JP2008247696A - 微小シリカゲル球状粒子の製造方法 - Google Patents

微小シリカゲル球状粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の主な目的は、分散性に優れた微小シリカゲル球状粒子を工業的規模で製造できる方法を提供する。
【解決手段】微小シリカゲル球状粒子を製造する方法であって、
(1)アルカリ金属の珪酸塩が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルションを多孔質膜体に透過させることによって透過後W/Oエマルションを得る第1工程及び
(2)前記珪酸塩水溶液と反応して水不溶性沈澱を形成し得る不溶化反応物質を含む処理剤と前記透過後W/Oエマルションとを混合することによって微小シリカゲル球状粒子を析出させる第2工程、
を含む微小シリカゲル球状粒子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、均一な粒径を有する微小シリカゲル球状粒子の製造方法に関する。より詳しくは、不溶化反応を利用した微小なシリカゲル球状粒子の製造方法に関する。また、微小シリカゲル球状粒子を基材とするカプセル及びその製造方法に関する。
シリカゲル粒子は、その多孔構造等を利用した応用製品が様々な業界分野で数多く場市されており、さらに今後も新たな製品が開発されるものと予想される。また、こうしたシリカゲル粒子の製造方法については多種多様のものがある。
古くは、合成したシリカゲルブロックを粉砕分級する方法から始まり、大別すると気相合成法と液相合成法に分けられる。最近開発されたシリカ粒子の気相合成法には、例えば、静電微粒化法(非特許文献1)、燃焼法(非特許文献2)等がある。また、液相合成法として、例えば、アルカリ珪酸塩液からシリカ粒子を液中合成する方法(特許文献1)、ゾルゲル法により液中合成する方法(特許文献2)等が開発されている。
液相合成法の1つとして、珪酸塩水溶液と有機連続相のW/Oエマルションをあらかじめ調製し、珪酸塩水溶液の水滴を不溶化処理してシリカ粒子に合成する方法がある。これは水滴がそのままシリカ粒子に移行することから、ミクロ多孔膜体を利用して均一な水滴径のW/Oエマルションを製造する技術(特許文献3)と組み合わせることにより、単分散シリカ粒子を合成できる方法(特許文献4)が新たに提案されている。特許文献3の方法は「膜乳化法」と呼ばれている技術であり、ミクロ多孔膜体を介して珪酸塩水溶液を有機連続相に圧入分散することにより珪酸塩水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションが調製できる。分散水滴がほぼ均一な単分散状であり、ミクロ多孔膜体の細孔径によって水滴径の大きさをコントロールすることが可能な他の技術にない特徴があり、その結果として平均粒子径を0.1〜50μmの範囲で制御したほぼ完全な球形の無機質粒子を製造できるとされている。
特開2004-143026号公報 特開平8-91821号公報 特許2106958号 特許2555475号 森康維、福本友祐;粉体工学会誌、38、90(2001) 矢嶋尊、村上伸吾、三宅新一;日本酸素技報、No17、43(1998)
特許文献4の方法は、球形の無機質粒子を製造できる優れた技術と言えるが、現実には膜乳化法による単分散状W/Oエマルションの生成速度が高くなく、シリカゲル粒子の生産性について改善の余地がある。特に、粒径が100 nm〜1μmのサブミクロン粒子を実用的なスケールで製造することは非常に難しい。また、他の製法においてもサブミクロンのシリカゲル粒子を実質的に製造している例はほとんどなく、サブミクロン領域がちょうど欠落している。
5μm以上、あるいは、100 nm以下のシリカ粒子(コロイダルシリカ)は市販されているのに対して、5μm以下、特にサブミクロン領域のものは、粉砕分級後に微細粉末を回収する以外に手段がない。このため、粒径の制御や細孔特性の制御はそもそも困難であり、工業的規模に適したものとは言い難い。決定的な問題点は、特に粒子の分散性であり、液相から微小粒子を分離し、脱溶媒を行って乾燥粉体として回収しようとしても、粒子どうしの凝固や強い凝集が発生し、十分な分散性を確保することが難しい。粒子が小さいほどその傾向は強く、微小粒子の実用的な生産を妨げている主要因となっている。
一方、シリカゲル粒子は、安全性、吸着性、大きな細孔容積等の面から、カプセル基材もしくは担体として広く利用されている。特に、最近は微小なカプセル基材粒子もしくは担体粒子が求められる時代になりつつある。このため、微小シリカゲル粒子を分級なしで生成できる技術を開発することができれば、工業的規模での量産が可能となる。
また、特許文献4では、大阪工業技術研究所の中原らが開発した界面反応法に基づいて粒子の不溶化反応を実施している。界面反応法は、無機塩水溶液相と不溶化反応液相が油水界面において接触することにより進行すると説明され、具体的には無機塩水溶液相(Wi相)と有機連続相(O相)のW/Oエマルションを不溶化反応液相(Wo相)に分散するWi/O/Wo系を採用する。ところが、上記メカニズムによって微小粒子を製造することは困難である。
また、Wi/O/Wo系では水相、油相、シリカゲル粒子が混在しているため、微小粒子の回収が非常に困難となった。さらに連続相は水相(Wo相)であるためシリカゲル粒子が水と接触し、乾燥後に粒子の分散性を確保することも非常に困難である。
従って、本発明の主な目的は、分散性に優れた微小シリカゲル球状粒子を工業的規模で製造できる方法を提供することにある。
本発明者は、従来技術(特に特許文献4)の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定のプロセスを採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の微小シリカゲル球状粒子の製造方法に係る。
1. 微小シリカゲル球状粒子を製造する方法であって、
(1)アルカリ金属の珪酸塩が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルションを多孔質膜体に透過させることによって透過後W/Oエマルションを得る第1工程及び
(2)前記珪酸塩水溶液と反応して水不溶性沈澱を形成し得る不溶化反応物質を含む処理剤と前記透過後W/Oエマルションとを混合することによって微小シリカゲル球状粒子を析出させる第2工程、
を含む微小シリカゲル球状粒子の製造方法。
2. 多孔質膜体が、水相よりも有機連続相に優先的に濡れる疎水性膜体である、前記項1に記載の製造方法。
3. 微小シリカゲル球状粒子の平均粒径が100 nm以上5μm以下の範囲である、前記項1に記載の製造方法。
4. 多孔質膜体が、分相法で製造されたものであって、かつ、その表面が疎水性である、前記項1に記載の製造方法。
5. 処理剤が、前記不溶化反応物質が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルション型処理剤である、前記項1に記載の製造方法。
6. 1)不溶化反応物質の濃度、2)アルカリ金属の珪酸塩水溶液の濃度、3)アルカリ金属の珪酸塩と不溶化反応物質との混合比、4)透過後W/Oエマルションと処理剤との混合時間の少なくとも1つを変化させることによって、微小シリカゲル球状粒子を平均細孔径2 nm〜40 nm及び/又は比表面積10 m2〜1500m2の範囲内で制御する、前記項1に記載の製造方法。
7. 処理剤が、ガス状処理剤である、前記項1に記載の製造方法。
8. 第2工程で得られた微小シリカゲル球状粒子を封入物質溶液又は被膜物質溶液に分散させた後、当該溶液の溶媒を蒸発させることにより微小シリカゲル球状粒子の細孔空間内に封入物質又は被膜物質を充填する第3工程をさらに含む、前記項1に記載の製造方法。
9. 微小シリカゲル球状粒子を基材とし、その細孔空間内で中心部から微小シリカゲル球状粒子外表面に向かって
