上述した従来のカラー印刷装置においては、印刷ヘッドの経年変化によって色インクの吐出量に偏りが生じたような場合には対応できないという課題があった。また、各機体ごとに工場調整が必要となり、製造工程が増えて煩雑であるという課題もあった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、カラー印刷装置を含めた画像出力装置におけるハードウェアに依存するようなカラーバランスの偏りをハードウェアに対する直接の調整を行うことなく修正することが可能な色修正装置、色修正方法、色修正プログラムを記憶した媒体およびカラー印刷装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、カラー画像を所定の要素色ごとに色分解するとともに強弱を表した色画像データに基づいて各要素色ごとに画像出力を行うことによりカラー画像を出力する画像出力装置のための色修正装置であって、上記画像出力装置における各要素色ごとの出力特性の偏差を取得する偏差取得手段と、この偏差取得手段にて取得された出力特性の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正する色修正手段とを具備する構成としてある。
上記のように構成した請求項1にかかる発明においては、カラー画像を所定の要素色ごとに色分解するとともに強弱を表した色画像データに基づいて各要素色ごとに画像出力を行うことによりカラー画像を出力する画像出力装置を前提とし、偏差取得手段がこの画像出力装置における各要素色ごとの出力特性の偏差を取得し、色修正手段がこの偏差取得手段にて取得された出力特性の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正する。
従って、色修正手段が色変換した色画像データに基づいて画像出力装置がカラー画像を出力すると、本来、画像出力装置の特性によって偏って画像出力される色が予めその偏りを見越して修正されている結果、元のカラー画像に忠実な色で再現される。すなわち、画像出力装置ではあくまでも色の偏りが生じることを認容するものであり、画像出力装置に対する色画像データに色の偏りを見越した修正をかけている。
ところで、偏差取得手段については、上述した画像出力装置における各要素色ごとの出力特性の偏差を取得するものであり、計量に伴う正確な値であったり、比較対象を並べて選択される値であったりするなど、その取得手法は特に限定されるものではない。その一例として、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の色修正装置において、上記偏差取得手段は、上記画像出力装置が保持する上記偏差のデータを取得する構成としてある。
上記のように構成した請求項2にかかる発明においては、画像出力装置自身が各要素色ごとの出力特性の偏差のデータを保持している場合に、偏差取得手段はこの画像出力装置からその偏差のデータを取得する。従って、例えば、色修正装置がコンピュータなどで構成されている場合、接続されているプリンタなどの画像出力装置と通信し、同画像出力装置が保持している偏差のデータを取得すればよい。この場合、画像出力装置が偏差のデータを備えていれば同データを取得すればよいのはむろんのこと、画像出力装置を特定するシリアルナンバーなどのIDを取得しつつ別のデータベースを同IDにてアクセスして偏差のデータを取得するといった間接的な手法でも構わない。
また、偏差の取得はこのような機器間での自動的な取得に限られる必要はなく、その一例として、請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の色修正装置において、上記偏差取得手段は、偏差を使用者が入力する入力手段を備える構成としてある。
上記のように構成した請求項3にかかる発明においては、入力手段を利用して使用者等が偏差を入力することにより、偏差取得手段として同偏差を取得する。
ここにおいて、入力手段で取得する偏差は直接的に偏差を表すデータであっても良いし、間接的に偏差を表すデータであっても良い。例えば、印刷装置が画像出力装置である場合に各要素色ごとに印刷ヘッドを備えているものとすると、印刷ヘッドに偏差を示すデータを記入しておき、使用者等がこれを見て入力することが可能である。むろん、データは相対的な単位で示しておけばよいし、印刷ヘッド間の相対的な差異を表すデータであっても良い。
一方、入力するのはこのような直接的な偏差である必要はなく、間接的に同偏差を示すようなデータであっても良い。その一例として、請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の色修正装置において、上記偏差取得手段は、偏差に対応して画像を変化させた調整パターンを上記画像出力装置にて画像出力させる調整パターン出力手段を備え、上記入力手段は、この調整パターンを選択することにより偏差を間接的に入力する構成としてある。
上記のように構成した請求項4にかかる発明においては、調整パターン出力手段が調整パターンを画像出力装置にて画像出力させるので、使用者等は所定の調整パターンを選択して上記入力手段にて入力する。この調整パターンは偏差に対応して画像を変化させたものであり、例えば、本来のグレーに対してわずかに色成分を異ならせた複数のグレーを画像出力させる。しかしながら、画像出力装置の側では各要素色の出力特性の偏差によって本来のグレーからずれたものがグレーに見える場合がある。この場合、使用者等が画像出力結果からグレーに近いものを選択すれば本来的にはグレーからずれたデータがグレーとして画像出力されることが分かるから、間接的に偏差が分かることになる。むろん、グレーバランスだけでなく、個別の色について実行することも可能である。
このような調整パターンは、間接的に偏差を示すものであるが故に種々の態様が可能であり、その一例として請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の色修正装置において、上記調整パターン出力手段は、各要素ごとに強弱のバランスを変化させた強弱判定を実行するための第一の出力パターンと、強弱判定後に強度の修正態様を変化させた第二の出力パターンとを出力する構成としてある。
使用者等は調整パターン出力手段が各要素ごとに強弱のバランスを変化させて出力する第一の出力パターンの中からどれかを選択することにより各要素間での強弱のバランスのずれを判定することになる。ただし、このように選択する第一の出力パターンでは、どの要素が強く、どの要素が弱いかということを判定するに過ぎない。従って、ある要素が強いと分かったとすれば弱い要素をどの程度で修正すべきかといったことを知るために、使用者等は調整パターン出力手段が強度の修正態様を変化させて出力する第二の出力パターンの中からどれかを選択することにより、修正すべき態様が分かる。
また、偏差としてのデータは現実の画像出力結果に基づいて取得するのも有効であり、そのため、請求項6にかかる発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の色修正装置において、上記偏差取得手段は、上記画像出力装置による画像出力を入力する撮像手段を具備する構成としてある。
