
そこで、攪拌速度が遅い場合でも、副生したカルボン酸を塩基と速やかに反応させてカルボン酸のビニルエーテル化合物への付加反応を抑制し、ビニルエーテル化合物を常に安定して、且つ高収率で生成する方法として、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する固体の無機塩基の存在下でビニルエステル化合物とヒドロキシ化合物との反応を行う方法を見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、有機イリジウム錯体触媒、及び、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する軽灰炭酸ナトリウムの存在下、下記式(1)
Figure 0005116349
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す)
で表されるビニルエステル化合物と、下記式(2)
Figure 0005116349
(式中、R5は有機基を示し、kは自然数を示す)
で表されるヒドロキシ化合物とを反応させて、対応する下記式(3)
Figure 0005116349
[式中、R5、kは前記に同じ。R6は水素原子又は下記式(4)
Figure 0005116349
(式中、R2、R3及びR4は前記に同じ)
で表される基を示す。ただし、k個のR6のうち少なくとも1つは式(4)で表される基である]
で表されるビニルエーテル化合物を生成させることを特徴とするビニルエーテル化合物の製造方法を提供する。
なお、本明細書におけるビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物には、ビニル基の水素原子が置換基で置換された化合物も含まれるものとする。また、遷移元素とは、周期表IIIA族元素、IVA族元素、VA族元素、VIA族元素、VIIA族元素、VIII族元素及びIB族元素を意味する。本明細書における「有機基」とは、炭素原子含有基だけでなく、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基などの非金属原子含有基を含む広い意味で用いる。また、本明細書には上記発明の他に、遷移元素化合物触媒、及び、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する固体の無機塩基の存在下、上記式(1)で表されるビニルエステル化合物と、上記式(2)で表されるヒドロキシ化合物とを反応させて、対応する上記式(3)で表されるビニルエーテル化合物を生成させることを特徴とするビニルエーテル化合物の製造方法、無機塩基が炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである前記ビニルエーテル化合物の製造方法についても記載する。
本発明のビニルエーテル化合物の製造方法は、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する固体の無機塩基の存在下でビニルエステル化合物とヒドロキシ化合物との反応を行うことにより、反応時の攪拌速度に係わらず副生したカルボン酸と塩基との反応が速やかに進行し、その結果カルボン酸のビニルエーテル化合物のビニル基への付加反応が起こるのを抑制することができる。それによって、反応目的物であるビニルエーテル化合物を常に安定して、且つ、高収率で生成することができる。
[遷移元素化合物]
本発明では遷移元素化合物(遷移元素の単体を含む)を触媒として用いる。遷移元素化合物は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。遷移元素には、ランタン、セリウムなどのIIIA族元素(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどのIVA族元素;バナジウムなどのVA族元素;クロム、モリブデン、タングステンなどのVIA族元素;マンガンなどのVIIA族元素;鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などのVIII族元素;銅、銀などのIB族元素が含まれる。これらの中でもVIII族元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)、とりわけイリジウムが好ましい。
遷移元素化合物としては、例えば、遷移元素の単体(金属)、酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、遷移元素を含むオキソ酸又はその塩、無機錯体などの無機化合物;シアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などの有機化合物が挙げられる。これらのなかでも有機化合物が好ましく、特に特に有機錯体が好ましい。錯体の配位子には公知の配位子が含まれる。遷移元素化合物における遷移元素の価数は0〜6程度、好ましくは0〜3価であり、特にイリジウム化合物などの場合には1価又は3価が好ましい。
遷移元素化合物の代表的な例をイリジウムを例にとって示すと、例えば、金属イリジウム、酸化イリジウム、硫化イリジウム、水酸化イリジウム、フッ化イリジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、硫酸イリジウム、イリジウム酸又はその塩(例えば、イリジウム酸カリウムなど)、無機イリジウム錯体[例えば、ヘキサアンミンイリジウム(III)塩、クロロペンタアンミンイリジウム(III)塩等]などの無機化合物;シアン化イリジウム、有機イリジウム錯体[例えば、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム、ドデカカルボニル四イリジウム(0)、クロロトリカルボニルイリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロジクロロビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)二イリジウム(III)、トリクロロトリス(トリエチルホスフィン)イリジウム(III)、ペンタヒドリドビス(トリメチルホスフィン)イリジウム(V)、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、クロロエチレンビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルイリジウム(I)、ビス{1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}イリジウム(I)塩化物、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、カルボニルメチルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(1,5−シクロオクタジエン)(ジホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、1,5−シクロオクタジエン(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)イリジウム(I)ヘキサフルオロリン酸塩、(1,5−シクロオクタジエン)ビス(トリアルキルホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]などの有機化合物が挙げられる。
好ましいイリジウム化合物にはイリジウム錯体が含まれる。これらの中でも、有機イリジウム錯体、特に、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機イリジウム錯体[例えば、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]が好ましい。イリジウム化合物は単独で又は2以上を混合して使用することができる。また、イリジウム化合物と他の遷移元素化合物とを併用することもできる。
