<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfに対して後述するように一連の洗浄処理(液膜形成工程+粗乾燥工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を施す装置である。
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1を備え、処理チャンバー1内に基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wに対して凍結処理(凝固体形成処理)を実行するための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3と、基板表面Wfに洗浄液の液滴を供給する二流体ノズル5と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材7が設けられている。
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。
図3は図1の基板処理装置に装備された冷却ガス吐出ノズルの動作を示す図である。ここで、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。第1の回動モータ31を駆動して第1のアーム35を揺動させると、冷却ガス吐出ノズル3は基板表面Wfに対向しながら同図(b)の移動軌跡T、つまり基板Wの回転中心位置Pcから基板Wの端縁位置Peに向かう軌跡Tに沿って移動する。ここで、基板Wの回転中心位置Pcは基板表面Wfの上方で、かつ基板Wの回転中心A0上に設定されている。また、冷却ガス吐出ノズル3は基板Wの側方に退避した待機位置Psに移動可能となっている。
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部61(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガス供給部61から冷却ガスが圧送されると冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出される。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガス吐出ノズル3が基板表面Wfに近接して対向配置されるとともに冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出されると、基板表面Wfに向けて冷却ガスが局部的に供給される。したがって、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら該冷却ガス吐出ノズル3を移動軌跡Tに沿って移動させることで、冷却ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給することができる。これにより、基板表面Wfに液体(DIW)が付着していると、該液体が凍結した領域(凍結領域)が基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、基板表面Wfの全面に対して凍結処理が施される。
冷却ガス供給部61は、例えば冷却用のガスの温度を液体窒素などの冷却源により冷却することで調整する。冷却ガスとしては、後述するようにしてパターンの間隙内部に残留させた液体(内部残留液)の凝固点より低い温度に調整されたガス、例えば窒素ガス、酸素ガスおよび清浄なエア等を用いることができる。この実施形態では、内部残留液としてDIW(deionized Water:脱イオン水)を用いていることから冷却ガスの温度をDIWの凝固点(氷点)よりも低い温度に調整している。また、このように冷却ガスを用いた場合には次の作用効果を得ることができる。すなわち、冷媒としてガスを用いる場合、基板表面Wfへのガス供給前にフィルタ等を介挿することで冷却ガスに含まれる汚染物質を容易に、高効率で除去することができる。そして、こうして清浄化された冷却ガスを用いることで基板表面Wfに汚染物質が付着するのを確実に防止することができる。
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、二流体ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。二流体ノズル5は、洗浄液とガスとを混合して生成した洗浄液の液滴を基板表面Wfに吹き付ける。
図4は二流体ノズルの構成を示す図である。二流体ノズル5は、洗浄液とガスとを空中(ノズル外部)で衝突させて洗浄液の液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。二流体ノズル5は、胴部501の内部に洗浄液吐出ノズル502が挿通されており、洗浄液吐出ノズル502の基端部が洗浄液供給部62(図2)と接続されている。洗浄液供給部62は、制御ユニット4からの動作指令に応じて内部残留液(DIW)よりも凝固点が低い洗浄液を該洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)した状態で洗浄液吐出ノズル502に圧送する。以下においては、このように冷却された洗浄液を冷却洗浄液という。洗浄液吐出ノズル502の先端部には、洗浄液吐出口521が傘部511の上面部512に配置されるように形成されている。このため、冷却洗浄液が洗浄液吐出ノズル502に供給されると、冷却洗浄液が洗浄液吐出口521から基板Wに向けて吐出される。洗浄液には、例えばイソプロピルアルコール(凝固点:−89.5℃)が用いられる。なお、洗浄液はイソプロピルアルコール(IPA)に限定されず、エチルアルコール(凝固点:−114.5℃)、メチルアルコール(凝固点:−98℃)の各種有機溶剤成分を用いるようにしてもよい。また、これら有機溶剤成分とDIWとを混合させた混合液を用いるようにしてもよい。
