JP2008235760A - 絶縁膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜について、当該絶縁膜の誘電率を高めることができる絶縁膜の製造方法を提供する。
【解決手段】基板11上に、第1の電極12を形成し、その上に、酸化アルミニウム膜と酸化チタン膜とが積層された積層膜よりなる絶縁膜13を形成した後、この絶縁膜13に対して、当該絶縁膜13の透過率が10〜80%になる波長を持つレーザーLを照射する。それにより、絶縁膜13の容量を大きくし誘電率を高める。
【選択図】図2
【解決手段】基板11上に、第1の電極12を形成し、その上に、酸化アルミニウム膜と酸化チタン膜とが積層された積層膜よりなる絶縁膜13を形成した後、この絶縁膜13に対して、当該絶縁膜13の透過率が10〜80%になる波長を持つレーザーLを照射する。それにより、絶縁膜13の容量を大きくし誘電率を高める。
【選択図】図2
Description
本発明は、絶縁膜の製造方法に関し、特に、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜の誘電率を向上させる方法に関する。
絶縁膜としては、デバイスへの適用方法によって大小さまざまな誘電率をもった膜が望まれている。この中で、絶縁膜の高誘電率材料としては、その物性を引き出すためにいろいろな検討がなされている。高誘電率材料を使いたい理由は、どのような素子においても機能膜としての性能を高めたいがゆえに、絶縁膜の容量を高くしたいという要望があるためである。
絶縁膜の容量を高くするためには、その膜の誘電率を高くするか、膜厚を薄くするかの選択肢しかない。しかしながら、膜厚を薄くすると耐圧が低下し、デバイスとして機能しなくなるので、高誘電率の絶縁膜が望まれている。
絶縁膜の誘電率を高める方法としては、(1)高誘電性を示す材料を開発する、(2)既存の材料に何らかの工夫をして誘電率を高める等の2つが挙げられる。この中で、上記(2)については、特許文献1に記載されているように、絶縁膜を挟む両側の電極材料の応力について、一方を圧縮応力にし、他方を引張応力にする方法が提案されている。
一方、絶縁膜にレーザーを照射して、その絶縁特性を変化させる方法としては、絶縁膜にレーザーを照射して、該膜を多孔質化して誘電率を低くする方法や(特許文献2参照)、トップゲート型のトランジスタの製造方法において、ゲート絶縁膜を成膜後、レーザーを照射することで、ゲート絶縁膜がブレークダウンが生じるまでの時間を延ばす効果をもたらしたり、ゲート酸化膜の特性を向上させてトランジスタの移動度を増す方法や(特許文献3参照)、絶縁膜にレーザーを照射して導体にする方法(特許文献4参照)等が提案されている。
特開2001−94068号公報
特開2006−186330号公報
特開平8−78688号公報
特開2002−313927号公報
ところで、本発明者は、絶縁膜として、たとえば無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子などに用いられるAl2O3/TiO2積層構造膜のような、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜の開発を進めている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、薄膜としての絶縁膜に応力を発生させると、該絶縁膜を作製する基板との関係によっては、膜剥れが生じやすくなり、適用範囲が限定されるという問題が生じる。また、仮に、絶縁膜と基板との関係から膜剥れが生じにくくなっても、絶縁膜の配置等によっては応力を受けることによって、特性変動が生じるといった問題も懸念される。
また、上記特許文献2〜4には、絶縁膜にレーザーを照射して、その絶縁特性を変化させる方法が記載されているものの、いずれの方法も、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜の誘電率を高めるものではなく、そのまま適用できるものではない。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜について、当該絶縁膜の誘電率を高めることができる絶縁膜の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の製造方法は、基板(11、41、51)上に、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜(13、43、53、55)を形成し、この絶縁膜に対して、当該絶縁膜の透過率が10〜80%になる波長のレーザーを照射することを特徴とする。
