JP2008250130A - 能動型騒音制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、積和演算の実行を最小限に抑えることにより、騒音の消音制御に必要な演算負荷を低減させた能動型騒音制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】適応ノッチ型フィルターを用いた能動型騒音制御装置において、係数更新演算を誤差信号を低減すべき騒音の周波数と同一周期で所定の期間通過させた信号のみで行うことにより、係数更新演算において積演算を必要とせず、演算負荷を大幅に低減した能動型騒音制御装置を実現する。
【選択図】図1
【解決手段】適応ノッチ型フィルターを用いた能動型騒音制御装置において、係数更新演算を誤差信号を低減すべき騒音の周波数と同一周期で所定の期間通過させた信号のみで行うことにより、係数更新演算において積演算を必要とせず、演算負荷を大幅に低減した能動型騒音制御装置を実現する。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両のエンジン等の回転機器から発生する振動騒音を能動的に低減する能動騒音低減装置に関するものである。
従来の能動騒音低減装置においては、適応ノッチフィルタを利用した適応制御を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。図7は、この特許文献1に記載された従来の能動騒音低減装置の構成と等価な構成を示すものである。
図7において、能動騒音低減装置を実現するための離散演算は離散演算処理部15において実行される。エンジン回転数検出器1はエンジン回転数に比例した周波数をもつパルス列をエンジンパルスpとして出力する。たとえばこのエンジンパルスpはクランク角センサーの出力を取り出すことによって作成される。周波数検出部2は、エンジンパルスpを基に騒音周波数fを算出し出力する。基準信号生成部16は、正弦波1周期を所定等分した各ポイントの値をメモリ上に保持する正弦波テーブル3を有し、選択手段17により正弦波テーブル3からデータを選択し、周波数が騒音周波数fに等しい基準正弦波信号x1[n]と基準余弦波信号x2[n]とを生成し出力する。参照信号生成部18は、スピーカ10からマイクロフォン11までの伝達特性値を模擬した基準正弦波信号補正値テーブル19(周波数f〔Hz〕のときの基準正弦波信号補正値をC1[f]と表す)と基準余弦波信号補正値テーブル20(周波数f〔Hz〕のときの基準余弦波信号補正値をC2[f]と表す)とを利用し、参照正弦波信号r1[n]と参照余弦波信号r2[n]とを生成し出力する。第1の1タップデジタルフィルタ7は、内部に保持するフィルタ係数W1[n]によりx1[n]をフィルタリングし、第1の制御信号y1[n]を生成する。第2の1タップデジタルフィルタ8は、内部に保持するフィルタ係数W2[n]により基準余弦波信号x2[n]をフィルタリングし、第2の制御信号y2[n]を生成する。電力増幅器9は第1の制御信号y1[n]と第2の制御信号y2[n]とを加算した信号を増幅する。スピーカ10は電力増幅器9からの出力信号を騒音打ち消し音として出力する。マイクロフォン11は騒音と騒音打ち消し音とが干渉した結果生じる音を誤差信号ε[n]として検出する。第1の適応制御アルゴリズム演算部12は参照正弦波信号r1[n]と誤差信号ε[n]を基に、例えば最急降下法の一種であるLMS(Least Mean Square)アルゴリズムに基づいてフィルタ係数W1[n]を逐次更新する。同様に、第2の適応制御アルゴリズム演算部13は参照余弦波信号r2[n]と誤差信号ε[n]を基に、フィルタ係数W2[n]を逐次更新する。
この係数W1及びW2の逐次更新式は
W1[n+1]=W1[n]−μ×r1[n]×ε[n] ・・・・(1)W2[n+1]=W2[n]−μ×r2[n]×ε[n] ・・・・(2)となる。ここでμは収束係数と呼ばれる定数であり、係数W1及びW2が最適値に収束する時間に関係するものである。