上記のように構成した請求項6にかかる発明においては、偏差取得手段が有する撮像手段が画像出力装置による画像出力を撮像することにより、画像出力状況から偏差を入力する。
画像出力装置がディスプレイであればディスプレイに所定のテストパターンを画像出力させつつ撮像しても良いし、画像出力装置が印刷装置であれば所定のテストパターンの印刷結果を撮像してもよい。また、撮像するについては画像出力装置と別体であっても良いし、合体させるようにしても良く、特に限定されるものではない。
一方、色修正手段としては、このようにして各種の態様で取得される出力特性の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正するが、色変換の態様は各種の態様が可能である。むろん、全ての色についての修正値を求めることは論理的には可能であるものの、現実的には不可能であり。何らかの傾向に基づいて一括的に処理して変換するのが効率的である。このため、請求項7にかかる発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の色修正装置において、上記色修正手段は、出力特性の偏差を打ち消すように入出力間で強弱の特性変換するトーンカーブを利用して修正する。
トーンカーブを利用すれば、いずれかの要素色についての出力が他色に比べて弱いと分かった場合に強調する程度となるトーンを決めて入出力間で強弱の特性変換することにより、個々の色についての強調程度を個別に設定することなく一括的に変換できる。むろん、このようなトーンカーブは各種のものを採用可能であり、γ変換であったり、スプライン補間やニュートン補間といったトーンカーブを採用可能である。そして、いずれを採用するかはそれぞれの特性を考慮したり、ハードウェア資源の限界などによって適宜決定すればよい。
また、前提とする画像出力装置は、カラー画像を所定の要素色ごとに色分解するとともに強弱を表した色画像データに基づいて各要素色ごとに画像出力を行うことによりカラー画像を出力するものであり、印刷装置であればCMYなどの色インクを吐出するノズルを備え、各色ごとに色分解された印刷データに基づいてノズルから色インクを吐出してカラー画像を出力するものなどが該当する。
従って、本発明の一例として、請求項8にかかる発明は、上記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の色修正装置において、上記画像出力装置は、上記各要素色ごとに備えた記録材を媒体上に付着させてカラー画像を出力する印刷装置で構成してある。
上記のように構成した請求項8にかかる発明においては、印刷装置が各要素色ごとに備えた記録材を媒体上に付着させてカラー画像を出力するが、記録材の使用量が各色毎に異なることによって出力特性に偏差が生じている。これを偏差取得手段にて取得し、色修正手段が同偏差を打ち消すように色変換する。
各色毎の記録材の使用量によって出力特性に偏りが生じるために色変換するにあたり、画像出力装置の側のハードウェアに応じてその態様も種々の手法を採用可能である。その一例として、請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の色修正装置において、上記画像出力装置は、濃色と淡色の記録材を備えるとともに、上記色修正手段は、上記偏差を修正するために濃色と淡色の混合バランスを変化させる構成としてある。
上記のように構成した請求項9にかかる発明においては、画像出力装置のハードウェアが濃色と淡色の記録材を備えるものであるため、所定のバランスで印刷する際に濃色の比率を大きくすれば強度を上げることになるし、淡色の比率を大きくすれば強度を下げることになる。従って、色修正手段は偏差を修正するために色変換するにあたり、これらの記録材の混合バランスを変化させるだけで可能となる。
このような混合バランスの変更による影響は濃色の方が強いといえるため、請求項10にかかる発明は、請求項8または請求項9のいずれかに記載の色修正装置において、上記印刷装置は、記録材としての色インクを吐出してカラー画像を出力する構成としてある。
上記のように構成した請求項10にかかる発明においては、記録材としての色インクを使用するものであり、上記印刷装置は同色インクを吐出してカラー画像を出力する。
むろん、画像出力装置としてはこのような印刷装置には限らず、CRTなどの陰極線ディスプレイであっても良いし、TFTなどの液晶ディスプレイであったりしてもよい。また、より具体的にはカラーコピー機やカラーファクシミリ機、投射式ディスプレイなど様々な機種において適用できる。
上述したようにして、偏差を取得してから、同偏差を打ち消すように色変換する手法は、実体のある装置に限定される必要はなく、その方法としても機能することは容易に理解できる。このため、請求項11にかかる発明は、カラー画像を所定の要素色ごとに色分解するとともに強弱を表した色画像データに基づいて各要素色ごとに画像出力を行うことによりカラー画像を出力する画像出力装置のための色修正方法であって、上記画像出力装置における各要素色ごとの出力特性の偏差を取得し、この取得された出力特性の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正する構成としてある。
すなわち、必ずしも実体のある装置に限らず、その方法としても有効であることに相違はない。
ところで、このような色修正装置は単独で存在する場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
その一例として、入力される色画像データに基づいて印刷インクに対応した色画像データに変換し、所定のカラープリンタに印刷せしめるプリンタドライバにおいても、同カラープリンタにおける各印刷インクごとの出力特性の偏差を取得し、この取得された出力特性の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正し、修正後の色画像データに基づいて印刷させるように構成することができる。
すなわち、プリンタドライバは印刷インクに対応して入力された色画像データを変換するが、このときに出力特性の偏差を打ち消すように色変換して印刷させる。
発明の思想の具現化例として色修正装置のソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用されるといわざるをえない。
その一例として、請求項12にかかる発明は、カラー画像を所定の要素色ごとに色分解するとともに強弱を表した色画像データに基づいて各要素色ごとに画像出力を行うことによりカラー画像を出力する画像出力装置のためにコンピュータによって色修正するプログラムを記録した媒体であって、上記画像出力装置における各要素色ごとの出力特性の偏差を取得し、この取得された出力特性の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正する構成としてある。
むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。その他、供給方法として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。
さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものはなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。さらには、カラーファクシミリ機やカラーコピー機などにおいても適用可能であることはいうまでもない。
また、このような色修正装置を前提としたカラー印刷装置においては、同色修正装置を有効に活用するための所定の構成が必要になるとも言える。その一例として、請求項13にかかる発明は、カラー画像を所定の要素色に色分解するとともに強弱を表した色画像データに基づいて各要素色ごとの記録材を媒体上に付着させてカラー画像を出力するカラー印刷装置であって、各要素色ごとの記録材の使用量の偏差に対応するデータを保持する構成としてある。
このように各要素色ごとの記録材の使用量の偏差に対応するデータを保持することにより、上述した請求項2に記載の色修正装置で偏差取得手段が当該カラー印刷装置から偏差のデータを取得することが可能となる。一方、このような偏差に限らず機体差に関する直接的または間接的なデータを印刷装置に保持させるだけでも他の画像処理装置などにおいて有効な利用が可能となることも明らかである。
また、より具体的な例として、請求項14にかかる発明は、請求項13に記載のカラー印刷装置において、上記記録材として色インクを使用し、各要素色ごとに色インクを吐出する印刷ヘッドを備えるとともに、上記使用量の偏差に対応するデータは、この印刷ヘッドにおける色インクの吐出量に対応するデータとして構成してある。
色インクの吐出量は印刷ヘッドの良否判定において実際に計測されるものであるから、かかる作業を無駄にすることはなく、同吐出量を偏差のデータとしても有効利用すればよい。
さらに、カラー印刷装置がかかる偏差を保持するものであれば上述した色修正手段を組み入れることも可能であり、その一例として、請求項15にかかる発明は、上記請求項13または請求項14のいずれかに記載のカラー印刷装置において、上記記録材毎の使用量の偏差を打ち消すように上記色画像データについて色変換して修正する構成としてある。
上記のように構成した請求項15にかかる発明においては、自己が保持する偏差を表すデータに基づいて当該偏差を打ち消すように色変換して印刷することになる。従って、外部的にはなんら色変換の処理を施すことなく極めて自然に元の色を再現することになる。
以上説明したように本発明は、各要素色毎の出力特性の偏差を打ち消すように色変換することにより、ハードウェアに対する直接の調整を行うことなく修正することが可能な色修正装置を提供することができる。また、ハードウェアにおける偏りを許容するものであるから、ユーザの側で調整することができ、工場調整を不要とできるとともに経年変化にも容易に対応できる。さらに、印刷用紙の紙色が印刷結果に及ぼす影響は実質的にこのようなハードウェアにおける出力特性の偏差と同様であるから、紙色に影響されることなく元の色を再現するといったことも可能である。
また、請求項2にかかる発明によれば、画像出力装置が保持する偏差のデータを利用することにより曖昧さがなくなる。
さらに、請求項3にかかる発明によれば、調整を使用者が入力して行うことになるため、固定的でなく好みに応じたり、経年変化に対して後々調整することも容易になる。
さらに、請求項4にかかる発明によれば、調整パターンを利用することによりユーザの側でも容易に偏りを判断することが可能となる。
さらに、請求項5にかかる発明によれば、強弱のバランスと、修正の態様とを二段階に分けて選択するため、困難な調整を極めて簡易に行うことができる。
さらに、請求項6にかかる発明によれば、実際の画像出力状況を計測するものであるため、正確であるし、経年変化があった場合や色インクが変わったような場合にも対応可能となる。
さらに、請求項7にかかる発明によれば、一義的なトーンカーブを利用することにより、個別の色についての修正状況を決定する必要がなくなり、修正が容易となる。
さらに、請求項8にかかる発明によれば、画像出力装置として最終結果を画像出力することになるカラー印刷装置の場合に原色に対する忠実度を向上させることができる。
さらに、請求項9にかかる発明によれば、濃色と淡色とを使用する場合に混合バランスを変えるだけで修正が可能となる。
さらに、請求項10にかかる発明によれば、色インクを吐出してカラー画像を出力する印刷装置において適用可能となる。
さらに、請求項11にかかる発明によれば、各要素色毎の出力特性の偏差を打ち消すように色変換することにより、ハードウェアに対する直接の調整を行うことなく修正することが可能な色変換方法を提供することができる。
さらに、請求項12にかかる発明によれば、このような色修正を行なうプログラムを記録した媒体を提供することができる。
さらに、請求項13にかかる発明によれば、このような色修正をより正確に行うことが可能なカラー印刷装置を提供することができる。
さらに、請求項14にかかる発明によれば、実際の色インクの吐出量を保持するので、修正結果が正確になる。
さらに、請求項15にかかる発明によれば、ハードウェアの偏差を自己で修正することにより、外部的にはなんら色変換の処理を施すことなく極めて自然に元の色を再現することができる。
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる色修正システムをブロック図により示しており、図2は具体的ハードウェア構成例をブロック図により示している。
同図において、画像入力装置10はカラー画像についての色画像データを色修正装置20へ入力し、同色修正装置20は同色画像データについて色修正したデータを画像出力装置30に出力する。ここにおいて、色修正装置20が出力するデータは画像出力装置30にて画像出力せしめたときに元色に忠実となるように修正されたデータであり、偏差取得手段と色修正手段とを備えている。
ここにおいて、画像入力装置10の具体例はスキャナ11やデジタルスチルカメラ12あるいはビデオカメラ14などが該当し、画像処理装置20の具体例はコンピュータ21とハードディスク22とキーボード23とCD−ROMドライブ24とフロッピーディスクドライブ25とモデム26などからなるコンピュータシステムが該当し、画像出力装置30の具体例はプリンタ31やディスプレイ32等が該当する。ただし、本実施形態においては、これらの画像出力装置30のうちプリンタ31について特に詳細に説明していく。なお、モデム26については公衆通信回線に接続され、外部のネットワークに同公衆通信回線を介して接続し、ソフトウェアやデータをダウンロードして導入可能となっている。
図3はプリンタ31の概略構成を示しており、三つの印字ヘッドユニット31a1からなる印字ヘッド31aと、この印字ヘッド31aを制御する印字ヘッドコントローラ31bと、当該印字ヘッド31aを桁方向に移動させる印字ヘッド桁移動モータ31cと、印字用紙を行方向に送る紙送りモータ31dと、これらの印字ヘッドコントローラ31bと印字ヘッド桁移動モータ31cと紙送りモータ31dにおける外部機器とのインターフェイスにあたるプリンタコントローラ31eとから構成されている。
