JP2008231523A - ダイヤモンド薄膜素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】特殊な表面加工設備を用いることなく、優れた密着性を得ることができるダイヤモンド薄膜素子を提供することを目的とする。
【解決手段】基材1にダイヤモンド薄膜2が被覆されたダイヤモンド薄膜素子である。前記基材1は、線膨張係数が12×10-6/K以下の低熱膨張材で形成され、長さ方向に沿って任意の垂直な横断面の外周が凸状の曲線となる側面(円錐面)部を有し、前記側面部の横断面の周長pが900μm 以下とされる。前記側面部に被覆されたダイヤモンド薄膜の膜厚をtとするとき、t/pが1.0×10-4以上、7.0×10-3以下とされる。
【選択図】図2

Description

本発明は、電極、測定探触子、センサー部品など、基材にダイヤモンド薄膜が被覆されたダイヤモンド薄膜素子に関する。
導電性ダイヤモンド薄膜は、優れた電気化学的特性、材料特性を有している。電気化学的特性としては酸素過電圧の大きさ、水素過電圧の大きさ、バックグラウンド電流の小ささを挙げることができ、材料特性としては機械的強度、耐薬品性、熱伝導性、熱容量の小ささを挙げることができる。
従来、電気化学的な微量物質検知や電解プロセス用の電極の多くは、白金、金、酸化イリジウム、グラシーカーボンなどで形成されていたが、前記導電性ダイヤモンド薄膜の優れた特性に着目して、これを利用した電極素子が代替電極として利用することが検討されている。この際、導電性ダイヤモンドは、高価な材料であるため、通常、導電性ダイヤモンド自体によって電極を形成するのではなく、導電性の基材に導電性ダイヤモンド薄膜を被覆した構造とされる。
特に電気化学的な微量物検知や電解プロセス用の電極としては、種々の薬液との接触や大電流密度で通電されるという厳しい使用環境で長時間使用されるため、導電性ダイヤモンド薄膜素子には、優れた耐久性が求められる。
また、導電性ダイヤモンド薄膜素子は、優れた電子源として利用することができる。これは、ダイヤモンドの電子親和力が非常に小さく、条件によっては電子親和力が負となるからである。かかる特性を利用して、電子線描画装置や微小X線源、電子顕微鏡などを典型例とする真空環境における電子源として、また将来的には電子表示装置用の微小電子銃としての応用が注目されている。また、特定環境で使用される電子源の応用例としては、複写機のトナー帯電、イオン脱臭機、各種放電灯・陰極管などを挙げることができる。
このようにダイヤモンド薄膜素子は、ダイヤモンドの優れた特性により、種々の分野での利用が検討されているが、基材にダイヤモンド薄膜が被覆された構造であるため、優れた耐久性を確保するには、ダイヤモンド薄膜と基材との密着性を確保することが技術上の重要なポイントになる。
そこで、基材とダイヤモンド薄膜の密着性の向上技術として種々のものが提案されている。例えば、特開平5−239646号公報(特許文献1)には、基材の表面を、高エネルギー密度のパルスレーザでアプレーション加工し、微細な凹凸を設けることが提案されている。微細な凹凸を設けることにより、所謂アンカー効果によってダイヤモンド薄膜の基材に対する密着性を向上させることができる。
また、特開2006−206971号公報(特許文献2)には、より簡便な方法で同様の効果を狙った技術が記載されており、シリコン基板をインゴットから切り出す際の内周歯の番手を変更したり、切断後に研磨処理することにより、シリコンの表面を意図的に粗加工して所定範囲の微細な凹凸を設けることが提案されている。
特開平5−239646号公報 特開2006−206971号公報
