JP2008238259A - 熱間スラブの表面手入れ方法 - Google Patents

熱間スラブの表面手入れ方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 連続鋳造機で鋳造された熱間スラブの表面及び表皮下の欠陥を、高能率で安価に且つ確実に検出し且つ除去することができ、しかも滑らかな手入れ面を得ることのできる、熱間スラブの表面手入れ方法を提供する。
【解決手段】 連続鋳造機で製造された熱間状態のスラブ1の表面に高圧水4を噴射し、この高圧水噴射後の所定時間内に水柱式超音波探傷装置6を用いてスラブ表面または表皮下の欠陥10を検出し、その後、前記水柱式超音波探傷装置によって検出された欠陥の位置及び深さに基づいて、欠陥部分を部分手入れする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、連続鋳造機で鋳造された熱間状態のスラブの表面手入れ方法に関し、特に、熱間スラブを、連続鋳造ラインから熱間圧延ラインに搬送し、熱間圧延ラインの加熱炉に装入して加熱した後に熱間圧延する、或いは、表面温度を中心温度と同じにする程度の保温・加熱を行った後に熱間圧延する場合に好適なスラブの表面手入れ方法に関するものである。
連続鋳造設備では溶鋼から10m前後の長さのスラブを製造し、次工程の熱間圧延ラインに圧延用素材として送り出している。通常、熱間圧延ラインでは、このスラブを加熱炉で加熱した後に、薄鋼板に熱間圧延している。この場合に、連続鋳造ラインで製造されたスラブを、約700℃以上の高温のままで熱間圧延ラインの加熱炉に装入すれば、加熱炉での加熱量が少なくなり、燃料原単位を低減することが可能となる。このような操業方法は、ホットチャージ圧延(HCR)と呼ばれ、広く試みられている。
しかし、スラブには鋳造段階において発生する介在物欠陥などがあり、特にスラブ表皮下数mmまでに内在している介在物欠陥は、次工程以降の圧延工程或いはメッキ工程で薄鋼板の表面に線状疵を発生させる。この介在物欠陥は連続鋳造時に使用されるモールドパウダーやアルミナなどの脱酸生成物などを起源とし、数百ミクロン程度の大きさの介在物が疵の原因となるといわれている。
そのために、従来は、鋳造設備で製造されたスラブを熱間の状態或いは冷却した後の冷間の状態で、スラブ表面の全面をホットスカーファーやコールドスカーファーによって溶削(スカーフ)したり、グラインダーによる研削手入れを実施したりすることが一般的であった。しかし、ホットスカーファーやコールドスカーファーにより全面を溶削しても、スラブ表皮下数mmまでに内在している介在物欠陥の全ては除去できず、更に、欠陥発生部を部分的に手入れすることが行われていた。
この場合に、全面手入れした後に疵検出のためにスラブを冷片材とする場合には、スラブを目視で直接観察することが可能となる、更には、欠陥を検出するための過流探傷、磁粉探傷、超音波探傷などの一般的な計測器を使用することができるなどの多くの利点があり、欠陥を見逃すことなく除去できるが、スラブを冷片化することによるエネルギーロスが甚だしい。一方、ホットスカーファーによる全面手入れ後のスラブを冷片材としない場合には、エネルギーロスは解消するものの、表面検査が困難であり、薄鋼板における疵発生を十分に防止できないという欠点があった。
そこで、連続鋳造機で製造されたスラブを冷片材にまで冷却することなく、しかも欠陥を見逃すことなく、表面手入れする方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、連続鋳造機で鋳造された鋳片の搬送過程で、高温鋳片の欠陥を検出する手段を設け、該欠陥検出からの情報に対応して、研磨剤噴射用高圧流体ノズルを用いて、つまり研磨剤を混入させた高圧水によって高温鋳片の全面または部分を研削する手入れ方法が提案されている。また、特許文献2には、スラブの全面をホットスカーファーによって溶削して表層部直下の欠陥を顕在化させ、その欠陥を検出し、砥粒と液体との混合物であるアブレイシブウォータージェットによって部分手入れして欠陥を除去する手入れ方法が提案されている。
特開平6−126622号公報 特開平8−90225号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には以下の問題がある。
