JP2008231902A - 旋回制御装置及びこれを備えた作業機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】ショックの発生を抑制することができる旋回制御装置及びこれを備えた作業機械を提供すること。
【解決手段】操作レバーの操作量a0に応じて設定された目標速度v0と実際の旋回速度v1との速度偏差に応じて旋回用電動機18の目標トルクを設定可能なコントローラ26を有するショベル1であって、上部旋回体3の作業状態に応じて変化する上部旋回体3を旋回させるための必要トルクt0を検出可能なインバータ23を備え、コントローラ26は、前記必要トルクt0が大きい程大きな値となる補正量b0を算出するとともにこの補正量b0を目標速度v0から減算して新たな目標速度に設定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、電動機によって旋回体を旋回駆動するショベルやクレーン等の作業機械の旋回制御装置に関するものである。
従来、ショベルやクレーン等の旋回作業機械においては、油圧ポンプの吐出油により駆動する油圧モータを旋回体の旋回駆動源として利用していた。
これに対し、近年では、旋回体を電動機で旋回させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
このように旋回体を電動機で旋回させる技術では、旋回操作レバーの操作量に応じて目標速度を設定し、この目標速度と実際の旋回速度との偏差を用いてトルク指令を決定する速度制御(いわゆる、PID制御)が行われているため、目標旋回速度と実際の旋回速度の偏差が大きくなると加速度トルクが急激に大きくなりショックが発生するという問題がある。
このような問題を解消すべく、特許文献2のように前記PID制御を行いながら、レバー操作量に応じたトルク制限を加える技術や、特許文献3のように目標速度を2階微分することにより演算されたジャーク予想値を用いて目標速度を修正する技術も知られている。
さらに、ショックの発生を防止すべく、特許文献4のように電動機を採用しながら、その動特性を油圧式の駆動特性に模擬させるようにした技術も知られている。
特開2001−10783号公報 特開2004−36303号公報 特開2004−137702号公報 特開2003−333876号公報
しかしながら、前記特許文献2〜4に係る技術は、何れも基本的に旋回操作レバーの操作量のみに基づいて旋回駆動制御を行うものであり、これらの技術では、実機におけるショックの発生を効果的に抑制することができなかった。
つまり、実際の作業機械では、旋回操作レバーの操作量が一定であっても、その作業状態(作業アタッチメントの作動状態、作業機械自体の傾斜角度等)に応じて旋回体を旋回させるための必要トルクが変化するため、旋回体の必要トルクの大小に応じて前記目標速度と実際の速度との速度偏差が大幅に変動するという特性を有している。
したがって、前記特許文献2〜4に係る技術では、必要トルクが大きい場合に、オペレータによる旋回操作レバーの操作量が小さいにもかかわらず前記速度偏差が大きくなる結果、電動機に与えられるトルクが大きくなってショックが生じてしまうおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ショックの発生を抑制することができる旋回制御装置及びこれを備えた作業機械を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は、本体と、この本体に旋回可能に搭載された旋回体と、この旋回体に起伏可能に設けられた作業アタッチメントとを有する作業機械に設けられた旋回制御装置であって、前記旋回体を旋回駆動するための電動機と、この電動機に対する駆動指示の入力操作を受ける操作手段と、この操作手段の操作量を検出可能な操作量検出手段と、前記電動機の回転速度を検出可能な速度検出手段と、前記操作量検出手段により検出された操作量に基づいて前記電動機の目標速度を設定するとともに、この目標速度と前記速度検出手段により検出された速度との速度偏差に基づいて目標トルクを設定し、この目標トルクに応じて前記電動機を作動させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記旋回体の作業状態に応じて変化する当該旋回体を旋回させるための必要トルクが大きい程大きな値となる補正量を算出するとともにこの補正量を前記目標速度から減算して新たな目標速度とする補正手段を備えていることを特徴とする作業機械の旋回制御装置を提供する。
本発明によれば、旋回体の作業状態に応じて変化する当該旋回体を旋回させるための必要トルクに応じて電動機の目標トルクの大きさを調整するように構成されているので、ショックの発生を効果的に抑制することができる。