W1[n+1]=W1[n]−μ×r1[n]×ε[n] ・・・・(1)W2[n+1]=W2[n]−μ×r2[n]×ε[n] ・・・・(2)となる。ここでμは収束係数と呼ばれる定数であり、係数W1及びW2が最適値に収束する時間に関係するものである。
そして、このような上述の処理を所定周期で繰り返すことにより、騒音を低減させることができる。
特開2004−361721号公報
しかしながら、上記従来の構成では、参照正弦波信号r1[n]および参照余弦波信号r2[n]を生成する際に、基準正弦波信号x1[n]と基準正弦波信号補正値C1[k]との積和演算、および基準余弦波信号x2[n]と基準余弦波信号補正値C2[k]との積和演算を伴い、それぞれの参照信号を作成するために2回の積演算を必要としていた。また、それぞれの1タップデジタルフィルタの係数W1及びW2の係数を求める為には、上記で求まった参照正弦波信号r1[n]及び参照余弦波信号r2[n]にそれぞれ収束係数μと誤差信号ε[n]を乗算する必要があるために2回の積演算が必要となっている(式(1)(2)参照)。即ち、それぞれの1タップデジタルフィルタの係数W1及びW2の係数を求めるためにはそれぞれ4回の積演算が必要となる。この結果演算負荷が増大するという問題があった。
本発明は、積演算の実行を最小限に抑えることにより、騒音の消音制御に必要な演算負荷を低減させた能動型騒音制御装置を提供することを目的とする。
本発明の能動型騒音制御装置は、騒音源に起因する制御すべき騒音の周波数を検出する制御対象騒音周波数検出手段と、前記制御対象騒音周波数検出手段で検出された騒音の周波数と同一の周波数の正弦波を生成する正弦波生成手段と余弦波を生成する余弦波生成手段と前記正弦波生成手段からの正弦波信号が入力される第1の1タップデジタルフィルタと、前記余弦波生成手段からの余弦波信号が入力される第2の1タップデジタルフィルタと、前記第1の1タップデジタルフィルタからの出力と前記第2の1タップデジタルフィルタからの出力とが加算された騒音制御信号が入力され前記騒音源に起因する制御すべき騒音と干渉させるための干渉信号を出力させる干渉信号生成手段と、前記干渉信号生成手段から出力される前記干渉信号と前記騒音源に起因する制御すべき騒音との干渉の結果生じる誤差信号を検出する誤差信号検出手段と、前記第1の1タップデジタルフィルタのフィルタ係数を更新する第1の係数更新手段と、前記第2の1タップデジタルフィルタのフィルタ係数を更新する第2の係数更新手段からなり、前記第1の係数更新手段及び第2の係数更新手段は前記誤差信号検出手段からの誤差信号を前記制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号によって前記誤差信号検出手段における騒音が低減されるように前記第1の1タップデジタルフィルタ及び前記第2の1タップデジタルフィルタの係数を更新するように構成されたことを特徴とする。
本発明の能動型騒音制御装置は、第1の係数更新手段及び第2の係数更新手段に入力させる信号は誤差信号を制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号であり、以下の式によって係数更新を行う。
W1[n+1]=W1[n]−ε1[n] ・・・・・(3)W2[n+1]=W2[n]−ε2[n] ・・・・・(4) ここで、ε1[n]及びε2[n]は誤差信号ε[n]をそれぞれ制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号である。即ち、従来技術ではそれぞれの1タップデジタルフィルタの係数W1及びW2の係数を求める為に、いわゆる参照信号の生成のために2回の積演算、係数更新のために2回の積演算を必要としていたが、本発明の場合、前記係数更新式(3)、(4)からわかるように、いわゆる参照信号を必要とせず、また、誤差信号ε[n]をそれぞれ制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号であるε1[n]及びε2[n]をもとの係数W1[n]およびW2[n]から減算するだけで一回の積演算を行うことなくそれぞれの1タップデジタルフィルタの係数W1及びW2の係数を求めることができ、演算負荷が低減できるという作用効果が得られる。
