JP2008241627A - 回転センサ付きカバー及びその製造方法、並びに車輪支持用軸受ユニット - Google Patents

Abstract

【課題】防水性に優れた回転センサ付きカバー及びその製造方法、並びに車輪支持用軸受ユニットを提供する。
【解決手段】車輪支持用軸受ユニット１０の回転センサ付きカバーは、金属製のエンドキャップ３０の円筒部４２内の一部から平板部４１の内側に延出し、センサ素子３５、アンプ部３６、ケーブル３７の一部を保持する熱可塑性樹脂からなる第１の保持部５０と、ケーブル３７が外側に延出される状態で円筒部４２内の残りの部分に充填され、硬化温度が熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂からなる第２の保持部５１と、を備える。
【選択図】図１

Description

本発明は、回転センサ付きカバー及びその製造方法、並びに車輪支持用軸受ユニットに関し、特に、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するための車輪支持用軸受ユニットにおいて、静止輪に取り付けられるカバーに、車輪の回転速度を検出する回転センサを備えた回転センサ付きカバーの改良に関する。

近年、自動車の安全性を向上する技術として、制動時に車輪がロックしないように制御するアンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）や発進時に車輪がスリップしないように制御するトラクションコントロールシステムが採用されている。これらのシステムでは、車輪のロックあるいはスリップを制御するために、車輪の回転速度を正確に計測する回転センサが設けられている。車輪を支持する車輪支持用軸受ユニットにおいては、一般的に、回転センサは外輪のインボード側に設けられたカバーに取り付けられる。（例えば、特許文献１及び２参照。）。

特許文献１に記載の車輪支持用軸受ユニット１００では、図３に示すように、回転輪である内輪１０１にエンコーダ１０２が嵌合され、静止輪である外輪１０３に合成樹脂製のカバー本体１０４と金属製の芯金１０５からなるカバー１０６が取り付けられており、カバー本体１０４にはセンサ１０７が取り付けられている。カバー１０６は、カバー本体１０４と芯金１０５との境目に、外輪１０３の端面と接触するＯリング１０８を装着しており、カバー内部の防水を図っている。

また、特許文献２に記載の回転センサ付きカバー２００では、図４に示すように、回転センサ２０１は、ボビン２０２や、ボビン２０２周りのコイル２０３や端子２０４を覆うように成形される外層樹脂２０５によって、カバー２０６と固定される。また、カバー２０６の穴の周辺には外層樹脂２０５よりも融点の低いシール剤２０７が塗布されており、外層樹脂２０５の成形時の熱で溶融してシール性を保っている。
特開平９−１７１０３０号公報（第１図） 特開平８−７５７６３号公報（第９図）

ところで、図３に示した特許文献１に記載の車輪支持用軸受ユニット１００では、Ｏリング１０８を、芯金１０５に射出成形されるカバー本体１０４と同時に成形することは現実的に不可能であり、Ｏリング１０８の取付け作業の手間やＯリング１０８自体が必要となり、コストが嵩むという問題がある。

また、図４に示した特許文献２に記載の回転センサ付きカバー２００では、シール剤２０７を溶融した際に、シール剤２０７の流出が起こりやすく、信頼性の高い防水方法ではなかった。

本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、防水性に優れた回転センサ付きカバー及びその製造方法、並びに車輪支持用軸受ユニットを提供することにある。

本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
（１） 平板部と、該平板部から外側に延出する筒部と、を有する金属製のカバー部材と、
前記筒部内の一部から前記平板部の内側に延出し、少なくともセンサ素子を埋設して保持する熱可塑性樹脂からなる第１の保持部と、
前記筒部内の残りの部分に充填され、硬化温度が前記熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂からなる第２の保持部と、
を備えることを特徴とする回転センサ付きカバー。
（２） 前記第１の保持部は、前記センサ素子、アンプ部、及びケーブルの一部を保持しており、前記第２の保持部は、前記ケーブルを外部に延出するように保持することを特徴とする（１）に記載の回転センサ付きカバー。
（３） 周面に静止側軌道面を有し、懸架装置と結合可能な静止輪と、
前記静止側軌道面と対向する周面に回転側軌道面を有すると共に、外周面に車輪を支持する為の車輪取付フランジを有する回転輪と、
前記静止側軌道輪と前記回転側軌道輪との間に設けられる複数の転動体と、
前記回転輪の一部に前記回転輪と同心に固定されるエンコーダと、
（１）又は（２）に記載の回転センサ付きカバーと、
を備えることを特徴とする車輪支持用軸受ユニット。
（４） 平板部と、該平板部から外側に延出する筒部と、を有する金属製のカバー部材を加工する工程と、
前記筒部内の一部から前記平板部の内側に延出し、少なくともセンサ素子を埋設して保持する第１の保持部を、熱可塑性樹脂によって成型する工程と、
前記筒部内の残りの部分に充填される第２の保持部を、硬化温度が前記熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂によって成型する工程と、
を備えることを特徴とする回転センサ付きカバーの製造方法。
（５） 前記熱硬化性樹脂は、前記筒部内の残りの部分に注入後に、真空引きされ、且つ、前記硬化温度が維持された状態で硬化されることを特徴とする（４）に記載の回転センサ付きカバーの製造方法。

