JP2008232411A - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オリフィス通路の短絡を制御して衝撃的荷重の入力時等における受圧室内の気泡の発生に起因すると考えられる異音等の発生を効果的に防止することが出来ると共に、量産化に際して製造も容易に行うことが出来る、改良された構造の流体封入式防振装置を提供することを、目的とする。
【解決手段】延出ゴム壁38が括れ部33の内周側から軸方向に延び出して第二の取付部材14の嵌着筒部26内で軸方向に突出せしめられていると共に、かかる延出ゴム壁38(42)によってオリフィス通路74を受圧室68に短絡させる短絡孔72が覆蓋されており、更に、かかる延出ゴム壁38(42)の受圧室68側への弾性変形によって、短絡孔72の連通が許容される一方、延出ゴム壁38(42)のオリフィス通路74側への弾性変形が阻止されるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、例えば、自動車用のエンジンマウント等として好適に採用され得る流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振装置の一種として、防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と、防振連結される他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を、本体ゴム弾性体で連結すると共に、その内部に非圧縮性流体を封入した流体封入式防振装置が知られている。より具体的には、かかる流体封入式防振装置として、筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に第一の取付部材を離隔配置して、これら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、第二の取付部材の他方の開口部を可撓性膜で覆蓋する一方、本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間に仕切部材を配設して、かかる仕切部材を第二の取付部材で支持せしめることにより、仕切部材を挟んだ一方の側に本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室を形成する一方、仕切部材を挟んだ他方の側に可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室を形成して、これら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた構造のものが、知られている。
このような流体封入式防振装置においては、封入した非圧縮性流体の共振作用等の流動作用を利用した防振効果を得ることが出来るのであり、本体ゴム弾性体の防振作用だけでは得られない程の低動ばね効果や高減衰効果をチューニング周波数域で容易に得ることが出来る。それ故、例えば、特定の周波数域で高度な防振性能が要求される自動車用のエンジンマウント等として採用されている。
ところで、上述の如き流体封入式防振装置においては、衝撃的な大荷重振動が入力された際に、比較的大きな振動伝達が発生したり、衝撃的な異音が発生する場合がある。具体的には、例えば、上述の如き構造の流体封入式防振装置を自動車用エンジンマウントに適用した場合に、エンジンクランキング時や段差乗り越え時、急加速時等において、そのような振動や異音の発生が確認されている。
このような振動や異音の発生原因は、未だ十分に解明されていないが、衝撃的な振動の入力時において、オリフィス通路を通じて受圧室と平衡室の間で生ぜしめられる流体流動が追従しきれず、受圧室内で局所的に著しく大きな負圧が生ぜしめられることに起因すると考えられる。即ち、このような負圧が生ぜしめられると、封入流体から気体が分離されて、キャビテーションと解せられる気泡が形成される。そして、かかる気泡は、発生から成長に至る過程を経て崩壊し、爆発的な微小噴流を形成する。これが水撃圧となって第一の取付部材や第二の取付部材に伝播し、自動車のボデー等の防振連結される部材に伝達されることによって、前述の如き問題となる振動や異音が生ぜしめられるものと考えられる。
そこで、本出願人は、先に、特許文献1において、オリフィス通路を受圧室に短絡させる短絡流路と、かかる短絡流路の連通状態と遮断状態とを切り換える弁体を備えた流体封入式防振装置を提案した。かかる流体封入式防振装置においては、受圧室内での過大な負圧の発生に際して、受圧室内の負圧に起因して弁体に及ぼされる吸引力を利用することで弁体を変形せしめて、かかる弁体を短絡流路の開口部から離隔せしめることにより、短絡流路を連通状態とし、短絡流路を通じて平衡室側から受圧室側に封入流体を流入させることによって、受圧室内の負圧を速やかに解消して過大な負圧の発生を防止するようになっている。
しかしながら、本発明者が更なる検討と実験を行ったところ、特許文献1に記載の流体封入式防振装置においても、未だ改良の余地が残されていることが明らかとなった。即ち、特許文献1で開示した弁体では、その具体的な構造に関して、主に量産化等の実用性の点から未だ改良の余地があったのである。
すなわち、特許文献1で開示したオリフィス通路の短絡流路を開閉制御する弁体は、それを本体ゴム弾性体とは別体のゴム弾性体で独立形成することも考えられるが、部品点数の増加や製造工程数の増加などが問題となり、量産化に際しての実用性に乏しい。そこで、本出願人は、かかる弁体を本体ゴム弾性体と一体形成することを考え、その一つの態様を、先の特許文献1に開示した。具体的には、円筒形状とされた第二の取付部材において、軸方向上方に向かって開口して該第二の取付部材の内周面に沿って延びる周溝を備えたオリフィス部材を嵌め込んで組み付けると共に、第二の取付部材の内周面から径方向内方に向かって突出する舌片状の弁体を、本体ゴム弾性体と一体形成し、この弁体をオリフィス部材の軸方向上面に重ね合わせて、そこに開口する周溝を覆蓋せしめた構造である。
ところが、このように第二の取付部材の内周面から径方向内方に突出する弁体では、本体ゴム弾性体と一体形成するに際して、筒形状とされた第二の取付部材から成形型を軸方向に引き抜く際に弁体成形部分がオーバーハングとなってしまい、金型構造が複雑化して成形が難しいという問題があった。また、オリフィス部材の周溝の開口部に対して弁体を弾性的に押し付けて組み付ける場合には、オリフィス部材を第二の取付部材に対して軸方向に嵌め入れる位置によって、弁体のオリフィス部材に対する押し付け力が異なってしまうことから、安定した弁体の押し付け力を設定することも難しいという問題もあったのである。
