JP2008231154A - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】無機質充填剤の含有量が高いにもかかわらず、成形流動性に優れ、ゲート部周囲に気泡が残存しにくく、成形後の外観が良好で信頼性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。また、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されている半導体装置である。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)樹脂組成物全体に対し80重量%を超え、90重量%未満の無機質充填剤。
(D)式量500〜2000の水酸基末端のポリアルキレングリコール鎖がポリジメチルシロキサン鎖の側鎖となっているT型,Π型または櫛型の分子であって、上記ポリアルキレングリコール鎖の式量の合計が分子量の50〜70%であるポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン。
【選択図】なし
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。また、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されている半導体装置である。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)樹脂組成物全体に対し80重量%を超え、90重量%未満の無機質充填剤。
(D)式量500〜2000の水酸基末端のポリアルキレングリコール鎖がポリジメチルシロキサン鎖の側鎖となっているT型,Π型または櫛型の分子であって、上記ポリアルキレングリコール鎖の式量の合計が分子量の50〜70%であるポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン。
【選択図】なし
Description
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものであって、詳しくは、無機質充填剤の含有量が高いにもかかわらず、成形流動性に優れ、ゲート部周囲に気泡が残存しにくく、成形後の外観が良好で信頼性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
従来から、トランジスター,IC等の半導体素子は、外部環境からの保護の観点および半導体素子のハンドリングを可能にする観点から、プラスチックパッケージ等により封止され、半導体装置化されている。そして、上記プラスチックパッケージの代表例としては、TO−220パッケージがあげられる。このTO−220パッケージは、一般に、3ピンの端子を有し、ヒートシンクへの接続用の孔付き金属タブを上部に持つものであり、トランジスターなど発熱の大きな半導体素子の封止形態として利用されている。このようなパッケージでは、高い熱伝導性が求められるため、一般に、無機質充填剤の量を多くすることにより対応することがなされている。そして、上記プラスチックパッケージに用いられる封止材料としては、一般に、エポキシ樹脂組成物が使用されている(特許文献1参照)。
特開平11−116774号公報
そこで、上記封止材料を形成するエポキシ樹脂組成物に、無機質充填剤を高含有させると、金型のランナー,ゲート部との密着性よりも樹脂の凝集力が優るので、表面を上滑りするように樹脂組成物が移動するようになる。このようになると樹脂組成物は、ゲート部の形状を維持したまま金型のキャビティー内に押出されるため、ゲート部周囲への樹脂組成物の回り込みが不充分なものとなってしまう。これによりゲート部周囲に気泡が残存し、成形品の外観が悪いものとなる。また、このゲート部周囲での気泡の残存は、パッケージの応力分布に異常をもたらすため、パッケージの変形が生じたり、この部分の樹脂厚が減少するため、透湿しやすくなり、半導体素子の耐湿信頼性を低下させる原因にもなっている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、無機質充填剤の含有量が高いにもかかわらず、成形流動性に優れ、ゲート部周囲に気泡が残存しにくく、成形後の外観が良好で信頼性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置の提供をその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を第一の要旨とする。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)樹脂組成物全体に対し80重量%を超え、90重量%未満の無機質充填剤。
(D)式量500〜2000の水酸基末端のポリアルキレングリコール鎖がポリジメチルシロキサン鎖の側鎖となっているT型,Π型または櫛型の分子であって、上記ポリアルキレングリコール鎖の式量の合計が分子量の50〜70%であるポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)樹脂組成物全体に対し80重量%を超え、90重量%未満の無機質充填剤。
(D)式量500〜2000の水酸基末端のポリアルキレングリコール鎖がポリジメチルシロキサン鎖の側鎖となっているT型,Π型または櫛型の分子であって、上記ポリアルキレングリコール鎖の式量の合計が分子量の50〜70%であるポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン。
そして、本発明は、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を第二の要旨とする。
本発明者らは、無機質充填剤量が多いにもかかわらず、成形外観が良好な封止材料を得るため一連の研究を行った。その過程で、シリコーンオイルに着目し、これを中心に研究を重ねた結果、上記特定のポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(D成分)を用いると、無機質充填剤が多くても、ゲート部周囲に気泡が残存せず、成形外観等が良好になることを見出し本発明に到達した。すなわち、上記特定のポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサンが特異な構造を有することからゲート部周囲金型面への樹脂組成物の広がりが促進され、ゲート部周囲に気泡が残存することがなくなる。これにより、成形外観が良好となると推察される。