このプリンタ31は印字インクとして四色の色インクを使用するものであり、各印字ヘッドユニット31a1にはそれぞれ独立した二列の印字ノズルが形成されている。供給する色インクは印字ノズルの列単位で変えることができ、この場合は図示左方の印字ヘッドユニット31a1については二列とも黒色インク(K)を供給し、図示右方の印字ヘッドユニット31a1については左列にマゼンタ色インク(M)を供給するとともに右列にイエロー色インク(Y)を供給し、図示真ん中の印字ヘッドユニット31a1については左列にシアン色インク(C)を供給するとともに右列は不使用としている。ここにおいて、各印字ヘッドユニット31a1の左列と右列との製造誤差は比較的小さく、ほぼ無視できる。
しかしながら、印字ヘッドユニット31a1ごとの間ではインクの吐出量に差が生じやすく、後述するようにして測定された各印字ヘッドユニット31a1ごとの色インクの吐出量を計測したデータを保持できるようにPROMエリアを備えている。なお、この吐出量の偏りが本発明にいう偏差に相当する。そして、上述した印字ヘッドコントローラ31bにはこの印字ヘッドユニット31a1における各ノズルを駆動して色インクを吐出させる印字ヘッド駆動部31b1とともに同PROMエリアを参照するためのPROMインターフェイス31b2を備えており、プリンタコントローラ31eを介して入力される印字データに基づいて印字ヘッド駆動部31b1にて印字させるとともに、要求に応じてPROMエリアに保持された色インクの吐出量のデータを出力可能となっている。
また、このようなPROMエリアは必ずしも印字ヘッドユニット31a1に備えなければならないわけではなく、少なくともプリンタ31内に装着してあればよく、図3の二点鎖線に示すように印字ヘッド31aとは別個に備えても良い。ただし、印字ヘッドユニット31a1に備えられている場合には少なくとも当該印字ヘッドユニット31a1を組み上げた状態で検査して吐出量を計測したデータを保持できるというメリットがある。特に、印字ヘッドと色インクタンクとが一体的に形成されるようなものにおいては、かかるカートリッジごとにデータを記録するようにしてもよい。
さらに、このようなデータを記録するという意味ではディップスイッチのようなものを備えてプリンタコントローラ31eに接続し、計測時に作業者が同ディップスイッチを設定するようにしても良い。このようにすれば同プリンタコントローラ31eを介して同ディップスイッチの設定内容を読みとることができ、同データを偏差として入力できるからである。あるいは、単に計測結果をシール用紙のようなものに印字し、印字ヘッド31aに貼付せしめ、ユーザーがそのシール用紙に印字されたデータを入力するということも可能である。
なお、本実施形態においては、四色の色インクを使用しているが、図4に示すプリンタ31の印字ヘッド31aのように三つの印字ヘッドユニット31a1における二列の印字ノズルを最大限に利用して六色の色インクを使用することも可能である。この場合、シアンとマゼンタについては濃色インクと淡色インクとを使用するものとし、さらにイエローとブラックとを使用して合計六色となっている。
本実施形態においては、画像出力装置30としてカラー印刷可能なプリンタ31を使用しているが、図5に示すディスプレイ32であるとか、図6に示すカラーファクシミリ機33や、図7に示すカラーコピー機34などに適用可能である。この場合、ディスプレイ32についてはRGBの各陰極線の出力特性に偏差が生じることがあるし、カラーファクシミリ機33やカラーコピー機34などにおいてはプリンタ31と同様に色インクなどの使用量に偏差が生じることがある。また、本実施形態においては、プリンタ31に対して色画像データを修正するコンピュータシステムを使用しているが、図8に示すようにカラープリンタ35内にかかる色修正システムを内蔵し、ネットワークなどから供給される色画像データを直に入力して印字するような構成も可能である。
色修正装置20を実現するコンピュータ21は機能的に偏差取得手段と色修正手段とを構成するが、むろん、これら以外の機能を有するものとすることも可能であり、プリンタ31を出力装置とすれば表色空間を変換する色変換手段と階調を変換する階調変換手段を兼用することも可能である。
まず、偏差取得手段について説明するものの、この偏差を取得する手法に関連して具体例は大きく変化する。図9は上述したようにプリンタ31自体が色インクの吐出量の偏差を保持する場合の色修正の手順を示している。前半の手順S11と手順S12とでプリンタ31に同偏差を表すデータを記録しておき、後半の手順S13〜S15で色修正の準備をしている。
図10は印字ヘッド31aにおける色インク吐出量を示している。印字する際にプリンタドライバはRGBデータをCMYKデータに色変換するとともにハーフトーン処理するが、これは印字ヘッド31aの色インクを考慮した対応関係に基づいている。そして、この対応関係は当然に色インクの吐出量にも関係している。すなわち、同図の上段(基準)に示すようにある印字データに対応して吐出されるべき色インク量が40ngであることを前提としてプリンタドライバが色変換するにもかかわらず、実際には下段(サンプル)のようにずれてしまう。むろん、このずれを小さくすることも可能であるが、印字ヘッドユニット31a1の製造歩留まりを悪化させてしまう。
このような色インクの吐出量の計測(手順S11)は、印字ヘッド31aを組み付けた状態で全ての印字ヘッドユニット31a1にシアン色インクを供給し、所定の用紙に25%といった適当な密度で図11に示すようにベタのパッチを印刷させ、その濃度を濃度計で測定する。むろん、図に示す六つのパッチは六列の印字ノズルのそれぞれだけで印字する。全ての印字ノズルが同じシアン色インクを吐出するようにしているため、測定される濃度は印字ノズルごとの吐出量に概ね比例する。
この結果、図12に示すように各ノズルが25%の基準で印字するようにしているにもかかわらず、サンプルされた結果にはバラツキが生じる。この例で言えば、同じ印字ヘッドユニット31a1で印字されるマゼンタとイエローに使用することになる印字ノズルの吐出量がやや少なく(23%)、シアンに使用することになる印字ノズルの吐出量がやや多く(27%)なっており、ブラックに使用することになる印字ノズルの吐出量が基準値と一致している(25%)。そして、このような計測結果は計測後に印字ヘッド31aにおけるPROMエリアに書き込む(手順S12)。従って、上述したようにプリンタ31に組み付けられたときには印字ヘッドコントローラ31bを介して印字ヘッドユニット31a1ごとの吐出量を読出可能となる。なお、必ずしもシアン色インクを使用する必要はない。
コンピュータ21においては、上述した手順S13〜S15をプリンタドライバなどが実行する。プリンタドライバの通常の印刷手順を図13に示している。ステップS110でRGBデータ(赤緑青の三色の要素色についての階調表示データを指すものとする)からなる色画像データを入力したら、先ず、ステップS120ではCMYKデータ(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四色の要素色についての階調表示データを指すものとする)に変換する。このような異なる色空間での色変換については公知の手法で行われ、ここでは詳述しない。色変換されたCMYKデータは、基準量の色インクが吐出されてこそRGBデータと同色を表現できることになるものの、上述したように色インクの吐出量に誤差があれば色再現性は劣化してしまう。従って、ステップS130に示すように色インクの吐出量の偏差を見越したC’M’Y’K’データに修正する必要がある。例えば、色インクの吐出量が少ない色についてはCMYKデータの値を大きめにしておけば差し引きしてちょうど良くなるし、色インクの吐出量が多い色についてはCMYKデータの値を小さめにしておけば差し引きしてちょうど良くなるといえる。そして、このようにして得られたC’M’Y’K’データを使ってステップS140にて二値化し、ステップS150で印刷すれば、色再現性は向上する。