また、ガス吐出ノズル503が洗浄液吐出ノズル502に近接して設けられており、該洗浄液吐出ノズル502を囲んだリング状のガス通路を規定している。ガス吐出ノズル503の基端部は工場のユーティリティ等で構成される窒素ガス供給部63(図2)に接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて不活性ガスである窒素ガスをガス吐出ノズル503に圧送する。ガス吐出ノズル503の先端部は先細にテーパ状とされており、ガス吐出ノズル503の先端部にガス吐出口531が基板表面Wfに対向して開口している。このため、ガス吐出ノズル503に窒素ガスが供給されると、ガス吐出口531から窒素ガスが基板表面Wfに向けて吐出される。
このように吐出される窒素ガスの吐出軌跡は、洗浄液吐出口521からの冷却洗浄液の吐出軌跡に交わっている。すなわち、洗浄液吐出口521からの冷却洗浄液の液体流は、混合領域内の衝突部位Gにおいてガス(窒素ガス)流と衝突する。ガス流はこの衝突部位Gに収束するように吐出される。この混合領域は、胴部501の下端部の空間である。このため、洗浄液吐出口521からの冷却洗浄液の吐出方向の直近において冷却洗浄液はそれに衝突する窒素ガスによって速やかに液滴化される。こうして、洗浄用液滴が生成される。
図1に戻って説明を続ける。スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。回転支軸21の内部には、基板Wの裏面WbにDIWを供給するための処理液供給管25が挿通されている。処理液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けてDIWを吐出する処理液ノズル27が設けられている。処理液供給管25は工場のユーティリティ等で構成されるDIW供給部64(図2)と接続されており、DIW供給部64からDIWの供給を受けるようになっている。
回転支軸21の内壁面と処理液供給管25の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路29を形成している。このガス供給路29は窒素ガス供給部63と接続されており、スピンベース23と基板裏面Wbとの間に形成される空間に乾燥用ガスとして窒素ガスを供給することができる。なお、この実施形態では、窒素ガス供給部63から乾燥用ガスとして窒素ガスを供給しているが、窒素ガスに替えて空気や他の不活性ガスなどを吐出してもよい。
また、スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材7が設けられている。遮断部材7は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材7は略円筒形状を有する支持軸71の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸71は水平方向に延びるアーム72により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム72には、遮断部材回転機構73と遮断部材昇降機構74が接続されている。
遮断部材回転機構73は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸71を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構73は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材7を回転させるように構成されている。また、遮断部材昇降機構74は、制御ユニット4からの動作指令に応じて遮断部材7をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構74を作動させることで、装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材7を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された近接位置まで遮断部材7を下降させる。
支持軸71は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材7の開口に連通したガス供給路75が挿通されている。ガス供給路75は、窒素ガス供給部63と接続されており、窒素ガス供給部63から窒素ガスが供給される。この実施形態では、基板Wに対する乾燥時にガス供給路75から遮断部材7と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路75の内部には、遮断部材7の開口に連通した液供給管76が挿通されており、液供給管76の下端にノズル77が結合されている。液供給管76はDIW供給部64に接続されており、DIW供給部64からDIWが供給されることで、ノズル77からDIWを基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図5および図6を参照しつつ説明する。図5は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図6は図1の基板処理装置の動作を説明するための模式図である。この装置では、未処理の基板Wが処理チャンバー1内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して基板Wの表面Wfに対して一連の洗浄処理(液膜形成工程+粗乾燥工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を実行する。ここで、基板表面Wfには微細パターンFPが形成されている。つまり、基板表面Wfがパターン形成面になっている。そこで、この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される。なお、遮断部材7は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材7が近接位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。これにより、基板表面Wfが遮断部材7の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル77からDIWを基板表面Wfに供給する。これにより、図6(a)に示すように基板表面Wfに供給されたDIWに遠心力を作用させてDIWを均一に広げて基板表面Wfの全面に液膜(水膜)11を形成する(ステップS1)。このとき、DIWの流動によりパターンFPの間隙内部にDIWが入り込む。つまり、基板表面Wf上のDIWを流動させてパターンFPの間隙内部にまでDIWを入り込ませるように基板Wの回転速度が設定される。
