JP2008231271A - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】シリカの分散性を改良することで、破断特性を向上するとともに、スチールコードとの接着性を改良する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積が50〜300m/g、単位表面積当たりのシラノール基量が5〜11個/nmであり、かつ、JIS K6220のB法で測定されるpHが4.5〜6.0であるシリカを5〜100重量部含有するゴム組成物である。また、該ゴム組成物からなるトレッドを有する空気入りタイヤ、更には、該ゴム組成物とスチールコードとからなるゴム−スチールコード複合体を備える空気入りタイヤを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物、及び、それを用いた空気入りタイヤに関するものである。
従来、ゴム補強用充填剤として、カーボンブラックの一部をシリカと置換することにより、シリカ表面に存するシラノール基の水素結合により、補強性を向上したり、タイヤのウエット性や低燃費性を向上することが知られている。しかしながら、シリカは、そのシラノール基の影響により凝集しやすく、分散性に劣ることから、上記性能を十分に発揮させることができないという問題がある。そのため、シリカの分散性を改良するための提案が種々なされている。
例えば、下記特許文献1には、シラノール基量の多い汎用のシリカと、シラノール基量の少ないシリカとをブレンドして用いることで、シラノール基の水素結合による凝集を低下し、微小変形時の弾性率E’を低下させて、ウエット性能を向上するとともに、転がり抵抗を低減することが開示されている。しかしながら、単にシラノール基量の少ないシリカを用いたのでは、補強性の低下が懸念される。
また、下記特許文献2には、特定の粒度分布と表面反応性及び/又は多孔度を有するシリカを用いることにより、分散性を改良することが開示されており、シリカの物性として、50〜300m/gのBET比表面積と、シラノール基量とCTAB比表面積との関係が規定され、更に、シリカの製造方法における反応系のpHが規定されている。しかしながら、得られたシリカについてのpHは規定されておらず、実施例で用いられているものも本発明の範囲外のものである。
特開平10−36559号公報 特表2005−500420号公報
本発明者は、シリカの分散性を改良することを目的として鋭意検討していく中で、シリカのシラノール基量を汎用シリカよりも少ない所定の範囲内に規定するとともに、シリカのpHを比較的低い所定の範囲内に規定することで、シリカの分散性が飛躍的に向上し、それにより、ゴム組成物の破断時の抗張積を改良するとともに、スチールコードとの接着性を改良し得ることを見い出した。
すなわち、本発明は、シリカの分散性を改良することで、ゴム破断特性を向上するとともに、スチールコードとの接着性を改良することができるゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積が50〜300m/g、単位表面積当たりのシラノール基量が5〜11個/nmであり、かつ、JIS K6220のB法で測定されるpHが4.5〜6.0であるシリカを5〜100重量部含有するものである。
本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物からなるトレッドを有するものである。また、本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物とスチールコードとからなるゴム−スチールコード複合体を備えるものである。
本発明によれば、上記特定のシリカを配合したことで、シリカの分散性が改良されて、ゴムの破断特性を向上したり、スチールコードとの接着性を改良したりすることが可能となる。
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本発明のゴム組成物において、ジエン系ゴムとしては、特に限定されないが、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
好ましくは、タイヤトレッド用ゴム組成物である場合、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムのいずれか1種又は2種以上の併用であり、より詳細には、天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンド、スチレン−ブタジエンゴム単独、又はスチレン−ブタジエンゴムとブタジエンゴムのブレンドが好ましい。また、スチールコード接着用ゴム組成物である場合、天然ゴム単独であることが好ましい。