ただし、このようなステップS130での色修正は、上述したプリンタドライバがその起動時に色修正ルックアップテーブルを作成するとともに、色変換ルックアップテーブルに組み入れることによって実質的に行われる。すなわち、同プリンタドライバは、まず、手順S13に示すようにバラツキデータのPROMからの読み込みを実行する。ここにおける実行主体はコンピュータ21のCPUであるし、かかる手順自体はハードディスク22に記録されたプリンタドライバプログラムであり、CPUは適宜必要なプログラムを読み込んでRAM上に展開して実行している。
バラツキデータの読み込みはCPUが周辺機器との双方向通信を実行することによって行われる。このような周辺機器との双方向通信はROM等に記録された基本プログラム等も利用して行われる。具体的にはCPUはプリンタ31と通信し、プリンタコントローラ31eと印字ヘッドコントローラ31bとを介して印字ヘッド31aのPROMエリアに記憶された吐出量のデータを読み出す。すなわち、このようにして吐出量のデータを読み出す手順およびハードウェア環境こそが偏差取得手段を構成する。
吐出量のデータが印字ヘッド31aに保持されている場合のメリットとして基準からのずれが分かるということも上げられる。後述するようにしてパッチを印刷することにより印字ノズル間での相対的な強弱を判別する場合、例えば相対的に弱い方については基準よりも弱い結果なのか他方が強すぎる故であるのかといったことは判別できない。しかしながら、このように工場などで計量した結果が保持されていれば絶対的な意味での偏差が分かる。
偏差が分れば、手順S14では色修正のためのルックアップテーブルを作成する。図12に示すように、シアンは基準よりも強く、マゼンタとイエローは基準よりも弱いから、図14に示すように元のシアンCのデータに対して修正されたシアンC’のデータは全体的に弱めとするとともに、元のマゼンタMとイエローYのデータに対して修正されたマゼンタM’とイエローY’のデータは全体的に強めとする対応関係をルックアップテーブルに形成する。また、ブラックについては基準通りであるため、入出力間で特性を変化させていない。なお、ここで示す入出力の変換特性についての詳細は後述する。
次なる手順S15ではこの色修正のためのルックアップテーブルを使って色変換ルックアップテーブルの値を書き換える。従って、RGBデータに基づいて同色変換ルックアップテーブルを参照すればCMYKへの色空間の変換と同時にプリンタ31の出力特性の偏差を見越したC’M’Y’K’データへの修正も同時に行われる。すなわち、手順S14,S15という前準備をしておいたルックアップテーブルを使用してプリンタドライバが色変換する作業およびそのハードウェア構成が色修正手段を構成しているといえる。
上述した例では、濃度を介して間接的に色インクの吐出量を計測しているが、同吐出量を直に計測しても良い。むろん、1ドット(ショット)で吐出される色インクの重量は計測困難であるから、数万ショットで使用される色インクの重量を計測し、ショット数で除算して1ショットあたりの色インクの吐出量を計測することもできる。
図15は各印字ヘッドユニット31a1において1ショットで使用される色インクのインク重量とそのクラス分けの対応表を示している。この例では1ショットあたりの色インク量が20.5〜21.0ngであるときを基準として「1」〜「21」のクラス分けを行ない、各クラスをIDと呼んでいる。図から明らかなようにIDが小さいほどインク重量が重いので色インクをたくさん使用しており、逆にIDが大きいほど少しの色インクを使用している。従って、IDが大きい場合にはデータが表す濃度を濃いめにすればずれを打ち消すことになるし、逆にIDが小さい場合は濃度を薄めにすれずれを打ち消すことができるようになる。
故に、予め、IDに対応して図16に示すように入力データと出力データとの間で変換される色修正ルックアップテーブルLUT1〜LUT21を用意しておき、この色修正ルックアップテーブルLUT1〜LUT21に従ってデータの変換を行えばずれは解消される。なお、図16に示す関数はよく知られているγ補正のトーンカーブであり、256階調のRGBデータを前提とすれば、γ曲線はY=255×(X/255)**γとなる入出力関係を意味しており、γ=1において入出力間で強調を行わず、γ>1において入力に対して出力が弱くなり、γ<1において入力に対して出力が強くなる。本実施形態においては、予めIDに対応して印刷結果が最もリニアになるトーンカーブのγを実験によって求めてあり、各IDに対応したルックアップテーブルLUT1〜LUT21を生成してある。
ところで、これまでは偏差取得手段を実現するにあたってプリンタ31に偏差を表すデータが記録されているという前提であった。しかし、プリンタ31に偏差を記録する手法では、ハードウェアに対する調整を行うことなく色再現性を向上させることはできるものの、それだけでは経年変化などに対応することができない。
工場調整をすることなく経年変化に対応するためにはユーザーの側で容易に調整できる必要がある。このようにすれば、経年変化に対応可能であるし、さらにはプリンタ31が偏差を表すデータを保持しない場合であっても対応可能である。
図17はこのような場合の手順を示しており、現実にはプリンタドライバが起動されたときに以下の手順を実行することになる。手順S21〜S24はパッチの印刷とユーザーの入力であり、これによってコンピュータ21は偏差を取得する。まず、この偏差の取得手法について説明する。
図18および図19はコンピュータ21にてプリンタ31に印刷させるパッチとそのデータを示している。手順S21では、紙面上に(1)〜(5)の符号を伴った五つの色偏りパッチを印刷させるものとし、その印刷の色データは赤成分を微妙に変化させたものとなっている。図19に示すように、緑成分と青成分とを階調値「64」で固定しつつ赤成分だけについては階調値「48」〜「80」の範囲で「8」刻みとしている。この刻み幅は全体としての傾向を見る必要があり、細かくしすぎる必要はない。(1)のように赤成分が弱ければシアンぽいグレイが印刷され、(5)のように赤成分が強ければ赤っぽいグレイが印刷される傾向にある。
色データを見れば分かるように、本来であれば(3)のパッチにおいて赤緑青の各成分が一致するのでグレーで出力されるべきであるが、上述したようにこの色データに基づいてプリンタ31が印刷する場合に色インクの吐出量の偏差によっては必ずしも(3)のパッチがグレーで出力されるとは限らない。
