JP2008257908A - 放電ランプの点灯装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】放電ランプの点灯初期状態からその後の定常状態に至るすべての期間において、安定に点灯させる。
【解決手段】放電ランプ1が安定に点灯する安定点灯周波数を記憶する安定点灯周波数帯記憶手段64が、安定状態判別手段62が放電ランプ点灯が不安定から安定状態に転じた時点およびインピーダンス検出手段62の信号によって安定点灯状態に達したと判別すると、引き続き安定点灯周波数帯情報に基づいて駆動周波数制御手段63が放電ランプ1を駆動する。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えば、自動車のヘッドライトなどの光源として用いられるメタルハライドランプ等の高輝度放電ランプ(HIDランプ:High Intensity Discharge Lamp)を、安定して点灯させる放電ランプ点灯装置に関するものである。
HIDランプは、通常400Hz程度の低周波駆動波形を用いて点灯している。それに対して、駆動回路の小型化およびコスト低減を目的に、HIDランプを高周波で駆動する試みがある。しかし、HIDランプを数十kHzから数百kHzの高周波で点灯させると、ランプ内の音波による共鳴現象である、いわゆる音響共鳴現象が発生し、ランプが不安定状態となり、アークが曲げられ発光がちらついたり、立ち消えたりすることがある。そこで、音響共鳴によるアークの揺らぎの生じない周波数(安定周波数)にて駆動する方式が提案されている。
安定周波数は、放電始動から定常点灯までランプの点灯状態により変化するので、例えば、従来のメタルハライドランプの点灯装置では、放電始動から定常点灯に至るまで、ランプインピーダンスに応じて点灯周波数を除々に低下させていく方式が示されている(例えば、特許文献1)。
特開平09−063783号公報([0019]〜[0024],[0034]、図1)
しかしながら前記特許文献1に示された技術では、放電ランプ点灯以降、ランプインピーダンスと点灯周波数の値を一意に定めたランプ駆動制御方式を採用した構成であり、必ずしも安定した点灯が行えるとは限らない。すなわち、放電ランプの初期状態によっては前記ランプインピーダンスは複雑に変化し、一旦ランプインピーダンスと点灯周波数との関連が逸脱すると、安定した放電状態に戻すことが容易でないという問題点がある。
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、放電ランプの点灯初期状態からその後の定常状態に至るすべての期間において安定に点灯させることを目的とする。
この発明は、放電ランプの内部状態によって安定点灯周波数が変化する放電ランプの点灯装置であって、駆動周波数制御手段の出力信号により放電ランプを駆動する駆動回路と、この駆動回路を制御する制御回路とを備え、前記制御回路には放電ランプの点灯が安定な点灯状態か不安定な点灯状態かを判別し、その判別信号を出力する安定状態判別手段と、放電ランプが安定に点灯する安定点灯周波数帯を記憶する安定点灯周波数帯記憶手段と、放電ランプのランプインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段とが設けられており、駆動周波数制御手段は、駆動周波数の上昇による放電ランプの点灯開始直後において、安定状態判別手段の前記判別信号が不安定から安定に転じた時点およびインピーダンス検出手段の検出信号とによって、安定点灯周波数帯記憶手段が記憶する安定点灯周波数を捕捉して安定点灯状態に達したと判別するとともに、引き続き安定点灯周波数帯記憶手段からの安定点灯周波数帯情報に基づいて、放電ランプを駆動させるよう信号を出力するものである。