なお、本発明においてT型の分子とは、直鎖状のポリジメチルシロキサン鎖にポリアルキレングリコール側鎖が1本のみぶらさがり、全体としてT型構造を有する分子をいい、Π型の分子とは、上記ポリジメチルシロキサン鎖にポリアルキレングリコール側鎖が2本ぶらさがったΠ型構造の分子をいい、さらに櫛型の分子とは、上記ポリジメチルシロキサン鎖にポリアルキレングリコール側鎖が3本以上の多数ぶらさがった櫛型構造の分子をいう。
このように、本発明は、無機質充填剤(C成分)を特定の高含有の割合で含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、特定の構造を有するポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(D成分)を含有してなるエポキシ/フェノール樹脂系の半導体封止用樹脂組成物である。このため、樹脂組成物の成形流動性が制御され、ゲート部周囲に気泡が取り残されることのない成形外観の優れた信頼性の高い半導体装置が得られるようになる。また、気泡の残存のないことから、気泡の存在による樹脂厚減少にもとづく透湿が生じず、半導体素子の耐湿信頼性を保持することができる。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、「エポキシ樹脂組成物」という)は、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、特定の配合量の無機質充填剤(C成分)と、特定構造のポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(D成分)とを用いて得られるものであって、通常、粉末状もしくはこれを打錠したタブレット状になっている。
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではなく、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これらエポキシ樹脂の中でも、特に融点もしくは軟化点が室温を超えており、室温下では固形状もしくは高粘度の液状を示すものを用いることが好ましい。例えば、上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、通常、エポキシ当量150〜250、軟化点50〜130℃のものが好適に用いられ、また、上記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量180〜210、軟化点60〜110℃のものが好適に用いられる。
上記A成分とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)は、上記エポキシ樹脂の硬化剤としての作用を奏するものであれば特に限定するものではなく、従来公知の各種フェノール樹脂が用いられる。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらフェノール樹脂としては、水酸基当量が70〜150、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましい。そして、上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)との好適な組み合わせとしては、エポキシ樹脂(A成分)としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いる場合は、フェノールノボラック樹脂を用いることが好ましい。
上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量となるように配合することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2当量である。
上記A成分およびB成分とともに用いられる上記無機質充填剤(C成分)としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものが用いられる。例えば、石英ガラス粉末、シリカ粉末、カーボンブラック、アルミナ粉末、タルク等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。高熱伝導性が必要な用途では、シリカ粉末、なかでも結晶シリカの破砕粉末(以下、「破砕結晶シリカ粉末」という)を用いることが好ましい。この種の破砕粉末は、粒子の形状に凸凹があり、そのまま用いるとエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなる傾向がみられる。したがって、好適には、破砕結晶シリカ粉末の角部を研磨して除去したり、または、研磨前の破砕結晶シリカ粉末と、球状の無機質粉末とを併用して流動性の改善を実現することが行われている。球状の無機質粉末としては、その入手の容易性、粒子径の多様性、イオン性不純物などが少ない等の点から、球状溶融シリカ粉末が好ましく利用できる。また、静電気除去性やレーザーマーキング性の点から、カーボンブラックを併用することも好ましい。なかでも、レーザーマーキング性の点から、窒素吸着比表面積が30〜150m2/g、静電気特性の点から、DBP吸収量が100〜140cm3/100gのカーボンブラックであることが特に好ましい。
上記無機質充填剤(C成分)の平均粒子径は、0.015〜100μmであることが好ましく、特に好ましくは、0.025〜50μmであり、さらに好ましくは、10〜30μmである。粒子径が上記下限値未満であると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなるため、成形が困難となり、充填できる無機質充填剤の量が少なくなるため、成形品の熱伝導性が低くなってしまう傾向がみられる。逆に、粒子径が上記上限値を超えると、金型の樹脂注入ゲート部に詰まったり、パッケージ中の薄厚部分に進入できなくなったりするため、気泡の発生要因となり、パッケージの外観も流動縞などが生じる傾向がみられ好ましくない。そこで、最大粒子径としては、250μm以下であることが好ましく、特に好ましくは200μm以下である。
無機質充填剤(C成分)の中でも、特に、破砕結晶シリカ粉末の平均粒子径は、5〜80μmであることが好ましく、特に好ましくは10〜60μmである。また、上記破砕結晶シリカ粉末とともに好ましく用いられる球状シリカ粉末の平均粒子径は、最密充填構造の点から、0.5〜10μmであることが好ましい。また、カーボンブラックの平均粒子径は、15〜60nmであることが好ましく、特に好ましくは20〜55nmである。