1)水溶性封入物質のみ
2)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、
3)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、親水性被膜物質、
4)疎水性封入物質のみ
5)疎水性封入物質、親水性被膜物質、
6)水溶性封入物質と親水性被膜物質の混合物質、
7)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、
8)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、親水性被膜物質、
のいずれかの順でそれぞれの物質が順次堆積した構造を形成するように第3工程を1回又は2回以上実施する、前記項8に記載の製造方法。
本発明の微小シリカゲル球状粒子の製造方法は、下記の点において特徴を有する。
(1)微小シリカゲル球状粒子合成プロセスの前段となる乳化技術であり、アルカリ金属珪酸塩水溶液と有機連続相からなるW/Oエマルションを多孔質膜体に透過させ、その膜体の細孔を使って水滴を微細化することによりサブミクロンの微小W/Oエマルションを生成する新たな乳化方法であること
(2)有機連続相を介して陽イオン交換が起こることを見出し、これを利用した不溶化反応によりW/Oエマルションの水滴中にシリカゲル粒子を析出させる新しい方法。個々のシリカゲル粒子の周囲には有機連続相が存在するため、不溶化反応中に問題となる粒子凝固や強い凝集を抑制でき、結果的に粒子の分散性の確保が可能となること
(3)陽イオン交換速度とゲル不溶化速度の競合によってシリカゲルの細孔構造が変化する現象を見出し、これを利用して、すなわち、珪酸塩水溶液と不溶化水溶液の比率によって、シリカゲル粒子の平均細孔径を2 nm〜40 nm及び比表面積を10 m2〜1500m2の範囲で制御する新しい不溶化技術であること
(4)シリカゲルの強力な毛細管力を利用し、シリカゲル粒子の中心部に水溶性封入物質あるいは疎水性封入物質を堆積させ、さらにそれらを疎水性物質や親水性物質等で被膜する微小シリカゲル球状カプセルの製造方法であり、且つその分散性を確保できる方法であること
(5)ロータリーエバポレーター(減圧加温回転乾燥装置)の吸引口に乾燥目的の粒子より小さな孔径のフィルターを装着し、且つ回転フラスコに超音波を照射する機能を付属することによって、微小シリカゲル球状粒子(あるいは微小シリカゲル球状カプセル)をその分散性を確保したまま乾燥できること
これらの特徴をもつ本発明の製造方法によれば、従来極めて製造困難とされていた、分散性に優れ、細孔構造がコントロールされ、平均粒径が100 nmから5μm以下に制御された微小シリカゲル球状粒子及び微小シリカゲル球状カプセルを提供することができる。
本発明の微小シリカゲル球状粒子及びカプセルは、特に、医薬品分野、化粧品・ヘルスケア分野、塗料・顔料分野、インク・高分子化学分野、殺菌・殺虫・忌避剤分野、消臭剤分野、接着剤分野、分析技術分野、触媒分野、食品・飲料分野、肥飼料分野等の幅広い分野に適用可能である。
<本明細書に記載の用語>
本明細書で用いる用語は、ことわりのない限り次のように定義する。
本明細書に記載した微小シリカゲル球状粒子とは、現行では生成が非常に難しい平均粒径5μm以下、特にサブミクロン領域のシリカゲル球状粒子のことを指す。また、100 nm〜1μmのサイズ領域を「サブミクロン」と呼ぶ。次に、多孔質膜体を透過して分散水滴を微小化する本発明の技術を、以下「膜透過」と呼ぶ。
1)「W/Oエマルション」は、本発明で生み出した微小シリカゲル球状粒子を合成するための前駆体であり、水滴が有機連続相に分散した乳化状態を指す。「有機連続相」は、主成分である「油剤」に「油性界面活性剤」が溶解したものを意味する。
2)多孔質膜体を完全透過する前を「透過前W/Oエマルション」、透過したものを「透過後W/Oエマルション」と記して区別することがある。しかし、透過後W/Oエマルションであっても再度多孔質膜体に透過する場合は、その再度の透過前のものは「透過前W/Oエマルション」と記すことがある。
3)W/Oエマルションの「平均水滴径」及びシリカゲル粒子の「平均粒径」は測定した積算体積分布の50 %径を指す。
4)本発明の「平均水滴径」及び「平均粒径」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による値を示す。これは、測定手法によって計測される滴径や滴径分布に差が生じる場合が多く、平均水滴径や平均粒径の範囲で特許範囲を規定するためには測定手法も明確にする必要がある。そもそも100 nm〜5μmの水滴やシリカゲル粒子は光学顕微鏡で観察することが不可能であり,電子顕微鏡では真空乾燥による形態変化がありため直接的な測定が困難である。一方、遠心沈降式、動的散乱式、静的散乱式、レーザー回折散乱式等の機器測定があるが、こうした機器にはそれぞれ特性があって同じ水滴や粒子であっても平均径が一致することは少ないことに由来する。
5)多孔質膜体の「細孔径」は相対累積細孔分布曲線において貫通細孔容積が全体の50 %を占めるときの細孔径を意味する。
6)多孔質膜体の「疎水性」とは、多孔質膜体表面と水溶液の接触角が90°を超えて多孔質膜体が水溶液に濡れないことをいう。
<好ましい実施の形態>
本発明における好ましい実施の形態として、微小シリカゲル球状粒子の生成フローを図1に示す。その概要を以下に説明する。
アルカリ金属の珪酸塩水溶液1(水相)を分散水滴とし、これを有機連続相2と混合して透過前W/Oエマルション3を生成する。その後、所定の細孔径を有する多孔質膜体を用いて膜透過処理を実施し、微小水滴の透過後W/Oエマルション4を得る。
これとは別に不溶化反応物質の水溶液5を分散水滴とし、これを有機連続相6と混和して透過前W/Oエマルション7を生成する。その後、所定の細孔径を有する多孔質膜体を用いて膜透過処理を実施し、微小水滴の透過後W/Oエマルション8を得る。
アルカリ金属珪酸塩水溶液の微小水滴からなる透過後W/Oエマルション4は、不溶化反応物質水溶液の水滴からなる透過前W/Oエマルション7と混合すると珪酸塩の不溶化反応が起こる。あるいは、同透過後W/Oエマルション8と混合することによっても珪酸塩の不溶化反応が起こる。さらには、不溶化反応ガス9をエマルション4と接触させるか散気することによっても珪酸塩の不溶化反応が起こる。
珪酸塩不溶化反応の後、透過後W/Oエマルション4の珪酸塩水溶液の微小水滴は微小シリカゲル球状粒子へと変化する。ここでは水溶液、有機相、シリカゲル粒子が混在した状態であり、分離、乾燥を経て微小シリカゲル球状粒子10が回収される。
さらに微小シリカゲル球状粒子10にカプセル化処理を施すことによって微小シリカゲル球状カプセル11が得られる。
以下、必要に応じて上記の符号を用いながら、本発明の微小シリカゲル球状粒子の製造方法を詳細に説明する。
本発明は、微小シリカゲル球状粒子を製造する方法であって、
(1)アルカリ金属の珪酸塩が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルションを多孔質膜体に透過させることによって透過後W/Oエマルションを得る第1工程及び
(2)前記珪酸塩水溶液と反応して水不溶性沈澱を形成し得る不溶化反応物質を含む処理剤と前記透過後W/Oエマルションとを混合することによって微小シリカゲル球状粒子を析出させる第2工程、
を含むことを特徴とする。
第1工程
第1工程では、アルカリ金属の珪酸塩が溶解した水相1と有機連続相2とからなるW/Oエマルション3を多孔質膜体に透過させることによって透過後W/Oエマルション4を得る。
水相は、少なくともアルカリ金属の珪酸塩が溶解していれば良く、その他の添加剤が含有(溶解)されていても良い。水相は、後記の有機連続相中に分散した状態(分散水相又は水滴)で存在する。