この発明の放電ランプの点灯装置は、駆動周波数制御手段の出力信号により放電ランプを駆動する駆動回路と、この駆動回路を制御する制御回路とを備え、この制御回路には放電ランプの点灯が安定な点灯状態か不安定な点灯状態かを判別しその判別信号を出力する安定状態判別手段と、放電ランプが安定に点灯する安定点灯周波数帯を点灯開始からの経過時間との対応およびランプインピーダンスとの対応を記憶する安定点灯周波数帯記憶手段と、放電ランプのランプインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段とが設けられており、駆動周波数制御手段は駆動周波数の上昇による放電ランプの点灯開始直後において、安定状態判別手段の判別信号が不安定から安定に転じた時点、およびインピーダンス検出手段の検出信号とによって、安定点灯周波数帯記憶手段が記憶する安定点灯周波数を捕捉して安定点灯状態に達したと判別し、引き続き安定点灯周波数帯記憶手段からの安定点灯周波数帯情報に基づいて、放電ランプを駆動させるよう信号を出力するので、放電ランプの初期状態に応じて安定点灯周波数を選択して点灯することにより、発光のちらつきの発生がなく、安定に点灯させることができるという効果がある。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1による放電ランプ1の点灯装置100を示すブロック図である。点灯装置100は、電源回路2、駆動回路3、ランプ電流検出回路4、ランプ電圧検出回路5、及び制御回路6によって構成される。
駆動回路3はインバータや共振回路、高電圧発生回路(ランプ始動回路)によって構成される。制御回路6から送られる制御信号に従い、電源回路2から供給される直流電圧を、数十kHzから数百kHz程度の範囲の高周波交流電圧に変換し、ランプ1を駆動する。また、ランプ1の始動時には、駆動回路3により、ランプ1の始動(点灯開始)に必要な高電圧(数kVから二十数kV程度)をランプ1に印加する。
図2は駆動回路3の具体的な構成を示す回路図である。駆動回路3は、FETなどのスイッチ素子を用いたフルブリッジインバータ回路31、FETのゲートを駆動するゲート駆動回路32、トランス33、及び直列インダクタLsと並列コンデンサCpと直列コンデンサCsによって構成されるLC共振回路34、高電圧発生回路(ランプ始動回路)35により構成される。インバータ回路31には、フルブリッジ回路のほか、ハーフブリッジ回路、プッシュプル回路などを用いることもできる。トランス33はインバータ回路31とランプ1とを絶縁したり、電源電圧をランプ1の駆動に適した電圧に変換したりするために用いるが、これは省略することもできる。
LC共振回路34は、ランプ1に印加する電圧、電流を整形し、正弦波に近づけるとともに、ランプ1のインピーダンスに応じて供給する電圧、電流を可変する、インピーダンス変換器としての役割を有する。
高電圧発生回路35は、直列コンデンサCsにランプ1の始動に必要な数kVから30kV程度の高電圧を充電する。高電圧発生回路35としては、例えばコッククロフト・ウォルトン回路を用いた昇圧回路を用いることができる。高電圧発生回路35には、イグナイタトランスを用いて数十kVのパルス状の電圧を印加する方式など、別の方式を用いても良い。
ランプ電流検出回路4及びランプ電圧検出回路5はランプ1に流れている電流及びランプ1の両端に印加されている電圧を検出する。ランプ電圧検出回路5は、コンデンサや抵抗を用いた分圧回路と、整流回路により構成することができる。分圧回路により、ランプ1に印加される高電圧を比較的低い電圧に変換し、さらにランプ1に印加される交流波形を整流回路により直流に変換することにより、ランプ電圧を示す信号が得られる。ランプ電流検出回路4は、カレントトランスや電流検出抵抗を用いて実現することができる。
制御回路6は、マイクロプロセッサ、A/D変換器、メモリ、その他デジタル回路やアナログ回路によって構成され、駆動回路3に制御信号を送り、駆動回路3における駆動周波数や出力パルス幅などを制御する。
この制御回路6には、電力制御ブロック61、安定状態判別ブロック62、駆動周波数制御ブロック63、安定点灯周波数帯記憶ブロック64、タイマ65、制御信号生成ブロック66、インピーダンス検出ブロック67などの機能手段を含む。これら機能手段は、ハードウエアとは必ずしも1対1に対応しない。例えば、マイクロプロセッサは、電力制御ブロック61や駆動周波数制御ブロック63など、複数の機能手段に関わる。
インピーダンス検出ブロック67は、ランプ電流およびランプ電圧からランプのインピーダンスを算出し、電力制御ブロック61や、駆動周波数制御ブロック63に送る。