上記無機質充填剤(C成分)の平均粒子径の測定は、母集団から任意の測定試料を取り出し、市販のレーザー式の粒度分布測定装置を用いて、レーザー光が横断する細管に、無機質充填剤を水に分散させたものを通過させて、光の遮断状況から求める方法で測定することが行われる。より好ましくは、粒子形状写真から画像処理で平均粒子径を算出する顕微鏡型の装置を用いる。この装置では、粒子形状を画像として見ることができるため、破砕結晶シリカ粉末などを観察するのに有用である。また、上記無機質充填剤(C成分)の最大粒子径は、上記レーザー式の粒度分布図から概数を把握することができるが、好ましくは開口サイズの決まった篩を利用して、篩上に残るものの有無で判断する。
上記無機質充填剤(C成分)を2種以上併せて用いる場合には、均一性を確保するため、事前に無機質充填剤同士のみを混合しておくことが好ましい。
そして、上記無機質充填剤(C成分)全体の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の80重量%を超え、90重量%未満の範囲に設定する。すなわち、C成分の配合量が上記下限値以下であると、熱伝導性に劣るのみならず、成形金型の隙間に樹脂がしみ込みやすくバリが発生したり、成型時の収縮が大きく成形品表面に凹部が形成されたりするため成形性に劣るからである。逆に、C成分の配合量が上記上限値以上であると、エポキシ樹脂組成物の流動性が著しく低下し成形性に問題が生じるからである。
シリカ粉末とカーボンブラックとを併用する場合において、これらの配合割合は、上記範囲内において自由に選択可能であるが、相乗効果が特に大きい配合割合は、重量比で、シリカ粉末:カーボンブラック=100:0.2〜100:0.5の範囲である。
本発明では、上記A〜C成分とともに、D成分の特定のポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(以下、「ジメチルシロキサン化合物」という)を用いるのであり、これが最大の特徴である。このジメチルシロキサン化合物(D成分)は、式量500〜2000の水酸基末端のポリアルキレングリコール鎖が、ポリジメチルシロキサン鎖の側鎖となって全体がT型,Π型または櫛型の分子構造となっているものである。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。通常はこれらの混合物であり、T型が30〜60重量%、Π型が残りの大部分を占めることが、効果の点で特に好ましい。一部ポリアルキレングリコール鎖を有しないポリジメチルシロキサンが存在していてもよい。
上記ジメチルシロキサン化合物(D成分)は、例えばつぎのようにして得られる。末端を形成するトリメチルメトキシシラン,ジメチルシロキサン骨格を形成するため、環状のオクタメチルシクロ−1,3,5,7−テトラシロキサン、および、メチルジメトキシハイドロジェンシランを所定の配合比率で配合し、開環・脱アルコール縮重合することにより、1次生成物を得る。この1次生成物にモノアリルポリアルキレングリコールを加え、白金触媒の存在下にSi−HとC=C結合とを付加反応させ、ポリアルキレングリコールを上記1次生成物の側鎖に導入して目的生成物であるD成分を得るという方法等があげられる。
上記1次生成物に添加するモノアリルポリアルキレングリコールは、アリルアルコールに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどの環状アルコールの開環付加反応で得られ、それぞれのポリアルキレンエーテル鎖は、単体重合体、あるいは、ランダム共重合体、ブロック共重合体よりなる。一般的には、エチレンオキサイド重合体、プロピレンオキサイド重合体、あるいは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体となっている。本発明では、その分子量は、500〜2000であり、より好ましくは800〜1500である。
また、上記モノアリルポリアルキレングリコールは、本発明に係る樹脂組成物の樹脂成分(A,B成分)が芳香族環、脂環式環などの疎水性基を多く有するものの場合には、側鎖メチル基を有するプロピレンオキサイド構造を有するプロピレンオキサイド重合体が好ましい。しかし、この重合体は粘度が高くなるため、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとの共重合体がより好ましい。
本発明に係るジメチルシロキサン化合物(D成分)のポリジメチルシロキサン骨格は、先に述べたように、通常、環状のジメチルシロキサン化合物の開環で作られるため、疎水性のテトラシロキサンなどが主鎖中に分散あるいは連続的に分布することとなる。
そして、上記ジメチルシロキサン化合物(D成分)は、その同一分子中に、ポリアルキレングリコール側鎖を複数有するものが、エポキシ樹脂組成物中への固定や、エポキシ樹脂組成物の流動性の制御に有効である。しかし、一分子中におけるポリアルキレングリコール鎖の式量の合計が大きくなる櫛型形状は、粘度が上がりやすいため、一分子中に1つあるいは2つのポリアルキレングリコール鎖を有するT型あるいはΠ型を主体とすることがより好ましい。これによると、親水基の側鎖が少なく、かつ、この親水基は樹脂中に入り込むため、疎水性の主鎖を樹脂組成物の表面に展開しやすくなり、樹脂組成物の金型内での流れを円滑にすることができる。
本発明では、ジメチルシロキサン化合物(D成分)中における1つの水酸基末端ポリアルキレングリコール鎖の式量は500〜2000であり、より好ましくは800〜1500である。すなわち、式量が上記下限値未満であると、樹脂成分との相溶性が悪く、樹脂組成物表面に分離したジメチルシロキサン化合物が存在するため樹脂組成物の表面層のみが滑るからであり、逆に、式量が上記上限値を超えると、離型性が低下したり、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなるからである。
そして、ジメチルシロキサン化合物(D成分)の一分子中におけるポリアルキレングリコール鎖の式量の合計は、ジメチルシロキサン化合物(D成分)分子量の50〜70%であり、より好ましくは60〜70%である。すなわち、1分子中におけるポリアルキレングリコール鎖の割合が上記下限値未満であると、樹脂成分との相溶性が低下して、樹脂組成物表面に分離したジメチルシロキサン化合物が存在するため、成形時に樹脂組成物の表面層のみが滑るのを助長するからである。逆に、上記上限値を超えると、樹脂組成物の表面へのジメチルシロキサン骨格が移動しにくく、表面張力を高めてしまう。このため、離型処理された金型との表面張力の違いから、界面の滑りが存在し、流動性が不安定になりやすく、びびり流動を起こし、成形物の外観が悪くなるためである。