特開2003−148548号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、オリフィス通路の短絡を制御して衝撃的荷重の入力時等における受圧室内の気泡の発生に起因すると考えられる異音等の発生を効果的に防止することが出来ると共に、量産化に際して製造も容易に行うことが出来る、改良された構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明は、第一の取付部材が筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置されて第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、第二の取付部材の他方の開口部が可撓性膜で覆蓋されている一方、本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間に仕切部材が配設されて、仕切部材が第二の取付部材で支持されることにより、仕切部材を挟んだ一方の側に本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室が形成されている一方、仕切部材を挟んだ他方の側に可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室が形成されており、これら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されていると共に、受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置において、第二の取付部材の軸方向中間部分には全周に亘って径方向内方に向かって突出する括れ部が形成されていると共に、括れ部を挟んだ軸方向一方の側には本体ゴム弾性体が固着された固着筒部が形成されており、括れ部を挟んだ第二の取付部材の軸方向他方の側には固着筒部よりも小径とされて仕切部材が嵌着固定された嵌着筒部が形成されていると共に、オリフィス通路が仕切部材の外周部分を周方向に延びて形成されて、オリフィス通路を受圧室に短絡させる短絡孔がオリフィス通路の内周側壁部に形成されており、更に、括れ部の内周側から軸方向に延び出して第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられて短絡孔を覆蓋する延出ゴム壁が形成されていると共に、延出ゴム壁の受圧室側への弾性変形による短絡孔の連通は許容するが、延出ゴム壁のオリフィス通路側への弾性変形は阻止して短絡孔を遮断状態に維持する弾性変形規制手段を設けたことを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、オリフィス通路を受圧室に短絡させる短絡孔が延出ゴム壁によって覆蓋されていると共に、かかる延出ゴム壁の受圧室側への弾性変形によって、短絡孔の連通が許容されることから、受圧室内で過大な負圧が発生した際に、受圧室内の負圧に起因して延出ゴム壁に及ぼされる吸引力を利用して、延出ゴム壁を受圧室側に弾性変形せしめることにより、延出ゴム壁を短絡孔の開口から離隔せしめて、短絡孔を連通状態にすることが可能となる。これにより、受圧室と平衡室の間での流体流動量が増加して、受圧室内の負圧を速やかに解消することが可能となる。その結果、受圧室内の負圧に起因するキャビテーションによる異音や振動の発生を効果的に低減乃至は回避することが可能となる。
そこにおいて、本発明では、延出ゴム壁が括れ部の内周側から軸方向に延び出して第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられていることから、延出ゴム壁を本体ゴム弾性体と一体的に成形した場合であっても、その型開工程において、成形型を第二の取付部材の軸方向(開口方向)に引き抜いて成形品を脱型することが可能となる。これにより、量産化に際して、製造も容易に行うことが可能となる。
また、本発明では、延出ゴム壁のオリフィス通路側への弾性変形が阻止されるようになっていることから、振動入力時に受圧室内に生ぜしめられる正圧が延出ゴム壁に及ぼされても、延出ゴム壁のオリフィス通路側への弾性変形に伴う短絡孔の連通が阻止される。それ故、受圧室の正圧が短絡孔を通じて逃げてしまうことが無く、受圧室の圧力変動に基づいてオリフィス通路を流動せしめられる流体流動量も十分に確保されることとなり、オリフィス通路による目的とする防振効果が発揮され得る。また、延出ゴム壁がオリフィス通路内に入り込んでしまうことに起因する問題、例えば延出ゴム壁が短絡孔の周縁部分に引っ掛かって作動しなくなる不具合や、延出ゴム壁が短絡孔からオリフィス通路内に入り込んでオリフィス通路を狭窄してしまう不具合などの問題も防止される。
さらに、本発明では、本体ゴム弾性体が括れ部よりも軸方向一方の側に位置せしめられていると共に、延出ゴム壁が括れ部の内周側から軸方向に延び出して嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられていることから、延出ゴム壁が本体ゴム弾性体に対して一体形成されている場合に、支持荷重や振動荷重の入力に起因して本体ゴム弾性体に生ぜしめられる応力が延出ゴム壁に伝達されて、延出ゴム壁が弾性変形してしまうことを有利に回避することが可能となる。
すなわち、延出ゴム壁が本体ゴム弾性体に対して一体形成されている場合、本体ゴム弾性体に支持荷重や振動荷重が入力されると、本体ゴム弾性体に応力(弾性変形)が生ぜしめられて、かかる応力(弾性変形)が延出ゴム壁に伝達されることにより、延出ゴム壁が弾性変形せしめられてしまうが、延出ゴム壁が括れ部の内周側から軸方向に延び出して嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられていることから、延出ゴム壁における括れ部の内周側に位置する部分に対して、括れ部の内周面による変形拘束力が効果的に及ぼされることとなる。これにより、延出ゴム壁における括れ部の内周側に位置する部分の変形、延いては、かかる部分を通じての応力伝達を抑えることが可能となる。その結果、支持荷重や振動荷重の入力に起因して本体ゴム弾性体に発生する応力が、延出ゴム壁において第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられている部分(短絡孔を覆蓋する部分)に伝達されることによって、かかる延出ゴム壁において第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられている部分(短絡孔を覆蓋する部分)が弾性変形してしまうことを効果的に抑えることが可能となるのである。