本発明のゴム組成物に使用されるシリカは、
(1)BET比表面積:50〜300m/g、
(2)単位表面積当たりのシラノール基(SiOH)量:5〜11個/nm、及び、
(3)JIS K6220のB法で測定されるpH:4.5〜6.0、
の特性を持つものである。
上記(1)のBET比表面積は、ASTM D4820に準拠して測定されるものである。BET比表面積は、100〜250m/gであることが好ましく、より好ましくは、150〜200m/gである。BET比表面積が小さすぎると、トータルのシラノール基が少なくなって、破断特性と、スチールコードとの接着性を確保することが難しくなる。逆に、BET比表面積が大きすぎると、加工性を確保することが難しくなる。
上記(2)の単位表面積当たりのシラノール基量(個/nm)は、BET比表面積とQactualとから下記式(X)により算出されるものである。なお、Qactualは、単位重量当たりのシラノール基量(mmol/g)であり、"Journal of the American Chemical Society"、114巻6412頁(1992年)に記載されたSi−NMRにより算出される。
シラノール基量[個/nm2]=(Qactual[mmol/g]×NA)/S[m2/g] …(X)
式中、NAはアボガドロ定数であり、SはBET比表面積である。
該シラノール基量の規定は、従来の汎用シリカよりもシラノール基量の少ないシリカを用いる趣旨である。シラノール基量を従来よりも少ない上記所定の範囲内に規定することで、破断特性や接着性の向上に寄与し得るシラノール基量を確保しつつ、シリカの分散性を向上させることができる。シラノール基量が11個/nmよりも多いと、分散性が損なわれ、破断時の伸びが低く、破断特性が悪化してしまう。また、シラノール基量が5個/nmよりも少ないと、破断強度が低下して、破断特性が悪化し、また、スチールコードとの接着性も低下する。該シラノール基量は、より好ましくは5〜10個/nmであり、更に好ましくは6〜8個/nmである。
上記(3)のpHは、JIS K6220の7.3.4.2のB法(ガラス電極式卓上pH計(形式I))で測定されるシリカスラリーのpHである(測定温度:20℃)。このように従来の汎用シリカよりも、スラリー状態でのpHが低いシリカを用いることにより、破断特性や接着性の向上効果を高めることができる。pHが6.0よりも大きいと、シラノール基の量が増加し、破断時の伸びが低くなってしまう。また、pHが4.5よりも小さいと、シラノール基の量が減少して、破断強度が低下してしまう。かかるシリカのpHは5〜5.5であることがより好ましい。
従来、シラノール基の少ないシリカは一般に乾式法で製造されていたが、本発明では、湿式法により製造されるものであって、上記(1)〜(3)の特性を備えた湿式シリカを用いることが好ましい。湿式シリカを用いることでコストを低減することもできる。このようなシリカとしては、ローディア社製の「Siloa 72X」が挙げられ、その使用が推奨される。
本発明において、上記シリカは、ジエン系ゴム100重量部に対し、5〜100重量部配合される。該シリカの配合量が5重量部未満では、上記した本発明の効果を充分に発揮することができなくなる。シリカの配合量は、より好ましくは5〜50重量部である。
本発明のゴム組成物には、シリカとともに、必須ではないが充填剤としてカーボンブラックを配合してもよく、カーボンブラックは、ゴム成分100重量部に対して0〜100重量部配合されることが好ましい。また、シリカとカーボンブラックは両者の合計量で20〜150重量部配合されることが好ましい。
本発明のゴム組成物には、上記した各成分の他に、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、活性剤、滑剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
また、特に、スチールコード接着用ゴム組成物である場合、接着界面層の形成促進剤としての有機酸コバルト塩等の有機酸金属塩を配合してもよい。かかる有機酸金属塩を形成する有機酸としては、例えば、ステアリン酸、ナフテン酸、オクチル酸、オレイン酸、マレイン酸、ホウ素含有有機酸などが挙げられる。
また、スチールコード接着用ゴム組成物の場合、メチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミンやメラミン誘導体を配合してもよい。メラミン誘導体としては、メラミンとホルムアルデヒドを反応させて得られるヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、多価メチロールメラミンなどが挙げられる。