手順S22ではユーザーがこのパッチを見てグレーに近いパッチNo.を選択してキーボード23から入力する。ここで、(3)のパッチがグレーであれば修正する必要はないといえる。しかしながら、(4)や(5)のパッチがグレーに近いと判断されたならばシアンが強いことを裏付け、(1)や(2)のパッチがグレーに近いと判断されたならばシアンが弱いことを裏付けることになる。すなわち、この選択はプリンタ31における各要素色ごとの強弱のバランスを判定することに対応する。
ここにおいて、図13にも示したようにRGBデータをCMYKデータに変換する色変換を実行する前提があるのであれば、シアンが強い場合にこの色変換の前であっても後であってもプリンタ31による印刷結果に影響を与えることは可能である。上述した例ではCMYKデータを修正する例を示したので、ここでは図20に示すようにRGBデータを修正する例を説明することにする。
図21〜図23は手順S22においてユーザが選択したパッチが(4)または(5)であり、シアンが強くなる傾向の場合の色修正を示している。
プリンタドライバでは手順S22にて(4)または(5)が選択された場合に赤成分を強調する色修正が必要であると判断し、どの程度の強調修正をすべきか判定するために手順S23にてグレイスケールパターンを印刷する。ここでいうグレイスケールパターンとは赤成分についてトーンカーブを利用した強調修正を行うものとし、その強調程度を変えて階調値の異なるグレイを連続したパッチ状に印刷したものを意味している。図21はトーンカーブの符号とともにそのグレイスケールを印刷しており、図22は各トーンカーブにおける入出力間の対応関係を示している。図に示すように、トーンカーブの符号が大きいものほど強調度が大きいことが分かる。
本実施形態においては、トーンカーブとしてγ補正を採用し、同γを「0.05」刻みで変化させてグレイスケールを印刷してみたところ、良好な結果を得た。
むろん、トーンカーブとしては、γ補正に限られる必要はなく、図23に示すようなスプライン曲線もよく利用される。この例では256階調のRGBデータを前提において、赤成分について階調値「64」のデータをどの程度強調させるかを「8」刻みで「64」〜「88」の範囲で選択可能としている。すなわち、階調値「0」と階調値「64」と階調値「255」において入出力が(0,0),(64,a),(255,255)を通り、その間で緩やかなトーンカーブを描くように修正する。なお、階調値「64」の近辺での修正を利用しているのは人間の感覚として全階調範囲における1/4〜1/3程度の範囲を中程と感じる傾向が見られるからである。また、このようなトーンカーブを利用しないとすれば、各階調値ごとにどの程度修正すべきかを個別に指示しなければならなくなるから、極めて煩雑になる。
手順S24ではユーザーがトーンカーブの選択を実行するが、これは強調態様の選択にあたる。そして、手順S25はこのようにして選択された強調態様に基づいてRGBデータを色修正するためのルックアップテーブルを作成し、手順S26ではそのようなルックアップテーブルを色変換ルックアップテーブルに組み入れる。従って、この場合もRGBデータに基づいて同色変換ルックアップテーブルを参照すればプリンタ31の出力特性の偏差を見越したR’G’B’データへの修正とが同時にCMYKへの色空間の変換も行われる。
すなわち、手順S21〜S24が偏差取得手段を構成するといえるし、手順S25,S26という前準備をしておいたルックアップテーブルを使用してプリンタドライバが色変換する作業およびそのハードウェア構成が色修正手段を構成しているといえる。
なお、プリンタ31に偏差を保持する場合についても説明したように、このようなパッチの中からユーザーがグレイに近いものを選択する場合にはどちらが相対的なずれは分かるものの基準との偏差は分からない。従って、トーンカーブについても同じ赤成分を強くするという前提のもとで、図24に示すように赤成分だけを強調するトーンカーブも可能であるし、図25に示すように赤成分を少し強調しつつ緑成分と青成分とを少し弱くするといったトーンカーブを適用することも可能となる。
上述した実施例においては、色ずれが二つの印字ヘッドユニット31a1の間の機体差によって生じるものであったため、図19に示すように、緑成分と青成分とを固定しつつ赤成分だけについては階調値を変化させれば色ずれを解消させる方向性が分かった。しかしながら、赤成分と緑成分と青成分とがそれぞれ独立した印字ヘッドユニットを備えている場合には単に一つの成分を増減させるだけではグレーを得ることはできない。このような場合の手順を図26に示している。
以下、この手順について詳述する。手順S31では第一段階のテストパターンであるカスタムAパターンを印刷させる。カスタムAパターンを図27および図28に示しており、成分データが少しずつ異なる円形の複数の灰色パッチから構成されている。また、図27は256階調のRGBデータで成分データを表示しており、図28はCMYKデータの%表示で成分データを表示しており、図29はそれを一覧で示している。
それぞれの灰色パッチの成分データについては所定の規則性に従って少しずつ変化させてあり、中央の灰色パッチにおいて成分データが均等しており、紙面上方に向かうにつれて赤(R)成分が大きくなるとともに下方に向かうにつれて同赤成分が小さくなり、また、紙面左下方向に向かうにつれて緑(G)成分が大きくなるとともに右上方向に向かうにつれて同緑成分が小さくなり、また、紙面右下方向に向かうにつれて青(B)成分が大きくなるとともに左上方向に向かうにつれて同青成分が小さくなる。すなわち、上方から下方に向かうに方向に要素色たる赤成分の座標軸を設定するとともに、左斜め下方から右斜め上方に向かうに方向に要素色たる緑成分の座標軸を設定するとともに、右斜め下方から左斜め上方に向かうに方向に要素色たる青成分の座標軸を設定し、これらの座標軸によって定まる座標に比例して各成分データが増減している。
従って、このカスタムAパターン内において全ての要素色のバランスを一定の範囲内で変化させた全ての組が表示されることになる。むろん、この成分データ通りに色インクが吐出されれば中央のA1の灰色パッチが無彩色に見え、その周縁では要素色のバランスが崩れていずれかの要素色の影響が表れた灰色となるはずである。また、中央から離れるに従ってバランスのずれの量も大きくなっている。
しかしながら、印字ヘッドユニットにおけるインク使用量に偏りがある場合には予定通りの量の色インクが吐出されないため、A1の灰色パッチではなく、他の灰色パッチにおいてバランスすることになる。その関係を逆算した対応関係を図15のクラス分けを利用して図30に示している。例えば、A1が無彩色に見えるのであればシアンの色インクの使用量のIDは「11」となり、マゼンタの色インクの使用量のIDは「11」となり、イエローの色インクの使用量のIDは「11」となるのでまさしく均衡していることになるが、C4が無彩色に見えるのであればシアンの色インクの使用量のIDは「11」となり、マゼンタの色インクの使用量のIDは「15」となり、イエローの色インクの使用量のIDは「7」となっていることが分かる。すなわち、イエロー、シアン、マゼンタの順で吐出するインク重量が少しずつ小さくなっており、各要素色間の強弱の偏差が分かる。
