JP7291503B2 - シランカップリング剤層による機能再生及び/又は機能付与方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シランカップリング剤層による機能再生及び/又は機能付与方法に関し、特に、シランカップリング剤層のプライマー層として珪素を含有する非晶質炭素膜を備えた構造体における、シランカップリング剤層による機能再生及び/又は機能付与方法に関する。
従来、ガラス、セラミック、金属等の無機基材、又はプラスチック容器、プラスチックフィルムなどの有機基材の表面に、シランカップリング剤層を形成することにより各種機能を付与する手法はよく知られている。
例えば、スクリーン印刷用メッシュの表面に、フッ素系シランカップリング剤から成るフッ素コーティング層を形成することにより、メッシュに撥油性を付与し、印刷ペーストに対する離型性を向上させることが検討されている。
また、電子部品、機械部品をはじめとする各種物品を搬送する搬送部材において、その表面をフッ素系シランカップリング剤でコーティングすることで、搬送部材に搬送対象が張り付くことを防止する技術が知られている。
また、インクジェットプリンターの液滴吐出ノズルにおいて、液滴吐出面側に撥水性保護膜としてフッ素系シランカップリング剤層を形成することが知られている。
さらに、窓ガラス、実験用ガラス容器、又はガラス製食器等の無機材料からなる構造体、或いは、スマートフォンのディスプレイに貼り付けて使用される樹脂製の保護フィルム等の様々な構造体に、フッ素系カップリング剤層を形成して構造体表面に撥水・撥油性を付与することにより、その表面への汚れの付着を抑制することが期待される。
しかしながら、基材にシランカップリング剤層を形成する場合、基材の材質によってシランカップリング剤との反応性が異なり、シランカップリング剤との反応性が悪い場合がある。
そうした場合には、基材表面の反応性を高めることで、シランカップリング剤との密着性を上げる必要があるが、シランカップリング剤との反応性を高めて、密着性を高める手法の1つとして各種のプライマー層が用いられている。
用いるプライマー層には、シランカップリング剤との高い反応性のみならず、基材との強固な密着性及びプライマー層自体の高い強度が必要とされるが、ダイヤモンド様炭素膜(以下、「非晶質炭素膜」という。)は、耐摩耗性及び摺動性に優れ、かつ高強度を有する膜であることから、プライマー層として種々の基材に用いられている。
中でも、珪素を含有する非晶質炭素膜は、その表面にプラズマ化、イオン化、又はラジカル化した酸素を照射する又は含有させることにより、非晶質炭素膜中の珪素がSi-Oの結合を構成し易くなり、シランカップリング剤層の優れたプライマー層として用いることができることが知られている。
例えば、特許文献1には、少なくとも表面に珪素を含有する非晶質炭素膜の表面に、プラズマ化、イオン化、又はラジカル化した酸素を照射又は含有させたプライマー層を用いて、基材にフッ素系シランカップリング剤層を固定することにより、各種部材に、撥水・撥油性の機能を付与できることが示されている。
また、特許文献2には、同様のプライマー層を用いて、基材に親水性基を有するシランカップリング剤層を固定することにより、各種部材に、超親水性の機能を付与できることが示されている。
特開特許第5628893号公報 特願2018-168479号
しかしながら、適用する部材によっては、例えば、摺動部材、搬送部材のように摩擦による摩耗が避けられない部材や、繰り返しの洗浄処理や殺菌処理等の処理を必要とする部材においては、シランカップリング剤層による撥水・撥油性、或いは超親水性等の各種機能が劣化するのを避けることができないという問題がある。
なかでも、油分及び/又は塩分を含む食料品の製造及び/又は搬送においては、これらの食料品が、製造用及び/又は搬送用の部材に機械的に衝突し、シランカップリング剤層による上記各種機能が劣化することから、製造・搬送ラインをストップさせて劣化した部材を交換しなければならないという問題がある。
