JP2008251798A - 結晶基板のエッチング方法及び液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細な貫通孔を容易に且つ高精度に形成できる結晶基板のエッチング方法及び液体噴射ヘッドの製造方法。
【解決手段】結晶基板30の表面にマスク140を形成し、且つマスク140に結晶基板30と共に開始部142aから終端部142bまで徐々にエッチングされて結晶基板30を露出する開口部141の開口面積を広げると共に、外周の開始部142a以外の領域が結晶基板30の結晶面方位の(111)面に沿った面で囲まれた補正パターン142を形成するマスク形成工程と、結晶基板30の異方性エッチングを開始する第1のエッチング工程と、結晶基板30の開口部141により露出された領域にレーザ光を照射して、結晶基板30に厚さ方向に貫通する先孔150を形成するレーザ加工工程と、先孔150が形成された結晶基板30を異方性エッチングして貫通孔32を形成する第2のエッチング工程とを具備する。
【選択図】図6

Description

本発明は、結晶基板を異方性エッチングして貫通孔を形成する結晶基板のエッチング方法に関し、特に、結晶基板のエッチング方法によって、液体を噴射する液体噴射ヘッドを構成する結晶基板を製造する液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
液体噴射ヘッドの代表的な例であるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室に連通する連通部が形成されると共に、その一方面側に圧電素子が設けられた流路形成基板と、流路形成基板の連通部と共にリザーバの一部を構成するリザーバ部が形成された封止基板とを具備するものがある。そして、流路形成基板及び封止基板としては、例えば、結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板などの結晶基板が用いられ、これらの結晶基板は、平行四辺形に開口する開口部を有するマスクを介して異方性エッチング(ウェットエッチング)することによって形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、結晶基板に微細な貫通孔を形成しようとすると、異方性エッチングの特性上、エッチングの深さ方向が進まず、厚さ方向に貫通しない又は貫通したとしても貫通孔の内面にエッチングされずに庇状に突出した突起が形成されてしまう。
このような突起がインクジェット式記録ヘッドの流路に存在すると、流路抵抗や容積に差が生じ、インク吐出特性にばらつきが生じてしまうという問題や、突起に気泡が引っかかり気泡が大きく成長するなどの問題が発生する。
このため、マスクに基板と共に徐々にエッチングされて開口部の開口面積を広げる補正パターン(細長部)を設け、この補正パターンによって基板に微細な貫通孔を形成するようにしたマイクロデバイスの製造方法がある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、このような補正パターンを設けた場合であっても、貫通孔の幅が微細な場合、深さ方向のエッチングが進まず、厚さ方向に貫通しない又は貫通したとしても貫通孔の内面にエッチングされずに庇状に突出した突起が形成されてしまうという問題がある。
このため、結晶基板に貫通孔を形成する際に、結晶基板を異方性エッチングする前に、結晶基板をレーザ加工することにより先孔(先行穴)を形成し、その後、結晶基板を異方性エッチングすることで、先孔を拡径し、幅狭の貫通孔を形成するレーザ光による加工方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
国際公開2004/007206号パンフレット(第12図、第24〜25頁等) 特開平11−227197号公報(第6頁、第5図) 特開2000−246475号公報(第4頁、第5図)
しかしながら、特許文献3の方法では、結晶基板にレーザ光により先孔を形成する際に、結晶基板の表面に設けられたマスクの一部がレーザ光により除去されたり、また、マスクがレーザ光の熱により変質してしまうと、マスクのレーザ光により除去又は変質された領域からエッチングが始まり、所望の貫通孔の形状を得ることができないという問題がある。
また、マスクにレーザ光による加工径よりも大きな開口を設けることで、レーザ光によるマスクの除去や変質を防止することができるが、エッチング開始時点でマスクに大きな開口を設けると、微細な貫通孔を形成することができないと共に、マスクの形状が制限されてしまい、マスクの設計が煩雑であるという問題がある。
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法だけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法においても同様に存在する。また、液体噴射ヘッドを構成する結晶基板だけではなく、広く結晶基板のエッチング方法においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、微細な貫通孔を容易に且つ高精度に形成することができると共に製造工程を簡略化することができる結晶基板のエッチング方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、表面の結晶面方位が(110)面の結晶基板の表面に開口部を有するマスクを設け、前記結晶基板を前記マスクを介して異方性エッチングすることにより、前記結晶基板に貫通孔を形成する結晶基板のエッチング方法であって、前記結晶基板の表面に前記マスクを形成し、且つ当該マスクに前記結晶基板と共に開始部から終端部まで徐々にエッチングされて前記結晶基板を露出する開口部の開口面積を広げると共に、外周の前記開始部以外の領域が前記結晶基板の結晶面方位の(111)面に沿った面で囲まれた補正パターンを形成するマスク形成工程と、前記開口部の開口面積が、当該結晶基板をレーザ加工する際の加工径を含む処理径よりも狭い状態で、前記結晶基板の異方性エッチングを開始する第1のエッチング工程と、前記開口部の開口面積が、前記レーザ加工における前記加工径を含む前記処理径よりも広くなった状態で、当該結晶基板の前記開口部により露出された領域にレーザ光を照射して、当該結晶基板に厚さ方向に貫通する先孔を形成するレーザ加工工程と、前記先孔が形成された前記結晶基板を異方性エッチングして前記貫通孔を形成する第2のエッチング工程とを具備することを特徴とする結晶基板のエッチング方法にある。
