JP2008229607A - フッ素皮膜構造及びその形成方法 - Google Patents

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Koji Asano
康志 浅野
Keita Yanagawa
敬太 柳川
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Abstract

【課題】鉄系基材に適用されるものであって、優れた撥水性を有し、加熱された場合でもその性能を維持することができるフッ素皮膜構造及びその形成方法を提供すること。
【解決手段】鉄系基材2の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜3を有するフッ素皮膜構造1の形成方法は、鉄系基材2上にフッ素を含有するフッ素含有液30を塗布するフッ素含有液塗布工程と、フッ素含有液30を塗布した鉄系基材2に赤外線81を照射して加熱することにより、フッ素含有液30を焼成してフッ素系皮膜3を形成する皮膜焼成工程とを有する。
【選択図】図4

Description

本発明は、鉄系基材の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜を有するフッ素皮膜構造に関する。
従来から、鉄系基材に撥水性を付与する方法として、表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜を形成したフッ素皮膜構造が知られている(特許文献1参照)。このフッ素皮膜構造は、加熱され、防汚性を必要とするもの、例えば燃料噴射ノズル等の自動車部品、フライパンやコンロ等の家庭用製品に広く用いられている。
上記フッ素皮膜構造91を形成するに当たっては、図11に示すごとく、鉄系基材92上にフッ素を含有するフッ素含有液930を塗布した後、そのフッ素含有液930を恒温槽や電気炉等を用いて雰囲気加熱することにより、鉄系基材92上にフッ素系皮膜93を形成する(特許文献1参照)。
しかしながら、上記の方法では、雰囲気加熱を用いるため、フッ素含有液930を雰囲気からの熱80によって表面から加熱することになる。それ故、フッ素含有液930を全体的に均一に加熱して焼成することが困難であり、特に内部において焼成不足の領域(図中の鉄系基材92側の領域X)が生じる。そのため、得られるフッ素系皮膜93は、フッ素の特性である撥水性を充分に発現することができないという問題が生じる。また、フッ素系皮膜93は、充分に焼成されたものでないため、成膜後に加熱された場合にはその性能を維持することができず、撥水性が低下してしまうという問題が生じる。
このようなことから、鉄系基材に適用されるものであって、優れた撥水性を有し、加熱された場合でもその性能を維持することができるフッ素皮膜構造及びその形成方法が望まれている。
特許第3225860号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、鉄系基材に適用されるものであって、優れた撥水性を有し、加熱された場合でもその性能を維持することができるフッ素皮膜構造及びその形成方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、鉄系基材の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜を有するフッ素皮膜構造を形成する方法において、
上記鉄系基材上にフッ素を含有するフッ素含有液を塗布するフッ素含有液塗布工程と、
上記フッ素含有液を塗布した上記鉄系基材に赤外線を照射して加熱することにより、上記鉄系基材上に上記フッ素系皮膜を形成する皮膜焼成工程とを有することを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法にある(請求項1)。
本発明のフッ素皮膜構造の形成方法においては、上記のごとく、フッ素含有液塗布工程と皮膜焼成工程とを行う。該皮膜焼成工程では、上記フッ素含有液が塗布された状態の上記鉄系基材に赤外線を照射する。そして、主に、この赤外線によって加熱された上記鉄系基材からの熱によって、該鉄系基材上の上記フッ素含有液を内部から加熱して焼成し、上記フッ素系皮膜を形成する。