W1[n+1]=W1[n]−ε1[n] ・・・・・(3)W2[n+1]=W2[n]−ε2[n] ・・・・・(4) ここで、ε1[n]及びε2[n]は誤差信号ε[n]をそれぞれ制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号である。即ち、従来技術ではそれぞれの1タップデジタルフィルタの係数W1及びW2の係数を求める為に、いわゆる参照信号の生成のために2回の積演算、係数更新のために2回の積演算を必要としていたが、本発明の場合、前記係数更新式(3)、(4)からわかるように、いわゆる参照信号を必要とせず、また、誤差信号ε[n]をそれぞれ制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号であるε1[n]及びε2[n]をもとの係数W1[n]およびW2[n]から減算するだけで一回の積演算を行うことなくそれぞれの1タップデジタルフィルタの係数W1及びW2の係数を求めることができ、演算負荷が低減できるという作用効果が得られる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における能動型騒音制御装置について図面を参照しながら説明する。
以下、本発明の実施の形態1における能動型騒音制御装置について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態1における能動型騒音制御装置のブロック図である。
図1において、エンジン回転数検出器1は車両に搭載された騒音源としてのエンジンの回転数に比例した周波数をもつパルス列をエンジンパルスpとして出力する。制御対象騒音周波数検出手段としての周波数検出部2はエンジンパルスpから制御対象騒音周波数f〔Hz〕を算出し出力する。離散化された正弦波のデータとしての正弦波テーブル3は正弦波1周期をN等分した各ポイントの正弦値をメモリ上に保持する。正弦波生成手段5はサンプリング周期ごとに正弦波テーブルより読み出しポイントP[n]の位置のデータを読み出し基準正弦波信号x1[n]を生成する。この時、読み出しポイントの次の値P[n+1]と現在の読み出しポイントの値P[n]の差P[n+1]−P[n]はサンプリング周期をT、制御対象騒音周波数fとしたときにはN×f×Tとなる。同様に余弦波生成手段6はサンプリング周期ごとに正弦波テーブル3より、正弦波生成手段5の読み出しポイントよりN/4だけ先行したポイント、即ちP[n]+N/4の位置のデータを読み出すことによって基準余弦波信号x2[n]を生成している。この際、それぞれの読み出しポイントP[n]及びP[n]+N/4がNを超えた場合はその読み出しポイントからNを引いたポイントを新たな読み出しポイントとしなければならない。特性テーブル4はスピーカ10からマイクロフォン11までの伝達特性の位相特性に基づき、誤差信号ε[n]を通過させる読み出しポイントの通過下限ポイントPP1[f]及び通過上限ポイントPP2[f]を周波数毎に保持する。係数更新用誤差信号生成部14は制御対象騒音周波数fに基づき、特性テーブル4から制御対象騒音周波数fにおける、通過下限ポイントPP1[f]及び通過上限ポイントPP2[f]を読み込み、それらに基づきマイクロフォン11で検出された誤差信号ε[n]を通過させるか阻止するかを決定しそれぞれ係数更新用誤差信号ε1[n]及びε2[n]を生成する。
ここで、ε1[n]は
PP1[f]≦P[n]≦PP2[f]の時 ε1[n]=ε[n]
上記以外の場合 ε1[n]=0 ・・・・(5) ここで、ε2 [n]は
PP1[f]+N/4≦P[n]≦PP2+N/4[f]の時
ε2[n]=ε[n]
上記以外の場合 ε2[n]=0 ・・・・(6)である。
PP1[f]≦P[n]≦PP2[f]の時 ε1[n]=ε[n]
上記以外の場合 ε1[n]=0 ・・・・(5) ここで、ε2 [n]は