電力制御ブロック61はランプ電流及びランプ電圧の検出結果をフィードバックして、ランプ1に供給される電力を所定の値に制御する。ここでは、駆動手段であるインバータの出力パルス幅を可変することによりランプ電力を制御する、いわゆるPWM制御を行なう。
安定状態判別ブロック62は、ランプ1が不安定状態になったときに発生するランプ電圧の揺動を検出することにより、ランプ電圧からランプ1が安定状態か不安定状態かを判別し、安定判別信号を出力する。安定状態判別ブロック62は、ランプ電圧を入力とし、バンドパスフィルタ、平滑回路、及びコンパレータを用いて実現することができる。ランプ1における放電が音響共鳴により不安定となると、ランプ電圧が10Hz〜数百Hz程度の周波数で揺動するので、この周波数帯をバンドパスフィルタにより抽出し、平滑回路によりその周波数帯の強度を示す強度信号に変換することにより、不安定性の度合いを示す信号を得ることができる。さらにコンパレータを用いることにより、ランプが不安定であるか安定であるかを二値で示す信号が得られる。
安定点灯周波数帯記憶ブロック64は、ランプ1の経過時間と安定点灯周波数との関係である安定点灯周波数帯情報を記憶する。安定周波数帯情報の、それぞれの記憶データを記憶周波数と呼ぶ。安定点灯周波数帯記憶ブロック64は、フラッシュメモリや、EEPROM、バッテリバックアップされたRAMなどの書き換え可能な不揮発性メモリを用いて実現できる。
タイマ65は、ランプ点灯開始からの経過時間を測定する。ランプ点灯開始のタイミングは、ランプ電圧あるいはランプ電流の変化から検出することができる。
駆動周波数制御ブロック63は、ランプ点灯開始からの経過時間を基に、安定点灯周波数帯記憶ブロック64からの安定点灯周波数情報や、インピーダンス検出ブロック67からのランプインピーダンス信号を参照し、駆動周波数を制御する。
制御信号生成ブロック66は、駆動周波数制御ブロック63で決められた駆動周波数、電力制御ブロック61で決められたパルス幅などの情報を基に、駆動回路3を制御する制御信号を生成する。
次にこの発明をより理解し易くするため、放電ランプの動作について説明する。ランプ1を数十kHz〜数百kHzの高周波で点灯すると、点灯周波数によっては、音響的共鳴現象によって放電が不安定になることがある。しかし、音響共鳴現象が発生する数十kHz〜数百kHzの周波数帯の中に、安定点灯周波数あるいは安定窓と呼ばれる安定に点灯できる周波数帯がある。
この安定点灯周波数は、一つの解釈として、HIDランプ内に定在波が立たない周波数と考えることができる。あるいは別の解釈としてランプ内に存在し得る定在波の諸モードの中で、放電が安定化する定在波が立つ周波数帯であると考えることもできる。後者の場合は、ランプの側面から見たアーク形状が、通常見られる円弧状とならず、直線状になると考えられる。ランプ内には種々のモード(次数)の定在波が存在し得るが、ここでは、その中で最も安定度が高く、安定な周波数幅の広いものを安定点灯周波数と呼ぶ。他のモードの定在波は、不安定であるか、安定であってもその周波数幅が狭く、実際上その周波数で安定に点灯を続けることは困難である。
音響共鳴現象による特定の定在波が立つ周波数(音響共鳴周波数)は、ランプ形状のほか、ランプ内温度やランプ内に封入されたガスの平均分子量などランプの内部状態にも依存する。ランプ内の温度は始動からの点灯時間によって変化し、また、平均分子量も、ランプ内壁の温度上昇により、ランプ内に封入されたメタルハライドや水銀などの物質が蒸発することにより変化するので、音響共鳴周波数及び安定点灯周波数は、点灯開始からの時間に応じて次第に変化する。
図3に、自動車のヘッドライト用に用いられる35Wメタルハライドランプの、点灯開始からの経過時間と安定点灯周波数との関係の安定点灯周波数帯を模式的に示す。安定点灯周波数は、点灯後しばらくは上昇し、その後下降に転じ、最終的にある周波数帯で安定する、「へ」の字型になることが、実験により明らかとなっている。
点灯直後からしばらくの間は、ランプ内の温度が急激に上昇するので、安定点灯周波数帯は次第に上昇する。その後、ランプ内に封入されたメタルハライドあるいは水銀などが蒸発するにつれ、安定点灯周波数は低下すると考えられる。
このときの安定点灯周波数は、例えば管内に水銀の含まれていない、いわゆる水銀フリーのHIDバルブにおいて、放電開始直後110kHz程度で始まり、最高130kHz程度まで上昇し、最終的に120kHz程度で一定となる。