特許文献1及び特許文献2では、研磨剤を混入させた高圧水を用いてスラブの部分手入れを実施しているが、一般的にスラブの手入れでは表面から2mm〜4mm程度の深さを研削する必要があり、研磨剤を混入させた高圧水で短時間に研削するためには、非常に高圧な水圧(例えば100〜300MPa相当)と、膨大な水量とが必要になり、手入れ費用が極めて高価になる。更には、高圧流体ノズルのノズル径は小さいので、手入れ面が段削(手入れ境界で段付になってしまう手入れ)になりやすい。
また、高温鋳片の欠陥を検出する手段として、特許文献1では、磁粉探傷、超音波探傷、画像処理装置、レーザースキャニング、渦電流センサーなどを使用すると記載しているが、磁粉探傷及び超音波探傷は通常接触式であり、これらの装置を高温の鋳片に適用する具体的な手法が記載されていない。いわんや、特許文献2には、高温鋳片の欠陥を検出する手段が全く記載されていない。
連続鋳造設備で製造された直後のスラブの表面温度は、高い場合には900℃以上であり、スラブの手入れ・欠陥検出工程においても、スラブの表面温度は、高い場合には700℃〜800℃である。つまり、熱間スラブでは、表面及び表皮下の欠陥検出が可能な過流探傷、磁粉探傷、水柱式超音波探傷などを使用することができない。これらの欠陥検出器を熱間スラブで使用可能にすることで、はじめて、熱間スラブの部分手入れが成り立つことになる。画像処理装置、レーザースキャニングなどの光学式検出器では、表皮下の欠陥は検出できない。
また、特許文献2のように、熱間スラブをホットスカーファーによって全面手入れを行うと、表面に2mm程度の高さのうねりをもった凹凸ができることが多い。これは、ホットスカーファーのノズルからの可燃ガス噴出口が分割されているために生じるものであり、溶削手入れ後のスラブ表面に発生するうねりのピッチはノズル分割ピッチと一致する。このうねりは、熱間圧延工程で新たな表面欠陥の原因となる可能性もあり、且つ、欠陥検出器によって表面を検査するときの障害にもなる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、連続鋳造機で鋳造された熱間スラブの表面及び表皮下の欠陥を、高能率で安価に且つ確実に検出し且つ除去することができ、しかも滑らかな手入れ面を得ることのできる、熱間スラブの表面手入れ方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る熱間スラブの表面手入れ方法は、連続鋳造機で製造された熱間状態のスラブの表面に高圧水を噴射し、この高圧水噴射後の所定時間内に水柱式超音波探傷装置を用いてスラブ表面または表皮下の欠陥を検出し、その後、前記水柱式超音波探傷装置によって検出された欠陥の位置及び深さに基づいて、欠陥部分を部分手入れすることを特徴とするものである。
第2の発明に係る熱間スラブの表面手入れ方法は、連続鋳造機で製造された熱間状態のスラブの表面に研磨剤を混入させた高圧水を噴射してスラブ表面を研削し、その研削面に高圧水を噴射し、この高圧水噴射後の所定時間内に水柱式超音波探傷装置を用いてスラブ表面または表皮下の欠陥を検出し、その後、前記水柱式超音波探傷装置によって検出された欠陥の位置及び深さに基づいて、欠陥部分を部分手入れすることを特徴とするものである。
第3の発明に係る熱間スラブの表面手入れ方法は、第1または第2の発明において、前記欠陥部分をグラインダーで研削またはバイトで切削して、部分手入れすることを特徴とするものである。
本発明によれば、連続鋳造機で製造された熱間スラブを冷片材にまで冷却することなく、表層部のみを瞬間的に冷却し、その状態でスラブの表面及び表皮下の欠陥を水柱式超音波探傷装置で検出し、検出した欠陥部位のみを部分手入れするので、高能率で安価に且つ確実にスラブ表面の欠陥を除去することができる。その結果、手入れ後の熱間スラブを、熱間圧延ラインの加熱炉に装入して加熱した後に熱間圧延する、或いは、表面温度を中心温度と同じにする程度の保温・加熱を行った後に熱間圧延しても、圧延工程及び鍍金工程においてスラブの欠陥に起因する薄鋼板表面の疵を確実に低減することができ、省エネルギー及び薄鋼板の品質向上を達成することが可能となる。