本発明は、上記問題点を解決して、シランカップリング剤層により付与された機能を再生乃至付与する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、シランカップリング剤層のプライマー層として非晶質炭素膜を用いた構造体におけるシランカップリング剤層の機能の劣化について検討を行ったところ、シランカップリング剤層の機能が劣化した構造体において、プライマー層である非晶質炭素膜の耐摩耗性は発揮されており、劣化することなく残っていることが多いことをつきとめた。そのような場合には、非晶質炭素膜の表面に、プラズマ化した酸素を照射することにより、シランカップリング剤に対する反応性を上げて、その表面にシランカップリング剤を再度固定させることができることが判明した。
しかしながら、プラズマ化した酸素を用いるためには真空装置が必要となり、高コストとなるという問題がある。非晶質炭素膜からなるプライマー層の普及には、ユーザーのコストの負担を軽くする必要があり、高コストとなる真空装置の使用は避ける必要がある。
また、大気圧プラズマで処理することにより、機能を復活させることも考えられるが、大気圧プラズマ処理では熱が発生するために、用いる基材が加熱によるダメージの問題がないものに限られる。
さらに、熱処理することも考えられるが、この場合も、加熱によるダメージの問題がない基材に限られる。
そこで、真空装置を用いることなく、低コストで、しかも熱の発生がない方法により、劣化したシランカップリング剤層を機能再生する方法について更に検討したところ、アルカリ水溶液で処理した後、シランカップリング剤からなる層を形成することにより、シランカップリング剤層の機能の再生が可能となることを見いだした。アルカリ水溶液で処理することで、残存しているシランカップリング剤が除去され、非晶質炭素膜のシランカップリング剤に対する反応活性があがり、そこにシランカップリング剤を反応させることにより、劣化したシランカップリング剤層の機能を再生ないし新たにシランカップリング剤層の機能を付与することで、容易に、且つ安価に再生及び/再生が可能となるものと考えられる。
さらに、シランカップリング剤層のプライマー層として珪素を含有する非晶質炭素膜を備えた構造体において、アルカリ水溶液で処理することにより、前記のプライマー層の活性を向上できることも見いだした。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1>基材と、該基材上に形成され、少なくとも該基材と接触していない側の面に珪素を含む非晶質炭素膜を備えた構造体、或いは前記非晶質炭素膜上にさらにシランカップリング剤からなる層を備えた構造体又は該シランカップリング剤層の機能が劣化した前記構造体において、
前記構造体の表面をアルカリ水溶液で処理すること、及び
該処理後の表面にシランカップリング剤層を形成すること
を含むことを特徴とする、シランカップリング剤層による機能を再生する及び/又はシランカップリング剤層による機能を付与する方法。
<2>前記非晶質炭素膜が、少なくとも前記基材と接触していない側の面に酸素を含むことを特徴とする<1>に記載の方法。
<3>前記シランカップリング剤が、フッ素系シランカップリング剤又は親水性シランカップリング剤であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の方法。
<4>前記構造体が、食料品の製造用及び/又は搬送用の部材であることを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、基材上に形成され、少なくとも該基材と接触していない側の面に酸素を含む非晶質炭素膜を備えた構造体、或いは前記非晶質炭素膜上にさらにシランカップリング剤からなる層を備えた構造体又は該シランカップリング剤層の機能が劣化した前記構造体において、真空装置を用いることなく、湿式プロセズで処理することで、容易に、且つ安価に、前記非晶質炭素膜上の劣化したシランカップリング剤層の機能を再生及び/又は機能を付与し、繰り返し使用することが可能となる。また、本発明によれば、常温に近い温度領域で処理できるため、熱による基材へのダメージをなくすことができる。さらに、本発明によれば、アルカリ水溶液中に浸漬する等の方法で処理できるため、複雑な形状を有する構造体にも対応できる。さらに、本発明によれば、特に、油分及び/又は塩分を含む食料品の製造用及び/又は搬送用の部材においてその効果が期待できる。
本発明の方法における構造体の構成を示す模式図 摩擦摩耗試験による接触角の変化を示す図