本発明の回転センサ付きカバー及びその製造方法によれば、金属製のカバー部材の筒部内の一部から平板部の内側に延出し、少なくともセンサ素子を保持する熱可塑性樹脂からなる第１の保持部と、ケーブルが外側に延出される状態で筒部内の残りの部分に充填され、硬化温度が熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂からなる第２の保持部と、を備えるので、カバー部材と第１の保持部との間に隙間が空いた場合にも、第２の保持部が隙間に浸透して充填され、防水性に優れたものとなる。

以下、本発明の一実施形態に係るセンサ付き車輪支持用軸受ユニットについて図面を参照して詳細に説明する。

本実施形態のセンサ付き車輪支持用軸受ユニット１０は従動輪用とされており、図１に示すように、回転輪であるハブ１１及び静止輪である外輪１２と、複数の転動体である玉１３とを備えている。ハブ１１は、中空状のハブ輪１５を備えており、ハブ輪１５は、その外周面の軸方向一端寄り部分であるアウトボード側端部（自動車への組み付け状態で車幅方向外側の端部：図１の左端部）に径方向外方に延びる車輪取り付けフランジ１６を有している。車輪取り付けフランジ１６には、そのアウトボード側側面に車輪を構成する図示しないホイール及びブレーキロータ等を取り付けるためのスタッド１７が周方向に略等間隔で複数植設されている。

ハブ輪１５のインボード側の軸方向端部（自動車への組み付け状態で車幅方向内側の端部：図１の右端部）には小径段部１９が形成されており、該小径段部１９にはハブ１１を構成する内輪２０が外嵌されている。そして、小径段部１９の内輪２０の内端面から突出した部分を直径方向外方に加締め広げる事で、内輪２０をハブ輪１５に結合固定している。なお、内輪２０は、ハブ輪１５の小径段部１９の突出部分にナットを締結させることで、ハブ輪１５に固定されてもよい。また、ハブ輪１５の軸方向の中間部外周面には回転側軌道面である第１内輪軌道面２１が形成され、内輪２０の外周面には回転側軌道面である第２内輪軌道面２２が形成されている。

外輪１２の内周面には、ハブ輪１５の第１内輪軌道面２１に対応する静止側軌道面である第１外輪軌道面２３及び内輪２０の第２内輪軌道面２２に対応する静止側軌道面である第２外輪軌道面２４が形成されている。また、車輪取り付けフランジ１６から離間する側の外輪１２の端部には、径方向外方に延びる懸架装置取り付けフランジ２５が設けられており、このフランジ２５を介して図示しない懸架装置に固定されている。

そして、複列の第１及び第２内輪軌道面２１，２２と複列の第１及び第２外輪軌道面２３，２４との間にそれぞれ複数の玉１３が保持器１４を介して周方向に転動可能に配設されている。尚、図示の例では、転動体として玉１３を使用しているが、重量の嵩む車輪支持用軸受ユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。

また、外輪１２のアウトボード側端部内周面と、これに対向するハブ輪１５の外周面との間には、外輪１２に内嵌される芯金２７に固定されたシール部材２８をハブ輪１５の外周面に摺接させるシール装置２９が配置されている。

一方、外輪１２のインボード側端部の内周面には、金属製のカバー部材であるエンドキャップ３０が内嵌固定されており、エンドキャップ３０は、外輪１２のインボード側端部を囲う。従って、シール装置２９とエンドキャップ３０とで、外輪１２とハブ輪１５及び内輪２０との間の環状空間が密封され、内部に充填されたグリースの漏洩と外部からの水や異物の浸入を防止する。