PP1[f]+N/4≦P[n]≦PP2+N/4[f]の時
ε2[n]=ε[n]
上記以外の場合 ε2[n]=0 ・・・・(6)である。
次に、第1の1タップデジタルフィルタ7は第1のフィルタ係数W1[n]を内部に保持し、基準正弦波信号x1[n]と第1のフィルタ係数W1[n]とに基づいて第1の制御信号y1[n]を出力する。第2の1タップデジタルフィルタ8は第2のフィルタ係数W2[n]を内部に保持し、基準余弦波信号x2[n]と第2のフィルタ係数W2[n]とに基づいて第2の制御信号y2[n]を出力する。電力増幅器9は第1の制御信号y1[n]と第2の制御信号y2[n]とが加算された騒音制御信号を増幅する。干渉信号生成手段としてのスピーカ10は電力増幅器9からの出力信号を騒音打ち消し音として出力する。誤差信号検出手段としてのマイクロフォン11はエンジン振動に起因して発生する制御対象騒音と騒音打ち消し音とが干渉した結果生じる音を誤差信号ε[n]として検出する。第1の係数更新手段としての第1の適応制御アルゴリズム演算部12は係数更新用誤差信号ε1[n]を用いて第1の1タップデジタルフィルタ7のフィルタ係数W1[n]を逐次更新する。第2の係数更新手段としての第2の適応制御アルゴリズム演算部13は係数更新用誤差信号ε2[n]を用いて第2の1タップデジタルフィルタ8のフィルタ係数W2[n]を逐次更新する。このように離散演算処理部15はソフトウェアにより構成される。
次に、本装置の具体的な動作を説明する。
基準正弦波信号x1[n]の生成と、基準余弦波信号x2[n]の生成と、第1の制御信号y1[n]の生成と、第2の制御信号y2[n]の生成と、誤差信号ε[n]の検出と、フィルタ係数W1[n]の更新と、フィルタ係数W2[n]の更新は、すべて同一の周期で実行する。以降では、この周期をT〔秒〕として説明する。
周波数検出部2は、例えばエンジンパルスpの立ち上がりエッジ毎に割り込みを発生させ、立ち上がりエッジ間の時間を測定し、測定結果をもとに制御対象騒音の周波数fを算出する。
正弦波テーブル3は、正弦波1周期をN等分し、各ポイントの正弦値の離散データをメモリ上に保持する。0ポイント目からN−1ポイント目までの正弦値を格納した配列をz[m](0≦m<N)で表すとき、関係式(3)が成り立つ。
z[m]=sin(360°×m/N) ・・・(7) 例えば、N=3000の場合のz[m]のグラフと表をそれぞれ図2と図3に示す。
特性テーブル4は、スピーカ10からマイクロフォン11までの伝達特性の位相特性に基づき、誤差信号ε[n]を通過させる通過下限ポイントPP1[f]及び通過上限ポイントPP2[f]をメモリ上に保持する(fは周波数〔Hz〕)。
f〔Hz〕のときの位相特性をθ[f](度)とすると、関係式(8)が成り立つ。
PP1[f]=N×θ[f]/360+α
PP2[f]=PP1[f]+β ・・・(8) ここで、α及びβは任意の正の定数であるが、α<N/2、β+α<N/2の必要がある。
PP2[f]=PP1[f]+β ・・・(8) ここで、α及びβは任意の正の定数であるが、α<N/2、β+α<N/2の必要がある。
例えば、N=3000で、制御対象騒音周波数の範囲が30Hzから100Hzまでの場合の位相特性θ[f]の例を図4に、それに対応する通過下限ポイントPP1[f]及び通過上限ポイントPP2[f]を図5に示す。
正弦波生成手段5は、正弦波テーブル3の現在の読み出し位置P[n]をメモリ上に記憶しており、制御対象騒音周波数fに基づいて現在の読み出し位置を式(9)により毎周期移動させる。
P[n+1]=P[n]+N×f×T ・・・(9) ただし、式(9)の右辺の計算結果がN以上となった場合は、式(9)の右辺の計算結果からNを減算したものをP[n+1]とする。
同時に、正弦波生成手段5は、制御対象騒音周波数fと同一周波数の基準正弦波信号x1[n]を式(10)と式(11)により生成する。
ix1 =P[n] ・・・(10) x1[n]=z[ix1] ・・・(11) ただし、式(10)の右辺の計算結果がN以上となった場合は、式(10)の右辺の計算結果からNを減算したものをix1とする。