続いて、DIWの供給を停止し、スピンチャック2に保持された基板Wを比較的低速に回転させながら基板Wの粗乾燥処理を実行する。すなわち、パターンFPの間隙内部に入り込ませたDIWを残留させながら基板表面WfからDIWを除去する(ステップS2:液体除去工程)。この粗乾燥処理では、パターンFP上方のDIWが除去されている状態、つまりパターンFPの上面を露出させる程度にまで基板Wを乾燥させる(図6(b))。このような乾燥条件(基板Wの回転速度、乾燥時間等)は、予め被洗浄対象となる基板Wと同種の基板Wを用いて実験的に求めておくことで設定される。したがって、このように設定された乾燥条件を事前に洗浄処理の内容を記述した処理レシピに規定しておけば、基板Wの乾燥状態を実際に確認することなく、上記した乾燥状態となるように基板乾燥を行うことができる。すなわち、規定された乾燥条件に基づいて基板乾燥を行うことで、基板表面Wfに付着するDIWのうちパターンFPの間隙内部に残留付着するDIW(内部残留液)のみを残しながら、それ以外のDIWを基板表面Wfからほぼ除去することが可能となる。このように、この実施形態では、スピンチャック2が本発明の「液体除去手段」として機能する。
また、このように基板Wの粗乾燥処理を実行するのは次のような理由による。すなわち、粗乾燥処理後に後述のように凍結処理(凝固体形成処理)および物理洗浄処理を実行することになるが、仮に粗乾燥処理を行うことなく凍結処理および物理洗浄処理を実行した場合には、基板表面Wfに付着するパーティクルPが液膜11で覆われた状態のまま凍結処理がなされ、パーティクルPが凍結膜中に埋もれてしまう。その結果、凍結処理後に凍結膜を凝固させた状態(凍結状態)のまま物理洗浄を行った場合には、凍結膜中のパーティクルPを基板表面Wfから除去するのは困難となる。そこで、この実施形態では、基板Wの粗乾燥処理を実行して比較的大きなパーティクルPを基板表面Wfに露出させるようにしている。
次に、パターンFPの間隙内部にDIWを残留させた基板Wに対して凍結処理(凝固体形成処理)を実行する。すなわち、制御ユニット4は遮断部材7を離間位置に配置させるとともに、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから供給開始位置、つまり基板Wの回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転駆動されている基板Wの表面Wfに向けて冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。これにより、図3(b)に示すようにDIWが凍結した領域(凍結領域)が基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられる。その結果、図6(c)に示すように基板表面Wfの全面でパターンFPの間隙内部に凝固体13が形成される(ステップS3:凝固体形成工程)。このため、凝固体13によってパターンFPが構造的に補強された状態となる。つまり、パターンFPと凝固体13とが一体となった塊(固形物)と見做せる状態となる。このように、この実施形態では、冷却ガス吐出ノズル3が本発明の「凝固体形成手段」として機能する。
そして、凝固体13を形成した状態(凍結状態)を保ちながら基板表面Wfに対して物理洗浄処理を実行する(ステップS4:物理洗浄工程)。すなわち、図6(d)に示すように制御ユニット4は二流体ノズル5を回転する基板Wの上方で揺動させながら冷却洗浄液の液滴を基板表面Wfに吹き付ける。これにより、冷却洗浄液の液滴が基板表面Wfに付着するパーティクルPに衝突して液滴が有する運動エネルギーによってパーティクルPが物理的に除去(物理洗浄)される(図6(e))。ここで、冷却洗浄液は内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)されているので、パターンFPの間隙内部に形成された凝固体13を凝固させた状態(凍結状態)のまま洗浄を行うことができる。しかも、パーティクルPは粗乾燥処理によって基板表面Wfに露出した状態となっていることから液滴との衝突により効率良く基板表面Wfから除去される。このため、凝固体13によってパターンFPを構造的に補強した状態でパターンFPの間隙内部を除く基板表面領域からパーティクルPが除去される。このように、この実施形態では、二流体ノズル5が本発明の「物理洗浄手段」として機能している。
ここで、二流体ノズルを用いた物理洗浄では、液滴が有する運動エネルギーを利用して液滴を基板表面Wfに付着したパーティクルに衝突させることにより基板表面Wfからパーティクルを除去している。このような物理洗浄では、ガス流量を増加させるなど洗浄条件の変更により液滴が有する運動エネルギーを高めることで基板表面Wfからのパーティクル除去率を向上させることが可能となっている。その一方で、被処理対象となる基板側で何ら対策を講じることなく、液滴が有する運動エネルギーを高めると、パターンFPがダメージを受けてしまう。そこで、この実施形態では、パターンFPの間隙内部に凝固体13を形成し、パターンFPを構造的に補強した状態で物理洗浄を実行している。これにより、液滴が有する運動エネルギーを高めるように洗浄条件を変更しても、パターンFPがダメージを受けるのを防止することができる。したがって、パターンFPへのダメージを抑制しながらパーティクル除去率を向上させることができる。