上述の様な車輪支持用軸受ユニット１０を自動車に組み付けるには、外輪１２の懸架装置取り付けフランジ２５を懸架装置に固定し、回転輪側のハブ輪１５の車輪取り付けフランジ１６にスタッド１７やナット（図示せず）等を介してブレーキロータ及びホイールを固定する。これにより、車輪を懸架装置に対して回転自在に支持することができる。

さらに、車輪支持用軸受ユニット１０は、内輪２０の肩部に内輪２０と同心に支持環３２を介して固定されるエンコーダ３３を有し、エンドキャップ３０に取り付けられた回転センサ３４によってエンコーダ３３の回転を検出している。

図２に示すように、エンドキャップ３０は、外輪１２の内周面に内嵌される筒状の嵌合部４０と、嵌合部４０を径方向外側に折り曲げ、さらに径方向内側に折り返される平板部４１と、エンコーダ３３と軸方向から見て重なる位置で、平板部４１から嵌合部４０と反対側の軸方向外側に延出する筒部である円筒部４２と、を有する。

また、エンドキャップ３０の円筒部４２内の一部から平板部４１の内側に延出する部分には、回転センサ３４を構成するセンサ素子３５、アンプ部３６、ケーブル３７の一部を埋設して保持する熱可塑性樹脂からなる第１の保持部５０が形成される。さらに、円筒部４２内の残りの部分には、硬化温度が熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂からなる第２の保持部５１が充填され、ケーブル３７を外部に延出するように保持している。ここで、本実施形態では、第１の保持部５０として、ＰＢＴ（ポリブチレンテレフタレート）、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）等の熱可塑性樹脂が使用され、第２の保持部５１としては、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が使用される。

センサ素子３５は、第１の保持部５０のエンコーダ寄り部分に配置され、ホール素子や磁気抵抗素子（ＭＲ素子）等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子並びにこの磁気検出素子の出力波形を整える為の波形整形回路を組み込んだＩＣと、エンコーダ３３の永久磁石から出る磁束を磁気検出素子に導くための、磁性材製のポールピース等とからなる。また、第１の保持部５０内には、ＩＣから整形された波形を増幅するアンプ部３５と、アンプ部３５からの出力信号を図示しない制御器に送るためのケーブル３７の端部が接続されている。なお、センサ素子３４のＩＣが増幅機能を有する場合には、アンプ部３５を設けなくてもよい。

次に、エンドキャップ３０及び回転センサ３４を備える回転センサ付きカバーの製造工程について図２を参照して説明する。まず、開口を有する平板状の素材にプレス加工等を行って、嵌合部４０と、平板部４１と、円筒部４２と、を備えたエンドキャップ３０を形成する。そして、このエンドキャップ３０を図示しない金型内に組み込み、円筒部４２側から挿入される、それぞれ接続されたセンサ素子３５、アンプ部３６、ケーブル３７をエンドキャップ３０と金型によって形成される空間内配置し、該空間に熱可塑性樹脂を注入する。これにより、円筒部４２内の一部から平板部４１の内側に延出し、センサ素子３５、アンプ部３６、ケーブル３７の一部が埋設される第１の保持部５０を成型する。

次に、図２（ａ）に示すように、エンドキャップ３０の円筒部４２内の残りの部分に、第１の保持部を下方に配置した状態で、硬化温度が熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂を注入する。そして、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂が溶融することなくその硬化温度を維持することで硬化し、図２（ｂ）に示すように、ケーブル３７を外部に延出するように保持する第２の保持部５１が成型される。

熱硬化性樹脂は、金属との接着性が熱可塑性樹脂より強く、また、熱可塑性樹脂との接合力も確保できるため、後から注入した熱硬化性樹脂によって構成される第２の保持部５１は、円筒部４２及び第１の保持部５０と強く結合する。また、第２の保持部５１は、エンドキャップ３０と第１の保持部５０との間に隙間が空いていても、隙間に浸透して充填され、エンドキャップ３０と第１の保持部５０との結合をより強固にする。

なお、熱硬化性樹脂を注入後に、例えば、真空炉等、真空引きされ、且つ、硬化温度が維持される装置に入れれば、エンドキャップ３０と第１の保持部５０との間の隙間が脱気されるに伴い、熱硬化性樹脂は急速に隙間に染み渡るので、熱硬化性樹脂の硬化後、エンドキャップ３０と第１の保持部５０とのより強固な結合が得られる。