また、余弦波生成手段6は、制御対象騒音周波数fと同一周波数で、かつ、基準正弦波信号x1[n]より4分の1周期進んだ基準余弦波信号x2[n]を式(12)と式(13)により生成する。
ix2 =P[n]+N/4 ・・・(12) x2[n]=z[ix2] ・・・(13) ただし、式(12)の右辺の計算結果がN以上となった場合は、式(12)の右辺の計算結果からNを減算したものをix2とする。
同時に、係数更新用誤差信号生成部14は制御対象騒音周波数fに基づき、特性テーブル4から制御対象騒音周波数fにおける、通過下限ポイントPP1[f]及び通過上限ポイントPP2[f]を読み込み、それらに基づきマイクロフォン11で検出された誤差信号ε[n]を処理しそれぞれ係数更新用誤差信号ε1[n]及びε2[n]を生成する。
第1、第2の1タップデジタルフィルタ7、8は、それぞれ第1、第2の制御信号y1[n]、y2[n]を式(14)、式(15)により生成する。
y1[n]=W1[n]×x1[n] ・・・(14) y2[n]=W2[n]×x2[n] ・・・(15) 第1、第2の適応制御アルゴリズム演算部12、13は、それぞれ第1、第2の1タップデジタルフィルタ7、8が保持するフィルタ係数W1[n]、W2[n]を式(16)、式(17)により更新する。
W1[n+1]=W1[n]−ε1[n] ・・・(16)
W2[n+1]=W2[n]−ε2[n] ・・・(17) 上述の手順によりフィルタ係数W1[n]とフィルタ係数W2[n]とを収束させることにより、制御対象騒音を低減させることができる。
W2[n+1]=W2[n]−ε2[n] ・・・(17) 上述の手順によりフィルタ係数W1[n]とフィルタ係数W2[n]とを収束させることにより、制御対象騒音を低減させることができる。
ここで(16)、(17)による係数更新式で制御対象周波数の騒音が減少するメカニズムについて説明する。
従来例で説明した騒音制御装置においてはLMS(Least Mean Square)アルゴリズムに基づいてフィルタ係数W1[n]、W2[n]を逐次更新している。その更新式は以下に示されるものであった。
W1[n+1]=W1[n]−μ×r1[n]×ε[n] ・・・・・(1)
W2[n+1]=W2[n]−μ×r2[n]×ε[n] ・・・・・(2)
このように一般的には参照正弦信号r1[n]、参照余弦信号r2[n]には低減すべき騒音の周波数の正弦信号及び余弦信号と誤差信号ε[n]との積を利用している。これは正弦波、余弦波の直交性を利用したものであり、長い期間の逐次更新(即ちn→∞)では誤差信号εの中で参照正弦信号r1及び参照余弦信号r2の周波数と同じ周波数成分の積が累積し、他の周波数成分の積の累積値は0となる。このことからW1[n]及びW2[n]は誤差信号εの中で参照正弦信号r1及び参照余弦信号r2の周波数と同一の周波数成分を低下させるように係数更新が行われ、最終的に誤差信号の中で参照正弦信号及び参照余弦信号の周波数と同一の周波数成分が0となった時にW1[n]及びW2[n]の平均的な係数更新は0となりW1[n]、W2[n]は収束する。
W2[n+1]=W2[n]−μ×r2[n]×ε[n] ・・・・・(2)
このように一般的には参照正弦信号r1[n]、参照余弦信号r2[n]には低減すべき騒音の周波数の正弦信号及び余弦信号と誤差信号ε[n]との積を利用している。これは正弦波、余弦波の直交性を利用したものであり、長い期間の逐次更新(即ちn→∞)では誤差信号εの中で参照正弦信号r1及び参照余弦信号r2の周波数と同じ周波数成分の積が累積し、他の周波数成分の積の累積値は0となる。このことからW1[n]及びW2[n]は誤差信号εの中で参照正弦信号r1及び参照余弦信号r2の周波数と同一の周波数成分を低下させるように係数更新が行われ、最終的に誤差信号の中で参照正弦信号及び参照余弦信号の周波数と同一の周波数成分が0となった時にW1[n]及びW2[n]の平均的な係数更新は0となりW1[n]、W2[n]は収束する。
