JPH10159688A - 筒内噴射式内燃機関の燃料噴射弁 - Google Patents

筒内噴射式内燃機関の燃料噴射弁

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JPH10159688A
JPH10159688A JP32013196A JP32013196A JPH10159688A JP H10159688 A JPH10159688 A JP H10159688A JP 32013196 A JP32013196 A JP 32013196A JP 32013196 A JP32013196 A JP 32013196A JP H10159688 A JPH10159688 A JP H10159688A
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fuel injection
injection valve
internal combustion
combustion engine
fluoroalkyl group
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正次 中西
Atsushi Shirasawa
淳 白澤
Yutaka Niwa
豊 丹羽
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 デポジット付着抑制能を向上させた筒内噴射
式内燃機関の燃料噴射弁を提供する。 【解決手段】 筒内噴射式内燃機関の燃料噴射弁におい
て、表面粗さをRz 1ミクロン以下としたその燃料噴射
孔表面に、金属アルコキシドとアルコキシル基の一部が
フルオロアルキル基で置換されたフルオロアルキル基置
換アルコキシドを含む被覆溶液を塗布し焼成することか
ら形成された被覆膜を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筒内噴射式内燃機
関の燃料噴射弁に関する。より詳細には、デポジット付
着抑制能を向上させた筒内噴射式内燃機関の燃料噴射弁
に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の燃料噴射弁では、バルブの開
閉によって確実に燃料を遮断し又は適量の流量を制御し
なければならない。また、燃料中にはオイル、添加物、
水分等の異物が存在しており、これが作動中に燃料噴射
弁の、特に噴射孔に堆積し、デポジットと呼ばれる堆積
物が燃料等の流れを妨げてしまう。従って、燃料噴射弁
を高精度に構成したとしてもこのような堆積物の存在に
より燃料等の流れが妨げられ、燃料噴射弁の機能を発揮
できなくなってしまう。
【0003】このような問題を解決するために、撥液処
理を施すことによりデポジットの付着を抑制することが
従来より提案されている。その一つとして、例えば特開
平7−246365号では、金属アルコキシドと、アル
コキシル基の一部がフルオロアルキル基により置換され
たフルオロアルキル基置換金属アルコキシドからゾル−
ゲル法により撥液膜を形成する方法が提案されている。
すなわち、フルオロアルキル基を含む物質は撥水撥油性
を有することが知られており、このフルオロアルキル基
を被覆膜の表面に存在させることにより撥液性を付与
し、デポジットの付着を防止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、燃料の噴射
方式は、その噴射を行う位置で分類すると、シリンダ内
に直接噴射する筒内噴射と吸気管内に噴射する吸気管噴
射に分けられる。筒内噴射の場合、燃料噴射弁は非常に
精密な燃料噴射の制御が必要とされており、通常の撥液
処理のみでは少量のデポジットの付着の防ぐことができ
ず、その結果、制御能が低下してしまうという問題があ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに本発明によれば、筒内噴射式内燃機関の燃料噴射弁
において、表面粗さをRz 1ミクロン以下としたその燃
料噴射孔表面に、金属アルコキシドとアルコキシル基の
一部がフルオロアルキル基で置換されたフルオロアルキ
ル基置換アルコキシドを含む被覆溶液を塗布し焼成する
ことから形成された被覆膜を有している。
【0006】上記のように、燃料噴射弁の噴射孔の表面
の粗さを所定以下にした後に撥液性被覆膜をその表面に
形成することにより、デポジットの付着抑制能を向上さ
せることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の燃料噴射弁は、噴射孔の