イリジウム化合物以外の遷移元素化合物としては、上記イリジウム化合物に対応する化合物[例えば、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、ジクロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二ロジウム等]などが例示できる。イリジウム化合物以外の遷移元素化合物においても、例えば、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機錯体が特に好ましい。
遷移元素化合物は、そのままで又は担体に担持した形態で使用できる。前記担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの無機の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。担体担持型触媒において、遷移元素化合物の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。触媒の担持は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
遷移元素化合物の使用量は、反応成分として用いるヒドロキシ化合物1モルに対して、例えば0.0001〜1モル、好ましくは0.0002〜0.1モル、さらに好ましくは0.0005〜0.01モル程度である。
[ビニルエステル化合物]
式(1)で表されるビニルエステル化合物において、R1、R2、R3、R4は、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基など)、N,N−ジ置換アミノ基(N,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基など)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が挙げられる。これらの有機基のなかでも、炭化水素基、複素環式基などが好ましい。
前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
前記R1等における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
好ましいR1、R2、R3、R4には、水素原子及び炭化水素基(例えば、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基など)などが含まれる。特に、R1として、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1-3アルキル基及びフェニル基が好ましい。また、R2、R3、R4として、水素原子、メチル基などのC1-3アルキル基が特に好ましい。
式(1)で表されるビニルエステル化合物の代表的な例として、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−プロペニル、酢酸2−メチル−1−プロペニル、酢酸1,2−ジメチル−1−プロペニル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸イソプロペニル、プロピオン酸1−プロペニル、プロピオン酸2−メチル−1−プロペニル、プロピオン酸1,2−ジメチル−1−プロペニル、ギ酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
[ヒドロキシ化合物]
本発明の製造法では、反応成分として広範囲のヒドロキシ化合物(アルコール及びフェノール類等)を用いることができる。式(2)中、R5における有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、前記R1、R2、R3、R4における有機基と同様のものが例示される。代表的な有機基には炭化水素基及び複素環式基が含まれる。炭化水素基、複素環式基としては、前記R1、R2、R3、R4における炭化水素基、複素環式基と同様のものを例示できる。前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基(これらに環が縮合している場合も含む)も含まれる。置換基としては反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば、前記R1等における炭化水素基及び複素環式基が有していてもよい置換基と同様のものを例示できる。kはR5に結合しているヒドロキシル基の個数を意味し、自然数を示す。kは、通常1〜20であり、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10程度である。
ヒドロキシ化合物には、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、フェノール類等が含まれる。また、ヒドロキシ化合物は複数のヒドロキシル基を有していてもよく、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール、1価フェノール、2価フェノール、多価フェノール等の何れであってもよい。
代表的な第1級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ヘキサデカノール、2−ブテン−1−オール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ヘキサメチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;シクロヘキシルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコールなどの飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシメチルピリジンなどの複素環式第1級アルコールなどが挙げられる。また、炭化水素部位に置換基を有する第1級アルコールとして、例えば、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル等のグリコール酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノアセテート等のアルキレングリコールモノエステルなどが挙げられる。
代表的な第2級アルコールとしては、例えば、2−プロパノール、s−ブチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ヘキサデカノール、2−ペンテン−4−オール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールや2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などの炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチルエタノール、1−シクロヘキシルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基など)とが結合している第2級アルコール;シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、2−シクロヘプテン−1−オール、2−シクロヘキセン−1−オール、2−アダマンタノール、アダマンタン環にオキソ基を有する2−アダマンタノール、2−ヒドロキシノルボルナン、3−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルメチルエタノール、ジフェニルメタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが例示される。