つまり、本発明に係る作業機械においても、その作業状態、例えば、作業アタッチメントの作動状態(作業アタッチメントの作業半径、又は作業時におけるバケット内の土砂の有無等)、又は作業時に受ける外力(バケットによる押付作業時に受ける反力、傾斜地における作業機械自体の自重等)に応じて旋回体を旋回させるための必要トルクが変化するため、この必要トルクが大きくなるほど目標速度と速度検出手段により検出される実際の速度との速度偏差が大きくなる傾向があるものの、本発明の制御手段には補正手段が設けられているため、当該速度偏差が大きくなるのを阻止することができる。
具体的に、前記補正手段は、前記必要トルクが大きい程大きな補正値を算出してこの補正値を既に設定された目標速度から減算するようにしているので、この新たな目標速度と速度検出手段により検出された実際の速度との速度偏差を小さくすることができる。
したがって、本発明によれば、前記必要トルクが大きい程速度偏差を小さくすることができる結果、当該速度偏差を埋めるべく電動機に与えられる目標トルクの値も小さくすることができるので、ショックの発生を抑制することができる。
前記旋回制御装置において、前記補正手段は、前記操作手段の操作量が大きい程小さな補正量を算出することが好ましい。
この構成によれば、操作手段の操作量が大きくなるに従い、補正後の目標速度が小さくなり過ぎるのを抑制することができるので、オペレータに与える違和感を緩和することができる。
前記旋回制御装置において、前記制御手段は所定の周期毎に目標トルクを設定するように構成され、前記補正手段は前回の周期で設定された目標トルクを、今回の周期で使用する旋回体の前記必要トルクに相当するものとして利用して、前記補正量を算出することが好ましい。
この構成によれば、前回設定された目標トルクをそのまま利用して前記補正量を算出することができるので、実際に旋回体の前記必要トルクを算出する場合と比較して処理の簡素化を図ることができる。
つまり、前記必要トルクの変化は、全て電動機の負荷トルクに反映されるため、当該負荷トルクの増減に応じて補正値を算出して目標トルクを算出することにより、必要トルクの変化に見合った目標トルクを算出することができる。
また、本発明は、機体と、この機体に対し旋回可能に搭載された旋回体と、前記旋回制御装置とを備えた作業機械を提供する。
本発明によれば、ショックの発生を抑制することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るショベルの全体構成を示す側面図を示している。図2は、図1のショベルの駆動・制御系の構成を示すブロック図である。
図1及び図2を参照して、作業機械の一例としてのショベル1は、クローラ式の下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、この上部旋回体3の前部に装着された作業アタッチメント4とを備えている。
作業アタッチメント4は、前記上部旋回体3に起伏可能に装着されたブーム5と、このブーム5の先端部に連結されたアーム6と、このアーム6の先端に連結されたバケット7と、前記ブーム5を上部旋回体3に対して駆動させるブームシリンダ8と、前記アーム6をブーム5に対して駆動させるアームシリンダ9と、前記バケット7をアーム6に対して駆動させるバケットシリンダ10とを備えている。
下部走行体2は、左右一対のクローラ11(図1では1つ示している)を備え、これらクローラ11にはそれぞれ走行モータ12が設けられている。
上部旋回体3は、エンジン14と、このエンジン14によって駆動される油圧ポンプ15及び発電機16と、バッテリ17と、旋回用電動機18と、この旋回用電動機18の減速機構19とを備えている。
図2に示すように、油圧ポンプ15は、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10及び走行モータ12(以下、油圧アクチュエータ8〜10、12と総称す
る)に対し、それぞれコントロールバルブ20を介して作動油を供給するようになっている。換言すると、前記コントロールバルブ20の操作に応じて油圧ポンプ15から油圧アクチュエータ8〜10、12への作動油流量等を調整することにより、油圧アクチュエータ8〜10、12の動作が制御される。
発電機16は、増速機構21を介してエンジン14の出力軸に連結されている。この発電機16で得られた電力は、制御器22を介してバッテリ17に充電されるとともに、インバータ23を介して旋回用電動機18に供給される。なお、前記制御器22は、電圧の印加や電流の供給を調整するためのものである。