そのため、従来のように雰囲気加熱等によって上記フッ素含有液を主に表面から加熱する場合に比べて、上記フッ素含有液を内部から充分に加熱して焼成することができる。これにより、上記鉄系基材上に形成される上記フッ素系皮膜は、焼成不足の領域を生じることなく、均一に成膜されたものとなる。それ故、上記フッ素系皮膜は、フッ素の特性である撥水性を充分に発現することができる。また、上記フッ素系皮膜は、充分に焼成されたものとなるため、成膜後に加熱された場合でも、その性能を維持することができる。
このように、本発明によれば、鉄系基材の表面に、上記の性能を有するフッ素系皮膜を形成することができる。つまり、鉄系基材に適用されるものであって、優れた撥水性を有し、加熱された場合でもその性能を維持することができるフッ素皮膜構造を得ることができる。
第2の発明は、鉄系基材の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜を有するフッ素皮膜構造において、
該フッ素皮膜構造は、上記第1の発明のフッ素皮膜構造の形成方法により形成してなることを特徴とするフッ素皮膜構造にある(請求項8)。
本発明のフッ素皮膜構造は、上記第1の発明のフッ素皮膜構造の形成方法により形成してなるものである。そのため、上記フッ素皮膜構造は、鉄系基材に適用されるものであって、優れた撥水性を有し、加熱された場合でもその性能を維持することができるものとなる。
上記第1の発明においては、上記フッ素含有液塗布工程では、上記鉄系基材を上記フッ素含有液に浸漬して引き上げることにより、上記鉄系基材上に上記フッ素含有液を塗布することが好ましい(請求項2)。すなわち、浸漬法を用いて、上記鉄系基材上に上記フッ素含有液を塗布(コーティング)することが好ましい。
この場合には、上記鉄系基材上に上記フッ素含有液を均一に塗布することができる。
また、上記フッ素含有液塗布工程では、上記鉄系基材を上記フッ素含有液から引き上げ速度10〜200mm/minで引き上げることが好ましい(請求項3)。
上記引き上げ速度が10mm/min未満の場合には、上記フッ素含有液の塗布量が少なくなり、形成するフッ素系皮膜の膜厚を充分に確保することができないおそれがある。そのため、膜厚の制御が困難となり、膜厚が不均一となるおそれがある。一方、200mm/minを超える場合には、上記フッ素含有液の塗布量が多くなり、形成するフッ素系皮膜の剥離が生じ易くなる等、耐久性が低下するおそれがある。
また、上記フッ素含有液塗布工程では、上記フッ素含有液に浸漬した上記鉄系基材の引き上げ速度を変えることにより、上記鉄系基材に対する上記フッ素含有液の塗布量を調整することができる。そして、これにより、形成するフッ素系皮膜の膜厚を制御することができる。
また、上記フッ素含有液塗布工程では、上記鉄系基材上に上記フッ素含有液を塗布する方法として、上記の浸漬法以外にも、スピンコート法やスプレー法等の公知の方法を用いることができる。
また、上記皮膜焼成工程では、上記フッ素含有液は、主に赤外線によって加熱された上記鉄系基材からの熱によって加熱されるが、多少は赤外線から直接受ける熱によって表面又は内部から加熱される。
また、上記皮膜焼成工程では、上記鉄系基材の加熱温度を280〜340℃とすることが好ましい(請求項4)。
上記の加熱温度が280℃未満の場合には、上記鉄系基材上に塗布された上記フッ素含有液を充分に加熱して焼成することができないおそれがある。そのため、形成されるフッ素系皮膜中に焼成不足の領域が生じ、密着性が低下するおそれがある。一方、340℃を超える場合には、上記フッ素含有液に含まれるフッ素の分解が生じるおそれがある。そのため、形成されるフッ素系皮膜は、撥水性を充分に得ることができないおそれがある。
したがって、上記フッ素皮膜構造の撥水性を充分に得るためには、上記皮膜焼成工程では、上記鉄系基材の加熱温度を295〜330℃とすることがより好ましい(請求項5)。
また、上記フッ素含有液は、フルオロアルキルシランを含有することが好ましい(請求項6)。
この場合には、形成されるフッ素系皮膜は、フッ素の特性である撥水性を充分に有するものとなる。
また、上記フッ素系皮膜の厚みは、10〜500nmであることが好ましい(請求項7)。
