JP5394724B2 - 熱間スラブの表面手入れ方法 - Google Patents
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上述したように、従来の一般的な手入れ方法では、手入れした後の鋳片の表皮または表層部に新たな表面疵の原因となる欠陥を生じるおそれがあった。
切削刃を利用した熱間鋼材の表面切削方法としては、シェーパー方式(鉋削り)とフライス盤による切削方式の2とおりの方法が提案されている。
熱間状態の鋼材は、冷間状態の鋼材に比べて、切削時の抵抗である比切削抵抗が小さくなり、特に 500℃以上では冷間時の2/3〜1/2まで低減する。このように熱間切削は容易に切削ができ、被削性(快削性)が良いことから、切削面の表面粗さも良好となる。
(1) 比切削抵抗の低下に伴い、切削動力が低下する。
(2) 高温での切削であるため、刃先磨耗が進行する。
(3) 刃先磨耗が進行しても、切削動力の増加や切削面粗度の悪化が小さい。
(4) 刃先磨耗の進行状況に関係なく、切削時の切り屑が赤熱状態で排出される、もしくは切削時に火花がでる。
(5) 刃先に付着物が付きやすい。
このように、切削刃による熱間鋼材の表面切削では、高温の材料を切削することから刃先の熱負荷が大きく、冷間切削に比べて刃先の摩耗が促進される。また、熱衝撃で刃のチッピング(欠け)が生じ易くなり、刃の寿命が問題となる。
また、切削刃の交換回数は、ランニングコストに影響すると共に、刃換えによるスラブ手入れ処理能力の低減にもつながるので、切削刃の長寿命化および刃換えのタイミングは極めて重要である。
また、刃先チップを観察することも、作業員がカッター近傍に近づくためには、安全に設備稼働範囲に入るための設備の条件設定を行う必要があるため、刃替え頻度にもよるが、能率低下につながる。
熱間鋼材の切削は、冷間鋼材の切削の場合と諸現象が大きく異なることから、刃の交換タイミングにおいては、その特徴を活かしたものとし、ランニングコストの低減からみても、何らかの定量的な指標値をもって交換を行うことが望まれる。
1.高温の鋼材の表面を、切削刃を有するフライス盤によって表面手入れするに際し、該切削刃の使用限界を、下記式(1)で規定した比切削抵抗値Kcによって判断するものとし、該比切削抵抗値Kcが所定の閾値に達した時点で該切削刃を交換することを特徴とする熱間スラブの表面手入れ方法。
記
Kc={(We×60×106×ηe×ηm)/(ap×ae×vf)}×(Tm/To) --- (1)
ここで、We:切削動力(kW)、ηe:モータ効率(%)、ηm:機械効率(%)、
ap:切込深さ(mm)、ae:切削幅(mm)、vf:送り速度(mm/min)、
Tm:被削材表面温度(℃)、To:被削材表面基準温度(℃)
図1に、本発明で想定している、連続鋳造ラインから熱間圧延ラインの加熱炉までのスラブの流れの中における熱間表面手入れ時期を示す。
本発明では、図1に示したように、連続鋳造ラインで製造されたスラブを、所定の長さに切り出したのち、熱間状態のまま次工程の熱間圧延ラインの加熱炉に搬送する。この搬送過程の途中、スラブの手入れが必要と判定された場合には、搬送用ローラーテーブルの上、あるいは専用の表層部手入れ場などの適当な場所で、熱間状態のままのスラブの表面、裏面および側面の少なくとも欠陥部分について、電動機の駆動力で回転する多数の切削刃を有するフライス盤を用いて、鋳込みままの状態で切削する。
なお、本発明では、従来のように、ホットスカーファーやグラインダー研削などで手入れをした後に、本発明に従う表面手入れを行ってもよい。
従って、切削刃の交換タイミングについても、熱間鋼材の切削の場合は冷間鋼材の切削の場合と異なることが考えられる。
そこで、発明者らは、まず、熱間鋼材を切削する場合における切削刃の使用限界について検討した。
その結果、冷間鋼材の切削の場合には、目視観察により切削チップの刃先摩耗が進行し、これ以上の使用は無理は判断された状態でも、熱間鋼材の切削の場合にはさらなる使用が可能であることが判明した。
同図に示したとおり、刃先の摩耗(斜線部)は、図(a)〜(d)の順に進行していくわけであるが、冷間鋼材の切削の場合には同図(b)の段階で、これ以上の使用は無理、すなわち使用限界と判断されていた。
これに対し、熱間鋼材の切削の場合には同図(c)の状態はいうに及ばず、同図(d)の状態でもまだ健全な研削が可能であることが判明した。
従って、かような熱間鋼材の切削に特有な現象を考慮して、切削刃の交換時期を決定することが重要と考えられる。
すなわち、被削対象鋼材の過去の表面温度履歴および現在の表面温度や、総切削量または総切削長、現在の切削動力値と過去の切削動力変化パターンなどを考慮した指標について検討した。その結果、次式(2)で示される比切削抵抗値Kが効果的と考えられた。
K={(We×60×106×ηe×ηm)/(ap×ae×vf)} --- (2)
ここで、We:切削動力(kW)、ηe:モータ効率(%)、ηm:機械効率(%)、
ap:切込深さ(mm)、ae:切削幅(mm)、vf:送り速度(mm/min)
同図に示したとおり、通常の比切削抵抗値Kではバラツキが大きく、指標にはならないことが判明した。
ところが、図3のようにK値にバラツキがあることは、切削負荷、刃先の状態、材料温度の何れかが変化したことによるものと推測できる。