また、スラブをスカーファーによって表面から2mm〜4mm全表面溶削すると、単純計算すれば1%〜2%の歩留低下となるが、ホットスカーファーによって全面手入れを実施せずに、本発明を適用した場合には、欠陥部位のみを部分手入れするだけであるので、ホットスカーファーなどでスラブ全表面を手入れした場合に比較して歩留の低下を大幅に削減することができる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明における連続鋳造ラインから熱間圧延ラインの加熱炉までのスラブの流れを示すフロー図であり、図1(A)は、スラブ表面をホットスカーファーによって溶削せずに、本発明に係る表面手入れ方法を適用した場合であり、図1(B)は、スラブ表面をホットスカーファーによって全面溶削した後に、本発明に係る表面手入れ方法を適用した場合である。
図1(A)に示すように、連続鋳造ラインで製造されたスラブは、熱間状態のまま次工程の熱間圧延ラインの加熱炉に搬送される。この搬送過程の途中、搬送用ローラーテーブルの上、或いは、専用の表面欠陥検査場などの適宜の場所で、熱間状態のままのスラブの表面及び表皮下について、水柱式超音波探傷装置によって欠陥の有無を検査する。水柱式超音波探傷装置による検査の直前に、検査する部位を冷却水によって冷却し、熱間スラブでの水柱式超音波探傷装置による検査を実施可能とする。
水柱式超音波探傷装置による検査後、この水柱式超音波探傷装置による検査によって、スラブの表面または表皮下に介在物或いは割れなどの欠陥が検出されたなら、搬送用ローラーテーブルの上、或いは、専用の表面手入れ場などの適宜の場所で、前記水柱式超音波探傷装置によって検出された表面欠陥或いは表皮下の内部欠陥の位置及び深さの情報に基づいて、グラインダーまたはバイトなどの表面手入れ装置を用いて、欠陥部分のスラブ表層を除去する。この部分手入れを容易に行うために、水柱式超音波探傷装置による検出結果(欠陥のスラブでの横縦の位置関係、深さ、大きさなど)が、表面手入れ装置に自動的に入力されるように構成することが好ましい。
表面手入れ装置による部分手入れが終了したなら、熱間状態のスラブを熱間圧延ラインの加熱炉に装入し、所定の温度に加熱し、加熱後、熱間圧延する。水柱式超音波探傷装置によって欠陥が検出されない場合には、当然ながら、表面手入れ装置による部分手入れは実施しない。
図1(B)は、水柱式超音波探傷装置による検査の前に、ホットスカーファーによってスラブ表面を全面溶削する場合である。ホットスカーファーによる溶削を実施する目的は、スラブ表面に欠陥の発生しやすい鋼種のスラブでは予めその欠陥を除去するためである。ホットスカーファーによるスラブ表面の全面溶削以降の工程は、上記の図1(A)のフローに沿って本発明を実施する。この場合に、図1(A)のフローに沿って本発明を実施するか、または、図1(B)のフローに沿って本発明を実施するかは、スラブ表面での欠陥の発生しやすさなどから、適宜決めればよい。
図2に、本発明で使用する水柱式超音波探傷装置の概略図を示す。水柱式超音波探傷装置6は、センサーヘッド7から水を噴流して水柱8を形成し、センサーヘッド7から発信する超音波9を、水柱8を経由させてスラブ1に送信し、酸化物系非金属介在物10などの欠陥からの反射エコーを、水柱8を経由して受信するという装置である。このような構成の水柱式超音波探傷装置6では、超音波の入射角度を工夫することにより、スラブ表面から深さ10mm程度までに存在する、「割れ」、「ブローホール」、「アルミナなどの介在物」を検出可能である。
しかし、一般的には、水柱式超音波探傷装置6は冷片材を対象に実用化されている。これは、基本的に水を媒体として利用するためである。検出対象物が100℃を超える温度であると、水柱8とするべくセンサーヘッド7から水噴流を高温の検出対象物に当てても、検出対象面で沸騰現象が起こり、水柱8の中で気泡発生などが発生する。この気泡は検出誤差になるばかりか、非常に高温の対象面の場合には、沸騰膜と呼ばれる気泡の膜が欠陥検出対象面に形成され検出不能になる。
