JP2008250112A - プラスチック製光伝送体及びポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法 - Google Patents

プラスチック製光伝送体及びポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法 Download PDF

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裕香 小野
Hirotsugu Yoshida
博次 吉田
Yuki Goto
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Abstract

【課題】コアが透明性に優れ、光学樹脂材料として許容されるポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、曲げ損失を向上し、光源及びレンズ等との接合が良好なプラスチック製光伝送体及び光ファイバーケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有するプラスチック製光伝送体であって、前記コア層がポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、前記クラッド層がコア層よりも屈折率の低いポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体の1種類以上の樹脂層からなるプラスチック製光伝送体。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチック製光伝送体及びポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法に関し、より詳細には、コア部がポリ塩化ビニル系樹脂を主成分として含有するプラスチック製光伝送体及びポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法に関する。
プラスチック光伝送体は、コアとクラッドとの2種の材料の組み合わせで構成されており、加工性、取扱い性、耐湿熱性、耐薬品性、耐屈曲性などの面で従来のガラス系光伝送体に比べ優れている。したがって、透明性に優れたポリアクリル酸系の樹脂は、光学樹脂材料として新たな用途が期待され、光ファイバーへの開発が進められており、種々のクラッド材料が提案されている(例えば、特許文献1)。
WO93/08488号パンフレット
通常、光伝送体におけるクラッドは、コア内部に光を止めておくために、コア材料よりも適度に低屈折率であることが要求される。しかし、汎用されているクラッド材料を無選別に選定すると、クラッドの役割を果さず、曲げ損失の増大や、光源やレンズと、光伝送体の接合の悪化を招く。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、コア層が透明性に優れ、光学樹脂材料として許容されるポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、曲げ損失を向上し、光源及びレンズ等との接合が良好なプラスチック製光伝送体及びポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のプラスチック製光伝送体は、コアの外周に1層又は2層以上のクラッド層を有するプラスチック製光伝送体であって、前記コア層がポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、前記クラッド層がコア層よりも屈折率の低いポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体の1種類以上の樹脂層からなることを特徴とする。
また、本発明の第1のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有するポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法であって、
ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも高く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで構成される内層と、ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも低く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで又は含まないで構成される外周層とからなる同軸多層構造体を形成し、
(a)前記添加剤を、同軸多層構造体の周辺部又は中心部に向かって拡散させて連続的に屈折率が変化するコア層を形成するとともに、前記外周層に前記添加剤を拡散させる前の組成を保持する領域を残存させ、これをコア層に接するクラッド層とするか、あるいは
(b)前記添加剤を、同軸多層構造体の周辺部又は中心部に向かって拡散させて連続的に屈折率が変化するコア層を形成し、
該同軸多層構造体の外側に前記添加剤を拡散させた後の外周層よりも屈折率の低い材料層を形成し、これをコア層に接するクラッド層とすることを特徴とする。
本発明の第2のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体を、溶融押出機と紡糸ノズルとを用いて製造する方法であって、
複数の原料供給流路を有し、同軸2層構造又は同軸3層以上の構造を成形する多層用紡糸ノズルを用い、コア層とクラッド層とを同時に溶融押出成形し、光伝送を得ることを特徴とする。
本発明の第3のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体を製造する方法であって、
溶融押出機と多層ダイとを用いてコア層とクラッド層とを同時に成形し、同軸2層又は同軸3層以上の構造を有するプリフォームを作成し、該プリフォームを線引きして光伝送体を得ることを特徴とする。
本発明の第4のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体の製造方法であって、
予め成形されたコアファイバー又はコア層とインナークラッドとを有するファイバーの外層に、溶融押出機と被覆ダイとを用いてクラッド樹脂を溶融被覆してクラッド層を形成することを特徴とする。
本発明の第5のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする光伝送体を製造する方法であって、
コア層又はコア層とインナークラッドとを有するプリフォームを作成し、該プリフォームの外周に溶融押出機と被覆ダイとを用いてクラッド樹脂を溶融被覆して、同軸2層又は同軸3層以上の構造を有するプリフォームを作成し、該プリフォームを線引きして光伝送体を得ることを特徴とする。
本発明の第6のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体の製造方法であって、