こうして、所定時間の物理洗浄処理が完了すると、制御ユニット4は遮断部材7を近接位置に配置させるとともに、スピンチャック2とともに遮断部材7を回転させる。また、基板Wとスピンベース23および基板Wと遮断部材7との間の空間に窒素ガスを供給し、基板Wの周辺雰囲気を不活性ガス雰囲気とするとともに、ノズル77および処理液ノズル27から凝固体除去液としてDIWをそれぞれ、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf,Wbに供給する。これにより、凝固体13が融解して基板表面Wfから除去される(ステップS5:凝固体除去工程)。また、パターンFPの間隙内部に付着する汚染物質が凝固体13とともに基板表面Wfから除去される。ここで、パターンFPの間隙内部に付着する汚染物質はパターン表面に対する付着力が低下した状態あるいはパターン表面から脱離した状態にあることから凝固体13を基板表面Wfから除去することによって基板表面Wfから汚染物質が容易に除去される。すなわち、凍結処理の実行により内部残留液(DIW)が凍結(凝固)して体積膨張することでパターン表面と汚染物質との間の付着力が弱められ、あるいは汚染物質がパターンから脱離する。このため、凝固体除去処理において、凝固体13を除去することで凝固体13とともにパターンFPの間隙内部の汚染物質を基板表面Wfから効率良く除去することができる。
凝固体除去処理が完了すると、基板Wの本乾燥処理(仕上げ乾燥)が実行される(ステップS6)。すなわち、DIWの供給を停止し、基板Wおよび遮断部材7を回転させることによって基板Wを乾燥させる。なお、ここでは、パターンFPの間隙内部に付着するDIWをDIWよりも表面張力が低いIPAなどの低表面張力液に置換した上で基板Wの回転乾燥(スピンドライ)を行うことが好ましい。これにより、基板乾燥時にパターンFPが倒壊するのを効果的に防止することができる。基板Wの乾燥処理後、基板Wおよび遮断部材7の回転を停止するとともに基板Wへの窒素ガスの供給を停止する。その後、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される。
以上のように、この実施形態によれば、基板表面WfにDIWの液膜11を形成し、パターンFPの間隙内部にDIWを入り込ませた後、パターンFPの間隙内部にDIWを残留させながら基板表面WfからDIWを除去している。これにより、パターンFPの間隙内部にDIWを残して基板表面Wfに付着するパーティクルPが露出する。その後、パターンFPの間隙内部に残留させたDIW(内部残留液)を凍結させて凝固体13を形成しているので、凝固体13によってパターンFPが構造的に補強された状態となる。そして、このような状態を保ちながら二流体ノズル5を用いて物理洗浄を実行しているので、パターンFPがダメージを受けるのを防止しつつ、基板表面WfからパーティクルPを効率良く除去することができる。したがって、パターンFPへのダメージを抑制しながら基板表面Wfを良好に洗浄処理することができる。しかも、この実施形態によれば、一連の洗浄処理(液膜形成工程+粗乾燥工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を単一の処理チャンバー内で実行することができ、洗浄処理の各工程間で基板Wを搬送することが不要となっている。このため、装置のスループットを向上させることができる。
また、この実施形態によれば、内部残留液(DIW)よりも凝固点が低い洗浄液を該洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点より低い温度に冷却した状態で窒素ガスと混合させて洗浄液(冷却洗浄液)の液滴を生成している。そして、冷却洗浄液の液滴を基板表面Wfに供給して物理洗浄を行っているので、冷却洗浄液自体が凍結するのを防止しながら、パターンFPの間隙内部に凝固体13を形成した状態で、つまりパターンFPを構造的に補強した状態で基板表面Wfに対して物理洗浄を施すことができる。
<第2実施形態>
図7はこの発明の基板処理装置の第2実施形態を示す平面レイアウト図である。この基板処理装置では、スピン処理ユニット10と凍結洗浄ユニット20とが一定距離だけ相互に分離して配置されるとともに、それらの間に基板搬送機構30が配置されている。これらの装置のうち、スピン処理ユニット10は、液膜形成処理、粗乾燥処理(液体除去処理)および凝固体除去処理を実行するユニットである。具体的には、スピン処理ユニット10は、基板表面Wfに液膜11を形成することによってパターンFPの間隙内部にDIWを入り込ませた後、パターンFPの間隙内部に入り込ませたDIWを残留させながら基板表面WfからDIWを除去する。そして、パターンFPの間隙内部に内部残留液(DIW)を付着させた状態で基板Wが基板搬送機構30により凍結洗浄ユニット20に搬送される。凍結洗浄ユニット20では、内部残留液(DIW)を凍結させて凝固体13が形成された後、凍結状態を保ちながら基板表面Wfに対して物理洗浄が施される。物理洗浄を受けた基板Wは基板搬送機構30によりスピン処理ユニット10に搬送されて、スピン処理ユニット10にて基板Wに対して凝固体除去処理が実行された後、乾燥(仕上げ乾燥)される。なお、基板搬送機構30は従来より多用されている機構を用いているため、ここでは構成および動作の説明は省略する。
図8は図7の基板処理装置に装備されたスピン処理ユニットの構成を示す図である。スピン処理ユニット10の構成は、冷却ガス吐出ノズル3と二流体ノズル5を備えていない点を除いて図1に示す基板処理装置の構成と同様である。したがって、冷却ガス吐出ノズル3を用いた凍結処理(凝固体形成処理)および二流体ノズル5を用いた物理洗浄処理を除くその他の基板処理、つまり液膜形成処理、粗乾燥処理(液体除去処理)、凝固体除去処理および本乾燥処理については、スピン処理ユニット10内で第1実施形態と同様にして実行することが可能である。