切削負荷は決定できるものであり、既知の値である場合がほとんどである。図3の試験においては、切削負荷は一定下での結果であり、変化はない。
残りのパラメータである被削材温度と刃先状態のうち,スラブの手入れにおいて、被削材の温度を計測し,温度による比切削抵抗の変化分を補正することができれば、比切削抵抗Kの変動は刃先のすくい角、すなわち、刃先の状態を示し得るものと推定される。
上記した比切削抵抗値Kcは、次式(1)で規定されるものである。
Kc={(We×60×106×ηe×ηm)/(ap×ae×vf)}×(Tm/To) --- (1)
ここで、We:切削動力(kW)、ηe:モータ効率(%)、ηm:機械効率(%)、
ap:切込深さ(mm)、ae:切削幅(mm)、vf:送り速度(mm/min)、
Tm:被削材表面温度(℃)、To:被削材表面基準温度(℃)
なお、刃先の逃げ面の摩耗量Xは、上記と同様の実験を複数回行い、総切削長さが所定長さに達した段階で、常温まで冷却して刃先の摩耗量を測定することにより求めた。
同図に示したとおり、比切削抵抗値Kcの値と刃先の逃げ面の摩耗量Xとの間には強い相関が見られた。
従って、比切削抵抗値Kcを指標として刃先の逃げ面の摩耗量を高確度で推定できることが判る。
従って、上記のように摩耗限度における比切削抵抗値Kcが2700MPaと推定された場合には、安全率を見込んで、2700MPaよりも一割程度小さい2430MPaを交換の指標とすることがより好適である。
Kclimit=α・Kc0 --- (2)
ここで、Kclimitは磨耗限界における比切削抵抗、Kc0は刃交換時の比切削抵抗値、α=3〜4の係数、超鋼を母材として表面に特殊コーティングを施した切削チップの試験においては3.5であった。
すなわち、このKclimitが切削刃の使用限界における摩耗量Xlimitに対応した比切削抵抗となる。
従って、刃交換の比切削抵抗の閾値Kc1は
Kc1=β×Kclimit
から求められる。βは0.8〜0.9で磨耗限界に対するチップ交換閾値を求める係数である。
すなわち、切削面において、著しく切削面が荒れたり、切削面端でバリが多発する場合である。これは刃先磨耗に進行により、極端に刃先が丸まり切れ味劣化が著しい場合に起きる現象であり、切削チップの形状において、逃げ角が大きい場合などに多く見られるものである。
図5に、本発明を適用して好適なフライス盤の全体図を、また図6には、その要部詳細図を示す。図中、符号1でフライス盤の全体を示す、2がフライス盤1の周上に取り付けられた丸駒切削チップである。
図6に示したように、フライス盤1の周りに取り付けられた各切削刃は、全て丸駒の切削チップ2で、各切削チップの円筒エッジは全周切削刃となっている。この丸駒切削駒チップ2は、フライス盤1の周上に組み込まれた回転軸に取り付けられており、この回転軸には駆動系は付いていない。そして、丸駒チップ2および丸駒チップ用回転軸は、図6に示すように切削面に対して、丸駒チップが切削反力によって転動するような角度でフライス盤1に取り付けられている。従って、フライス盤1は、工作機械主軸の駆動系によって強制的に回転するけれども、フライス盤1の周上に取り付けられた丸駒チップ2は、切削反力により、フライス盤1の回転に従って回転する、すなわち、従動回転(以後、フリー回転)を行う。このように、切削反力で従動回転するように、丸駒チップ2をフライス盤1に取り付けたことにより、丸駒チップ2の刃は切削面に対し負のすくい角を持つことになる。なお、切削チップの回転をよりスムーズに行うには、スピンドルは十分に回転摺動性を確保しておくことが好ましい。
2 丸駒切削チップ
Claims (1)
- 高温の鋼材の表面を、切削刃を有するフライス盤によって表面手入れするに際し、該切削刃の使用限界を、下記式(1)で規定した比切削抵抗値Kcによって判断するものとし、該比切削抵抗値Kcが所定の閾値に達した時点で該切削刃を交換することを特徴とする熱間スラブの表面手入れ方法。
記
Kc={(We×60×106×ηe×ηm)/(ap×ae×vf)}×(Tm/To) --- (1)
ここで、We:切削動力(kW)、ηe:モータ効率(%)、ηm:機械効率(%)、
ap:切込深さ(mm)、ae:切削幅(mm)、vf:送り速度(mm/min)、
Tm:被削材表面温度(℃)、To:被削材表面基準温度(℃)
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JP2008327450A JP5394724B2 (ja) | 2008-12-24 | 2008-12-24 | 熱間スラブの表面手入れ方法 |
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JP2008327450A JP5394724B2 (ja) | 2008-12-24 | 2008-12-24 | 熱間スラブの表面手入れ方法 |
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JP2008327450A Expired - Fee Related JP5394724B2 (ja) | 2008-12-24 | 2008-12-24 | 熱間スラブの表面手入れ方法 |
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