本発明の方法は、基材と、該基材上に形成された珪素を含む非晶質炭素膜を備えた構造体、或いは前記非晶質炭素膜上にさらにシランカップリング剤からなる層を備えた構造体又は該シランカップリング剤層の機能が劣化した前記構造体において、
前記構造体の表面をアルカリ水溶液で処理すること、及び
該処理後の表面にシランカップリング剤からなる層を形成すること、
により、シランカップリング剤層による機能を再生する及び/又はシランカップリング剤層による機能を付与することを特徴とする。
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。
[構造体]
図1は、本発明における構造体(以下、単に「本発明の構造体」と記載する)の一実施形態を示すものであり、基材1上に形成された非晶質炭素膜2と、該非晶質炭素膜2上に形成されたシランカップリング剤からなる層(シランカップリング剤層ということもある)3とから構成されており、該構成により、撥水・撥油性あるいは超親水性を示すものである。なお、本明細書において、「超親水性」とは、下記の方法で測定した水との接触角が10°以下となる性質をいう。
本発明の構造体は、その形状や用途が限られるものではなく、例えば、食料品の製造用及び/又は搬送用の部材、電子部品・機械部品等の各種部品の搬送部材、スクリーン印刷用版、インクジェットプリンターの液滴吐出ノズル、各種ガラス製品、スマートフォンのディスプレイ等の樹脂製保護フィルム等が挙げられる。
以下、本発明の構造体を構成する各部について説明する。
<基材>
本発明の構造体において使用される基材1としては、シランカップリング剤により、撥水・撥油性或いは超親水性等の機能を付与しようとするものであれば、寸法、形状及び材質等は限定されない。基材1の材質については、単一の材質であってもよく、複数の材料からなる複合材料ないし積層体であってもよい。使用可能な基材の材質の一例(としては、鉄、銅、アルミニウム及びマグネシウム等の金属系材料、前記金属成分を主成分としたステンレス鋼(SUS)等の合金、ガラス、シリコン及びセラミックス等の無機系材料、並びにポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレン等の高分子材料等が挙げられる。
<非晶質炭素膜>
非晶質炭素は、ダイヤモンド結合(sp3結合)とグラファイト結合(sp2結合)との双方を含む非晶質である。
本発明の構造体における非晶質炭素膜2は、実質的に炭素からなる非晶質膜のみならず、sp3結合及びsp2結合を有しつつ、成膜時に取り込まれた水素(H)等、並びに/又は色調、光透過性、導電性若しくは反応性等の各種特性を調節するために添加された1種若しくは複数種の元素を含有する非晶質膜も含まれる。前記各種特性を調節するための元素としては、珪素(Si)、酸素(O)、ホウ素(B)、窒素(N)、硫黄(S)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びジルコニウム(Zr)等が例示される。
非晶質炭素膜2は、その上に形成されるシランカップリング剤層3のプライマー層として設けられるものであり、少なくとも基材と接触していない側の面に珪素を含む。
非晶質炭素膜2中の珪素の含有量は特に限定されるものではないが、前述の作用を高める点で、0.1~50原子%とすることが好ましく、10~40原子%とすることがより好ましい。
非晶質炭素膜2は、さらに、少なくとも基材と接触していない側の面に酸素を含んでいることが好ましい。
前記基材上に、少なくとも基材と接触していない側の面に珪素を含む非晶質炭素膜からなる層、或いは、少なくとも基材と接触していない側の面に珪素及び酸素を含む非晶質炭素膜からなる層を形成することにより、後述するシランカップリング剤膜3との間で十分な接着強度が得られると共に、該シランカップリング剤膜の機能と相俟って、撥水・撥油性或いは超親水性が得られる。
通常、非晶質炭素膜(a-C:H膜)は、好ましくはプラズマCVD法を用いて形成されるが、プラズマ原料ガスに、テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン若しくはテトラメチルシクロテトラシロキサンなどシリコンを含有する炭化水素系のガスを用いることで、珪素を含有する非晶質炭素膜(a-C:H:Si膜)を得ることができる。