上記フッ素系皮膜の厚みが10nm未満の場合には、上記フッ素系皮膜の膜厚の制御が困難となり、膜厚が不均一となるおそれがある。一方、500nmを超える場合には、上記フッ素系皮膜の剥離が生じ易くなる等、耐久性が低下するおそれがある。
(実施例1)
本発明の実施例にかかるフッ素皮膜構造の形成方法について、図を用いて説明する。
本例において形成するフッ素皮膜構造1は、図1に示すごとく、鉄系基材2の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜3を有するものである。
上記フッ素皮膜構造1を形成するに当たっては、図2に示すごとく、鉄系基材2上にフッ素を含有するフッ素含有液30をコーティングするフッ素含有液塗布工程と、図3に示すごとく、フッ素含有液30をコーティングした鉄系基材2に赤外線81を照射して加熱することにより、フッ素含有液30を焼成してフッ素系皮膜3を形成する皮膜焼成工程とを行う。
以下、これを詳説する。
まず、フッ素皮膜構造1の基材となる鉄系基材2を準備する。本例では、鉄系基材2として、浸炭処理を施したSCM420(JIS 4105、クロムモリブデン鋼)を用いる。鉄系基材2は、表面粗度Rzが1μm以下(鏡面状態)となるように、予め表面を研磨しておく。
次いで、鉄系基材2をエタノール中に浸漬し、常温、10分間の条件で超音波洗浄を行う。さらに、鉄系基材2をアセトン中に浸漬し、常温、10分間の条件で超音波洗浄を行う。
次いで、フッ素含有液塗布工程を行う。
本工程では、図2のコーティング装置4を用いて行う。コーティング装置4は、同図に示すごとく、モータ41とモータ41によって所定の速度で上下動させることができる可動部42とを備えている。
フッ素含有液塗布工程では、同図に示すごとく、まず、鉄系基材2を保持具43に保持した後、コーティング装置4の可動部42にセットする。そして、可動部42を下方に動かし、フルオロアルキルシランを含有するフッ素含有液30(デュポン株式会社製、ゾニールTCコート:TC−20)中に鉄系基材2を静かに浸漬する。このとき、フッ素系皮膜3を形成したい面をフッ素含有液30の液面に対して垂直にして浸漬する。その後、可動部42を上方に動かし、鉄系基材2を一定速度(30mm/min)でフッ素含有液30から引き上げる。これにより、鉄系基材2上にフッ素含有液30をコーティングする。
次いで、皮膜焼成工程を行う。
皮膜焼成工程では、図3に示すごとく、まず、フッ素含有液30をコーティングした鉄系基材2を赤外線(IR)焼成炉(日本ガイシ製、インフラスタインヒータ)5内のサンプル台51上の支持具52にセットする。そして、鉄系基材2に対してヒータ53から赤外線81を照射し、鉄系基材2の温度を280℃にした状態で20分保持する。鉄系基材2の温度は、鉄系基材2の裏面に取り付けられた熱電対により測定した。また、このとき、図4に示すごとく、主に、この赤外線81によって加熱された鉄系基材2からの熱80によって、鉄系基材2上のフッ素含有液30を内部から加熱して焼成する。なお、多少は赤外線81から直接受ける熱によって表面又は内部から加熱される。その後、鉄系基材2を冷却し、鉄系基材2上にフッ素系皮膜3を形成する。
以上により、図1のフッ素皮膜構造1を得る。
形成されたフッ素皮膜構造1は、図1に示すごとく、鉄(Fe)を主成分とする鉄系基材2の表面に、フッ素(F)を含有してなるフッ素系皮膜3を有する。フッ素系皮膜3の厚みは、20nmである。
本例のフッ素系皮膜3は、同図に示すごとく、CF3(CF2m(CH2nSi(OR)3(式中のR:炭素数6以下の有機基、m:0〜11の整数、n:0又は2〜6の整数)で表される化合物を含むフルオロアルキルシラン(FAS)膜である。フッ素系皮膜3は、鉄系基材2側から酸化シリコン(SiO2、SiO)、アルキル基(CH2)、フルオロカーボン(CF3、CF2)を含んで構成されている。
次に、本例のフッ素皮膜構造1の形成方法における作用効果について説明する。
本例のフッ素皮膜構造1の形成方法において、皮膜焼成工程では、図4に示すごとく、フッ素含有液30がコーティングされた状態の鉄系基材2に赤外線81を照射する。そして、主に、この赤外線81によって加熱された鉄系基材2からの熱80によって、鉄系基材2上のフッ素含有液30を内部から加熱して焼成し、フッ素系皮膜3を形成する。