一方本発明においては、いわゆる参照信号(r1[n]、r2[n])を使用せず、誤差信号ε[n]を式(5)、式(6)により生成した係数更新用誤差信号ε1[n]及びε2[n]のみで係数更新を行っている。
そして、このε1[n]、ε2[n]は以下のようにも表すことができる。
ε1[n]=1×ε [n] PP1[f]≦P[n]≦PP2[f]
ε1[n]=0×ε [n] PP1[f]≦P[n]≦PP2[f]以外の時
・・・・(18)同様に
ε2[n]=1×ε [n]
PP1[f]+N/4≦P[n]≦PP2[f]N/4
ε2[n]=0×ε [n]
PP1[f]+N/4≦P[n]≦PP2[f]N/4以外の時 ・・・・(19)
これは、言い換えるとそれぞれε[n]と制御対象騒音周波数fと同一周期でデューティー比が(PP2−PP1)/Nの矩形波信号の積と等価である。そしてε1[n]側の矩形波信号をH1[n]、ε2[n]側の矩形波信号をH2[n]と表すと
ε1[n]=H1[n]×ε[n] ・・・・(20)
ε2[n]=H2[n]×ε[n] ・・・・(21)
と書くことができる。
ε1[n]=1×ε [n] PP1[f]≦P[n]≦PP2[f]
ε1[n]=0×ε [n] PP1[f]≦P[n]≦PP2[f]以外の時
・・・・(18)同様に
ε2[n]=1×ε [n]
PP1[f]+N/4≦P[n]≦PP2[f]N/4
ε2[n]=0×ε [n]
PP1[f]+N/4≦P[n]≦PP2[f]N/4以外の時 ・・・・(19)
これは、言い換えるとそれぞれε[n]と制御対象騒音周波数fと同一周期でデューティー比が(PP2−PP1)/Nの矩形波信号の積と等価である。そしてε1[n]側の矩形波信号をH1[n]、ε2[n]側の矩形波信号をH2[n]と表すと
ε1[n]=H1[n]×ε[n] ・・・・(20)
ε2[n]=H2[n]×ε[n] ・・・・(21)
と書くことができる。
またここで、H1[n]と H2[n]との関係はそれらが1/4周期ずれていることが、式(18)、(19)からわかる。
図6はこのH1[n](H2[n]も同様)の時間軸波形とそのスペクトルを示したものである。
この図6より、それぞれH1[n]、H2[n]は直流成分と基本周波数成分と奇数次の高調波からなっていることがわかり、これらは一般的に次のような式で表される。
H1[n]= A0+A1Sin(2πfn/T)+ A2Sin(2π3fn/T)+A3Sin(2π5fn/T)+・・・
・・・(22) H2[n]= A0+A1Cos(2πfn/T)+A2Cos(2π3fn/T)+ A3Cos(2π5fn/T)+・・・
・・・(23) 一方、デジタルフィルタの係数更新式(16)(17)を変形し、式(20)、(21)の関係を代入すると
△W1=W1[n+1]−W1[n]=−ε[n]×H1[n]
△W2=W2[n+1]−W2[n]=−ε[n]×H2[n]
W1=Σ△W1=Σ(−ε[n]×H1[n]) ・・・(24)
W2=Σ△W2=Σ(−ε[n]×H2[n]) ・・・(25)
となり、W1、W2は(−ε[n]×H1[n])及び(−ε[n]×H2[n])の累積値に比例したものとなる。
・・・(22) H2[n]= A0+A1Cos(2πfn/T)+A2Cos(2π3fn/T)+ A3Cos(2π5fn/T)+・・・
・・・(23) 一方、デジタルフィルタの係数更新式(16)(17)を変形し、式(20)、(21)の関係を代入すると
△W1=W1[n+1]−W1[n]=−ε[n]×H1[n]
△W2=W2[n+1]−W2[n]=−ε[n]×H2[n]
W1=Σ△W1=Σ(−ε[n]×H1[n]) ・・・(24)
W2=Σ△W2=Σ(−ε[n]×H2[n]) ・・・(25)
となり、W1、W2は(−ε[n]×H1[n])及び(−ε[n]×H2[n])の累積値に比例したものとなる。
ここでε[n]が周波数fの正弦波Sin(2πfn/T)とすると、W1は式(22)、(24)より
W1=Σ(−ε[n]×H1[n])=Σ{−Sin(2πfn/T)×(A1Sin(2πfn/T)+A2Sin(2π3fn/T)+ A3Sin(2π5fn/T) +・・)}