かかる態様では、第1のエッチング工程での補正パターンの開口部の開口面積に制限がないため、エッチング開始時点からマスクに大きな開口部を設ける必要がなく、微細な貫通孔を容易に且つ確実に形成することができると共に、マスク形状の制限をなくして、製造工程を簡略化することができる。
ここで、前記レーザ加工の前記処理径が、前記レーザ加工の加工誤差、前記レーザ光による前記結晶基板の変質を防止する間隔及び前記レーザ光による前記マスクのダメージを防止する間隔を含むことが好ましい。これによれば、レーザ加工の加工誤差による補正パターンの除去や、熱による補正パターンのダメージなどにより第2のエッチング工程で補正パターンが除去部やダメージ部分などからエッチングされるのを防止することができる。また、結晶基板がレーザ加工の熱により変質するのを防止することができる。
また、前記レーザ加工工程による前記結晶基板の前記レーザ加工を、前記開口部の開口面積が前記処理径よりも広くなった段階で直ちに行うことが好ましい。これによれば、第2のエッチング工程のエッチング時間を長時間にしたり、第2のエッチング工程のエッチング時間を短縮することができる。
また、前記結晶基板が、シリコン単結晶基板からなることが好ましい。これによれば、シリコン単結晶基板に微細な貫通孔を異方性エッチングにより形成することができる。
本発明の他の態様は、上記態様の結晶基板のエッチング方法によって、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に液体を噴射させる圧力を付与する圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドを構成する結晶基板を製造することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、流路などの貫通孔の内面に庇状に突出する突起が形成されるのを確実に防止して、突起により液体噴射ヘッドの流路内での流路抵抗や容積に差が生じたり、突起により気泡が成長するのを防止でき、液体噴射特性にばらつきが生じるのを防止することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図であり、図3は、リザーバ部の形状を示す平面図である。図1及び図2に示すように、流路形成基板10は、本実施形態では表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とからなる液体流路が複数の隔壁11により区画されて設けられている。
このような圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15は、弾性膜50とは反対側の面から流路形成基板10を異方性エッチングすることによって形成されている。異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。本実施形態では、流路形成基板10が結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板からなるため、シリコン単結晶基板の(110)面に垂直で且つ(111)面に約30度の角度をなす面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。すなわち、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と70.53度の角度をなし且つ上記(110)面に垂直な第2の(111)面と、(110)面と37.5度の角度をなし且つ第1の(111)面と54.73度の角度をなす第3の(111)面とが出現する。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いた場合には、ノズル開口21は、上述した流路形成基板10と同様に、異方性エッチングにより形成することができる。すなわち、ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いた場合には、ノズルプレート20も結晶基板となる。
一方、このような流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、流路形成基板10のインク供給路14とは反対側の端部近傍まで延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。
さらに、流路形成基板10の圧電素子300側の面には、本実施形態の結晶基板である表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板からなる保護基板30が接着剤等の接着層を介して接合されている。
保護基板30には、連通部13に対向する領域に連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成するリザーバ部31が設けられている。