予め成形されたコアファイバー又はコア層とインナークラッドとを有するファイバーの外周にクラッド層となる材料のモノマー又は溶解液を塗布し、重合又は溶媒乾燥を経て、クラッド層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、コア部が透明性に優れ、光学樹脂材料として許容されるポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、曲げ損失を向上し、光源及びレンズ等との接合が良好なプラスチック製光伝送体を得ることが可能となる。
また、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法によれば、光学樹脂材料として許容されるポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、曲げ損失を向上し、光源及びレンズ等との接合が良好な光伝送体を、簡便な方法で、確実に製造することができる。
本発明のプラスチック製及びポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体(以下、単に「光伝送体」と記すことがある)は、コア層と、コア層の外周に配置された1層又は2層以上のクラッド層とから構成される。
コア層は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物からなる。ここで、「主成分」とは、通常、樹脂組成物中において50重量%以上がポリ塩化ビニル系樹脂を含むことを意味するが、必ずしも50重量%以上でなくてもよく、樹脂組成物中において最多量の成分がポリ塩化ビニル系樹脂であることをも包含する。
本発明において、ポリ塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルモノマー及び/又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーを重合又は共重合して得られる(共)重合体若しくはその後塩素化物である。
塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、公知のビニルモノマーのすべてが含まれ、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類:エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類:メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、ポリ塩化ビニル系樹脂は、上述したものに限定されず、例えば、同出願人の特開2005−36195号公報、特開2005−36196号公報、特開2005−36216号公報等に記載されたもの、記載された方法及びそれに準じて形成されたもの等をも用いることができる。また、その場合の触媒として、以下のような、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物やアルキルリチウム等を利用することが有効である。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂として好適なもの、つまり、分岐構造や頭−頭構造などの不規則構造の少ないポリ塩化ビニル系樹脂は、例えば、上述した塩化ビニルモノマー及び/又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーを、一般式
ZrX1234
(式中、X1、X2、X3、X4はハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換アリールオキシ基等)で表されるジルコニウム化合物と、一般式
AlY123
(式中、Y1、Y2、Y3はハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換アリールオキシ基等)で表されるアルミニウム化合物又はアルキルアルミノキサンとの存在下で(共)重合するか、あるいはアルキルリチウム存在下で(共)重合することによって得ることができる。また、これらの(共)重合体は、後塩素化してもよい。
1、X2、X3、X4のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜6のものが適しており、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜6のものが適しており、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。
置換又は非置換アリール基としては、炭素数6〜9のものが適している。また、置換基としては、ハロゲン原子が挙げられる。例えば、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル等、塩化フェニル、塩化トリル、塩化キシリル等が挙げられる。
置換又は非置換アリールオキシ基としては、炭素数6〜9のものが適している。また、置換基としては、ハロゲン原子が挙げられる。例えば、フェノキシ、トリルオキシ、キシルオキシ、クメニルオキシ、メシチルオキシ、ナフチルオキシ等、塩化フェノキシ、塩化トリルオキシ、塩化キシリルオキシ等が挙げられる。
なかでも、得られる塩化ビニル系樹脂の分岐構造がより少ないという点で、アルコキシ基、アリールオキシ基の4置換体であるジルコニウムアルコキシド類やジルコニウムアリールオキシド類が好ましく、さらに、X1からX4の全てが同一の置換基であることがより好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的に、ジルコニウムテトラ−n−ブトキサイド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキサイド、ジルコニウムテトライソプロポキサイド等のジルコニウムアルコキシド類;ジルコニウムテトラフェノキサイド等のジルコニウムアリールオキシド類;ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジブトキサイド等のジルコノセン類;シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリブトキサイド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリブトキサイド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリフェノキサイド等のハーフジルコノセン類等が挙げられる。
ジルコニウム化合物の重合系内における濃度は、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂の重合度を確保し、残存するジルコニウム量を減少し、さらに、重合効率の向上という観点から、ジルコニウム濃度で10-1〜10-8mol/lの範囲であることが好ましい。
1、Y2、Y3としては、X1からX4で例示したものと同様のものが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、具体的に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、i−ブチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド等が挙げられる。