アルカリ金属の珪酸塩としては、シリカゲルの原料となるものであれば限定されず、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。アルカリ金属の珪酸塩の水相中における濃度は、SiO2として0.01 mol/lの濃度を下限とし、最大はその飽和量を溶解したものが使用できる。
添加剤は、アルカリ金属珪酸塩がシリカゲルに不溶化する過程でその反応を妨げないものであり、W/Oエマルションの破壊につながらないものである限り、種類及び濃度に何ら制限はない。例えば、グルコース等の各種糖類、NaCl、KCl等の塩類、水溶性界面活性剤等が挙げられる。また、シリカゲル球状粒子の応用性を高めるために、各種の着色料(顔料又は染料)、香料等機能物質を添加することもできる。もちろん、添加剤を加えないアルカリ金属珪酸塩のみを溶解した水溶液を水相として用いても良い。
有機連続相は、前記のとおり、油剤に油性界面活性剤が溶解しているものを好適に用いることができる。
油剤は、実質的に水と混ざり合わない油性媒体(有機溶媒)であれば制限されない。具体的には、水に対する溶解度が5 wt%以下であるものが好ましい。その好例を挙げると次の通りである。これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
a)脂肪族炭化水素類:n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクテン、イソオクテン、ガソリン、灯油、軽油、ベンジン、ミネラルスプリット等;
b)脂環式炭化水素類:シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロノチン等;
c)芳香族炭化水素類:ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレン等;
d)ハロゲン化炭化水素:塩化メチレン、クロロフォルム、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等;
e)エステル類:酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-プチル、酢酸イソプチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、乳酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等;
油性界面活性剤は、油剤に溶解し、アルカリ金属珪酸塩の水溶液を分散水滴としたW/Oエマルションを形成するものであれば特に限定はない。好ましい具体例を挙げると次の通りである。これらの油性界面活性剤は単独又は2種以上混合しても使用できる。
a)ポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステル系:ポリオキシエチレン・ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン・ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン・ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン・ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン・ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン・ソルビタンステアレート等;
b)ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル系:ポリオキシエチレン・ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン・セチルエーテル、ポリオキシエチレン・ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン・オレイルエーテル、ポリオキシエチレン・オクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン・ノニルフェノールエーテル等;
c)ポリオキシエチレン脂肪族エステル系:ポリオキシエチレン・グリコールモノラウレート、ポリオキシエチレン・グリコールモノステアレート、ポリオキシエチレン・グリコールモノオレート等;
d)グリセリン脂肪酸エステル系:ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド等;
e)ポリオキシエチレン・ソルビトール脂肪酸エステル系:テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等;
f)ショ糖脂肪酸エステル系:ショ糖エルカ酸エステル等;
g)ポリグリセリン脂肪酸エステル系:グリセリンがテトラ、ヘキサ、デカ等のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等
h)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系:酸化エチレン付加モルが5、10の硬化ひまし油等;
油性界面活性剤の含有量は、用いる油性界面活性剤又は油剤の種類等に応じて適宜設定できるが、通常は油剤に対して0.1〜50 wt%、特に0.5〜10 wt%とすることが好ましい。
本発明で用いるW/Oエマルション(透過前W/Oエマルション)は、公知の方法(乳化方法)で調製することができる。例えば、有機連続相にアルカリ金属珪酸塩水溶液を滴下した後、水相が所望の粒径になるまで攪拌、超音波照射、高圧ホモジナイザー等の分散方法等を採用することによって所定のW/Oエマルションを得ることができる。例えば、特許2106958号記載の「膜乳化法」によって調製しても良い。
透過前W/Oエマルション3は、水相(W)と有機連続相(O)の室温(20〜30℃)における体積比は、W/O比として0.1/10 〜 2/1、特に1/10 〜 1/1程度とすることが望ましい。
透過前W/Oエマルション3の平均水滴径は、所望の微小シリカゲル球状粒子の大きさ等により適宜設定できるが、一般に0.5〜100μm、特に1〜50μmの範囲内に調節することが好ましい。また、透過前W/Oエマルションの平均水滴径は、その直後の膜透過に使用する多孔質膜体の細孔径よりも大きいこと、望ましくは平均水滴径が細孔径よりも大きくなるように適宜調整すれば良い。例えば、多孔質膜体の細孔径が1μmであれば、透過前W/Oエマルションの平均水滴径は1〜10μm程度とすれば良い。
本発明では、前記W/Oエマルションを多孔質膜体に透過させることによって透過後W/Oエマルション4を得る。すなわち、透過前W/Oエマルションを多孔質膜体に強制透過(膜透過)することによってその水滴を微小化する。本発明における透過は、前記W/Oエマルション3を多孔質膜体に圧入し、気相(大気中等)に放出させて再びW/Oエマルション4として回収する。例えば、多孔質膜体の上部に透過前W/Oエマルション3を配置し、多孔質膜体に下方に滴下するようにエマルションを透過すれば良い。このようにして、アルカリ金属珪酸塩水溶液の水滴径がよく揃い、多孔質膜体の細孔径に応じた大きさにコントロールされ、平均水滴径が100 nm以上10μm以下の範囲で調整された透過後W/Oエマルション4を得ることができる。
多孔質膜体としては、所定の大きさの細孔が一方から他方へ連通しているものであれば如何なるものでも採用できる。その細孔形状は円柱状であっても、角柱状であっても、あるいは他の形状であっても良い。また、細孔が膜面に対して垂直又は斜めに貫通しているものであっても、あるいは絡み合い構造でも粒子は生成する。特に、本発明では、細孔の水力学的直径及び有効長さが均一である多孔質膜体を用いることが好ましい。また、多孔質膜体の形状も限定されず、例えばパイプ状、平膜型等の多くの種類があり、構造的にも対称膜と非対称膜あるいは均質膜と不均質膜等に分けられるが、そうした形状や構造は本質的に本発明の効果に影響を与えないので、特に制限されない。