また、少なくとも基材と接触していない側の面に珪素及び酸素を含む非晶質炭素膜を得る方法としては、
(a)テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン若しくはテトラメチルシクロテトラシロキサンなどに、酸素を含むガスを同時に混合する方法、
(b)メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素系のガスに、分子中にSi-O結合を有するガス、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、シロキサンなどのガスを同時に混合する方法、
(c)テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン若しくはテトラメチルシクロテトラシロキサンなどシリコンを含有する炭化水素系のプラズマ原料ガスで、珪素を含む非晶質炭素膜(a-C:H:Si膜)を成膜した後、その表面に酸素又は酸素を含むガスで形成するプラズマを照射する方法、
又は
(d)前記(a)若しくは(b)の方法で非晶質炭素膜3を成膜した後、その表面に酸素又は酸素を含むガスで形成するプラズマを照射する方法、
等が代表的な方法として挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
非晶質炭素膜2の厚さは、所期の耐摩耗性、摺動性、及び強度等の特性が得られる範囲で適宜決定すればよく、例えば1nm~50μmとすることができ、5nm~3μmとすることが好ましい。
<シランカップリング剤層>
本発明の構造体におけるシランカップリング剤層3としては、特に限定されずに用いることができるが、一例として、フッ素系シランカップリング剤が挙げられる。フッ素系シランカップリング剤を用いることにより、撥水・撥油性、耐薬品性、低摩擦性、非粘着性等の高機能を有する構造体を得ることができる。
フッ素系シランカップリン剤は、一般式RfSiX4-n(ただし、Rfは撥液性を発現するフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基であり、Xはヒドロキシ基又は加水分解によりヒドロキシ基を生じる基であり、nは1~3の整数である)で表されるシランカップリング剤であって、特に限定されるものではないが、例えば、フロロサーフ社のFG-5010Z130-0.2等が例示される。
また他の例として、親水性シランカップリング剤が挙げられる。親水性シランカップリング剤を用いることにより、超親水性の機能を有する構造体が得られる。
親水性シランカップリング剤は、一般式YSiX4-n(ただし、Yは親水性官能基であり、Xはメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基やハロゲンなど被覆対象部材表面の水酸基と縮合反応可能な基であり、nは1~3の整数である)で表されるシランカップリング剤であって、特に限定されるものではないが、例えば、大阪有機化学工業株式会社製のLANBICシリーズ等が例示される。
シランカップリング剤層3の形成方法としては、特に限定されず、シランカップリング剤の溶液を塗布するか、或いはシランカップリング剤の溶液中に浸漬した後、乾燥する方法や、シランカップリング剤を噴霧する方法等が採用できる。
形成されるシランカップリング剤層3の厚さは特に限定されず、1nm~1μm程度が例示される。
[アルカリ水溶液処理]
本発明の方法に用いるアルカリ水溶液のアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムの水酸化物等が挙げられるが、材料コストの観点から、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムが好ましく、同条件でより短時間の処理を行う場合は、より強アルカリである水酸化カリウムがより好ましい。
本発明においては、アルカリ水溶液処理に用いられるアルカリ水溶液の濃度は、使用されるアルカリの種類、濃度、処理されるシランカップリング剤層の種類や膜厚など種々の要因によって変わり、特に限定されるものではないが、一般的には、アルカリ水溶液のアルカリ濃度範囲は、0.0001~50%が好ましく、より好ましくは0.05~15%、更に好ましくは1~5%である。