アルキルアルミノキサンとしては、例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン等が挙げられる。
本発明においては、得られる塩化ビニル系樹脂の生産効率や分岐構造がより少ないことから、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミノキサンがより好ましい。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
アルミニウム化合物及び/又はアルキルアルミノキサンの重合系内における濃度は、重合収率の向上、残存する金属量増加の抑制の観点から、ジルコニウムとのモル比において、アルミニウム/ジルコニウムのモル比が1〜105の範囲であることが好ましい。
アルキルリチウムとしては、具体的に、メチルリチウム、エチルリチウム、n‐プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等が挙げられる。
アルキルリチウムの重合系内における濃度は、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂の重合度を確保し、残存するアルキルリチウムを減少し、さらに、重合効率の向上という観点から、アルキルリチウム濃度で10-1〜10-4mol/lの範囲であることが好ましい。
重合又は共重合は、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気下で反応容器に、塩化ビニルモノマー及び/又は塩化ビニルモノマーと、共重合可能なモノマーと、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、アルキルアルミノキサン又はアルキルリチウムとを加えて重合反応を開始させる。任意に溶媒を加えて重合反応を行ってもよい。反応器への添加の際には溶媒等で溶解又は希釈して添加してもよい。
本発明におけるポリ塩化ビニル系樹脂として好適なものを重合する際の温度は、特に限定されるものではないが、低くなると反応速度が遅くなり、所定の収率まで重合するのに時間がかかり、高くなると停止反応又は連鎖反応等の副反応が進行し易くなることを考慮すると、−50℃〜60℃が適当である。反応圧力は、特に限定されない。
上記重合により得られた反応混合物に、メタノールや水等の失活剤を添加して、失活処理を行った後に、酸・アルカリによる脱灰処理、多孔質吸着剤による残触媒除去処理等を行うことにより、(共)重合体を得ることができる。
なお、本発明において適切に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂は、イオン重合方法、別の観点から、塊状重合方法、溶液重合方法等によって形成したものであってもよい。
溶液重合を行う場合の溶剤としては、特に限定されないが、溶媒自体が重合中に変性しないものが選択される。例えば、ヘキサン、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。
(共)重合体を塩素化して後塩素化物を得る方法は、公知の塩素化方法又はこれに準じた方法を用いることができ、例えば、水懸濁熱塩素化法、水懸濁光塩素化法、溶液塩素化法等が挙げられる。なお、塩素化の際に、過酸化水素のようなラジカル発生剤を添加すると、得られた後塩素化物は、主鎖に脱塩酸の基点となる構造が生成するので、可能な限り添加しないのが好ましい。ラジカル発生剤を添加する場合の添加量は、50ppm以下が適当である。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、脱塩酸性が低く、透明性が向上する点から、後塩素化物であることが好ましく、中でも、脱塩酸性がより低いため、水懸濁熱塩素化法により得られた後塩素化物が好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素含有率は特に限定されないが、好ましくは62%以上、73%以下である。なかでも、63%程度以上、65%程度以上、66%程度以上、72%程度以下、71%程度以下、70%程度以下であることがより好ましい。塩素含有率が62%以上、73%以下であるとは、樹脂中の塩素原子が、62〜73重量%であり、すなわち、塩素含有量が多いことを意味する。これにより、ポリマー粒子の凝集体及び結晶構造の存在による光散乱が小さく、透明性に優れ、さらに、成形性を向上させることができる。
なお、塩素含有率を変化させることにより、ポリ塩化ビニル系樹脂の屈折率を調節することができる。塩素含有率は、JIS K 7229に準拠した方法によって測定することができる。
また、本発明におけるポリ塩化ビニル系樹脂は、200℃、30分間、加熱下での発生塩化水素量が150ppm以下となるものであることが好ましい。成形時に炭素−炭素二重結合の生成を抑制し、光吸収を低減させるためである。
発生塩化水素量の測定方法は、以下の通りである。
先ず、ポリ塩化ビニル系樹脂1gを試験管に供給し、チューブ付き耐熱性ゴム栓で密閉し、200℃オイルバスに試験管を下から2/3浸漬して加熱する。試験管から発生するガスを、チューブを通して100mlのイオン交換水で20分間捕集する。捕集開始から20分後にイオン交換水のpHを測定し、捕集開始前のイオン交換水のpHとの差から塩化水素の発生量を算出する。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂の重合度は特に限定されないが、500以上1000以下が機械物性と成形性のバランスに優れているので好ましい。
本発明において光伝送体を構成するポリ塩化ビニル系樹脂は、異物を含まないことが好ましい。異物の除去方法は特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン等の有機溶剤に溶解した溶液を濾過後、脱溶媒することによる方法などが挙げられる。これらの方法はクリーンルーム内で行なうことが好ましい。濾過に用いるフィルターの材質としては、アルミナセラミックス、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられるが、濾過精度、耐薬品性などからアルミナセラミックスが好ましい。濾過は、主フィルターのみを1回以上通過させれば充分な効果が得られるが、多段濾過又は循環濾過を行なうことが好ましい。フィルターの細孔径は0.1μm以下であれば充分な効果が得られる。濾過速度と異物除去率について高い効果が得られることから、0.05μm程度の細孔径を有するフィルターを用いることが好ましい。脱溶剤の方法は、特に限定されず、噴霧乾燥法、脱揮口付押出機を用いる方法などが挙げられる。
また、本発明の光伝送体におけるコア層には、ポリ塩化ビニル系樹脂に加えて、後述するような、拡散可能な添加剤を混合することができる。添加剤は、屈折率が上述したポリ塩化ビニル系樹脂と異なるものであれば、内層又は外周層に、あるいはコア層又はクラッド層に、いかなるものを使用してもよい。