要するに、延出ゴム壁において第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられている部分(短絡孔を覆蓋する部分)は、その基端部以外が自由表面とされて弾性変形が許容されることにより、受圧室の圧力作用で弾性変形して短絡孔を連通/遮断制御する弾性弁体として機能するようになっている。一方、本体ゴム弾性体は振動入力によって弾性変形せしめられることにより、振動絶縁や振動減衰による防振効果を発揮するようになっている。ここにおいて、本体ゴム弾性体と延出ゴム壁において第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられている部分(短絡孔を覆蓋する部分)の間に括れ部を設けて、括れ部の内周面に被着された本体ゴム弾性体と延出ゴム壁において第二の取付部材の嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられている部分(短絡孔を覆蓋する部分)の接続ゴム部分を、その肉厚寸法を小さくすると共に直接に第二の取付筒部材で変形拘束せしめるようにしたのである。それ故、この括れ部の存在により、本体ゴム弾性体の設計自由度を制限することなく、外部入力振動による直接の弾性変形が防止されて受圧室の圧力作用で弾性変形せしめられる弁体としての延出ゴム壁を構成せしめ得たのである。
加えて、本発明では、支持荷重や振動荷重が入力された際に本体ゴム弾性体に生ぜしめられる応力の伝達方向と略同じ方向となる第二の取付部材の軸方向に延出ゴム壁が延び出していることから、本体ゴム弾性体に生ぜしめられた応力が延出ゴム壁に伝達されて、延出ゴム壁が弾性変形してしまうことを一層有利に回避することが可能となる。
すなわち、一般的に、弾性体(特に、本発明に係る延出ゴム壁のように突出状態で延び出している弾性体)は、曲げ方向(剪断方向)の応力に対しては変形し易いが、圧縮/引張方向の応力に対しては変形し難い。ここにおいて、上述の如く、延出ゴム壁が応力の伝達方向と略同じ軸方向に延び出していることから、延出ゴム壁の圧縮/引張方向と応力の伝達方向が略同じになる。それ故、たとえ本体ゴム弾性体に生ぜしめられた応力が延出ゴム壁に伝達された場合でも、延出ゴム壁が弾性変形してしまうことを一層有利に抑えることが可能となる。
また、本発明では、第二の取付部材の軸方向に突出している延出ゴム壁が短絡孔を覆蓋する構成において、延出ゴム壁は、短絡孔を内周側から覆蓋するようにして、短絡孔の開口部分に対して所定の予圧縮状態で弾性的に押し付けられていることが望ましい。これにより、延出ゴム壁が、受圧室の負圧が小さい場合にまで弾性変形して短絡孔が不必要に連通されることによる不具合を回避できる。
要するに、受圧室における多少の負圧は、例えばオリフィス通路による防振効果を有効に得る上で有効なものであるから、キャビテーションが発生する程に大きくなった場合にだけ、延出ゴム壁が、その予圧縮状態の弾性押し付け力に抗して、受圧室の負圧で内周側(オリフィス通路に設けられた短絡孔への重ね合わせ面から離隔する方向)に引っ張られるように変形して短絡孔がはじめて開口するようになっているのが、より望ましいのである。
また、この延出ゴム壁からなる弁体において、弁体を開方向に弾性変形させる受圧室の負圧は、延出ゴム壁に対して、それを曲げ変形(剪断変形)させる方向に作用することとなる。それ故、前述の如く、延出ゴム壁は、本体ゴム弾性体からの伝達応力に対しては、その作用方向が突出方向(圧縮/引張方向)となって大きな変形剛性を発揮し得るが、一方、受圧室の負圧に対しては、比較的に柔らかい変形弾性を有することとなる。従って、本体ゴム弾性体からの伝達応力による悪影響を回避しつつ、受圧室の負圧に対しては高い精度で反応して連通孔を連通/遮断制御する弁体が実現され得ることとなるのである。
更にまた、本発明では、本体ゴム弾性体が固着された固着筒部が嵌着筒部よりも大径とされていることから、本体ゴム弾性体のゴムボリュームを有利に確保することが可能となり、その結果、本体ゴム弾性体の耐荷重性能を向上させることが可能となる。
なお、本発明における弾性変形規制手段は、例えば、仕切部材に対して一体形成されたオリフィス通路の内周側壁部等によって有利に構成される。
また、本発明における短絡孔は、オリフィス通路の通路方向の一部に形成されていても良いし、オリフィス通路の通路方向の全長に亘って形成されていても良い。
さらに、本発明における短絡孔は、オリフィス通路の通路方向に離隔して複数形成されていても良い。そこにおいて、短絡孔がオリフィス通路の通路方向に離隔して複数形成されている場合には、延出ゴム壁はこれらの短絡孔を覆い得るものであれば良く、必ずしも各短絡孔に対応した位置に分断されている必要はない。
更にまた、本発明における短絡孔の形成位置は、特に限定されるものではないが、キャビテーションによる気泡の発生し易い、オリフィス通路の受圧室側の開口部付近や、平衡室に圧力を逃がすことが効率的に行われ得るように、オリフィス通路の平衡室側の開口部付近であることが望ましい。なお、短絡孔をオリフィス通路の通路方向の全長に亘って形成することも、勿論可能であり、この場合には、短絡孔を通じた流体の流動量を有利に確保することが可能となる。
また、本発明においては、仕切部材と嵌着筒部の嵌着面間に介在せしめられるシールゴム層が嵌着筒部の内周面に被着されていると共に、シールゴム層が本体ゴム弾性体および延出ゴム壁と一体形成されていることが望ましい。これにより、本体ゴム弾性体や延出ゴム壁の成形に際して、シールゴム層も成形することが可能となる。
さらに、本発明においては、括れ部が第二の取付部材における径方向の内方から外方へと行くに従って次第に拡幅する拡開断面形状でもって全周に亘って延びるように形成されていることが望ましい。これにより、延出ゴム壁において括れ部の内周側に位置する部分の厚さ寸法が軸方向中間部分で最小になると共に、かかる最小の厚さ寸法を有する部分の軸方向長さを括れ部の軸方向長さよりも十分に短くすることが可能となる。その結果、ゴム材料の成形型内への充填を有利に実現することが可能となり、延出ゴム壁において括れ部よりも軸方向他方の側に位置する部分の成形を有利に行うことが可能となる。
更にまた、本発明においては、延出ゴム壁がオリフィス通路の周方向全長に亘って形成されていることが望ましい。これにより、短絡孔を延出ゴム壁で覆蓋することが有利に実現され得ることとなる。
また、本発明においては、仕切部材を第二の取付部材に対して周方向で位置決めする位置決め手段が設けられていることが望ましい。これにより、短絡孔を延出ゴム壁で覆蓋することが一層有利に実現され得ることとなる。