上記ジメチルシロキサン化合物(D成分)の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.03〜3.0重量%の割合に設定することが好ましく、より好ましくは0.05〜2.0重量%である。すなわち、上記ジメチルシロキサン化合物(D成分)の配合量が、上記下限値未満であると、ゲート部周囲の残存気泡が充分に消えず、上記上限値を超えると、樹脂組成物硬化体の強度を低下させてしまう傾向がみられるからである。
本発明に係るジメチルシロキサン化合物(D成分)は、通常、疎水性のポリジメチルシロキサン鎖の主鎖に、この主鎖よりも長い親水性のポリアルキレングリコール鎖が側鎖として分岐している特異な形状を有する。これにより、疎水性基は樹脂組成物表面に留まりながら、親水性基である長いポリアルキレングリコール鎖が、本発明の樹脂組成物の内部にまでほぼ垂直に入り込んでいるため、樹脂組成物の表面に生じた力が、ポリアルキレングリコール鎖を通じて樹脂組成物表面から離れた内部にまで伝達される錨状構造になっている。すなわち、ポリアルキレングリコール鎖は、本発明の樹脂組成物に錨状に入り込んでいることから、表面の動きに合わせ、内部の樹脂組成物も移動しやすくなる。そのため、ゲート部周囲へ樹脂組成物全体が回り込みやすくなる。一方、疎水性基である短いポリジメチルシロキサン鎖は、樹脂組成物表面に存在し、成形流動時に金型面に接するように金型表面を移動することから、表面張力を低下させる。このため、離型処理された金型面への濡れ性が改善し、ゲート部周囲への回り込みが生じやすくなる。さらに、ポリアルキレングリコール鎖は、加圧雰囲気下では樹脂成分に溶け込んだ形であるが、ゲート部からキャビティー内への注入で圧が開放されたときには、樹脂成分と分離し、樹脂組成物全体の体積を膨張させる効果も想定され、樹脂組成物の流れ厚が、ゲート部の出口で広がるので、ゲート部周囲への回り込みを促進することが考えられる。
また、上記ジメチルシロキサン化合物(D成分)は、エポキシ樹脂組成物を構成する有機成分と予備反応させて用いてもよいし、各成分の混合時にそのまま添加してもよい。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記A〜D成分以外に必要に応じて、硬化促進剤、ブロム化エポキシ樹脂等のハロゲン系の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、顔料、シランカップリング剤等の表面処理剤等、他の添加剤を適宜配合することができる。
上記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中では、接着性が優れるとともに保存安定性に優れ、反応時の樹脂の増粘化を抑えるという観点から、エポキシ系シランカップリング剤やメルカプト系シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.05〜2.0重量%の割合に設定することが好ましい。接着力や保存安定性の点から、特に、0.1〜1.0重量%がより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜D成分および必要に応じて、他の添加剤を常法に準じて適宜配合した後、予備混合する。ついで、予備混合したものをミキシングロールや押し出し式の混練機等を用いて加熱状態で溶融混練した後、これを室温下で冷却固化させる。その後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により目的とするエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
なお、上記各成分の混合に先立って、ジメチルシロキサン化合物(D成分)を、エポキシ樹脂(A成分)およびフェノール樹脂(B成分)の少なくとも一方と、事前に混合させることが、樹脂中での分散性を均一にできる点から好ましい。
このようなエポキシ樹脂組成物を用いての半導体素子の封止方法は、特に限定するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができ、半導体装置化することができる。
このようにして得られる半導体装置としては、エポキシ樹脂組成物中に含まれる特定のジメチルシロキサン化合物(D成分)により、エポキシ樹脂組成物の流動性が制御されるとともに、ゲート部周囲への回り込みが生じ、成形物のゲート部周囲に残存気泡がみられないようになる。このため、成形外観が良好で信頼性に優れた半導体パッケージとなり、得られる半導体装置としては信頼性の高いものとなる。
このようにして得られる半導体装置としては、ICやLSI等の半導体装置等があげられる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に先立って下記に示す各成分を準備した。
〔エポキシ樹脂(A成分)〕
オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点60℃)
オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点60℃)
〔フェノール樹脂(B成分)〕
フェノールノボラック型フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量105、軟化点85℃)
フェノールノボラック型フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量105、軟化点85℃)
〔無機質充填剤a(C成分)〕
破砕結晶シリカ粉末(角取り加工品、平均粒子径20μm、最大粒子径180μm、粒度分布にて50μm付近と0.9μm付近にピーク高さ比5:2の2つの極大を有する)
破砕結晶シリカ粉末(角取り加工品、平均粒子径20μm、最大粒子径180μm、粒度分布にて50μm付近と0.9μm付近にピーク高さ比5:2の2つの極大を有する)
〔無機質充填剤b(C成分)〕
球状溶融シリカ粉末(平均粒子径30μm、最大粒子径180μm、粒度分布にて45μm付近と1μm付近にピーク高さ比20:1の2つの極大を有する)
球状溶融シリカ粉末(平均粒子径30μm、最大粒子径180μm、粒度分布にて45μm付近と1μm付近にピーク高さ比20:1の2つの極大を有する)