従って、本実施形態の回転センサ付きカバー及び車輪支持用軸受ユニット１０によれば、金属製のエンドキャップ３０の円筒部４２内の一部から平板部４１の内側に延出し、センサ素子３５、アンプ部３６、ケーブル３７の一部を保持する熱可塑性樹脂からなる第１の保持部５０と、ケーブル３７が外側に延出される状態で円筒部４２内の残りの部分に充填され、硬化温度が熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂からなる第２の保持部５１と、を備えるので、エンドキャップ３０と第１の保持部５０との間に隙間が空いた場合にも、第２の保持部５１が隙間に浸透して充填され、エンドキャップ３０と各保持部５０，５１をより強固に結合し、防水性に優れたものとなる。

特に、車輪支持用軸受ユニット１０は、振動の大きな環境で使用されるため、上記のような強固な結合は、振動による回転センサのガタつきやそれに伴う摩耗を防止することができる。

なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。

本実施形態では、本発明の回転センサ付きカバーが従動輪を支持する車輪支持用軸受ユニットに適用される場合について説明したが、駆動輪を支持する車輪支持用軸受ユニットであってもよい。その場合、金属製のカバー部材には、平板部に等速ジョイントが挿入されるための孔が形成される。

また、本発明の第１の保持部は、少なくともセンサ素子を保持する構成であればよく、本実施形態のようにセンサ素子、アンプ部、ケーブルの一部を保持する構成に限定されるものでない。
さらに、本発明の第２の保持部は、本実施形態のように、円筒部の残りの部分全体に充填されてもよいが、残りの部分に部分的に充填されてもよく、少なくともエンドキャップと第１の保持部との隙間を埋めて充填されるものであればよい。
加えて、本発明の筒部は、本実施形態のような円筒部に限らず、断面が楕円形状や小判形状等、任意の形状に形成されてもよい。

本発明の一実施形態に係る車輪支持用軸受ユニットを説明するための断面図である。 図１の回転センサ付きカバーの製造過程を説明するための図である。 従来の回転センサ付きカバーを説明するための断面図である。 従来の他の回転センサ付きカバーを説明するための断面図である。

符号の説明

１０ 車輪支持用軸受ユニット
１１ ハブ（回転輪）
１２ 外輪（静止輪）
１３ 玉（転動体）
１５ ハブ輪
１９ 小径段部
２０ 内輪
２１ 第１内輪軌道面（回転側軌道輪）
２２ 第２内輪軌道面（回転側軌道輪）
２３ 第１外輪軌道面（静止側軌道輪）
２４ 第２外輪軌道面（静止側軌道輪）
２９ シール装置
３０ エンドキャップ（カバー部材）
３３ エンコーダ
３４ 検出部
３５，３５ａ センサ孔
４０ センサユニット

Claims (5)

1. 平板部と、該平板部から外側に延出する筒部と、を有する金属製のカバー部材と、
   前記筒部内の一部から前記平板部の内側に延出し、少なくともセンサ素子を埋設して保持する熱可塑性樹脂からなる第１の保持部と、
   前記筒部内の残りの部分に充填され、硬化温度が前記熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂からなる第２の保持部と、
   を備えることを特徴とする回転センサ付きカバー。
2. 前記第１の保持部は、前記センサ素子、アンプ部、及びケーブルの一部を保持しており、前記第２の保持部は、前記ケーブルを外部に延出するように保持することを特徴とする請求項１に記載の回転センサ付きカバー。
3. 周面に静止側軌道面を有し、懸架装置と結合可能な静止輪と、
   前記静止側軌道面と対向する周面に回転側軌道面を有すると共に、外周面に車輪を支持する為の車輪取付フランジを有する回転輪と、
   前記静止側軌道輪と前記回転側軌道輪との間に設けられる複数の転動体と、
   前記回転輪の一部に前記回転輪と同心に固定されるエンコーダと、
   請求項１又は２に記載の回転センサ付きカバーと、
   を備えることを特徴とする車輪支持用軸受ユニット。
4. 平板部と、該平板部から外側に延出する筒部と、を有する金属製のカバー部材を加工する工程と、
   前記筒部内の一部から前記平板部の内側に延出し、少なくともセンサ素子を埋設して保持する第１の保持部を、熱可塑性樹脂によって成型する工程と、
   前記筒部内の残りの部分に充填される第２の保持部を、硬化温度が前記熱可塑性樹脂の溶融温度より低い熱硬化性樹脂によって成型する工程と、
   を備えることを特徴とする回転センサ付きカバーの製造方法。
5. 前記熱硬化性樹脂は、前記筒部内の残りの部分に注入後に、真空引きされ、且つ、前記硬化温度が維持された状態で硬化されることを特徴とする請求項４に記載の回転センサ付きカバーの製造方法。

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