JP2003039018A - 熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法、熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材、および時計 - Google Patents

熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法、熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材、および時計

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JP2003039018A
JP2003039018A JP2001229990A JP2001229990A JP2003039018A JP 2003039018 A JP2003039018 A JP 2003039018A JP 2001229990 A JP2001229990 A JP 2001229990A JP 2001229990 A JP2001229990 A JP 2001229990A JP 2003039018 A JP2003039018 A JP 2003039018A
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武 藤城
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Abstract

(57)【要約】 【課題】適用できる母材の種類に制限がなく、かつ焼成
作業を簡単にできるとともに、省スペース化およびコス
トダウンを容易に図ることができる熱可塑性フッ素樹脂
膜の形成方法、熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材、お
よび時計を提供すること。 【解決手段】多数の熱可塑性フッ素樹脂粒子Fpを歯車
332表面に付着させた後、歯車332表面に付着した
フッ素樹脂粒子Fpに光を照射して、当該歯車332の
歯面332Aにフッ素樹脂膜Ffを焼成した。このよう
に、フッ素樹脂粒子Fpで光が遮られることで、歯車3
32に直接光が照射されないから、歯車332自体の温
度上昇を小さくできて、熱エネルギによる歯車332の
ダメージを最小限とすることができ、使用できる歯車3
32の材質範囲を広げることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性フッ素樹
脂膜の形成方法、熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材、
および時計に関する。
【0002】
【背景技術】従来より、フッ素樹脂は、耐熱性や、耐薬
品性、非粘着性、撥水撥油性、電気絶縁性、低摩擦特性
等の種々の特性から、塗料やコーティング材料としてよ
く利用されており、母材表面をフッ素樹脂膜で被覆する
ことが知られている。この母材表面へのフッ素樹脂膜の
形成は、多数のフッ素樹脂の粒子を母材表面に付着させ
ることによって行われている。
【0003】フッ素樹脂の粒子を付着させる方法として
は、以下の方法が提案されている。 1)減圧(真空)容器中において、プラズマ中のイオン
で、フッ素樹脂表面の粒子をスパッタし(はじき飛ば
し)、このスパッタされた粒子を母材表面に付着させて
フッ素樹脂膜を形成するスパッタ法。 2)減圧(真空)容器中において、プラズマ中のイオン
で、母材表面をスパッタして清浄し、当該母材表面に、
溶融蒸発させたフッ素樹脂を付着させてフッ素樹脂膜を
形成するイオンプレーティング法。
【0004】3)接着剤を介して母材表面に焼成した四
フッ化エチレン樹脂(以下、PTFEという)フィルム
を接着させることにより、フッ素樹脂膜を母材表面に形
成する方法(特開平6−343924号公報参照)。 4)母材表面に、未焼成ポリテトラフルオロエチレン層
を介して、焼成したPTFE層を仮着し、その後未焼成
ポリテトラフルオロエチレンを、その融点以上の温度に
加熱して焼成することにより、フッ素樹脂膜を母材表面
に形成する方法(特開平7−276578号公報参
照)。
【0005】5)固体潤滑剤としてフッ素樹脂を用いた
共析メッキを、母材表面に施す方法(特開2001−1
24081号公報、特開2001−124082号公報
参照参照)。メッキ層表面のフッ素樹脂の粒子は、物理
吸着またはアンカー効果によってメッキ層表面に留まっ
ている。 6)圧縮空気や遠心力などを用いて、フッ素樹脂の粒子
を母材表面に吹き付けて付着させることにより、フッ素
樹脂膜を母材表面に形成する方法(特開平6−1090
22号公報参照)。
【0006】7)フッ素樹脂の粒子を溶媒中に分散し、
この分散液中に、母材を浸漬することにより、フッ素樹
脂膜を母材表面に形成する方法(特開平6−34144
4号公報参照)。 8)フッ素樹脂の粒子を溶媒中に分散し、さらにバイン
ダを添加した分散液中に母材を浸漬することにより、フ
ッ素樹脂膜を母材表面に形成する方法(特開平7−22
9975号公報参照)。
【0007】ところで、フッ素樹脂は非粘着性を有する
ため、他の物質との接着性が悪い。このため、母材表面
にフッ素樹脂膜を形成する場合には、通常、上述した
1)〜8)のいずれかの方法によって、母材表面にフッ
素樹脂の粒子を付着させた後、フッ素樹脂の粒子に熱エ
ネルギを与えて溶融し、フッ素樹脂膜を母材に焼成する
ことで、フッ素樹脂膜と母材との接着性を良好にするこ
とが行われている。
【0008】フッ素樹脂膜と母材との接着性を良好にす
る、フッ素樹脂膜の焼成方法としては、以下のA)〜
C)の方法が知られている。ここで、フッ素樹脂膜を焼
成する際には、フッ素樹脂の粒子を溶融することが必要
になるので、フッ素樹脂として熱可塑性フッ素樹脂が採
用される。 A)表面に熱可塑性フッ素樹脂の粒子を付着させた母材
を電気炉内に入れ、加熱することにより熱可塑性フッ素
樹脂の粒子を溶融する方法。 B)表面に熱可塑性フッ素樹脂の粒子を付着させた母材
に熱風を当てて加熱することにより、熱可塑性フッ素樹
脂の粒子を溶融する方法。 C)加熱コイルに高周波電流を通じ、母材表面に誘導電
流を起こし、当該母材表面で発生する熱で熱可塑性フッ
素樹脂の粒子を加熱して溶融する方法。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たA)〜C)の焼成方法には、以下のような問題があ
る。 A)の焼成方法では、電気炉の大きさによって、母材の
大きさや形状等が制限されるため、適用できる母材の種
