図1に示すように、外観検査システム10は、検査トレイ16に配列されたレンズ17の表面や内部に生じた欠陥を検査し、この検査の結果を表示して、検査の結果に応じて選別させる外観検査システム10である。
外観検査システム10で扱うレンズ17は、例えば、ガラス材料を金型で加熱及び加圧して成形され、反射防止コーティングが施されたレンズであり、外観検査システム10を用いない場合には、例えば実体顕微鏡を用いた外観目視検査が行われ、この外観目視検査の結果に応じて、検査と同時に選別される。
この外観検査システム10は、サーバ21、外観検査装置22、再検査装置23、検査結果表示装置24、トレイ保管庫26などから構成される。
トレイ保管庫26は、外観検査装置22による外観検査を終えた検査トレイ16(詳細は後述)を、レンズ17を配置したままの状態で保管する場所である。このトレイ保管庫26は、検査結果表示装置24によって、レンズ17の外観検査の結果を表示して良品と不良品とに選別されるまでの間に、検査トレイ16及びこれに配置されたレンズ17を保管する場所である。
[サーバ]
サーバ21は、外観検査装置22で得られるレンズ17の外観検査の評価や、外観検査に用いた画像などのデータをデータベース28で管理し、再検査装置23や検査結果表示装置24などから要求されたときに、これらのデータのうち必要とされているものを出力する。すなわち、サーバ21は、外観検査システム10で使用されるデータを統括的に管理する。
[外観検査装置]
図2に示すように、外観検査装置22は、検査トレイ16に並べて配置されたレンズ17の表面や内部に生じた欠陥を検査する外観検査装置である。
検査トレイ16には、レンズ17を配置する座繰り穴31が格子状に並べて設けられている。また、これらの座繰り穴31の中央には、座繰り穴31と比較して小さな径の貫通孔32がそれぞれ設けられている。また、貫通孔32は、下方から照射される照明光を効率よくレンズ17に導くために、下方に向かうほど直径が大きくなるように設けられている。
さらに、検査トレイ16は、レンズ17の製造量に応じて同様のものが複数用意されているが、検査トレイ16には各々を識別するためのID33(図3参照)が付与されている。このID33は例えばバーコードであり、検査位置に移動されたときに読み取られ、貫通孔32に配置したレンズ17の管理番号などとともに管理される。
外観検査装置22は、XYステージ34、IDスキャナ36、CCDエリアセンサ37、透過型暗視野照明41(第1照明)、反射型暗視野照明42(第2照明)、透過型明視野照明43(第3照明)、反射型明視野照明44(第4照明)などから構成される。
XYステージ34は、セットされた検査トレイ16ごとレンズ17を移動させ、検査を実行するレンズ17をCCDエリアセンサ37の直下の検査位置に正確に移動させる。このXYステージ34には、レンズ17が配置された検査トレイ16がセットされる中空ステージが設けられている。この中空ステージは水平に移動自在に設けられているとともに、中空な枠状に形成されている。したがって、セットされた検査トレイ16の中央部分は下方に露出されており、検査トレイ16に配置されたレンズ17は、下方からであっても照明される。また、XYステージ34は、検査トレイ16が交換されるごとに、検査トレイ16をIDスキャン位置へ移動させる。
CCDエリアセンサ37は、下方に向けて配置されており、XYステージ34によって検査位置に移動されたレンズ17、すなわちCCDエリアセンサ37に正対して配置されたレンズ17を様々な照明条件下で撮影する。CCDエリアセンサ37によって撮影されたレンズ17の画像は、検査トレイ16のID33やレンズ17が配置されている検査トレイ16内の座標とともに管理される。
透過型暗視野照明41(第1照明手段)は、検査位置にあるレンズ17に対してCCDエリアセンサ37の反対側に配置され、レンズ17に対して一様に照明光を照射する平面状の発光面46を備える。この発光面46は全面が発光するわけではなく、発光面46の中央部分には無発光部47が設けられている。透過型暗視野照明41から照射される照明光は無発光部47を除いた発光面46の全体から一様に照射される。また、透過型暗視野照明41からの照明光がレンズ17を透過した後にCCDエリアセンサ37には入射しないように、無発光部47の大きさや形状が定められる。なお、透過型暗視野照明41は、多数配列されたLED上に拡散板を設けた構成となっており、無発光部47の大きさや形状などは容易に変更される。
また、透過型暗視野照明41は、1軸ステージ48上に設けられており、レンズ17に照明光を照射する使用位置と、この使用位置から退避された不使用位置との間で自在に移動される。この透過型暗視野照明41を移動させる1軸ステージ48は、XYステージ34やCCDエリアセンサ37の固定設備などとは独立して設けられており、CCDエリアセンサ37と検査位置にあるレンズ17との相対的な位置関係を変えることなく、透過型暗視野照明41を使用位置と不使用位置とに自在に移動させる。
反射型暗視野照明42(第2照明手段)は、検査位置にあるレンズ17に対してCCDエリアセンサ37と同じ側に配置される。この反射型暗視野照明42は、検査位置にあるレンズ17の周囲を上方から取り囲むようにして設けられた円筒状の照明であり、内面側が発光面となってレンズに対して一様に照明光を照射する。この反射型暗視野照明42照射される照明光は、後述する反射型明視野照明44と比較して、検査トレイ16の表面に近い角度からレンズ17に照射される。すなわち、照明光がレンズ17の正常な表面に反射されてCCDエリアセンサ37に入射する量が少なくなるように、反射型暗視野照明42の照明角度は調節されている。
透過型明視野照明43(第3照明手段)は、検査位置にあるレンズ17に対してCCDエリアセンサ37の反対側に配置され、レンズ17に対して一様に照明光を照射する平面状の発光面49を備える。前述の透過型暗視野照明41の発光面46とは異なり、この透過型明視野照明43の発光面49は全面が一様に発光する。また透過型明視野照明43の発光面49の大きさは、少なくとも前述の透過型暗視野照明41の無発光部47の大きさよりも大きい。すなわち、透過型明視野照明43から照射される照明光は、レンズ17を透過してCCDエリアセンサ37へ入射する。
反射型明視野照明44(第4照明手段)は、検査位置にあるレンズ17に対してCCDエリアセンサ37と同じ側に配置され、レンズ17の上方から一様に照明光を照射する。この反射型明視野照明44から照射される照明光は、前述の反射型暗視野照明42と比較して、検査トレイ16の表面に正対する方向から照射される。すなわち、レンズ17の正常な表面に反射された照明光の大部分がCCDエリアセンサ37へと入射するように、反射型明視野照明44の照明角度は調節されている。
マスク板52は、透過型暗視野照明41及び透過型明視野照明43と、XYステージ34との間に設けられる。また、マスク板52には、CCDエリアセンサ37の正面に、検査する対象のレンズ17だけが露出される開口が設けられており、透過型暗視野照明41や透過型明視野照明43から発せられる光は、この開口を通して検査するレンズ17に照射される。また、マスク板52とXYステージとの距離や、マスク板52の開口の大きさは、いわゆるケラレが生じない大きさに定められる。一方、マスク板52は、検査するレンズ17の周囲に配列された他のレンズ17に照射される透過型暗視野照明41や透過型明視野照明43からの光を遮る。さらに、マスク板52の表面は反射防止処理が施されており、透過型暗視野照明41や透過型明視野照明43からの光が乱雑な反射を繰り返して、検査するレンズ17に入射することを防ぐ。
マスク板53は、反射型暗視野照明42とXYステージ34との間に設けられる。また、マスク板53には、CCDエリアセンサ37の正面に、検査する対象のレンズ17だけが露出される開口が設けられており、反射型暗視野照明42や反射型明視野照明44から発せられる光は、この開口を通して検査するレンズ17に照射される。また、マスク板53とXYステージとの距離や、マスク板53の開口の大きさは、いわゆるケラレが生じない大きさに定められる。一方、マスク板53は、検査するレンズ17の周囲に配列された他のレンズ17に照射される反射型暗視野照明42や反射型明視野照明44からの光を遮る。さらに、マスク板53の表面は反射防止処理が施されており、反射型暗視野照明42や反射型明視野照明44からの光が乱雑な反射を繰り返して、検査するレンズ17に入射することを防ぐ。
図3に示すように、外観検査装置22は、制御部56、基本画像処理部57、リファレンス画像作成部58、差分画像作成部59、評価部61、RAM62、ROM63、データ通信部64などから構成される。
制御部56は、データバス66を介して外観検査装置22の各部を統括的に制御する。また、制御部56はROM63に記憶された制御プログラムを読み出し、これにしたがってこのような外観検査装置22の各部の制御を行う。例えば、制御部56は、前述のXYステージ34、IDスキャナ36、1軸ステージ48、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44、CCDエリアセンサ37を、外観検査装置22の制御プログラムにしたがって、それぞれに対応するドライバを用いて制御する。また、例えば、制御部56は、XYステージ34を移動させた量などから検査するレンズ17の検査トレイ16内での位置を特定し、これをRAM62に記憶する。