そこにおいて、本発明では、このような位置決め手段として、仕切部材に形成されたオリフィス通路の壁部における受圧室側の端部と平衡室側の端部との間に形成された嵌込空所に対して、延出ゴム壁に一体形成された位置決め突起を嵌め込む構成が好適に採用される。これにより、仕切部材を第二の取付部材に対して周方向で位置決めすることが有利に実現され得ることとなる。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1及び図2には、本発明の一実施形態の流体封入式防振装置としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14を本体ゴム弾性体16で連結した構造とされており、第一の取付金具12が図示しないパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない車両ボデー側に取り付けられることによって、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、車両への装着状態下で略鉛直方向とされて主たる振動の入力方向となる図1中の上下方向をいうものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、略円柱形状とされており、軸方向上端部には、径方向外方に広がるフランジ部18が一体形成されている。また、第一の取付金具12の中心軸上には、上方に開口するボルト穴20が形成されている。そして、このボルト穴20に図示しない固定ボルトが螺着されることによって、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具14は、全体として薄肉大径の円筒形状を呈しており、軸方向中間部分に形成されている括れ部22を挟んだ軸方向両側において、略一定の内外径寸法でストレートに延びるストレート筒部24,26がそれぞれ形成された構造とされている。そして、第二の取付金具14が、図示しない筒状のブラケット部材に圧入されて、かかるブラケット部材が車両ボデー(図示せず)に固定されることにより、第二の取付金具14が車両ボデーに固定されるようになっている。
第二の取付金具14の軸方向中間部分に形成された括れ部22は、全周に亘って径方向内方に向かって突出するように、換言すれば、第二の取付金具14の外周面に開口する凹溝の如き断面形状でもって全周に亘って延びるように形成されており、特に本実施形態では、略一定の断面形状で全周に亘って延びるように形成されている。
そこにおいて、本実施形態の括れ部22は、径方向内方から外方に行くに従って次第に拡幅する拡開断面形状でもって全周に亘って延びるように形成されており、特に本実施形態では、「く」の字断面形状でもって全周に亘って延びるように形成されている。
換言すれば、本実施形態の括れ部22は、軸方向上方に行くに従って次第に拡径する上側テーパ筒状部28の軸方向下端(小径端)に対して、軸方向下方に行くに従って次第に拡径する下側テーパ筒状部30の軸方向上端(小径端)が接続された構造とされており、特に本実施形態では、上側テーパ筒状部28のテーパ角度よりも下側テーパ筒状部30のテーパ角度のほうが大きくされていると共に、上側テーパ筒状部28の大径端よりも下側テーパ筒状部30の大径端のほうが径方向外方に位置せしめられている。
すなわち、本実施形態では、括れ部22において内径寸法が最小となる部分が、上側テーパ筒状部28の小径端と下側テーパ筒状部30の小径端の接続部分とされており、その結果、括れ部22において内径寸法が最小となる部分の軸方向長さが、括れ部22の軸方向長さに比して、十分小さくされている。
また、本実施形態では、括れ部22の軸方向上端において、径方向外方に広がる円環板状部32が一体形成されており、特に本実施形態では、かかる円環板状部32の外径寸法が下側テーパ筒状部30の大径端の外径寸法よりも大きくされている。
そして、本実施形態では、円環板状部32の外周縁部に対して、略一定の内外径寸法で軸方向上方に向かってストレートに延びるストレート筒部24(以下、固着筒部としての上側ストレート筒部24と称する)が接続されている一方、下側テーパ筒状部30の大径端に対して、略一定の内外径寸法で軸方向下方に向かってストレートに延びるストレート筒部26(以下、嵌着筒部としての下側ストレート筒部26と称する)が接続されている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、上側ストレート筒部24のほうが下側ストレート筒部26よりも大径とされている。
このような構造とされた第二の取付金具14は、第一の取付金具12と略同一中心軸上で第一の取付金具12よりも軸方向下方に配置されるようになっている。そして、このように第一の取付金具12と第二の取付金具14が配置された状態で、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が配設されている。
この本体ゴム弾性体16は、全体として円錐台形状を呈しており、その大径側端面には、中央部分において、軸方向下方に向かって開口する大径の円形凹所34が形成されている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側端部に対して第一の取付金具12が埋め込まれて、本体ゴム弾性体16の小径側端面にフランジ部18が重ね合わされた状態で、第一の取付金具12が本体ゴム弾性体16の小径側端部に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端部に対して第二の取付金具14の上側ストレート筒部24が外挿されて、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面に上側ストレート筒部24の内周面が加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の大径側端面に円環板状部32の上面が加硫接着されている。即ち、本実施形態では、図3及び図4に示されているように、本体ゴム弾性体16が第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品36として成形されていると共に、第二の取付金具14における上側ストレート筒部24側の開口(軸方向上側の開口)が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されているのである。
また、本体ゴム弾性体16には、延出ゴム壁38が、軸方向下方に向かって延び出すようにして一体形成されている。そこにおいて、本実施形態の延出ゴム壁38は、第二の取付金具14における括れ部22の内周側を軸方向に延びて本体ゴム弾性体16に連結されている連結部40と、かかる連結部40の下端から下側ストレート筒部26内で軸方向下方に向かって突出する縦壁部42とを備えている。