このような拡散可能な添加剤は、例えば、650〜780nmの波長の光の透過率が90%以上、好ましくは93%以上であり、同時に使用する透明な樹脂中で拡散することができる性質を有していることが重要である。ここで添加剤とは、光ファイバーの物性のひとつである、ポリ塩化ビニル系樹脂の結晶化度を低下させて粒子構造を消滅させ、光散乱を減少させるものを意味する。また添加剤は任意に屈折率を増減し得るものでもよい。
添加剤としては、例えば、アルキル基部分の炭素数が1〜8、好ましくは炭素数が1〜6であるポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸フェニル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸1−フェニルエチル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリクロロスチレン等が挙げられる。特に、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
また、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、塩素化ポリエチレン、塩素化パラフィン;リン酸トリフェニル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−2-エチルヘキシル等のリン酸エステル;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸エステル;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジイソオクチル等のアゼライン酸エステル;セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル;二塩基酸とグリコールとを重縮合させたものを基本構造とするポリマー又はオリゴマーを用いることができる。二塩基酸としてはセバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、フタル酸などが挙げられる。また、グリコールとしてはプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールなどが挙げられる。
さらに、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸イソトリデシル等のフタル酸エステル(特に、アルキルエステル);ピロメリット酸オクチルエステル等のピロメリット酸エステル(特に、アルキルエステル);トリメリット酸とアルコールとのエステル化反応で得られるエステル、すなわち、下記式(I)
Figure 2008250112
(式中、R1〜R3は、同一又は異なって、アルキル基を示す。)
で表わされるトリメリット酸エステル;旭電化製UL−6等の下記式(II)
Figure 2008250112
(式中、R4は、任意の官能基、xは1〜4の整数を示す。)
で表されるジペンタエリストールエステル等を用いてもよい。
ここで、R1〜R3のアルキル基としては、それぞれ異なっていてもよいが、3つが同じであることが好ましい。また、炭素数1〜12、さらに炭素数4〜10のアルキル基が好ましい。
また、R4としては、例えば、炭素数1〜6の低級アルキル基(メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル等)、
Figure 2008250112
等が例示される。なお、置換基R4は、xが2〜4の場合には、その数に応じて2〜4価の置換基となり得る。具体的には、xが2、R4が−(CH24−である化合物が挙げられる。
トリメリット酸エステルとしては、例えば、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ−2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリn−オクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸トリアルキルが挙げられる。また、トリメリット酸と複数種のアルコールとのエステルであってもよい。
なお、添加剤の候補としては、ジフェニルスルホン及びジフェニルスルホン誘導体、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド等の硫黄化合物も例示される。ジフェニルスルホン誘導体としては4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3',4,4'−テトラクロロジフェニルスルホン等が挙げられる。
添加剤としては、特に、ポリ塩化ビニル系樹脂に対して高い透明性を付与するという観点からは、高屈折率添加剤として硫黄化合物(例えば、フェニルスルホン系化合物、特に、ジフェニルスルホン、塩化ジフェニルスルホン)、リン酸エステル(特に、トリフェニルホスフェート)が、低屈折率添加剤としてトリメリット酸エステル、ジペンタエリストールエステル、フタル酸エステルが好ましい。これらは比較的屈折率が高い又は低いため(例えば、ジフェニルスルホン及びトリフェニルホスフェートの屈折率は1.630と高く、トリメリット酸エステルの屈折率は1.480〜1.490、ジペンタエリストールエステル(旭電化製UL−6)の屈折率は1.456、フタル酸エステルの屈折率は1.480〜1.490と低い)、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の屈折率を増減して、適当な値に調節することができるからである。
このような添加剤の添加は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物中に、50重量%未満とすることが適当である。ポリ塩化ビニル系樹脂の特性を優勢に維持するためである。
特に、硫黄化合物、リン酸エステル、トリメリット酸エステル及び/又はジペンタエリストールエステルをポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含有させる場合には、25重量%以下で含有させることが好ましい。25重量%以下とすることにより、添加剤の添加に起因するポリ塩化ビニル系樹脂組成物のガラス転移温度の過度の低下を防止することができ、光ファイバーの成形を容易にし、さらに、使用耐熱温度の低下を防止することができるからである。特に、ガラス転移温度が70℃未満であるか、ガラス転移温度を有しない化合物を添加するか、比較的分子量が小さい化合物(例えば、1000程度以下、好ましくは数百程度以下)を25重量%以下とすることにより、所望の特性には影響を与えず、添加剤による所望の効果を十分に発揮させることができる。また、必要な強度を確保することができる。
添加剤を配合する際、2種類以上の屈折率の異なる化合物を配合してもよい。この2種類以上の化合物の中に、ベースとなる樹脂組成物の屈折率と比較して、高屈折率の化合物及び低屈折率の化合物が含まれることが好ましい。このような高屈折率の化合物及び低屈折率の化合物を併用することにより、高屈折率の化合物のみ又は低屈折率の化合物のみを配合した場合と比較して、これと同じ屈折率差を得るために樹脂組成物に配合させる添加剤の添加量を相対的に少なくすることができる。このため、ガラス転移点が相対的に高くなり、これによって得られる光伝送体の耐熱性を向上させることができる。