図9は図7の基板処理装置に装備された凍結洗浄ユニットの構成を示す図である。凍結洗浄ユニット20は、基板Wに近接しながら対向配置される冷却プレート42(本発明の「基板冷却部」に相当)を有している。冷却プレート42は、ほぼ水平で基板Wの平面大きさよりも大きな基板冷却面42aを有し、この基板冷却面42aには、球状のプロキシミティボール43(支持手段)が複数個突設されている。冷却プレート42の内部には、冷媒経路44が基板冷却面42aに沿ってほぼ平行に形成されており、この冷媒経路44の両端が冷媒供給部45に接続されている。冷媒供給部45は、冷媒を冷却させる冷却機構と、冷媒を冷媒経路44に圧送して冷媒経路44内を循環させるポンプ等の圧送機構とを備える。このため、冷媒供給部45から冷媒が供給され、冷媒経路44を出た冷媒は再び冷媒供給部45に帰還されるようになっている。なお、冷媒としては、二流体ノズル5から供給される洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液(DIW)の凝固点より低い温度に基板冷却面42aを冷却(温調)するものであればよい。なお、冷却プレート42は冷熱の伝導性を考慮してアルミニウム等の金属または清浄度を考慮して石英で形成される。
冷却プレート42には、上下方向に貫通するように複数本のリフトピン46が配置されており、このリフトピン46と、このリフトピン46を昇降するエアシリンダなどを含むピン昇降機構47とによって、基板Wを基板冷却面42aに対して近接/離隔させる近接/離隔機構が構成されている。リフトピン46は、その上端に基板Wを支持することができ、ピン昇降機構47による昇降によって、基板Wを基板搬送機構30との間での基板受け渡しのための基板受け渡し高さ(二点鎖線の位置)に支持できる他、冷却プレート42の基板冷却面42aよりも下方(正確にはプロキシミティボール43よりも下方)にその上端を埋没させることにより、基板Wを基板冷却面42a上(正確にはプロキシミティボール43上)に載置することができる(実線の位置)。
また、冷却プレート42の上方には二流体ノズル5が配置されている。二流体ノズル5から内部残留液(DIW)よりも凝固点が低い洗浄液を吐出している点では第1実施形態と同様であるが、この実施形態では洗浄液を内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)することは不要である。すなわち、物理洗浄処理の実行中に後述するように冷却プレート42からの冷熱により凝固体13を形成した状態(凍結状態)を保つことが可能となっており、冷却した洗浄液を用いる必要がない。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図6ないし図9を参照しつつ説明する。未処理の基板Wがスピン処理ユニット10に搬入されると、基板WはパターンFPが形成された表面Wfを上方に向けてスピンチャック2に保持される。その後、第1実施形態と同様に、基板表面Wfに対して液膜形成処理(ステップS1)と粗乾燥処理(ステップS2)とが実行される。これにより、パターンFPの間隙内部にDIW(内部残留液)を残しながら基板表面WfからDIWが除去される(液体除去工程)。
続いて、基板搬送機構30により基板Wがスピン処理ユニット10から凍結洗浄ユニット20に搬送される。具体的には、基板搬送機構30によってパターンFPの間隙内部にDIWを残留させた基板Wがスピン処理ユニット10から搬出された後、凍結洗浄ユニット20に搬入され、リフトピン46上に載置される。なお、凍結洗浄ユニット20への基板Wの搬入に先立ってリフトピン46を基板受け渡し高さまで上昇させておく。
基板Wがリフトピン46上に載置されると、制御ユニット4はピン昇降機構47を制御してリフトピン46を下降させる。そして、基板Wを冷却プレート42の基板冷却面42aに近接させていき、プロキシミティボール43上に載置する。これにより、基板裏面Wbがプロキシミティボール43に当接して支持されるとともに、基板裏面Wbは基板冷却面42aとの間に微小な間隙を設けた状態で基板冷却面42aと対向しながら冷却プレート42に近接配置される。したがって、基板Wがプロキシミティボール43によって支持されて基板冷却面42aに近接している状態では、基板冷却面42aからの冷熱の伝導によって基板Wは裏面側から冷却される。その結果、内部残留液が凍結してパターンFPの間隙内部に凝固体13が形成される(ステップS3;凝固体形成工程)。これにより、凝固体13によってパターンFPが構造的に補強された状態となる。このように、この実施形態では、冷却プレート42が本発明の「凝固体形成手段」として機能する。
そして、基板冷却面42aからの冷熱により基板Wを冷却した状態で、二流体ノズル5を基板Wの上方で揺動させながら洗浄液の液滴を基板表面Wfに吹き付ける。ここで、洗浄液の凝固点は内部残留液(DIW)の凝固点より低く、基板冷却面42aが洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点より低い温度に冷却されていることから、洗浄液自体が凍結するのを防止しながら、パターンFPの間隙内部に凝固体13を形成した状態(凍結状態)で、洗浄液の液滴による物理洗浄が実行される(ステップS4;物理洗浄工程)。これにより、パターンFPがダメージを受けるのを防止しつつ、パターンFPの間隙内部を除く基板表面領域からパーティクルPが除去される。
こうして、所定時間の物理洗浄処理が完了すると、制御ユニット4は、ピン昇降機構47を制御してリフトピン46を上昇させ、基板受け渡し高さまで導く。そして、リフトピン46が基板受け渡し高さに導かれると、基板Wが基板搬送機構30に受け渡される。その後、基板搬送機構30により基板Wが凍結洗浄ユニット20から搬出され、スピン処理ユニット10に搬送される。
スピン処理ユニット10に基板Wが搬入されると、スピンチャック2に保持される。そして、スピンチャック2に保持された基板Wに対して凝固体除去処理が実行される(ステップS5)。これにより、凝固体13が融解して基板表面Wfから除去されるとともに、パターンFPの間隙内部に付着する汚染物質が基板表面Wfから除去される(凝固体除去工程)。その後、基板Wの本乾燥処理(仕上げ乾燥)が実行される(ステップS6)。
以上のように、この実施形態によれば、第1実施形態と同様にしてパターンFPの間隙内部に残留させたDIW(内部残留液)を凍結させて凝固体13を形成し、パターンFPを構造的に補強している。そして、このようにパターンFPを補強した状態で二流体ノズル5を用いて物理洗浄を実行している。したがって、パターンFPへのダメージを抑制しながら基板表面Wfを良好に洗浄処理することができる。