しかし、パルスレーザでアプレーション加工する方法は、高価で特殊な表面加工装置が必要となり、ひいては製造コストが高くなるため実用性に乏しいという問題がある。また、シリコン基板の表面粗度を調整する方法では、シリコン基板を用いることが前提であって基材の材料、形態が制約され、またアンカー効果が不十分であり、十分な密着性が得られないという問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、特殊な表面加工設備を用いることなく、優れた密着性を得ることができるダイヤモンド薄膜素子を提供することを目的とする。
基材にダイヤモンド薄膜を被覆する場合、高温環境下で被覆されるため、ダイヤモンド薄膜には大きな圧縮の残留応力が存在する。この残留応力は膜厚を制御することで制御することができるが、単に膜厚を制御するだけではダイヤモンド薄膜の密着性は改善しない。本発明者は、圧縮の残留応力に着目し、基材の形態によっては、ダイヤモンド薄膜はその圧縮残留応力により基材を締め付けるようになり、ダイヤモンド薄膜の密着性が向上することを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、基材にダイヤモンド薄膜が被覆されたダイヤモンド薄膜素子であって、前記基材は線膨張係数が12×10-6/K以下の低熱膨張材で形成され、長さ方向に垂直な横断面の外周が凸状の曲線となる側面部を有し、前記側面部の横断面の周長pが900μm 以下とされ、前記側面部に被覆されたダイヤモンド薄膜の膜厚をtとするとき、t/pが1.0×10-4以上、7.0×10-3以下とされたものである。
本発明のダイヤモンド薄膜素子によると、低熱膨張材で形成された基材の側面部が特定周長の横断面を有する曲面で形成され、その側面部に周長pに対して所定膜厚tのダイヤモンド薄膜が被覆されるので、基材の側面部を包み込むように被覆するダイヤモンド薄膜の圧縮残留応力が側面部の外周を締め付けるように作用し、これによって基材に対するダイヤモンド薄膜の密着性が向上し、優れた耐久性を得ることができる。
このダイヤモンド薄膜素子において、前記基材の形状としては円錐形ないし略円錐形とすることができ、また好ましくは高さが前記側面部の横断面における最大径よりも大きい円柱形ないし略円柱形の形状とすることができる。また、前記ダイヤモンド薄膜は基材の少なくとも一方の端部及び側面部に一体的に被覆することが好ましい。また、ダイヤモンド薄膜が被覆される基材の表面を自乗平均平方根粗度(RMS)で0.1〜20μm の凹凸を形成することが好ましい。このような粗度の凹凸を形成することにより、アンカー効果によってダイヤモンド薄膜の密着性をさらに向上させることができる。
また、前記基材は、例えばシリコン、チタン、チタン合金、モリブデン及びモリブデン合金などの高融点を有し、導電性の低熱膨張材で形成することができる。この場合、前記ダイヤモンド薄膜を導電性ダイヤモンド薄膜とすることにより、電極素子として好適に用いることができる。
本発明のダイヤモンド薄膜素子によれば、ダイヤモンド薄膜はその残留応力により基材を締め付けるように被覆するので、特殊な表面加工設備を用いることなく、優れたダイヤモンド薄膜の密着性が得られ、引いては耐久性に優れたダイヤモンド薄膜素子を提供することができる。特に導電性ダイヤモンド薄膜電極素子は、耐久性に優れ、ダイヤモンド薄膜の優れた特性を最大限に利用できる。このため、オゾン水生成、機能水生成、排水処理、微量物質検知などの電極素子として好適であり、さらにグラインダなどの加工具、カンチレバなどの微小機械構造、電子源から増幅素子、発光素子、各種センサデバイスなどに好適に適用することができる。
以下、本発明の実施形態にかかる導電性ダイヤモンド薄膜素子について説明する。図1は、実施形態にかかる導電性ダイヤモンド薄膜素子の縦断面を示しており、導電性の低熱膨張材で形成され、円錐形に形成された基材1と、その側面(円錐面)部から頂部を一体的に被覆する導電性ダイヤモンド薄膜2とを備える。