代表的な第3級アルコールとしては、例えば、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコールなどの炭素数4〜30(好ましくは4〜20、さらに好ましくは4〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第3級アルコール;1−シクロヘキシル−1−メチルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、橋かけ環式炭化水素基など)とが結合している第2級アルコール;1−メチル−1−シクロヘキサノールなどの、脂環式環(シクロアルカン環、橋かけ炭素環など)を構成する1つの炭素原子にヒドロキシル基と脂肪族炭化水素基とが結合している第3級アルコール;1−アダマンタノールなどの橋かけ炭素環の橋頭位にヒドロキシル基を有する橋かけ炭素環含有第3級アルコール;1−フェニル−1−メチルエタノールなどの芳香族第3級アルコール;1−メチル−1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第3級アルコールなどが挙げられる。
代表的なフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、1−ヒドロキシナフタレンなどの芳香族炭素環にヒドロキシル基が結合している化合物;2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシフラン、3−ヒドロキシチオフェンなどの芳香族複素環にヒドロキシル基が結合している化合物などが挙げられる。上記のヒドロキシ化合物の各代表的化合物は、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。
また、好ましいヒドロキシ化合物には、下記式(5)
Figure 0005116349
(式中、環Zは下記式(6)〜(13)
Figure 0005116349
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8は、各環を構成する原子に結合している置換基であり、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。X1が2以上の場合、それらは互いに結合して、式中のシクロヘキサン環を構成する炭素原子と共に4員以上の環を形成していてもよい。a、b、c、d、e、f、g、hは0以上の整数を示す。a、b、c、d、e、f、g又はhが2以上の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく異なっていてもよい。p、q、rは0〜3の整数を示す)
で表される何れかの環式基を示し、W1は2価の炭化水素基を示す。nは0又は1を示し、mは1〜8の整数を示す。mが2以上の場合、括弧内の基は同一であってもよく異なっていてもよい]
で表される脂環式炭素骨格又はラクトン骨格を有するヒドロキシ化合物が含まれる。
前記X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8は各環(式中に示される環、例えばシクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,5−ジオン環、γ−ブチロラクトン環、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環など)を構成する原子に結合している置換基を示す。X1等におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが挙げられる。X1等におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、デシル基などのC1-10アルキル基(好ましくは、C1-5アルキル基)などが挙げられる。X1等におけるハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル基などのC1-10ハロアルキル基(好ましくは、C1-5ハロアルキル基)が挙げられる。X1等におけるアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。アリール基の芳香環は、例えば、フッ素原子などのハロゲン原子、メチル基などのC1-4アルキル基、トリフルオロメチル基などC1-5ハロアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基などのアシル基等の置換基を有していてもよい。
1等におけるヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基等の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。X1等におけるアシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。アシル基の保護基としては有機合成分野で慣用の保護基を使用できる。アシル基の保護された形態としては、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)などが挙げられる。
1が2以上の場合、それらが互いに結合して、式(6)中のシクロヘキサン環を構成する炭素原子と共に形成する4員以上の環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、パーヒドロナフタレン環(デカリン環)などの脂環式炭素環;γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環などのラクトン環などが挙げられる。
a、b、c、d、e、f、g、hは、例えば0〜5の整数、好ましくは0〜3の整数である。
1は2価の炭化水素基を示す。2価の炭化水素基には、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基及びこれらが2以上結合した炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基には1価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらが2以上結合した炭化水素基)が1又は2以上結合していてもよい。また、2価の炭化水素基には置換基を有する炭化水素基も含まれる。置換基としては、前記環Zの置換基X1等と同様の基が挙げられる。
2価の炭化水素基の代表的な例として、例えば、メチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、ジメチルメチレン、エチルメチルメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基などのアルキレン基;プロペニレン基などのアルケニレン基;1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などのシクロアルキレン基;シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基;フェニレン基などのアリレン基;ベンジリデン基などが挙げられる。
1の好ましい例には、例えば、下記式(14)
Figure 0005116349
(式中、R7及びR8は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。R7及びR8は、互いに結合して、隣接する炭素原子と共に脂環式環を形成していてもよい)
で表される基が含まれる。
7、R8における炭化水素基としては、R1等における炭化水素基と同様の基が挙げられる。前記炭化水素基には置換基を有する炭化水素基も含まれる。置換基としては、前記R1等における炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基、あるいは前記環Zの置換基X1等と同様の基が例示される。
好ましいR7、R8には、水素原子;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基等のC1-10アルキル基(特に、C1-5アルキル基);シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の置換基を有していてもよいシクロアルキル基;ノルボルナン−2−イル基、アダマンタン−1−イル基などの置換基を有していてもよい橋かけ環式基などが含まれる。シクロアルキル基や橋かけ環式基が有していてもよい置換基として、例えば前記置換基X1等と同様の、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、保護基で保護されていてもよいアシル基などが挙げられる。