また、スチールコード接着用ゴム組成物の場合、ノボラック型フェノール樹脂やレゾルシン、レゾルシン誘導体からなるフェノール系成分を配合してもよい。かかるフェノール系成分は、ゴム中のシリカとスチールコード表面のメッキとの間に介在して両者を結合するように作用するので、ゴムとスチールコードとの接着性を向上することができる。上記ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールとホルムアルデヒドを縮合してなる未変性フェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂)、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂等のアルキル置換フェノール樹脂、カシューナッツ油等のオイルで変性されたオイル変性フェノール樹脂などが挙げられる。また、レゾルシン誘導体としては、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂初期縮合物、レゾルシン・アルキルフェノール共縮合ホルムアルデヒド樹脂などのレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物が挙げられる。
本発明のゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー等の混合機を用いて混練し作成することができる。ゴム組成物の用途は、特に限定されるものではないが、タイヤトレッド用やスチールコード接着用などのタイヤ用ゴム組成物として好適に用いられる。
タイヤトレッド用ゴム組成物の場合、常法に従いタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤのトレッドを形成することができる。
スチールコード接着用ゴム組成物は、空気入りタイヤやベルトコンベアなどのゴム製品において、補強材として用いられる真鍮、ブロンズ、亜鉛等のメッキが施されたスチールコードに対し、その表面を被覆するために用いられるゴム組成物である。すなわち、該スチールコードをゴム組成物で被覆することで、補強材としてのゴム−スチールコード複合体が得られる。
具体的には、上記ゴム組成物とスチールコードとを用いて、常法に従い、スチールカレンダーなどのトッピング装置により、ゴムースチールコード複合体としてのスチールコードトッピング反を製造し、これをベルトやカーカスなどのタイヤ補強部材として用いて、他の部材とともにグリーンタイヤを成形し、加硫することで、実施形態に係る空気入りタイヤを製造することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合に従い、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。表1の各成分の詳細は以下の通りである。
・SSBR:スチレン−ブタジエンゴム、バイエル製「VSL5025−OHM」、
・BR:ブタジエンゴム、宇部興産製「BR150B」、
・シリカ1:東ソーシリカ製「ニップシールAQ」、
・シリカ2:ローディア製「Zeosil 1165MP」、
・シリカ3:ローディア製「Siloa 72X」、
・カーボンブラック:三菱化学製「ダイヤブラック」。
各ゴム組成物には、共通配合として、ジエン系ゴム100重量部に対して、シランカップリング剤(デグサ製「Si75」)5.6重量部、老化防止剤(住友化学製「アンチゲン6C」)2重量部、ステアリン酸(花王製「ルナックS−20」)2重量部、亜鉛華(三井金属鉱業製「亜鉛華1号」)3重量部、プロセスオイル(JOMO製「プロセスオイルX−140」)40重量部、ワックス(日本精鑞製「OZOACE0355」)2重量部、加硫促進剤(住友化学製「ソクシノールCZ」)1.5重量部、加硫促進剤(大内新興化学製「ノクセラーD」)2.0重量部、硫黄(鶴見化学工業製「5%油入微粉末硫黄」)1.0重量部を配合した。
得られた各ゴム組成物について、160℃×30分間の条件で加硫したサンプルを作製して、JIS K6251に準拠した引張試験を行い、補強性としての300%モジュラスと、破断特性としての抗張積(TB(引張強さ)×EB(破断時伸び))を求め、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、補強性、破断特性に優れることを示す。
その結果、表1に示すように、本発明に係る実施例1は、比較例1に対し、用いたシリカのシラノール基量が少なく、またpHも低いため、補強性(モジュラス)が同等でありながら、破断特性が大幅に向上していた。これに対し、比較例2は、配合したシリカの総比表面積は実施例1と同等であるものの、シラノール基量が多いため、破断特性の改良効果が不十分であった。また、比較例3は、シリカのトータルでのシラノール基量は実施例1と同等であるものの、シリカの充填量(総比表面積)が少ないため、補強性に劣り、また破断特性の改良効果も不十分であった。