類が限られるという問題がある。 B)の焼成方法では、熱風の発生源と母材との距離によ
って、母材に当たる熱風温度が著しく変化するため、温
度管理が難しく、焼成作業が煩雑になるという問題があ
る。 C)の焼成方法は、母材の材質が、誘導電流が発生しな
いような材質であった場合には適用できず、適用できる
母材の種類が限られるという問題がある。
【0010】また、A)〜C)の焼成方法では、いずれ
も母材自体に熱エネルギを与えることになるため、熱エ
ネルギによってダメージを受けるような材質の母材に
は、A)〜C)の方法を適用できないという問題があ
る。さらに、A)〜C)の焼成方法では、電気炉や、熱
風の発生源と母材とを1つの空間内に収めるハウス、母
材表面に誘導電流を起こさせるための装置等の大がかり
な装置が必要となるため、省スペース化およびコストダ
ウンが図りづらいという問題がある。
【0011】本発明の目的は、適用できる母材の種類に
制限がなく、かつ焼成作業を簡単にできるとともに、省
スペース化およびコストダウンを容易に図ることができ
る熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法、熱可塑性フッ素樹
脂膜を有した部材、および時計を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の熱可塑性フッ素
樹脂膜の形成方法は、多数の熱可塑性フッ素樹脂の粒子
を母材表面に付着させる粒子付着工程と、前記粒子付着
工程の後、前記母材表面に付着した熱可塑性フッ素樹脂
の粒子に光を照射して、当該母材表面に熱可塑性フッ素
樹脂膜を焼成する光照射工程とを備えていることを特徴
とするものである。
【0013】熱可塑性フッ素樹脂としては、四フッ化エ
チレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフル
オロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、四フッ
化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(FE
P)、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETF
E)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、三フ
ッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTF
E)、フッ化ビニリデン樹脂(PVdF)、フッ化ビニ
ル樹脂(PVF)等の熱可塑性フッ素樹脂が採用でき
る。また、粒子付着工程において、母材表面に多数の熱
可塑性フッ素樹脂の粒子を付着させる方法としては、上
述した1)〜8)の方法のうち、いずれを採用してもよ
い。光としては、紫外線、可視光線、および赤外線の全
ての波長域の光を採用でき、単色光および多色光のいず
れであってもよく、また、レーザのように位相の揃った
光、および電灯のように位相の揃っていない光のいずれ
であってもよい。ここで、熱可塑性フッ素樹脂および光
の種類を選択する際には、熱可塑性フッ素樹脂の光透過
率や、光の波長に応じて選択することが望ましく、具体
的には、たとえば、熱可塑性フッ素樹脂としてPTFE
を採用した場合、PTFEは可視光線から赤外線までの
波長範囲の光をよく吸収するので、その範囲内の波長を
有した光を採用することが望ましい。
【0014】この発明によれば、粒子付着工程で多数の
熱可塑性フッ素樹脂の粒子を母材表面に付着させた後、
光照射工程で、母材表面に付着したフッ素樹脂の粒子に
光を照射し、光エネルギをフッ素樹脂の粒子に吸収させ
ることによって、フッ素樹脂の粒子のみを加熱して溶融
させることで、母材表面にフッ素樹脂膜を焼成できるよ
うになる。本発明では、光を照射することによってフッ
素樹脂の粒子を溶融しているので、母材の材質に関係な
く、フッ素樹脂の粒子を加熱・溶融でき、フッ素樹脂膜
を焼成できるようになる。また、フッ素樹脂の粒子で光
が遮られることによって、母材は直接光が照射されない
から、母材自体の温度上昇を小さくできて、熱エネルギ
による母材のダメージを最小限とすることができ、使用
できる母材の材質範囲を広げることができる。さらに、
たとえば白熱灯や、ハロゲンランプ、レーザ発振器等の
光を発する光源装置を用意すれば、本発明に係る熱可塑
性フッ素樹脂膜の形成方法を実施できるので、大がかり
な装置を不要にでき、省スペース化およびコストダウン
を容易に図ることができる。そのうえ、上述したA),
B)の方法と異なり、電気炉内やハウス内に母材を入れ
る必要がないから、母材の形状や大きさに制限されず、
あらゆる種類の母材に適用できる。また、照射する光の
エネルギ密度を調整することによって、熱可塑性フッ素
樹脂の粒子の加熱温度を適宜設定できるから、温度管理
が容易に行え、上述したB)の方法と異なって、焼成作
業を簡単にできる。
【0015】本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法
では、前記母材の材質は、熱エネルギが与えられること
によって物性が変化する材質であることが望ましい。こ
のように、熱エネルギが与えられることによって物性が
変化する材質の母材に対して、母材に与える熱エネルギ
を最小限とすることができる本発明の熱可塑性フッ素樹
脂膜の成形方法を適用すれば、本発明の有用性が高い。
【0016】本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法
では、前記母材の材質は、焼入れ鋼であることが望まし
い。母材の材質が、焼入れを施して硬化処理した鋼であ
る場合に、従来のA)〜C)の焼成方法を採用すると、
母材が一定時間、フッ素樹脂の溶融温度で加熱され、そ
の後、溶融したフッ素樹脂の粒子を硬化するために徐冷
されるから、母材に焼きなましが施されることとなる。
このため、母材が軟化して所望の硬度が得られない可能
性がある。本発明に係る熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方
法では、フッ素樹脂膜を焼成する際、母材に与える熱エ
ネルギを最小限に抑えることができるから、焼入れ鋼に
本方法を適用した場合、母材の焼きなましを防止できる
ようになる。
【0017】ここで、焼入れ鋼としては、マルテンサイ
ト系ステンレス鋼や、焼入れ処理した炭素鋼が適用でき
る。焼入れ鋼として、焼入れ処理が施されて硬くなった
マルテンサイト系ステンレス鋼や、炭素鋼を適用した場
合、本発明に係る熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法では