アルカリ水溶液で処理する方法としては、特に制限はなく、アルカリ水溶液への浸漬(ディップ)、アルカリ水溶液の塗布、スプレー等の一般的方法で行うことができるが、アルカリ水溶液の処理浴に浸漬して処理することが簡便かつ効率的であり好ましい。
また、処理温度や処理時間は特に制限されるものではないが、処理温度は、アルカリの反応性及び取扱い易さ等から25~45℃が好ましい。また、処理時間はアルカリ水溶液のpH、アルカリ成分濃度、処理温度、構造体の状況等によっても異なるが5~60分程度で十分な効果を得ることができる。
アルカリ水溶液による処理は1回で行うことも可能であるが、水洗を挟み2回以上の処理を行うこともでき、アルカリの濃度やアルカリの種類、処理温度、処理時間を変えることも可能である。
また、アルカリ水溶液に、液撹拌、超音波等の機械振動を加えることにより、反応性が高まり、より短時間で高い効果を得ることができる。
アルカリ水溶液により処理を行った後は、水洗した後、乾燥させ、シランカップリング剤層の形成を行う。
[シランカップリング剤層の形成]
本発明においては、前記のアルカリ水溶液での処理後に、シランカップリング剤層を形成するが、用いるシランカップリング剤は、構造体の表面に形成されていたものと同じであっても、或いは、異なっていてもよい。
また、シランカップリング剤層の形成方法としては、構造体の表面に形成する場合と同様に、特に限定されず、シランカップリング剤の溶液を塗布するか、或いはシランカップリング剤の溶液中に浸漬した後、乾燥する方法や、シランカップリング剤を噴霧する方法等が採用できる。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[テストサンプルの作成]
基材として30×30×1mmのSUS304材(ステンレススチール)を使用し、非晶質炭素膜の製造装置として、高圧DCパルスプラズマCVD装置を用いて、成膜条件は、いずれも高圧DCパルス電源にて、パルス周波数2kHz、パルス幅50μsで行った。
装置(図示せず)に設けられた試料台上に、基材を配置し、次に、反応容器を密閉し、反応容器内の空気を7×10-4Paの真空度まで排気した。ついで、Arガスプラズマにて、Arガス流量15SCCM、ガス圧1.5Pa、印加電圧-4kVの条件で、15分間基材をクリーニングした。このクリーニング処理の後、反応容器内に、テトラメチルシランのガスを流量15SCCMで導入し、1.5Paのガス圧、印加電圧-4Kvで30分間成膜した後、酸素ガスを流量15SCCM、ガス圧1.5Pa、印加電圧-4Kvの条件で3分プラズマ照射して、a-C:H:Si:O膜が形成された基材を得た。
その後、得られた基材のa-C:H:Si:O膜が形成された面に、フッ素系シランカップリング剤であるフロロサーフ社のFG-5010Z130-0.2の溶液(フッ素樹脂0.02~0.2%、フッ素系溶剤99.8%~99.98%)にディップ塗布し、2日間、室温にて乾燥させ、テストサンプル1を得た。
同様に、高圧DCパルス電源を用い、パルス周波数2kHzでArガスプラズマにてArガス流量15SCCM、ガス圧1.5Pa、印加電圧-4kVの条件で、15分間基材をクリーニングした後、反応容器内に、テトラメチルシランを流量15SCCMで導入し、反応ガス圧1.5Pa、印加電圧-4Kvにて30分間成膜して、基材上にa-C:H:Si膜が形成されたテストサンプル2を得た。
次いで、前記テストサンプル2のa-C:H:Si膜が形成された面に、フッ素系シランカップリング剤であるフロロサーフ社のFG-5010Z130-0.2の溶液(フッ素樹脂0.02~0.2%、フッ素系溶剤99.8%~99.98%)にディップ塗布し、2日間、室温にて乾燥させ、テストサンプル3を得た。
[接触角の測定方法]
測定する試料をアセトン中にて超音波洗浄を行い、水の接触角の測定を行った。なお、接触角の測定は、ポータブル接触角計PCA-1(協和界面化学株セスと式会社製)を使用し、室温25℃、湿度30%の環境にて行った。接触角測定に使用した水は純水、評価液量は、1.5μLである。
[摩擦摩耗試験方法]
摩擦摩耗試験は、染色堅ろう度摩擦試験機FR-II(スガ試験機株式会社製)を用い、試験用布:綿かなきん3号、荷重:1kgの条件で行った。