この水柱式超音波探傷装置6でも、水柱8を形成する水圧を上昇させ、水量を増やしていくと、対象面の温度が高くても計測が可能となる。これは、水圧を上げると高温の対象面に形成される沸騰膜を打ち破るためであり、気泡発生を極力抑え、対象表面を膜沸騰状態から核沸騰状態にすることで検出が可能となる。
但し、水柱式超音波探傷装置の水圧の限界は、センサーヘッドでの振動や水柱の安定性などから1MPa以下である。この水圧の場合、センサーの対象材表面走査速度を300mm/secとすると、対象面の温度としては300℃〜500℃までは検出可能である。因みに、0.2MPa以上の水圧で、高温対象物表面の沸騰膜形成を防ぐことが可能といわれている。尚、対象材表面走査速度が300mm/secよりも小さい場合には、検出対象物の温度が500℃以上でも検出可能であるが、スラブ表面の欠陥検出に水柱式超音波探傷装置の適用を考えると、スラブの大きさ(長さ10m程度、幅1.5m程度)から全表面の検査時間を考慮すると、最低限300mm/secの走査速度が必要となる。
ここで、本発明で対象とする熱間スラブは、連続鋳造ラインから搬出された時点では800〜900℃程度の表面温度であり、表面の手入れ工程を経てホットチャージとして加熱炉に装入されるスラブの温度は、スラブの内部温度で700℃程度である。これは、スラブは、連続鋳造ラインから次工程の熱間圧延ラインに搬送されるまでに大気中で空冷されて、スラブの表面温度の降下が直ちに始まるからである。この温度降下から判断すれば、表面欠陥検出工程時点でのスラブ表面温度は700℃〜800℃程度に低下していると予想される(スラブ内部温度は1000℃程度)。
水柱式超音波探傷装置では、超音波が対象面に到達するときの気泡状態が重要であるので、スラブの表面温度のみが問題となる。従って、たとえ、スラブ内部温度が1000℃の高温であっても、超音波での検出は可能である。即ち、本発明においては、スラブ表面温度が700℃〜800℃の状態で、水柱式超音波探傷装置が適用できるようにする必要がある。具体的には、センサー走査速度が300mm/secの条件で、センサーの通過時(検出の瞬間)には、スラブ表面温度を500℃以下にすることが必要である。
水柱式超音波探傷装置の水圧及び水量のみでは、800℃のスラブ表面を500℃以下に冷却することはできない。そこで、本発明では、一次の冷却として水柱式超音波探傷装置の直前に高圧水の噴射による冷却装置を設置し、水柱式超音波探傷装置を2次の冷却とみなして2段の冷却を図ることで、スラブ表面温度を800℃から500℃以下に冷却することとした。図3に、本発明の実施の形態例を示す図であって、水柱式超音波探傷装置の直前に高圧水の噴射による冷却装置を設置した構成の例を示す。
図3において、図2に示す水柱式超音波探傷装置6の進行方向前方に、1次冷却用高圧水噴射ノズル3が設置されている。1次冷却用高圧水噴射ノズル3から冷却水4をスラブ1の表面に向けて噴射することで、スラブ1の表面は冷却されると同時に、スラブ1の表面に付着していたスケール2が剥離する。尚、図3において、1次冷却用高圧水噴射ノズル3及び水柱式超音波探傷装置6は、両者の間隔を一定として、スラブ1に対して紙面の右側から左側に移動しながら、スラブ1の表面及び表皮下の欠陥を検出する。また、図3において、冷却水4によって冷却されるスラブ1の領域、つまり1次冷却による冷却領域を符号11で表示し、冷却水4と水柱8とで冷却されるスラブ1の領域、つまり1次冷却及び2次冷却による冷却領域を符号12で表示している。
スラブ1の欠陥を水柱式超音波探傷装置6により検出する際には、1次冷却用高圧水噴射ノズル3及び水柱式超音波探傷装置6を、スラブ1の長手方向に移動させて、全面が検査されるように位置を変えながら繰り返し走査しても、スラブ1の幅方向に移動させて、全面が検査されるように位置を変えながら繰り返し走査しても、どちらでも構わない。また、1次冷却用高圧水噴射ノズル3及び水柱式超音波探傷装置6を固定し、スラブ1を移動させても構わない。水柱式超音波探傷装置6の幅は、通常200mm程度であるが、複数の超音波探傷装置を並べて配置することで、200mm以上の幅を有する水柱式超音波探傷装置6を構成することもできる。