となるが、正弦波の直交性により周波数が違う成分の累積値は0になるため
W1=Σ(−ε[n]×H1[n])=Σ(−Sin(2πfn/T)×A1Sin(2πfn/T)[n]) ・・・・(26)
W2も全く同様のことが言え、W1、W2ともに周波数fの成分のみの積が累積し、参照信号に正弦波を使った従来例のものと等価となり、周波数fの騒音が低下するように係数W1、W2が収束していくことがわかる。すなわち参照信号に正弦波を使った従来例のものと同様に、本発明においても目的とする周波数fの騒音を低減させることができる。
W1=Σ(−ε[n]×H1[n])=Σ{−Sin(2πfn/T)×(A1Sin(2πfn/T)+A2Sin(2π3fn/T)+ A3Sin(2π5fn/T) +・・)}
となるが、正弦波の直交性により周波数が違う成分の累積値は0になるため
W1=Σ(−ε[n]×H1[n])=Σ(−Sin(2πfn/T)×A1Sin(2πfn/T)[n]) ・・・・(26)
W2も全く同様のことが言え、W1、W2ともに周波数fの成分のみの積が累積し、参照信号に正弦波を使った従来例のものと等価となり、周波数fの騒音が低下するように係数W1、W2が収束していくことがわかる。すなわち参照信号に正弦波を使った従来例のものと同様に、本発明においても目的とする周波数fの騒音を低減させることができる。
また、本発明におけるPP2[f]−PP1[f]は任意の大きさに選定できるが、これは実質上、従来例のμ(収束係数)と同様に取り扱うことができる。即ち、PP2[f]−PP1[f]が大きいほど収束速度は速くなり、PP2[f]−PP1[f]が小さいと収束速度は遅くなる。このようにPP2[f]−PP1[f]の大きさで収束速度の調整が可能となる。
ここで、本発明と特許文献1に記載の方法とを、演算負荷の観点から比較する。特許文献1に記載の方法では、スピーカ10からマイクロフォン11までの伝達特性値を模擬した基準正弦波信号補正値テーブル19(周波数f〔Hz〕のときの基準正弦波信号補正値をC1[f]と表す)と基準余弦波信号補正値テーブル20(周波数k〔Hz〕のときの基準余弦波信号補正値をC2[f]と表す)とを利用して、式(27)と式(28)とによりそれぞれ参照正弦波信号r1[n]と参照余弦波信号r2[n]とを生成する。
r1[n]=C1[f]×x1[n]+C2[f]×x2[n] ・・・(27) r2[n]=C1[f]×x2[n]−C2[f]×x1[n] ・・・(28) まず、式(27)と式(28)とにおいては2回の乗算を伴っているのに対し、本発明に参照信号を用いない方式のため乗算の必要がない。また、係数更新においても特許文献1に記載の方法では式(1)、式(2)から判るようにそれぞれ2回の乗算が必要である。本発明においては式(16)、式(17)を見れば判るようにここでも乗算は必要ない。これらを総合すると特許文献1に記載の方法ではそれぞれ係数W1及びW2を求める為にサンプリング周期ごとにそれぞれ4回の乗算が必要であるが、本発明においては1回の乗算も必要としない。したがって、本発明は特許文献1に記載の方法に比べ、演算負荷を低減できるという効果がある。
また、本発明においては、第1、第2の1タップデジタルフィルタ7、8と、第1、第2の適応制御アルゴリズム演算部12、13とをそれぞれ複数個用意することにより、制御対象騒音の複数次数成分を消音させることも可能である。
本発明にかかる能動型騒音制御装置は、積和演算の実行を最小限に抑えることにより演算負荷の低減を実現でき、低コストで実用性のある能動型騒音制御装置として有用である。
1 エンジン回転数検出器
2 周波数検出部(制御対象騒音周波数検出手段)
3 正弦波テーブル
4 特性テーブル
5 正弦波生成手段
6 余弦波生成手段
7 第1の1タップデジタルフィルタ
8 第2の1タップデジタルフィルタ
9 電力増幅器
10 スピーカ(駆動信号生成手段)
11 マイクロフォン(誤差信号検出手段)
12 第1の適応制御アルゴリズム演算部(第1の係数更新手段)
13 第2の適応制御アルゴリズム演算部(第2の係数更新手段)