本発明の光伝送体を構成するポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、その特長である耐酸性、耐アルカリ性、耐水性、電気絶縁性、難燃性、機械強度を損なわない範囲で、必要に応じて、配合剤、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤、滑剤、加工助剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤等を配合してもよい。これら配合剤は、塩化ビニル系樹脂を成形する際に使用されているものであれば、その種類は限定されず、それぞれ、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱安定剤としては、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。
安定化助剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。
滑剤としては、内部滑剤及び外部滑剤が挙げられる。内部滑剤は、熱成形加工時に溶融樹脂の流動粘度を低下し、摩擦発熱を防止する目的で添加される滑剤であり、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、エポキシ化大豆油、ビスアミド等が挙げられる。外部滑剤は、熱成形加工時に溶融樹脂と金型表面との滑り効果を高める目的で添加される滑剤であり、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス等が挙げられる。
加工助剤としては、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
耐熱向上剤としては、例えば、α−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系等の耐熱向上剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。
配合物とポリ塩化ビニル系樹脂組成物とを混合する方法は特に限定されず、例えば、ホットブレンド法、コールドブレンド法、溶液混合法等が挙げられる。
本発明のプラスチック製光伝送体におけるクラッド層は、コア層よりも屈折率の低いポリ塩化ビニル系樹脂組成物、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体のいずれか1種類以上の樹脂層からなる。ポリ塩化ビニル系樹脂以外の樹脂を用いる場合には、コア層を構成するポリ塩化ビニル系樹脂系樹脂と相溶性が良好であるものが好ましく、さらに、密着性が良好であるものがより好ましい。ここで、「クラッド層がコア層よりも屈折率が低い」とは、クラッド層及び/又はコア層に上述したような添加剤が含有される場合には、添加剤を含有した樹脂組成物によって形成されるクラッド層及び/又はコア層での屈折率の比較において、クラッド層がコア層よりも屈折率が低いことを意味する。なお、屈折率の調節方法は特に限定されず、上述したように、塩素含有率を変化させる方法、添加剤の選択、配合比率の変化等により行うことができる。
つまり、本発明の光伝送体は、屈折率分布を有することが好ましい。ここで、屈折率分布とは、通常、ファイバーの中心から半径方向に向かって屈折率が放物線に近い曲線で、あるいは一定幅で段階的に低下していることをいうが、ファイバーの中心から半径方向に向って、一旦屈折率が曲線的又は段階的に低下した後、曲線的又は段階的に増加してもよい。この場合、コア層とクラッド層の最外層とは、コア層の方がより屈折率が高いことが好ましいが、クラッド層の最外層がコア層よりも屈折率が高くなってもよい。
また、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法におけるクラッド層は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするものが好ましいが、上述したアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体を主成分とするもの又は配合するもの、さらにこれら樹脂に添加剤を添加した組成物を用いたものであってもよい。
クラッド層に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、コア層を形成するポリ塩化ビニル系樹脂組成物よりも屈折率が低いという点以外には、コア層を形成するポリ塩化ビニル系樹脂組成物と同様の樹脂・添加剤を使用することができる。
前記クラッド層に用いられるアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを単独又は共重合して得られるポリマーが挙げられる。アクリル系モノマーとしては、メチルメタアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。好ましくは、メチルメタアクリレートの単独又はその他アクリル系モノマーとの共重合体が用いられる。
アクリル系モノマーの単独又は共重合の重合方法は特に制限されず、一般に用いられる乳化重合法、懸濁重合法、バルク重合法などが選択される。重合時にアクリル系重合体を架橋するための多官能性モノマー等を用いてもよい。
クラッド層に用いられるフッ素系樹脂としては、フッ化ビニリデンモノマーを単独又は、その他のフッ素系モノマーとの共重合体が用いられる。その他のフッ素系モノマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロメチルメタアクリレート等が挙げられる。好ましくは、フッ化ビニリデンモノマーの単独重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体である。
フッ素系樹脂の重合方法としては特に限定されず、一般に用いられる乳化重合法、懸濁重合法、バルク重合法などが選択される。
本発明において、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を形成する方法は特に限定されない、つまり、屈折率分布を有する光伝送体を形成する方法は、当該分野で公知の方法を利用することができるが、特に、成形時に熱エネルギーがかからない成形方法、コアを押出成形した後に溶剤溶解した樹脂スポットを通して表面層を形成するディッピング法、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物をテトラヒドロフラン等の有機溶剤に溶解した溶液を作製し、その溶液をキャストすることにより成形する方法が、光吸収要因となる二重結合の生成を抑制するために好ましい。