前記基材1は、線膨張係数が12×10-6/K以下の高融点低熱膨張材で形成されている。導電性ダイヤモンド薄膜2を成膜される際、基材も高温になるので、その融点は少なくとも1300Kであることが好ましい。線膨張係数が12×10-6/K超では、導電性ダイヤモンド薄膜を被覆した際に当該薄膜に残留する圧縮応力が過大となり、微細なクラックが生じやすくなり、却って基材締め付け効果の低下、ひいては密着性の低下を招来する。このため、線膨張係数が12×10-6/K以下のものが好ましい。さらに、機械加工性が良好であることが好ましい。これらの条件を満足する材料としては、例えばSi、Ti、Mo、Ti合金、Mo合金を例示することができる。
また、前記基材1は、円錐形をしており、その頂部は20〜80μm 程度の小さな曲率半径の球面の一部で形成されている。また、長さ(高さ)方向に垂直な任意の横断面における外周の周長pが900μm 以下、すなわち底面外周における周長が900μm 以下(直径で286μm 以下)とされている。周長pが900μm 超となると、残留応力による基材締め付け効果が減少するようになり、密着性が低下する。また、周長pを900μm 以下とすることにより、頂部から側面部に渡って導電性ダイヤモンド薄膜を一体的に被覆することで、基材の頂部が側面部の導電性ダイヤモンド薄膜に包み込まれるようになるため、頂部の密着性も向上する。前記周長pの下限は特に限定されないが、加工上、120μm 程度、好ましくは150μm 程度に止めることが望ましい。なお、基材1の底面部は、電極素子の取り付け部分となるため、導電性ダイヤモンド薄膜が被覆される必要はない。
前記導電性ダイヤモンド薄膜2は、膜厚が0.03〜10μm 程度に形成されるが、前記基材1の側面部において、長さ方向の任意部分の膜厚tが前記基材1のその部分における横断面の周長pに対して1.0×10-4以上、7.0×10-3以下となるように形成する必要がある。t/pが1.0×10-4未満ではダイヤモンド薄膜の残留応力による基材締め付け効果が過小となり、一方7.0×10-3超となると残留応力が過大となって、いずれの場合もダイヤモンド薄膜2の密着性が低下するようになる。
図1では、導電性ダイヤモンド薄膜2は、基材1の頂部から側面部にかけて均一の膜厚に形成されているが、図2に示すように、頂部から底面部にかけて膜厚が漸次厚くなるような膜厚分布としてもよい。要は、長さ方向の任意の各部の横断面において、t/pが1.0×10-4以上、7.0×10-3以下を満足すればよい。
前記導電性ダイヤモンド薄膜2は、各種の気相合成法によって成膜することができるが、プラズマCVD法によれば、成膜効率が高く、また基材1の表面の周りにプラズマを包み込むように形成することができ、基材の外周面にダイヤモンド薄膜を容易に形成することができる。プラズマCVD法としては、高周波プラズマCVD法、DCアークプラズマCVD法などの各種プラズマCVD法を適用することができる。
プラズマCVD法での成膜に用いる原料ガスとしては、水素ガスと炭素源ガス(例えば、メタンガス、一酸化炭素ガス)との混合ガスが用いられ、ダイヤモンド薄膜に導電性を付与するために微量のホウ素源ガス(例えば、ジボランガス)が添加される。前記水素ガスに対する炭素源ガスの比率は、通常、0.1〜10 vol%程度とされ、炭素源に対するホウ素源の比率は、0.1〜105ppm程度でよい。ホウ素の添加は、プラズマCVD装置内に固体ホウ素を設置するようにしてもよい。かかる原料ガスを用いてプラズマCVDを行うことにより、基材の表面にダイヤモンド薄膜中に不純物として微量のホウ素が含有した導電性ダイヤモンド薄膜が形成される。導電性ダイヤモンド薄膜の成膜に際しては、図7に示すように、薄膜を被覆する必要がない基材1の底面部を導電材で形成された支持部材11の保持用凹部に差し込み、基材1を保持した支持部材11をCVD装置の処理台に載置して成膜すればよい。なお、基材1の全周にダイヤモンド薄膜を被覆するには、支持軸を立設した支持部材を準備し、前記支持軸に基材を点接触状態で支持するようにして、基材を空中に浮かせた状態で成膜すればよい。