旋回用電動機18は、機械的ブレーキ力を発生させるためのネガティブブレーキとしてのメカニカルブレーキ24を備えている。このメカニカルブレーキ24が解除された状態で、旋回用電動機18の駆動力が旋回用減速機構19を経由して下部走行体2に伝達することにより、当該下部走行体2に対して上部旋回体3が右又は左に旋回する。
また、上部旋回体3は、操作レバー25を備えている。この操作レバー25は、予め設定された中立位置から左右に傾動操作可能なレバー部25aと、このレバー部25aの操作量を検出する操作部(例えば、ポテンショメータ)25bとを備え、前記レバー部25aの操作量に応じた電気信号を制御手段の一例であるコントローラ26に出力するようになっている。
さらに、上部旋回体3は、旋回用電動機18の回転速度(旋回速度)を検出する速度センサ27を備えている。この速度センサ27は、旋回用電動機18の回転速度に応じた電気信号をコントローラ26に出力するようになっている。
コントローラ26は、各種演算処理を実行するCPU、初期設定等を記憶するROM、及び各種情報を書き換え可能に記憶するRAM等からなる周知の制御手段である。このコントローラ26には、図3に示すような目標速度マップが記憶されている。
具体的に、図3の目標速度マップは、操作レバー25の操作量(傾動角度)が大きくなるに従い大きな目標速度が選択されるように、操作レバー25のレバー部25aの両操作方向(右旋回又は左旋回方向)のそれぞれについて設定されたものである。このマップに設定された目標速度は、操作レバー25の操作量の増減に応じて滑らかに増減するように、急激な増減を伴わない曲線として設定されている。
図4は、図2のコントローラの電気的構成を示すブロック図である。
図4を参照して、コントローラ26は、前記目標速度のマップに基づいて目標速度を設定する目標速度設定部28と、前記目標速度の補正量を算出する補正量算出部29と、前記目標速度と補正量と実際の速度とに基づいて第一目標トルクを算出する第一トルク演算部(第一トルク演算手段)30と、前記速度センサ27により検出された速度を零にする(検出された速度が零の場合にはその状態を保持する)ために旋回用電動機18に対して与えるべき第二目標トルクを演算する第二トルク演算部(第二トルク演算手段)31と、前記第一目標トルク及び第二目標トルクのうち、前記第一目標トルクの方向(右旋回方向又は左旋回方向)と同じ方向のトルクであって絶対値の大きいものを次の目標トルクとして設定する目標トルク設定部(目標トルク設定手段)32とを備えている。
目標速度設定部28は、前記操作レバー25の操作量a0に対応する目標速度v0を、前記目標速度マップ(図3参照)から特定する。
補正量算出部29は、現時点におけるショベル1の作業状態に応じて変化する旋回用電動機18を旋回させるための必要トルクt0を検出する。ここで、「ショベル1の作業状態」とは、例えば、作業アタッチメント4の作動状態(作業アタッチメント4の作業半径、又は作業時におけるバケット7内の土砂の有無等)や、作業時に受ける反力(バケット7による押付作業時に受ける反力、傾斜地におけるショベル1自体の自重等)のことである。具体的に、補正量算出部29は、本実施形態では1周期前にインバータ23から出力した目標トルクを旋回用電動機18の前記必要トルクt0に相当するものとして利用し、この必要トルクt0と操作部25bの操作量a0とに基づいて下記数式1に従い補正量b0を算出する。
Figure 2008231902
ここで、G0及びG1はそれぞれ制御ゲインであり、前記操作部25bの操作量a0を変数としたときの切片及び勾配に相当するものである。つまり、制御ゲインG0は、制限することができるトルクの最大値を規定するものであり、この制御ゲインG0を大きくするほど最終的に算出される目標トルクの値が小さくなる。一方、制御ゲインG1は、操作レバー25の操作量a0の変化に応じて制限することができるトルクの増減の割合を規定するためのものである。そして、これら制御ゲインG0、G1を調整することにより、油圧旋回システムにおけるブリードオフに相当する効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、1周期前の目標トルクを旋回用電動機18の必要トルクt0に相当するものとして利用しているが、前記1周期前の目標トルクと速度センサ27により検出された旋回用電動機18の速度とに基づいて当該旋回用電動機18の実際の必要トルクを算出してもよい。
そして、下記数式2に示すように、補正量算出部29により算出された補正量b0及び前記速度センサ27により検出された旋回用電動機18の実際の速度v1が、前記目標速度v0から減算されて速度偏差Δvが算出される。
Figure 2008231902
第一トルク演算部30は、前記速度偏差Δvに基づいて下記数式3に従い第一目標トル
クt1を算出する。
Figure 2008231902