IDスキャナ36は、IDスキャン位置に移動された検査トレイ16のID33を読み取り、サーバ21に構築されたデータベース28に登録する。データベース28に登録されたID33は、各々のレンズ17の検査に用いる画像や検査結果などとともに管理される。
CCDエリアセンサ37は、ズームレンズ,フォーカスレンズ,絞りなどからなる撮像レンズと、この撮像レンズの背後に配置されたCCDなどから構成される。CCDエリアセンサ37は、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44のうち何れか1つによって照明された状態で、検査位置にあるレンズ17を撮像する。このとき、検査対象のレンズ17からの光は、撮像レンズによってCCDの受光面に結像され、CCDの各画素の受光量に比例したアナログの撮像信号へと光電変換される。
なお、撮像レンズのズームやフォーカス、絞りの開口面積、CCDの電子シャッタ速度などは、検査するレンズ17の形状などに応じて予め定められ、同種のレンズ17を撮像する際には同じ条件で撮像が行われる。
基本画像処理部57は、CCDエリアセンサ37から出力されるアナログの撮像信号からノイズを除去するとともに、信号を増幅し、アナログの撮像信号をデジタルな画像データへと変換する。こうしてCCDエリアセンサ37から得られたデジタルな画像データは、元画像としてRAM62に一時的に記憶される。
以下では透過型暗視野照明41によって照明されたレンズ17の元画像を第1元画像67と称する。同様に、反射型暗視野照明42によって照明されたレンズ17の元画像を第2元画像68、透過型明視野照明43によって照明されたレンズ17の元画像を第3元画像69、反射型明視野照明44によって照明されたレンズ17の元画像を第4元画像70とそれぞれ称する。
リファレンス画像作成部58は、外観検査装置22又は目視検査によって良品と判定されたレンズ(以下、良品レンズ)を撮像して得られた元画像に基づいて良品の基準となるリファレンス画像を作成する。例えば、複数の良品レンズを透過型暗視野照明41によって照明し、それぞれの第1元画像が得られると、リファレンス画像作成部58は、これらの第1元画像の各画素ごとの輝度を平均する。そして、良品レンズの第1元画像の平均輝度を各画素の輝度とした第1平均輝度画像を作成する。また、同時に、リファレンス画像作成部58は、良品レンズの第1元画像67から各々の画素ごとに標準偏差を算出し、この標準偏差を各画素の輝度データとした第1標準偏差画像を作成する。さらに、リファレンス画像作成部58は、得られた第1平均輝度画像と第1標準偏差画像とから、透過型暗視野照明41で照明しながら撮影する場合の良品の基準として用いる第1リファレンス画像71を作成し、RAM62に記憶する。この第1リファレンス画像71は、例えば、検査するレンズの形状などの特徴に応じて予め定められた数をαとするとき、第1平均輝度画像に第1標準偏差画像のα倍を対応する画素ごとに加算してつくられる。
同時に、リファレンス画像作成部58は、複数の良品レンズの第3元画像69を用いて、第3平均輝度画像と第3標準偏差画像とを作成し、これらに基づいて透過型明視野照明43で照明しながら撮影する場合の良品の基準として用いる第3リファレンス画像73を作り、RAM62に記憶する。
一方、検査するレンズ17の第2元画像68が取得されると、リファレンス画像作成部58は、第2元画像68のある画素(注目画素と称する)に対して、この注目画素の輝度データと、注目がその周囲にある所定範囲の画素の輝度データとを平均し、局所平均輝度データを算出する。この局所平均輝度データは第2元画像68の全ての画素について算出される。そして、リファレンス画像作成部58は、この局所平均輝度データを各画素の輝度データとする第2局所平均画像を、第2リファレンス画像72としてRAM62に一時的に記憶する。
同様に、リファレンス画像作成部58は、検査するレンズ17の第4元画像70が取得されると、この第4元画像70から、第4局所平均画像を作成し、これを第4リファレンス画像74として、RAM62に一時的に記憶する。
なお、第1リファレンス画像71及び第3リファレンス画像73は、レンズの検査が開始される際に1度行われ、以降の検査には同じリファレンス画像71,73が用いられる。一方、第2リファレンス画像72及び第4リファレンス画像74は、検査するレンズ17のそれぞれについて作成される。
差分画像作成部59は、RAM62から検査するレンズ17の第1元画像67と第1リファレンス画像71とを読み出し、各画素についてこれらの差を算出して、各画素がこの差と同じ値の第1差分画像76を作成し、RAM62に記憶する。同様にして、差分画像作成部59は、第2元画像68から第2リファレンス画像72を差し引いて第2差分画像77を、第3元画像から第3リファレンス画像73を差し引いて第3差分画像78を、第4元画像から第4リファレンス画像74を差し引いて第4差分画像79を、それぞれ作成し、RAM62に記憶する。
上述のように差分画像作成部59が第1差分画像76を作成する際に、第1元画像67に写されたレンズの中心と第1リファレンス画像71のレンズの中心とは一般に一致しない。しかし、レンズ17を撮影すると、レンズ17の表面の形状に応じて、元画像に写されたレンズ17の内部に照明が写り込む。また、リファレンス画像に写されたレンズの内部にも同様にして照明が写り込む。差分画像作成部59は、このような、レンズ17の表面の形状に応じた照明の写りこみを利用して、元画像及びリファレンス画像にそれぞれ写されたレンズの中心を算出し、これを中心として第1差分画像76を作成する。一方、透過型明視野照明43で照明した場合の第3元画像69及び第3リファレンス画像73の場合には、全体が明るく写されるため、こうした照明の写りこみを利用したレンズの中心位置の算出,同定はしない。しかし、このようにレンズの全体が明るく写しだされる場合には、レンズの表面の形状に応じた輝度分布がある。したがって、第3差分画像78を作製する際に、差分画像作成部59は、レンズ17の表面の形状に応じた輝度分布に基づいて、第3元画像に写しだされたレンズ17の中心を算出する。
評価部61は、差分画像の各画素ごとに予め定められた閾値と比較して、レンズ17の良否を評価する。例えば、評価部61は、第1差分画像の各画素の値を、予め定められた基準値と比較し、この基準値を超える画素の総数を計数し、欠陥面積S1とする。ここで用いられる基準値は、予め定められ、RAM62に記憶されている。そして、評価部61は、こうして得られた欠陥面積を、予め設定されており、RAM62に記憶された第1閾値と比較する。ここで用いる第1閾値は、上限値U1と下限値L1とからなる。
すなわち、第1閾値81は、範囲を定める閾値の組み合わせであり、検査開始前に予め定められている。この第1閾値81の値は、レンズ17の不良品率など、検査の結果などに応じて定められ、上限値U1,下限値L1のそれぞれについて別個に独立して定められる。こうした閾値の調節は、以下の第2〜第4閾値にも共通であり、第1〜第4閾値はそれぞれ独立に、かつ、各々の閾値の上限値,下限値についてそれぞれ独立に決定される。
欠陥面積S1が第1閾値の下限値よりも小さい場合(S1<L1)に、評価部61はレンズ17を良と判定する。一方、欠陥面積が第1閾値の上限値よりも大きい場合(S1>U1)に、評価部61はレンズ17を不良と判定する。そして、欠陥面積S1が第1閾値81の下限値L1以上の大きさで、上限値U1以下の大きさの場合(L1≦S1≦U1)に、評価部61はレンズ17を要再検査と判定する。こうして、第1差分画像76と第1閾値81との比較から得られたレンズ17の判定は、第1判定結果としてRAM62に記憶される。
同様にして、評価部61は、第2差分画像の欠陥面積S2を計数し、これを第2閾値82(上限値U2,下限値L2)と比較することで、レンズ17を良,不良,要再検査の何れかに判定する。第2差分画像77と第2閾値82との比較に基づいて得られたレンズ17の判定結果は、第2判定結果としてRAM62に記憶される。
また同様に、評価部61は、第3差分画像の欠陥面積S3を計数し、これを第3閾値83(上限値U3,下限値L3)と比較することで、レンズ17を良,不良,要再検査の何れかに判定する。第3差分画像78と第3閾値83との比較に基づいて得られたレンズ17の判定結果は、第3判定結果としてRAM62に記憶される。
さらに同様にして、評価部61は、第4差分画像の欠陥面積S4を計数し、これを第4閾値84(上限値U4,下限値L4)と比較することで、レンズ17を良,不良,再検査の何れかに判定する。第4差分画像79と第4閾値84との比較に基づいて得られたレンズ17の判定結果は、第4判定結果としてRAM62に記憶される。