多孔質膜体の材質も限定的でなく、例えばガラス、セラミックス、シリコン、高分子、金属等が挙げられる。本発明の膜透過に好適な多孔質膜体は、分相法により得られたものが例示される。分相法で製造される多孔質膜体としては、例えばCaO-B2O3-SiO2-Al2O3-Na2O系多孔質ガラス、MgO-CaO-B2O3-SiO2-Al2O3-Na2O系及びNa2O-K2O-CaO-Al2O3-B2O3-ZrO2-SiO2系多孔質ガラス等が挙げられる。これらは細孔径分布が極めて狭く、細孔径も精密にコントロールされており、細孔縦断面が円筒状となっているのが特徴である。
本発明では、透過前W/Oエマルションを多孔質膜体に膜透過してその水滴を微小化することから、多孔質膜体表面は疎水性であることが好ましい。親水性である場合、透過後W/Oエマルションの水滴径は透過前W/Oエマルションと変わらないか、解乳化によって逆に大きくなる。細孔を閉塞して所望の膜透過が得られないこともある。
本発明で用いる多孔質膜体は、その表面が疎水性であることが望ましい。上記例示した多孔質膜体の中には本来的に疎水性を示すものもある。ところが、多孔質ガラス膜状体等多くのものは基本的に親水性であり、これに疎水化処理を施して疎水性の多孔質膜体を準備する必要がある。疎水化する手段自体は特に限定されず、要は膜透過によって微小化した水滴が生成すれば良い。疎水化を引き起こすメカニズムとしては、疎水化剤を多孔質膜体のガラス骨格全面に化学吸着あるいは化学結合させるか、もしくは物理的に均一な疎水層を形成しうる場合がある。また、それらを同時に数種類混合しても良い。多孔質膜体の細孔が閉塞せず、かつW/Oエマルションが膜透過する際に剥がれ落ちないものでありさえすれば良い。
疎水化剤としては、例えばジメチルポリシロキサンやメチルハイドロジェンポロシロキサン等の熱硬化性シリコーンオイル、シリコーンエマルジョン、シリコーンレジン等のシリコーン樹脂、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルコロロシラン等のシランカップリング剤、ジハイドロジェンヘキサメチルシクロテトラシロキサン、トリハイドロジェンベンタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン化合物、イソプロピルトリステアロイルチタネートやイソプロピルトリ(N−アミノエチル−)チタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、フッ素シリコーンコーティング剤、フッ素系コーティング剤等を好適に用いることができる。これらは、1種又は2種以上で使用することもできる。
膜透過の回数は制限されず、1回又は必要により複数回実施することができる。また、細孔径が異なる複数の多孔質膜体を用い、順次W/Oエマルションの水滴径を微小化することもできる。例えば、孔径が大きな多孔質膜体から順に細孔径の小さな多孔質膜体に透過することによってより確実に微小化を行うことができる。
膜透過では、透過前W/Oエマルションを多孔質膜体に完全透過するために最低限必要な臨界圧が存在する。この臨界圧未満では、透過前W/Oエマルションの水滴が多孔質膜体によって阻止され、有機連続相のみが多孔質膜体を通過する濾過が起こり、やがて多孔質膜体上に堆積した水滴によって多孔質膜体の細孔が閉塞する。また、臨界圧以上であっても、部分的に水滴の濃度が高い部分が存在すると、そこで水滴の圧入に要する圧力が増大し、臨界圧以下の場合と同様に閉塞する場合がある。従って、できるだけW/Oエマルションの水滴が均一に分散した状態で速やかに多孔質膜体を透過させることが望ましい。例えば、透過前W/Oエマルションを入れた容器内に攪拌装置、循環装置等を設置し、エマルションを流動させて水滴の沈降を抑制する方法等を採用することができる。
第2工程
第2工程では、前記珪酸塩水溶液と反応して水不溶性沈澱を形成し得る不溶化反応物質を含む処理剤5と前記透過後W/Oエマルション4とを混合することによって微小シリカゲル球状粒子を析出させる。
処理剤としては、前記珪酸塩水溶液と反応して水不溶性沈澱を形成し得る不溶化反応物質を含むものを使用する。
不溶化反応物質は、アルカリ金属の珪酸塩水溶液と水不溶性のゲル状沈澱物を形成しうる不溶化反応をもたらすものであれば限定されない。例えば、1)アルカリ土類金属のハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、2)無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸水等)、3)有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸等)、4)無機酸のアンモニウム塩(例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等)、5)有機酸のアンモニウム塩(例えば、酢酸アンモニウム等)6)アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等)、7)多価金属塩(例えば塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化銅、硝酸鉄、硝酸アルミニウム等)が挙げられる。
処理剤は、不溶化反応物質をそのままの形態で使用しても良いが、液状又はガス状で使用することが望ましい。
処理剤を液状で使用する場合は、一般に0.01 mol/l 〜 飽和濃度、特に0.1 〜 2.0 mol/lの濃度の溶液(特に水溶液)として使用することが好ましい。また、水溶液として用いる場合は、図1に示すように、不溶化反応物質が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルションの形態(W/Oエマルション型処理剤)7で使用することが望ましい。この場合の水相の濃度を上記範囲(0.01 mol/l 〜 飽和濃度、特に0.1 〜 2.0 mol/lの範囲)に設定すれば良い。
W/Oエマルション型処理剤の調製方法は、水相として不溶化反応物質が溶解した水相を用いるほかは、第1工程のW/Oエマルションの場合と同様の方法で調製することができる。この場合、有機連続相は、第1工程のW/Oエマルション調製の説明で挙げられたあらゆるものを使用できるが、透過後W/Oエマルション4の有機連続相と同じものを採用することが好ましい。
W/Oエマルション型処理剤7における水相(W)と有機連続相(O)の室温(20〜30℃) における体積比は限定されないが、W/O比として0.1/10 〜 2/1、特に1/10 〜 1/1程度とすることが好ましい。
また、図1に示すように、必要に応じて、W/Oエマルション型処理剤7を多孔質膜体に強制透過(膜透過)してその水滴を微小化することもできる。これにより得られるW/Oエマルション型処理剤8は、不溶化反応物質水溶液の水滴径がよく揃い、多孔質膜体の細孔径に応じた大きさにコントロールされ、平均水滴径が100 nmから10μmの範囲で調整されている。
処理剤をガス状(不溶化反応ガス)9で用いる場合は、透過後W/Oエマルション4に接触させるか、あるいは同エマルション4中に散気することにより、不溶化反応によってアルカリ金属の珪酸塩水溶液と水不溶性沈澱を形成させることができる。不溶化反応ガス9としては、前記で示した不溶化反応物質のガスを使用すれば良く、例えばアンモニアガス、炭酸ガス、ハロゲン化物ガス、有機酸ガス、無機酸ガス等が挙げられる。また例えば、塩酸HClの蒸気ガスを吹き込んでも不溶化反応は発生する。
本発明において、これら処理剤の使用量は、次の不溶化反応(所定の微小シリカゲル球状粒子の析出沈殿)が進行するのに十分な量とすれば良いが、一般的にはゲル化反応の化学量論的必要量からその10倍量の範囲内で処理剤の種類、性状等に応じて適宜設定することができる。もちろん不溶化反応ガスを接触あるいは散気する場合の散逸するガス量は上記設定範囲から除く。