そこでこの発明の基本的な動作においては、図4に示すように点灯開始からの経過時間と安定周波数との関係を、安定周波数帯情報として安定点灯周波数帯記憶ブロック64に記憶しておき、点灯開始からの経過時間に対応する記憶周波数を安定点灯周波数帯記憶ブロック64から読み出し、その周波数でランプを駆動することにより、点灯開始から定常状態に至るまでランプを安定に点灯する。
しかしながら、この基本的な方法では、ランプの初期状態によっては、記憶した安定周波数帯情報と、実際の安定周波数帯とが異なってしまう現象が発生することがある。
この現象を、図5を用いて説明する。
図5に、コールドスタート、すなわち前回ランプを消灯してから十分に時間が経過し、ランプが常温(例えば25℃)まで冷却された後に、改めて点灯を開始したときの安定周波数帯と、ホットスタート、すなわちランプを消灯した後、まだランプが高温状態のときに再度点灯を開始したときの安定周波数帯を比較して示す。
上述のように、安定点灯周波数はランプ内部の温度の上昇とともに変化するが、ホットスタートの場合は、点灯開始時点で既にランプ内部の温度が高い状態となっているので、安定周波数は、コールドスタートにおける安定周波数の変化の途中の点(例えば、図5における点A)を基点として、そこから時間経過と共に変化するものと考えられる。
換言すれば、ホットスタートにおける点灯開始からの経過時間と安定周波数との関係は、コールドスタートにおける点灯開始からの経過時間と安定周波数との関係を、点灯開始側に(図5において左方向に)時間シフトしたものに、概ね一致する。図5においては、点Aが、点Aに重なるようにシフトした形となる。時間のシフト量は、点灯開始時点での温度に依存し、前回消灯から今回点灯までの休止時間や環境条件(周囲温度等)によって変化する。
そこで、この発明においては上述した基本動作に、初期状態に応じて安定周波数帯情報の読み出し位置を変更することとした。
さて、ランプの管内温度に依存してランプのインピーダンスが変化するので、低周波駆動方式においては、ランプのインピーダンスからランプの初期状態を把握することが可能である。しかし、高周波駆動方式においては、音響共鳴現象によってランプが不安定状態となると、ランプインピーダンスが激しく揺動するので、安定点灯が行われている状態でないと、ランプのインピーダンスは正確に測定できない。一方、ランプの初期状態がわからないと、ランプを安定点灯できないので、ランプインピーダンスのみでランプの初期状態を把握するのは、事実上無理である。
そこで、この実施の形態1においては、点灯開始直後の安定周波数を見つけ、安定周波数から逆に初期状態を把握することとした。
この動作を、図6を用いて説明する。図6中、実線の矢印は、本実施の形態1における点灯周波数の時間推移である。
(1)あらかじめ、安定点灯周波数帯記憶ブロック64には、コールドスタートにおける点灯開始からの経過時間と安定周波数との関係を、安定点灯周波数帯情報として記憶しておく。この安定点灯周波数帯情報の記憶方法は後述する。
(2)駆動周波数制御ブロック63はまず、やや低めの周波数(安定周波数として可能性のある周波数範囲より低い値)で点灯を開始するよう、制御信号生成ブロック66を介し、駆動回路3に信号を出力する。
(3)その後駆動周波数制御ブロック63は、安定状態判別ブロック62からの安定判別信号を監視しながら、時間と共に駆動周波数を上昇させる(周波数チャープを行う)。
(4)安定判別信号が不安定から安定に転じた時点、すなわち、安定周波数を捕捉した時点の駆動周波数を初期安定周波数とする。初期安定周波数から逆に初期状態が判明する。
(5)初期安定周波数に一致するように、安定周波数帯情報を時間軸方向に、破線矢印で示したようにシフトする。
(6)その後は、時間軸シフトした安定周波数帯情報に基づき、記憶周波数に沿うように駆動周波数を変化させて点灯する。