〔無機質充填剤c(C成分)〕
カーボンブラック(平均粒子径25nm、窒素吸着比表面積110m2 /g、DBP吸着量100cm3 /100g)
カーボンブラック(平均粒子径25nm、窒素吸着比表面積110m2 /g、DBP吸着量100cm3 /100g)
〔ジメチルシロキサン化合物a(D成分)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:2000、水酸基当量:2000、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):50%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約13))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:2000、水酸基当量:2000、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):50%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約13))
〔ジメチルシロキサン化合物b(D成分)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:3300、水酸基当量:1650、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):60%、Π型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約17))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:3300、水酸基当量:1650、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):60%、Π型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約17))
〔ジメチルシロキサン化合物c(D成分)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1450、水酸基当量:1450、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):70%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約19))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1450、水酸基当量:1450、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):70%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約19))
〔ジメチルシロキサン化合物d(D成分)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1000、水酸基当量:1000、ポリエチレングリコール鎖の式量:500、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):60%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約7))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1000、水酸基当量:1000、ポリエチレングリコール鎖の式量:500、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):60%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約7))
〔ジメチルシロキサン化合物e(D成分)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:11000、水酸基当量:3700、ポリエチレングリコール鎖の式量:2000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):55%、櫛型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約67))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:11000、水酸基当量:3700、ポリエチレングリコール鎖の式量:2000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):55%、櫛型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約67))
〔ジメチルシロキサン化合物f(比較例用)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1000、水酸基当量:500、ポリエチレングリコール鎖の式量:350、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):70%、Π型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約4))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1000、水酸基当量:500、ポリエチレングリコール鎖の式量:350、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):70%、Π型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約4))
〔ジメチルシロキサン化合物g(比較例用)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:5000、水酸基当量:2500、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):40%、Π型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約40))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:5000、水酸基当量:2500、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):40%、Π型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約40))