ここで、G2は比例ゲイン、G3は積分ゲインであり、それぞれ予め設定されたものである。
一方、第二トルク演算部31は、操作レバー25のレバー部25aの操作位置が上述した中立範囲内にあるときに、前記速度センサ27により検出された旋回用電動機18の実際の速度v1を零にするために旋回用電動機18に対して与えるべき第二目標トルクt2を下記数式4に従い算出する。
Figure 2008231902
ここで、G4は比例ゲイン、G5は積分ゲインであり、それぞれ予め設定されたものである。
目標トルク設定部32は、前記第一目標トルクt1及び第二目標トルクt2のうち、前記第一目標トルクt1の方向(以下、右旋回方向を「正」の方向、左旋回方向を「負」の方向として説明する)と同じ方向のトルクであって絶対値の大きいものを次の目標トルクとして設定するようになっている。
以下、前記コントローラ26により実行される処理について図4及び図5を参照して説明する。
処理が開始されると、まず、操作レバー25の操作量a0に対応する目標速度v0をマップ(図3参照)に基づいて特定する(ステップS1)。
次に、前記速度センサ27により旋回用電動機18の速度v1を検出するとともに(ステップS2)、この速度v1に基づいて前記数式4に従い第二目標トルクt2を算出する(ステップS3)。
そして、前記数式1に従い補正量b0を算出するとともに、この補正量b0及び前記速度v1を利用して前記数式2に従い速度偏差Δvを算出する(ステップS4)。
次いで、前記速度偏差Δvを用いて前記数式3に従い第一目標トルクt1を算出するとともに(ステップS5)、この第一目標トルクt1が正方向(右旋回方向)であるか否かを判定する(ステップS6)。
ここで、第一目標トルクt1が正の方向(右旋回方向)である場合(ステップS6でYES)、第一目標トルクt1と第二目標トルクt2とを比較して(ステップS7)、第一目標トルクt1、第二目標トルクt2のうち、正の方向のトルクであって、その絶対値が大きいものを次の目標トルクとして設定する(ステップS8、S9)。そして、このように設定された目標トルクを前記インバータ23に出力して(ステップS15)、当該処理を終了する。
一方、第一目標トルクt1が正の方向ではない場合(ステップS6でNO)には、当該第一目標トルクt1が負の方向(左旋回方向)であるか否かを判定する(ステップS10)。
ここで、第一目標トルクt1が負の方向(左旋回方向)である場合(ステップS10でYES)、第一目標トルクt1と第二目標トルクt2とを比較して(ステップS11)、第一目標トルクt1、第二目標トルクt2のうち、負の方向のトルクであって、その絶対値が大きいもの、つまり、正負の符号を考慮した場合に小さい方のものを、次の目標トルクとして設定する(ステップS12、S13)。そして、このように設定された目標トルクを前記インバータ23に出力して(ステップS15)、当該処理を終了する。
さらに、前記ステップS6及びS10において、第一目標トルクt1が正及び負の何れの方向でもないと判断された場合(ステップS6及びS10でNO)、つまり、上部旋回体3をその場で保持させる必要がある場合には、前記第二目標トルクt2を次の目標トルクとして設定し(ステップS14)、次いで、このように設定された目標トルクを前記インバータ23に出力して(ステップS15)、当該処理を終了する。
前記のような処理を行うことにより、図6に示すように、操作レバー25の操作に応じたトルク制御が可能となる。
図6は、ショベル1のバケット7を地面に押し当てた状態で、操作レバー25を操作した場合における、当該操作レバー25の操作状態、旋回トルク及び旋回速度をそれぞれ示したものである。
つまり、図6の状態においては、バケット7が地面に押し当てられて上部旋回体3が旋回し得ない状態で操作レバー25が操作された状態を示している。このような場合、従来のように必要トルクt0を加味せずにPID制御を行うと、操作レバー25の操作量の増加に応じて目標速度が高くなっていくのに対し実際の速度が零のままであるため、速度偏差が著しく大きくなり、図7の中段に示すように、トルク増加が急激なものとなりショックが生じるおそれがあるが、前記実施形態のように、旋回用電動機18の必要トルクt0に基づく補正量b0の分だけ速度偏差Δvを小さくすることにより、図6の中段に示すように操作レバー25の操作に応じた旋回トルクを生じさせることができる。このことは、操作レバー25の操作量と旋回トルクとの関係を示す図8からも明らかである。なお、図8も図6と同様に、バケット7が地面に押し当てられて上部旋回体3が旋回し得ない状態における旋回トルクを示したものである。
また、図9は、上部旋回体に生じている必要トルクt0が比較的小さい場合における操作レバーの操作量、旋回速度及び旋回トルクをそれぞれ示したものである。