なお、安定点灯周波数は、「へ」の字型であるので、上述の(5)にて初期安定周波数に対応する記憶周波数は、2箇所あり得るが、その2箇所のうちの、どちらであるかは、インピーダンス検出ブロック67によって検出したランプインピーダンスより判別することが可能である。ランプインピーダンスは、既述のとおり、ランプの内部状態を反映して変化するので、「へ」の字の左側(安定周波数が次第に高くなる期間)であるか、「へ」の字の右側(安定周波数が次第に低くなる期間)であるかは、ランプインピーダンスから判別することができる。ランプ1が不安定状態であるときは、ランプインピーダンスを正確に測定することができないが、本実施の形態1においては、(4)の段階で安定周波数を捕捉した後は、ランプ1は安定点灯状態となるので、ランプインピーダンスが揺動することが無くなり、ランプインピーダンスを正確に測定することが可能である。
以上の動作により、初期状態に関わらず安定に点灯することが可能になる。
特に、本実施の形態1においては、初期状態として初期の安定周波数を直接把握するので、より確実に経過時間と安定周波数との関係を結びつけて安定点灯を行うことができるようになる。
ここで安定点灯周波数帯記憶ブロック64に記憶させる安定点灯周波数情報について説明する。
本願発明者は先に、特願2006−167713号の「高輝度放電ランプの点灯装置および点灯方法」において、前記安定点灯周波数情報の記憶に係る発明を行っている。それには、高輝度放電ランプの点灯が安定に行われているかどうかを判別し、安定状態であるか不安定状態であるかを示す安定判別信号を出力する安定状態判別手段の信号に基づいて、不安定状態を避けるように点灯周波数を変化させながら放電ランプの試点灯を行い、そのときの点灯状態を示すランプ状態パラメータである点灯開始からの経過時間と点灯周波数との軌跡を記憶することにより、安定点灯周波数情報を取得することを記載している。これにより、本願の実施の形態1の安定点灯周波数帯記憶ブロック64は安定点灯周波数帯情報を記憶する。
ところで、車載用のHIDランプにおいては、点灯開始後の光束の変化を所定の範囲内に収めるため、ランプの初期状態に応じて投入電力を調整する必要がある。本実施の形態1においては、前記(4)の段階でランプの初期状態がわかるので、その情報を駆動周波数制御ブロック63から電力制御ブロック61に引き渡し、電力制御ブロック61ではランプの初期状態に応じて電力投入パターンを変更することにより、所定の光束立ち上がり特性を得ることが可能になる。
また、前記のとおり、ランプを安定に点灯すれば、ランプインピーダンスを正確に測定することが可能となるので、あらかじめランプインピーダンスと、それに対応する投入電力の関係を電力制御ブロック61に記憶しておくことにより、インピーダンス検出ブロック67によって検出されたランプインピーダンスを基に、投入電力を決定することもできる。
また、前記の説明においては、点灯開始直後に低い周波数から高い周波数に向かってチャープする駆動波形を用いたが、高い周波数から低い周波数にむかってチャープしても、周波数をジグザクに変化させても良い。いずれの方法においても、安定判別信号を監視しながら点灯周波数を変化させ、安定した時点で初期安定周波数を捕捉したと判断すればよい。
実施の形態2.
次に実施の形態2について説明する。
前記実施の形態1においては、周波数チャープにより初期安定周波数を捕捉し、そこから初期状態を把握した。本実施の形態2においては、より簡便な方法として、ランプ1の点灯履歴、すなわち、前回の点灯時間や消灯からの経過時間により、初期状態を判別する。
図7にランプ1の点灯および消灯によるランプ1の温度変化を模式的に示す。
ランプ温度の時間推移T(t)は、ランプ点灯時は概ね

Figure 2008257908
に従って上昇し、ランプ消灯時は、

Figure 2008257908
に従って下降すると考えられる。
ただし、T0はランプ点灯前の初期温度、Tsはランプを長時間点灯した後に達する飽和温度、T1はランプ消灯直前の温度、τおよびτdは温度上昇および下降時の時定数である。
このように、それまでのランプの点灯・消灯の履歴が判っていれば、ランプ温度を推定することが可能である。
そこで、ランプ温度と安定周波数の関係をあらかじめ把握しておき、ランプ温度を点灯履歴から推定すれば、ランプの初期状態に関わらず安定点灯が行われる。
この方法を用いれば、点灯履歴のみから簡便にランプの初期状態を把握できる。ただし、環境条件などの影響を受けるなどにより、ランプ温度に推定誤差が生じたり、ランプ温度と安定周波数との関係がずれたりすることにより、不安定性が生じることがある。
実施の形態3.