mは好ましくは1〜4の整数、さらに好ましくは1〜3の整数である。
式(5)で表されるヒドロキシ化合物の代表的な例には以下の化合物が含まれる。環Zが式(6)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シス−3,3,5−トリメチル−1−シクロヘキサノール、トランス−3,3,5−トリメチル−1−シクロヘキサノール、2−イソプロピル−5−メチル−1−シクロヘキサノール(メントール)、2−ヒドロキシ−7−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6−オンなどが挙げられる。
環Zが式(7)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、2−メチル−2−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,5,7−アダマンタンテトラオール、3,5−ジメチル−1−アダマンタノール、5,7−ジメチル−1,3−アダマンタンジオール、4−オキソ−1−アダマンタノール、3−ヒドロキシ−α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノール、1−アダマンタンメタノール、α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノール、α,α,α′,α′−テトラメチル−1,3−アダマンタンジメタノールなどが挙げられる。
環Zが式(8)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、2,5−ノルボルナンジオール、2,3−ノルボルナンジオール、5−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシノルボルナン、α−メチル−α−(ノルボルナン−2−イル)−2−ノルボルナンメタノール、2−ノルボルナンメタノール、α,α−ジメチル−2−ノルボルナンメタノール、3,4−ジヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3,8−ジヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンメタノール、8−ヒドロキシ−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンメタノール、9−ヒドロキシ−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンメタノールなどが挙げられる。
環Zが式(9)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、8−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,5−ジオン、4−ヒドロキシ−11−オキサペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン−10,12−ジオンなどが挙げられる。
環Zが式(10)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、α−ヒドロキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−ヒドロキシ−α,γ,γ−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−ヒドロキシ−γ,γ−ジメチル−β−メトキシカルボニル−γ−ブチロラクトン、8−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、9−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、8,9−ジヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オンなどが挙げられる。
環Zが式(11)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、4−ヒドロキシ−2,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,6−ジオンなどが挙げられる。
環Zが式(12)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、5−ヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−ヒドロキシ−5−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−ヒドロキシ−9−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オンなどが挙げられる。
環Zが式(13)で表される基であるヒドロキシ化合物として、例えば、6−ヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、6,8−ジヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オンなどが挙げられる。
式(5)で表されるヒドロキシ化合物から得られるビニルエーテル化合物は、脂環式骨格又はラクトン骨格を有するため、ポリマーの構成モノマーとして用いた場合、透明性、ドライエッチング耐性、基板密着性等の機能を付与できることから、特にレジスト用樹脂の原料モノマーとして有用である。
さらに、好ましいヒドロキシ化合物には、下記式(15)
Figure 0005116349
(式中、R9、R10、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。W2は単結合又は連結基を示す。Arは2価の芳香族炭化水素基を示す。sは0〜4の整数、tは0〜4の整数、uは1〜6の整数、vは0〜5の整数、wは0又は1を示す。式中に示されるs個の基、t個の基、u個の基、v個の基は、複数個の場合、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい)
で表される芳香族系ビニルエーテル化合物が含まれる。
式(15)中、R9、R10、R11、R12における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが複数個結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(例えば、炭素数1〜6程度のアルキル基など);ビニル、アリル基などのアルケニル基(例えば、炭素数2〜6程度のアルケニル基など);プロピニル基などのアルキニル基(例えば、炭素数2〜6程度のアルキニル基など)が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などの3〜15員程度の単環又は多環の脂環式炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20程度の単環又は多環の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基等が複数個結合した基として、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などは有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
9とR10、R11とR12は、互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。このような環として、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの3〜8員程度のシクロアルカン環などが挙げられる。