そのため、従来のように雰囲気加熱等によってフッ素含有液30を主に表面から加熱する場合に比べて、フッ素含有液30を内部から充分に加熱して焼成することができる。これにより、鉄系基材2上に形成されるフッ素系皮膜3は、焼成不足の領域を生じることなく、均一に成膜されたものとなる。それ故、フッ素系皮膜3は、フッ素の特性である撥水性を充分に発現することができる。また、フッ素系皮膜3は、充分に焼成されたものとなるため、成膜後に加熱された場合でも、その性能を維持することができる。
このように、本例によれば、鉄系基材2の表面に、上記の性能を有するフッ素系皮膜3を形成することができる。つまり、鉄系基材2に適用されるものであって、優れた撥水性を有し、加熱された場合でもその性能を維持することができるフッ素皮膜構造1を形成することができる。
また、本例において、フッ素含有液塗布工程では、鉄系基材2をフッ素含有液30に浸漬し、引き上げ速度30mm/minで引き上げる。そのため、鉄系基材2上にフッ素含有液30を均一にコーティングすることができる。そして、フッ素系皮膜3の膜厚を充分に確保することができると共に、均一な膜厚を実現することができる。
なお、フッ素含有液塗布工程では、フッ素含有液30に浸漬した鉄系基材2の引き上げ速度を変えることにより、鉄系基材2に対するフッ素含有液30の塗布量を調整することができる。これにより、フッ素系皮膜3の膜厚を制御することができる。
また、本例では、浸漬法を用いて鉄系基材2にフッ素含有液30をコーティングしたが、スピンコート法やスプレー法等を用いてコーティングすることもできる。
また、皮膜焼成工程では、鉄系基材2を280℃で加熱している。これにより、鉄系基材2上にコーティングされたフッ素含有液30を充分に加熱して焼成することができる。よって、得られるフッ素系皮膜3は、撥水性を充分に有するものとなる。また、成膜後に加熱された場合でも、その性能を充分に維持することができる。
(実施例2)
本例では、実施例1において赤外線加熱によりフッ素系皮膜を形成したフッ素皮膜構造(本発明品)における表面状態及び撥水性の評価を行った。
また、比較として、従来のように雰囲気加熱によりフッ素系皮膜を形成したフッ素皮膜構造(比較品)を準備し、同様の評価を行った。
まず、フッ素皮膜構造の表面状態の評価方法について説明する。
フッ素皮膜構造の表面状態は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いてフッ素系皮膜表面の元素及び化学結合状態を測定した。XPS測定を本例では、XPSの測定を鉄系基材の加熱処理前後において測定した。なお、加熱処理条件は、250℃、50時間とした。また、加熱処理は、電気炉(アドバンテック東洋製、KL−100型)を用いて行った。
本発明品のXPS測定結果を図5((a):加熱処理前、(b):加熱処理後)、比較品のXPS測定結果を図6((a)加熱処理前、(b)加熱処理後)に示す。
これらの図は、縦軸にピーク強度(Normalized Intensity)、横軸に結合エネルギー(Binding Energy)(eV)をとったものである。
比較品(B1:加熱処理前、B2:加熱処理後)は、図6(a)、(b)から知られるように、加熱処理後においてフルオロカーボン(CF3、CF2)のピークがほとんどみられない。つまり、加熱処理前にフッ素系皮膜表面に存在していたフッ素(F)は、加熱処理後においてほとんど存在していないことがわかる。
一方、本発明品(A1:加熱処理前、A2:加熱処理後)は、図5(a)、(b)から知られるように、フルオロカーボン(CF3、CF2)のピークは低下がみられるものの、依然として高いピークを示している。つまり、加熱処理前にフッ素系皮膜表面に存在していたフッ素(F)は、加熱処理後においても依然として安定的に存在していることがわかる。
次に、フッ素皮膜構造の撥水性の評価方法について説明する。
フッ素皮膜構造の撥水性は、表面自由エネルギー測定装置(協和界面化学社製、CA−VE型)を用いて、シリンジ径:φ0.7mm、測定液滴量:3〜4μl、液滴測定法:θ/2法、測定接触角:平行接触角の条件で対水接触角を測定する。本例では、対水接触角の測定を鉄系基材の加熱処理前後において測定した。なお、加熱処理条件は、250℃、50時間とした。
対水接触角の測定結果を図7に示す。