なお、灰色パッチは中央のA1と、その一回り外のB1〜B6と、さらに一回り外のC1〜C12と、最外周のD1〜D16とから構成されているが、ハードウェアのチェックでは必ずC1〜C12よりも外側にずれないようにしている。それにもかかわらずD1〜D16を印字するのは、無彩色を選択する際に一定の傾向で成分データがずれる複数の灰色パッチにおいて両側の灰色パッチと比較することによって正確に判断できる事実に鑑み、必ず両側に灰色パッチが存在するようにするためである。
また、図27および図28に示すカスタムAパターンではそれぞれの灰色パッチについてはCMYの各要素色で印刷するものの、用紙の下部には切取線とともに黒色インクだけで階調値「128」に対するリファレンスパッチを印刷している。灰色パッチがたくさん並ぶと、無彩色であるか否かの判断を付けにくくなる場合がある。特に、紙色や照明の加減によっては分かりにくくなる可能性がある。しかしながら、黒色インクだけで印刷されたリファレンスパッチがあればこれと待避することによって無彩色の基準が確認できるので、灰色パッチの中から無彩色を選択する際の正確度が向上する。
ところで、カスタムAパターンで灰色パッチを選択した場合、その強弱の程度も分かった感じもするが、ここで判断された強弱の偏差はあくまでも階調値であれば「128」近辺での偏差に過ぎず、全階調にわたってシアン、マゼンタ、イエローのIDが「11」、「15」、「7」とするのが最適であるとは限らない。
従って、手順S32にてユーザーはカスタムAパターンの中から無彩色と思われる灰色パッチを選択してキーボード23からコンピュータ21に対して入力すると、同コンピュータ21は次の手順S33にて図16に示した色修正ルックアップテーブルLUT1〜LUT21の候補を選択し、手順S34にて図31に示すカスタムBパターンを印刷する。カスタムBパターンは紙面上横方向に一つの色修正ルックアップテーブルに従って成分データを変化させた灰色パッチを印刷しつつ、紙面上縦方向にその色修正ルックアップテーブルを変化させ、最終的には紙面上に27のグラデーション風のグレイスケールパターンを印刷して構成されている。
カスタムAパターンにおいてA1を無彩色として選んだ場合であっても成分データが「128」の近辺においてたまたまバランスが取れただけであり、他の階調値ではわずかにリニアでないこともある。従って、カスタムAパターンで選択された各要素色のIDについて前後プラスマイナス「1」の範囲で三つのIDを候補とし、それぞれを組み合わせた合計27個の色修正ルックアップテーブルを利用して図31に示す成分データを修正し、カスタムBパターンを印刷する。
図32はカスタムAパターンにおいてA1を無彩色として選んだ場合であり、完全に理想通りであれば14番目のグレイスケールパターンが全階調にわたって無彩色に見えるはずである。しかしながら、他の階調値のバランスからすると他のグレイスケールパターンの方が全体的に無彩色に見えることもあり得る。また、図33はカスタムAパターンにおいてC4を無彩色として選んだ場合であり、先に得られたIDを基準に27個のグレイスケールパターンの中から全階調にわたって無彩色に見えるものを選択すればよい。
選択結果は手順S35にてキーボード23からコンピュータ21に入力すると、最終的に選択されたIDに従って色修正ルックアップテーブルも決定され、プリンタドライバが色変換に使用する色変換ルックアップテーブルに組み込むべく同プリンタドライバに設定する。
ところで、これまでの例では四色インクの例であったり、RGBのデータというように所定の要素色が一色であった。従って、トーンカーブを変えるといった入出力間の特性変換が有効である。しかしながら、上述したようにシアンとマゼンタについては濃色と淡色を備えた六色インクの場合もあり、このようにある要素色において複数の濃度を選択できる場合には、濃色と淡色の選択及び混合割合を変えることによっても入出力の変換特性を変えることができる。
例えば、シアンについて濃色をC、淡色をcで表すとともにマゼンタについても同様に濃色をM、淡色をmで表すとすると、図13に示すようにRGBデータをCMYKデータ色変換するステップS120においては図34(a)に示すようにCcMmYKの六色への色変換LUTを参照することになる。一方、シアンを強調したい場合にはシアンの濃色の割合を多くして淡色の割合を少なくすればよいし、逆にシアンを弱くしたい場合にはシアンの濃色の割合を少なくして淡色の割合を多くすればよい。あるいは、濃度の影響を考えるならば濃色だけの割合だけを多くしたり少なくしたりすることも可能である。
従って、図34(b)に示すようにCcMmYKへの色変換LUTについてシアンやマゼンタについての濃色と淡色の割合を一律に変化させたり、同図(c)に示すように濃色だけについて変化させたりすることにより、色修正が可能となる。むろん、このように複数の濃度を選択できる場合においてもトーンカーブによる修正を行うことも可能である。
上述した実施例においては、印字ヘッド31aのPROMエリアに予め書き込まれている偏差を読み込むか、使用者等が複数のパッチから目視で判断したものを選択して入力するようにしているが、偏差を取得する手段としては、これらに限られるものではなく、印刷したパッチをスキャナ11などの撮像手段で読み込んだ後、判断するようにしても良い。
図35は、図17に示す手順で示した偏差取得部分において一部をスキャナ11とコンピュータ21とを利用して実施する例を示している。すなわち、手順S21と同様にして手順S41では紙面上に五つの色偏りパッチを印刷させ、手順S42でスキャナで読み込む。このスキャナによる読み込みでは、先ず、スキャナ11にて紙面全体を読み込み、次にこの五つの色偏りパッチ部分を切り出し、各パッチ部分でのRGB成分のバランスを判断して最もグレイに近いものを判断する。この場合、切り出した位置に対応して色偏りパッチを印刷せしめたデータを認識することができるから、どの成分が強いのかということが判断できる。
この判断結果に基づけばどの成分を強調すべきかが分かるから、手順S43では手順S23の場合と同様にして強調程度を判定するためのグレイスケールパターンを印刷する。そして、手順S44にて再度スキャナにて読み込む。この場合も、先ず、スキャナ11にて紙面全体を読み込み、次に強調程度毎のグレイスケールパターンの帯を切り出すとともに、その中での階調毎にパッチを切り出す。そして、各強調程度毎にグレイスケールパターンを構成するパッチのグレイ度を次のようにして判断する。すなわち、印刷したパッチごとに緑成分に対する赤成分と青成分の偏差を積算してグレイ度とする。よって、各パッチを階調毎にiで識別するとすると、
(グレイ度)=Σ{|Ri−Gi|+|Bi−Gi|}
と表せる。
このグレイ度をトーンカーブごとに演算し、最も最小になる強調程度を選択することになる。以後の手順については手順S25,S26と同様である。
さらに、スキャナ11のように撮像手段を別個に備えるのではなく、プリンタ31内に色判断可能な程度の撮像手段を組み入れるようにしても良い。図36はこのようなプリンタ31の例を示しており、印字ヘッド31aと並べてRGBの各成分を読み取り可能な撮像素子31fを配置するとともに、印字ヘッドコントローラ31bには撮像I/O部31b3を備えている。むろん、コンピュータ21はプリンタコントローラ31eと同印字ヘッドコントローラ31bの撮像I/O部31b3を介して撮像素子31fの撮像結果を読み取り可能としておく。かかる構成としておくことにより、印字ヘッド31aにてパッチを印刷する際に桁移動しながら撮像素子31fはパッチを撮像できる。