より詳細には、連結部40は、第二の取付金具14の軸方向に略一定の円形断面でストレートに延びる中心孔44を備えており、全体として厚肉の円環ブロック形状を呈している。そして、連結部40は、その軸方向上端が本体ゴム弾性体16の下端(大径側端)に一体形成されていると共に、その外周面が括れ部22の内周面に加硫接着されている。即ち、連結部40は、その外径寸法が第二の取付金具14の軸方向で変化するようになっており、特に軸方向中間部分において外径寸法が最も小さくなっている。換言すれば、連結部40は、壁厚寸法(外径寸法と内径寸法の差に相当する寸法)が第二の取付金具14の軸方向で変化するようになっており、特に軸方向中間部分において壁厚寸法が最も小さくされている。また、かかる壁厚寸法が最小とされている部分の軸方向長さが連結部40の軸方向長さよりも十分に小さくされている。なお、本実施形態では、連結部40の中心孔44の内周面と本体ゴム弾性体16の円形凹所34の内周面は滑らかに接続されている。
一方、縦壁部42は、円弧状に湾曲せしめられた湾曲板形状を呈しており、特に本実施形態では、その内周面が連結部40に形成された中心孔44の内周面に対して軸方向で滑らかに接続されるようにして、連結部40の下端開口周縁に沿って周方向に略一定の断面形状で連続して延びるように形成されている。
そこにおいて、本実施形態の縦壁部42は、高さ寸法に比して、厚さ寸法が十分に小さくされており、それによって、厚さ方向に湾曲するような弾性変形が許容されている。また、本実施形態の縦壁部42は、その厚さ寸法が基端側から突出端へ行くに従って次第に小さくされるようになっている。これにより、突出端側を薄肉として弾性変形を許容しつつ、基端側を厚肉として耐久性を向上させることが可能となる。
更にまた、本実施形態では、縦壁部42の周方向一端において、径方向外方に向かって延び出す位置決め突起としての外方突部46が一体形成されており、かかる外方突部46の径方向外方端が、下側ストレート筒部26の内周面の略全面に亘って被着されていると共に、その上端が連結部40の外周縁部に一体形成された、薄肉のシールゴム層48に接続されている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、本体ゴム弾性体16と延出ゴム壁38とシールゴム層48は一体形成されている。
このような構造とされた第二の取付金具14の下側ストレート筒部26側の開口部には、可撓性膜としてのダイヤフラム50が組み付けられている。このダイヤフラム50は、十分な弛みをもたせて変形容易とした略ドーム形状の薄肉ゴム膜であって、その外周縁部には、円筒形状乃至はリング形状を呈する固定金具52が加硫接着されている。即ち、本実施形態では、ダイヤフラム50は、固定金具52を備えた一体加硫成形品として形成されているのである。
そして、このようなダイヤフラム50は、その外周縁部に固着された固定金具52が第二の取付金具14に内挿された状態で、下側ストレート筒部26が八方絞り等によって縮径加工されて、固定金具52が下側ストレート筒部26に嵌着固定されることにより、第二の取付金具14の下側ストレート筒部26側の開口を覆うように配設される。
これにより、第二の取付金具14は、上側ストレート筒部24側の開口が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されていると共に、下側ストレート筒部26側の開口がダイヤフラム50で流体密に閉塞されており、その結果、第二の取付金具14の内周側には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム50の対向面間において、非圧縮性流体が封入される流体封入領域54が形成されている。
なお、流体封入領域54への非圧縮性流体の封入は、例えば、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対するダイヤフラム50の組付作業を、非圧縮性流体中で行うこと等によって有利に為され得る。また、封入される非圧縮性流体としては、後述するオリフィス通路74を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体が好適に採用される。
また、流体封入領域54には、仕切部材56が配設されている。この仕切部材56は、アルミニウム合金等の金属材によって形成されており、図5及び図6に単品図が示されているように、全体として円板形状を呈している。
そこにおいて、本実施形態の仕切部材56には、その外周縁部に切欠58が形成されていると共に、かかる切欠58の形成部位を除いた位置において厚さ方向一方の側に突出する突出壁部60と厚さ方向他方の側に突出する突出壁部61が一体形成されている。かかる突出壁部60,61は、それぞれ、仕切部材56の外周縁に沿って略一定の断面形状で延びるように形成された湾曲板形状を呈しており、特に本実施形態では、その周方向一端が切欠58の周方向他端と同じ周方向位置に位置せしめられている一方、その周方向他端が切欠58の周方向一端よりも周方向一方の側に位置せしめられている。
また、本実施形態の仕切部材56には、その径方向中間部分において、厚さ方向一方の側(上方)に向かって突出するストッパ突部62が一体形成されている。このストッパ突部62は、突出壁部60との径方向での離隔距離が略一定となるようにして、周方向に略一定の断面形状で連続して延びる平面湾曲形状を呈しており、特に本実施形態では、その周方向一端が突出壁部60の周方向一端よりも周方向一方の側に位置せしめられていると共に、その周方向他端が突出壁部60の周方向他端よりも周方向一方の側に位置せしめられている。そこにおいて、本実施形態のストッパ突部62の高さ寸法は、突出壁部60における厚さ方向一方の側への突出高さよりも十分に小さくされている。また、本実施形態では、ストッパ突部62の周方向一端側は、切欠58の内周側の縁に沿って延びている。
更にまた、本実施形態のストッパ突部62の周方向一端には、径方向外方に向かって延び出す径方向延出部64が一体形成されている。そこにおいて、本実施形態の径方向延出部64は、突出壁部60の周方向一端と他端の間に形成された隙間に向かって略一定の断面形状でストレートに延び出すように形成されており、特に本実施形態では、かかる径方向延出部64は、切欠58における周方向他方の側の縁に沿って延びるように形成されている。これにより、本実施形態では、径方向延出部64と突出壁部60の周方向他端との間に嵌込空所としての空隙66が形成されているのである。
このような構造とされた仕切部材56は、ダイヤフラム50と軸方向で重ね合わされた状態で、第二の取付金具14の下側ストレート筒部26に内挿されて、下側ストレート筒部26に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、ダイヤフラム50の外周縁部に固着された固定金具52と共に、下側ストレート筒部26に嵌着固定されて、下側ストレート筒部26に支持されるようになっている。