〔ジメチルシロキサン化合物h(比較例用)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1300、水酸基当量:1300、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):75%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約4))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:1300、水酸基当量:1300、ポリエチレングリコール鎖の式量:1000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):75%、T型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約4))
〔ジメチルシロキサン化合物i(比較例用)〕
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:18000、水酸基当量:6000、ポリエチレングリコール鎖の式量:3000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):50%、櫛型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約240))
ポリエチレングリコール変性ポリジメチルシロキサン(分子量:18000、水酸基当量:6000、ポリエチレングリコール鎖の式量:3000、ポリエチレングリコール鎖の合算式量/分子量(%):50%、櫛型構造のジメチルシロキサンを主成分とするポリジメチルシロキサン(ケイ素原子の数は約240))
〔硬化促進剤〕
トリフェニルホスフィン
トリフェニルホスフィン
〔シランカップリング剤〕
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
〔実施例1〜14、比較例1〜7〕
下記の表1〜3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、90〜110℃に加熱したロール混練機に3分間かけて溶融混練することにより溶融物を作製した。つぎに、この溶融物を冷却した後粉砕し、さらにタブレット状に打錠することにより目的とする実施例・比較例用のエポキシ樹脂組成物を得た。なお、無機質充填剤(C成分)の含有量について、エポキシ樹脂組成物全体に対する重量%(小数点以下を四捨五入し、整数値化したもの)を表1〜3に併せて示す。
下記の表1〜3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、90〜110℃に加熱したロール混練機に3分間かけて溶融混練することにより溶融物を作製した。つぎに、この溶融物を冷却した後粉砕し、さらにタブレット状に打錠することにより目的とする実施例・比較例用のエポキシ樹脂組成物を得た。なお、無機質充填剤(C成分)の含有量について、エポキシ樹脂組成物全体に対する重量%(小数点以下を四捨五入し、整数値化したもの)を表1〜3に併せて示す。
このようにして得られた各エポキシ樹脂組成物を用い、トランスファー成形により8mm×20mm×4mmの板状の成形物を作製した。ゲート部は、8mm×4mmの面の一方の面のほぼ中央に位置する、幅4mm,高さ0.2mmの長方形状の孔からなる。ここから、ポット部の樹脂組成物がプランジャーで溶融押出され、そこからこのゲート部に至るランナーを通じて樹脂組成物が移動し、キャビティー内に注入される。
成形物のゲート部周囲の外観を確認し、ゲート部周囲に気泡による凹みの有無を調べた。気泡が見られるものを「×」とし、気泡が見られないものを「○」として評価した。これらの結果および評価を上記の表1〜3に併せて示す。
上記の評価結果から、全ての実施例品において、成形物外観において気泡は観察されず、良好な結果が得られた。これに対して、ジメチルシロキサン化合物が含有されていない比較例1品、およびポリエチレングリコール鎖の式量が500〜2000の範囲外のものを用いる比較例2品および比較例5品において、気泡が観察され成形外観性に劣る結果となった。また、ポリエチレングリコール鎖の式量の合計が分子量の50〜70%の範囲外のものを用いる比較例3品および4品においても、気泡が観察された。さらに、樹脂組成物全体に対して無機質充填剤(C成分)の含有量が80重量%を超え、90重量%未満の範囲にない比較例6品および比較例7品において、比較例6では気泡が観察されたが、比較例7では、流動性が著しく高くなることから、成形物を作製できず評価することができなかった。
Claims (2)
- 下記の(A)〜(D)成分を含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)樹脂組成物全体に対し80重量%を超え、90重量%未満の無機質充填剤。
(D)式量500〜2000の水酸基末端のポリアルキレングリコール鎖がポリジメチルシロキサン鎖の側鎖となっているT型,Π型または櫛型の分子であって、上記ポリアルキレングリコール鎖の式量の合計が分子量の50〜70%であるポリアルキレングリコール変性ポリジメチルシロキサン。 - 請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止してなる半導体装置。
Priority Applications (1)
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JP2007068902A JP2008231154A (ja) | 2007-03-16 | 2007-03-16 | 半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置 |
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-
2007
- 2007-03-16 JP JP2007068902A patent/JP2008231154A/ja active Pending
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