また、前記導電性ダイヤモンド薄膜1の膜厚は、プラズマCVD装置の処理台を温度制御することで制御することができる。通常、成膜時に処理台は水冷されるが、この場合、図1に示すように、基材1の外周面に均一膜厚の導電性ダイヤモンド薄膜2が形成される。一方、プラズマCVD装置の処理台の温度を上げて、基材1の下方ほど処理温度が高くなるように温度分布を形成することで、図2に示すように底面側ほど膜厚を厚くすることができる。また、基材1とプラズマとの距離を調整することによっても膜厚を制御することができる。通常、プラズマの形成位置はプラズマCVD装置の真空容器の内部形状によって決まるので、基材とプラズマの距離は基材を載置する処理台を真空容器内で上下動させることで調整することができ、これにより基材の温度分布を制御することができる。
上記実施形態では、基材1として円錐形のものを用いたが、基材の形状はこれに限るものではなく、側面部の横断面の外周が凸状の曲線をしており、その周長が900μm 以下であればよく、例えば、図3、図4に示す円錐台形でもよい。図3は基材1の表面に均一膜厚の導電性ダイヤモンド薄膜2を被覆したもの、図4は基材1の表面に頂部から底面部にかけて膜厚が厚くなるように導電性ダイヤモンド薄膜2を被覆したものである。また、基材1の形状としては、図5に示す円柱形でもよい。円柱形の場合、高さが端面の直径よりも大きいものの方が端面部におけるダイヤモンド薄膜の密着性の点では有利である。また、円柱形基材の場合、端部を球面状としてもよく、横断面形状は円形に限らず、楕円形でもよい。またこれらの形状のほか、例えば球形でもよい。
また、ダイヤモンド薄膜2の密着性をより向上させるには、基材の表面に微細な凹凸を形成するとよい。これによりアンカー効果が生じて密着性が向上する。もっとも、凹凸が細か過ぎるとアンカー効果が過小となり、一方粗過ぎてもアンカー効果が発揮されないようになるので、表面粗度をRMS(自乗平均平方根粗度)で好ましくは0.1μm 以上、20μm 以下、より好ましくは0.5μm 以上、5μm 以下とするのがよい。前記RMSは、光干渉方式のレーザー表面プロファイラで測定することができる。前記プロファイラとしては、例えばYEECO社製の測定装置『WYKO』(商品名)を用いることができる。
また、上記実施形態では、ダイヤモンド薄膜として導電性ダイヤモンド薄膜を形成したが、工具や微小機械構造部品などの導電性を要しないダイヤモンド薄膜素子では、導電性は不要であり、ダイヤモンド薄膜の成膜に際してホウ素を添加する必要はない。また、基材の導電性も必要なく、例えばセラミックスなどの絶縁材で形成することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によて限定解釈されるものではない。
材質がSiあるいはCuで外形が外周長300〜1500μm 、長さ5mmの円柱形の基材群、材質がTiあるいはCuで外周長300〜1200μm 、長さ15〜200mmの丸線形(この実施例では長さ(高さ)が15mm以上の細長い円柱形を「丸線形」と呼ぶ。)の基材群、材質がMoあるいはCuで外形が図1の円錐形(頂部の曲率半径0.05mm、底面における外周長300〜1500μm )の基材群を準備し、各基材に対してショットブラストによって基材表面に種々の表面粗さ(RMS)の微細な凹凸を形成した。これらの基材形状、寸法、表面粗さ(RMS)を表1に示す。
次に、各基材を用いてその表面にプラズマCVD法によりほぼ均一厚さの導電性ダイヤモンド薄膜を以下の要領で形成した。まず、前記円柱形基材に対しては一方の端面を、また円錐形の基材に対しては底面をプラズマCVD装置の処理台(水冷)に載置して、また丸線形の基材は処理台に載置した支持部材に点接触させた状態で軸線が横方向になるように空中に浮かせてプラズマCVD装置内に設置した。
