JP2008246546A - 打ち抜き金型 - Google Patents

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鋼輝 皆本
Norimitsu Koe
規充 向江
Tetsuo Kiryu
哲郎 桐生
Mitsuyoshi Nagano
光芳 永野
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Abstract

【課題】金属薄板を剪断応力にて打ち抜き加工するためのパンチ、およびダイの材質を改善することにより、良好かつ長寿命な打ち抜き金型を得ることである。
【解決手段】金型固定部に取り付けられるパンチとダイのいずれか一方を超硬合金、もう一方をZrO系セラミックスにて形成することにより、前記課題を解決した。金型のチッピングが無く、先端稜面をシャープエッジとして長時間維持することができる。2,000rpm以上の高速で稼動も可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、板状の金属を、パンチとダイを用いて剪断打ち抜き加工を行なう、打ち抜き金型装置に関する。
IT文化の発展に伴い、携帯電話や電子ゲーム機器、デジタルオーディオプレイヤー等、さまざまな電子機器が続々と市場に投入され消費されている。
これらの電子機器には、電子輸送の接続端子として多数のコネクターが使用され、その多くはプレス金型による銅系材料の打ち抜き加工により生産されている。
それらのコネクターは、侠ピッチ、低背化等により、表面実装技術(SMT)対応品が主流であり、精密な金型技術が要求されている。
また、これら電子機器の製品寿命は概ね短く、金型の立ち上げから量産に至るまで、一貫して厳しい短納期化が進んでおり、対応がますます難しくなっている。
この現状に有効な一つの手段として、フラットリードに近い製品が中心となるが、プレス回転数の高速化による、時間当たりの生産性の向上が挙げられる。
昨今では4,000rpmを超えるプレス機や送り装置も出現し、高速運転に耐えうる金型の開発如何では、超高速プレス生産も現実味を帯びて来ている。
薄板の剪断加工は、ダイとパンチの稜線(エッジ)が、塑性変形中の金属薄板にクラックを生じさせ、それをさらに圧力を加えて薄板を破断する機構である。よって、このクラックが容易に生じる加工を長期に渡り実現することが、打ち抜き金型の性能になる。言い方を変えれば、いかにしてダイおよびパンチのシャープエッジを磨耗させないかが、打ち抜き金型の要点となる。
現在、比較的軽荷重な精密プレス金型のパーツは超硬合金が主流であるが、2,000rpm前後でのプレス生産においては超硬合金の耐摩耗性の限界のため、ダイやパンチの切刃部分の再研摩頻度が生産性を大きく阻害している。
装置自体は、通常の金型でそのまま使用でき、高速での打ち抜きに適当な金型は現在まで多数提案がなされている。それらの中には、ダイおよびパンチを超硬合金やセラミックスにて製作しているものも多数ある。
特許文献1には、Al、ZrOと金属炭化物を基としたセラミックスからなるパンチが提案されている。
特許文献2には、WC−ZrO系複合材料からなるセラミック複合体の用途として、プレス、打ち抜き金型が開示されている。
特許文献3には、パンチとダイの超硬合金の組成を同一とせず、パンチとダイが異材質の超硬合金として組み合わされた金属塑性加工用装置が開示されている。
これらに示された技術は、たとえば硬化処理された鋼材などと比較して、金型寿命を延ばす効果が期待できる。しかしながら高硬度なセラミックスは磨耗に対して強く、長寿命であるが、その反面破壊靱性が低いために金型自体のチッピングが起こりやすい。ZrO系のセラミックスは、Al、SiC、Si系セラミックスなどと比較すると破壊靱性は高いものの、超硬合金と比較するとかなり低く、高速で打ち抜き用に使用する金型のダイおよびパンチとしては不十分である。
また、材質の異なる超硬合金同士のパンチとダイの組み合わせも、同材質の超硬合金をダイとパンチに用いたものと同様に、超硬合金の寿命の域を出ない。つまり、シャープエッジの持続する時間が短い。超硬合金の磨耗は、金属バインダーであるCoやNiと、被打ち抜き加工材料との溶着によるものと、その近辺のWC粒子の脱落による場合が多い。溶着や脱粒が起これば、ダイまたはパンチの稜線は崩れて丸くなり、シャープエッジを維持できなくなる。そのために、金属薄板にクラックが入りにくくなるために、打ち抜きにより大きな応力が必要となり、パンチまたはダイにより大きい応力をかけることによって、寿命をさらに短くする。金属バインダーであるCoやNiを減らせばこの問題はある程度解決できるが、今度は破壊靱性値が低くなるために、使用初期の段階で容易にチッピングを起こすようになる。