表面粗さがRz 1ミクロン以下であり、このような噴射
孔の表面に、いわゆるゾル−ゲル法により撥液膜を設け
た構成となっている。通常、噴射孔の加工は、ドリルを
用いて穴開けを行っているが、表面粗さが大きく、デポ
ジットが付着しやすくなる要因となる。そこでこの噴射
孔の表面をみがき、表面粗さをRz 1ミクロン以下と
し、かつ撥液処理を施すことにより、デポジットの付着
をほとんど完全に防ぐことができる。ここでこの表面粗
さRz とは、十点平均粗さ(Rz)を意味し、断面曲線か
ら基準の長さだけ抜き取った部分において、平均線に平
行かつ断面曲線を横切らない直線からの縦倍率の方向に
測定した最高から5番目の山頂の標高の平均値と最不か
ら5番目までの谷底の標高の平均値との差をマイクロメ
ートルで表したものである。具体的にはJISB 0601に詳
細に規定されている。
【0008】ゾル−ゲル法とは、一般には、金属の有機
もしくは無機化合物を溶液とし、この溶液中で該化合物
の加水分解・重縮合反応を進行させてゾルをゲルにして
固化し、このゲルを基材に塗布し、加熱することによっ
て酸化物固体の被覆膜を形成する方法である。
【0009】燃料噴射弁の噴射孔に撥液性の被覆膜を形
成する具体的方法を以下に記載する。本発明において用
いられる金属アルコキシドとは、下式 M(OR)n (1) で表されるものであり、上式中、Mは金属であり、Rは
アルキルであり、nは金属Mの酸化数である。金属Mと
しては種々のものを用いることができ、目的とする金属
酸化物に対応するものを用いる。金属の例としては、限
定するものではないが、Li、Na、Cu、Ca、S
r、Ba、Zn、B、Al、Ga、Y、Si、Ge、P
b、P、Sb、V、Ta、W、La、Nd等を挙げるこ
とができる。アルキルとしては、メチル、エチル、プロ
ピル、ブチル等を用いることができる。従って、金属ア
ルコキシドとしては、LiOCH3、NaOCH3、Cu(OCH3)2 、Ca
(OCH3) 2 、Sr(OCH3)2 、Ba(OCH3)2 、Zn(OCH3)2 、B(OC
H3)3、Al(i-OC3H7)3、Ga(OC2H5)3、Y(OC4H9)3 、Si(OC2
H5)4、Ge(OC2H5)4、Pb(OC4H9)3、PO(OCH3)3 、Sb(OC
2H5)3、VO(OC2H5)3、Ta(OC3H7)5、W(OC2H5)6 、La(OC3H
7)3、Nd((OC2H5)3 が例示される。
【0010】フルオロアルキル基置換アルコキシドは、
下式 Rfm −M(OR)n-m (2) (上式中、Rfはフルオロアルキル基であり、Mは上記
金属であり、nは金属Mの原子価であり、そしてmはフ
ルオロアルキル基の数である)で表されるように、上記
金属アルコキシドのアルコキシル基ORの一部がフルオ
ロアルキル基で置換されているものである。
【0011】このフルオロアルキル基Rfとは、下式 CF3(CF2)x −C2 4 − (3) で表されるものである。ここでxはCF3 基が基材表面
に整然と配列するためには5〜10であることが好まし
い。
【0012】このフルオロアルキル基の存在により、得
られた被膜に撥液性が付与され、デポジットの付着が防
止される。このフルオロアルキル基置換アルコキシドに
おいて、フルオロアルキル基の数、すなわち上記式(2)
におけるRfの数mは多いほど得られる被覆膜の撥液性
が高いが、逆にフルオロアルキル基の数が多すぎると、
立体障害によってフルオロアルキル基が被覆膜の表面に
密に配列することができなくなることがあるため、この
フルオロアルキル基の数mは1であることが好ましい。
【0013】これら上記の金属アルコキシド及びフルオ
ロアルキル基置換アルコキシドに水(加水分解用)、ア
ルコール(均質溶液調製用)、酸もしくは塩基(触媒作
用)を加え、被覆溶液を調製する。アルコールとして
は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、
ブタノール等が用いられる。触媒として用いられる酸と
しては、塩酸、硫酸、酢酸、フッ酸が例示される。塩基
としては、処理後に揮発によって除去できるアンモニア
が用いられる。また、この溶液にゾル−ゲル法において
公知の添加剤、例えばアセチルアセトン等を加えてもよ
い。
【0014】この被覆溶液中のフルオロアルキル基置換
アルコキシドの量は多いほどその効果は高いが、逆に多
くなると樹脂の特性に近くなるため被膜の強度、すなわ
ち耐剥離性が低下することがある。従って、その量はこ