次に、ガス圧(1×103 〜2×104 Pa)、プラズマ電力、処理台の温度などのパラメータを調整して、基材表面温度を950〜1,300Kに制御した。プラズマは基材を包み込むようにチューニングした。原料ガスには水素とメタンとの混合ガスを用い、メタンガスを水素ガスで0.1〜10%程度に希釈してプラズマCVD装置内に導入した。導電性ダイヤモンド薄膜を得るために、原料ガスにホウ素源ガス(ジボランガス)を混合したり、プラスマCVD装置内に固体ホウ素源を設置した。導電性ダイヤモンド薄膜の堆積速度は、プラズマCVD装置の運転条件が同一であっても基材の形状に影響されるが、本実施例では概ね0.1〜1μm /hrの範囲で制御した。
上記のようにして形成された導電性ダイヤモンド薄膜の膜厚を以下の要領で測定した。導電性ダイヤモンド薄膜が形成された基材を両端面(円錐形の場合は頂点及び底面)から長さの10%位置で軸線に対して垂直に切断し、切断面を顕微鏡観察し、ダイヤモンド薄膜の平均膜厚を求めた。その結果を表1に併せて示す。
上記のようにして製作した導電性ダイヤモンド薄膜素子に対して、薄膜の密着性を簡便なテープ剥離テストにより調べた。テープ剥離テストは、大気中でメンディングテープ(住友スリーエム製)を前処理なしでダイヤモンド薄膜表面に接着した後、テープを剥がすことにより基材からダイヤモンド薄膜が剥離するか否かを調べるものであり、テスト結果は全て剥離する場合と全く剥離しない場合とに明確に分かれた。
さらに、導電性ダイヤモンド薄膜素子に対して以下のA〜Cの薬液処理を施した後、前記テープ剥離テストを実施した。
A処理:王水、アンモニア水と過酸化水素水との混合液(体積割合1:0.2)、弗酸と硝酸との混合液(体積割合1:1)の各薬液を調製し、薬液を撹拌した状態で10日間浸漬
B処理:上記各薬液を超音波振動させた状態で3hr浸漬
C処理:上記各薬液を400K程度に加熱した状態で3hr浸漬
さらにまた、より厳しい環境として、下記の電解剥離を行った後、前記テープ剥離テストを実施した。電解剥離は、導電性ダイヤモンド薄膜素子を2個組み合わせて水道水中に設置し、0.3〜3A/cm2 の電流密度で20hr通電した。
上記テープ剥離テストの結果を表1に併せて示す。表中、「○」は剥離がないもの、「×」は剥離したものを示す。薬液処理についてはいずれかの処理で剥離があれば「×」と評価した。テスト結果を整理したグラフを図6に示す。このグラフでは、横軸を基材端面又は底面の外周長p、縦軸を膜厚tの対数とした。図中の曲線は、本発明のt/pの上下限を示す。また、プロットの「○」を合格、「●」を不合格の試料とした。合否判定は、前処理なしで剥離がなく、かつ薬液処理A−Cの内、いずれか2つの処理を行っても剥離しなかったものは、密着性が実用レベルにあるので合格と判断した。
表1及び図1より、実施例に係る導電性ダイヤモンド薄膜素子は、ダイヤモンド薄膜の密着性に優れ、引いては耐久性に優れることが分かる。特に、密着性が合格レベルにあるものでも、基材の表面粗度が0.1〜20mmのものの密着性が非常に優れており、電解剥離後のテープ剥離テストでも全て剥離が観察されなかった。なお、電解剥離後のテープ剥離テストで剥離したものは、電解によってダイヤモンド薄膜が部分的に剥離しているのが観察された。
Figure 2008231523
材質がMoで、図3および図4に示す円錐台形の基材を準備した。基材の長さ(高さ)は3mmであり、頂面、底面からそれぞれ0.3mm離れた位置A,Bにおける周長pはそれぞれ150μm 、600μm である。
次に、実施例1と同様にしてプラズマCVD法で基材の表面(底面を除く。)に導電性ダイヤモンド薄膜を形成した。この際、実施例の導電性ダイヤモンド薄膜素子として、プラズマCVD装置の処理台の温度を400℃程度に加熱して成膜し、図4に示すように、薄膜tがA部で0.05μm 、B部で0.10μm となるダイヤモンド薄膜を形成した。この薄膜のA部でのt/p=3.3×10-4、B部でのt/p=1.7×10-4であり、共に本発明の条件を満足する。一方、比較例として、図3に示すように、処理台を水冷して処理台の温度を60〜70℃程度に調整して成膜し、基材表面において膜厚がほぼ0.05μm の均一な膜厚のダイヤモンド薄膜を形成した。比較例では、A部では本発明条件を満足するが、B部ではt/p=8.3×10-3となって本発明条件から外れる。