そして、評価部61は、上述の第1〜第4判定結果に基づいてレンズ17の最終的な評価を決定する。すなわち、第1〜第4判定結果の中に不良判定が含まれている場合には、評価部61はレンズ17を不良品と評価する。一方、レンズ17が不良品でない場合において、第1〜第4判定結果の中に要再検査が含まれている場合には、評価部61はレンズ17を要再検査品と評価する。そして、不良品及び要再検査品でない場合に、評価部61はレンズ17を良品と評価する。
また、評価部61によるレンズ17の評価は、検査トレイ16のID33、検査トレイ16内での位置、評価する際に用いた第1〜第4差分画像などとともに関連付けられて、サーバ21のデータベースに登録される。
RAM62は、作業用のメモリであり、検査トレイ16のID33,検査するレンズ17の検査トレイ16内での位置,元画像,リファレンス画像,差分画像,閾値,基準値などが記憶される。また、ROM63は、外観検査装置22の各種設定や、制御プログラム、各種ドライバなどが記憶されるメモリである。
データ通信部64は、外観検査装置22の外部に設けられたサーバ21と外観検査装置22とをLANなどで接続する。したがって、データ通信部64を介して、レンズ17の評価は検査トレイ16のID33、検査トレイ16内でのレンズ17の位置、評価に用いられた第1〜第4元画像などとともにサーバ21に構築されたデータベース28に登録される。
以下、上述のように構成される外観検査装置22の作用を説明する。図4に示すように、検査するレンズ17が配置された検査トレイ16が外観検査装置22にセットされると、XYステージ34によって検査トレイ16はIDスキャン位置に移動され、IDスキャナ36によって検査トレイ16のIDが読み取られる。そして、検査するレンズ17がCCDエリアセンサ37の直下に移動され、レンズ17の検査が開始される。
まず、透過型暗視野照明41が検査するレンズ17の直下に移動され、この透過型暗視野照明41によって照明された状態で検査するレンズ17の画像(第1元画像)が取得される。この第1元画像と第1リファレンス画像71とから第1差分画像76がつくられる。そして、この第1差分画像76に基づいて、レンズ17の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第1判定結果)。
こうして第1判定結果が得られると、外観検査装置22は反射型暗視野照明42に照明を切り替え、レンズ17の画像(第2元画像)が取得される。この第2元画像と第2リファレンス画像72とから第2差分画像77がつくられる。そして、第2差分画像77に基づいて、レンズ17の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第2判定結果)。
さらに、第2判定結果が得られると、外観検査装置22は、透過型明視野照明43に照明を切り替える。すなわち、1軸ステージ48が駆動され、透過型暗視野照明41はレンズ17の直下から退避し、透過型明視野照明43がレンズ17の直下に移動される。そして、外観検査装置22は、透過型明視野照明43でレンズ17を照明しながら、レンズ17の画像(第3元画像)が取得される。この第3元画像と第3リファレンス画像73とから第3差分画像78がつくられる。そして、第3差分画像78に基づいて、レンズ17の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第3判定結果)。
第3判定結果が得られると、外観検査装置22は、反射型明視野照明44に照明を切り替え、第4元画像を取得する。そして、第4元画像と第4リファレンス画像74とから第4差分画像79がつくられる。そして、第4差分画像に基づいて、レンズ17の良否が、良,不良,要再検査の何れかに判定される(第4判定結果)。なお、反射型明視野照明44で照明しながらレンズ17を撮影する場合、CCDエリアセンサ37に正対する位置には透過型暗視野照明41が配置される。
こうして第1〜第4判定結果が揃うと、これらの判定結果に基づいて外観検査装置22はレンズ17の評価を決定する。このとき、第1〜第4判定結果の中に一つでも不良判定が含まれていれば、レンズ17は不良品であると評価される。また、第1〜第4判定結果の中に不良判定が含まれておらず、要再検査判定が含まれている場合には、レンズ17は再検査品であると評価される。一方、第1〜第4判定結果の中に、不良判定及び要再検査判定がともに含まれていない場合に、すなわち、第1〜第4判定結果が全て良判定の場合に、レンズ17は良品と評価される。このレンズ17の評価は、検査トレイ16のIDや検査トレイ内での位置、検査に用いた差分画像などとともに、検査を管理するサーバ21に記憶される。
このように1個のレンズ17の評価が定まると、XYステージ34が移動され、他のレンズに対して上述と同様の検査が行われる。
また、外観検査装置22によって、検査トレイ16に配置された全てのレンズ17が良品、不良品、再検査品の何れかに評価されると、検査トレイ16は、トレイ保管庫26に移動される。
また、外観検査装置22によって検査されたレンズ17のうち、再検査品と評価されたレンズ17は、後述する再検査装置23によって、別途、再検査が実施され、最終的に良品又は不良品の何れかに分類される。
また、上述のように、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44をそれぞれ用いて、検査するレンズ17の画像を得る場合、各々の照明ごとに精度良く評価することができる欠陥の種類が異なる。例えば、図5に示すように、出荷直前のレンズ17には、キズ91、ブツ92、ヨゴレ93、カケ96、コート抜け103、アワ104などの様々な欠陥が生じているおそれがある。当然ながら、こうした様々な欠陥は、発生原因や特徴がそれぞれ異なる。
キズ91はレンズ17の表面に生じた線状の傷であり、ブツ92はレンズ17の表面に生じる点状の傷である。ヨゴレ93は、レンズ17の表面に範囲に広がって付着した汚れである。また、カケ96はレンズ17の周縁部などが欠け落ちてしまったできた形状の欠陥である。コート抜け103は反射防止コーティングの欠陥であり、コーティング層にあいた穴である。また、アワ104は、成形時に混入した気泡などが主原因でレンズ17内部や表面に生じ、他の正常部分と屈折率が異なる欠陥である。
こうした欠陥が生じたレンズ17を、透過型暗視野照明41で照明して撮影し、検査する場合には、キズ91、ブツ92が精度良く評価される。例えば、図6に示すように、第1元画像67には、キズ91、ブツ92、ヨゴレ93、アワ104が、視覚的にも容易に認められる。一方、カケ96、コート抜け103は、位置や角度、欠陥の程度などによっては認識され難いこともある。このことから、第1差分画像76の欠陥面積S1と比較される第1閾値81は、キズ91、ブツ92を検出するために最適な値が選ばれる。なお、ヨゴレ93は反射型暗視野照明42による第2元画像68でさらに明確に認識されるから、後述するように第2差分画像77に基づいて評価される。また、アワ104についても、第1元画像67で精度良く認識されるが、これと同等以上に精度良く第2元画像68で認識されるから、第2差分画像77に基づいて評価される。
なお、第1元画像67には、レンズ17の表面の形状に応じて生じた照明の写り込み106があるが、第1差分画像76においては、この照明の写り込み106は欠陥と比較して十分に輝度が小さい。したがって、自動的に行われる欠陥の検査には大きな影響は与えず、また、この照明の写り込み106の上にある欠陥であっても略正確に評価される。このことは、他の差分画像であっても同様である。
また、レンズ17を反射型暗視野照明42で照明して撮影し、検査する場合には、ヨゴレ93、アワ104が精度良く評価される。例えば、図7に示すように、第2元画像68には、キズ91、ブツ92、ヨゴレ93、アワ104が視覚的にも容易に認められる。特に、ヨゴレ93は、この第2差分画像77によって略確実に検出される。一方、コート抜け103については、これらが生じた位置や角度、欠陥の程度などによっては認識され難いこともある。また、キズ91、ブツ92については、透過型暗視野照明41による第1元画像67の方がより明確に認識される。これらのことから、第2差分画像77の欠陥面積S2と比較される第2閾値82は、ヨゴレ93アワ104を評価するために最適な値が選ばれる。
また、レンズ17を透過型明視野照明43で照明して撮影し、検査する場合には、カケ96が精度良く評価される。例えば、図8に示すように、第3元画像69には、カケ96、アワ104が視覚的にも容易に認められる。一方、キズ91、ブツ92、コート抜け103については、これらが生じた位置や角度、欠陥の程度などによっては認識され難いこともある。さらに、ヨゴレ93は、第3元画像69では殆ど認識されない。これらのことから、第3差分画像78の欠陥面積S3と比較される第3閾値83は、カケ96を評価するために最適な値が選ばれる。
また、レンズ17を反射型明視野照明44で照明して撮影し、検査する場合には、コート抜け103が精度良く評価される。例えば、図9に示すように、第4元画像70には、コート抜け103が視覚的にも容易に認められる。一方、キズ91、ブツ92は、これらが生じた位置や角度、欠陥の程度などによっては、認識されがたいこともある。さらに、ヨゴレ93、アワ104は、第4差分画像では殆ど認識されない。これらのことから、第4差分画像79の欠陥面積S4と比較される第4閾値84は、コート抜け103を精度良く評価するために最適な値が選ばれる。