本発明は、後述する図3、図4に示されるように、実験的に見出されたものであり、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜(13、43、53、55)に対して、当該絶縁膜の透過率が10〜80%になる波長のレーザーを照射することにより、当該絶縁膜の容量を大きくし誘電率を高めることができる。
ここで、レーザーの絶縁膜(13、43、53、55)での透過率を10%以上にする理由は、これ以下では、当該絶縁膜の上部と下部で光との相互作用に大きな違いが出てしまい、例えば耐圧の低下等の不具合が生じることがあるためである。また、レーザーの絶縁膜(13、43、53、55)での透過率が80%以上であれば、当該絶縁膜の温度が短時間で上昇せず膜質を大きく変化させることが困難になるので、光との相互作用が満足されにくくなる。
ここで、絶縁膜(13、43、53、55)における容量をC、電荷量をQ、印加電圧をVとしたときの関係Q=CVが、QがVに対して非線形で増加する関係となるように、レーザーの照射を行うようにすれば、絶縁膜(13、43、53、55)の容量を大きくするうえで好ましい(後述の図4参照)。
また、絶縁膜(13、43、53、55)は少なくとも酸化チタン膜を含むものであることが好ましく、具体的には、酸化アルミニウム膜と酸化チタン膜とが積層された積層膜として構成されたものが採用できる。
また、本発明者の実験検討によれば、レーザーの発振周波数は10kHz以上であることが好ましい。また、絶縁膜としては、薄膜容量素子の絶縁膜(13)として用いられるものや、トランジスタ素子のゲート絶縁膜(43)として用いられるものや、無機エレクトロルミネッセンス素子の絶縁膜(53、55)として用いられるものとすることができる。
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る薄膜容量素子100の概略断面構成を示す図である。この薄膜容量素子100は、たとえば、半導体のキャパシタなどとして用いられるものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る薄膜容量素子100の概略断面構成を示す図である。この薄膜容量素子100は、たとえば、半導体のキャパシタなどとして用いられるものである。
この薄膜容量素子100において、基板11は、たとえばガラスや半導体などのセラミック、あるいは樹脂などよりなる。この基板11の上には、順次、第1の電極12、絶縁膜13、第2の電極14が積層されている。
なお、電極の形状を限定するものではないが、ここでは、第1の電極12は図1中の左右方向に延びるストライプ状に形成され、第2の電極14は図1中の紙面垂直方向すなわち第1の電極12と直交する方向に延びるストライプ状に形成されたものである。そして、これら両電極12、14は互いに交差して重なり合っている。
これら第1および第2の電極12、14は、ITO(インジウムチンオキサイド)などの透明導電材料やアルミニウムなどの金属材料などよりなる膜として構成され、スパッタや蒸着などにより成膜されたものである。そして、この第1の電極12と第2の電極14とが交差しこれら両電極12、14によって絶縁膜13が挟まれている部位が、容量部を構成している。
絶縁膜13は、異なる金属酸化膜が複数積層されてなる積層膜として構成されている。また、本実施形態の絶縁膜13は、後述するレーザー照射により、光と熱の両方の作用によって、膜質を変化させ、その容量すなわち誘電率が当該レーザー照射を行わない場合に比べて高くなっているものである。
異なる金属酸化膜の積層膜である絶縁膜13としては、第1の層と、当該第1の層よりも誘電体としての機能が熱的に安定である第2の層とが積層されたものであることが望ましい。言い換えれば、本実施形態の絶縁膜13は、熱的な性質に関しては、熱によって化学量論的組成が変化して誘電体としての機能が低下する第1の層と、熱的に安定で誘電体としての機能を損なわない第2の層が積層された絶縁膜であることが望まれる。
ここで、熱的に安定な金属酸化膜としては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化シリコン(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化ベリウム(BeO)、酸化ランタン(L2O3)が挙げられる。