上述した数式1に示すように、補正量b0は必要トルクt0が小さくなるほど零に近づくため、必要トルクt0が小さい場合には、当該必要トルクt0を加味しない従来技術と同様の速度制御を行うことができる。参考として、図10に必要トルクt0を加味しない場合における操作レバーの操作量、旋回速度及び旋回トルクを示す。なお、旋回速度の欄における実線は実際の旋回速度を示しており、二点鎖線は操作レバー25の操作量に対応する目標速度をそれぞれ示している。
さらに、前記実施形態では、上述のように第一目標トルクt1、第二目標トルクt2のうち、第一目標トルクt1と同方向のトルクであって絶対値の大きいものを次の目標トルクとして設定するようにしているため、トルクの変動をスムーズに行うことができる。以下、この点について従来の構成と対比しながら説明する。
以下の説明では、図11に示すように操作レバー25の操作量L1を時間の経過とともに大きくしていくことに応じて、旋回用電動機18の目標速度がL2に示すように推移する場合について説明する。なお、チャートL2が2秒付近から立ち上がっていることからも明らかなように、0秒〜2秒の範囲内における操作レバー25の操作範囲は不感帯(あそび)とされている。
例えば、特開2003−328398号公報に開示された従来の技術では、操作レバーの操作量が前記不感帯の範囲内では速度比例制御(PID制御)を行う一方、操作レバーの操作量が不感帯を超えた場合にトルク制御を行うようになっている。つまり、図12の(a)に示すように速度比例制御が行われるときのトルク推移L3と、上部旋回体をその場に保持させるためのトルク推移L4とを考慮した場合に、操作レバーの操作量を徐々に大きくしていくと、図12の(b)に示すように、0秒〜2秒までの不感帯の範囲内ではトルク推移L4に従いトルクが推移するが、前記不感帯の範囲を超えて操作レバーが操作されると、その時点からトルク推移L3に従ったトルク制御が実行されるため、当該不感帯の終端まで操作されたときに、トルク推移L3とL4とを補間するための不連続部分L5が生じることになる。
これに対し、前記実施形態では、図13の(a)に示すように、速度比例制御が行われるときの第一目標トルクL6と、上部旋回体3をその場に保持させるための第二目標トルクL7とを常時比較して、これら第一目標トルクL6、第二目標トルクL7のうちの大きなものを選択するようにしている。そのため、図13の(b)に示すように、本実施形態では、操作レバー25の操作量にかかわらず、第一目標トルクL6と第二目標トルクL7との交点部分L8を境として、これら第一目標トルクL6と第二目標トルクL7とを連続的に切り換えることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、スムーズで安定した制御を行うことができる。
以上説明したように、上部旋回体3の作業状態に応じて変化する当該上部旋回体3を旋回させるための必要トルクt0(1周期前の目標トルク)に応じて旋回用電動機18の目標トルクの大きさを調整するように構成されているので、ショックの発生を効果的に抑制することができる。
つまり、前記ショベル1においても、その作業状態、例えば、作業アタッチメント4の作動状態(作業アタッチメント4の作業半径、又は作業時におけるバケット7内の土砂の有無等)、又は作業時に受ける外力(バケット7による押付作業時に受ける反力、傾斜地におけるショベル1自体の自重等)に応じて必要トルクt0が変化するため、この必要トルクt0が大きくなるほど目標速度と速度検出手段により検出される実際の速度v1との速度偏差Δvが大きくなる傾向があるものの、前記実施形態では当該速度偏差Δvが大きくなるのを阻止することができる。
具体的に、前記実施形態では、必要トルクt0が大きい程大きな補正値b0を算出してこの補正値b0を既に設定された目標速度v0から減算するようにしているので、この新たな目標速度(v0−b0)と速度センサ27により検出された実際の速度v1との速度偏差Δvを小さくすることができる。
したがって、前記実施形態によれば、必要トルクt0が大きい程速度偏差Δvを小さく
することができるので、ショックの発生を抑制することができる。
前記実施形態のように、操作レバー25の操作量a0が大きい程小さな補正量b0を算出するようにした構成とすることにより、操作レバー25の操作量a0が大きくなるに従い、補正後の目標速度が小さくなり過ぎるのを抑制することができるので、オペレータに与える違和感を緩和することができる。
前記実施形態のように、前回設定された目標トルクを今回使用する必要トルクt0として利用する構成とすることにより、実際に上部旋回体3の必要トルクt0を算出する場合と比較して処理の簡素化を図ることができる。