以上のように、外観検査装置22は、1個のCCDエリアセンサ37に対して透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44の4種の照明を設けており、これらをそれぞれ用いてレンズ17を撮影し、検査する。したがって、検査ライン上にカメラや照明を複数設けた外観検査装置と比較して、外観検査装置22は小型化が実現される。また、カメラや照明が最小限の個数であるから、低コストに外観検査装置22を提供することができる。
また、上述のように、外観検査装置22は、4種の照明条件でそれぞれ撮影した画像に基づいて検査を行うから、レンズ17の表面などに生じた欠陥を、その位置、大きさ、角度など個々の特徴によらず、漏れなく検査することができる。
さらに、各照明条件での画像からレンズ17の欠陥をそれぞれ判断し、これらを総合して最終的なレンズ17の評価を決定するから、評価の基準が何れかの欠陥の評価に傾倒することなく、レンズ17の欠陥に生じる様々な欠陥の何れをも十分に考慮して、レンズ17の良否を正しく評価することができる。
さらに、各照明条件に基づいて検査する欠陥の種類を割り当てているから、レンズ17に生じる欠陥の特徴に応じて容易に閾値を設定することができる。また、各照明条件で検出される欠陥の特徴に応じて設定される閾値を用いて評価を行うから、正確に漏れなく欠陥を検査することができ、検査の安定性,信頼性が向上する。
また、上述のように、各種照明条件でのレンズ17の評価は、欠陥面積と照明条件に応じた閾値との比較によって行われ、用いられる閾値は上限値と下限値とからなり、範囲を指定する閾値である。したがって、欠陥を過剰評価してレンズ17を不良としてしまう過剰検査や欠陥を過小して評価レンズ17を良品としてしまう誤検査といったように、単一の値からなる閾値で評価する場合に閾値周辺の判断の難しい範囲で生じる弊害は防がれ、安定した信頼性の高い検査を行うことができる。
さらに、閾値の上限値と下限値は、不良品の数や特徴などに応じてそれぞれ設定することができるから、新製品の生産初期などで製品の品質が安定しない場合などにも、検査精度を確保しながらも、不必要に再検査にまわされる製品の数を減らし、検査効率を向上させることができる。
また、上述のように、外観検査装置22は、元画像とリファレンス画像との差である差分画像に基づいて欠陥を評価するから、レンズ17の表面の形状に応じて照明が写りこんだ部分にある欠陥であっても、正確に評価することができる。
一方、自動的な判断の難しい要再検査のレンズに対しては、第1〜第4元画像67,68,69,70を用いて再検査を行うことで、顕微鏡による目視検査と比較して、容易に欠陥の有無、程度、種類が判別され、再検査自体が迅速に行われる。また、第1〜第4元画像67,68,69,70を用いて再検査を行うと、欠陥の有無や、程度,種類などの特徴も一目瞭然となり、検査員の個々の観察技術や体調などが再検査に与える影響は極めて少なくなるから、検査品質が安定する。
さらに、第1〜第4元画像67,68,69,70を用いて再検査を行うと、再検査によってレンズ17が不良品と評価された場合に、将来的に多数生じるおそれのある不良の原因は容易に特定される。このように増加するおそれのある不良の原因を、一括管理,分析することで、不良多発ロットの特定、不良の原因となった生産工程の特定など、不良の原因を究明し、レンズ17の不良を未然に防ぎ、生産効率を向上させることができる。
なお、上述の外観検査装置22の各部、例えば、各照明の発光面や、CCDエリアセンサ37、検査トレイ16などは反射防止処理を施されていることが好ましい。透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44の発光面にそれぞれ反射防止処理を施しておくことで、各照明からの光が乱雑に反射され、レンズ17の外観に生じた欠陥以外に反射,散乱された不要な光がCCDエリアセンサ37に入射して検査の精度が劣化してしまうことを防ぐことができる。また、同様の理由から、例えば、外観検査装置22のマスク板52には、反射防止処理を施された開口を開閉するシャッタなどを設けても良い。また、反射型暗視野照明42や反射型明視野照明44で検査するレンズ17を撮影する場合に、透過型暗視野照明41を検査するレンズ17の直下に移動させても良い。すなわち、透過型暗視野照明41の無発光部47で上述の不要な光によって検査の精度が劣化することを防ぐことができる。
なお、外観検査装置22は透過型暗視野照明41と透過型明視野照明43とを1軸ステージ48を駆動して切り替えるが、これに限らず、透過型暗視野照明41と透過型明視野照明43とで共通の発光面を用いてもよい。例えば、図10(A)に示すように、全面が一様に発光,消光する照明パネル111の前面に、無発光部47と同じ形状を持つ遮光板113を回動させることで、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに切り替わる。すなわち、遮光板113を発光面112から退避させたときには、照明パネル111は透過型明視野照明43となり、一方、遮光板113を発光面112上に移動させたときには、照明パネル111は透過型暗視野照明41となる。また、例えば、図10(B)に示すように、照明パネル111の前面に、遮光板113を水平に移動させることで、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに切り替えても良い。
また、例えば、図11に示すように、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに共通に用いられる照明パネルとして、画像などを表示する、いわゆる液晶パネル114を好適に用いることができる。液晶パネル114は、発光面116の全面を消光した状態(図11(A))と、発光面116の全面を発光させた状態(図11(B))と、発光面116の中央部分が無発光部117となるように部分的に発光させた状態(図11(C))とを自在に切り替えられる。このとき、全面が消光した状態(図11(A))は、液晶パネル114の不使用状態である。また、全面を発光させた状態(図11(B))は、液晶パネル114は、透過型明視野照明として機能する。さらに、部分的に発光させた状態(図11(C))は、透過型暗視野照明として機能する。
さらに液晶パネル114を透過型暗視野照明として用いる場合、無発光部の位置や大きさは、検査するレンズ17の大きさなどによって自在に変更される。例えば、図12(A)に示すように、検査するレンズ17の大きさや曲面の形状、検査するレンズ17と液晶パネル114との距離などに応じて最適な無発光部の大きさや形状が定められる。一方、図12(B)に示すように、例えば、レンズ17と比較して直径の大きなレンズ118の外観を検査する場合であっても、液晶パネル114はこのレンズ118の大きさ、曲面の形状、レンズ118と液晶パネル114との距離などに応じて、無発光部119の大きさが変更される。
このように、透過型暗視野照明と透過型明視野照明とに共通の発光面を用いると、実質的に照明パネルを1個減らすことができるから、外観検査装置22は小型化され、さらには、低コストに外観検査装置22を提供することができる。
また、液晶パネル114を透過型暗視野照明及び透過型明視野照明として用いる場合には、大きさや表面の形状など検査するレンズの特徴に応じて、容易に、自在に無発光部の大きさや形状を変更することができる。
なお、液晶パネル114は、発光面116の一部分を選択的に消光することができれば良いので、LEDパネル、FEDパネル、SEDパネル、CRTなどであっても良い。
なお、外観検査装置22は、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44の全てを備えるが、これに限らない。例えば、さらに外観検査装置22を低コストに提供しようとする場合、透過型暗視野照明41を設けず、反射型暗視野照明42で代用しても良いが、多数の欠陥を第2差分画像から検出することになるので、第2閾値の設定が難しくなり、検査精度の劣化は免れない。また、例えば、外観検査装置22は予め反射防止コーティングが施されたレンズ17を検査するから、主としてコート抜け103を検出するための反射型明視野照明44を設けている。しかし、反射防止コーティングが施されていない状態のレンズ17や、反射防止コーティングが必要でない物品を検査する外観検査装置に本発明を適用する場合には、必ずしも反射型明視野照明44は必要ではない。したがって、このような物を検査する際には、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43の3種の照明を備えていれば良い。すなわち、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44は、それぞれに正確に検査することができる欠陥の特徴が異なるから、検査する物品に生じる欠陥の特徴に応じて、外観検査装置22に設ける照明の数を減らしても良い。