一方、それらに比べて、不安定な金属酸化膜としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化コバルト(CoO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化鉄(FeO)、酸化鉛(Pb2O3)、酸化ニオブ(NbO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化白金(PtO)、酸化バナジウム(VO)、酸化モリブデン(MoO)が挙げられる。
次に、本実施形態の薄膜容量素子100の製造方法について、図2(a)〜(c)を参照して述べる。図2は本容量素子100の製造方法を工程順に示す図であり、各工程におけるワークの断面を示している。
まず、図2(a)に示されるように、スパッタや蒸着などによる成膜およびフォトリソグラフ法によるパターニングなどにより、基板11上に第1の電極12を形成する。その上に、ALD(Atomic−Layer−Deposition)法やスパッタ法、蒸着法などにより、異なる金属酸化膜が積層された絶縁膜13を成膜する(絶縁膜の成膜工程)。
次に、図2(b)に示されるように、絶縁膜13の透過率が10〜80%になる波長を持つレーザーLを、当該絶縁膜13の表面から照射する(レーザー照射工程)。それにより、光と熱の両方の作用で絶縁膜13の膜質を変化させ、絶縁膜13の容量を高くして、絶縁膜13の誘電率を高めるようにする。
単純に、熱だけの影響で誘電体としての機能が低下したのであれば、絶縁膜13の耐圧の低下等の不具合も生じるが、上記レーザーLによる光の照射を伴えば、リーク電流を抑えることができるので、絶縁膜13の耐圧の低下を防止できる。
また、上述したように、本実施形態の絶縁膜13は、熱によって化学量論的組成が変化して誘電体としての機能が低下する第1の層と、熱的に安定で誘電体としての機能を損なわない第2の層が積層されたものであることが望まれるが、これら熱的に不安定な第1の層と不安定な第2の層は、お互いが少なくとも1nm以上の膜厚で2回以上積層されていれば、その機能は維持される。
また、レーザーLの透過率を10%〜80%とする理由は、本発明者の実験検討によるものである。レーザーLの透過率が10%以下では、絶縁膜13の上部(レーザーLの照射面側)と下部(第1の電極12側の面側)で光との相互作用に大きな違いが出てしまい、例えば耐圧の低下等の不具合が生じやすくなる。
また、レーザーLの透過率が80%以上であれば、絶縁膜13の温度が短時間で上昇せず膜質を大きく変化させることができないので、光との相互作用が満足されない。そこで、上記絶縁膜へのレーザー照射工程では、当該レーザーLの透過率を10%以上80%以下としている。
こうして、レーザー照射により、絶縁膜13の高誘電率化を行った後、図2(c)に示されるように、絶縁膜13の上に第2の電極14を形成する。この第2の電極14も、スパッタや蒸着などによる成膜およびフォトリソグラフ法によるパターニングなどにより形成する。
こうして、薄膜容量素子100ができあがる。以上が、本実施形態の容量素子の製造方法であるが、上記製造方法のうち絶縁膜13の成膜工程およびレーザー照射工程が、絶縁膜13の製造方法を構成している。
なお、上記製造方法においては、第2の電極14を、レーザーLが透過するような材料、たとえばITOなどの透明導電材料により構成すれば、第2の電極14の形成後に、当該第2の電極14の上から絶縁膜13に対してレーザーLを照射してもよい。
次に、本実施形態の絶縁膜13として、ALD法で成膜されたAl2O3/TiO2積層構造膜で容量を高める具体的な方法について説明する。なお、Al2O3/TiO2積層構造膜は、Al2O3層とTiO2層との積層構造であり、これを以下、ATO膜と呼ぶことにする。
まず、ATO膜の具体的な成膜方法について説明する。第1のステップとして、アルミニウム(Al)の原料ガスとして三塩化アルミニウム(AlCl3)、酸素(O)の原料ガスとして水(H2O)を用いて、Al2O3層をALD法で形成する。ALD法では1原子層ずつ膜を形成していくために、原料ガスを交互に供給する。
したがって、この場合には、AlCl3をアルゴン(Ar)のキャリアガスで反応炉に1秒導入した後に、反応炉内のAlCl3ガスを排気するのに十分なパージを行う。次に、H2Oを同様にArキャリアガスで反応炉に1秒導入した後に、反応炉内のH2Oを排気するのに十分なパージを行う。そして、このサイクルを繰り返して所定の膜厚のAl2O3層を形成する。
第2のステップとして、Tiの原料ガスとして四塩化チタン(TiCl4)、酸素の原料ガスとしてH2Oを用いて、酸化チタン層を形成する。具体的には、第1のステップと同様にTiCl4をArキャリアガスで反応炉に1秒導入した後に、反応炉内のTiCl4を排気するのに十分なパージを行う。次に、H2Oを同様にArキャリアガスで反応炉に1秒導入した後に、反応炉内のH2Oを排気するのに十分なパージを行う。そして、このサイクルを繰り返して所定の膜厚の酸化チタン層を形成する。