図37はかかるプリンタ31を利用して上述した手順S41〜S44と同様の処理を簡易に行うためのパッチデータを示している。パッチの印刷と撮像を平行して行えることから、基準値としての階調値を「15」「31」「47」…と移行させながら赤成分だけをその前後で「8」階調数だけずらして五つのパッチを印刷する。そして、各パッチを撮像しながらその読み取り成分値に基づいてどのパッチが最もグレイに近いかを判断する。このようにすれば、離散的ではあるものの256階調の全範囲においてグレイバランスを整わせることができるための偏差が分かることになる。従って、この偏差を元に手順S25,S26と同様にして色変換ルックアップテーブルを書き換えればよい。なお、このように自動化できる場合には、パッチデータの刻み幅をより細かくして実行すれば完全な偏差が分かるようになる。また、この場合は絶対的な色成分を判断できるため、各成分毎に偏差を求めて調整することも可能になる。
次に、上記構成からなる本実施形態の動作を説明する。
製造工程においては、三個の印字ヘッドユニット31a1を一組として印字ヘッド31aを組み付ける。印字ヘッド31aが色インクの吐出量を書き込み可能なPROMエリアを備えるものである場合、各印字ヘッドユニット31a1に対してシアン色インクを充填し、25%濃度となるデューティで図11に示すようなベタのパッチを印刷させる。次に、このパッチを濃度計で計測し、同計測した濃度を表すデータを上記PROMエリアに書き込む。むろん、この作業が手順S11,S12に相当する。この後、当該印字ヘッド31aのシアン色インクを洗い流して空にし、プリンタ31を組み上げる。
一方、ユーザーの側ではプリンタ31を購入した後、各人のコンピュータシステムなどに接続してプリンタドライバなどをインストールするが、このときに色修正装置の適用例である色修正プログラムを記録されたフロッピーディスクやCD−ROMなどの媒体から当該色修正プログラムを読み込み、コンピュータシステムのハードディスク22などにインストールする。むろん、インストールはかかるフロッピーディスクやCD−ROMなどの具体的な媒体に限らず、モデム26を介して公衆通信回線などを介してインストールすることも可能である。
かかる色修正プログラムを起動させると、同コンピュータシステムはプリンタ31と通信し、プリンタコントローラ31eと印字ヘッドコントローラ31bを介して印字ヘッド31aのPROMエリアに記録されているデータを読み出す(手順S13)。このデータは上述したように実際に計測された濃度を表すデータであり、これが基準値より上回っていたり下回っていた場合には色修正ルックアップテーブルを作成し(手順S14)、次に、この色修正のためのルックアップテーブルを使って色変換ルックアップテーブルの値を書き換えて(手順S15)当該プログラムは終了する。従って、これにさかのぼってプリンタドライバがインストールされている必要があるが、色修正のためのルックアップテーブルを作成するだけでこのプログラムを終了しておき、プリンタドライバが起動されたときに色修正のためのルックアップテーブルを使って色変換ルックアップテーブルの値を書き換えるようにしてもよい。
一方、このようにして色変換ルックアップテーブルを書き換えておくことにより、アプリケーションなどから印刷を実行したときにプリンタドライバが起動されると、プリンタドライバは図13に示すステップS110にて色画像データを入力し、ステップS120にてこの色画像データ基づいて上記色変換ルックアップテーブルを参照する。この色変換ルックアップテーブルで参照されるCMYKデータにはプリンタ31における出力特性の偏差を見越して既に書き換えられているので、読み出されるCMYKデータはステップS130の色修正を完了したデータとなっている。
従って、ステップS140にて二値化し、ステップS150にてプリンタ31に印刷させたときには当該プリンタ31における印刷ヘッドユニット31a1の偏差によって生じるはずの色ずれが生じない。
この場合はコンピュータシステムに使用する例であるが、例えば、図8に示すようにかかる色修正システムをカラー印刷装置内に収容している場合にはハードウェアの調整をしなくても、電源をオンにしたときに手順S13,S14に示すような色修正ルックアップテーブルを作成し入力される色画像データを色修正して印刷するため、元の色に忠実な色で印刷することが可能となる。
一方、このように印字ヘッド31aにPROMエリアがないような場合や、あったとしても経年変化などによって色のずれを感じるようになった場合、さらには、色のついた紙に印刷したいといった場合には図17に示すような手順に従って色変換ルックアップテーブルを作成する。
すなわち、プリンタ31を購入した後、各人のコンピュータシステムなどに接続し、プリンタドライバのインストールを行なうとともに、色修正プログラムを起動する。すると、最初に図18に示すような五つの色偏りパッチを印刷する(手順S21)ので、この五つの色偏りパッチのうち、最もグレーに近いものを選択してコンピュータシステムに入力する(手順S22)。このときに(3)に示すパッチを選択しなかった場合には各要素色間に偏りがあるものと判断され、偏りのある要素色を所定のトーンカーブで修正するために修正レベルを異ならせたグレイスケールパターンを印刷するので(手順S23)、その中で最もグレイらしいものを選択して同様に入力する(手順S24)。
この時点で色修正プログラムはどの要素色についてどの程度で修正を掛けてやればプリンタ31における出力特性の偏差を打ち消すことができるかが分かるようになる。従って、かかる情報に基づいて色修正ルックアップテーブルを作成し(手順S25)、続いて色変換ルックアップテーブルを書き換える(手順S26)。
このようにして色変換ルックアップテーブルを書き換えておけば、先程の場合と同様に、アプリケーションなどから印刷を実行したときにプリンタドライバが起動されると、プリンタドライバは図20に示すステップS210にて色画像データを入力し、書き換えられた色変換ルックアップテーブルを参照することによってステップS220,S230の色修正と色変換とを同時に行う。そして、この後のステップS240にて二値化し、ステップS250にて印刷させたときには当該プリンタ31における印刷ヘッドユニット31a1の偏差によって生じるはずの色ずれが生じない。
このように、プリンタ31における出力特性の偏差を印字ヘッドユニット31a1のPROMエリアに書き込くとともに同PROMエリアを読み込んだり、あるいは所定の調整用パターンを印刷させるとともにその中からグレイに近いものを選択して入力させることにより、上記プリンタ31における出力特性の偏差を取得するとともに、この偏差を打ち消すように色変換すべく色修正ルックアップテーブルを作成して色変換ルックアップテーブルを書き換えておくことにより、実際に色画像データに基づいて印刷を行ったときに書き換えられた色変換ルックアップテーブルを参照して偏差を見越した色修正が行われるため、結果として印刷物における色は当該プリンタ31におけるハードウェアに既存した偏差は生じなくなり、忠実に色再現することが可能となる。