なお、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44の順序でレンズ17を撮影し、検査するが、これに限らない。すなわち、撮影,検査に用いる照明の順序は任意に選択することができる。
また、各照明条件での撮影と同時にレンズの良否の判断を行うが、これに限らず、4種の照明条件下での撮影を全て終えた後に各々の画像についてレンズの良否を判断しても良い。
さらに、上述の外観検査装置22は、第1〜第4元画像67,68,69,70をデータベース28に登録するが、これに限らず、レンズの評価が良品である場合などに差分画像をもデータベースに登録し、これをリファレンス画像を作成する際に使用しても良い。すなわち、上述の実施携帯で示すリファレンス画像の作成方法は一例であって、これに限定左図、他の方法で作成したリファレンス画像に基づいて上述の実施形態と同様の検査を行っても良い。また、同様に、第1〜第4差分画像をデータベースに登録し、これを再検査に用いてもよい。
また、上述の外観検査装置22は、自動的なレンズの評価を行う際に、欠陥面積として定義した値に基づいてレンズの評価を行うが、これに限らず、他の値に基づいてレンズの評価を行っても良い。例えば、欠陥の大きさや長さ、周囲の長さ、縦横比などの各欠陥の形状の特徴や、1つのレンズに対して検出された欠陥の総数などに基づいてレンズの評価を行っても良い。また、検査の精度をさらに向上させるためには、こうした各種基準を組み合わせてレンズの評価を行うことが好ましい。
なお、上述の外観検査装置22は、レンズ17を検査する外観検査装置22を例に説明するが、検査対象の物品はレンズに限られず、光をある程度透過する透明な物品であれば特に好ましく、不透明な物品であっても良い。
なお、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44の何れにも液晶パネルを好適に用いることができる。また、これに限らず、他の照明パネルやディスプレイを用いても良い。例えば、LEDを配列してなるLED照明パネルは点灯,消灯を高速に繰り返すことができることから、外観検査装置24に用いる照明としては特に好ましい。さらに、CRT,FET,SEDなどの電子の放出を利用するディスプレイを照明として用いてもよい。すなわち、検査するレンズ17に一様に光を照射できるものであれば動作原理などは任意のものを用いることができ、照明の形態は限定されない。
なお、上述の外観検査装置22は、レンズ17の外観検査の結果はサーバ21に構築されたデータベースに登録されるが、これに限らず、外観検査装置22自体に記憶しても良い。また、プリンタなどで紙面に出力しても良い。さらには、検査結果表示装置などに出力しても良い。
なお、外観検査装置22は、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44がそれぞれ照射する光は、白色光が好適に用いられるが、これに限らず、特定の波長域の略単色の光であっても良い。さらには、CCDエリアセンサ37が感度のある波長域であれば、赤外光などを用いてもよい。また、透過型暗視野照明41、反射型暗視野照明42、透過型明視野照明43、反射型明視野照明44のそれぞれを異なる色の照明としても良い。
[再検査装置]
図13(A)に示すように、再検査装置23は、外観検査装置22で再検査品と評価されたレンズ17の再検査を行う装置であり、モニタ121、キーボード122、マウス123などから構成される。モニタ121は、再検査に使用する画像などを表示する。また、キーボード122やマウス123は、評価入力部126に表示される項目などを選択する入力装置である。
図13(B)に示すように、再検査装置23は、外観検査装置22によって再検査品と評価されたレンズ17の第1〜第4元画像67,68,69,70をサーバ21から読み出し、これらを左側に並べてモニタ121に表示する。また、再検査装置23がサーバ21から読み出す再検査品のレンズ17の元画像は、この再検査品のレンズ17の配置されている検査トレイ16のID33の順序など、所定の順序で読み出される。一方、モニタ121の右側には、評価入力部126が表示される。この評価入力部126には、例えば、検査するレンズ17に生じ得るあらゆる欠陥の種類を示す項目が列挙して表示される。
再検査装置23による再検査は、モニタ121の左側に並べて表示された再検査品のレンズ17の各元画像が目視で比較されることで行われる。また、この再検査によって、再検査品のレンズ17は良又は不良の何れかに評価が定められる。例えば、再検査品のレンズ17の評価が不良とされる場合には、再検査品のレンズ17に生じている欠陥の種類が評価入力部126の項目から選択される。一方、再検査品のレンズ17の評価が良とされる場合には、評価入力部126から良品を示す項目が選択される。なお、このような欠陥の種類などの項目の選択は、キーボード122によって動かされるカーソル127や、マウスカーソル128などによって選択される。
こうして、欠陥の種類などの項目が選択され、再評価品のレンズ17の評価が決定されると、再検査装置23は、再検査で定まった再検査品のレンズ17の評価を、サーバ21のデータベース28に登録する。
また、再検査装置23で再検査が行われる間、再検査品のレンズ17が配置された検査トレイ16は、再検査装置23とは別の場所に設けられたトレイ保管庫26で管理されている。
[検査結果表示装置]
図14に示すように、検査結果表示装置24は、レンズ17の外観を検査した結果を表示する表示装置であり、検査トレイ16、液晶パネル131、スペーサ132、ガイド133、IDスキャナ134などから構成される。
液晶パネル131は、表示面136、周縁部137などから構成される。表示面136は、例えば、クロスニコルに配置された偏光板と、この偏光板で液晶を挟み込むようにして設けられた液晶層などからなる。この表示面136は、液晶層に印加する電圧を変化ささせることで、内臓のバックライトから照射される光の偏光状態を制御し、画素ごとに選択的に光を透過させることで画像などを表示する。また、液晶パネル131は、検査トレイ16と比較して長手方向に長く、検査トレイ16を配置したときに表示面の一部が検査トレイ16よりも突出する大きさのものとなっている。
また、表示面136は、検査結果表示エリア138と選別情報表示エリア139とからなる。検査結果表示エリア138は、発光しない状態を含め、スペーサ132の投光孔141を通してレンズ17に照射される光の色を調節することで、レンズ17に直接的に検査結果を表示する画像を表示する。また、選別情報表示エリア139は、検査トレイ16を配置したときに、この検査トレイ16よりも突出している部分の表示面136に設けられ、レンズ17が選別される際に、正確に選別作業が行われているか否かを確認するための文字情報など、検査結果に応じたレンズ17の選別作業を補助する各種情報が表示される。この選別情報表示エリア139に表示される情報には、例えば、検査トレイ16から抜き取るレンズ17の個数を表示する。また、例えば、検査トレイ16から抜き取るレンズ17の欠陥の種類を表示する場合もある。
また、周縁部137は、表示面136を制御するために設けられた配線などが配置されており、表示面136よりも少なからず上方に突出して設けられている。
スペーサ132は、液晶パネル131上に配置される。また、スペーサ132は、表示面136上に配置されたときに、表示面136から上方に突出する周縁部137と少なくとも略同じ高さとなる厚さに設けられる。さらに、スペーサ132には、検査トレイ16の座繰り穴31(及び貫通孔32)の配列間隔と同じ配列間隔で投光孔141が設けられている。この投光孔141は、検査トレイ16が水平にスライドされて液晶パネル131の前面に配置されたときに、座繰り穴31の直下に略正確に位置する。したがって、画像などが表示されて表示面136から発せられる光は、この投光孔141を通り、直上に位置するレンズ17に照射される。
また、スペーサ132は不透明な材料でつくられており、投光孔141を通過する光は直上に位置するレンズ17にだけ照射され、隣接する他のレンズ17には照射されない。すなわち、スペーサ132は、表示面136と検査トレイ16との空隙を埋めることで、表示面136からの光を照射するレンズ17を確実に選択し、隣接するレンズ17に不要な光が入射することを防ぐ。
ガイド133は、液晶パネル131の向かい合う2辺に平行に設けられており、レンズ17を配置した検査トレイ16を、液晶パネル131の前面に、液晶パネル131に接触させずに水平にスライドさせるガイドとなる。したがって、ガイド133が検査トレイ16の下面を支持する表面は、液晶パネル131の表面よりも僅かに高い位置に設けられている。また、ガイド133は、検査トレイ16を検査結果表示エリア138の直上に正しく配置させるストッパ142が設けられている。このストッパ142は、選別作業前の検査トレイ16が配置されている場合には閉じられており、検査トレイ16を検査結果表示エリア138の直上に正しく位置させる。一方、検査トレイ16に配置されたレンズ17の選別作業が完了すると開かれ、検査トレイ16はガイド133上をスライドして移動される。こうしたストッパ142の動作はモータや歯車などの図示しない開閉機構によって行われる。