尚、図3では、1次冷却用高圧水噴射ノズル3が水柱式超音波探傷装置6の進行方向に1段のみ設置されているが、欠陥検出時のスラブ表面温度は低ければ低いほど気泡の影響を受けにくいので、1次冷却用高圧水噴射ノズル3を複数段配置して、冷却効果を向上させても構わない。1次冷却用高圧水噴射ノズル3から噴射される冷却水4の幅は、水柱式超音波探傷装置6の幅と同等かやや大きくすればよい。この場合に、複数の1次冷却用高圧水噴射ノズル3を幅方向に並べて配置しても構わない。
一次冷却水の水圧及び水量は、冷却能力を高くする観点から高圧且つ大水量が望ましい。図4に、水量を5000L/min・m2 としたときの水圧と熱伝達率との相関を示す。図4に示すように、水圧が高いほど熱伝達率が高くなり、冷却能力が大きくなる。
また、連続鋳造ラインから搬出された熱間状態のスラブ1の表面には、スケール2が付着しており、このスケール2が水柱式超音波探傷装置6での誤検出になる可能性があることから、これを防止するために、スケール2を事前に除去する必要がある。このことから、一次冷却水はスケール除去も併用した高圧水とすることが設備的にも有利である。従って、1次冷却用高圧水噴射ノズル3のうちの少なくとも一段の1次冷却用高圧水噴射ノズル3ではデスケーリング可能な水圧とすることが好ましい。デスケーリングを兼ねた一次冷却水の高圧ノズルでの水圧は10〜15MPa程度が望ましい。因みに、水柱式超音波探傷装置6の冷却能力は、一般に水圧が1MPa程度以下であることから、一次冷却水の1/10程度の冷却能力である。
図5に、1次冷却用高圧水噴射ノズル3からの高圧水による一次冷却と、水柱式超音波探傷装置6の二次冷却とを組み合わせて、熱間スラブの表面を走査したときのスラブの或る位置におけるスラブ表面温度の変化を数値解析した結果を示す。走査速度は300mm/sec、1次冷却用高圧水噴射ノズル3と水柱式超音波探傷装置6との取り付け間隔は300mmである。スラブの表面温度は800℃を初期温度として計算している。
図5に示すように、一次冷却の高圧水通過時のスラブ表面温度は一瞬200℃程度まで降下する。しかし、スラブ内部が高温であるために、一次冷却の高圧水が通過した以降に直ちに復熱が起こり、温度上昇が始まる。約1秒遅れで二次冷却の水柱式超音波探傷装置6が、この地点を通過し、更に冷却が行われ、復熱による温度上昇を抑えるとともに、この地点の表面温度を低下させる。2次冷却通過時のこの地点のスラブ表面温度は450℃以下、つまり、水柱式超音波探傷装置6での検出可能な温度範囲に制御される。
このようにして、熱間状態のスラブ1における水柱式超音波探傷装置6による欠陥検出が可能となる。
ところで、図1(B)に示すように、ホットスカーファーの溶削による全面手入れを熱間スラブに実施すると、スラブ表面に2mm程度の高さのうねりをもった凹凸ができることが多い。これはホットスカーファーのノズルからの可燃ガス噴出し口が分割されているために生じるものであり、溶削手入れ後のスラブ表面に発生するうねりのピッチはノズル分割ピッチと一致している。このうねりが存在すると、水柱式超音波探傷装置6は使用できない。
従って、本発明において、ホットスカーファーの溶削面を水柱式超音波探傷装置6によって検出する場合には、1次冷却用高圧水噴射ノズル3のうちの少なくとも1つに、研磨剤を混入させて、この研磨剤入りの高圧水で、スラブ表面のウネリを研削し、表面を平滑化する。図6に、本発明の他の実施の形態を示す図であって、研磨剤入りの高圧水で、スラブ表面のウネリを研削し表面を平滑化する例を示す。
図6において、1次冷却用高圧水噴射ノズル3Aに研磨剤5が混入され、研磨剤5が混入された冷却水4Aがスラブ1の表面に噴射されるようになっている。その他の構成は、前述した図3と同一構造となっており、同一の部分は同一符号により示し、その説明は省略する。研磨剤5としては、ガーネットなどの硬質材、スチールグリッド、スケール粉砕材などを使用することができる。スラブ表面が平滑化されることにより、水柱式超音波探傷装置6が使用可能となる。尚、研磨剤5が混入された冷却水4Aは、ホットスカーファーの溶削面にのみ噴射されるものではなく、鋳造ままのスラブ表面に噴射しても構わない。また、図6に示すように、1次冷却用高圧水噴射ノズル3と1次冷却用高圧水噴射ノズル3Aとを2段に配置することなく、図2に示す1次冷却用高圧水噴射ノズル3に研磨剤5を混入させても構わない。