リザーバ部31は、圧力発生室12の並設方向に沿って形成され、その長手方向両端部には、それぞれ外側に向かって幅が漸小する漸小部32が設けられている。これにより、本実施形態に係るリザーバ部31の開口は、略台形形状となっている。
なお、リザーバ部31の漸小部32は、各圧力発生室12の流路抵抗が一定となるようにし、ノズル開口21から吐出されるインク滴の吐出特性を均一化するために設けられている。
このようなリザーバ部31を有する保護基板30は、流路形成基板10と同一材料である表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板からなり、リザーバ部31は、詳しくは後述するが、保護基板30をその両面から異方性エッチングすることによって形成されている。その結果、図3に示すように、リザーバ部31の圧力発生室の長手方向に沿った壁面33は(110)面に垂直な第1の(111)面で構成され、他の壁面はこの第1の(111)面(壁面33)と70.53度の角度をなす第2の(111)面34と、上記第1の(111)面及び第2の(111)面のそれぞれと約30度の角度をなす面と、第1の(111)面と54.73度の角度をなす第3の(111)面とを含む面で構成されている。
また、保護基板30には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部35が設けられている。なお、圧電素子保持部35は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
なお、本実施形態では、流路形成基板10の連通部13と保護基板30のリザーバ部31とがリザーバ100を構成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部31のみをリザーバとしてもよい。また、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30上には、圧電素子300を駆動するための駆動回路120が実装されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とはボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッド1の製造方法、具体的には、インクジェット式記録ヘッド1を構成する結晶基板である保護基板30の製造方法について、図4〜図6を参照して説明する。なお、図4及び図5は、本実施形態の保護基板の製造工程を示す要部断面図であり、図6は、保護基板の製造工程を模式的に表した平面図である。
まず、図4(a)に示すように、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板である保護基板30の表面の全面に、マスクとなる二酸化シリコン膜130を形成する。
本実施形態では、保護基板30を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に二酸化シリコン膜130を形成した。なお、マスクの材料は二酸化シリコンに限定されず、窒化シリコン等の他の材料であってもよい。また、マスクの形成方法は特に限定されず、蒸着やスパッタリング法等であってもよい。
次に、図4(b)に示すように、二酸化シリコン膜130を、レジスト膜等を介してエッチングすることによりパターニングすることで、リザーバ部31をエッチングにより形成する際のマスク140を形成する。ここで、このマスク140のリザーバ部31の漸小部32に相対向する領域には、開口部141を有する補正パターン142が設けられている。
この補正パターン142は、後の工程で保護基板30を異方性エッチングした際に、保護基板30と共に開始部142aから終端部142bまで徐々にエッチングされて保護基板30を露出する開口部141の開口面積を広げるものである。
このような補正パターン142は、外周の異方性エッチングが開始される開始部142a以外の領域が全て保護基板30の結晶面方位の第1の(111)面及び第2の(111)面に沿った面で囲まれている。これにより補正パターン142は、開始部142a以外の領域からエッチングが開始されることなく、開始部142aから徐々にエッチングされて開口部141の開口面積を徐々に広げるようになっている。
また、補正パターン142は、図6(a)に示すように、開口部141の開口面積が、後の工程で保護基板30をレーザ加工する際の処理径よりも狭くなるように形成されている。
なお、本実施形態では、リザーバ部31(漸小部32)と共に圧電素子保持部35も異方性エッチングにより同時に形成するため、保護基板30の流路形成基板10との接合面側のマスク140(二酸化シリコン膜130)の圧電素子保持部35が形成される領域に相対向する領域に開口部143を形成する。
このように保護基板30に補正パターン142を有するマスク140を形成した後、保護基板30の両面から異方性エッチングを行う(第1のエッチング工程)。本実施形態では、保護基板30を水酸化カリウム(KOH)水溶液等のアルカリ溶液に浸漬することで、保護基板30の両面から異方性エッチングした。
この第1のエッチング工程では、図4(c)及び図6(b)に示すように、補正パターン142の開口部141の開口面積が、後の工程のレーザ加工の処理径dよりも広くなるまで行う。
次に、図5(a)及び図6(c)に示すように、保護基板30の補正パターン142の開口部141により露出された領域にレーザ光を照射してレーザ加工を行うことで、保護基板30を厚さ方向に貫通する先孔150を形成する(レーザ加工工程)。