母材に与える熱エネルギを最小限に抑えることができる
から、マルテンサイトがフェライトになるのを防止で
き、母材の軟化を回避できる。
【0018】一方、本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形
成方法では、前記母材の材質は、黄銅であってもよい。
母材の材質が黄銅である場合に、従来のA)〜C)の焼
成方法を採用すると、母材が一定時間、熱可塑性フッ素
樹脂の溶融温度で加熱され、その後、溶融したフッ素樹
脂の粒子を硬化するために徐冷されるから、母材に焼き
なましが施されることとなる。このため、母材が軟化し
て所望の硬度が得られない可能性がある。本発明に係る
熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法では、フッ素樹脂膜を
焼成する際、母材に与える熱エネルギを最小限に抑える
ことができるから、黄銅に本方法を適用した場合、母材
の焼きなましを防止できるようになる。
【0019】本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法
では、前記光は、レーザであることが望ましい。ここ
で、レーザとしては、固体レーザ、液体レーザ、気体レ
ーザ、半導体レーザ等が採用できる。このように、光と
して、原子の誘導放出によって増幅された光、すなわち
レーザを採用すれば、エネルギ密度の高い光をフッ素樹
脂の粒子に照射することになるので、当該粒子が溶融す
るまでの光照射時間を短くでき、フッ素樹脂膜の焼成時
間を短時間にできる。また、レーザは集光性が高いの
で、たとえば集光レンズ等の集光手段を用いてレーザを
集光すれば、さらにエネルギ密度の高い光が得られ、フ
ッ素樹脂膜の焼成時間をさらに短縮できる。また、レー
ザは指向性が優れているため、母材表面の所望の部分に
のみレーザを照射することが可能となり、母材表面の所
望の部分のみにフッ素樹脂膜を焼成できるようになる。
【0020】ここで、光としてレーザを採用した場合、
前記光照射工程で、前記レーザを前記母材表面上で走査
すれば、レーザは指向性が優れているため、母材表面の
部分部分にフッ素樹脂膜を選択的に焼成できるようにな
って、母材表面にフッ素樹脂膜のパターンを作成できる
ようになる。
【0021】本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法
では、前記母材表面に付着する熱可塑性フッ素樹脂の粒
子に着色を行う着色工程を備えるようにしてもよい。こ
こで、フッ素樹脂の粒子に着色する方法としては、たと
えば、着色した溶媒中にフッ素樹脂の粒子を分散する方
法や、多数のフッ素樹脂の粒子と自身に色を有する多数
の粒子とを混合する方法等を採用できる。また、着色工
程は、粒子付着工程前に行ってもよく、粒子付着工程後
に行ってもよい。着色工程で、熱可塑性フッ素樹脂に、
白や透明等の光エネルギを吸収しにくい色以外の色を着
色すれば、フッ素樹脂での光エネルギの吸収率を高くで
き、フッ素樹脂の粒子が溶融するまでの光照射時間を短
くできて、焼成時間を短時間にできる。
【0022】さらに、前記着色工程の後、前記光照射工
程では、前記熱可塑性フッ素樹脂の粒子に着色した色の
波長の光を照射するようにしてもよい。この発明によれ
ば、着色工程でフッ素樹脂を着色した後、光照射工程で
着色した色の波長の光をフッ素樹脂の粒子に照射するの
で、当該粒子での光エネルギの吸収率をさらに高くで
き、フッ素樹脂膜の焼成時間をさらに短縮できる。
【0023】本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法
では、前記粒子付着工程の後、前記母材表面に付着した
多数の熱可塑性フッ素樹脂の粒子の一部をマスキングす
るマスキング工程を備えるようにしてもよい。このよう
にすれば、マスキング工程後の光照射工程において、母
材表面の所望の部分にのみ、すなわちマスキングをして
いない部分にのみ光を照射することができるから、母材
表面にフッ素樹脂膜の精密なパターン作成ができるよう
になる。
【0024】一方、本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜を有
した部材は、上述したいずれかの熱可塑性フッ素樹脂膜
の形成方法を用いて熱可塑性フッ素樹脂膜が表面に形成
されていることを特徴とするものである。この発明によ
れば、上述したいずれかの熱可塑性フッ素樹脂膜の形成
方法の作用・効果と略同様の作用・効果を奏する部材を
享受することができる。また、耐熱性や、耐薬品性、非
粘着性、撥水撥油性、電気絶縁性、低摩擦特性等の種々
の特性を有したフッ素樹脂によって、部材を被覆すれ
ば、これら種々の特性を有した部材が得られる。
【0025】ここで、熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部
材としては、回路基板または摺動部材が挙げられる。部
材を回路基板とした場合には、たとえば、回路基板上に
実装される集積回路(IC)を囲むようにして、回路基
板表面にリング状のフッ素樹脂膜を焼成すれば、集積回
路をモールド剤で回路基板上に固定する際、リング状の
フッ素樹脂膜が撥水撥油性、耐薬品性の特性により防波
堤の役割を果たすこととなる。これによって、モールド
剤がフッ素樹脂膜のリング内に留まるようになり、モー
ルド剤が他の部分へ流れてしまうのを防止できる。ま
た、回路基板上で半田付けする部分の周囲を、リング状
のフッ素樹脂膜で囲めば、半田の他の部分への流れを防
止できる。部材を摺動部材とした場合には、摺動部材の
すべり面をフッ素樹脂膜で覆うことで、フッ素樹脂膜の
耐熱性、低摩擦特性により、長期間安定した摺動性を有
する摺動部材を得ることができる。
【0026】一方、本発明の時計は、上述したいずれか
の熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材を備えていること
を特徴とするものである。この発明によれば、上述した
いずれかの熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材の作用・
効果と略同様の作用・効果を奏する時計を享受すること
ができる。特に、フッ素樹脂膜ですべり面が覆われた摺
動部材(たとえば、歯車、歯車を回転可能に保持する軸
受け、リューズの切換に用いられるおしどりやかんぬき
等)を用いることで、長期間安定した摺動性を有する機
構を構成でき、長期に渡って信頼性の高い時計を得るこ
とができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1および図2には、本発明の第
1実施形態に係る電子制御式機械時計1が示されてい
る。この電子制御式機械時計1は、機械的エネルギで駆
動されて電力を発生する発電機10と、この発電機10
に機械的エネルギを供給する機械的エネルギ源であるゼ
ンマイ20と、複数の歯車32〜36を有するとともに
発電機10およびゼンマイ20を相互に連結する輪列3
0と、発電機10に連動して作動する時刻表示手段40
と、水晶振動子51を含んで構成されるとともに発電機
10の回転速度制御等を行う電子回路50とを備えてい
る。
【0028】図1において、ゼンマイ20は、電子制御
式機械時計1を連続駆動させるための機械的エネルギを
蓄積する手段であり、円筒状の香箱車21の内部に収納
されている。ゼンマイ20の内端は、香箱車21の中心
軸である香箱真22に固定され、外端は、香箱車21の
内周面に係合されている。香箱真22が一方向に回転す
ることによってゼンマイ20が巻き上げられるようにな
っている。香箱真22には、角穴車23が固定され、香
箱真22と角穴車23が一体的に回転するようになって
いる。この角穴車23には、図示しない手動巻き上げ機
構や自動巻き上げ機構、逆回転防止用のこはぜと係合し
ている。
【0029】輪列30は、香箱車21と噛み合う二番車
32と、発電機10のロータ11に噛み合う六番車36
と、これら二番車32および六番車36間に配置されて
二番車32の回転駆動力を増速して六番車36に伝達す
る三番車33、四番車34、および五番車35とを備え
ている。各車32〜36には、発電効率の良好な回転速
度で発電機10のロータ11を回転させるための増速比
が設定されている。また、二番車32の回転軸には、図
示は省略するが、筒カナを介して分針が取り付けられて
いる。時針は、二番車32と同軸上に設けられた筒車の
回転軸に取り付けられており、この筒車は、筒カナの回
転駆動力が日ノ裏車を介して伝達されることによって回
転するようになっている。四番車34の回転軸には、秒
針41が取り付けられている。
【0030】輪列30を構成するこれらの車32〜36
は、ゼンマイ20の機械的エネルギをロータ11に伝達
するとともに、その駆動に伴って、時針、分針、および
秒針41を駆動するようになっている。これらの時針、
分針、および秒針41は、図示しない時刻を示す数字等
が刻まれた文字板とともに、時刻を表示する時刻表示手
段40を構成している。
【0031】発電機10は、略環状に形成されるととも
に、中間部分にコイル12が巻かれたステータ13を備
え、ステータ13のギャップの間に、永久磁石からなる
ロータ11を回転自在に設けた交流発電機である。ここ
で、発電機10が効率よく発電できるように、ロータ1
1の回転速度、ロータ11とステータ13とのギャップ
の寸法、ロータ11を形成する永久磁石の材質、コイル
12の巻線の太さや巻き数が適宜設定されている。
【0032】電子回路50は、図示しない回路基板を備
え、この基板上に水晶振動子51および集積回路52が
実装されている。集積回路52は、図2に示すように、
ダイオードからなる整流回路521と、蓄電手段である
コンデンサ522とを備え、発電機10から出力された
交流電力を整流回路521で直流電力に変換し、この直
流電力をコンデンサ522で蓄えている。
【0033】集積回路52では、コンデンサ522から
供給される電力によって回転速度制御手段523が駆動
される。この回転速度制御手段523は、発振回路52
3A、分周回路523B、検出回路523C、および制
御回路523Dを有している。発振回路523Aは、水
晶振動子51に電圧をかけて振動させている。分周回路
523Bは、水晶振動子51の振動数に基づいて1秒を
割り出し、基準信号fsを制御回路523Dに出力して
いる。検出回路523Cは、発電機10から出力される
発電波形からロータ11の回転速度を検出し、その回転
速度に応じた検出信号FG1を制御回路523Dへ出力
している。
【0034】制御回路523Dは、基準信号fsに対す
る検出信号FG1の差に基づいて、発電機10に操作信
号を出力している。操作信号は、たとえば、High状
態およびLow状態が交互に繰り返される矩形波電圧信
号が採用でき、発電機10のロータ11の回転速度を遅
らせる場合には、High状態時間のLow状態時間に
対する割合、換言すれば、デューティ比を大きくし、こ
れにより、電磁ブレーキの制動力を強める一方、発電機
10のロータ11の回転速度を速くする場合には、デュ
ーティ比を小さくし、これにより、電磁ブレーキの制動
力を弱めるものとなっている。
【0035】次に、輪列30を構成する各車32〜36
について説明する。各車32〜36は、代表して図3に
示す三番車33について説明すると、回転軸とされると
ともにカナ331Aが一体に形成された軸部材331
と、この軸部材331に固定された歯車332とを備え
ている。軸部材331の両端には、電子制御式機械時計
1に設けられた軸受け(図示せず)に回転可能に支持さ
れるほぞ331Bが形成されている。軸部材331の材
質は、炭素鋼とされ、歯車332の材質は、炭素鋼また
は黄銅とされている。また、軸部材331のカナ331
Aの歯面およびほぞ331Bのすべり面、歯車332の
歯面332Aには、四フッ化エチレン樹脂(以下、PT
FE)膜が焼成されている。これにより、軸部材331
のカナ331Aおよびほぞ331Bの摺動性、歯車33
2の歯面332Aの摺動性を高くできるとともに、その
高摺動性を長期に渡って確保できるようになる。
【0036】このような歯車332における歯面332
AへのPTFE膜の形成手順について、図4を参照しな
がら、以下に説明する。(母材形状成形工程)まず、図
4(A)に示すように、炭素鋼板から切削等によって母
材としての歯車332を形成する。次いで、当該歯車3
32を適当な温度にて焼き入れ、焼き戻しをおこなうこ
とで、歯車332としての硬度が確保される。
【0037】(粒子付着工程)次に、歯車332の歯面
332AにPTFEの粒子を付着させるために、図4
(B)に示すように、歯車332をPTFEの粒子が分
散された分散液中に浸漬する。ここで、分散液は、溶媒
としてのフッ素系溶媒中に、PTFEの粒子を、たとえ
ば1.0wt%の濃度で超音波攪拌機を用いて分散させ
たものを用いている。PTFEの粒子の平均粒径は、P
TFE膜を焼成する母材の寸法や、当該母材と摺動する
相手部材の寸法、母材と相手部材との間のクリアランス
の大きさ等に応じて設定する。本実施形態では、たとえ
ば腕時計としての電子制御式機械時計1の歯車332を
母材とし、当該歯車332は非常に小さいものなので、