同図から知られるように、比較品(B3)は、加熱処理後に対水接触角が大きく低下している。つまり、加熱によって撥水性が大きく低下したことを示している。一方、本発明品(A3)は、比較品に比べて加熱処理後の対水接触角の低下が小さい。つまり、加熱されても撥水性を維持していることが分かる。
(実施例3)
本例は、実施例1と同様の方法で形成したフッ素皮膜構造における撥水性及び表面の元素量について評価を行った例である。
本例では、実施例1と異なり、皮膜焼成工程における赤外線による鉄系基材の加熱温度を変化させてフッ素系皮膜を形成し、得られたフッ素皮膜構造について評価を行った。
具体的には、図8(a)、(b)に示すごとく、フッ素含有液30をコーティングした鉄系基材2を赤外線焼成炉5内のサンプル台51上のSUS製の受け皿54にセットした。そして、鉄系基材2に対してヒータ53から赤外線81を照射し、鉄系基材2の温度を所定の温度(200〜380℃)にした状態で10分保持した。その後、鉄系基材2を冷却し、鉄系基材2上にフッ素系皮膜3(図1)を形成した。
なお、鉄系基材2の温度は、受け皿54の裏面に耐熱テープ55により取り付けられた熱電対56を温度測定装置57につなげて測定した。本例では、SUS製の受け皿54の温度を受け皿54にセットした鉄系基材2の温度に代用した。
また、撥水性の評価は、基本的には実施例2と同様の方法であり、対水接触角の測定を鉄系基材の加熱処理前後において行った。加熱処理条件は、250℃、50時間とした。
また、表面の元素量の評価は、基本的には実施例2と同様の方法であり、XPSの測定を鉄系基材2の加熱処理前後において行い、フッ素皮膜構造の表面の元素量(フッ素(F)、ケイ素(Si)、酸素(O)、鉄(Fe))を求めた。加熱処理条件は、250℃、50時間とした。
以下、測定結果について説明する。
対水接触角の測定結果を図9に示す。同図は、縦軸に対水接触角(°)、横軸に赤外線による鉄系基材の加熱温度(℃)をとったものである。
同図から知られるように、加熱処理前のフッ素皮膜構造(C1)は、赤外線による鉄系基材の加熱温度が310℃を超えたあたりで対水接触角が小さくなっていく。
一方、加熱処理後のフッ素皮膜構造(C2)は、280℃付近から対水接触角が大きくなり、310℃付近で最大となる。そして、320℃を超えたあたりから小さくなり、340℃を超えたあたりから一定となる。
この結果から、加熱された場合であっても高い撥水性を維持するためには、皮膜焼成工程において、赤外線による鉄系基材の加熱温度を280〜340℃の範囲内にすることが好ましいことがわかる。
さらに、より一層高い撥水性を維持するためには、295〜330℃の範囲内とすればよいことがわかる。
次に、XPS測定結果を図10((a):加熱処理前、(b):加熱処理後)に示す。同図は、縦軸に元素量(atm%)、横軸に赤外線による鉄系基材の加熱温度(℃)をとったものである。
図10(a)から知られるように、加熱処理前のフッ素皮膜構造は、赤外線による加熱温度が高くなるほど、フッ素(F)の量が徐々に少なくなっており、350℃ではほぼ0%近くなっている。また、シリコン(Si)の量は逆に増えている。
これにより、赤外線による加熱温度が高い場合には、フッ素系皮膜形成までにフッ素の分解が進み、フッ素の量が少なくなると推測される。そのため、撥水性が低下するおそれがある。一方、赤外線による加熱温度が低い場合には、フッ素系皮膜と鉄系基材との結合を促進させるシリコンの量が少ないため、フッ素系皮膜の密着性が低くなると推測される。
また、図10(b)から知られるように、赤外線による鉄系基材の加熱温度を280〜340℃の範囲内にてフッ素系皮膜を形成した場合、加熱処理後のフッ素皮膜構造は、加熱処理しているために加熱処理前ほどフッ素(F)の量は多くないが、加熱温度が高くなっても充分な量を有している。
これにより、赤外線による加熱温度が低い場合には、フッ素系皮膜における鉄系基材側のシリコンを含有する層と表面側のフッ素を含有する層とが加熱処理によって鉄系基材から同時に脱離されるため、フッ素の量が少なくなると推測される。一方、赤外線による加熱温度を280℃以上にしてフッ素系皮膜を形成した場合には、フッ素系皮膜と鉄系基材との結合を促進させるシリコンを含有する層が鉄系基材側に形成され、密着性が高くなると推測される。そのため、フッ素系皮膜における鉄系基材側のシリコンを含有する層と表面側のフッ素を含有する層とが加熱処理によって鉄系基材から同時に脱離されることを抑制することができ、フッ素の量が維持される(増える)と推測される。