次に実施の形態3について説明する。
この実施の形態3においては、各種の初期条件に対応して安定周波数帯情報を複数組記憶しておき、初期状態に応じて複数組の中から1つを選択するものである。
図8に、安定点灯周波数帯記憶ブロック64の内部構造と、記憶されている安定周波数帯情報との関係を模式的に示す。安定点灯周波数帯記憶ブロック64は、図8に示す例えば領域A〜Cの複数の領域によって構成され、それぞれの領域には初期状態を示すインデックスと、その初期状態に対応した、経過時間と安定周波数との関係が記憶されている。
実施の形態1と同様の方法により、初期状態に対応する安定周波数帯情報がこれらの中から選択され、それに従って点灯周波数を変化させながら点灯する。
この方法により、初期状態によって点灯開始からの経過時間と安定周波数との関係が、初期状態によって複雑に変化しても、安定に点灯を行うことが可能となる。
ただし、初期状態と点灯開始からの経過時間および周波数の関係はランプ毎の個体差によって異なると考えられるので、ランプ毎に安定周波数帯情報を測定して書き込む必要があるが、記憶する安定周波数帯情報の組をあまり多くすると測定および書き込みの手間が増えてしまい、生産性の面で不利となる。そこで、実施の形態1の図5に示した時間シフトによる方法と組み合わせ、初期状態の大きな変化に対応した安定周波数帯情報を少数(例えば2〜3組)記憶しておき、初期状態の小さな変化には時間シフトによって対応する、といった方法を用いても良い。
実施の形態4.
次に実施の形態4について説明する。
実施の形態1〜3においては、経過時間と安定周波数との関係を記憶しておき、その関係に基づいてランプを駆動していた。この実施の形態4においては、ランプインピーダンスと安定周波数の関係を記憶しておき、その関係に基づいてランプを駆動することとする。
図9に、この実施の形態4における動作を示す。ランプ点灯開始後、まず実施の形態1と同様、周波数チャープ波形を用いて初期安定周波数を捕らえる。初期安定周波数を捉えた後は、インピーダンス検出ブロック67がランプインピーダンスを測定し、そのランプインピーダンスに応じた安定周波数を読み出し、その周波数にてランプ1を駆動する。
前に説明したとおり、高周波駆動においては、音響共鳴現象によってランプが不安定状態となると、ランプインピーダンスが激しく揺動し、ランプのインピーダンスが正確に測定できなくなるので、単純にランプインピーダンスを参照して安定周波数を決定することはできなかった。
この実施の形態4においては、最初に初期安定周波数を捉えるので、その時点で音響共鳴による擾乱が無くなり、正確にランプインピーダンスを測定することが可能となる。
ランプインピーダンスは、その時々のランプの内部状態を反映していると考えられるので、ランプの初期状態や点灯履歴に影響されることなく、安定周波数を決定することが可能である。
なお、ランプ1の点灯中に一時的にでも安定周波数から外れ、音響共鳴による不安定現象が始まると、ランプインピーダンスが揺動し始め、ランプインピーダンスを参照し続けていると安定周波数に復帰できなくなる場合が生じたとしても、安定判別信号を監視し続けていれば不安定現象が始まったことを検知できるので、ランプ状態が不安定になったときは一時的にランプインピーダンスを参照するのを止め、周波数を上下に変化させるなどによって安定状態に復帰させ、安定状態に復帰した後に再びランプインピーダンスを参照するといった動作を行えばよい。
この発明は、自動車のヘッドライトの光源に用いられるメタルハライドランプ等の高輝度ランプ(HIDランプ)等に利用可能である。
実施の形態1による放電ランプの点灯装置を示すブロック図である。 実施の形態1による放電ランプの点灯装置の駆動回路を示すブロック図である。 点灯開始からの経過時間と安定周波数との関係を模式的に示した図である。 実施の形態1の基本動作を示す図である。 ランプの初期状態の違いによる安定周波数の変化を説明する図である。 実施の形態1のランプ点灯始動からの経過時間と動作周波数との関係の軌跡を模式的に示す図である。 実施の形態2にて用いる、点灯履歴とランプ温度の変化を示す図である。 実施の形態3における、安定周波数帯記憶ブロック内の情報を模式的に示す図である。 実施の形態4における、駆動周波数の決定手順を示す図である。
符号の説明
1 放電ランプ、3 駆動回路、6 制御回路、61 電力制御ブロック、
62 安定状態判別ブロック、63 駆動周波数制御ブロック、
64 安定周波数帯記憶ブロック、67 インピーダンス検出ブロック、
100 点灯装置。

Claims (8)