そして、上述した第1のステップと第2のステップを繰り返し、所定膜厚のATO膜を形成して、これを絶縁膜13とする。具体的には、Al2O3層、TiO2層とも、1層当たりの厚さを5nmとし、それぞれ6層積層した構造とした。なお、Al2O3/TiO2積層構造膜の最初と最後の層は、Al2O3層とTiO2層のいずれであってもよい。
また、ALD法を用いて原子層オーダで膜を形成する場合、0.5nmより薄い膜では絶縁体として機能せず、また1層当たりの膜厚が20nmよりも厚い場合には、積層構造による耐電圧の向上効果が低下してしまう。したがって、積層構造膜の1層当たりの膜厚は0.5nmから20nm、好ましくは1nmから10nmとするのがよい。
本発明者は、このALD法によって、Al2O3層、TiO2層とも、1層当たりの厚さを5nmとし、それぞれ6層積層した構造のATO膜を成膜した。次に、このATO膜を絶縁膜13として用い、これにレーザー照射を行う例について説明する。
図3は、当該ATO膜としての絶縁膜13における透過率曲線を示す図である。これから、当該ATO膜の透過率が10%〜80%の範囲に入るためには、おおよそ324〜382nmの波長のレーザーを選択すればよいことがわかる。
このような波長の光を放射するレーザーとしては、たとえば、クリプトンガスレーザー(337〜356nm)やHe−Cdレーザー(325nm)等のガスレーザーや、XeFガスを用いたエキシマレーザー(351nm)、YAGレーザーの3倍波(355nm)が挙げられる。
また、これらのレーザーにおいて、当該ATO膜へのレーザー処理を十分に実施するためには、できれば連続発振のレーザーが望ましい。しかしながら、連続発振できるレーザーは限られるので、パルスレーザーならば、できるだけ高周波のレーザーを使えばよい。通常、レーザー照射で上記高誘電率化の効果をもたらす場合は、パルス間において絶縁膜13が冷却されることを少なくする必要があるからである。
本発明者の実験では、10kHz以上の周波数であれば、上記効果が得られた。さらに、周波数を高くすれば、効率的にレーザー処理できるので、処理時間を短くすることができた。具体的には、355nmのYAGレーザーの3倍波を上記ATO膜に照射した際には、50kHzでは高容量化の効果を得るのに、1分以上の照射時間が必要であったが、80MHzのレーザーでは、100μsecでその効果が得られた。
次に、このレーザー照射による高誘電率化の効果について、上記ATO膜に80MHz、355nmのYAGレーザー3倍波を照射した場合を例にとって、より具体的に説明する。図4は、このYAGレーザー3倍波を照射したときに、上記ATO膜としての絶縁膜13の電荷量Qが印加電圧Vによってどのように変化するかを示す図である。
ここでは、図4のサンプルとしての薄膜容量素子は、上記図2に示される製造方法と同じ手順で作製した。本例では、ガラス基板11上に、第1の電極12として膜厚650nmのITO膜を形成し、その上に絶縁膜13として上記図3に示す透過率特性を有するATO膜を形成した。
その後、上記レーザーを0.2mm角のトップハット型に整形し、0.675Wのパワーで5mm/secの速度で走査して、絶縁膜13に照射した。その後、第2の電極14としてITO膜を200nm成膜した。
図4は、第1および第2の電極12、14を介して、電圧として240Hzの正弦波を、絶縁膜13に印加したときに、絶縁膜13の電荷量Qが、印加電圧Vとともにどのように変化したかについて、調査した結果を示す図である。ここで、横軸の印加電圧Vは、正弦波印加時の最大電圧とした。
この図4において、白四角プロットにて示されるグラフ21が上記条件でレーザーを照射したときの例であり、黒菱形プロットで示されるグラフ22はレーザーを照射せずに測定した比較例である。絶縁膜13における容量をCとしたとき、上記電荷量Q、上記印加電圧Vとの関係は、Q=CVである。つまり、図4では、このグラフ21、22の傾きが絶縁膜13の容量Cに該当する。
図4をみると、比較例のように、レーザーを照射していない場合のグラフ22では、通常の絶縁膜と同様に、関係Q=CVが線形的に増加するものとなっている。しかし、本実施形態のように、レーザーを照射した場合のグラフ21では、電荷量Qが印加電圧Vの増加に伴い直線ではなく、非線形に増加している。
つまり、本実施形態では、レーザーの照射を行うことにより、当該関係Q=CVが非線形で増加する関係となるようにしている。本例のグラフ21では、印加電圧Vが0〜60V程度までは、電荷量Qが直線的にすなわち線形に増加しているが、60Vあたりで変曲点が存在し、増加の傾きが大きく変化しており、全体として非線形で増加する関係となっている。
