JP2008246961A - 可変色性シート及び可変色性壁面装飾材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】合成樹脂中に、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)から選ばれる希土類元素の酸化物を1種類あるいは2種類以上を添加して形成される可変色性の着色層2に、可視光域の日射反射率が高い反射層3を積層して可変色性シート1を構成する。
【選択図】図1
Description
(1)合成樹脂中に少なくともホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)から選ばれる希土類元素の酸化物を1種または2種以上含有させてなる可変色性着色層の一方の面に、可視光域において反射性を有する反射層が積層されていることを特徴とする可変色性シート、
(2)前記反射層の可視光域の日射反射率が70%以上であることを特徴とする上記(1)に記載の可変色性シート、
(3)前記可変色性着色層の可視光域の日射透過率が60%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の可変色性シート、及び、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の可変色性シートであって、前記反射層が壁部材側に位置し、前記可変色性着色層が前記反射層よりも外側に位置して用いられることを特徴とする可変色性壁面装飾材、
を要旨とするものである。
本発明の可変色性シートは、少なくとも可変色性着色層と反射層とが積層されて形成される積層構造体である。上記可変色性着色層は、合成樹脂中に希土類元素の酸化物が添加されて構成されており、演色性を発揮せしめる層である。
本発明者らは、種々の物質、特に希土類元素について検討したところ、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、またはエルビウム(Er)の酸化物は可視光域に複数の吸収ピークを有し、照射される光源の種類によって、異なる色彩であって且つ美麗な色彩を示すという結果を得て、これら酸化物を本発明の可変色性着色層に含有せしめることとした。上記3種類の酸化物は、いずれか1種を用いれば、各酸化物に特有の色調を発揮するシートを得ることができ、またさらに微妙な色彩を発揮するシートを得るために、これら酸化物を任意に組み合わせて添加することも可能である。
ただし、主として経済的な理由から、所望される色調変化を呈することが可能な範囲において、なるべく上記希土類元素の添加量を少なくすることが望ましい。ここで、本発明の可変色性シートであれば、後述する反射層が上記可変色性着色層に積層されることから、希土類元素の添加量が少なくても、好ましい色調変化、及び明度を発揮せしめることが可能である。より具体的には、可変色性着色層を構成する合成樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下、より好ましくは1.0重量部以上5.0重量部以下の添加量で、本発明の可変色性着色層を構成することが可能である。
本発明における可変色性着色層を構成する合成樹脂としては、上記希土類元素を含有してシート状に成形可能な合成樹脂であれば従来公知の合成樹脂を適宜選択して用いることができる。特に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが好ましい合成樹脂として選択される。
また上記可変色性着色層を構成する合成樹脂には、上記特定の希土類元素の酸化物のほか、必要に応じて他の添加剤を添加することができる。他の添加剤の例としては、着色剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗酸化剤、充填剤等の各種添加剤を挙げることができる。以下に、これらの添加剤についてより詳しく述べる。
上記可変色性着色層は、上述のとおり合成樹脂に少なくとも特定の希土類元素の酸化物が添加されて構成され、且つ該可変色性着色層に後述する反射層が積層されることによって本発明の可変色性シートの該可変色性着色層側表面において良好な演色性が発揮されるものである。かかる本発明において、後述する反射層の反射効果を十分に獲得し、上記演色性が良好に視認されるためには、可変色性着色層の可視光域の日射透過率が60%以上であることが望ましい。可変色性着色層の可視光域の日射透過率が60%未満となると、該可変色性着色層を透過し、反射層により反射されて、再度、可変色性着色層を通過する光量が少なく、また、光源の変化による演色が視認されにくい。上記望ましい日射透過率を得るためには、用いられる合成樹脂の透明性や添加剤の種類及び添加量などを勘案することが望ましい。