の被覆溶液中の全アルコキシドすなわち金属アルコキシ
ドとフルオロアルキル基置換アルコキシドの総量の5〜
20モル%とすることが好ましい。5モル%未満では十分
な撥液性が得られず、20モル%より多いと耐磨耗性、耐
剥離性が劣ることがあるからである。
【0015】こうして調製した被覆溶液を所定の温度に
おいて攪拌して、必要によりエージングさせてアルコキ
シドの加水分解・重縮合反応を進行させゲル状にする。
そしてこの溶液に燃料噴射弁を浸漬し、次いで噴射孔か
ら溶液を排除して噴射孔表面に被覆溶液のウェット被覆
膜を形成する。
【0016】この被覆膜の形成において、被覆溶液中の
溶媒量、特にアルコール量を調節することにより得られ
る膜厚を調節することができるが、得られる被覆膜の厚
さは10〜100nm であることが好ましい。膜厚が10nm未満
では被覆膜の耐熱性が低く、一方100nm より厚いと噴射
孔からの燃料の噴射圧に耐えることができず剥がれやす
くなることがあるからである。この厚さは50nm以下であ
ることがより好ましい。
【0017】最後にこの被覆膜を焼成する。通常、この
焼成工程の前に水や溶媒を除去する乾燥工程が行われ
る。この乾燥工程において、フルオロアルキル基が被覆
膜の表面上に濃縮する。その結果、得られる被覆膜の表
面上に多くのフルオロアルキル基が偏在し、撥液性に大
きく寄与する。焼成工程はゾル−ゲル法における一般的
な方法によって行ってよく、大気中もしくは非酸化性雰
囲気中で200 〜500 ℃において行われる。大気中で焼成
を行う場合は、フルオロアルキル基の分解を防ぐため35
0 ℃以下で行うことが好ましい。このようにして、表面
粗さの低い燃料噴射弁の燃料噴射孔表面に撥液性に優れ
た被覆膜が得られる。
【0018】
【実施例】
実施例1 下記成分 テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4) 3g ヘプタデカフルオロデシル トリメトキシシラン(CF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3) 1g エタノール 40g 0.05N HCl 3g を50mlのビーカーに入れ、30分間攪拌混合した。次いで
この溶液を密封容器に移し、25℃にて24時間放置した。
【0019】こうして得られた被覆溶液に、表面粗さを
変化させた作製した直噴エンジン用燃料噴射弁を浸漬
し、噴射孔より溶液を吹き飛ばし、噴射孔内面にウェッ
ト被覆膜を形成した。次いでこの被覆膜を250 ℃におい
て1時間焼成し、被覆膜を形成した。
【0020】こうして被覆膜を形成した燃料噴射弁を用
い、実機にて200 時間用いた後、燃料の流量低下率を測
定し、この結果を図1に示す。なお、この被覆膜を形成
しない噴射弁についても同様に流量低下率を測定した。
【0021】図1より明らかなように、撥液性の被覆を
設けない燃料噴射弁では、その噴射孔の表面粗さが低い
ほど、燃料の流量低下率は低かった。すなわち、デポジ
ットの付着量は低かった。しかしながら表面粗さ0.5 ミ
クロンと、かなり表面を磨いたものであっても10%以上
の流量低下率となった。これに対し、撥液性被覆膜を設
けた場合、著しく流量低下率の改善が見られ、特に表面
粗さを1ミクロン以下とすることにより、流量低下率は
ほぼ零となった。すなわち、デポジットの付着をほぼ完
全に抑制することができた。
【0022】
【発明の効果】従来より用いられている撥液処理に加
え、表面の粗さを1ミクロン以下とすることにより、デ
ポジットの付着抑制能が向上され、ほとんど完全にデポ
ジットの付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料噴射孔の表面粗さと、実機での試験後の燃
料の流量低下率の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丹羽 豊 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒内噴射式内燃機関の燃料噴射弁であっ
    て、表面粗さをRz1ミクロン以下としたその燃料噴射
    孔表面に、金属アルコキシドとアルコキシル基の一部が
    フルオロアルキル基で置換されたフルオロアルキル基置
    換アルコキシドを含む被覆溶液を塗布し焼成することか
    ら形成された被覆膜を有することを特徴とする筒内噴射
    式内燃機関の燃料噴射弁。
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