すなわち、本例のグラフ21では、Q=CVの関係をみると、印加電圧Vによって、絶縁膜13の容量Cが変化し、さらに言うならば、印加電圧Vを0から増加させていくと、ある電圧(ここでは60Vあたり)を越えたところから、急激に容量Cが増加するものとなっている。
具体的に、図4から、60V以下の電圧Vを、サンプルとしての容量素子に印加した場合、レーザー照射がなければ、絶縁膜の容量Cは91.2nF/cm2であるのに対して、レーザーを照射することで、120nF/cm2となり、容量Cを、約30%を増加させることができる。
また、図4から、60V以上の電圧Vを印加すると、レーザーを照射することで最大で容量Cが279nF/cm2となり、レーザー照射なしの場合の約3倍にすることができた。このように、上記関係Q=CVが非線形で増加する関係となるようにレーザー照射を行うことは、絶縁膜13の容量Qを大きくするうえで好ましい。
また、本発明者は、レーザーパワーを低下したり、照射時間を短くしたりすれば、絶縁膜の容量Cの変化量は小さくなることを確認している。つまり、レーザー照射条件を適宜調整することで、絶縁膜13の容量Cの値を制御すればよい。
また、図4に示される例では、絶縁膜13の成膜後にレーザーを照射しているが、第2の電極14が、照射されるレーザーを透過するような材質と膜厚であれば、第2の電極14を成膜後にレーザーを照射しても同様の効果が得られる。
この例では、第2の電極14として200nmのITO膜を用いているが、このITO膜は355nmのレーザーの透過率が十分に高く、第2の電極14の成膜後にレーザーを照射しても、上記図4と同様の効果が得られることを確認している。
このようにして作製される薄膜容量素子100は、上記例のとおりレーザーを照射することで容量Cを約30%増加させることができるので、従来と比較して同容量にするためには、絶縁膜13の膜厚を約30%厚くすることができ、容量素子100の耐圧向上が可能となる。また、このことから、容量素子100の絶縁膜13の膜厚を従来と同じにしても素子面積を約30%低減できるので、素子100の高集積化が可能になる。
また、上記図4に示されるように、本実施形態では、絶縁膜13の容量Cが印加電圧Vによって大きく変化するので、本薄膜容量素子100は、3値の容量を持つ容量素子として利用することができる。具体的に、上記図4のものでは、印加電圧を0V、10〜60V、70〜75Vに設定すればよい。
こうすることで、従来の2値の容量素子よりも同じ面積で記憶容量を大きくすることができる。なお、ここでは、図4のグラフ21に示した素子を例にとって説明したが、絶縁膜13としてのATO膜のトータル膜厚を薄くすれば、容量が変化する電圧を低くできるため、さらなる低電圧化も可能である。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、上記第1実施形態で説明した絶縁膜の容量増加方法を、電界効果型薄膜トランジスタ(MOSTFT)に応用するものである。たとえば、nチャネルMOSTFTのドレイン電流Idは、次の数式1にて示される。
(数式1)
Id=1/2×μn×(Cox/L)×(Vgs−Vt)2×(1+λ×Vds)
ここで、μn:nチャネルトランジスタの電子移動度
Cox:単位面積当りのゲート絶縁膜容量
L:トランジスタのゲート長
Vgs:ゲート−ソース間電圧
Vt:閾値電圧
λ:チャネル長変長係数
Vds:ソース−ドレイン間電圧
で表せる。
本発明の第2実施形態は、上記第1実施形態で説明した絶縁膜の容量増加方法を、電界効果型薄膜トランジスタ(MOSTFT)に応用するものである。たとえば、nチャネルMOSTFTのドレイン電流Idは、次の数式1にて示される。
(数式1)
Id=1/2×μn×(Cox/L)×(Vgs−Vt)2×(1+λ×Vds)
ここで、μn:nチャネルトランジスタの電子移動度
Cox:単位面積当りのゲート絶縁膜容量
L:トランジスタのゲート長
Vgs:ゲート−ソース間電圧
Vt:閾値電圧
λ:チャネル長変長係数
Vds:ソース−ドレイン間電圧
で表せる。
この式から、トランジスタ素子における絶縁膜の容量Coxが大きい程、ドレイン電流Idを大きくできるため、当該容量Coxが大きい方が好ましいことがわかる。
ここで、上記図4のグラフ21に示される特性を持った絶縁膜を、本実施形態の絶縁膜として用いた場合、60V以上の電圧印加により、さらに容量が大きくなるため、より大きな効果が得られる。