9、R10、R11、R12としては、水素原子;メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;3〜6員のシクロアルキル基;置換若しくは非置換のフェニル基などが好ましく、特に、水素原子又はメチル基が好ましい。
式(15)中、W2における連結基としては、2価の基であればよく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリレン基、酸素原子(エーテル結合)、イオウ原子(チオエーテル結合)、置換基を有していてもよい−NH−基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基(−SO2−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、これらが複数個結合した2価の基などが挙げられる。前記アルキレン基には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ジメチルメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基などの炭素数1〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が含まれる。W2としては、単結合、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、アリレン基、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基などが特に好ましい。
Arとして示される2価の芳香族炭化水素基(アリレン基)としては、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基を構成する芳香環は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル基などの炭素数2〜4のアルケニル基等)、ハロアルキル基(例えば、クロロメチル、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜3のハロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシル基(アセチル基などの炭素数1〜6程度のアシル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基などの炭素数1〜6程度のアシルオキシ基等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基等)、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、置換又は無置換アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミノ基、カルボキシル基などは有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。なお、置換基が複数個ある場合、これらの置換基は結合して芳香環を構成する炭素原子と共に脂環式環を形成していてもよい。
式(15)中、s、tとしては0〜2の整数(特に0又は1)が好ましく、u、vとしては1〜3の整数が好ましい。
式(15)で表される代表的な化合物として下記の化合物が例示される。
(a)w=0、s=0である化合物:ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,5−ジヒドロキシナフタレンなど
(b)w=0、s=1、u=1である化合物:(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−4−メチルベンゼン、1−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ナフタレンなど
(c)w=0、s=1、u=2〜6である化合物:1,2−(又は1,3−、1,4−)ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,2−(又は1,3−、1,4−)ビス(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,2−(又は1,3−、1,4−)ビス(1−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)ベンゼン、1,2,3−(又は1,2,4−、1,3,5)トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,5−ビス(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ナフタレンなど
(d)w=0、s=2〜4の整数である化合物:2−ヒドロキシエチルベンゼン、3−ヒドロキシプロピルベンゼンなど
(e)w=1、s=t=0である化合物:3,3′,5,5′−テトラキス(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)プロパン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)−フェニル−ケトン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4′−(ジヒドロキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−(ジヒドロキシ)ジフェニルスルホン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)−(4−ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフタレンなど
(f)w=1で且つs及びtが1〜4の整数である化合物:4,4′−ビス(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビフェニル、ビス[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]プロパン、ビス[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]エーテル、ビス[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]ケトンなど
式(15)で表されるヒドロキシ化合物から得られるビニルエーテル化合物はカチオン重合用硬化剤等として有用であり、特にビニル基を複数個有するビニルエーテル化合物は高い耐溶剤性を有するため、架橋用樹脂の原料モノマーとして有用である。
[無機塩基]
本発明に係る反応は無機塩基の存在下で行われる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩又は炭酸水素塩が好ましく、なかでも、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムがより好ましい。炭酸ナトリウムとしては、軽灰炭酸ナトリウムを好ましく用いることができる。
本発明の重要な特徴は、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する固体の無機塩基の存在下で反応を行うことにある。固体の無機塩基の粒子径分布としては、粒子径150μm未満の粒子が、10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは35重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。無機塩基は副生成物であるカルボン酸と反応してカルボン酸塩と水を生成する。しかし、この反応は固体である無機塩基と液体であるカルボン酸との反応であるため、反応規模や攪拌速度により反応率が異なってくる。そして、攪拌速度が非常に遅いときは、反応率は粒子径に依存する。粒子径150μm未満の粒子が無機塩基粒子全体の10重量%を下回ると、無機塩基とカルボン酸の反応率が低下し、代わりに、生成したビニルエーテル化合物のビニル基へカルボン酸の付加反応が起こり、ビニルエーテル化合物の収率が低下するからである。無機塩基は上記の無機塩基を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