また、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、ロール成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、キャスト法等の生産性に優れた従来公知の方法又はこれらを組み合わせた方法、具体的には、コア層と1層以上のクラッド層(例えば、添加剤の配合組成を変化させながら)との同時押出(共押出)成形法、コア層を予め、例えば、押出成形により形成した後に、表面に被覆層を形成する表面被覆法、ドーパント濃度の異なる2層以上のコア層を同時押出後にドーパントを拡散させ、最外層にインナークラッドを形成する方法、この方法にさらにアウタークラッドを同時押出又は被覆成形によって形成するダブルクラッド成形法等が挙げられる。なお、多層押出する場合、屈折率がベースとなる樹脂組成物よりも高い及び低い2種の化合物の混合物を用いて各層の総添加剤濃度をほぼ等しくすると、各層の溶融粘度をほぼ等しくできるので、各層界面の平滑性制御が容易となる。
特に、クラッド層(コアに接するクラッド層、以下、「インナークラッド層」と記す)よりもさらに屈折率の低い材料からなる層(以下、外側のクラッド層を「アウタークラッド層」と記す)で覆われたダブルクラッド構造とすることにより、曲げ損失を低減することができる。また、クラッド層(インナークラッド層)よりも屈折率の高い材料からなる層(アウタークラッド層)で覆われたダブルシェイプ構造とすることにより、帯域特性を向上させることができる。
なお、共押出は、複合溶融紡糸によりファイバーを溶融押出成形してもよいし、予めプリフォーム共押出により作成し、これを線引きしてファイバーとするいずれでもよい。また、表面被覆は、プリフォームに被覆する方法と、コアファイバーに被覆する方法のいずれでもよい。
コアファイバーの成形方法は、特に限定されないが、1層又は2層以上の多層押出法により1層又は同軸2層以上のプリフォームを作成して線引きする方法、1層又は同軸2層以上のファイバーを、紡糸ノズルを用いて複合溶融紡糸を行う方法等が挙げられる。なお、コアファイバーとして、コア層のみを成形してもよいが、コア層と同時に1層又は2層以上のクラッド層を成形してもよい。
また、本発明の第1の光伝送体の製造方法では、まず、ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも高く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで構成される内層と、ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも低く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで又は含まないで構成される外周層とからなる同軸多層構造体を形成する。
この同軸多層構造体は、上述したような共押出でプリフォームとして形成してもよいし、後述するような紡糸ノズルを用いてファイバーとして形成してもよい。
この同軸多層構造体に、熱処理を行うことによって、添加剤をこの構造体の周辺部又は中心部に向かって拡散させる。この際、添加剤を拡散させる条件(例えば、温度、時間、圧力、雰囲気組成等)を任意に調節することにより、添加剤を拡散させて連続的に屈折率が変化する領域をコア層として形成することができる。同時に、外周層のうちの最も外側には、上記の条件調節により、添加剤を拡散させる前の組成を保った未拡散の領域を残存させる。これにより、コア層に接する層を、クラッド層として形成することができる。なお、上述したようなダブルクラッド構造を形成する場合は、この未拡散の残存領域を、インナークラッド層とすることができる。
なお、同軸多層構造体が、共押出でプリフォームとして形成したもの等であれば、その後に、通常、線引き等が行われるが、以下に説明するような第2〜第6の製造方法における各工程を組み合わせてもよい。
このような方法により、中心から外周にかけて連続的に屈折率が低下する分布を有するGI化と、クラッド作成とを同時に行うことができるため、クラッド作成のための熱履歴が少なく、製造工程を簡略化することができる。
上述したような方法のほかに、上記添加剤を同軸多層構造体の最外周まで拡散させ、中心部から最外周まで連続した屈折率分布をもつコア層とした後、さらに屈折率の低い1層又は2層以上のクラッド層を任意の方法で成形してもよい。
本発明の第2及び第3の光伝送体の製造方法では、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて行う。コア層及びクラッド層の材料をそれぞれ加熱溶融させ、個々の流路から多層ダイ及び多層用紡糸ノズルへ注入する。このダイ及びノズルでコア材料を押出成形すると同時にその外周に1層又は2層以上の同心円状のクラッド材料を押出し、溶着一体化させることでファイバー又はプリフォームを形成することができる。
特に、クラッド層を形成する材料として、コア層を形成するポリ塩化ビニル系樹脂と成形温度領域の近い材料を用いることが、成形時の粘度差を小さくし、流量バランスをとる観点から有利である。この際、内側にポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率がこのポリ塩化ビニル系樹脂と異なり、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤を供給してもよい。この添加剤は1層にのみ配合してもよいし、配合量を変化させた複数層を設けてもよい。さらにコア層を2層以上設け、拡散処理を行い、この添加剤を拡散させてGI型光伝送体を作成することも可能である。なお、プリフォームを形成した後に、線引き等を行ってファイバーとして形成してもよい。
本発明の第4及び第5の光伝送体の製造方法では、予め作成したコアファイバー又はコアのプリフォームを被覆装置に供給し、押出法によりクラッド層を被覆する。この被覆工程は、コアファイバーの溶融紡糸又はプリフォームの作成工程、線引き工程と連続して行うことができる。
本発明の第6の光伝送体の製造方法では、成形したコアファイバーにクラッド材を塗布・付着させてクラッド層を得る。コア層及びクラッド層の材料の密着強度を強固にするために、コアファイバーの外表面に、プラズマ処理等の表面極性を向上させるための前処理を行ってもよい。
塗布される液体は特に限定されないが、クラッド材のモノマーやクラッド材を溶剤に溶解した液が好ましい。溶剤は特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂ではTHF等、フッ素系樹脂であるフッ化ビニリデンではジメチルアセトアミド等が挙げられる。塗布方法は特に限定されないが、成形したコアファイバーに噴霧するか、あるいはコーティング槽又はコーティングダイス等に成形したコアファイバーを順次通過させて、表面にコーティング液を塗布する方法が挙げられる。
次いで、重合又は溶剤乾燥を経て、クラッド層を形成することができる。重合は特に限定されないが、熱処理や紫外線等の放射線照射が挙げられる。この工程を数回繰り返してクラッド層を形成してもよい。このような製造方法により、簡便な装置を用いて実施することができるため、有利である。
なお、本発明の第1〜第6の光伝送体の製造方法においては、溶融押出成形、線引き、溶融被覆等の工程は、当該分野で公知の方法及び条件を利用して、適宜調整して行うことができる。