よって、図9に示した対水接触角の評価に加えて、図10に示したフッ素皮膜構造の表面の元素量(特にフッ素量)の評価結果から、皮膜焼成工程において赤外線による鉄系基材の加熱温度を280〜340℃とすることが好ましいことがわかった。この温度範囲では、加熱されても対水接触角が大きく、フッ素量も充分であるため、撥水性を高い状態で維持することができる。
さらには、皮膜焼成工程において赤外線による鉄系基材の加熱温度を295〜330℃とすることがより好ましいことがわかった。この温度範囲では、特に加熱処理後の対水接触角が大きく、フッ素量も充分であるため、加熱されても撥水性をより高い状態で維持することができる。
実施例1における、フッ素皮膜構造を示す説明図。 実施例1における、フッ素含有液塗布工程を示す説明図。 実施例1における、皮膜焼成工程を示す説明図。 実施例1における、フッ素含有液が加熱・焼成される様子を示す説明図。 実施例2における、本発明品のXPS測定結果((a)加熱処理前、(b)加熱処理後)を示す説明図。 実施例2における、比較品のXPS測定結果((a)加熱処理前、(b)加熱処理後)を示す説明図。 実施例2における、対水接触角の測定結果を示す説明図。 実施例3における、(a)皮膜焼成工程を示す説明図、(b)熱電対の取り付け位置を示す説明図。 実施例3における、対水接触角の測定結果を示す説明図。 実施例3における、フッ素皮膜構造の表面の元素量と赤外線による基材の加熱温度との関係((a)加熱処理前、(b)加熱処理後)を示す説明図。 従来における、フッ素含有液が加熱・焼成される様子を示す説明図。
符号の説明
1 フッ素皮膜構造
2 鉄系基材
3 フッ素系皮膜
30 フッ素含有液
81 赤外線

Claims (8)

  1. 鉄系基材の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜を有するフッ素皮膜構造を形成する方法において、
    上記鉄系基材上にフッ素を含有するフッ素含有液を塗布するフッ素含有液塗布工程と、
    上記フッ素含有液を塗布した上記鉄系基材に赤外線を照射して加熱することにより、上記フッ素含有液を焼成して上記フッ素系皮膜を形成する皮膜焼成工程とを有することを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  2. 請求項1において、上記フッ素含有液塗布工程では、上記鉄系基材を上記フッ素含有液に浸漬して引き上げることにより、上記鉄系基材上に上記フッ素含有液を塗布することを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  3. 請求項2において、上記フッ素含有液塗布工程では、上記鉄系基材を上記フッ素含有液から引き上げ速度10〜200mm/minで引き上げることを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記皮膜焼成工程では、上記鉄系基材の加熱温度を280〜340℃であることを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  5. 請求項4において、上記皮膜焼成工程では、上記鉄系基材の加熱温度を295〜330℃であることを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、上記フッ素含有液は、フルオロアルキルシランを含有することを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において、上記フッ素系皮膜の厚みは、10〜500nmであることを特徴とするフッ素皮膜構造の形成方法。
  8. 鉄系基材の表面にフッ素を含有してなるフッ素系皮膜を有するフッ素皮膜構造において、
    該フッ素皮膜構造は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフッ素皮膜構造の形成方法により形成してなることを特徴とするフッ素皮膜構造。
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