尚、可変色性着色層の厚みは特に限定はなく、本発明のシートが用いられる用途や、添加される希土類元素の酸化物の量、あるいは該着色層を構成する合成樹脂の透過率などを勘案して、適宜決定することができる。本発明の可変色性シートが壁紙として用いられる場合も同様であるが、壁紙としては一般的には、上記可変色性着色層の厚みは、50μm〜200μm程度であることが好ましい。
次に本発明における反射層について述べる。本発明の反射層は、上記可変色性着色層に積層される層であって、可視光域の光に対して反射性を示す層である。本発明の可変色性シートにおいて十分に豊かな演色性を獲得するためには、上記反射層の反射性は、JIS−Aー5759に規定される380nm以上780nm以下の可視光領域における日射反射率が70%以上の高反射性であることが望ましい。
ここで希土類元素を含有する単層の着色層を検討すると、該着色層に入射される可視光域の光のうち、特定の吸収ピークを有する波長が該着色層内に含有される希土類元素に吸収されるとともに、それ以外の光の一部が反射して、看者の網膜を刺激し、特定の色調を視認させる。そして光の波長の分布が異なる各光源を照射した際には、上記希土類元素に吸収される波長とそれ以外の波長とのバランスから、看者に視認される色調に変化が生じ、所謂、演色性が発揮され得る。
上記問題1及び問題2を解決するために、着色層に、酸化チタンなどの白色顔料を添加して、該着色層自体の反射性を高めるよう作成すると、確かに反射率が向上し高い明度は得られるが、入射する光は、主として該着色層の表面域において反射してしまうので、着色層内に存在する希土類元素に到達する入射光量が少なくなり、演色性がむしろ乏しくなってしまった。
上記白色系のシートとしては、例えば白色系の合成樹脂シートを用いることができる。該白色系の合成樹脂シートは、上述する可変色性着色層を構成するために用いられる合成樹脂として列挙したいずれかの樹脂を用い、白色顔料や金属粉末などを添加してシート形成することにより容易に得ることができる。上記白色顔料としては、酸化チタンや硫酸バリウム等の無機化合物を比較的多量に混合させることにより、好ましい白色を得ることができる。さらに、中実ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、シラスバルーン等の充填剤を混合することによって反射率を上げることも可能である。
例えば、合成樹脂に発泡剤を添加して、発泡樹脂シートである反射層を採用する態様によれば、発泡樹脂シートを構成するセル構造により該反射層の反射性をさらに高めることが可能である上、衝撃吸収性を付与することができるという効果を奏する。また、反射層を構成する合成樹脂を発泡させることにより、反射層表面において凹凸の陰影を示すことが可能であり、シート外面に露出する反射層部分(即ち、着色層が積層されていない反射層部分)において上記凹凸の陰影によりシートの装飾性を向上させることが可能である。あるいは発泡する反射層上に可変色性着色層を積層させることによって、反射層表面の凹凸に由来する陰影を該可変色性着色層表面にも付与することが可能である。したがって反射層を発泡させることによって、可変色性着色層表面においても、凹凸の陰影による装飾効果を示すことが可能である。
以上、本発明の可変色性シートは、希土類元素の酸化物を含有する可変色性着色層と、これに積層される反射層との二層構造を基本構造とするが、上記反射層にさらに支持基材を積層してもよい。支持基材としては、種々の紙基材または不織布基材などを適宜使用することができる。尚、上記支持基材に反射性が備わっている場合には、該支持基材を反射層と支持基材との兼用部材として利用することも可能である。
また本発明における可変色性着色層側に、さらに保護層を積層形成してもよい。保護層は、可変色性着色層が示す演色性を妨げない程度に透明であることが望ましいが、色調に微妙なニュアンスを出すという観点から、例えば有色透明、あるいは部分的に有色であってもよい。表面保護層は、一般的には光透過性の硬化性樹脂などから構成することができるが、これに限定されるものではない。