このように、前記処理剤7,8又は9と前記透過後W/Oエマルション4とを混合することによって微小シリカゲル球状粒子が析出する。具体的には、この場合、前記処理剤によって透過後W/Oエマルション4の水滴の不溶化反応が起こり、透過後W/Oエマルション4のアルカリ金属の珪酸塩水滴が不溶化反応によって微小シリカゲル球状粒子に変化する。
好ましい例として、透過後W/Oエマルション4と透過後W/Oエマルション8の混合による微小シリカゲル球状粒子合成について、図2のシリカゲル球状粒子合成反応の模式図を使って説明する。また、アルカリ金属の珪酸塩Na2O・n SiO2と不溶化反応物質として重炭酸アンモニウムNH4HCO3を使用した場合の不溶化反応式を次式で示す。
Na2O・n SiO2 + NH4HCO3→ (n SiO2↓+H2O+NH3↑)+(Na2CO3
有機連続相21にアルカリ金属珪酸塩Na2O・n SiO2水溶液の水滴22と重炭酸アンモニウムNH4HCO3水溶液の水滴23を混合して共存させる。すぐにNH4HCO3水滴23からNH4 +とH+24、Na2O・n SiO2水滴22からNa+25が有機連続相21を介して等価の陽イオン交換が起こる。その結果、Na2O・n SiO2水滴22は不溶化反応によってn SiO2+H2O+NH3の水滴に変化し、NH3が気化した後に沈殿物である球状シリカゲルn SiO2粒子26が水滴27中に生成する。水滴27が界面張力によって球形を保つため、その中に浮かぶシリカゲルn SiO2粒子26も球形になる。一方、NH4HCO3水滴23はNa2CO3の水滴28に変化し、残存することになる。
等価の陽イオン交換は、その速度が水滴の界面積に支配される。透過後W/Oエマルション4と透過後W/Oエマルション8を混合する場合、水滴の積算界面積が少ない方が不溶化反応を支配する。透過後W/Oエマルション4と透過後W/Oエマルション8のいずれも膜透過によって水滴径分布が狭く、かつ平均水滴径がコントロールされたW/Oエマルションが得られることから、下記のように細孔構造を制御する不溶化反応を望む場合は、透過後W/Oエマルション4と透過後W/Oエマルション8を混合する方法を採用することが好ましい。
もちろん、透過後W/Oエマルション4と透過前W/Oエマルション7を混合する方法を採用しても、又は透過後W/Oエマルション4に不溶化反応ガス9を接触あるいは散気する方法を採用しても微小シリカゲル球状粒子を製造することができる。
以上のような不溶化反応は陽イオン交換によって起こる。同時にシリカゲルはゲル構造の再編が経時的に生じるため、不溶化反応条件によってシリカゲル粒子の細孔構造が大きく変化する。特に、アルカリ金属の珪酸塩と水不溶性沈澱を形成する不溶化反応物質の濃度、混合比、濃度比及び混合時間によって平均細孔径を2 nm〜40 nm及び比表面積を10 m2〜1500m2の範囲で変えることができる。
具体的には、
(i) 両水滴水溶液の物質濃度が一定であり、浸透圧が等しく、水滴体積比(アルカリ金属珪酸塩水溶液/不溶化反応物質水溶液)が一定である場合、不溶化反応時間が長くなるほどシリカゲルの平均細孔径は大きくなる傾向を示し、一方、比表面積の変化は少ない。
(ii) 両水滴水溶液の物質濃度及び反応時間が一定であり、浸透圧が等しい場合、水滴体積比を大きくするほどシリカゲル平均細孔径は小さくなり、比表面積は大きくなる傾向を示す。
(iii) 両水滴水溶液の水滴体積比が等しく、反応時間が一定である場合、浸透圧比あるいは濃度比を大きくするほどシリカゲル平均細孔径は小さくなり、比表面積は大きくなる傾向を示す。
(iv) 両水滴水溶液の浸透圧が等しく、水滴体積比及び反応時間が一定である場合、両水滴物質濃度が大きくするほどシリカゲル平均細孔径は小さくなり、比表面積は大きくなる傾向を示す。
反応後の水相(水滴)、有機連続相、微小シリカゲル球状粒子等が混在した状態から微小シリカゲル球状粒子の単離、乾燥、回収等を行えば良い。これらの方法については、公知の方法を採用すれば良い。例えば、濾過、遠心沈降等の公知の固液分離方法によって微小シリカゲル球状粒子を分離し、アルコール等の溶剤で洗浄乾燥すると微小シリカゲル球状粒子からなる粉末が得られる。
第3工程
本発明では、必要に応じて第3工程を実施することもできる。第3工程では、第2工程で得られた微小シリカゲル球状粒子を封入物質溶液又は被膜物質溶液に分散させた後、当該溶液の溶媒を蒸発させることにより微小シリカゲル球状粒子の細孔空間内に封入物質又は被膜物質を充填する。
第3工程では、所定の封入物質等が充填された微小シリカゲル球状粒子(以下「微小シリカゲル球状カプセル」ともいう。)を得ることができる。乾燥シリカゲル細孔表面は親水性かつ親油性である。また、シリカゲル自身は細孔径がナノオーダーで小さく、その一方で空隙率が高いため、液体に対して非常に大きな毛細管力を有する。第3工程では、こうした性質を利用して封入物質を粒子内に閉じ込め、さらにその上へ被膜物質を充填(コーティング等も含む)することができる。
封入物質は、公知のカプセルで内包されているものであれば限定的でなく、例えば医薬品、化粧品、肥料、塗料・インキ、食品、香料、抗菌剤、接着剤、その他の各種化学製品を採用することができる。
また、被膜物質としては、次のようなものが使用できる。疎水性被膜物質としてショ糖ステアリン酸エステルやテトラグリセリンモノステアリン酸エステルのような乳化剤、トリパルミチン酸エステルやカカオ脂のような硬化脂、スチレンやヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのような高分子等が例示される。親水性被膜物質としてプルローニックのような乳化剤、ポリビニルピロリドンのような高分子、ゼラチンのような天然高分子が例示される。これらは上記封入物質を外部環境から保護したり、徐々に分解・溶解して封入物質を徐放させたり、熱を加えると溶融して封入物質を一挙に放出させたり、あるいはカプセルの分散性を確保する目的であったり、様々な使用目的に応じて適宜選択し利用できる。これらは、溶液の形態で使用される場合、用いる封入物質又は被膜物質の種類(溶解性、親水性又は疎水性等)に応じて適当な溶媒を選択すれば良い。溶媒としては、水のほか、アルコール類、炭化水素類等の有機溶媒を挙げることができる。
封入物質溶液及び被膜物質溶液の濃度は特に限定されないが、一般的には飽和溶解度からその1/100の濃度内において、用いる封入物質又は被膜物質の種類、溶媒の種類等に応じて適宜設定することができる。
微小シリカゲル球状粒子の封入物質溶液又は被膜物質溶液に対する分散量は、分散・攪拌ができる限りは特に制限されないが、通常は固形分量として10〜50重量%の範囲内で定めれば良い。
一般に、微小シリカゲル球状粒子を基材として多量の有用物質を封入したカプセルを製造する場合、有用物質の封入方法が第一の課題となる。次に、有用封入物質を被膜物質でコーティングし、必要な時にカプセルから有用物質を放出できる機能をいかに備えるのか第二の課題を解決する必要がある。そして、サブミクロンからミクロンオーダーの微小粒子で問題になる分散性の確保を達成する必要がある。有用物質の封入や被膜物質のコーティングによって粒子同士が架橋され、あるいは粒子間の摩擦係数が大きくなり、粒子の分散性が失われることが多い。これに対し、本発明では、第2工程で得られた粒子を用いて第3工程を実施することにより、上記課題を解決し、所望の微小シリカゲル球状カプセルを好適に得ることができる。
以下、第3工程における手法及び作用機序について図3を使って説明する。空隙量がVpの微小シリカゲル球状粒子29を重量と密度がWとρである封入物質を溶媒に溶かした溶液30に分散する。微小シリカゲル球状粒子は親水性かつ親油性であるため、細孔内にはどのような溶媒や溶液であっても含浸した懸濁状態31になる。次に、例えばロータリーエバポレーター等を使って回転流動させながら溶媒を蒸発していくと、少なくなった溶液は毛細管力の強いところへ残留することになる。粒子と容器壁面間及び粒子間よりもシリカゲル細孔ははるかに細く毛細管力が強いため、溶液を含浸した微小シリカゲル球状粒子32が生成する。さらに蒸発を続けると、溶液は粒子の中心部へ収束して封入物質を包み込んだ微小シリカゲル球状粒子33が形成される。