  1. 放電ランプの内部状態によって安定点灯周波数が変化する放電ランプの点灯装置であって、駆動周波数制御手段の出力信号により前記放電ランプを駆動する駆動回路と、この駆動回路を制御する制御回路とを備え、前記制御回路には前記放電ランプの点灯が安定な点灯状態か不安定な点灯状態かを判別し、その判別信号を出力する安定状態判別手段と、前記放電ランプが安定に点灯する安定点灯周波数帯を記憶する安定点灯周波数帯記憶手段と、前記放電ランプのランプインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段とが設けられており、
    前記駆動周波数制御手段は、駆動周波数の上昇による前記放電ランプの点灯開始直後において、前記安定状態判別手段の前記判別信号が不安定から安定に転じた時点および前記インピーダンス検出手段の検出信号とによって、前記安定点灯周波数帯記憶手段が記憶する安定点灯周波数を捕捉して安定点灯状態に達したと判別するとともに、引き続き前記安定点灯周波数帯記憶手段からの安定点灯周波数帯情報に基づいて、前記放電ランプを駆動させるよう信号を出力することを特徴とする放電ランプの点灯装置。
  2. 前記安定点灯周波数帯記憶手段の記憶する安定点灯周波数帯は、点灯開始からの経過時間との対応を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプの点灯装置。
  3. 前記制御回路には加えて電力制御手段が設けられており、前記安定状態判別手段が安定点灯状態と判別すると、その情報を入力する前記電力制御手段は、前記放電ランプへの電力投入パターンを制御することを特徴とする請求項1に記載の放電ランプの点灯装置。
  4. 前記安定状態判別手段が安定点灯状態と判別した前記判別信号を入力する前記駆動周波数制御手段は、この判別した時点の安定点灯周波数に一致するよう、前記安定点灯周波数帯記憶手段が記憶する安定点灯周波数帯情報の時間軸をシフトさせ、このシフトした安定点灯周波数帯情報に基づき、前記放電ランプを駆動させるよう信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の放電ランプの点灯装置。
  5. 放電ランプの内部状態によって安定点灯周波数が変化する放電ランプの点灯装置であって、駆動周波数制御手段の出力信号により前記放電ランプを駆動する駆動回路と、この駆動回路を制御する制御回路とを備え、前記制御回路には前記放電ランプの点灯が安定な点灯状態か不安定な点灯状態かを判別し、その判別信号を出力する安定状態判別手段と、前記放電ランプが安定に点灯する安定点灯周波数帯を点灯開始からの経過時間との対応、およびランプインピーダンスとの対応を記憶する安定点灯周波数帯記憶手段と、前記放電ランプのランプインピーダンスを検出するインピーダンス検出手段とが設けられており、
    前記駆動周波数制御手段は、駆動周波数の上昇による前記放電ランプの点灯開始直後においては、前記安定状態判別手段の前記判別信号が不安定から安定に転じた時点および前記インピーダンス検出手段の検出信号とによって、前記安定点灯周波数帯記憶手段が記憶する点灯開始からの経過時間と対応する安定点灯周波数を捕捉して安定点灯状態に達したと判別し、引き続き前記安定点灯周波数帯記憶手段からのランプインピーダンスに対応する安定点灯周波数帯情報に基づいて、前記放電ランプを駆動させるよう信号を出力することを特徴とする放電ランプの点灯装置。
  6. 前記安定点灯周波数帯記憶手段は、複数の安定点灯周波数帯を記憶するとともに、該周波数帯は、安定点灯周波数と点灯開始からの経過時間との対応を有するものであり、前記駆動周波数制御手段は、前記安定状態判別手段の信号が不安定から安定に転じた時点および、前記インピーダンス検出手段の検出信号とによって、前記安定点灯周波数帯記憶手段が記憶する複数の安定点灯周波数帯のいずれかを捕捉して安定点灯状態に達したと判別することを特徴とする請求項1、または請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプの点灯装置。
  7. 前記制御回路には加えて電力制御手段が設けられており、前記安定状態判別手段が安定点灯状態と判別すると、その情報を入力する前記電力制御手段は、前記放電ランプへの電力投入パターンを制御することを特徴とする請求項5に記載の放電ランプの点灯装置。
  8. 前記電力制御手段は、前記電力投入パターンとランプインピーダンスとの対応を記憶するとともに、前記インピーダンス検出手段の出力するランプインピーダンスを基に、投入電力パターンを制御することを特徴とする請求項7に記載の放電ランプの点灯装置。
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