JP2004251438A - 液封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダイヤフラム18の周縁部にゴム状弾性体からなる弾性壁34を設け、この弾性壁を仕切部材28の周縁部に当接させてその外周にオリフィス流路26を形成する。また、仕切部材28の周縁部に弾性壁34の内周に配されて弾性壁の半径方向内方への変形を規制する規制壁36を設ける。これにより、防振基体16の圧縮方向への大変位時には弾性壁34を変形させることなく、引張方向への大変位時に弾性壁34を半径方向外方に撓み変形させて副液室24Bの液体をオリフィス流路26にリークさせて異音の発生を防止する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車エンジン等の振動体を、その振動を車体等の支持体に伝達させないように支承するために用いられる液封入式防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5には従来の液封入式防振装置の一例が示されており、類似の構造を持つ防振装置が特開2001−50333号公報により公知となっている。
【0003】
同図に示す防振装置100は、支持体側に取り付けられる第1取付部材101と、振動体側に取り付けられる第2取付部材102とが、ゴム状弾性体からなる防振基体103を介して結合され、防振基体103に対向するダイヤフラム110を設けて第1取付部材101の内側に液室104を形成するとともに、仕切部材105を設けて該液室104を上側の主液室104Aと下側の副液室104Bとに仕切り構成してなる。
【0004】
上記仕切部材105は、リング状の補助金具106と、その中央の開口部を塞ぐゴム状弾性体からなる弾性板107とからなる。補助金具106には、その内周縁から軸方向下方に延びる縦壁部106Aが設けられ、この縦壁部106Aが弾性板107の周縁部に埋設されることで、仕切部材105の周縁部に軸方向に突出する剛性壁108が設けられている。そして、この剛性壁108をダイヤフラム110の周縁部に対し圧接することで、剛性壁108の外周には主液室104Aと副液室104Bとを連結するオリフィス流路109が形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−50333号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の構造を持つ防振装置100においては、第1取付部材101と第2取付部材102とが軸方向に大きく相対変位したときに異音が発生する場合があり、かかる異音の発生を防止することが求められている。
【0007】
本発明の目的は、液封入式防振装置において、上記のような大変位時における異音の発生を防止する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記異音の発生原因について精査していくなかで、異音は防振基体が圧縮される方向(第1取付部材と第2取付部材とが軸方向にて近づく方向)への大変位時ではなく、防振基体の引張方向(第1取付部材と第2取付部材とが軸方向にて離れる方向)への大変位時に発生することを知見した。そして、その音の性質などに鑑みて、キャビテーションが原因で異音が発生するのではないかと考えた。すなわち、防振基体の引張方向への大変位により液室内が急激に負圧になったときに、上記従来の防振装置では副液室から主液室への液体の流れはオリフィス流路を完全に通過する流れのみであるため、圧力変化を緩和しにくく、そのためキャビテーションにより気泡が発生して異音の発生につながると考えた。そして、外周にオリフィス流路を形成して内側の副液室との間を区画する壁部に、上記のような引張方向への大変位時にオリフィス流路の一部を短絡するような液の流れを生じさせる構造を設けることにより、キャビテーションを低減して異音の発生を防止できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明に係る液封入式防振装置は、筒状部を有する第1取付部材と、該筒状部の軸心上に配された第2取付部材と、これら取付部材の間に介設されて両取付部材を結合するゴム状弾性体からなる防振基体と、該防振基体に対向して配され前記第1取付部材の内側で前記防振基体との間に液室を形成するダイヤフラムと、該液室を、前記防振基体にて室壁の一部が形成された主液室と前記ダイヤフラムにて室壁の一部が形成された副液室とに仕切る仕切部材と、を備える液封入式防振装置において、前記仕切部材と前記ダイヤフラムのいずれか一方の周縁部に軸方向に突出し周方向に延びる弾性壁を設け、その外周に前記主液室と前記副液室を連結するオリフィス流路を形成するとともに、前記仕切部材と前記ダイヤフラムの他方の周縁部に前記弾性壁の半径方向内方への変形を規制する規制部を設けたものである。