封入物質の飽和溶解度がCの場合、Vp>W/ρかつC>W/Vpの条件が成立する場合に限り、微小シリカゲル球状粒子の内部に封入物質を析出させることができる。もしVp<W/ρあるいはC<W/Vpの場合には、粒子の外で封入予定の物質が析出することになる。
微小シリカゲル球状粒子33にはVp−(W/ρ)の空隙が残され、これに重量と密度がWcとρcである被膜物質を溶媒に溶かした溶液34に分散する。ここでの溶媒としては封入物質には不溶であるが被膜物質は溶解するものを選択する。次に、上記と同じ手法で溶媒を蒸発していくと、残留細孔に溶液が含浸した微小シリカゲル球状粒子35が生成し、最終的には粒子内で封入物質を被膜物質でコーティングした微小シリカゲル球状カプセル36が得られることになる。
本発明では、第3工程は、1回又は2回以上実施しても良い。すなわち、上記の手法を繰り返すことにより、封入物質や被膜物質を細孔内部に順次堆積させることを特徴とする微小シリカゲル球状カプセルを得ることができる特に、その細孔空間内で中心部から微小シリカゲル球状粒子外表面に向かって
1)水溶性封入物質のみ
2)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、
3)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、親水性被膜物質、
4)疎水性封入物質のみ
5)疎水性封入物質、親水性被膜物質、
6)水溶性封入物質と親水性被膜物質の混合物質、
7)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、
8)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、親水性被膜物質、
のいずれかの順でそれぞれの物質が順次堆積した構造を形成している微小シリカゲル球状カプセルが製造できる。
なお、「水溶性」と「疎水性」の間に明確な区別はなく、「水溶性」は一般的に水に溶解する物、「疎水性」は水以外のものに溶解する物を指す。どちらにも溶解する両親媒性物質や被膜物質はいずれに含めても良い。
本発明の微小シリカゲル球状カプセルは、粒子外表面内でカプセル化を行うことに特徴があり、これにより微小カプセルで問題となってきた分散性を確保できることになる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
<実施例1>
W/Oエマルションの膜透過から不溶化反応を経て微小シリカゲル球状粒子が生成される代表的なプロセスを例示して本発明の骨格を説明する。
珪酸ナトリウムNa2O・3SiO2(和光純薬工業(株)製)をSiO2が4 mol/lになるように溶解したアルカリ金属の珪酸塩水溶液とテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR(阪本薬品工業(株)製)を20 wt%溶解したトルエンの有機連続相を用意し、ホモミキサー(IKA-WERKE, Inc. 製、ULTRA-TURRAX)を用いて13,500 rpm、3分間高速攪拌して平均水滴径2.97μmの透過前W/Oエマルション37を調製した。水相体積は20 vol%であった。
次に、分相法で造られ且つその表面を疎水化処理した多孔質ガラス膜を多孔質膜体として用意した。細孔径が2.9μmと0.8μmである外形10 mm、内径8.5 mmのパイプ状多孔質ガラス膜(SPGテクノ(株)製)を室温で脱気しながら水溶性の有機シリコーンレジン(信越化学工業(株)製、KP-18C)5 wt%水溶液に浸し、その後110℃で24時間乾燥してシリコーンレジンコート処理による疎水化処理を施した。
透過前W/Oエマルションを上記疎水化多孔質ガラス膜体に膜透過して得られた透過後W/Oエマルションの水滴径分布を図4に示しながら、膜透過によって透過後W/Oエマルションの水滴が微細化される様子を解説する。すなわち、平均水滴径2.97μmの透過前W/Oエマルション37を細孔径2.9μmの疎水性多孔質ガラス膜に0.7 MPaの圧力で膜透過し、平均水滴径1.77μmの透過後W/Oエマルション38を得た。次に、細孔径0.8μmの疎水性多孔質ガラス膜に1.0 MPaの圧力でW/Oエマルション38を膜透過し、平均水滴径1.06μmの透過後W/Oエマルション39を得た。このW/Oエマルションから合成されたシリカゲル球状粒子40の平均粒径は550 nmであり、水滴の51.8%に収縮していた。ここで水滴径分布は、希釈分散媒に灯油を使用し、シリカゲル粒径には水を使用してレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置((株)島津製作所、SALD-2000)により測定した。
この合成には、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3(和光純薬工業(株)製、特級)を1.2 mol/lになるように溶解した不溶化反応物質水溶液とTGCRを5 wt%溶解したトルエンの有機連続相を用意し、ホモミキサーを用いて24,000 rpm、3分間高速攪拌して調製した平均水滴径1.52μmのW/Oエマルションを用いた。水相体積は30 vol%であった。Na2O・3SiO2の濃度4 mol-SiO2 /lと(NH4)2CO3の1.2 mol/lの浸透圧は、浸透圧計(ローベリング社製、オスモメーター)によると等張の4.6 MPaであった。
不溶化反応は、Na2O・3SiO2水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションと(NH4)2CO3水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションを、水相体積比が2.5(= Na2O・3SiO2水溶液/(NH4)2CO3水溶液)になる割合で混合し、撹拌翼を使って350〜450 rpmの条件で2時間撹拌し続けた。その後、遠心分離とヘキサン、メタノール、水のデカンテーションを繰り返してゲル化したシリカゲル粒子を洗浄し、再度メタノール中に分散してエバポレーターで減圧乾燥して微小シリカゲル球状粒子40を回収した。得られた微小シリカゲル球状粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を図5に示す。
この反応条件では、Na2O・3SiO2分散水滴の総界面積が(NH4)2CO3分散水滴の総界面積より小さいため、これ以上(NH4)2CO3分散水滴の水滴径を小さくしても反応速度に影響はない。
微小シリカゲル球状粒子の細孔径分布をガス吸着式細孔分布測定装置(ファイソンズ社、ソープトマチック1990型)によって測定したところ、平均細孔径が22.4 nm、BET比表面積が82 m2/gであった。
<実施例2>
細孔径0.8μmの多孔質ガラス膜を用い、親水性である多孔質膜体の疎水化方法がW/Oエマルションの膜透過に及ぼす影響について検討した。
a)シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング(株)製、SR-2410)を10 wt%トルエン溶液に浸し110℃で24時間乾燥してシリコーンレジンコート処理した場合、b)フッ素シリコーンコーティング剤(信越化学工業(株)製、KP-801M)に浸し110℃で24時間乾燥してフッ素シリコーンコーティング処理した場合、c)水溶性の有機シリコーンレジン(信越化学工業(株)製、KP-18C)の10 wt%水溶液に浸し110℃で24時間乾燥してシリコーンレジンコート処理した場合、d)シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング(株)製、SR-2405)の5 wt%ヘキサン溶液に浸し110℃で24時間乾燥しシリコーンレジンコート処理した場合、e)トリメチルクロロシランの10 wt%トルエン溶液に浸してシランカップリング処理した場合、f)何も処理しない場合を上記実施例1の平均水滴径1.77μmのW/Oエマルションを使って、同条件で膜透過を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2008247696