また、この実施形態によれば、内部残留液よりも凝固点が低い洗浄液の液滴を基板表面Wfに供給するとともに、洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点より低い温度に冷却された基板冷却面42aを有する冷却プレート42を基板裏面Wbに対向させながら物理洗浄を行っている。このため、洗浄液自体が凍結するのを防止しながら、パターンFPの間隙内部に凝固体13を形成した状態で、つまりパターンFPを構造的に補強した状態で基板表面Wfに対して物理洗浄を施すことができる。しかも、第1実施形態では、冷却ガス吐出ノズル3を用いて凝固体形成処理を実行する一方、洗浄液を冷却した状態で二流体ノズル5から吐出させて物理洗浄中における凝固体13の凍結状態を維持する必要があるのに対し、この実施形態では冷却プレート42を基板Wに近接して配置することのみで凝固体形成処理の実行と物理洗浄中における凝固体13の凍結状態を維持することができる。
<第3実施形態>
図10はこの発明の基板処理装置の第3実施形態を示す平面レイアウト図である。この基板処理装置では、複数枚の基板Wに対して一括して洗浄処理(液膜形成工程+粗乾燥工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を施すことが可能となっている。この基板処理装置では、基板搬送機構600が互いに分離して配置された処理ユニット、つまりスピン処理ユニット100(本発明の「液体除去手段」に相当)、凍結処理ユニット200(本発明の「凝固体形成手段」に相当)、物理洗浄処理ユニット300(本発明の「物理洗浄手段」に相当)、リンス処理ユニット400および乾燥処理ユニット500に順次搬送して一連の洗浄処理を施す。
最初に、スピン処理ユニット100について説明する。図11は図10の基板処理装置に装備されるスピン処理ユニットの構成を示す図である。このスピン処理ユニット100は、処理チャンバー101を備えており該処理チャンバー101の内部で、複数基板Wに対して一括して液膜形成処理および粗乾燥処理を施すことが可能となっている。処理チャンバー101内には複数の基板Wが互いに離間し、しかも互いに積層された状態で基板保持部110により保持されている。基板保持部110は、鉛直方向に延設された、複数基板Wの各々を略水平姿勢で保持するための複数本、例えば3本の基板保持柱111と、3本の基板保持柱111の上下端をそれぞれ連結して固定するリング状の支持板112とを有している。支持板112は回転支軸102により鉛直軸回りに回転自在に支持されている。回転支軸102はスピンモータ103の回転軸に連結されており、スピンモータ103の駆動により基板保持部110に保持された基板Wが鉛直軸回りに回転する。
また、基板保持部110により保持された複数の基板Wの各々に対応してDIW供給ノズル104が設けられている。各DIW供給ノズル104は基板Wの積層方向に沿って延びる供給管105の側面に接続されており、DIW供給ユニット(図示せず)から供給されるDIWが供給管105を介してDIW供給ノズル104に導かれ、DIW供給ノズル104から対応する基板Wの表面Wfに向けて吐出される。また、処理チャンバー101の底部には、排液ポート106が設けられており、基板Wから排出された液体成分を排液ポート106から系外にドレンすることが可能となっている。
次に、凍結処理ユニット200について説明する。図12は図10の基板処理装置に装備された凍結処理ユニットの構成を示す図である。凍結処理ユニット200は、内部に複数の基板Wを収容可能な処理空間SPが形成された処理槽201を備えている。また、凍結処理ユニット200には、リフタ202が処理槽201の内部位置(図12に示した位置)と処理槽201の上方位置との間で昇降自在に設けられ、リフタ駆動機構202aによって昇降駆動される。これにより、リフタ202が有する基板保持ガイド203によって複数の基板Wを保持した状態で、処理槽201の上方位置と処理空間SPに収容された位置とに複数基板Wを配置可能となっている。
処理槽201の内壁面211は処理空間SPを冷却する冷却面となっており、処理空間SPを包囲するように内壁面211に沿って冷媒経路204が形成されている。この冷媒経路204の両端は冷媒供給部205に接続されている。冷媒供給部205は、冷媒を冷却させる冷却機構と、冷媒を冷媒経路204に圧送して冷媒経路204内を循環させるポンプ等の圧送機構とを備える。このため、冷媒供給部205から冷媒が供給され、冷媒経路204を出た冷媒は再び冷媒供給部205に帰還されるようになっている。冷媒としては、内壁面211を介して処理空間SPの温度を内部残留液(DIW)の凝固点より低い温度に冷却するものであればよい。
処理槽201の上部は基板搬出入口となっており、シャッタ206をシャッタ駆動機構207により駆動することで開閉可能とされている。処理槽201の上部を開放した状態において、その開放部分からリフタ駆動機構202aにより複数の基板Wの搬出入を行う一方、処理槽201の上部を閉鎖した状態で、処理槽201内部の処理空間SPを密閉空間にすることができる。また、密閉状態における処理空間SPの冷却効率を高めるために処理槽201の外壁およびシャッタ206は断熱材208により覆われている。
次に、物理洗浄処理ユニット300について説明する。図13は図10の基板処理装置に装備された物理洗浄処理ユニットの構成を示す図である。この物理洗浄処理ユニット300は、複数枚の基板Wに洗浄液を介して超音波振動を付与することによって複数基板Wに対して物理洗浄を施す。物理洗浄処理ユニット300は洗浄液を貯留した処理槽301を備え、処理槽301の内部には複数の基板Wを起立姿勢で収容するリフタ302が配置されている。このリフタ302は処理槽301の内部位置(図13に示した位置)と処理槽301の上方位置との間で昇降自在とされ、リフタ駆動機構302aによって昇降駆動される。また、リフタ302は複数の基板Wを保持するための3本の基板保持ガイド303を備えている。