PTFE粒子の平均粒径が0.3μmのものを採用して
いる。また、歯車332を分散液中に浸漬する際には、
歯車332を網カゴ内に入れ、この網カゴを分散液中で
回転移動させながら浸漬処理を行う。これにより、歯車
332表面に付着した気泡を取り除くことができ、PT
FEの粒子をより均一に歯車332表面に付着させるこ
とができるようになる。
【0038】この後、歯車332を遠心分離方式にかけ
て、余分についた分散液の振り切りを行う。これによ
り、PTFEの粒子が歯車332表面の部分部分に偏っ
て付着するのを防止できるようになる。本実施形態の粒
子付着工程では、上述したような歯車332の分散液中
への浸漬、および遠心分離機による余分な分散液の振り
切りの操作を複数回(たとえば3回)繰り返す。これに
よって、PTFEの粒子がより確実に歯車332表面に
付着するようになる。このような粒子付着工程で、歯車
332表面に付着したPTFEの粒子の状態を図5に示
す。なお、符号Fpは、PTFEの粒子を示している。
上述のような方法で、PTFE粒子Fpを歯車332表
面に付着させた場合においても、歯車332には、PT
FE粒子Fpが付着していない部分が生じる。このよう
な部分を埋めるとともに、PTFE粒子Fpと歯車33
2との接着性を良好にするため、以下に説明するよう
に、PTFE粒子Fpを加熱・溶融してPTFE膜を焼
成する。
【0039】(マスキング工程)次に、歯車332にお
いて、PTFE膜を焼成しない部分のマスキングを行
う。PTFE膜を焼成しない歯車332の部分は、歯面
332A以外の部分であり、この部分にマスク材料10
0で被覆または塗装を施す(図4(C)参照)。
【0040】(光照射工程)次に、図4(C)に示すよ
うに、歯車332の表面に付着したPTFEの粒子に光
を照射して、当該歯車332の歯面332AにPTFE
膜を焼成する。ここで、光を照射する際の歯車332の
雰囲気としては、その酸化による変色等を防止するため
に窒素ガス中または減圧(真空)中であることが望まし
い。本実施形態では、図6に示すようなレーザ照射装置
60を用いて、歯車332への光の照射を行う。このレ
ーザ照射装置60は、対象物にレーザを照射するレーザ
照射光学系61と、対象物に光を照射してその反射光に
より対象物が観察可能な観察光学系62とを備えてい
る。
【0041】レーザ照射光学系61は、YAGレーザの
基本波(波長:1064nm)を発するレーザ発振器6
11と、このレーザ発振器611が発したレーザを対象
物まで導く複数の光学素子612〜616とを含んで構
成されている。光学素子612〜616としては、レー
ザ発振器611から発したレーザビームの光軸の位置調
整を行う一対の反射鏡612,613と、この一対の反
射鏡612,613で反射されたレーザビームの口径を
大きくするビームエキスパンダ614と、このビームエ
キスパンダ614を通ったレーザビームを対象物に向か
って反射するダイクロイックミラー615と、このダイ
クロイックミラー615で反射されたレーザビームを集
光してエネルギ密度を高める集光レンズ616とがあ
る。観測光学系62は、観測用の光を発する照明光源6
21と、対象物を観測するためのカメラ622と、照明
光源621から発した光を対象物まで導くとともに当該
対象物に反射された光を透過するダイクロイックミラー
623と、このダイクロイックミラー623を透過した
対象物からの反射光をカメラ622の撮像面に向かって
反射するミラー624と、ダイクロイックミラー623
およびミラー624間に配置されかつ開閉可能なシャッ
タ625とを含んで構成されている。
【0042】このような構成を有するレーザ照射装置6
0では、観測光学系62で対象物を観察しながら、当該
対象物の位置決めを行い、この後、レーザ照射光学系6
1に切り換えてレーザビームを対象物に向かって照射す
る、すなわち本実施形態では、歯車332の歯面332
付近に向かってYAGレーザを照射する。YAGレーザ
のエネルギ密度は、レーザ照射光学系61の集光レンズ
616の集光度合いによって決定され、適切な集光度合
いを有する集光レンズ616を用いることで、PTFE
粒子Fpの加熱温度をPTFE溶融温度に設定できるよ
うになる。
【0043】このようにYAGレーザを歯車332照射
すると、マスク材料100によってマスキングされてい
ない歯面332Aに付着したPTFEの粒子が、光エネ
ルギを吸収し、徐々に加熱されて溶融する。これによ
り、図7に示すように、歯車332のPTFE粒子Fp
が付着していない部分(図5参照)が溶融したPTFE
粒子で埋められ、歯面332Aには、略均一な厚みを有
するPTFE膜Ffが焼成されることとなる。ここで、
図4(D)に示すように、歯車332において、YAG
レーザが照射された歯面332Aには焼成したPTFE
膜Ffが形成されているが、マスキングされた部分には
焼成したPTFE膜Ffが形成されずに、PTFEの粒
子Fpが単に付着したままとなっている。
【0044】(粒子除去工程)歯車332の歯面332
AにPTFE膜Ffを焼成した後、図4(E)に示すよ
うに、マスキングされた部分に付着したPTFEの粒子
を除去し、歯車332へのPTFE膜の形成作業を完了
する。この除去方法としては、物理的な除去方法および
化学的な除去方法のいずれも採用できる。物理的な除去
方法としては、エアブローによって粒子を吹き飛ばす方
法や、ハケで粒子をはたき落とす方法等が採用できる。
一方、化学的除去方法としては、PTFEの粒子を溶解
可能な有機溶剤で粒子を溶かし落とす方法等が採用でき
る。
【0045】本実施形態では、歯車332の他に、軸部
材331のカナ331Aおよびほぞ331Bにも、上述
した手順でPTFE膜を焼成している。また、三番車3
3だけでなく、輪列30を構成する各車32〜36、香
箱車21、およびロータ11、さらには図示しないリュ
ーズの切換に用いられるおしどりやかんぬきにおいて
も、三番車33と同様に、所定の部分(つまり、他の歯
車と噛み合う歯面や、軸部材の軸受けと接触する部分、
互いに摺動されるすべり面等)にPTFE膜を焼成して
いる。なお、互いに噛み合う一対の歯車では、少なくと
も一方の歯面にPTFE膜を焼成し、また、軸部材と軸
受け、または、おしどりとかんぬきでは、少なくとも一
方のすべり面にPTFE膜を焼成すれば、それらの部材
間での摺動性、低摩擦性、耐熱性等が確保できる。
【0046】さらに、本実施形態におけるPTFE膜の
焼成は、上述のような歯面やすべり面に対してだけでな
く、電子回路50の水晶振動子51および集積回路52
が実装される回路基板に対しても行われている。具体的
には、図8に示すように、電子回路50の回路基板53