さらに、ガイド133には操作ボタン143が設けられている。この操作ボタン143は、例えば、この操作ボタン143が押圧されると、選別作業が次の段階へと進行され、レンズ17の選別作業の段階によっては、選別情報表示エリア139の表示内容が更新され、また、ストッパ142が開閉される。
図15に示すように、検査結果表示装置24は、制御部144、RAM146、ROM147、データ通信部148、検査結果取得部151、表示画像作成部152などを備える。
制御部144は、ROM147に記憶されている制御用プログラムを読み出し、実行し、データバス150を介して検査結果表示装置24の各部を統括的に制御する。例えば、スキャナドライバ154を用いてIDスキャナ134を制御し、液晶パネル131上に配置された検査トレイ16のID33を読み取らせる。また、例えば、制御部144は、エンコーダ156を介して液晶パネル131に画像などを表示させる。
また、制御部144は、レンズ17の選別作業の段階に応じて、モータドライバ157を介してストッパ142を開閉させる。また、制御部144は、ボタンセンサ158によって操作ボタン143が押圧されたか否かを監視し、操作ボタン143が押圧されたときに、レンズ17の選別作業の段階に応じて、ストッパ142を開閉させ、また、選別情報表示エリア139に表示する各種情報を更新させる。
RAM62は、作業用メモリであり、検査結果表示装置24の各部で生じた各種データなどを一時的に記憶する。例えば、液晶パネル131上に配置された検査トレイ16から読み取られたID33は、このRAM62に記憶される。
ROM147は、検査結果表示装置24の制御用プログラムや各種設定などを格納するメモリである。また、サーバ21との通信プログラムなどもこのROM147内に記憶されており、制御部144によって読み出される。さらに、検査トレイ16の位置や向きが誤って配置されたときに読み出される警告画像や警告情報(後述)は、このROM147に記憶されている。
サーバ21は、検査結果表示装置24とは独立して設けられ、レンズ17の外観検査の結果を管理する。このサーバ21内には、レンズ17の外観検査の結果を一括して管理するデータベース28が設けられており、レンズ17が配置された検査トレイ16のID33とともに、各レンズ17が検査トレイ16内で配置されている位置、外観検査時に用いられた画像、各レンズ17の良,不良の評価、外観に欠陥がある場合にはその欠陥の種類などが、それぞれ相互に関連付けられて記憶されている。
データ通信部148は、検査結果取得部151からの指示に基づいて、サーバ21との間で各種データの送受信を行う。また、データ通信部148がサーバ21から取得したデータは、RAM62に記憶される。
IDスキャナ134は、検査トレイ16が液晶パネル131の検査結果表示エリア138の前面に配置され、操作ボタン143が押圧されたときに、このIDスキャナ134に正対して位置するID33を読み取る。このとき、検査トレイ16のID33が正しく読み取れた場合には、これをRAM62に記憶し、正しくID33が読み取れなかった場合には、エラーコードをRAM62に記憶する。また、IDスキャナ134が検査トレイ16のID33を読み取ることができる範囲は狭く設定されている。したがって、検査トレイ16が検査結果表示エリア138の前面に正しく配置され、スペーサ132の投光孔141と対応する各レンズ17とが略一直線上に配列されている場合には、IDスキャナ134は検査トレイ16のID33を正しく読み取り、一方、スペーサ132の投光孔141とこれに対応する各レンズ17とがずれて配置されている場合や、検査トレイ16を配置する向きが回転されており、IDスキャナ134の読み取り範囲に検査トレイ16のID33が位置しない場合には、エラーIDが出力される。
検査結果取得部151は、検査トレイ16に配置されたレンズ17の外観検査の結果をデータ通信部148を介してサーバ21から取得する。すなわち、検査結果取得部151は、RAM146から検査トレイ16のID33を読み出し、これを用いて検査結果を表示する検査トレイ16に配列された各レンズ17の外観検査の結果をサーバ21に問い合わせる。このとき、検査結果取得部151は、データベース28に記憶されたレンズ17に関する各種データのうち、各レンズ17の良,不良の評価と、外観検査で不良と評価されたレンズ17については欠陥の種類とをデータベース28から取得し、RAM146に記憶する。なお、検査結果取得部151は、RAM146から検査トレイ16のID33ではなく、エラーIDを読み出した場合には、サーバ21にレンズ17の外観検査の結果を問い合わせず、表示画像作成部152と選別情報作成部153とにエラー信号を出力する。
表示画像作成部152は、検査結果取得部151によって取得されたレンズ17の評価及び不良品のレンズの欠陥の種類のデータをRAM146から読み出し、これに基づいて、液晶パネル131に表示する検査結果画像(以下、検査結果画像)を作成する。この検査結果画像は、検査トレイ16のレンズ17の配列間隔に応じて区切られた部分ごとに色が異なる。すなわち、この検査結果画像が液晶パネル131の検査結果表示エリア138に表示されると、直上に位置するレンズ17にはそれぞれのレンズ17の評価及び欠陥の種類に応じて異なる色の光が照射される。
一方、表示画像作成部152は、検査結果取得部151からエラー信号を受けると、検査トレイ16の配置が誤っている事を示す警告画像をROM147から読み出す。この警告画像が液晶パネル131の検査結果表示エリア138に表示されると、検査トレイ16に配置された各レンズ17を介して検査トレイ16が正しく配置されていないことを表示させる。
選別情報作成部153は、検査結果取得部151によって取得されたレンズ17の評価に基づいて、良品のレンズの個数、不良品のレンズの個数、欠陥の種類ごとの不良品のレンズの個数などをそれぞれ計数する。また、選別情報作成部153は、計数した不良品のレンズの個数などを選別情報として、選別情報表示エリア139に表示する。
一方、選別情報作成部153は、検査結果取得部からエラー信号を受けると、検査トレイ16の配置が誤っていることを示す警告情報をROM147から読み出し、選別情報表示エリア139に表示させる。
以下、上述のように構成される検査結果表示装置24の作用を説明する。図16に示すように、外観検査を終えた検査トレイ16がレンズ17を配置したまま保管されている仕分け待機場所から搬出され、液晶パネル131上にスライドされて検査結果表示装置24に配置される。
このとき、検査トレイ16の位置や向きが誤って検査結果表示装置24に配置されると、検査結果表示装置24は、検査結果表示エリア138に警告画像を表示するとともに、選別情報表示エリア139に検査トレイ16が誤って配置されていることを示すメッセージを表示する。
一方、検査結果表示装置24に配置された検査トレイ16のID33が読み取られる。そして、このID33と関連付けられて管理されているレンズ17の評価や欠陥の種類などがサーバ21から取得される。すなわち、検査トレイ16に配置されている各レンズ17の評価及び欠陥の種類がそれぞれ取得される。
さらに、検査トレイ16上のレンズ17の配列間隔と、各々のレンズ17の評価及び欠陥の種類とに応じて区切られた部分ごとに色が異なる検査結果画像が作成され、この検査結果画像が検査結果表示エリア138に表示される。
すると、検査トレイ16に配列された各レンズ17は、液晶パネル131からの光を通すことでそれぞれのレンズ17が良,不良の何れであるか、さらに不良である場合には欠陥の種類が光の色によって表示される。また、同時に、選別情報表示エリア139には抜き取る不良品のレンズの個数が表示される。
そして、明確に表示された不良品レンズが、検査トレイ16から全て抜き取られ、操作ボタン143が押圧されると、ストッパ142が開かれ、良品のレンズ17だけが残る検査トレイ16はスライドして移動され、検査結果表示装置24から取り出される。また、選別された良品のレンズ17は、検査トレイ16から取り出され、個々にパッケージされて出荷される。
具体的には、図17(A)に示すように、検査トレイ16に5列×5行に25個のレンズ17が配列されているとすると、検査結果表示装置24は、この25個のレンズ17の内不良品のレンズ17だけを発光して表示する。このとき、図17(B)に示すように、液晶パネル131の表示面136には検査トレイ16のレンズ17の配列間隔に応じて区切られた各領域ごとに、不良品のレンズ17の欠陥の種類に応じて、それぞれ異なる色が配色された検査結果画像が表示されている。
例えば、欠陥の種類がレンズの表面に生じた線状のキズである不良品レンズ161aの直下には赤色が表示される。したがって、不良品レンズ161aは結果として赤色に表示され、不良品レンズ161aが不良品であり、抜き取りの対象であることが示されると同時に、欠陥の種類がキズである事が明瞭に表示される。
また、例えば、欠陥の種類が反射防止コーティング抜け、いわゆるコート抜けである不良品レンズ161bの直下には青色が表示される。したがって、不良品レンズ161bは、結果として青色に表示され、不良品レンズ161bが不良品であり、抜き取り対象であることが示されると同時に、欠陥の種類がコート抜けであることが明瞭に表示される。