そこにおいて、本実施形態では、仕切部材56における突出壁部60の周方向他端と径方向延出部64の間に形成された空隙66に対して、延出ゴム壁38に設けられた外方突部46が嵌め入れられて、延出ゴム壁38の外方突部46と仕切部材56の径方向延出部64が周方向他方の側で係合せしめられると共に、延出ゴム壁38の外方突部46と仕切部材56の突出壁部60の周方向他端が周方向一方の側で係合せしめられることにより、仕切部材56が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対して周方向で位置決めされた状態で、下側ストレート筒部26に対して八方絞り等の縮径加工が施されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、仕切部材56における突出壁部60の周方向他端と径方向延出部64の間に形成された空隙66に対して、延出ゴム壁38に設けられた外方突部46が嵌め入れられることにより、位置決め手段が構成されている。
なお、本実施形態では、上述の如く、仕切部材56が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対して周方向で位置決めされた状態で、縦壁部42の周方向他端とストッパ突部62の周方向他端が、同じ周方向位置に位置せしめられている。
また、上述の如く、仕切部材56とダイヤフラム50の外周縁部に固着された固定金具52が第二の取付金具14の下側ストレート筒部26に嵌着固定された状態で、第二の取付金具14と仕切部材56及び固定金具52の嵌着面間には、シールゴム層48が介在せしめられており、それによって、固定金具52と仕切部材56が第二の取付金具14に対して何れも流体密に組み付けられている。
そして、上述の如く、第二の取付金具14に組み付けられて、第二の取付金具14によって支持された仕切部材56は、流体封入領域54内で軸直角方向に広がるように配設されており、それによって、流体封入領域54が仕切部材56によって流体密に二分されている。その結果、仕切部材56を挟んだ一方の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室68が形成されている一方、仕切部材56を挟んだ他方の側には、壁部の一部がダイヤフラム50で構成されて、容積変化が許容される平衡室70が形成されている。
また、上述の如く、仕切部材56が下側ストレート筒部26に嵌着固定された状態で、仕切部材56の突出壁部60の上端面は、延出ゴム壁38の連結部40の下端面に当接せしめられている一方、仕切部材56のストッパ突部62の上端面は、延出ゴム壁38の連結部40の下端面との間に隙間72が形成されるように位置せしめられている。
さらに、上述の如く、仕切部材56が下側ストレート筒部26に嵌着固定された状態で、縦壁部42の突出端面と仕切部材56の厚さ方向一方の面(上面)との間には、僅かな隙間が形成されており、それによって、縦壁部42の径方向内方への弾性変形、即ち、縦壁部42の受圧室68側への弾性変形や、受圧室68側に弾性変形せしめられた縦壁部42の元の状態に戻るための弾性変形が許容されている。
更にまた、上述の如く、仕切部材56が下側ストレート筒部26に嵌着固定された状態で、縦壁部42の外周面がストッパ突部62の内周面に当接せしめられている。これにより、縦壁部42がストッパ突部62よりも径方向外方に弾性変形することが阻止されるようになっていると共に、隙間72が縦壁部42によって受圧室68側から覆い隠されるようになっている。そこにおいて、本実施形態では、縦壁部42が径方向外方に弾性変形しようとする力が、ストッパ突部62に対して、常に及ぼされるようになっており、それによって、縦壁部42がストッパ突部62に対して圧接せしめられているのである。その結果、本実施形態では、通常の振動入力時に、縦壁部42の外周面とストッパ突部62の内周面との間に隙間が形成されてしまうことを有利に回避することが可能となる。なお、上述の説明から明らかなように、本実施形態では、ストッパ突部62によって弾性変形規制手段が構成されている。
また、上述の如く、仕切部材56が下側ストレート筒部26に嵌着固定されることにより、ストッパ突部62の外周面と突出壁部60の内周面に沿って、仕切部材56の外周部分を周方向に延びるオリフィス通路74が形成されるようになっている。
なお、上述の説明から明らかなように、本実施形態では、オリフィス通路74の内周側壁部を構成するストッパ突部62の周方向全長に亘って短絡孔としての隙間72が形成されていると共に、かかる隙間72がオリフィス通路74の全長に亘って形成された縦壁部42によって受圧室68側から覆蓋されているのである。
そして、上述の如く形成されたオリフィス通路74は、縦壁部42の周方向一端と他端の間に形成された開口76を通じて受圧室68に連通せしめられている一方、切欠58を通じて平衡室70に連通せしめられている。
なお、本実施形態では、オリフィス通路74を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が、エンジンシェイク振動等の低周波数域の振動に対して効果的に発揮されるように、オリフィス通路74の通路長さや通路断面積が調節されている。
このような構造とされたエンジンマウント10においては、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に、受圧室68と平衡室70の間に生ぜしめられる相対的な圧力差に基づいて、これら両室68,70の間でオリフィス通路74を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっており、この流体流動の共振作用に基づいて、有効な防振効果が発揮されるようになっている。
ところで、車両が凹凸の大きな波状路等を走行した際に、エンジンマウント10に衝撃的な大荷重振動が入力されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14が離隔方向に過大に相対変位せしめられた場合には、オリフィス通路74を通じての流体流動が追従しきれず、受圧室68に大きな負圧が生ぜしめられる。これにより、受圧室68と平衡室70の間で圧力差が生じることとなって、かかる圧力差に基づいて縦壁部42が受圧室68側へ吸引せしめられて径方向内方に倒れるように変形せしめられる。その結果、縦壁部42がストッパ突部62から離隔せしめられて、ストッパ突部62の突出端と延出ゴム壁38の連結部40の下端との間に形成された隙間72を通じての流体流動が許容され得ることとなる。
従って、上述の如きエンジンマウント10においては、受圧室68内の負圧を速やかに解消することが可能となり、受圧室68内の負圧に起因するキャビテーションによる異音や振動の発生を効果的に低減乃至は回避することが可能となる。