処理槽301の内底部付近には、管状をなす2本の洗浄液供給ノズル304が、それぞれ略水平方向に配設されている。これら洗浄液供給ノズル304には、洗浄液を吐出する複数個の吐出孔305がそれぞれ形成されている。また、各洗浄液供給ノズル304は洗浄液供給管306を介して洗浄液供給部307に連通されており、洗浄液供給部307から洗浄液が圧送されると、各洗浄液供給ノズル304から洗浄液が処理槽301に供給される。各洗浄液供給ノズル304からそれぞれ吐出された洗浄液は、左右両側から噴出した洗浄液が槽中央部で上昇流を形成しつつ、槽上部の開口部からオーバーフローするようになっている。そして、このオーバーフローされる洗浄液によって洗浄液中に拡散する汚染物質を洗浄液とともにオーバーフロー槽309で受け、槽外に排出させるようになっている。
洗浄液供給部307は、内部残留液(DIW)よりも凝固点が低い洗浄液を該洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)した状態で洗浄液供給ノズル304に圧送する。これにより、処理槽301内が冷却された洗浄液(冷却洗浄液)で満たされる。なお、洗浄液供給部307から冷却洗浄液を供給することに代えて洗浄液供給部307から処理槽301に供給された洗浄液を該洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却するように構成してもよい。
また、処理槽301の底部および周側部の一部を取り囲むように外槽311が配設されている。外槽311には超音波振動を伝播するための伝播液が貯留されている。外槽311の下部には超音波振動子312が設置されている。超音波振動子312は高周波発信器(図示せず)によって駆動され、超音波振動子312が発生した超音波振動は、外槽311内に貯留された伝播液および処理槽301の底壁面から処理槽301内の洗浄液に伝わる。これにより、洗浄液を介して洗浄液中に浸漬された基板Wに超音波振動が付与される。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図10ないし図13を参照しつつ説明する。未処理の基板Wがスピン処理ユニット100に搬入されると、基板保持部110により保持される。そして、スピンモータ103の駆動により基板Wを回転させながら複数基板Wの各々の表面WfにDIW供給ノズル104からDIWが供給されると、各基板Wの表面Wfに液膜が形成される(ステップS1)。このとき、DIWの流動によりパターンの間隙内部にDIWが入り込む。その後、基板Wの回転を継続させつつDIWの供給が停止されることによって基板Wの粗乾燥処理が行われる。これにより、パターンの間隙内部にDIW(内部残留液)を残しながら基板表面WfからDIWが除去される(ステップS2;液体除去工程)。
続いて、基板搬送機構600により基板Wがスピン処理ユニット100から凍結処理ユニット200に搬送される。凍結処理ユニット200では、処理槽201の上方位置に待機していたリフタ202が基板搬送機構600から基板Wを受け取る。そして、リフタ駆動機構22aの作動によりリフタ202を下降させて基板Wを処理槽201内の処理空間SPに収容した位置に配置させる。なお、このとき、シャッタ206を開状態とし、処理槽201の上部を開放した状態としておく。
処理槽201内に基板Wが収容されると、シャッタ206が閉じられる。ここで、処理槽201内の処理空間SPは空間全体の温度が内部残留液(DIW)の凝固点よりも低い温度に冷却されていることから、各基板Wにおいて内部残留液が凍結してパターンの間隙内部に凝固体が形成される(ステップS3;凝固体形成工程)。これにより、凝固体によってパターンが構造的に補強された状態となる。凝固体形成処理が完了すると、シャッタ206を開き、リフタ202を処理槽201の上方位置まで上昇させ、基板Wを基板搬送機構600に受け渡す。なお、次の基板Wがスピン処理ユニット100から搬送されてくるまでシャッタ206が閉じられる。
続いて、基板搬送機構600は、凍結処理ユニット200から物理洗浄処理ユニット300に基板Wを搬送する。物理洗浄処理ユニット300では、処理槽301の上方位置に待機していたリフタ302が基板搬送機構600から基板Wを受け取り、リフタ駆動機構302aの作動によりリフタ302を下降させる。これにより、複数基板Wが処理槽301に貯留された冷却洗浄液に一括して浸漬され、該複数基板Wの各々に対して冷却洗浄液を介して超音波振動が付与される(ステップS4;物理洗浄工程)。これにより、基板Wに付着するパーティクルは超音波振動子312からの超音波振動の衝撃を受けて基板Wから脱離する。処理槽301内では処理槽301の上方へ向かう洗浄液の流れ(上昇流)が形成されていることから、基板Wから脱離したパーティクルは処理槽31からオーバーフローされる洗浄液とともに槽外に排出される。また、冷却洗浄液は内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)されているので、パターンの間隙内部に形成された凝固体を凍結状態のまま物理洗浄を行うことができる。しかも、パーティクルは粗乾燥処理によって基板表面Wfに露出した状態となっていることから超音波振動により効率良く基板面Wfから除去される。
ここで、超音波を用いた物理洗浄(超音波洗浄)では、超音波振動によって基板Wに付着するパーティクルを振動させて脱離させたり、洗浄液中に発生したキャビテーションや気泡を基板Wに作用させることにより基板Wからパーティクルを除去している。このような物理洗浄では、超音波振動子の発振出力を上げるなど洗浄条件の変更により基板Wに到達する振動エネルギー(超音波振動エネルギー)を高めることで基板表面Wfからのパーティクル除去率を向上させることが可能となっている。その一方で、被処理対象となる基板側で何ら対策を講じることなく、超音波振動エネルギーを高めると、パターンがダメージを受けてしまう。そこで、この実施形態では、パターンの間隙内部に凝固体を形成し、パターンを構造的に補強した状態で物理洗浄を実行している。これにより、超音波振動エネルギーを高めるように洗浄条件を変更しても、パターンがダメージを受けるのを防止することができる。したがって、パターンへのダメージを抑制しながらパーティクル除去率を向上させることができる。