ここで、レーザ加工による処理径dとは、少なくともレーザ光による加工径を含むものである。本実施形態では、レーザ加工の処理径dとして、レーザ加工による加工径、レーザ加工による加工誤差、レーザ加工の熱による保護基板30の変質を防ぐ間隔及びレーザ加工の熱によるマスク140(補正パターン142)のダメージを防止する間隔を含めるようにした。例えば、径が30μmのレーザ光で10μmの加工径(先孔の直径)を形成する際に、レーザ加工の加工誤差(レーザ光の照射誤差)を±10μm(片側)、レーザ加工の熱によるシリコンの保護基板30が変質するのを防止する間隔を±10μm(片側)、レーザ加工の熱によるマスク140(補正パターン142)のダメージを防止する間隔を±15μm(片側)とすると、レーザ加工の処理径dは80μmとなる。
すなわち、補正パターン142の開口部141の開口面積が、このレーザ加工の処理径dよりも狭い状態でレーザ加工を行うと、レーザ加工の加工誤差によって、マスク140(補正パターン142)が除去されてしまい、後の工程で再度エッチングを行った際に、この除去された領域からもエッチングが始まって所望の形状の漸小部32(貫通孔)を形成することができない。また、レーザ加工の処理径としてレーザ加工の誤差を考慮しただけでは、レーザ加工の熱による保護基板30が変質するのを防止することができず、漸小部32(貫通孔)の内面にシリコンが変質した変質部が形成されてしまう。また、レーザ加工の処理径として、レーザ加工の誤差及びレーザ加工の熱による保護基板30の変質を考慮しただけでは、レーザ加工の熱によるマスク140(補正パターン142)のダメージを防止することができず、このダメージにより後の工程で所望の形状の漸小部32(貫通孔)を形成することができない。本実施形態では、レーザ加工の処理径として、レーザ加工による加工径、レーザ加工による加工誤差、レーザ加工の熱による保護基板30の変質を防ぐ間隔及びレーザ加工の熱によるマスク140(補正パターン142)のダメージを防止する間隔を含めることで、これらの不具合が発生するのを防止して後の工程で所望の形状の漸小部32(貫通孔)を形成することができる。
また、レーザ加工工程における保護基板30のレーザ加工は、補正パターン142による開口部141の開口面積が、処理径dよりも大きくなった段階で直ちに行うのが好ましい。これは、後述する第2のエッチング工程における保護基板30の異方性エッチングのエッチング時間を長時間にすることができると共に、異方性エッチングの時間を短縮することができるからである。
そして、このレーザ加工工程では、第1のエッチング工程で、図4(c)に示すように保護基板30の深さ方向の異方性エッチングが止まってしまっていても、図5(a)に示すように、保護基板30をレーザ加工することによって厚さ方向に貫通した先孔150を形成することができる。なお、第1のエッチング工程で、異方性エッチングにより保護基板30を厚さ方向に貫通した場合であっても、レーザ加工工程によってエッチングされた内面に突出した突起を除去して、開口面積を広げることができる。
次に、図5(b)及び図6(d)に示すように、保護基板30の異方性エッチングを再度行う(第2のエッチング工程)。第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程と同様に、保護基板30をアルカリ溶液に浸漬することで保護基板30の異方性エッチングを行った。この第2のエッチング工程では、レーザ加工工程で先孔150が形成された保護基板30を異方性エッチングするため、保護基板30の厚さ方向(漸小部32の深さ方向)のエッチングをこの先孔150を介して直ちに開始することができる。これにより、内面に庇状に突出した突起が形成されることなく、微細な貫通孔である漸小部32を容易に且つ高精度に形成することができる。したがって、突起によって流路抵抗や容積に差が生じ、インク吐出特性にばらつきが生じてしまうのを確実に防止することができると共に、突起に気泡が引っかかり気泡が大きく成長するなどによる不具合を確実に防止することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1について説明したが、本発明は、もちろん上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、結晶基板に貫通孔を形成する一例として、保護基板30に微細な貫通孔である漸小部32を形成する方法を例示したが、特にこれに限定されず、インクジェット式記録ヘッド1を構成する他の部材、例えば、シリコン単結晶基板からなるノズルプレート20に微細な貫通孔であるノズル開口21を形成する際や、流路形成基板10に圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等の流路を形成する際にも本発明を適用することができる。例えば、流路形成基板10に流路を形成する方法としては、例えば、流路が形成されていない流路形成基板10の一方面側に弾性膜50、絶縁体膜55及び圧電素子300等を成膜及びリソグラフィ法等により形成後、流路形成基板10の他方面側から弾性膜50に達するまで異方性エッチングすることにより流路を形成する。このとき、流路は流路形成基板10の他方面側からのみエッチングされて形成されるが、レーザ加工工程を弾性膜50を貫通することなく流路形成基板10のみを貫通するように行うことで、上述した実施形態1と同様に微細な貫通孔を有する流路を形成することができる。
また、上述した実施形態1では、結晶基板(保護基板30)として、シリコン単結晶基板を用いた例を示したが、特にこれに限定されず、表面の結晶面方位が(110)面である結晶性を有する基板であれば、特にこれに限定されるものではない。