そこにおいて、上述の如きエンジンマウント10にあっては、本体ゴム弾性体16に一体形成された延出ゴム壁38が、括れ部22の内周側において軸方向下方に向かって延び出していると共に、その下端に設けられた縦壁部42が、第二の取付金具14の下側ストレート筒部26内で軸方向下方に向かって突出せしめられていることから、本体ゴム弾性体16と延出ゴム壁38の成形に用いられる成形型を、第二の取付金具14の軸方向に引き抜いて、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36を脱型することが、有利に実現され得ることとなる。これにより、量産化に際して、製造も容易に行うことが可能となる。
また、上述の如きエンジンマウント10においては、縦壁部42のオリフィス通路74側への弾性変形が、縦壁部42がストッパ突部62に当接することによって、阻止されるようになっていることから、振動入力時に受圧室68内に生ぜしめられる正圧が縦壁部42に及ぼされても、縦壁部42のオリフィス通路74側への弾性変形に伴う隙間72を通じての流体流動が阻止される。それ故、受圧室68の正圧が隙間72を通じて逃げてしまうことがなく、受圧室68の圧力変動に基づいてオリフィス通路74を流動せしめられる流体の流動量も十分に確保されることとなり、オリフィス通路74による目的とする防振効果が発揮され得る。また、縦壁部42がオリフィス通路74内に入り込んでしまうことに起因する問題、例えば、縦壁部42がストッパ突部62に引っ掛かって作動しなくなる不具合や、縦壁部42が隙間72からオリフィス通路74内に入り込んでオリフィス通路74を狭窄してしまう不具合等の問題も防止される。
さらに、上述の如きエンジンマウント10においては、本体ゴム弾性体16が括れ部22よりも軸方向上方に形成された上側ストレート筒部24に加硫接着されている一方、延出ゴム壁38の連結部40の下端と仕切部材56のストッパ突部62の上端との間に形成された隙間72を受圧室68側から覆蓋する縦壁部42が括れ部22よりも軸方向下方に位置せしめられていることから、延出ゴム壁38が本体ゴム弾性体16に一体形成されていても、支持荷重や振動荷重の入力に起因して本体ゴム弾性体16に生ぜしめられる応力が延出ゴム壁38の縦壁部42に伝達されて、縦壁部42が弾性変形してしまうことを有利に回避することが可能となる。
すなわち、延出ゴム壁38が本体ゴム弾性体16に対して一体形成されている場合、本体ゴム弾性体16に支持荷重や振動荷重が入力されると、本体ゴム弾性体16に応力が生ぜしめられて、かかる応力が延出ゴム壁38の縦壁部42に伝達されることにより、縦壁部42が弾性変形せしめられてしまうが、延出ゴム壁38が括れ部22の内周側から軸方向に延び出していることから、延出ゴム壁38において括れ部22の内周側に位置する連結部40に対して、括れ部22の内周面による変形拘束力が及ぼされることとなる。これにより、延出ゴム壁38において括れ部22の内周側に位置する連結部40の変形、延いては、かかる連結部40を通じての応力伝達を抑えることが可能となる。その結果、支持荷重や振動荷重の入力に起因して本体ゴム弾性体16に発生する応力が延出ゴム壁38の縦壁部42に伝達されて、縦壁部42が弾性変形してしまうことを有利に回避することが可能となるのである。
加えて、上述の如きエンジンマウント10においては、支持荷重や振動荷重が入力された際に本体ゴム弾性体16に生ぜしめられる応力の伝達方向と略同じ方向となる第二の取付金具14の軸方向に延出ゴム壁38が延び出していることから、本体ゴム弾性体16に生ぜしめられた応力が延出ゴム壁38の縦壁部42に伝達されて、縦壁部42が弾性変形してしまうことを一層有利に回避することが可能となる。
すなわち、一般的に、弾性体は、曲げ方向(剪断方向)の応力に対しては変形し易いが、圧縮/引張方向の応力に対しては変形し難くなっていることから、上述の如く、延出ゴム壁38を応力の伝達方向と略同じ方向に延び出させると、延出ゴム壁38の圧縮/引張方向と応力の伝達方向が略同じになる。その結果、本体ゴム弾性体16に生ぜしめられた応力が延出ゴム壁38の縦壁部42に伝達されて、縦壁部42が弾性変形してしまうことを一層有利に回避することが可能となる。
また、上述の如きエンジンマウント10においては、第二の取付金具14の軸方向に突出している延出ゴム壁38の縦壁部42が、仕切部材56のストッパ突起の上端と延出ゴム壁38の連結部40の下端との間に形成された隙間72を覆蓋していることから、延出ゴム壁38の縦壁部42が、本体ゴム弾性体16からの伝達応力に対しては、その作用方向が突出方向(圧縮/引張方向)となって大きな変形剛性を発揮し得るが、受圧室68内に生ぜしめられた負圧に起因する吸引力に対しては、比較的に柔らかい変形弾性を有することとなる。その結果、本体ゴム弾性体16からの伝達応力による悪影響を回避しつつ、受圧室68内に生ぜしめられる負圧に対しては高い精度で反応して、隙間72を連通/遮断制御することが可能となる。
さらに、本実施形態では、縦壁部42がストッパ突部62に対して受圧室68側から押し付けられていることから、受圧室68内に生ぜしめられた負圧が小さい場合にまで縦壁部42が弾性変形して、隙間72を通じた流体流動が不必要に生ぜしめられることによる不具合を有利に回避することが可能となる。
更にまた、上述の如きエンジンマウント10においては、本体ゴム弾性体16が加硫接着された上側ストレート筒部24が下側ストレート筒部26よりも大径とされていることから、本体ゴム弾性体16のゴムボリュームを有利に確保することが可能となり、その結果、本体ゴム弾性体16の耐荷重性能を向上させることが可能となる。
特に本実施形態では、括れ部22の軸方向上端に対して径方向外方に広がる円環板状部32が一体形成されていると共に、かかる円環板状部32の外周縁部から軸方向上方に突出するようにして上側ストレート筒部24が一体形成されていることから、本体ゴム弾性体16のゴムボリュームを一層有利に確保することが可能となり、その結果、本体ゴム弾性体16の耐荷重性能を一層向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、短絡孔としての隙間72がオリフィス通路74の通路方向の全長に亘って形成されていることから、隙間72を通じての流体流動量を大きくすることが可能となり、その結果、受圧室68内に生ぜしめられた負圧を一層速やかに解消することが可能となる。
さらに、本実施形態では、仕切部材56と下側ストレート筒部26の嵌着面間に介在せしめられるシールゴム層48が下側ストレート筒部26の内周面に被着されていると共に、シールゴム層48が本体ゴム弾性体16および延出ゴム壁38と一体形成されていることから、本体ゴム弾性体16や延出ゴム壁38の成形に際して、シールゴム層48も成形することが可能となる。