塩基の使用量は、式(2)で表されるヒドロキシ化合物1当量(エーテル化すべきヒドロキシ基1モル)に対して、例えば0.01〜3当量、好ましくは0.1〜2当量、さらに好ましくは0.15〜1.3当量程度である。
[反応]
式(1)で表されるビニルエステル化合物と式(2)で表されるヒドロキシ化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
式(1)で表されるビニルエステル化合物の使用量は、式(2)で表されるヒドロキシ化合物1当量(エーテル化すべきヒドロキシ基1モル)に対して、例えば0.8〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2.5当量、特に好ましくは1〜1.25当量程度である。式(1)で表されるビニルエステル化合物を大過剰量用いてもよい。
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば50〜170℃、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは90〜130℃程度である。反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。
また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。例えば、式(1)で表されるビニルエステル化合物、式(2)で表されるヒドロキシ化合物、遷移元素化合物触媒、及び無機塩基の1又は2以上を系内に連続的又は間欠的に供給しながら反応を行うことができる。
また、遷移元素化合物触媒は、加熱下で系内に添加することが好ましい。このようにして反応を行うと、触媒活性が維持され、反応が円滑に進行し、目的化合物の収率をより向上させることができる為である。前記触媒を系内に添加する際の反応系の温度は、より好ましくは50℃以上(例えば50℃〜反応温度)である。触媒を含む溶液を、例えば室温から徐々に所望の温度まで昇温させて反応を行うと、触媒が失活するためか、反応速度が低下する場合が多い。
また反応は、副生する水を除去しながら行うことが好ましい。式(1)で表されるビニルエステル化合物と式(2)で表されるヒドロキシ化合物とを反応させると、目的物であるビニルエーテル化合物と、式(1)のビニルエステル化合物に対応するカルボン酸(R1COOH)が生成するが、このカルボン酸は上記無機塩基によって捕捉され、結果として、カルボン酸の塩と水が副生する。本発明では、この副生した水を除去しながら反応を行うことが好ましい。この操作によりビニルエーテル化合物の収率が飛躍的に向上する為である。なお、副生した水が系内にそのまま存在すると、触媒の失活や原料成分の分解によるためか、目的物の収率が低下する場合が多い。
水を除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、還流下に反応を行い、(i)水を好ましくは反応溶媒とともに系外に留去する方法、(ii)モレキュラーシーブ、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムなどの脱水剤を系内に存在させて水を捕捉する方法、(iii)前記脱水剤を充填した充填カラム等の脱水ゾーンを別途設け、これに反応液の一部を循環させる方法などが挙げられる。前記(i)の方法において、水を反応溶媒とともに系外に留去する場合の反応溶媒としては、水と共沸し且つ水と分液可能な溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが好ましい。式(1)で表されるビニルエステル化合物を、水とともに留去する反応溶媒として用いることもできる。水とともに留去した溶媒は、水と分離した後、反応系に戻すことができる。
本発明に係る反応では、温和な条件下で、対応する式(3)で表されるビニルエーテル化合物が生成する。式(3)中、R5は前記と同じである。kはR5に結合している基:−OR6の個数を意味し、自然数を示す。R6は水素原子又は前記式(4)で表される基を示す。k個のR6のうち少なくとも1つ(1又は2以上)は式(4)で表される基である。目的化合物である式(3)の化合物中の式(4)で表される基(置換又は非置換のビニル基)の個数は、式(1)の化合物と式(2)の化合物との割合、塩基の量、触媒の量、反応温度、反応時間等を適宜調節することにより、(ビニル化されるヒドロキシル基)/(ビニル化されないヒドロキシル基)の割合がコントロールできる。例えば、ジオールのビニル化の場合、モノビニル体、ジビニル体の作り分けをすることができる。
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。こうして得られる式(3)で表されるビニルエーテル化合物は、医薬品や農薬等の精密化学品の原料、レジスト用樹脂、光学樹脂、透明性樹脂、架橋性樹脂などのポリマーの原料、カチオン重合用硬化剤などとして使用できる。
以下に、実施例、及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
[無機塩基]
(1)重灰炭酸ナトリウム
粒子径分布:500μm以上;5重量%
250μm以上500μm未満;60重量%
150μm以上250μm未満;30重量%
75μm以上150μm未満;4重量%
75μm未満;1重量%
(2)軽灰炭酸ナトリウム
粒子径分布:250μm以上;3重量%
150μm以上250μm未満;15重量%
75μm以上150μm未満;50重量%
75μm未満;32重量%
なお、上記の粒子径分布は、60メッシュ(250μm)、100メッシュ(150μm)、200メッシュ(75μm)のふるいを用いて仕分けた後、それぞれの重量を測定することにより算出した。
[遷移元素化合物触媒]
(1)ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I):[Ir(cod)Cl]2
[ヒドロキシ化合物]
(1)1,4−シクロヘキサンジオール
(2)5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール:「HOBHO」と称する場合がある
(3)イソソルバイド
[ビニルエステル化合物]
(1)プロピオン酸ビニル
(2)酢酸ビニル
実施例1
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、1,4−シクロヘキサンジオール(58g、0.5mol)、プロピオン酸ビニル(125g、1.25mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の攪拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、攪拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であり、1,4−シクロヘキサンジオールを基準として1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテルが81%、1,4−シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルが4%の収率で生成していた。
実施例2