には、集積回路52が実装され、この回路基板53は、
回路受け座50Aおよび回路受け50B間に挟持されて
いる。集積回路52の実装は、モールド剤54によって
行われ、このモールド剤54は、集積回路52を回路基
板53上に固定する役割の他に、集積回路52の遮光、
絶縁、保護の役割を有している。ここで、回路基板53
表面には、集積回路52を囲むようにして、リング状の
PTFE膜Ffが焼成されている。これにより、集積回
路52にモールド剤54を塗布した際、当該モールド剤
54がPTFE膜Ffのリング内に留まるようになっ
て、モールド剤54が他の部分へ流れてしまうのを防止
できるようになる。
【0047】このような回路基板53へのリング状のP
TFE膜Ffの形成手順を含む、集積回路52の実装手
順について、図9を参照しながら、以下に説明する。 (母材形状成形工程)まず、図9(A)に示すように、
磁器や、プラスチック、ガラス等の材料から、回路基板
53を成形する。 (粒子付着工程)次いで、回路基板53にPTFEの粒
子を付着させるために、図9(B)に示すように、回路
基板53をPTFEの粒子が分散された分散液中に浸漬
する。ここで、歯車332のときは、PTFE粒子の平
均粒径が0.3μmのものを採用したが、回路基板53
に形成するリング状のPTFE膜Ffは、摺動性のため
に設けられるのではなく、モールド剤の防波堤としての
役割を果たすために設けられるので、PTFE粒子の平
均粒径が0.3μmよりも大きいものを採用してもよ
い。
【0048】(マスキング工程)次に、回路基板53の
PTFE膜を焼成しない部分を、マスク材料100で被
覆または塗装して、マスキング処理を行い、回路基板5
3に実装される集積回路52を囲むようなリング状の部
分のみを露出させる(図9(C)参照)。 (光照射工程)次に、回路基板53表面に付着したPT
FEの粒子に光を照射して、図9(C)に示すように、
当該回路基板53にリング状のPTFE膜Ffを焼成す
る。 (粒子除去工程)回路基板53表面にリング状のPTF
E膜Ffを焼成した後、マスキングされた部分に付着し
たPTFEの粒子を除去し、回路基板53へのPTFE
膜Ffの形成作業を完了する。
【0049】(集積回路実装工程)粒子除去工程の後、
図9(D)に示すように、集積回路52を回路基板53
上にセットし、図9(E)に示すように、当該集積回路
52にモールド剤54を塗布することによって、集積回
路52を回路基板53上に固定し、集積回路52の実装
作業を完了する。この際、PTFE膜Ffは、その特性
(撥水撥油性、耐薬品性)により、モールド剤54の防
波堤の役割を果たすことになるので、モールド剤54が
PTFE膜Ffのリング内に留まるようになり、モール
ド剤54が他の部分へ流れてしまうのが防止される。こ
こで、モールド剤54としては、PTFE膜Ffと接触
しても互いに化学反応を生じない材料からなるモールド
剤54を採用でき、たとえば、エポキシ樹脂と当該エポ
キシ樹脂の線膨張係数を下げるための添加剤とを1:1
の割合で混合したモールド剤等が採用できる。
【0050】また、上述では、集積回路52を回路基板
53上に実装するために用いられるモールド剤54の流
れ止めとして、PTFE膜Ffを用いたが、たとえば、
水晶振動子51を回路基板上に固定するための接着剤の
流れ止めとして、水晶振動子51を囲むようにして回路
基板上にリング状のPTFE膜を焼成してもよい。
【0051】上述のような本実施形態によれば、次のよ
うな効果がある。本実施形態では、YAGレーザを照射
することによってPTFE粒子Fpを加熱・溶融してい
るので、母材の材質に関係なく、PTFE膜Ffを焼成
できるようになる。
【0052】また、PTFEの加熱・溶融を行うのにY
AGレーザを用いているので、PTFE粒子FpでYA
Gレーザが遮られることにより、歯車332に直接YA
Gレーザが照射されるのを防止できる。これによって、
PTFE膜Ffを焼成する際、歯車332自体の温度上
昇を小さくでき、熱エネルギにより歯車332に与える
ダメージを最小限とすることができ、熱エネルギによる
歯車332の物性変化を回避できる。
【0053】また、レーザ照射装置60において、集光
度合いが異なる集光レンズ616に代えることによっ
て、YAGレーザのエネルギ密度を変更できるので、光
のエネルギ密度調整を簡単に行うことができる。これに
より、PTFE粒子の加熱温度を適宜な温度、すなわち
PTFE溶融温度に容易に設定できるから、焼成作業を
簡単に行えるようになる。
【0054】本実施形態では、材質が炭素鋼の歯車33
2に対して、YAGレーザを用いてPTFE膜Ffを焼
成しているので、歯車332に与える熱エネルギを最小
限に抑えることができ、焼きなましを防止できて、歯車
332の軟化を回避できる。
【0055】光として、YAGレーザを採用しているの
で、エネルギ密度の高い光をPTFE粒子Fpに照射で
き、加熱・溶融の時間を短くできて、PTFE膜Ffの
焼成時間を短縮できる。
【0056】マスキング工程において、歯車332の歯
面332A以外の部分をマスキングしたので、光照射工
程において、PTFE膜が必要な歯面332AのみにY
AGレーザを照射してPTFE膜Ffを焼成し、マスキ
ングした部分についてはPTFEの粒子Fpが単に付着
したままの状態とすることができる。これにより、粒子
除去工程において、マスキングした部分に付着したPT
FE粒子Fpを除去することができるから、歯車332
とこの歯車332が固定される軸部材331間にPTF
E粒子Fpが入り込むのを回避でき、歯車332と軸部
材331との固定を精度よく行うことができる。
【0057】本実施形態では、回路基板53上に実装さ
れる集積回路52を囲むようにして、回路基板53表面
にリング状のPTFE膜Ffを焼成しているので、集積
回路52をモールド剤54で回路基板53上に固定する
際、モールド剤54が他の部分へ流れてしまうのを防止
できる。
【0058】本実施形態では、輪列30を構成する各車
32〜36、香箱車21、ロータ11、図示しないリュ
ーズの切換に用いられるおしどりやかんぬきにおいて、
所定の部分(つまり、他の歯車と噛み合う歯面や、軸部
材の軸受けと接触する部分、互いに摺動されるすべり面
等)にPTFE膜を焼成しているので、長期間安定した
摺動性を有する部品を得ることができる。そして、これ
らのPTFE膜が焼成された部品を用いて、電子制御式
機械時計1の内部機構を構成することで、長期間安定し
た摺動性を有する機構を構成でき、長期に渡って信頼性
の高い時計1を得ることができる。
【0059】なお、本発明は前記実施形態に限定される
ものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変