14 係数更新用誤差信号生成部
15 離散演算処理部
16 基準信号生成部
17 選択手段
18 従来例による参照信号生成部
19 基準正弦波信号補正値テーブル
20 基準余弦波信号補正値テーブル
2 周波数検出部(制御対象騒音周波数検出手段)
3 正弦波テーブル
4 特性テーブル
5 正弦波生成手段
6 余弦波生成手段
7 第1の1タップデジタルフィルタ
8 第2の1タップデジタルフィルタ
9 電力増幅器
10 スピーカ(駆動信号生成手段)
11 マイクロフォン(誤差信号検出手段)
12 第1の適応制御アルゴリズム演算部(第1の係数更新手段)
13 第2の適応制御アルゴリズム演算部(第2の係数更新手段)
14 係数更新用誤差信号生成部
15 離散演算処理部
16 基準信号生成部
17 選択手段
18 従来例による参照信号生成部
19 基準正弦波信号補正値テーブル
20 基準余弦波信号補正値テーブル
Claims (1)
- 騒音源に起因する制御すべき騒音の周波数を検出する制御対象騒音周波数検出手段と、前記制御対象騒音周波数検出手段で検出された騒音の周波数と同一の周波数の正弦波を生成する正弦波生成手段と余弦波を生成する余弦波生成手段と前記正弦波生成手段からの正弦波信号が入力される第1の1タップデジタルフィルタと、前記余弦波生成手段からの余弦波信号が入力される第2の1タップデジタルフィルタと、前記第1の1タップデジタルフィルタからの出力と前記第2の1タップデジタルフィルタからの出力とが加算された騒音制御信号が入力され前記騒音源に起因する制御すべき騒音と干渉させるための干渉信号を出力させる干渉信号生成手段と、前記干渉信号生成手段から出力される前記干渉信号と前記騒音源に起因する制御すべき騒音との干渉の結果生じる誤差信号を検出する誤差信号検出手段と、前記第1の1タップデジタルフィルタのフィルタ係数を更新する第1の係数更新手段と、前記第2の1タップデジタルフィルタのフィルタ係数を更新する第2の係数更新手段からなり、前記第1の係数更新手段及び第2の係数更新手段は前記誤差信号検出手段からの誤差信号を前記制御すべき騒音の周波数と同一の周期で任意の期間通過させた信号によって前記誤差信号検出手段における騒音が低減されるように前記第1の1タップデジタルフィルタ及び前記第2の1タップデジタルフィルタの係数を更新するように構成された能動型騒音制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007093240A JP2008250130A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | 能動型騒音制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007093240A JP2008250130A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | 能動型騒音制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008250130A true JP2008250130A (ja) | 2008-10-16 |
Family
ID=39975124
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007093240A Pending JP2008250130A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | 能動型騒音制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008250130A (ja) |
-
2007
- 2007-03-30 JP JP2007093240A patent/JP2008250130A/ja active Pending
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