Figure 2008231271
(実施例2)
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合に従い、スチールコード接着用ゴム組成物を調製した。表2の各成分の詳細は以下の通りである。
・NR:天然ゴム、RSS#3、
・シリカ1:東ソーシリカ製「ニップシールAQ」、
・シリカ2:ローディア製「Zeosil 1165MP」、
・シリカ3:ローディア製「Siloa 72X」、
・カーボンブラック:昭和キャボット製「カーボンブラックN326」。
各ゴム組成物には、共通配合として、ジエン系ゴム100重量部に対して、老化防止剤6C(モンサント製「サントフレックス6PPD」)2重量部、亜鉛華(三井金属鉱業製「亜鉛華3号」)8重量部、ステアリン酸コバルト(日本鉱業製)2重量部、ホウ素含有有機酸コバルト(OMG製「Manobond C22.5、C680C)0.8重量部、加硫促進剤DZ(大内新興化学工業製「ノクセラーDZ−G」)1重量部、レゾルシン・アルキルフェノール・ホルマリン共重合体(住友化学製「スミカノール620」)2重量部、ヘキサメトキシメチルメラミン(三井サイテック製「サイレッツ963L」)4重量部、不溶性硫黄(アクゾ製「クリステックスOT−20」)4.5重量部を配合した。
得られた各ゴム組成物について、160℃×30分間の条件で加硫したサンプルを作製して、JIS K6251に準拠した引張試験を行い、補強性としての300%モジュラスと、破断特性としての抗張積(TB(引張強さ)×EB(破断時伸び))を求め、比較例4の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、補強性、破断特性に優れることを示す。
また、接着特性を評価するために、各ゴム組成物をシーティングして厚み1.0mmのゴムシートを作製した。黄銅メッキが施されたスチールコード(構造:3+8×0.22mm)を12本/25mmの間隔で並べ、上記ゴムシートで挟み込んだものを2枚重ねて、150℃で30分間加硫し、スチールコードが2層存在するゴム−スチールコード複合体を得て、これを25mm幅にカットしてサンプルを作製した。各サンプルについて、初期接着性と湿熱老化後の接着性を次のようにして測定した。
[初期接着性]オートグラフ(インストロン製「5655型」)を用いて2層のスチールコードの剥離力を測定し、比較例4の値を100とした指数で表示した。値が大きいほど接着性がよいことを意味する。
[湿熱老化後の接着性]各サンプルを105℃×96時間のスチーム雰囲気で老化させた後、オートグラフを用いて2層のスチールコードの剥離力を測定し、比較例4の値を100とした指数で表示した。値が大きいほど接着性がよいことを意味する。
その結果、表2に示すように、本発明に係る実施例2は、比較例4に対し、用いたシリカのシラノール基量が少なく、またpHも低いため、補強性(モジュラス)が同等でありながら、破断特性と接着性が大幅に向上していた。これに対し、比較例5は、配合したシリカの総比表面積は実施例2と同等であるものの、シラノール基量が多いため、破断特性の改良効果が不十分であり、また接着性にも劣るものであった。また、比較例6は、シリカのトータルでのシラノール基量は実施例2と同等であるものの、シリカの充填量(総比表面積)が少ないため、補強性及び接着性に劣り、また破断特性の改良効果も不十分であった。
Figure 2008231271
本発明によれば、ゴム組成物の破断特性やスチールコードとの接着性を改良することができるので、トレッド用を始めとする各種空気入りタイヤ用のゴム組成物として、また、スチールコード接着用のゴム組成物として、好適に利用することができ、その他、各種ゴム組成物に利用することができる。

Claims (3)

  1. ジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積が50〜300m/g、単位表面積当たりのシラノール基量が5〜11個/nmであり、かつ、JIS K6220のB法で測定されるpHが4.5〜6.0であるシリカを5〜100重量部含有するゴム組成物。
  2. 請求項1記載のゴム組成物からなるトレッドを有する空気入りタイヤ。
  3. 請求項1記載のゴム組成物とスチールコードとからなるゴム−スチールコード複合体を備える空気入りタイヤ。
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