【0010】
この液封入式防振装置では、防振基体の引張方向に所定以上の変位が付加されたときには、上記弾性壁が半径方向外方に撓み変形して隙間が形成され、副液室の液体がこの隙間からオリフィス流路内にリークする。すなわち、オリフィス流路における副液室側の正規の連通口だけでなく、オリフィス流路の途中の箇所からも弾性壁の撓み変形により副液室の液体がオリフィス流路に流れ込む。そのため、キャビテーションを低減して異音の発生を防止することができる。一方、防振基体の圧縮方向に所定以上の変位が付加されたときには、規制部により弾性壁の内方への変形を規制することができる。
【0011】
本発明の液封入式防振装置においては、前記規制部が、前記他方の周縁部に設けられた周方向に延びる規制壁であって、前記弾性壁よりも剛性が高く設定され、かつ、該弾性壁の内周面に当接配置されて、該弾性壁の半径方向内方への変形を規制するものであることが好ましい。
【0012】
この場合、規制壁は、弾性壁よりも半径方向、即ち防振装置の軸直角方向への撓み変形に対して高い剛性を持つものであればよく、必ずしも防振基体の大変位時において全く撓み変形しないような剛性を持つ壁である必要はない。より詳細には、規制壁は、圧縮方向の大変位時に、弾性壁の内方への撓み変形を規制し得る程度の剛性を持ち、かつ、引張方向の大変位時に、上記リークのための隙間が形成されやすいように、弾性壁と一体になって外方に撓み変形しない程度の剛性を持つことが好ましい。規制壁は、このような剛性を持つものであれば、ゴム状弾性体のみで構成することもでき、またゴム状弾性体に金属等の剛体を埋設して補強したものであってもよく、更に金属等の剛体のみで構成することもできる。
【0013】
本発明の液封入式防振装置においては、前記弾性壁が前記ダイヤフラムの周縁部に設けられ、前記規制壁が前記仕切部材の周縁部に設けられて、前記仕切部材は少なくとも前記規制壁を含むそれよりも内側の部分がゴム状弾性体のみで構成されていることが好ましい。この場合、防振基体の大変位時に、仕切部材の中央部が撓み変形することで液室内の圧力変動を軽減することができる。また、防振基体の引張方向への大変位時に、仕切部材の中央部が主液室側に撓み変形することで、これに伴って規制壁は半径方向内方に撓み変形しようとするため、半径方向外方に撓み変形する弾性壁との間で上記リークのための隙間をより大きく確保しやすい。また、防振基体の圧縮方向への大変位時には、仕切部材の中央部が副液室側に撓み変形することで、これに伴って規制壁は半径方向外方に撓み変形しようとするため、外周の弾性壁との密接度を高めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の1実施形態に係る液封入式防振装置10について図面を参照して説明する。
【0015】
この防振装置10は、自動車のエンジンを車体に対して支承するエンジンマウントであり、筒状部11を有し車体側のブラケット1に取付固定される下側の金属製第1取付部材12と、その軸心上において上方に間隔をおいて配されエンジン側のブラケット2に取付固定される上側の金属製第2取付部材14とを、ゴム状弾性体よりなる防振基体16を介して結合してなり、上下方向、即ち第1取付部材12の軸方向に振動が付加されるものである。
【0016】
防振基体16は、外形が略截頭円錐形をなし、その上部軸心上に第2取付部材14の下部が加硫成形手段により埋設されており、防振基体16の下端外周部は第1取付部材12の上部内周面に加硫成形手段により接着固定されている。
【0017】
第1取付部材12の下部側には、防振基体16と対向するようにダイヤフラム18が装着されている。ダイヤフラム18は、可撓性膜としての薄肉ゴム膜20と、その外周部に加硫接着された筒状の補助金具22とからなり、補助金具22の上端外周縁が第1取付部材12の下端12Aによりかしめ固定されている。
【0018】
第1取付部材12の内側には、ダイヤフラム18と防振基体16との間に密閉された液室24が形成されており、この液室24に液体が封入されている。液室24内には、外周にオリフィス流路26を形成する円盤状の仕切部材28が設けられており、液室24はこの仕切部材28により上下に仕切られている。すなわち、第1取付部材12の内側における防振基体16とダイヤフラム18との間には、防振基体16にて室壁の一部が形成された主液室24Aと、主液室24Aにオリフィス流路26を介して連結されるとともにダイヤフラム18にて室壁の一部が形成された副液室24Bとが、仕切部材28を介して互いに上下に隣接して設けられている。
【0019】