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、1,4−シクロヘキサンジオール(58g、0.5mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の攪拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、攪拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。その後、反応温度が95〜100℃となるように、酢酸ビニル(108g、1.25mol)を間欠的に投入し、還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であり、1,4−シクロヘキサンジオールを基準として1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテルが80%、1,4−シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルが4%の収率で生成していた。
実施例3
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の攪拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、攪拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。その後、反応温度が95〜100℃となるように、酢酸ビニル(108g、1.25mol)を間欠的に投入し、1,4−シクロヘキサンジオール(58g、0.5mol)を30分おきに6分割して投入し、還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であり、1,4−シクロヘキサンジオールを基準として1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテルが90%、1,4−シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルが2%の収率で生成していた。
実施例4
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の攪拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、攪拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。その後、プロピオン酸(7.4g、0.1mol)を加え、反応温度が95〜100℃となるように、酢酸ビニル(108g、1.25mol)を間欠的に投入し、イソソルバイド(73g、0.5mol)を30分おきに6分割して投入し、さらにジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)を30分おきに8分割して投入し、還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、イソソルバイドを基準としてイソソルバイドジビニルエーテルが84%の収率で生成していた。
実施例5
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の攪拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、攪拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。その後、プロピオン酸(7.4g、0.1mol)を加え、反応温度が95〜100℃となるように、酢酸ビニル(108g、1.25mol)を間欠的に投入し、5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール(73g、0.5mol)を30分おきに6分割して投入し、還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールを基準として5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールジビニルエーテルが80%の収率で生成していた。
実施例6
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の攪拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、攪拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。その後、プロピオン酸(7.4g、0.1mol)を加え、反応温度が95〜100℃となるように、酢酸ビニル(108g、1.25mol)を間欠的に投入し、5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール(73g、0.5mol)を30分おきに6分割して投入し、さらにジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)を30分おきに8分割して投入し、還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールを基準として5−ヒドロキシメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オールジビニルエーテルが89%の収率で生成していた。
比較例1
軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)の代わりに重灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、反応液を得た。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であり、1,4−シクロヘキサンジオールを基準として1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテルが67%、1,4−シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルが5%の収率で生成していた。
比較例2
軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)の代わりに重灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)を用いた以外は実施例2と同様の方法により反応を行い、反応液を得た。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であり、1,4−シクロヘキサンジオールを基準として1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテルが54%、1,4−シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルが4%の収率で生成していた。
実施例1〜6より明らかなように、本発明の方法によれば、攪拌速度が非常に遅い場合(回転数:250rpm)でも安定して80%以上の高収率でビニルエーテル化合物を生成することができる。一方、比較例1、2に示されるように、本発明の方法によらなければ、攪拌速度が非常に遅い場合(回転数:250rpm)には、収率が低下した。

Claims (1)

  1. 有機イリジウム錯体触媒、及び、粒子径150μm未満の粒子を10重量%以上含有する軽灰炭酸ナトリウムの存在下、下記式(1)
    Figure 0005116349
    (式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す)
    で表されるビニルエステル化合物と、下記式(2)
    Figure 0005116349
    (式中、R5は有機基を示し、kは自然数を示す)
    で表されるヒドロキシ化合物とを反応させて、対応する下記式(3)
    Figure 0005116349
    [式中、R5、kは前記に同じ。R6は水素原子又は下記式(4)
    Figure 0005116349
    (式中、R2、R3及びR4は前記に同じ)
    で表される基を示す。ただし、k個のR6のうち少なくとも1つは式(4)で表される基である]
    で表されるビニルエーテル化合物を生成させることを特徴とするビニルエーテル化合物の製造方法。
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