また、これらの方法においては、最終的に得られる光伝送体の太さ、コア層及びクラッド層の外径、プリフォームにおけるコア層及びクラッド層の外径、コアファイバーの外径等は特に限定されず、得ようとする光伝送体の性能等に応じて適宜調整することができる。
このように、本発明の第2〜第6の光伝送体の製造方法は、上述したように生産性に長けており、ステップインデックス(SI)型光伝送体のクラッド層又はGI型光伝送体のシングルクラッド構造およびダブルクラッド構造及びダブルシェイプ構造のインナークラッド層又はアウタークラッド層の製造に特に有利である。
本発明の光伝送体及び本発明の製造方法で得られた光伝送体は、その外周を樹脂層で被覆することにより、光伝送体ケーブルを構成することができる。
光伝送体の外周を被覆する樹脂としては、特に限定されないが、光伝送体ケーブルに必要な難燃性、柔軟性、耐薬品性、光伝送体等の密着性、自動車用途などでは耐熱性等を満足するものを選択することが好ましい。例えば、塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩ビ−エチレン−酢酸ビニル共重合体等、上述したアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体等を主成分とするもの等が挙げられる。また、さらにこれら樹脂に上述した添加剤を添加した組成物を用いたものであってもよい。
光伝送体の外周に樹脂を被覆する方法としては、特に限定されず、光ファイバー成形後に表層に被覆押出する方法等が挙げられる。
本発明の光伝送体及びその製造方法の実施態様を以下に詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
(実施例1)
塩素含有率63.0%、重合度700の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂に、ジフェニルスルホン20重量%を配合し、内径18mmのコア層に、ポリメタクリル酸メチルを厚み1mmのクラッド層となるように190℃に設定された2台の単軸押出機及び2層金型を用いて成形して直径が20mmのプリフォームを得た。
得られたプリフォームを、円筒型加熱機に供給し、加熱延伸して直径0.6mmの光ファイバーとした後に、塩素化ポリエチレン樹脂を0.5mm厚で被覆して、各層の接着性のよい光ファイバーケーブルを得た。
評価として曲げ損失を測定したところ、0.18dBであった。
なお、曲げ損失はJIS C 6861に準じ、φ50mmの円筒に6回巻きつけ、10サイクル測定した平均値を示す。
(実施例2)
塩素含有率67.7%、重合度700の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂に、ジクロロジフェニルスルホンを15重量%配合した樹脂組成物を内層に、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にトリメリット酸トリ-2-エチルヘキシルを2重量%配合した樹脂組成物を外周層となるように2台の単軸押出機及び2層紡糸ノズルを用いて成形し、内層の直径が0.4mm、外周層の外径が0.9mmの同軸2層構造の光ファイバーを得た。
得られた光ファイバーを、金属製のリールに巻き取り、温度制御可能な槽内に設置し、150℃で10分拡散処理を行ったところ、中心軸部分から周辺部に向かって屈折率が連続的に低下する最適屈折率分布を有するコア層の直径が0.5mmであり、また最外周に、厚み0.2mmの前記添加剤の未拡散層(クラッド層)を有するGI型光ファイバーを得た。
得られた光ファイバーの曲げ損失を測定したところ0.2dBであった。
(実施例3)
塩素含有率66.5%、重合度550の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にジフェニルスルホンを11重量%配合した樹脂組成物を内層に、透明かつ拡散可能な添加剤含まない前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂を外周層になるよう2台の単軸押出機及び2層金型を用いて成形し、直径が20mmの同軸2層構造の光ファイバーのプリフォームを得た。その後、プリフォームが冷却される前に2軸押出機と被覆金型を用いて、厚さ3mmのアウタークラッド層になるようにフッ化ビニリデンを被覆し、外径23mmのプリフォームを得た。得られたプリフォームを円筒型加熱機に供給し、加熱延伸して、直径1.0mmの光ファイバーを作製した。
得られた光ファイバーを、金属製のリールに巻き取り、温度制御可能な槽内に設置した。140℃で30分保持した後、光ファイバーを取り出した。
得られたファイバーは、中心軸部分から周辺部にかけて屈折率が連続的に低下する最適屈折率分布を有し、0.15mmの前記添加剤の未拡散層(インナークラッド層)と厚み0.1mmアウタークラッド層をもったものとなった。
得られた光ファイバーの曲げ損失を測定したところ0.15dBであった。
(実施例4)
塩素含有率67.7%、重合度700の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にジクロロジフェニルスルホンを15重量%配合した樹脂組成物を内層に、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にトリメリット酸トリ-2-エチルヘキシルを2重量%配合した樹脂組成物を外周層となるように2台の単軸押出機及び2層金型を用いて成形し、直径が20mmの同軸2層構造の光ファイバーのプリフォームを得た。得られたプリフォームを、円筒型加熱機に供給し、加熱延伸して直径0.5mmの光ファイバーを作製した。
得られた光ファイバーを、金属製のリールに巻き取り、温度制御可能な槽内に設置し、150℃で5分拡散処理を行い、中心軸部分から周辺部にかけて屈折率が連続的に低下する最適屈折率分布を有し、外周には厚み0.05mmの前記添加剤の未拡散層(インナークラッド層)をもつ外径0.5mmのGI型光ファイバーを得た。
ポリメタクリル酸メチル10重量%を含むテトラヒドロフラン溶液を調製し、コーティングダイスに満たし、得られたファイバーを直径1mm挿通孔に通すことにより外径0.8mmとなるように塗布し、続いて減圧しながら加熱した中空乾燥管に通して、テトラヒドロフランを脱溶剤し、各層の接着性のよいダブルクラッド構造を有する光ファイバーを得た。
得られた光ファイバーの曲げ損失を測定したところ0.18dBであった。
(比較例1)
塩素含有率63.0%、重合度700の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にジフェニルスルホン20重量%配合し、内径18mmのコア層に、スチレン−アクリロニトリル共重合体を厚み1mmのクラッド層となるように190℃に設定された2台の単軸押出機及び2層金型を用いて成形して直径が20mmのプリフォームを得た。得られたプリフォームを、円筒型加熱機に供給し、加熱延伸して直径0.6mmの光ファイバーとした。
得られた光ファイバーの曲げ損失を測定したところ3.0dBであった。
スチレン−アクリロニトリル共重合体は、コア材料よりも屈折率が高いので、光がコアに閉じ込められず発散した。
(比較例2)