つまり、上部旋回体3の必要トルクt0の変化は、全て旋回用電動機18の負荷トルク(目標トルク)に反映されるため、当該負荷トルクの増減に応じて補正値b0を算出して目標トルクを算出することにより、必要トルクt0の変化に見合った目標トルクを算出することができる。
前記実施形態のように、第一目標トルクt1及び第二目標トルクt2のうち、第一目標トルクt1と同じ方向のトルクであって、絶対値の大きなトルクを目標トルクに設定する目標トルク設定部32を備えた構成とすることにより、傾斜地で上り側に向かって旋回開始する場合や、強風下で風上側に向かって旋回開始する場合に、上部旋回体3がトルク不足によって逆方向に旋回する「逆行」の発生を確実に防止することができる。
さらに、傾斜地で旋回停止する場合も、常に旋回用電動機18のトルクが重力と吊り合う大きさとなるため、制動トルクが重力に負けて上部旋回体3が下り側に逆行するのを防止することができる。
本発明の実施形態に係るショベルの全体構成を示す側面図を示している。 図1のショベルの駆動・制御系の構成を示すブロック図である。 図2のコントローラに記憶されたマップであって、操作レバーの操作量と目標速度とを対応付けたものである。 図2のコントローラの電気的構成を示すブロック図である。 図2のコントローラにより実行される処理を示すフローチャートである。 ショベルのバケットを地面に押し当てた状態で、操作レバーを操作した場合における、当該操作レバーの操作状態、旋回トルク及び旋回速度をそれぞれ示したものである。 必要トルクt0を加味しない場合における図6相当図である。 図6の状態における、操作レバーの操作量と旋回トルクとの関係を示すグラフである。 上部旋回体に生じている必要トルクが比較的小さい場合おける操作レバーの操作量、旋回速度及び旋回トルクをそれぞれ示したものである。 必要トルクt0を加味しない場合における図9相当図である。 操作レバーの操作量と電動機の目標速度との関係を示すグラフである。 従来の技術に係る制御を示すグラフであり、(a)は速度比例制御のトルク推移とその場保持のためのトルクの推移とを示したものであり、(b)は速度比例制御からトルク制御への切り換わりの状態を示すものである。 本願発明に係る制御を示すグラフであり、(a)は速度比例制御のトルク推移とその場保持のためのトルクの推移とを示したものであり、(b)は速度比例制御からトルク制御への切り換わりの状態を示すものである。
符号の説明
1 ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業アタッチメント
18 旋回用電動機
23 インバータ(モーメント特定手段)
25 操作レバー(操作手段)
26 コントローラ(制御手段)
27 速度センサ(速度検出手段)
28 目標速度設定部
29 補正量算出部
30 第一トルク演算部
31 第二トルク演算部
32 目標トルク設定部

Claims (4)

  1. 本体と、この本体に旋回可能に搭載された旋回体と、この旋回体に起伏可能に設けられた作業アタッチメントとを有する作業機械に設けられた旋回制御装置であって、
    前記旋回体を旋回駆動するための電動機と、
    この電動機に対する駆動指示の入力操作を受ける操作手段と、
    この操作手段の操作量を検出可能な操作量検出手段と、
    前記電動機の回転速度を検出可能な速度検出手段と、
    前記操作量検出手段により検出された操作量に基づいて前記電動機の目標速度を設定するとともに、この目標速度と前記速度検出手段により検出された速度との速度偏差に基づいて目標トルクを設定し、この目標トルクに応じて前記電動機を作動させる制御手段とを備え、
    前記制御手段は、前記旋回体の作業状態に応じて変化する当該旋回体を旋回させるための必要トルクが大きい程大きな値となる補正量を算出するとともにこの補正量を前記目標速度から減算して新たな目標速度とする補正手段を備えていることを特徴とする作業機械の旋回制御装置。
  2. 前記補正手段は、前記操作手段の操作量が大きい程小さな補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の旋回制御装置。
  3. 前記制御手段は所定の周期毎に目標トルクを設定するように構成され、前記補正手段は前回の周期で設定された目標トルクを、今回の周期で使用する旋回体の前記必要トルクに相当するものとして利用して、前記補正量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械の旋回制御装置。
  4. 機体と、この機体に対し旋回可能に搭載された旋回体と、請求項1〜4の何れか1項に記載の旋回制御装置とを備えた作業機械。
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