さらに、例えば、欠陥の種類がレンズの表面に広がって付着した、いわゆるヨゴレである不良品レンズ161cの直下には緑色が表示される。したがって、不良品レンズ161cは、結果として緑色に表示され、不良品レンズ161cが不良品であり、抜き取りの対象であることが示されると同時に、欠陥の種類がヨゴレであることが明瞭に表示される。
一方、良品のレンズ17の直下には何色でもないいわゆる黒色が表示される。すなわち、良品のレンズ17は、発光されず、良品であり、抜き取りの対象でないことが示される。
さらに、不良品レンズ161a,161b,161cが抜き取り対象であることが表示されると同時に、選別情報表示エリア139には、例えば、検査トレイ16から抜き取る不良品レンズの総数162が表示される。この選別情報表示エリア139に表示された抜き取り対象の不良品レンズの総数は、例えば、抜き取り作業が行われた回数と比較することによって、抜き取り作業が漏れなく行われたか否かを確認するために用いられる。
一方、検査トレイ16の向きが180度回転して配置されると検査トレイ16のID33はIDスキャナ134の読み取り範囲には位置しない。このような場合、例えば、図18に示すように、検査結果表示エリア138には一面赤色の警告画像が所定時間ごとに表示される。したがって、検査トレイ16の上方から見ると、検査トレイ16に配置されたレンズ17は赤色と黒色とで所定時間ごとに点滅し、検査トレイ16の配置又は向きが誤っていることが表示される。また、同時に、選別情報表示エリア139には検査トレイ16の配置が誤っている事を示す警告情報163を表示される。このようにして、検査結果表示装置24は、検査トレイ16の向きが誤って配置されていることを知らせる。
また、こうした警告表示は、検査トレイ16の向きが誤っている場合だけでなく、検査トレイ16がストッパ142まで到達せずに検査結果の表示を行おうとした場合、例えば、スペーサ132の投光孔141と検査トレイ16のレンズ17とがずれて配置されている場合などにも同様にして警告表示が行われる。
上述のように、検査結果表示装置24は、検査トレイ16に配置されたレンズ17の外観検査の結果を、選別するレンズ17に対して直接的に、分かりやすく、明瞭に表示することができる。
また、検査結果表示装置24は、表示する不良品レンズの欠陥の種類に応じた異なる色でそれぞれ明確に区別して表示するから、欠陥の種類に応じて選別するなどの煩雑な作業も容易にさせることができる。
さらに、検査結果表示装置24は、検査結果を表示すると同時に、選別作業が正しく行われているか否かを確認するための適切な情報を表示するから、選別作業の人的誤りを軽減することができる。
また、検査トレイ16の形状を変更し、これに応じて検査結果表示エリア138に表示する画像の区切りを変えれば、異なる大きさや形状の物に対しても検査結果表示装置24を容易に用いることができる。すなわち、検査結果表示装置24の機能は、特定の物品や、その大きさ、形状等に依存せず、多種多様なものに用いることができる。したがって、特定の物品に対する専用装置ではないから、装置自体の交換や部品交換などは低価格に、かつ、容易に行うことができる。
さらに、検査結果表示装置24は、液晶パネル131と検査トレイ16との間にスペーサ132を配置するから、検査結果表示エリア138から照射される光が直上のレンズ17以外に入射することを防ぎ、隣接するレンズを誤って不良品レンズと判断してしまう、いわゆる誤認を効果的に防ぐことができる。すなわち、検査結果表示装置24は、選別作業員の位置や体格などに影響されず、正確に不良品レンズの位置を表示することができる。
一方、検査トレイ16を厚くすることで貫通孔32の全長を長くすると、検査結果表示エリア138のうちレンズ17の直下から照射される光だけがこのレンズ17に到達し、検査結果表示エリア138の隣接する部分から斜めに照射される光はこのレンズ17には到達しなくなる。しかし、このように検査トレイ16を厚くすると、重量や体積が増し、レンズ17を配置して移動するという検査トレイ16の本来の機能が損なわれる。したがって、上述のように誤認を防ぐためには、検査結果表示装置24のようにスペーサ132を配置することが好ましい。
また、通常、液晶パネル131の表示面136は、物(検査トレイ16など)を配置して使用することは想定されておらず、このような使用方法は、液晶パネル131を損傷し易い。しかし、検査結果表示装置24は、前述のように液晶パネル131と検査トレイ16との間にスペーサ132を配置するから、表示面136と移動する検査トレイ16とは直接的には接触せず、連続的に繰り返し用いても、液晶パネル131の表示面136が間に挟まるゴミなどの影響で損傷してしまうことを防ぐことができる。すなわち、検査結果表示装置24は、スペーサ132を用いることで、耐久性を向上させることができる。
また、液晶パネル131の表示面136に検査トレイ16を上から乗せるように配置すると、このような圧力が負荷されることが想定されていない液晶パネル131は、やはり損傷し易い。しかし、検査結果表示装置24は、ガイド133に沿って検査トレイ16を水平にスライドし、液晶パネル131の前面に配置するから、検査トレイ16を液晶パネル131の前面に上方から乗せるように配置する場合と比較して、液晶パネル131が損傷してしまう可能性を低減することができる。
なお、上述の検査結果表示装置24は、スペーサ132には投光孔141が設けられているが、検査結果を表示する対象がレンズである場合には、図19(A)に示すように、検査結果を表示するレンズの焦点距離を調節する投光レンズ164を、スペーサ132の投光孔141に配置することが好ましい。
検査結果を表示するものがレンズである場合、液晶パネル131から照射される光はレンズ17によって屈折される。したがって、投光孔141に投光レンズ164が設けられていないと、例えば、レンズ17の曲面の形状によっては、図19(B)に示すように、レンズ17の中央部167だけが液晶パネル131と同じ色に表示される結果となることがある。このように、レンズ17の一部だけに検査結果が表示されると、必ずしも見やすい表示であるとは言えず、選別作業においては見落としなどの原因となる。
一方、レンズ17の下方に位置する投光孔141にレンズ17の焦点距離を調節する投光レンズ164を配置すると、図19(C)に示すように、レンズ17の略全体に検査結果が表示される。
このように、検査結果を表示する対象がレンズなどの光学デバイスで、単純に光を照射しただけでは必ずしも見やすい検査結果の表示を行うことができない場合には、この光学デバイスの焦点距離,屈折率などの光学特性を考慮して、スペーサ132の投光孔141に投光レンズ164を配置することで、見易くすることができる。
なお、上述の検査結果表示装置24は、1度の検査結果の表示で異なる種類の欠陥の不良レンズを同時に表示するが、これに限らず、欠陥の種類ごとに数回に分けて検査結果を表示し、選別作業を行わせても良い。
図20(A)に示すように、例えば、欠陥の種類がコート抜け不良品レンズ166aを全て表示し、これを抜き取らせる。このとき、選別情報表示エリア139には、コート抜けが原因の不良品レンズ166aの総数168aを表示する。そして、このコート抜けが原因の不良品レンズ166aの抜き取り作業が終わり、操作ボタン143が押圧されると、例えば、図20(B)に示すように、欠陥の種類がレンズの周縁部などが欠け落ちた、いわゆるカケである不良品レンズ166bを全て表示し、これを抜き取らせる。このとき、選別情報表示エリア139の情報は更新され、カケが原因の不良レンズ166bの総数168bを表示する。さらに、同様に、欠陥の種類が他のものである不良品レンズについても同様に、順に表示し、これらを抜き取らせる。
このように、不良品レンズの欠陥の種類ごとに分けて、順に表示し、これらを抜き取らせると、抜き取る不良品レンズがどういった種類の欠陥で不良品と評価されているかを殆ど意識させることなく、表示されたものを単純に抜き取るという作業に集中させることができる。すなわち、選別作業員の負担を軽減し、延いては選別作業の人的な誤りを防ぐことができる。
なお、上述の検査結果表示装置24は、異なる種類の欠陥の不良品レンズを、それぞれ異なる色で表示するが、これに限らず、如何なる欠陥が原因であれ、不良品レンズ又は良品レンズの全てを同じ色で表示しても良い。例えば、安定した量産体制が確立されたときに行う外観検査の検査結果を表示する場合には、現実的には除ききれない程度の原因で生じる不良品を選別する。こうした状況下では、必ずしも、不良品レンズの欠陥の種類に応じて選別する必要がないから、単純に良品と不良品との区別が明確に表示されれば良い。したがって、このような必ずしも欠陥の種類に応じて区別された表示が必要とされない場合には、不良品(良品)だけを認識し易い同じ色で同時に表示しても良い。
なお、上述の検査結果表示装置24は、選別情報表示エリア139に表示する情報として、抜き取り対象のレンズの総数を表示する例を示すが、これに限らず、選別作業に必要な他の有益な情報を選別情報表示エリア139に表示させても良い。例えば、検査結果を表示する検査トレイ16のID33や、不良品レンズの欠陥の種類の内訳などを選別情報表示エリア139に表示しても良い。