欠陥検出後の部分手入れは、グラインダーや切削用バイトなどを用いて実施する。グラインダーで手入れする場合には、研削境界で段付にならないように、グラインダーの砥石を送り方向に対して45度程度に傾けて研削することが好ましい。砥石を傾けて送りを行うことで、砥石の円弧(曲率)によって、研削境界でのボカシ研削が可能となる。但し、グラインダーの砥粒がスラブ表面に脱落するなどの懸念もあるので、表面の清浄度をあげるためには、切削による部分手入れがより有効である。
切削用のバイトによる熱間切削においては、バイト寿命、切削屑の刃先への付着を考慮して、刃材質を選定することが重要である。また、高圧水などによる切削部の冷却も必要となる。刃材質としては、セラミックや耐熱合金などが有効である。切削方式には駆動式と無駆動式とがある。
図7は、無駆動式の円形バイトを用いた切削による表面手入れの例を示す概略図である。切削反力で円形バイト13が回転する方式であり、円形バイト13が固定されてスラブ1がローラーテーブルなどで搬送されているときにスラブ1の表面を切削する。スラブ1を固定して油圧などのアクチュエータによって円形バイト13を切削送り方向に動作させてもよい。切削反力によって円形バイト13を駆動させるために、また同時に、切削面15の切削境界で段差が生じないようにするために、円形バイト13を傾斜させている。図7において、符号14は切屑である。
また、図8は、フライス盤(プラノミラー)でスラブ表面を手入れする例の概略図である。バイト16の形状は、切削面15の境界部で段差が生じないようにするために、バイト16のコーナー角を大きくして対応することが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば連続鋳造機で製造された熱間スラブを冷片材にまで冷却することなく、表層部のみを瞬間的に冷却し、その状態でスラブの表面及び表皮下の欠陥を水柱式超音波探傷装置で検出し、検出した欠陥部位のみを部分手入れするので、高能率で安価に且つ確実にスラブ表面の欠陥を除去することができる。
本発明における連続鋳造ラインから熱間圧延ラインの加熱炉までのスラブの流れを示すフロー図である。 本発明で使用する水柱式超音波探傷装置の概略図である。 本発明の実施の形態を示す図である。 水量を一定としたときの水圧と熱伝達率との相関を示す図である。 一次冷却と二次冷却とを組み合わせてスラブを走査したときのスラブの或る位置におけるスラブ表面温度の変化を示す図である。 本発明の他の実施の形態を示す図である。 無駆動式の円形バイトを用いた切削による表面手入れを示す概略図である。 フライス盤でスラブ表面を手入れする概略図である。
符号の説明
1 スラブ
2 スケール
3 1次冷却用高圧水噴射ノズル
3A 1次冷却用高圧水噴射ノズル
4 冷却水
4A 冷却水
5 研磨剤
6 水柱式超音波探傷装置
7 センサーヘッド
8 水柱
9 超音波
10 酸化物系非金属介在物
11 1次冷却による冷却領域
12 1次冷却及び2次冷却による冷却領域
13 円形バイト
14 切屑
15 切削面
16 バイト

Claims (3)

  1. 連続鋳造機で製造された熱間状態のスラブの表面に高圧水を噴射し、この高圧水噴射後の所定時間内に水柱式超音波探傷装置を用いてスラブ表面または表皮下の欠陥を検出し、その後、前記水柱式超音波探傷装置によって検出された欠陥の位置及び深さに基づいて、欠陥部分を部分手入れすることを特徴とする、熱間スラブの表面手入れ方法。
  2. 連続鋳造機で製造された熱間状態のスラブの表面に研磨剤を混入させた高圧水を噴射してスラブ表面を研削し、その研削面に高圧水を噴射し、この高圧水噴射後の所定時間内に水柱式超音波探傷装置を用いてスラブ表面または表皮下の欠陥を検出し、その後、前記水柱式超音波探傷装置によって検出された欠陥の位置及び深さに基づいて、欠陥部分を部分手入れすることを特徴とする、熱間スラブの表面手入れ方法。
  3. 前記欠陥部分をグラインダーで研削またはバイトで切削して、部分手入れすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の熱間スラブの表面手入れ方法。
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