こうして、所定時間の物理洗浄処理が完了すると、リフタ302を上昇させて処理槽301の上方位置で基板搬送機構600に基板Wを受け渡す。そして、基板搬送機構600は基板Wをリンス処理ユニット400に搬送する。リンス処理ユニット400は、リンス液としてDIWを貯留したリンス槽(図示せず)を備え、リンス槽内のリンス液に基板Wが浸漬されることで凝固体が融解して基板表面Wfから除去されるとともに、パターンの間隙内部に付着する汚染物質が基板表面Wfから除去される(ステップS5;凝固体除去工程)。その後、リンス処理ユニット400から乾燥処理ユニット500に基板Wが搬送され、乾燥処理ユニット500内で基板Wの本乾燥処理(仕上げ乾燥)が実行される(ステップS6)。なお、乾燥処理ユニット500としては、乾燥室41内を加熱および/または減圧することで基板Wを乾燥させるものであってもよいし、蒸気乾燥させるものであってもよい。
以上のように、この実施形態によれば、パターンの間隙内部に残留させたDIW(内部残留液)を凍結させて凝固体を形成し、パターンを構造的に補強している。そして、このようにパターンを補強した状態で超音波洗浄を実行している。したがって、パターンへのダメージを抑制しながら基板Wを良好に洗浄処理することができる。
また、この実施形態によれば、内部残留液(DIW)よりも凝固点が低い洗浄液を該洗浄液の凝固点よりも高く、かつ内部残留液の凝固点より低い温度に冷却した状態で処理槽301に貯留させるとともに、洗浄液内に複数の基板Wを浸漬させながら洗浄液を介して各基板Wに超音波振動を付与して物理洗浄を行っている。したがって、パターンの間隙内部に凝固体を形成した状態で、つまりパターンを構造的に補強した状態で複数基板Wの各々の基板表面Wfに対して一括して物理洗浄を施すことができる。
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、パターンの間隙内部に残留させる液体、つまり内部残留液としてDIWを使用しているが、これに限定されない。例えば内部残留液としてDIWよりも凝固点の高い液体を用いるようにしてもよい。例えば内部残留液として第3ブチルアルコール(凝固点:25.4℃)を用いた場合には、次のようにして洗浄処理が実行される。ここでは、図5および図6を参照しつつ説明する。
先ず、第3ブチルアルコールを融解させた状態(第3ブチルアルコールの凝固点より高温に温調)で基板表面Wfに第3ブチルアルコールによる液膜11を形成し、第3ブチルアルコールをパターンFPの間隙内部に入り込ませる。その後、パターンFPの間隙内部に第3ブチルアルコールを残しながら基板表面Wfから第3ブチルアルコールを除去する(液体除去工程)。続いて、常温(第3ブチルアルコールの凝固点より低温)に戻して第3ブチルアルコールを凝固させてパターンFPの間隙内部に凝固体13を形成する(凝固体形成工程)。これにより、凝固体13によってパターンFPが構造的に補強された状態となる。そして、このような状態を保ちながら基板表面Wfに対して洗浄液としてDIWを用いて物理洗浄処理を実行する(物理洗浄工程)。ここでは、洗浄液(DIW)を温調することなく常温で用いることができる。また、基板Wについても特に温調する必要がない。したがって、洗浄液および基板Wに対する温調手段を新たに設けることなく、凝固体13を形成した状態で物理洗浄を実行することができる。その後、凝固体除去液として第3ブチルアルコールの凝固点より高温に温調された温水を用いて基板表面Wfから凝固体13を除去した後(凝固体除去工程)、基板Wを乾燥させる。
また、内部残留液として第3ブチルアルコールとDIWとを混合させた混合液を用いるようにしてもよい。このように第3ブチルアルコールにDIWを混合させることで混合液の凝固点を第3ブチルアルコールの凝固点よりも低下させることができる。これにより、第3ブチルアルコールとDIWとの混合比率を変えることで例えば20℃前後で混合液を凝固(または混合液を凝固させた凝固体を融解)させるように調整することができ、使い勝手を向上させることができる。
また、上記実施形態では、液体除去工程において基板Wを回転させながらパターンFPの間隙内部に液体を残しながら基板表面Wfから液体を除去しているが、基板表面Wfからの液体除去方法はこれに限定されない。例えば、エアナイフ(本発明の「液体除去手段」に相当)からガスを基板表面Wfに吹き付けながらエアナイフを基板表面Wfに対して所定の移動方向に相対移動させながら基板表面Wfに付着する液体を液切り除去するようにしてもよい。この場合でも、エアナイフから噴射されるガス流量等を調整することにより、パターンFPの間隙内部に液体を残しながらパターンFPの上面を露出させる程度にまで基板Wを乾燥させることが好ましい。
また、上記第1および第2実施形態では、洗浄液とガスとをノズル外部(空中)で混合させて洗浄液の液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行しているが、これに限定されず、洗浄液とガスとをノズル内部で混合させて洗浄液の液滴を生成する、いわゆる内部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行するようにしてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、物理洗浄工程において二流体ノズルから洗浄液の液滴を基板表面Wfに向けて供給することで基板表面Wfに対して物理洗浄を施しているが、本発明で用いられる物理洗浄は、これらの物理洗浄に限らず、パターンFPの間隙内部に形成した凝固体13が融解しない条件で洗浄できる限り任意である。例えば、基板表面Wfに対してブラシ等を接触させて基板Wを洗浄するブラシ洗浄、基板表面Wfに向けて洗浄液を高圧で噴射させて基板Wを洗浄する高圧ジェット洗浄、微小な氷粒を基板表面Wfに衝突させて基板Wを洗浄するアイススクラバ、または冷却により固化したドライアイス(CO2)、氷(H2O)あるいはアルゴン(Ar)などの粒子を高速に吹き付けて基板表面Wfを洗浄するエアロゾル洗浄または超音波ノズルを用いた超音波洗浄を用いることができる。特に、アイススクラバおよびエアロゾル洗浄は比較的低温で実行することが可能であるため、内部残留液を凍結により凝固させる場合には凝固体13を形成した状態(凝固した状態)を保ちながら物理洗浄を行うのに有効である。