更にまた、本実施形態においては、括れ部22が第二の取付金具14における径方向の内方から外方へと行くに従って次第に拡幅する拡開断面形状でもって全周に亘って延びるように形成されていることから、延出ゴム壁38において括れ部22の内周側に位置する連結部40の厚さ寸法が軸方向中間部分で最小になると共に、かかる連結部40において最小の厚さ寸法を有する部分の軸方向長さを短くすることが可能となる。その結果、ゴム材料の成形型内への充填を有利に実現することが可能となり、延出ゴム壁38において括れ部22よりも軸方向他方の側に位置する縦壁部42の成形を有利に行うことが可能となる。
また、本実施形態においては、仕切部材56が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対して周方向で位置決めされるようになっていることから、隙間72を縦壁部42で覆蓋することが有利に実現され得ることとなる。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、括れ部22が、前記実施形態では、断面がく字状乃至はくちばし状で外周側に向かって拡開する形状とされていたが、これに限定されるものでなく、例えばく字状乃至はくちばし状の最内周部分において一定の径寸法で軸方向に延びる円筒状部を設けても良い。或いは、括れ部の軸方向両端部分に径方向に広がる段差部を形成して、かかる括れ部を、軸方向両側よりも小さな内外径寸法で軸方向にストレートに或いはテーパ状に延びる小径円筒状部によって構成することも可能である。
また、前記実施形態では、第二の取付部材が、軸方向中間部分に形成された段差部を挟んで軸方向一方の側が大径部とされている一方、軸方向他方の側が小径部とされている構造を有しており、小径部の大径部側の軸方向端部に括れ部22が形成されていたが、括れ部22の形成位置は、かかる態様に限定されるものでない。具体的には、例えば、小径部の軸方向中間部分を更に小径化すると共に、大径部の端部から離れた小径部の軸方向中間部分に括れ部を形成しても良い。
さらに、前記実施形態において、仕切部材56の突出壁部60は、必ずしも必要なものではない。更にまた、前記実施形態において、突出壁部60は、仕切部材56の上面側だけに突出していても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の一実施形態の流体封入式防振装置としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I方向の断面図。 図1におけるII−II断面図。 図1のエンジンマウントを構成する本体ゴム弾性体の一体加硫成形品の縦断面図であって、図2におけるI−I方向の断面図。 同本体ゴム弾性体の一体加硫成形品の下面図。 図1のエンジンマウントを構成する仕切部材の平面図。 図5におけるVI−VI断面図。
符号の説明
10:エンジンマウント,12:第一の取付金具,14:第二の取付金具,16:本体ゴム弾性体,22:括れ部,24:上側ストレート筒部,26:下側ストレート筒部,38:延出ゴム壁,40:連結部,42:縦壁部,48:シールゴム層,50:ダイヤフラム,56:仕切部材,62:ストッパ壁部,68:受圧室,70:平衡室,72:隙間,74:オリフィス通路

Claims (6)

  1. 第一の取付部材が筒状の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置されて該第一の取付部材と該第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該第二の取付部材の他方の開口部が可撓性膜で覆蓋されている一方、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に仕切部材が配設されて、該仕切部材が該第二の取付部材で支持されることにより、該仕切部材を挟んだ一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室が形成されている一方、該仕切部材を挟んだ他方の側に該可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室が形成されており、これら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されていると共に、該受圧室と該平衡室を相互に連通するオリフィス通路が設けられた流体封入式防振装置において、
    前記第二の取付部材の軸方向中間部分には全周に亘って径方向内方に向かって突出する括れ部が形成されていると共に、該括れ部を挟んだ軸方向一方の側には前記本体ゴム弾性体が固着された固着筒部が形成されており、該括れ部を挟んだ該第二の取付部材の軸方向他方の側には該固着筒部よりも小径とされて前記仕切部材が嵌着固定された嵌着筒部が形成されていると共に、前記オリフィス通路が該仕切部材の外周部分を周方向に延びて形成されて、該オリフィス通路を前記受圧室に短絡させる短絡孔が該オリフィス通路の内周側壁部に形成されており、更に、該括れ部の内周側から軸方向に延び出して該第二の取付部材の該嵌着筒部内で軸方向に突出せしめられて該短絡孔を覆蓋する延出ゴム壁が形成されていると共に、該延出ゴム壁の該受圧室側への弾性変形による該短絡孔の連通は許容するが、該延出ゴム壁の該オリフィス通路側への弾性変形は阻止して該短絡孔を遮断状態に維持する弾性変形規制手段を設けたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記仕切部材と前記嵌着筒部の嵌着面間に介在せしめられるシールゴム層が該嵌着筒部の内周面に被着されていると共に、該シールゴム層が前記本体ゴム弾性体および前記延出ゴム壁と一体形成されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記括れ部が前記第二の取付部材における径方向の内方から外方へと行くに従って次第に拡幅する拡開断面形状でもって全周に亘って延びるように形成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記延出ゴム壁が前記オリフィス通路の周方向全長に亘って形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記仕切部材を前記第二の取付部材に対して周方向で位置決めする位置決め手段が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記仕切部材に形成された前記オリフィス通路の壁部における前記受圧室側の端部と前記平衡室側の端部との間に形成された嵌込空所に対して、前記延出ゴム壁に一体形成された位置決め突起を嵌め込むことによって、前記位置決め手段が構成されている請求項5に記載の流体封入式防振装置。
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