また、上述した実施形態1では、補正パターン142として、外周の開始部142a以外が結晶基板(保護基板30)の結晶面方位の(111)面に沿って囲まれ、且つ外周に180度以下の角部が形成されたものを用いたため、実際には、補正パターン142は開始部142a以外の180度以下の角部からもエッチングが開始される。しかしながら、補正パターン142の外周の180度以下の角部からのエッチングは、開始部142aに比べてエッチングレートが遅く、特に影響が生じることはない。なお、補正パターンの開始部142a以外の領域からのエッチングを確実に防止するためには、外周に180度以下の角部が存在しない補正パターンを用いればよい。
また、上述した実施形態1では、ノズル開口21からインク滴を吐出する圧力発生手段として薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエータ装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を有するアクチュエータ装置や、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するアクチュエータ装置や、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエータ装置などを使用することができる。
さらに、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの製造方法の一例としてインクジェット式記録ヘッド1の製造方法を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドの製造方法を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は液体噴射ヘッドの製造方法に限定されず、結晶面方位が(110)面又は(100)面の結晶基板を異方性エッチングすることにより微細加工を行う結晶基板のエッチング方法に広く適用することができるものである。
実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1に係るリザーバ部の形状を示す平面図である。 実施形態1に係る保護基板の製造工程を示す要部断面図である。 実施形態1に係る保護基板の製造工程を示す要部断面図である。 実施形態1に係る保護基板の製造工程の模式的に表した平面図である。
符号の説明
1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板(結晶基板)、 31 リザーバ部、 32 漸小部(貫通孔)、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 120 駆動回路、 121 駆動配線、 130 二酸化シリコン膜、 140 マスク、 141、143 開口部、 142 補正パターン、 142a 開始部、 142b 終端部、 150 先孔、 300 圧電素子

Claims (5)

  1. 表面の結晶面方位が(110)面の結晶基板の表面に開口部を有するマスクを設け、前記結晶基板を前記マスクを介して異方性エッチングすることにより、前記結晶基板に貫通孔を形成する結晶基板のエッチング方法であって、
    前記結晶基板の表面に前記マスクを形成し、且つ当該マスクに前記結晶基板と共に開始部から終端部まで徐々にエッチングされて前記結晶基板を露出する開口部の開口面積を広げると共に、外周の前記開始部以外の領域が前記結晶基板の結晶面方位の(111)面に沿った面で囲まれた補正パターンを形成するマスク形成工程と、
    前記開口部の開口面積が、当該結晶基板をレーザ加工する際の加工径を含む処理径よりも狭い状態で、前記結晶基板の異方性エッチングを開始する第1のエッチング工程と、
    前記開口部の開口面積が、前記レーザ加工における前記加工径を含む前記処理径よりも広くなった状態で、当該結晶基板の前記開口部により露出された領域にレーザ光を照射して、当該結晶基板に厚さ方向に貫通する先孔を形成するレーザ加工工程と、
    前記先孔が形成された前記結晶基板を異方性エッチングして前記貫通孔を形成する第2のエッチング工程とを具備することを特徴とする結晶基板のエッチング方法。
  2. 前記レーザ加工の前記処理径が、前記レーザ加工の加工誤差、前記レーザ光による前記結晶基板の変質を防止する間隔及び前記レーザ光による前記マスクのダメージを防止する間隔を含むことを特徴とする請求項1記載の結晶基板のエッチング方法。
  3. 前記レーザ加工工程による前記結晶基板の前記レーザ加工を、前記開口部の開口面積が前記処理径よりも広くなった段階で直ちに行うことを特徴とする請求項1又は2記載の結晶基板のエッチング方法。
  4. 前記結晶基板が、シリコン単結晶基板からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の結晶基板のエッチング方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の結晶基板のエッチング方法によって、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に液体を噴射させる圧力を付与する圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドを構成する結晶基板を製造することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US20150056743A1 (en) * 2012-03-12 2015-02-26 Mitsubishi Electric Corporation Manufacturing method of solar cell

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