仕切部材28は、ゴム状弾性体からなる円盤状の弾性板部32と、その周縁部に一体に加硫接着されたリング状の補助金具30とからなり、オリフィス流路26が閉塞した状態となるような高周波数域の振動が付加されたときに、弾性板部32によって防振性能を発揮できるように構成されている。補助金具30の外周縁は、第1取付部材12の下端12Aによってダイヤフラム18の補助金具22とともにかしめ固定されており、これにより仕切部材28は液室24内に固定されている。
【0020】
ダイヤフラム18の補助金具22は、軸方向下方ほど小径化されたテーパ筒状をなしており、その内側に上記オリフィス流路26が形成されている。また、ダイヤフラム18の周縁部には、軸方向上方の主液室24A側に向かって突出して周方向に延びる弾性壁34が薄肉ゴム膜20と一体のゴム状弾性体により形成されている。そして、この弾性壁34を仕切部材28の周縁部に当接させることにより、弾性壁34の外周において補助金具22との間でオリフィス流路26が形成され、従って、オリフィス流路26は弾性壁34によって副液室24Bの外周に仕切り構成されている。弾性壁34は、オリフィス流路26内にある一定以上の負圧が生じたときに半径方向外方に撓み変形できるように、ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料のみで形成されている。
【0021】
一方、仕切部材28の周縁部には、軸方向下方の副液室24B側に突出して周方向に延びる規制壁36が弾性板部32と一体のゴム状弾性体により形成されている。この規制壁36は、弾性壁34の内側に嵌着されており、これにより弾性壁34は半径方向外方には撓み変形可能であるものの、半径方向内方には規制壁36により撓み変形が規制・阻止されている。
【0022】
詳細には、規制壁36は、弾性壁34よりも剛性が高くなるように肉厚に形成されている。また、仕切部材28の周縁部には、規制壁36の外周側に軸方向上方に落ち込んだ水平な段部38が設けられており、この段部38に対し弾性壁34の先端面を当接させることで、オリフィス流路26の内周側の壁部が規制壁36と弾性壁34とによる内外二重に形成されている。
【0023】
なお、弾性壁34の内周面には周方向に延びる凸条40が設けられ、またこれに対向する規制壁36の外周面には周方向に延びる凹溝42が設けられて、両者が嵌合するように組付けられている。これに代えて、弾性壁34に凹溝を、規制壁36に凸条を設けてもよい。
【0024】
図1及び図4(c)に示すように、仕切部材28には周上の一箇所において半径方向外方に突出してオリフィス流路26を遮断する遮断部44が設けられており、遮断部44を挟んだ周方向の両側において、オリフィス流路26を主液室24A側に連通する第1連通口46と、オリフィス流路26を副液室24B側に連通する第2連通口48とが形成されている。これにより、オリフィス流路26は周方向で略一周の長さをもって主液室24Aと副液室24Bを相互に連通する。
【0025】
第1連通口46は、補助金具30に上下に貫通する開孔を設けることで形成されており、第2連通口48は、上記規制壁36を周方向の一部で切り欠くことにより形成されている。なお、補助金具30の内周縁には、遮断部44から第1連通口46の配設位置にかけて軸方向下方に突出する補強壁部50が設けられ、これによりオリフィス流路26の内周側を補強して副液室24Bとの間の不所望な短絡を防止している。
【0026】
以上よりなる本実施形態の液封入式防振装置10では、図2に示すように、小変位時(即ち、所定振幅以下の軸方向振動が入力されたとき。例えば±0.5mm)には、主液室24Aと副液室24Bとの間でオリフィス流路26を通って液体の流動が生じ、その流動効果により振動減衰機能を発揮することができる。なお、弾性壁34の弾性率、規制壁36との嵌合度合などは、このような小変位時では弾性壁34が撓み変形しないように設定されている。
【0027】
一方、大変位時、例えば±6.0mmの軸方向振動が入力されたときには、次のようになる。まず、防振基体16の圧縮方向における大変位時(即ち、第1取付部材12と第2取付部材14とが近づく方向に所定以上の変位が付加されたとき)には、規制壁36により弾性壁34の内側への撓み変形が阻止されているので、小変位時と同様、図2に示すようにオリフィス流路26のみを通して主液室24Aから副液室24Bに液体を流すことができ、オリフィス流路26の液流動効果を発揮させることができる。なお、規制壁36は、このような大変位時においてまで、弾性壁34の内側への撓み変形を必ずしも完全に阻止するものである必要はない。オリフィス流路26はそもそも上記のような小変位時における振動減衰を対象としており、大変位時には必ずしも十分な液流動効果は得られないからである。
【0028】