形、改良は、本発明に含まれるものである。たとえば、
前記実施形態では、マスキング工程で歯車332や回路
基板53に対してマスキング処理を施したが、マスキン
グ処理は必ずしも施す必要はなく、マスキング処理を施
さない場合は、たとえば、レーザの指向性を利用し、レ
ーザを集光して口径の小さいものとして母材(歯車33
2や回路基板53)上を走査すれば、母材の所望の部分
にレーザを照射することができ、当該所望の部分にフッ
素樹脂膜を焼成できるようになる。
【0060】さらに、前記実施形態では、フッ素樹脂の
粒子に着色を行わなかったが、本発明の熱可塑性フッ素
樹脂の形成方法において、熱可塑性フッ素樹脂の粒子に
着色を行う着色工程を設けてもよい。このような場合、
白や透明等の光エネルギを吸収しにくい色以外の色を着
色すれば、フッ素樹脂での光エネルギの吸収率を高くで
き、フッ素樹脂の粒子が溶融するまでの光照射時間を短
くできて、焼成時間を短時間にできるようになる。具体
的に説明すると、たとえば、母材表面にフッ素樹脂の粒
子を付着した後に、カーボン(炭素)の粉を母材表面に
振りかけることによって、フッ素樹脂の粒子を黒色に着
色することができる。このように、フッ素樹脂の粒子を
黒色に着色すると、可視光線(波長が約400nm〜7
50nmの光)の光エネルギの吸収率が高まるから、フ
ッ素樹脂の粒子に照射する光として、可視光線が採用で
きるようになる。さらに、着色工程の後、光照射工程
で、フッ素樹脂の粒子に着色した色の波長の光を照射す
るようにしてもよく、このような場合、フッ素樹脂の粒
子での光エネルギの吸収率をさらに高くでき、フッ素樹
脂膜の焼成時間をさらに短縮できる。
【0061】前記実施形態では、レーザ照射装置60を
用いてフッ素樹脂膜を焼成したが、図10に示すような
光照射装置70を用いてもよい。図10において、光照
射装置70は、内面に反射面を有した楕円形反射鏡71
と、この楕円形反射鏡71内の焦点位置に配置されたキ
セノンランプ72とを含んで構成されている。このよう
な場合、キセノンランプ72から発した光は、楕円形反
射鏡71に反射されて、当該楕円形反射鏡71外に位置
する焦点位置に集光するので、この焦点位置に、歯車3
32の歯面332Aを配置することによって、歯面33
2Aにフッ素樹脂膜を焼成できるようになる。なお、楕
円形反射鏡71内に配置するランプとしては、ハロゲン
ランプは白熱灯など種々の光源が利用できる。
【0062】さらに、光照射工程では、上述のような所
定の装置を用いなくともよく、市販のハロゲンランプや
白熱灯等の光源を手で持って、光を母材に照射するよう
にしてもよい。このようにすれば、大がかりな装置を不
要にできるから、省スペース化およびコストダウンを容
易に図ることができるうえ、電気炉内やハウス内に母材
を入れる必要がないから、母材の形状や大きさに制限さ
れず、あらゆる種類の母材に、本発明の熱可塑性フッ素
樹脂膜の形成方法を適用できる。
【0063】また、母材の材質としては、炭素鋼に限ら
ず、黄銅やマルテンサイト系ステンレス鋼等の金属、プ
ラスチック、ガラス等の種々の材質であってもよい。
【0064】本発明に係る熱可塑性フッ素樹脂膜の形成
方法を適用できる母材としては、時計の内部機構を構成
する部品に限らず、車両のボディ、便器、洗面台、バス
タブ、壁、ガラス等の汚れ防止や撥水・撥油性が要され
る部材にも採用できる。また、摺動性が要される母材と
しては、転がり軸受けやすべり軸受け等が挙げられ、耐
熱性、非粘着性が要される母材としては、フライパンや
鍋等が挙げられ、このような母材にも本発明の熱可塑性
フッ素樹脂膜の形成方法を適用できる。
【0065】さらに、図11に示すようなインクジェッ
ト記録で用いられるノズル80にも、本方法を適用でき
る。インクジェット記録は、図11(D)に示すよう
に、ノズル80の開口部80Aからインク81を噴出し
て微小な液滴をつくり、これを紙等の記録体82に付着
させることにより文字、図形、画像パターン等を形成す
る記録方式であるが、インク81として水性インクを用
いた場合、ノズル80の開口面の撥水性が不十分である
と、ノズル80から噴出する液滴の直進性が損なわれて
印字画像の乱れ等の不具合が発生することがある。ここ
で、このようなノズル80に良好な撥水性を持たせるた
めに、本発明の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法を適用
できる。
【0066】具体的には、まず、図11(A)に示すよ
うに、ノズル80の開口部80Aが形成された面(以
下、開口面)80Bに、PTFE粒子Fpを付着させ
る。次に、図11(B)に示すように、マスク材料10
0でノズル80の開口部80Aをマスキング処理した
後、ノズル80の開口面80Bに光を照射する。する
と、図11(C)に示すように、ノズル80の開口面8
0Bにのみ、PTFE膜Ffが焼成され、開口部80A
には、PTFE粒子Fpが単に付着した状態となる。そ
して、開口部80Aを塞ぐPTFE粒子Fpを除去する
ことによって、図11(D)に示すように、開口面80
Bに焼成されたPTFE膜Ffが、開口面80Bにおけ
る開口部80Aの周縁を覆うこととなるので、ノズル8
0の開口面80Bの撥水性を十分に確保できるようにな
る。これにより、ノズル80から噴出する液滴の直進性
を確保でき、精度よく印字画像を形成できるようにな
る。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、適用できる母材の種類
に制限がなく、かつ焼成作業を簡単にできるとともに、
省スペース化およびコストダウンを容易に図ることがで
きるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子制御式機械時計
の概略を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態における電子制御式機械時計の概
略を示すブロック図である。
【図3】前記実施形態における三番車を示す側面図であ
る。
【図4】前記実施形態におけるPTFE膜の形成手順
(歯車)を示す模式図である。
【図5】前記実施形態における歯車表面に付着したPT
FE粒子の状態を模式的に示す断面図である。
【図6】前記実施形態におけるレーザ照射装置を示す概
略図である。
【図7】前記実施形態における歯車の歯面に焼成された
PTFE膜を模式的に示す断面図である。
【図8】前記実施形態における集積回路の回路基板への
実装状態を示す断面図である。
【図9】前記実施形態における集積回路の回路基板への
実装手順を示す模式図である。