特開平09−221352号公報 特開2002−321979号公報 特開平08−337838号公報
本発明の課題は、金属薄板を剪断応力にて打ち抜き加工するためのパンチ、およびダイの材質を改善することにより、良好かつ長寿命な打ち抜き金型を得ることである。
パンチとダイのいずれか一方を超硬合金、他方をZrO系セラミックスにて形成することにより、前記課題を解決した。
打ち抜き加工中にダイおよびパンチのチッピングが起こらず、精度よい加工を、従来のパンチおよびダイよりを有する打ち抜き金型と比較して、長時間維持することができた。
請求項1に記載の本発明はパンチとダイとの組み合わせからなる金属板を剪断打ち抜き加工する打ち抜き金型において、パンチとダイのいずれか一方が超硬合金からなり、他方がZrO系セラミックス材料からなることを特徴とする打ち抜き金型である。
打ち抜き金型のパンチおよびダイのいずれか一方は超硬合金で、他方はZrO系のセラミックスからなる。超硬合金は前出のように、鉄材と比較して硬く、剛性も高く、加工も比較適容易なために金型材料として適している。一方ZrO系セラミックスは、耐摩耗性が超硬合金と比較して高い。そのために、磨耗が少なく、長時間の使用にも耐える。しかし、ZrO自体は、たとえばダイ、パンチともにZrOで組み合わせるとチッピングを起こしやすい。これは、破壊靱性の比較的低いZrO同士が互いの高い剛性のために、剪断加工初期の段階で、大きな動的衝撃を作用しあうためである。金属バインダー層という「緩衝材」のない両者が被加工材を介して応力をぶつけ合う結果、生じた引張応力がパンチもしくはダイのZrO引張強度の限界を超え、チッピングが生じる。
本発明はダイ、パンチのいずれか一方を超硬合金、もう一方をZrO系セラミックスで製作した打ち抜き金型である。パンチとダイの材料が異なるために、破壊靱性の低いZrO系セラミックスがチッピングを起こす前に、相手方の超硬合金中の金属バインダーであるCoやNiが弾性変形を起こして被加工材を介して応力を逃がすために、結果としてチッピングが生じない。磨耗については、同様の硬さを持つ従来のパンチ、ダイに対して、ZrO系セラミックス側は耐摩耗性も高く長寿命を得られるため、長期にわたり切れ刃の稜線(エッジ部)がシャープに維持できる。このため打ち抜き過程で最も剪断応力が高くなる被加工材へのクラック形成が容易となり、結果的に超硬合金工具側への応力も抑制し、超硬合金側も寿命を延ばすことができる。シャープな稜線を保つZrO系セラミックスが、被加工材に早期にクラックを生じさせる。そのために、その後の加工応力は小さくなるために、超硬合金側も磨耗が少なくなり、長寿命が実現できる。
請求項2に記載の本発明は、ZrO系セラミックス材料が、ZrO−WC系の複合セラミックス材料である請求項1に記載の打ち抜き金型である。
ZrO系セラミックス材料は、前記のとおりの利点を持つが、その中でもZrO−WC系の材料は破壊靱性が高い、耐摩耗性が高い、精密加工性が良い、金属被加工材に対して摺動特性がよく溶着しにくい、被電気加工性がよいなど多くの利点を持つ材料である。特にZrOを40〜60体積%、WCを40〜60%とした材料はいずれの性能も秀でている。また、この他に、ZrOとWCの体積の和を100%とし、それに対して10外部体積%まで、Y、AlN、MgO、Yb、Erなどの焼結助剤も添加することができる。
本発明の最良の使用形態を、以下実施例にて説明する。
剪断打ち抜き金型のパンチとダイを、パンチとしてZrO系セラミックス(部分安定化ZrOで、YとAlを2体積%ずつ含む材料)を、ダイとしての超硬合金(WC−5質量%Co)をそれぞれ打ち抜き金型部材として用い、金属の被切断体を剪断打ち抜き加工した。この条件を試験1とした。
打ち抜き加工の条件を表1に示す。
Figure 2008246546