上記可変色性着色層及び反射層、あるいはさらに支持基材から構成される本発明のシートは、各層が略平坦な単純な積層構造であってもよいし、あるいは、任意の層を印刷形成するなどして、図柄層として形成することもできる。例えば、図1(A)に示すように、本発明の可変色性シート1として、可変色性着色層2と反射層3との二層構造として構成することもできるし、あるいは図1(B)に示すように、本発明の可変色性シート1’としてさらに、反射層3側に支持基材4を積層してもよい。図示はしないが、可変色性シート1あるいは1’には、可変色性着色層2の表面に表面保護層を設けることもできる。また別の例として、図2(A)に示すように、本発明の可変色性シート11として、反射層3の上に、任意の図柄で設けられた不連続の可変色性着色層2を設けてもよく、あるいは、図2(B)に示す可変色性シート11’のごとく、支持基材4の一方の面に、任意の図柄であって不連続の反射層3を形成し、反射層3を覆って、支持基材4の略全面に可変色性着色層2を設けてもよい。さらなる別の態様として図2(C)に示す可変色性シート11’’のごとく、基材シート4上に、任意の図柄であって不連続の反射層3を形成するとともに、反射層3と同じ図柄であって反射層3の上面に積層される可変色性着色層2aあるいは反射層3とは異なる図柄であって反射層3を覆って積層される可変色性着色層2bを形成し、反射層3及び可変色性着色層2a、2bを覆って、支持基材4の略全面に表面保護層5を設けることもできる。尚、可変色性シート11’’における表面保護層5は任意であって、表面保護層5が省略されたものであってもよい。
本発明の可変色性シートは、室内装飾材として用いることができ、特に壁紙として用いることができる。上記可変色性シートを用いる本発明の可変色性壁面装飾材は、反射層を壁面側に位置させ、可変色性着色層を該反射層より外側面に位置するように用いられることを予定しており、一般的に裏打紙などの支持基材を備え、該支持基材の一方の面に反射層が設けられ、さらに反射層の表面に可変色性着色層が設けられた構造が望ましい。かかる可変色性壁面装飾材は、石膏ボード、木材等からなる壁面に、適宜の接着剤を用いて支持基材と壁面とが貼り合わせられるようにして使用されることが一般的である。
反射層および可変色性着色層は、均一な層であっても部分的に設けられていてもよく、可変色性着色層の少なくとも一部が反射層上に設けられていれば、この可変色性着色層と反射層とが積層された部分おいて選択的に本願発明の効果を奏することができる。
さらに、必要に応じて各種の添加剤を適宜添加することも何ら問題はない。
本発明の可変色性シートあるいは可変色性壁面装飾材は、上述するとおり、合成樹脂中に特定の希土類元素を含有せしめ、良好な演色性を発揮し得るものである。本発明のシートの効果、即ち演色性が十分に発揮されているか否かは、各種光源を用い、色差計にてL*値、a*値及びb*値を測定することにより評価することができる。
また特に、壁面装飾材としての使用の観点からは、良好な演色性に加えて、日中及び夜間のいずれにおいても明度が高いことが望まれるため、上記良好な程度の差異を有することに加えて明度が十分に高いことが望ましい。室内において壁面が明るく感じられる程度は、上記明度において60以上であり、より好ましくは70以上、さらに好ましくは75以上である。たとえ、上述する色度の差異が2以上であっても、明度が60未満であると、有意に演色性は視認されるものの室内が暗く感じられたり、つめたく感じられる虞がある。
具体的には日本分光(株)社製自記分光光度計V−570にて380nm〜780nmの可視光領域の分光反射率を積分球にて測定し、JIS―A5759付表3に規定される重価係数を加味して算出される値である。
なお、可変色性着色層が全面にではなく、反射層表面において部分的に設けられているような場合(例えば図2(A)の態様)、少なくとも該可変色性着色層が積層されている部位の反射層が可視光域の光を良好に反射することができ、望ましくは、該反射層の可視光域の日射反射率が70%以上であれば良く、必ずしも上面に可変色性着色層を有しない部分においてまで、上記反射性を求められるものではない。
ポリ塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ(株)社製 PX−QHPN)100重量部に対し、各種の添加剤を添加して反射層構成用の塩化ビニル樹脂ペーストB1〜B4(以下、「塩化ビニル樹脂ペースト」を省略し、単に「B1」等記載する場合がある。)を調製した。B1〜B4において添加されている添加剤の種類及び量については、表1に示す。なお、表中の数値は日射反射率以外すべて重量部で記してある。