a)〜d)のコーティング疎水化処理を行った多孔質ガラス膜の場合は膜透過によって水滴が微細化した。一方、親水性のf)では水滴の解乳化が起こり、e)のシランカップリング処理は膜透過で剥がれ落ちて効果がないと判断された。
<実施例3>
油剤あるいは油性界面活性剤がW/Oエマルションの膜透過に及ぼす影響について検討した。細孔径1.0μmの疎水化多孔質ガラス膜を用い、油剤あるいは油性界面活性剤を変更する以外上記実施例1と同じ条件で膜透過を行った。
油剤としてトルエン、ヘキサン、灯油、大豆油を選択した。油性界面活性剤はTGCR。ところが油剤を変えるとホモミキサーによって造られる透過前W/Oエマルションの平均水滴径が異なった。そこで、(透過前W/Oエマルションの平均水滴径)→(1.0〜2.0 MPaの圧力で膜透過した透過後W/Oエマルションの平均水滴径)と記すと、
トルエン:2.97μm →1.11μm
ヘキサン:3.82μm →1.56μm
灯油:2.68μm →1.21μm
大豆油:1.02μm →0.99μm
となり、広範囲の油剤でも膜透過が成立することが明らかになった。
油性界面活性剤としてTGCR、ソルビタンモノラウレートSpan 20(和光純薬工業(株)製)、ソルビタンモノオレートSpan 80(和光純薬工業(株)製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレートTween 85(和光純薬工業(株)製)、ショ糖エルカ酸エステル(三菱化学フーズ(株)、ER-290)、デカグリセリン縮合リシノレイン酸エステルDGCR(阪本薬品工業(株)製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ(株)製、HCO-40)を選択した。油剤はトルエン。ところが油性界面活性剤油剤を変えるとホモミキサーによって造られる透過前W/Oエマルションの平均水滴径が異なった。そこで、(透過前W/Oエマルションの平均水滴径)→(1.0〜2.0 MPaの圧力で膜透過した透過後W/Oエマルションの平均水滴径)と記すと、
TGCR:2.97μm → 1.11μm
Span 20:4.10μm → 1.86μm
Span 80:3.87μm → 1.66μm
Tween 85:4.50μm → 1.70μm
ER-290:3.40μm → 1.43μm
DGCR:2.50μm → 0.94μm
HCO-40:3.26μm → 1.56μm
となり、広範囲の油性界面活性剤でも膜透過が成立することが明らかになった。
<実施例4>
細孔径0.7μmと0.6μmの疎水性多孔質ガラス膜を用意し、実施例1を継続して平均水滴径1.06μmのW/Oエマルションに圧力3.5 MPaを加えて膜透過を行った。それぞれ膜透過を5回繰り返した結果、平均水滴径0.89μm及び0.75μmの透過後W/Oエマルションが得られた。不溶化して生成したシリカゲル球状粒子の平均粒径は490 nm及び430 nmであった。
SiO2が0.4 mol/lになるように溶解したNa2O・3SiO2水溶液と0.12 mol/lの(NH4)CO3水溶液、すなわち、実施例1の1/10濃度の分散水滴を使って上記と同じ方法で微小シリカゲル球状粒子を合成した。その結果、細孔径0.7μmと0.6μmの疎水性多孔質ガラス膜の透過後W/Oエマルションから製造できた微小シリカゲル球状粒子の平均粒径は220 nm及び180 nmであった。
同様に細孔径0.2μmのPTFEメンブランフィルター(東洋濾紙(株)製)に膜透過したところ平均水滴径0.36μmの透過後W/Oエマルションが得られ、平均粒径は150 nmの微小シリカゲル球状粒子が生成した。
以上のことから、本発明によって平均粒径が100 nmから5μmの範囲で調整した微小シリカゲル球状粒子を製造できることがわかる。
<実施例5>
不溶化反応物質の種類が微小シリカゲル球状粒子の合成に及ぼす影響について検討した。
不溶化反応物質が1.2 mol/lの炭酸アンモニウム(NH4)2CO3、3.0 mol/lの硫酸アンモニウム(NH4)2SO4、3.0 mol/lの炭酸水素カリウムKHCO3、1.0 mol/lの希硫酸H2SO4、1.2 mol/lの重炭酸アンモニウム(NH4)HCO3、0.5 mol/lの塩化鉄FeCl3を選択準備し、実施例1に従って不溶化反応を実施した。その結果、いずれも微小なシリカゲル球状粒子が生成した。
実施例1では、Na2O・3SiO2水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションと(NH4)2CO3水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションを混合撹拌して不溶化反応を実施して分散性を確保できた微小シリカゲル球状粒子の生成に成功した。比較例として、先行特許第2555475号に習い、(NH4)2CO3水溶液中にNa2O・3SiO2水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションを投与撹拌してW/O/W系で不溶化反応を試みた。しかし、凝集が著しく一部凝固したシリカゲル粒子となった。
SiO2が4 mol/lのNa2O・3SiO2水溶液を分散水滴にしたW/Oエマルションにガラス散気管を使ってアンモニウムガスNH3((株)宮崎酸素製)あるいは塩酸HClの蒸気ガスを吹き込み、不溶化反応を実施した。その結果、いずれも微小なシリカゲル球状粒子が生成した。
<実施例6>
実施例1に従い、Na2O・3SiO2水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションと(NH4)2CO3水溶液を分散水滴とするW/Oエマルションを、水相体積比が25(= Na2O・3SiO2水溶液/(NH4)2CO3水溶液)になる割合で混合し、0.5時間不溶化反応を続けた後、ただちに洗浄回収した。得られた微小シリカゲル球状粒子は平均細孔径が2.2 nm、BET比表面積が1200 m2/gであった。
他方、実施例4にあるようにSiO2が0.4 mol/lになるように溶解したNa2O・3SiO2水溶液と0.12 mol/lの(NH4)2CO3水溶液を使い、水相体積比1で混合して6時間反応を続けた。得られた微小シリカゲル球状粒子は平均細孔径が36.4 nm、BET比表面積が19 m2/gであった。
以上のことから、アルカリ金属の珪酸塩と水不溶性沈澱を形成する不溶化反応物質の濃度、混合比、濃度比及び混合時間によって平均細孔径を2 nm〜40 nm及びBET比表面積を10 m2〜1500 m2の範囲で制御する本発明の特徴が実証できた。
<実施例7>
上記の製造方法で得た平均粒径900 nm、平均細孔径9 nm、BET比表面積440 m2、細孔容積 1 cm3/gの微小シリカゲル球状粒子を基材にしたカプセル製造を検討した。
封入物質には抗癌剤の塩酸イリノテカンCPT-11((株)ヤクルト本社製)、疎水性被膜物質には固体脂のトリパルミチン酸エステル(融点58〜66℃、和光純薬工業(株)製)、水溶性封入物質にはプルローニック(融点60℃以上:グリーンクロス社製)を選択した。CPT-11は溶解度が30℃で約30 mg/ml、80℃で約100 mg/mlであり、1.0 ml/gの細孔容積を有するシリカゲル粒子では最大100 mg/g-SiO2(微小シリカゲル球状粒子1 gに対してCPT-11が100 mg)程度を封入することが可能である。今回は、被膜物質をコーティングする空隙を残すため、CPT-11の封入量を35 mg/g-SiO2に設定した。