また、同様に試験した試験2以下は、表2、表3、表4に示すような組み合わせでダイとパンチを形成した実施例および比較例である。ダイとパンチ材質以外の各条件は、試験1と全く同様である。
Figure 2008246546
Figure 2008246546
Figure 2008246546
表4における「」印のついた試験番号は、本発明の範囲外の比較例である
以上の表1〜表4に示した条件および、ダイとパンチの組み合わせにて、試験1と同様の試験を行なったところ、表2、表3および表4に記載の金型寿命が得られた。
本発明の試験例である試験1〜試験9は、いずれも寿命が700万ショット以上と、優れた性能が得られた。使用後のダイおよびパンチを調査したところ、滑らかで光沢があり、均等に磨耗した形跡が見られた。
最も優れていたのはダイに超硬合金(WC−5質量%Co−3質量%TiC)を、パンチにZrO系複合セラミックス(ZrO−50体積%WC−1外部体積%Y)を用いた打ち抜き金型であり、現在最も一般に使われている超硬合金金型の比較試験である試験12の3倍以上の寿命が得られた。
これは、耐摩耗性が良好なパンチと、金属バインダー相(Co)を有するダイを用いたことにより、チッピングが発生せず、また耐磨耗性が優れたパンチを用いたためと考えられる。そのために、稜部をシャープエッジとして長く維持することができ、被加工材にクラックが発生しやすい状態が続いたと推察する。このパンチとダイを持つ打ち抜き金型は、他の金属や厚みの違う被打ち抜き金型としても良好であった。
ダイとパンチの材質を双方とも部分安定化ZrO(ZrO―1体積%Y−2体積%Al)とした試験11は、使用開始直後にチッピングが発生して使用不可の判定とした。同様にZrO−WC複合セラミックスをダイとパンチの双方に用いた試験13も、開始直後にチッピングが生じて使用不可の判定とした。打ち抜き加工初期段階の被加工材へのクラック生成時の動的衝撃加重が、部分安定化ZrOの引張り強さより大きくなり、その応力がそのまま破壊を招いたと考えられる。

ダイを部分安定化ジルコニア、パンチをダイと異なるZrO−WC系のZrO系セラミックとした実験15も、双方を部分安定化ジルコニアとした試験11と同様に、開始直後にチッピングがおき使用不可とした。パンチとダイとの材質の違いはあるが、いずれもCoやNiなどの金属バインダーを有さない組成であるために、剪断時に発生する応力がZrO系材料の引張り強さを超えたために、破壊したものと思われる。

一般的に使用されている、ダイとパンチの双方が同材質の超硬合金からなる、試験12は、ZrO系セラミックスを用いた例と異なり、チッピングは発生しないまま、磨耗するまで順調に使用できた。寿命は350万ショットと、十分でなかった。使用の終盤になると、稜部が磨耗して被加工材のクラック発生が遅くなったためであろうが、切断に圧力が余分に必要になり、まもなく寿命となった。

パンチとダイを異なる組成の超硬合金とした試験14では、同材質をパンチとダイに用いた試験12の例よりは寿命が延びたが、本発明の試験結果と比較すると、この金型が不十分であることが分かる。
打ち抜き加工の実施例を行なった、上金型可動部にパンチを、下金型固定部にダイを設けた、打ち抜き加工金型の全体構造である。 実施例にて行なった、パンチの切れ刃形状(エッジ)を示す 打ち抜かれた被加工材の、板側面から見た模式図を示す
符号の説明
100 本発明の打ち抜き金型を有する打ち抜き金型構造例
1 上型ダイセット
2 ストリップスプリング
3 パンチバッキングプレート
4 パンチホルダー
5 ストリッパープレート
6 パンチ
7 下方ダイセット
8 ダイプレート
9 ダイブロック
10 ダイ
11 ガイド
12 被加工材(金属薄板)
13 ストロークヒンドブロック
14 ガイドポスト
15 材料リフター
20 打ち抜かれた被加工材(全体)
21 被加工材板厚
22 ダレ
23 剪断面
24 破断面
25 バリ高さ(カエリ)

Claims (2)

  1. パンチとダイとの組み合わせからなる金属板を剪断打ち抜き加工する打ち抜き金型において、
    パンチとダイのいずれか一方が超硬合金からなり、他方がZrO系セラミックス材料からなることを特徴とする打ち抜き金型。
  2. ZrO系セラミックス材料が、特にZrO−WC系の複合セラミックス材料である請求項1に記載の打ち抜き金型。
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