なお、上述の検査結果表示装置24は、レンズの外観を検査した結果を表示する例を示すが、これに限らず、他の透明な物品の外観検査の結果を表示しても良い。また、検査の種類も外観検査に限られず、(レンズの光学的な特性などの)各種性能検査の検査結果であっても検査結果表示装置24を用いることができる。
なお、上述の検査結果表示装置24は、個々のレンズの検査結果を表示する際に、液晶パネル131を用いて光を照射するが、これに限らず、他の照明やディスプレイを用いても良い。例えば、LEDを配列してなるLEDディスプレイであっても良く、CRT,FET,SEDなどの電子の放出を利用するディスプレイを用いてもよい。すなわち、配列されたレンズのそれぞれに、各々の検査結果に応じた光を照射することができれば照明,ディスプレイの形態は限定されない。
また、上述の検査結果表示装置24では、液晶パネル131はフルカラーで表示可能であるが、これに限らず、必ずしもカラーで表示する必要はない。例えば、前述のように、欠陥の種類に応じた区別を必要としない状況下では、例えば、点灯と消灯とを切り替えられるものであれば液晶パネルでなくとも良く、単色のLEDを配列したディスプレイなどを好適に用いることができる。
なお、上述の検査結果表示装置24は、IDスキャナ134による検査トレイ16のID33の読み取りの結果で、検査結果表示装置24に検査トレイ16が正しく配置されているか否かを検知する仕組みとなっているが、これに限らず、検査トレイ16の位置や向きを検知する機構をIDスキャナ134とは別個に独立して設けても良い。
また、上述の検査結果表示装置24は、検査トレイ16の配置が誤っていると、検査結果表示エリア138を点滅させるとともに、選別情報表示エリア139に警告情報を表示して、検査トレイ16の位置や向きが誤って配置されていることを警告を表示するが、警告を発する方法はこれに限らない。例えば、警告を示す色の画像を検査結果表示エリア138に表示することで警告を表示しても良い。さらに、所定の警告を示す模様となるように、レンズ17を点灯,点滅させても良い。また、例えば、選別情報表示エリア139の警告情報の表示と、検査結果表示エリア138の警告画像の表示とを必ずしも同時に行う必要はなく、何れか一方で検査トレイ16の配置が誤っている事を表示しても良い。
なお、上述の検査結果表示装置24は、光を透過するレンズ17の外観検査の結果を表示するが、これに限らず、不透明な物品や電子デバイスなどの光学デバイスでない物品の性能,外観検査の結果を表示する場合にも本発明の検査結果表示装置24を好適に用いることができる。例えば、検査トレイ16の物品を配置する部分の周囲等に液晶パネル131からの光を通す孔を設けておくことで、検査結果表示装置24は、不透明な物品の各種検査結果も容易に表示することができる。
なお、上述の検査結果表示装置24は、検査トレイ16のID33に応じてサーバ21からレンズ17の外観検査の結果を取得するが、これに限らず、サーバ21などを介さずに、レンズ17の外観検査装置22と直接接続し、検査結果を取得するようにしても良い。このような接続は、外観検査と同時に検査結果を表示する際に有効である。
なお、上述の実施形態では、検査結果表示装置24の動作及び選別作業を次々と進行する操作ボタン143を設けるが、これに限らず、さらに細かく検査結果表示装置24を操作する操作部を設けてもよい。
なお、上述の検査結果表示装置24は、検査結果表示装置24は一度選別作業が完了した検査トレイ16に対しても再度検査結果の表示を行うことができるが、これに限らず、一度選別作業が完了した検査トレイ16に対しては再度検査結果の表示を行うことができないようにしても良い。例えば、レンズ17の選別作業が完了したときに、レンズ17の選別作業が完了した検査トレイ16のID33を作業済みトレイデータとしてRAM146に記憶しておく。そして、検査トレイ16のID33がIDスキャナ134によって読み込まれたときに、この作業済みトレイデータと読み込まれたID33を比較して、作業済みトレイデータ内に同一のID33が含まれている場合には、検査結果の表示を行わないようにしても良い。
また、例えば、レンズの選別作業が完了した検査トレイ16のID33をサーバ21に通知し、データベース28に登録する。そして、サーバ21は検査結果表示装置24から再度同じID33についてレンズの検査結果が要求されたときには、作業完了済みを示すデータのみを出力し、同じID33に関連付けられた検査結果が読み出されないようにしても良い。
このような設定を行うことで、2重作業を防止することができる。また、このような設定を行う場合に、検査トレイ16を再利用するときには以前とは別個のIDを付与する必要がある。
以上のように、外観検査装置22、再検査装置23、検査結果表示装置24などから構成される外観検査システム10の作用を説明する。図21に示すように、検査トレイ16に配列されたレンズ17を外観検査装置22によって検査すると、レンズ17は、良品、不良品、再検査品の何れかに評価される。この評価は、検査トレイ16のID33や外観検査装置22が検査に用いた元画像とともに、サーバ21のデータベース28に登録される。外観検査装置22による検査を終えた検査トレイ16は、レンズ17を配置したままの状態で、トレイ保管庫26に移動され、保管される。
一方、外観検査装置22によって再検査品と評価されたレンズは、再検査装置23によって良又は不良の何れかの評価に定められる。このとき、検査トレイ16は、トレイ保管庫26に保管されたままの状態であり、再検査装置23で行われる再検査には、外観検査装置22で取得されてサーバ21のデータベース28に登録されている元画像だけが用いられる。また、再検査装置23は、再検査によって定められた再検査品のレンズ17の評価をサーバ21のデータベース28に登録する。
そして、配置されたレンズ17の評価が良又は不良の何れかに定められた検査トレイ16は、トレイ保管庫26から移動され、検査結果表示装置24に配置される。検査結果表示装置24は、配置された検査トレイ16のレンズ17の評価などを読み出し、これを表示する。この検査結果の表示に基づいて、不良品のレンズは検査トレイ16から抜き取られ、最終的に検査トレイ16には良品のレンズだけが残される。こうして選別された良品のレンズは、包装されて出荷される。
このように、外観検査システム10は、外観検査装置22によって現実的な形状の物品に生じる多種多様な欠陥を漏れなく、精度良く検査するとともに、検査結果表示装置24によって外観検査の結果を分かりやすく正確に表示する。したがって、外観検査システム10は、効率良く正確な外観検査を行うことができる。
さらに、外観検査システム10は、外観検査装置22、再検査装置23、検査結果表示装置24を一体とせず、それぞれ別個に設けており、サーバ21に構築されたデータベース28でこれらの装置に必要なデータを一括して管理する。したがって、外観検査、再検査、選別作業(検査結果の表示)はそれぞれ平行して行われ、レンズの数量や質など製造の状況に応じて、外観検査装置22、再検査装置23、検査結果表示装置24をそれぞれ自在に容易に増設することができる。
例えば、図22(A)に示すように、製造上の何らかの原因で、再検査品のレンズが増加した場合には、再検査装置23に加えて、第2再検査装置171を増設すれば良い。このとき、第2再検査装置171は再検査装置23とは独立に、サーバ21と通信し、再検査品のレンズの元画像などを得て、再検査を行わせる。また、例えば、図22(B)に示すように、品質の安定したレンズの製造量を増加させる場合には、第2外観検査装置172や第2検査結果表示装置173を設ければよい。さらに、同様にして、外観検査装置、再検査装置、検査結果表示装置をそれぞれ必要に応じて設けることができる。
また、同様にして、これらに不具合が生じた場合の交換や調整、改良された装置への取り替えなども容易に安価に行うことができる。
なお、上述の実施形態では、外観検査システム10を構成する各装置は、サーバ21によって検査などに用いるデータを共有するが、これに限らず、各装置を直接的に接続し、必要なデータを共有しても良い。
なお、上述の実施形態では、検査トレイ16のID33としてバーコードを用いる例を示すが、このバーコードは1次元バーコードでも良く、また、2次元バーコードでも良い。さらに、ID33はバーコードに限らず、ICチップなどを用いてもよい。
また、上述の実施形態では、レンズ17の外観検査を行う例を示すが、レンズ17の形状は限定されず、レンズ17の外観を検査する場合であっても、面の凹凸の組み合わせはメニスカスレンズ、両凸、両凹の何れのレンズであっても良く、また、形状が球面であるか、非球面であるかも問わない。また、大きさも任意のものを用いることができ、さらには、フレネルレンズなど特殊なレンズであっても良い。さらに、検査するレンズの材質もガラスに限らず、周知の樹脂材料などであっても良く、また、レンズの製造方法も上述の実施形態に限らず、各種成型、あるいは研磨などにより製造しても良い。
さらに、検査する物品もレンズに限らず、透明な物品であれば好ましく、不透明な物品であっても良い。