【図10】本発明の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の他の変形例を示す拡大断面図であ
る。
【符号の説明】
1 電子制御式機械時計 53 母材である回路基板 80 母材であるノズル 332 母材である歯車 Ff 熱可塑性フッ素樹脂膜であるPTFE膜 Fp 熱可塑性フッ素樹脂の粒子であるPTFE粒子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16H 55/06 F16H 55/06 55/17 55/17 Z Fターム(参考) 3J030 AC02 AC03 BA01 BC02 BC03 CA01 4D075 AD03 BB28Z BB37Z BB42Z BB46Z BB48Z BB54Z BB94Z CA06 CA18 CA23 CA36 CA37 CA44 CA47 DA06 DA23 DB02 DB04 DB06 DB13 DB14 DB31 DC01 DC11 DC16 DC19 DC21 DC38 EA02 EB13 EB16 EB17 EB18 EC11 4F100 AB03A AB04A AB07A AB17A AB18A AB31A AK17B AK18 AT00A BA02 DE01B EH562 EJ462 EJ482 GB43 GB51 GB90 HB00B JL02 JL10B JM02B

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数の熱可塑性フッ素樹脂の粒子を母材
    表面に付着させる粒子付着工程と、 前記粒子付着工程の後、前記母材表面に付着した熱可塑
    性フッ素樹脂の粒子に光を照射して、当該母材表面に熱
    可塑性フッ素樹脂膜を焼成する光照射工程とを備えてい
    ることを特徴とする熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の熱可塑性フッ素樹脂膜
    の形成方法において、 前記母材の材質は、熱エネルギが与えられることによっ
    て物性が変化する材質であることを特徴とする熱可塑性
    フッ素樹脂膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の熱可塑
    性フッ素樹脂膜の形成方法において、 前記母材の材質は、焼入れ鋼であることを特徴とする熱
    可塑性フッ素樹脂膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の熱可塑性フッ素樹脂膜
    の形成方法において、 前記焼入れ鋼は、マルテンサイト系のステンレス鋼、ま
    たは、焼入れ処理した炭素鋼であることを特徴とする熱
    可塑性フッ素樹脂膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 請求項1または請求項2に記載の熱可塑
    性フッ素樹脂膜の形成方法において、 前記母材の材質は、黄銅であることを特徴とする熱可塑
    性フッ素樹脂膜の形成方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
    熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法において、 前記光は、レーザであることを特徴とする熱可塑性フッ
    素樹脂膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の熱可塑性フッ素樹脂膜
    の形成方法において、 前記光照射工程では、前記レーザを前記母材表面上で走
    査することを特徴とする熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方
    法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の
    熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法において、 前記母材表面に付着する熱可塑性フッ素樹脂の粒子に着
    色を行う着色工程を備えていることを特徴とする熱可塑
    性フッ素樹脂膜の形成方法。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の熱可塑性フッ素樹脂膜
    の形成方法において、 前記着色工程の後、前記光照射工程では、前記熱可塑性
    フッ素樹脂の粒子に着色した色の波長の光を照射するこ
    とを特徴とする熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜請求項9のいずれかに記載
    の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法において、 前記粒子付着工程の後、前記母材表面に付着した多数の
    熱可塑性フッ素樹脂の粒子の一部をマスキングするマス
    キング工程を備えていることを特徴とする熱可塑性フッ
    素樹脂膜の形成方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜請求項10のいずれかに記
    載の熱可塑性フッ素樹脂膜の形成方法を用いて熱可塑性
    フッ素樹脂膜が表面に形成されていることを特徴とする
    熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の熱可塑性フッ素樹
    脂膜を有した部材において、 当該部材は、回路基板であることを特徴とする熱可塑性
    フッ素樹脂膜を有した部材。
  13. 【請求項13】 請求項11に記載の熱可塑性フッ素樹
    脂膜を有した部材において、 当該部材は、摺動部材であることを特徴とする熱可塑性
    フッ素樹脂膜を有した部材。
  14. 【請求項14】 請求項11〜請求項13のいずれかに
    記載の熱可塑性フッ素樹脂膜を有した部材を備えている
    ことを特徴とする時計。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008229607A (ja) * 2007-02-22 2008-10-02 Denso Corp フッ素皮膜構造及びその形成方法
JP2017146305A (ja) * 2016-02-19 2017-08-24 ブランパン・エス アー 遊び削減機能付きの計時器用車

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