(実施例1)
はじめに前記テストサンプル1の接触角を測定した後、1NのKOH水溶液に、常温から40℃で、30分間撹拌浸漬し、水洗乾燥した後、再度、接触角を測定した。
テストサンプル1の試料の接触角は、KOH水溶液処理の前後で、110.5°から16.6°に変化していた。
撥水・撥油性を発現するフッ素系シランカップリング剤によって形成された層が、破壊されたものと考えられる。
次いで、前記のKOH水溶液による処理を行った後のサンプル1を、前記フロロサーフ社のFG-5010Z130-0.2の溶液にディップ塗布し、2日間、室温にて乾燥させ、実施例1の試料とした。
該試料を用いて、摩擦摩耗試験を行い、接触角の変化を評価した。また、比較例1として、前記アルカリ水溶液での処理を行う前のテストサンプル1を用いて、同様に摩擦摩耗試験を行い、接触角の変化を評価した。
図2に、実施例1及び比較例1の結果を、それぞれ、実線(―●―)及び破線(― ―×― ―)で示す。
図2に示すとおり、実施例1の試料は、比較例1(アルカリ水溶液による処理前のテストサンプル1)の試料と、遜色のない耐久性を示した。このことから、プライマー層(a-C:H:Si:O膜)が、アルカリ処理で再生使用できることがわかる。
(実施例2)
前記テストサンプル2を用い、実施例1と同等にして、アルカリ水溶液処理の前後で、接触角を測定した。
テストサンプル2の試料の接触角は、KOH水溶液処理の前後で、86,2°から64.9°に変化していた。a-C:H:Si膜のSiにOH基が付与されたものと考えられる。
次いで、前記のKOH水溶液による処理を行った後のテストサンプル2に、実施例1と同様にして、フッ素系シランカップリング剤層を形成し、実施例2の試料とした。
該試料を用いて、実施例1と同様にして摩擦摩耗試験を行い、接触角の変化を評価した。また、比較例2として、テストサンプル3(テストサンプル2にフッ素系シランカップリング剤層を形成したもの)を用いて、同様に摩擦摩耗試験を行い、接触角の変化を評価した。
図2に、実施例2及び比較例2の結果を、それぞれ、1点破線(-・-●-・-)及び2点破線(-・・-×-・・-)で示す。
実施例2の試料は、比較例2(テストサンプル3)の試料と比較して、より高い接触角示した。このことから、プライマー層(a-C:H:Si膜)が、アルカリ処理でプライマー層の活性が向上したことがわかる。
本発明に係る方法によれば、シランカップリング剤層による撥水・撥油性機能や超親水性機能等が劣化した構造体に対して、安価で簡便な方法で、該撥水・撥油性機能や超親水性機能を再生及び/又は付与することができる。また、シランカップリング剤層のプライマー層として珪素を含有する非晶質炭素膜を備えた構造体において、アルカリ水溶液で処理することにより、前記のプライマー層の活性を向上できる。このため、本発明に係る方法は、撥水・撥油性が求められる各種部材、或いは超親水性が求められる各種部材、特に食料品の製造用及び/又は搬送用の部材における機能再生方法及び/又は機能付与方法として好適に用いることができる。
1 基材
2 非晶質炭素膜
3 シランカップリング剤層

Claims (4)

  1. 基材と、該基材上に形成され、少なくとも該基材と接触していない側の面に珪素を含む非晶質炭素膜と、前記非晶質炭素膜上にさらにシランカップリング剤からなる層を備えた構造体において、
    前記構造体の表面をアルカリ水溶液で処理すること、及び
    該処理後の表面にシランカップリング剤からなる層を形成すること
    を含む、シランカップリング剤層による機能を再生する方法。
  2. 前記非晶質炭素膜が、少なくとも前記基材と接触していない側の面に酸素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記シランカップリング剤が、フッ素系シランカップリング剤又は親水性シランカップリング剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記構造体が、食料品の製造用及び/又は搬送用の部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
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