そして、防振基体16の引張方向における大変位時(即ち、第1取付部材12と第2取付部材14とが離れる方向に所定以上の変位が付加されたとき)には、図3に示すように、弾性壁34は、その外周に規制壁がないので、オリフィス流路26内が負圧になることで自身の弾性により半径方向外方に撓み変形する。これにより、副液室24Bの液体が連通口48からだけでなく、矢印Xで示すように撓み変形した箇所からもリークしてオリフィス流路26に流れ込む。そのため、液室24内における圧力変化を緩和してキャビテーションを低減することができ、もって異音の発生を防止することができる。弾性壁34の撓み変形は液圧変化に伴う一時的なものであり、上記負圧が解消されれば図1に示す元の状態に戻る。
【0029】
本実施形態では、特に、仕切部材28を、周縁部のリング状の補助金具30と、その開口部を塞ぐ円盤状の弾性板部32とで構成し、規制壁36を含むそれよりも内側の部分をゴム状弾性体のみで構成したので、大変位時に、弾性板部32が撓み変形することで、液室24内の圧力変動を軽減することができるとともに、以下の作用効果が得られる。
【0030】
すなわち、防振基体16の引張方向への大変位時には、主液室24A内が負圧になることで、仕切部材28の中央部の弾性板部32が上方、即ち主液室24A側に引っ張られ、それに伴って規制壁36は、半径方向内方(図3において矢印Yで示す方向)に撓み変形しようとする。そのため、半径方向外方に撓み変形する弾性壁34との間で上記リークのための隙間をより大きく確保しやすくなる。また、防振基体16の圧縮方向への大変位時には、主液室24A内が加圧されることで、弾性板部32が副液室24B側に押され、それに伴って規制壁36は、半径方向外方(図2において矢印Zで示す方向)に撓み変形しようし、これにより、外周の弾性壁34との密接度を高めることができる。
【0031】
なお、以上の実施形態においては、ダイヤフラム18に弾性壁34を設け、仕切部材28にこれの内方への変形を規制する規制壁36を設けているが、両者を逆に、即ち仕切部材の周縁部に弾性壁を設け、ダイヤフラムの周縁部に該弾性壁の内方への変形を規制する規制壁を設けることもできる。その場合、仕切部材の弾性壁をダイヤフラムの周縁部に当接してその外周にオリフィス流路を形成すればよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、防振基体の小変位時や圧縮方向への大変位時には正規のオリフィス流路の流れを確保しつつ、異音が生じる引張方向への大変位時には副液室の液体をオリフィス流路の一部を短絡するようにオリフィス流路内にリークさせ、これによりキャビテーションを低減して異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る液封入式防振装置の縦断面図(図4(c)のI−I線断面図)である。
【図2】防振基体の小変位時及び圧縮方向への大変位時における防振装置の断面図(図4(c)のII−II線断面に相当する図)である。
【図3】防振基体の引張方向への大変位時における防振装置の断面図である。
【図4】(a)は仕切部材の上面図、(b)は仕切部材の断面図、(c)は仕切部材の底面図である。
【図5】従来の液封入式防振装置の縦断面図である。
【符号の説明】
11……筒状部
12……第1取付部材
14……第2取付部材
16……防振基体
18……ダイヤフラム
24……液室
24A……主液室
24B……副液室
26……オリフィス流路
28……仕切部材
34……弾性壁
36……規制壁
Claims (3)
- 筒状部を有する第1取付部材と、該筒状部の軸心上に配された第2取付部材と、これら取付部材の間に介設されて両取付部材を結合するゴム状弾性体からなる防振基体と、該防振基体に対向して配され前記第1取付部材の内側で前記防振基体との間に液室を形成するダイヤフラムと、該液室を、前記防振基体にて室壁の一部が形成された主液室と前記ダイヤフラムにて室壁の一部が形成された副液室とに仕切る仕切部材と、を備える液封入式防振装置において、
前記仕切部材と前記ダイヤフラムのいずれか一方の周縁部に軸方向に突出し周方向に延びる弾性壁を設け、その外周に前記主液室と前記副液室を連結するオリフィス流路を形成するとともに、前記仕切部材と前記ダイヤフラムの他方の周縁部に前記弾性壁の半径方向内方への変形を規制する規制部を設けた
ことを特徴とする液封入式防振装置。 - 前記規制部は、前記他方の周縁部に設けられた周方向に延びる規制壁であって、前記弾性壁よりも剛性が高く設定され、かつ、該弾性壁の内周面に当接配置されて、該弾性壁の半径方向内方への変形を規制することを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
- 前記弾性壁が前記ダイヤフラムの周縁部に設けられ、前記規制壁が前記仕切部材の周縁部に設けられて、前記仕切部材は少なくとも前記規制壁を含むそれよりも内側の部分がゴム状弾性体のみで構成されたことを特徴とする請求項2記載の液封入式防振装置。
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