まず35 mg/g-SiO2のCPT-11を水に溶かし、エバポレーター用ナスフラスコ中に微小シリカゲル球状粒子とCPT-11水溶液を投入した。シリカゲル粒子を十分分散させながら、エバポレーターにより脱水した。シリカゲルの毛細管力は極めて大きいため、脱水が進むに従ってナスフラスコ壁面及び粒子間隙の水溶液は細孔内に移動し、最後にシリカゲル粒子内部で乾燥が終了する。
次に、25 mg/g-SiO2のトリパルミチン酸エステルをヘキサンに溶解し、これにCPT-11封入シリカゲル球状粒子を分散した後にエバポレーターで脱溶媒した。ヘキサンが除去されるとトリパルミチン酸エステルがCPT-11上に被膜を形成した。さらに25 mg/g-SiO2のプルローニックを水に溶解し、これにCPT-11封入トリパルミチン酸エステル被膜シリカゲル球状粒子を分散した後にエバポレーターで脱水した。乾燥するとトリパルミチン酸エステル上にプルローニックの被膜を形成し、微小シリカゲル球状粒子でありながらその内部中心に35 mg/g-SiO2のCPT-11を封入し、25 mg/g-SiO2のトリパルミチン酸エステルと25 mg/g-SiO2のプルローニックによって被膜されたカプセルが完成した。
以上の手順により、微小シリカゲル球状粒子の内部中心から、
1)水溶性封入物質のみ
2)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、
3)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、親水性被膜物質、
4)疎水性封入物質のみ
5)疎水性封入物質、親水性被膜物質、
6)水溶性封入物質と親水性被膜物質の混合物質、
7)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、
8)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、親水性被膜物質、
のいずれかの順でそれぞれの物質が順次堆積した構造を形成しているカプセルを製造できることが明らかになった。
なお、図6にCPT-11+トリパルミチン酸エステル+プルローニックを封入被膜した微小シリカゲル球状粒子を基材とするカプセルの走査型電子顕微鏡写真を示す。粒子外表面にCPT-11、トリパルミチン酸エステルあるいはプルローニックのいずれも析出していないため、分散性は良好であった。
本発明は、医薬品分野、化粧品・ヘルスケア分野、塗料・顔料分野、インク・高分子化学分野、殺菌・殺虫・忌避剤分野、消臭剤分野、接着剤分野、分析技術分野、触媒分野、食品・飲料分野、肥飼料分野等極めて多岐にわたる分野で利用できる新しい機能材料を提供するものである。
微小シリカゲル球状粒子の生成フロー図を示す。 シリカゲル球状粒子合成反応模式図を示す。 微小シリカゲル球状カプセルの生成フロー図を示す。 透過前W/Oエマルションと透過後W/Oエマルションの水滴径分布及び微小シリカゲル球状粒子の粒径分布図を示す。 平均粒径0.549μmを有する微小シリカゲル球状粒子の走査型電子顕微鏡写真(イメージ画像)を示す。 CPT-11+トリパルミチン酸エステル+プルローニックを封入被膜した微小シリカゲル球状粒子を基材とするカプセルの走査型電子顕微鏡写真(イメージ画像)を示す。
符号の説明
1 アルカリ金属塩の珪酸塩水溶液
2 有機連続相
3 透過前W/Oエマルション
4 透過後W/Oエマルション
5 不溶化反応物質の水溶液
6 有機連続相
7 透過前W/Oエマルション
8 透過後W/Oエマルション
9 不溶化反応ガス
10 微小シリカゲル球状粒子
11 微小シリカゲル球状カプセル
21 有機連続相
22 アルカリ金属珪酸塩Na2O・n SiO2水溶液の水滴
23 重炭酸アンモニウムNH4HCO3水溶液の水滴
24 NH4 +とH+
25 Na+
26 球状シリカゲルn SiO2粒子
27 水滴
28 Na2CO3の水滴
29 微小シリカゲル球状粒子
30 封入物質溶液
31 微小シリカゲル球状粒子と封入物質溶液の懸濁状態
32 封入物質溶液を含浸した微小シリカゲル球状粒子
33 封入物質を包み込んだ微小シリカゲル球状粒子
34 被膜物質の溶液
35 残留細孔に溶液が含浸した微小シリカゲル球状粒子
36 粒子内で封入物質を被膜物質でコーティングした微小シリカゲル球状カプセル
37 平均水滴径2.97μmの透過前W/Oエマルション
38 細孔径2.9μmの疎水性多孔質ガラス膜に0.7 MPaの圧力で膜透過して生成した平均水滴径1.77μmの透過後W/Oエマルション
39 細孔径0.8μmの疎水性多孔質ガラス膜に1.0 MPaの圧力で膜透過して生成した平均水滴径1.06μmの透過後W/Oエマルション
40 W/Oエマルション39から合成された平均粒径550 nmのシリカゲル球状粒子

Claims (9)

  1. 微小シリカゲル球状粒子を製造する方法であって、
    (1)アルカリ金属の珪酸塩が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルションを多孔質膜体に透過させることによって透過後W/Oエマルションを得る第1工程及び
    (2)前記珪酸塩水溶液と反応して水不溶性沈澱を形成し得る不溶化反応物質を含む処理剤と前記透過後W/Oエマルションとを混合することによって微小シリカゲル球状粒子を析出させる第2工程、
    を含む微小シリカゲル球状粒子の製造方法。
  2. 多孔質膜体が、水相よりも有機連続相に優先的に濡れる疎水性膜体である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 微小シリカゲル球状粒子の平均粒径が100 nm以上5μm以下の範囲である、請求項1に記載の製造方法。
  4. 多孔質膜体が、分相法で製造されたものであって、かつ、その表面が疎水性である、請求項1に記載の製造方法。
  5. 処理剤が、前記不溶化反応物質が溶解した水相と有機連続相とからなるW/Oエマルション型処理剤である、請求項1に記載の製造方法。
  6. 1)不溶化反応物質の濃度、2)アルカリ金属の珪酸塩水溶液の濃度、3)アルカリ金属の珪酸塩と不溶化反応物質との混合比、4)透過後W/Oエマルションと処理剤との混合時間の少なくとも1つを変化させることによって、微小シリカゲル球状粒子を平均細孔径2 nm〜40 nm及び/又は比表面積10 m2〜1500m2の範囲内で制御する、請求項1に記載の製造方法。
  7. 処理剤が、ガス状処理剤である、請求項1に記載の製造方法。
  8. 第2工程で得られた微小シリカゲル球状粒子を封入物質溶液又は被膜物質溶液に分散させた後、当該溶液の溶媒を蒸発させることにより微小シリカゲル球状粒子の細孔空間内に封入物質又は被膜物質を充填する第3工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  9. 微小シリカゲル球状粒子を基材とし、その細孔空間内で中心部から微小シリカゲル球状粒子外表面に向かって
    1)水溶性封入物質のみ
    2)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、
    3)水溶性封入物質、疎水性被膜物質、親水性被膜物質、
    4)疎水性封入物質のみ
    5)疎水性封入物質、親水性被膜物質、
    6)水溶性封入物質と親水性被膜物質の混合物質、
    7)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、
    8)疎水性封入物質と疎水性被膜物質の混合物質、親水性被膜物質、
    のいずれかの順でそれぞれの物質が順次堆積した構造を形成するように第3工程を1回又は2回以上実施する、請求項8に記載の製造方法。
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