塩素含有率67.7%、重合度700の塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にジクロロジフェニルスルホンを15重量%配合した樹脂組成物を内層に、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂にトリメリット酸トリ-2-エチルヘキシルを2重量%配合した樹脂組成物を外周層となるように2台の単軸押出機及び2層金型を用いて成形し、直径が20mmの同軸2層構造の光ファイバーのプリフォームを得た。得られた光ファイバーを、金属製のリールに巻き取り、温度制御可能な槽内に設置し、150℃で10分拡散処理を行い、中心軸部分から周辺部に向かって屈折率が連続的に低下する最適屈折率分布を有し、外周には厚み0.1mmの前記添加剤の未拡散層(インナークラッド層)をもつ外径0.6mmのGI型光ファイバーを得た。得られたファイバーにポリプロピレンを厚さ0.2mmになるように被覆し、ダブルクラッド構造の光ファイバーとした。得られた光ファイバーの曲げ損失を測定したところ3.0dBであった。得られたファイバーはインナークラッド層とアウタークラッド層の接着が悪く、界面不整に基づく散乱損失が誘起された。
本発明は、塩化ビニル樹脂を主成分として使用しているため、難燃性、低吸湿性に優れ、高い透明性を有する光ファイバー、光ファイバーケーブルの構成要素として有用である。

Claims (8)

  1. コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有するプラスチック製光伝送体であって、前記コア層がポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、前記クラッド層がコア層よりも屈折率の低いポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体の1種類以上の樹脂層からなることを特徴とするプラスチック製光伝送体。
  2. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有するポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法であって、
    ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも高く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで構成される内層と、ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも低く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで又は含まないで構成される外周層とからなる同軸多層構造体を形成し、
    前記添加剤を、同軸多層構造体の周辺部又は中心部に向かって拡散させて連続的に屈折率が変化するコア層を形成するとともに、前記外周層に前記添加剤を拡散させる前の組成を保持する領域を残存させ、これをコア層に接するクラッド層とすることを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
  3. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有するポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法であって、
    ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも高く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで構成される内層と、ポリ塩化ビニル系樹脂と、屈折率が該ポリ塩化ビニル系樹脂よりも低く、透明かつ拡散可能な1種以上の添加剤とを含んで又は含まないで構成される外周層とからなる同軸多層構造体を形成し、
    前記添加剤を、同軸多層構造体の周辺部又は中心部に向かって拡散させて連続的に屈折率が変化するコア層を形成し、
    該同軸多層構造体の外側に前記添加剤を拡散させた後の外周層よりも屈折率の低い材料層を形成し、これをコア層に接するクラッド層とすることを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
  4. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体を、溶融押出機と紡糸ノズルとを用いて製造する方法であって、
    複数の原料供給流路を有し、同軸2層構造又は同軸3層以上の構造を成形する多層用紡糸ノズルを用い、コア層とクラッド層とを同時に溶融押出成形して光伝送体を得ることを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
  5. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体を製造する方法であって、
    溶融押出機と多層ダイとを用いてコア層とクラッド層とを同時に成形し、同軸2層又は同軸3層以上の構造を有するプリフォームを作成し、該プリフォームを線引きして光伝送体を得ることを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
  6. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体の製造方法であって、
    予め成形されたコアファイバー又はコア層とインナークラッドとを有するファイバーの外周に、溶融押出機と被覆ダイとを用いて1層又は2層以上のクラッド樹脂を溶融被覆してクラッド層を形成することを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
  7. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体を製造する方法であって、
    コア層又はコア層とインナークラッドとを有するプリフォームを作成し、
    該プリフォームの外周に溶融押出機と被覆ダイとを用いてクラッド樹脂を溶融被覆して、同軸2層又は同軸3層以上の構造を有するプリフォームを作成し、
    該プリフォームを線引きして光伝送体を得ることを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
  8. ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とし、コア層の外周に1層又は2層以上のクラッド層を有する光伝送体の製造方法であって、
    予め成形されたコアファイバー又はコア層とインナークラッドとを有するファイバーの外周にクラッド層となる材料のモノマー又は溶解液を塗布し、重合又は溶媒乾燥を経て、1層又は2層以上のクラッド層を形成することを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂製光伝送体の製造方法。
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