これらの試料を真空装置(到達真空度≦1×10-4Pa)に設置し、白金電極の先端部と頂部との間隔が20mmとなるように導電性ダイヤモンド薄膜素子を白金電極に対向させて配置し、白金電極の先端部から10μAを流すように印加する負電圧(200〜1kV)を調整し、導電性ダイヤモンド薄膜素子の電極寿命を測定した。電極寿命は、当初印加した電圧において10μAが流れないようになるまでの時間とした。その結果、比較例では、寿命が300hrであるのに対して、実施例では1,400hrと4倍以上の耐久性を示した。
本発明の実施形態にかかる、円錐形の基材に均一厚さの薄膜を被覆したダイヤモンド薄膜素子の縦断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる、円錐形の基材に底面側が厚い厚さ分布を有する薄膜を被覆したダイヤモンド薄膜素子の縦断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる、円錐台形の基材に均一厚さの薄膜を被覆したダイヤモンド薄膜素子の縦断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる、円錐台形基材に底面側が厚い厚さ分布を有する薄膜を被覆したダイヤモンド薄膜素子の縦断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる、円柱形の基材に均一厚さの薄膜を被覆したダイヤモンド薄膜素子の縦断面図である。 実施例1におけるダイヤモンド薄膜素子の周長pと膜厚tとの関係を示すグラフである。 ダイヤモンド薄膜を基材に成膜する際に用いられる支持部材の要部断面図である。
符号の説明
1 基材
2 導電性ダイヤモンド薄膜

Claims (7)

  1. 基材にダイヤモンド薄膜が被覆されたダイヤモンド薄膜素子であって、
    前記基材は、長さ方向に垂直な横断面の外周が凸状の曲線となる側面部を有し、線膨張係数が12×10-6/K以下の低熱膨張材で形成され、
    前記側面部の横断面の周長pが900μm 以下とされ、前記側面部に被覆されたダイヤモンド薄膜の膜厚をtとするとき、t/pが1.0×10-4以上、7.0×10-3以下とされた、ダイヤモンド薄膜素子。
  2. 前記基材は円錐形ないし略円錐形の形状を有する、請求項1に記載したダイヤモンド薄膜素子。
  3. 前記基材は円柱形ないし略円柱形の形状を有し、その高さが前記側面部の横断面における最大径よりも大きい、請求項1に記載したダイヤモンド薄膜素子。
  4. 前記基材の少なくとも一方の端部及び側面部にダイヤモンド薄膜が一体的に被覆された、請求項1から3のいずれか1項に記載したダイヤモンド薄膜素子。
  5. 前記ダイヤモンド薄膜が被覆される前記基材の表面が自乗平均平方根粗度(RMS)で0.1〜20μm である、請求項1から4のいずれか1項に記載したダイヤモンド薄膜素子。
  6. 前記基材は、シリコン、チタン、チタン合金、モリブデン及びモリブデン合金の内から選択された材料で形成された、請求項1から5のいずれか1項に記載したダイヤモンド薄膜素子。
  7. 前記ダイヤモンド薄膜は導電性ダイヤモンド薄膜であり、電極素子として用いられる、請求項6に記載したダイヤモンド薄膜素子。
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CN108277489A (zh) * 2018-03-30 2018-07-13 镇江东艺机械有限公司 一种交联pvd硬质涂层高速切削刀具及制造方法

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