ポリ塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ(株)社製 PX−QHPN)100重量部に対し、各種の添加剤を添加して可変色性着色層構成用の塩化ビニル樹脂ペーストA1〜A9(以下、「塩化ビニル樹脂ペースト」を省略し、単に「A1」等記載する場合がある。)を調製した。A1〜A9において添加されている添加剤の種類及び量については、表2に示す。なお、表中の数値はすべて重量部で記してある。
抄紙された紙基材(中越パルプ工業(株)社製 CP−65(目付65g/m2)を支持基材として用い、該紙基材上略全面に、表1に示す塩化ビニル樹脂ペーストB1を厚さ0.15mmとなるようにコーティングした後、140℃で1分間加熱してゲル化させて反射層を形成し、更に上記反射層上に、表2に示す塩化ビニル樹脂ペーストA2を用いてスクリーン印刷によりストライプ状に可変色性着色層を厚さ0.1mmとなるようにコーティングした後、200℃で40秒間加熱処理して上記反射層を発泡させて、可変色性シートを作成し実施例1とした。
また塩化ビニル樹脂ペーストA2の代わりに塩化ビニル樹脂ペーストA4を用いたこと以外は実施例1と同様に可変色性シートを作成し実施例2とした。また実施例1と同様の方法によりB1及びA5を用いて実施例3を、B1及びA3を用いて実施例4を、B1及びA1を用いて実施例5を、B2及びA2を用いて実施例6を、B2及びA4を用いて実施例7を、B1及びA9を用いて実施例8をそれぞれ作成した。
塩化ビニル樹脂ペーストA2の代わりに塩化ビニル樹脂ペーストA8を用いたこと以外は実施例1と同様に可変色性シートを作成し比較例1とした。また実施例1と同様の方法により、B3及びA2を用いて比較例2を、B3及びA4を用いて比較例3を、B4及びA2を用いて比較例4を、B4及びA4を用いて比較例5を、B1及びA6を用いて比較例6を、B1及びA7を用いて比較例7をそれぞれ作成した。
塩化ビニル樹脂ペーストBを用いず、紙基材上に直接、実施例と同様のストライプ状に塩化ビニル樹脂ペーストA3を用いてスクリーン印刷により厚さ0.1mmとなるようにコーティングし、200℃で40秒間加熱処理してシートを作成し参考例1とした。また塩化ビニル樹脂ペーストA3の代わりにA1を用いたこと以外は、参考例1と同様にシートを作成し参考例2とした。
本発明の可変色性シートである実施例1〜8、これに対する比較例1〜7、参考例1について、以下の方法により複数の光源における色度a*値及びb*値を測定し、演色性を評価した。また各シートの着色層側表面の明度L*値もあわせて測定した。なお、測定は、可変色性着色層と反射層とが積層されている部分においておこなった。
反射層の有無におけるシートの反射率を評価するために、実施例4、実施例5、参考例1及び参考例2を用いて、希土類元素が添加された層側の反射率を自記分光光度計にて測定した。測定条件はJIS―A5759に則り、日本分光(株)社製自記分光光度計V−570にて380nm〜780nmの可視光領域の分光反射率を積分球にて測定し、JIS―A5759付表3に規定される重価係数を加味して算出される値をその波長における反射率とした。結果を図3に示す。図3において、実施例4を四角のシンボル(10phr Ho2O3/白)として示し、実施例5をひし形のシンボル(3phr Ho2O3/白)として示し、参考例1を三角のシンボル(10phr Ho2O3単層)として示し、参考例2を丸いシンボル(3phr Ho2O3単層)として示した。
2 可変色性着色層
3 反射層
4 支持基材
5 保護層
Claims (4)
- 合成樹脂中に少なくともホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、及びエルビウム(Er)から選ばれる希土類元素の酸化物を1種または2種以上含有させてなる可変色性着色層の一方の面に、可視光域において反射性を有する反射層が積層されていることを特徴とする可変色性シート。
- 前記反射層の可視光域の日射反射率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の可変色性シート。
- 前記可変色性着色層の可視光域の日射透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の可変色性シート。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の可変色性シートであって、前記反射層が壁部材側に位置し、前記可変色性着色層が前記反射層よりも外側に位置して用いられることを特徴とする可変色性壁面装飾材。
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