この種のトランジスタ素子では、ゲート絶縁膜としては、従来では材料の取り扱い易さから、シリコン系の窒化膜や酸化膜またはその混合膜が使われていた。本実施形態では、当該ゲート絶縁膜として、上記第1実施形態と同様のATO膜よりなる絶縁膜を用いたトランジスタ素子を実現するが、そのトランジスタ素子は、たとえば以下のような工程で作製することができる。
図5は、本実施形態に係るトランジスタ素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)素子101の製造方法を工程順に示す図であり、各工程におけるワークの断面を示している。まず、図5(a)に示されるように、ガラス基板41上にアモルファスシリコン膜42を20〜100nmの膜厚で成膜し、これを島状に加工する。
その後、本実施形態のゲート絶縁膜43として、ともに1層当たりの厚さが5nmであるAl2O3層、TiO2層をそれぞれ5〜10層積層したATO膜を、上記同様のALD法により成膜する(絶縁膜の成膜工程)。なお、この場合も、ATO膜の最初と最後の層は、Al2O3層とTiO2層のいずれであってもよい。
そして、この状態で、上記第1実施形態と同様に、ゲート絶縁膜43の透過率が10〜80%になる波長のレーザーを、ゲート絶縁膜43に照射する(レーザー照射工程)。具体的には、80MHz、355nmのYAGレーザー3倍波を照射する。それにより、ATO膜からなるゲート絶縁膜43の高容量化すなわち高誘電率化がなされる。
次に、図5(b)に示されるように、ゲート電極44を島状に成膜・加工し、例えばnチャネルのトランジスタを作製するのであれば、このゲート電極44をマスクにしてPH3をドーピングして、300〜500℃で熱アニールする。これにより、ソースおよびドレイン電極が形成され、本実施形態のTFT素子101が完成する。また、上記熱アニールを、ゲート絶縁膜43の透過率が10〜80%になる波長のレーザーを照射する工程と同一工程で実施してもよい。
その後、必要に応じて、層間絶縁膜を作製し、トランジスタの各電極上にコンタクトホールを開口し電極を作製すれば、各トランジスタへの配線を作製することができる。
このように、本実施形態の製造方法によっても、トランジスタ素子のゲート絶縁膜として用いられ、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜43に対して、上記第1実施形態と同様に、当該絶縁膜43の透過率が10〜80%になる波長を持つレーザーを照射することにより、当該絶縁膜43の容量を大きくし誘電率を高めることができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、上記第1実施形態で説明した絶縁膜の容量増加方法を、2重絶縁膜を持った無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)に応用するものである。
本発明の第3実施形態は、上記第1実施形態で説明した絶縁膜の容量増加方法を、2重絶縁膜を持った無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)に応用するものである。
無機EL素子の変調電圧Vmでの発光輝度LVmは、次の数式2にて示される。
(数式2)
LVm=α×f×C×Vm×Vc×η
ここで、α:定数
f:駆動周波数
C:単位面積あたりの絶縁膜のトータル容量
Vm:変調電圧
Vc:クランプ電圧
η:発光効率(通常Vmの関数となる)
で表せる。なお、上記数式2中の容量Cは、2重絶縁膜つまり2個の絶縁膜の合成容量である。
(数式2)
LVm=α×f×C×Vm×Vc×η
ここで、α:定数
f:駆動周波数
C:単位面積あたりの絶縁膜のトータル容量
Vm:変調電圧
Vc:クランプ電圧
η:発光効率(通常Vmの関数となる)
で表せる。なお、上記数式2中の容量Cは、2重絶縁膜つまり2個の絶縁膜の合成容量である。
この式から、無機EL素子における絶縁膜の容量Cを大きくすれば、上記発光輝度LVmを高くできることがわかる。そこで、上記第1実施形態と同様のATO膜をEL素子の絶縁膜に用い、当該ATO膜とEL素子の発光層とを成膜した後に、当該ATO膜に対して、当該ATO膜の透過率が10〜80%になる波長を持つレーザーを照射すれば、当該ATO膜の高容量化すなわち高誘電率化が図れる。
この無機EL素子の製造プロセスについて具体的に説明する。図6は、本実施形態に係る無機EL素子102の製造方法を工程順に示す図であり、各工程におけるワークの断面を示している。
まず、ガラス基板51の上に、ITOなどよりなる第1電極52を島状に加工して形成する。その後、本実施形態の絶縁膜である第1絶縁膜53として、ともに1層当たりの厚さが5nmであるAl2O3層、TiO2層をそれぞれ5〜30層積層したATO膜を、上記同様のALD法により形成する(第1の絶縁膜の成膜工程)。この場合も、ATO膜の最初と最後の層は、Al2O3層とTiO2層のいずれであってもよい。
次に、たとえば、アンバー色の発光色を得たければ発光層54としてZnS:Mn膜を300nm成膜し、青色の発光色を得たければ発光層54としてSrS:Cu膜を1000nm成膜する。その後、本実施形態の絶縁膜である第2絶縁膜55を、上記第1絶縁膜53と同様の条件で成膜する(第2の絶縁膜の成膜工程)。ここまでの工程を経て得られたワークの断面が図6(a)に示される。
そして、この状態で、上記第1実施形態と同様に、これら両絶縁膜53および55の透過率が10〜80%の波長のレーザーを、当該両絶縁膜53、55に照射する。具体的には、80MHz、355nmのYAGレーザー3倍波を照射する(レーザー照射工程)。それにより、ATO膜からなる第1絶縁膜53および第2絶縁膜55の高容量化が同時になされる。
次に、図6(b)に示されるように、第2電極56を成膜すれば、本実施形態の無機EL素子102が完成する。ここでは、第2絶縁膜55を成膜した後にレーザーを照射したが、第2電極56が、たとえばITOなどの当該レーザーを透過するような材質と膜厚であれば、第2電極56を形成した後にレーザーを照射してもよい。
このように、本実施形態の製造方法によっても、無機EL素子の絶縁膜として用いられ、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜53、55に対して、上記第1実施形態と同様に、当該絶縁膜53、55の透過率が10〜80%になる波長のレーザーを照射することにより、当該絶縁膜53、55の容量を大きくし誘電率を高めることができる。
(他の実施形態)
なお、絶縁膜としては、基板上に形成されるものであって異なる金属酸化膜を複数積層させてなるものであればよく、上記した薄膜容量素子、トランジスタ素子、無機EL素子の各絶縁膜に限定されるものではない。
なお、絶縁膜としては、基板上に形成されるものであって異なる金属酸化膜を複数積層させてなるものであればよく、上記した薄膜容量素子、トランジスタ素子、無機EL素子の各絶縁膜に限定されるものではない。
11…基板、13…絶縁膜、43…ゲート絶縁膜、53…第1絶縁膜、
55…第2絶縁膜、41…基板としてのガラス基板、52…基板としてのガラス基板。
55…第2絶縁膜、41…基板としてのガラス基板、52…基板としてのガラス基板。
Claims (8)
- 基板(11、41、51)上に、異なる金属酸化膜を複数積層させてなる絶縁膜(13、43、53、55)を形成し、この絶縁膜に対して、当該絶縁膜の透過率が10〜80%になる波長のレーザーを照射することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
- 前記絶縁膜(13、43、53、55)における容量をC、電荷量をQ、印加電圧をVとしたときの関係Q=CVが、QがVに対して非線形で増加する関係となるように、前記レーザーの照射を行うことを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
- 前記絶縁膜(13、43、53、55)は少なくとも酸化チタン膜を含むものであることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁膜の製造方法。
- 前記絶縁膜(13、43、53、55)は、酸化アルミニウム膜と酸化チタン膜とが積層された積層膜として構成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の絶縁膜の製造方法。
- 前記レーザーの発振周波数は10kHz以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の絶縁膜の製造方法。
- 前記絶縁膜は薄膜容量素子の絶縁膜(13)として用いられるものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の絶縁膜の製造方法。
- 前記絶縁膜はトランジスタ素子のゲート絶縁膜(43)として用いられるものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の絶縁膜の製造方法。
- 前記絶縁膜は無機エレクトロルミネッセンス素子の絶縁膜(53、55)として用いられるものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の絶縁膜の製造方法。
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