JP2008225439A - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents

光学物品およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008225439A
JP2008225439A JP2007278536A JP2007278536A JP2008225439A JP 2008225439 A JP2008225439 A JP 2008225439A JP 2007278536 A JP2007278536 A JP 2007278536A JP 2007278536 A JP2007278536 A JP 2007278536A JP 2008225439 A JP2008225439 A JP 2008225439A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical
layer
base material
coating layer
forming step
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007278536A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5145864B2 (ja
Inventor
Akinori Yamamoto
明典 山本
Masaki Ihara
正樹 井原
Toru Saito
徹 齋藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2007278536A priority Critical patent/JP5145864B2/ja
Publication of JP2008225439A publication Critical patent/JP2008225439A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5145864B2 publication Critical patent/JP5145864B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】光学基材の形状が変わりにくく、形状および度数が維持されることができる光学物品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】光学物品1は、光学基材10と、光学基材10の表面に設けられたコーティング層2と、を備え、TMAを用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、光学基材10の熱機械分析を実施した場合において、光学基材10のTg+10℃の測定温度における光学基材10の厚みの変形量が、初期温度における光学基材10の厚みの10%以上であり、コーティング層2は、光学基材10のTg以下の温度で硬化する材料から形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学材料用樹脂からなる光学物品およびその製造方法に関する。
従来から、モールド型に樹脂材料を注入し、加熱などの方法で重合させることにより光学基材が形成されている。そして、この光学基材に、硬度向上、耐擦傷性および反射防止機能などが付与された光学物品およびその製造方法が知られている。
ここで、重合後にモールド型から外した光学基材には、内部応力が残留しているため、物理的衝撃などの外力に弱いと言われている。
このような内部応力が残留した光学基材を長期間に渡って保管した場合、徐々に内部応力を開放或いは緩和する方向へ光学基材が変形する現象が起こり、光学基材の形状および光学物品の度数が維持されないおそれがある。
そのため、重合後、各種機能が付与される前の光学基材に、ガラス転移点(Tg)を超える温度でのアニール処理を施すことが多い。これにより、光学基材の内部応力を緩和させ、光学物品の形状および度数の安定化を図ることができる。
一方、上述のような光学物品に用いる光学基材の樹脂材料として、屈折率(nd)1.7以上の高屈折率を有する重合性組成物が提案されている。(例えば、特許文献1、2、3参照)。このような高屈折率を有する樹脂材料によれば、優れた光学特性を有する光学物品を構成することができる。
特開2006−169190号公報(第3頁〜第8頁) 特開2006−83313号公報(第4頁〜第10頁) 特開2006−182908号公報(第4頁〜第10頁)
しかしながら、特許文献1〜3に記載の樹脂材料は、熱可塑の性質を持ち合せているため、Tgを超える温度でのアニール処理を施すと、光学基材の形状が変わってしまうおそれがある。光学基材が変形すると、最終製品である光学物品の形状および度数が維持されず、品質低下が引き起こされるという課題があった。
このような課題は、特許文献1〜3に記載の樹脂材料に限定されず、熱可塑性を有する樹脂材料に共通するものであった。
本発明の目的は、光学基材の形状が変わりにくく、形状および度数が維持されることができる光学物品およびその製造方法を提供することである。
本発明の光学物品は、光学基材と、前記光学基材の表面に設けられたコーティング層と、を備え、TMA(Thermomechanical Analyzer)を用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、前記光学基材の熱機械分析を実施した場合において、前記光学基材のガラス転移点+10℃の測定温度における前記光学基材の厚みの変形量が、前記初期温度における前記光学基材の厚みの10%以上であり、前記コーティング層は、前記光学基材のガラス転移点以下の温度で硬化する材料から形成されることを特徴とする。
この発明によれば、光学基材は、測定温度(Tg+10℃)における変形量が大きい材料、つまり熱可塑性を有する材料により構成される。そして、光学基材の表面には、光学基材のガラス転移点(Tg)以下の温度で硬化する材料から形成されたコーティング層が設けられる。
ここで、コーティング層が、光学基材のTg以下の温度で硬化する材料により形成されるので、光学基材の表面においてコーティング層の材料を硬化させる際に、光学基材がそのTg以上に加熱されることがない。したがって、コーティング層の形成時に、熱可塑性を有する光学基材が変形する可能性が低い。
そして、硬化したコーティング層は、光学基材のTg以上に加熱されたとしても、軟化することなく、その形状を維持することができる。
すなわち、本発明の光学物品に光学基材のTg以上の温度でのアニール処理を施した場合、光学基材は軟化するが、光学基材の表面に設けられたコーティング層は軟化しない。
コーティング層がアニール処理によって軟化した光学基材の変形を防ぐので、意図した形状および度数の光学物品が得られる。
なお、アニール処理によれば、光学基材の内部応力を緩和させ、光学物品の形状および度数の安定化を図ることができる。
したがって、本発明の光学物品は、光学基材のTg以上の温度でのアニール処理を実施しても光学基材の形状が変わりにくく、形状および度数を維持することができる優れた光学物品である。
なお、本発明において、「コーティング層が光学基材のガラス転移点以下の温度で硬化する」とは、コーティング層を形成する原料組成物を硬化させる際に、外部から加える温度が、光学基材のTg以下であることを意味する。
例えば、加熱重合により原料組成物を硬化させる場合には、外部からの加熱が光学基材のTg以下であることが必要である。
また、例えば、紫外線などのエネルギー照射によって原料組成物を硬化させる場合にも、重合中における原料組成物の温度が光学基材のTg以下となるように調整することが必要である。
本発明の光学物品では、前記光学基材は、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成されることが好ましい。
式(1)中、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または式(1−2)、または式(1−3)のいずれかである。
一般式(1)で示される化合物は、屈折率が高く、光学特性に優れた光学基材を与える一方、熱可塑性を有するためアニール処理によって変形を生じるという問題点があった。
これに対し、本発明では、コーティング層が、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成される光学基材のTg以下の温度で硬化され、光学基材の表面に形成されていることにより、コーティング層が高温下でも軟らかくなることがなく、コーティング層が変形しないことによって、結果的に光学基材の形状を維持することになる。
このため、アニール処理でTgを超える温度で光学基材を加熱しても、形状および度数を維持することが可能となり、高屈折率で光学特性に優れた光学物品を提供することができる。
本発明の光学物品では、前記コーティング層は、前記光学基材の変形防止用のコーティング層である構成が好ましい。
この発明では、光学基材の変形防止用のコーティング層が、光学基材の表面に形成されていることにより、コーティング層が光学基材の形状変化を防止することから、アニール処理を施しても形状および度数が維持されることが可能となる光学物品を提供することができる。
本発明の光学物品では、前記コーティング層が、プライマ層、ハードコート層、反射防止層の少なくとも一つを兼ねる構成が好ましい。
この発明では、コーティング層は、従来の光学物品に備えられているプライマ層、ハードコート層、反射防止層の少なくとも一つを兼ねることができるため、製造工程を増やすことなくコーティング層を備えた光学物品を製造できる。このため、構成を複雑にすることなく、アニール処理を施しても変形のない光学物品を提供することができる。
本発明の光学物品の製造方法は、光学基材を形成する基材形成工程と、前記基材形成工程の後に、前記光学基材の表面に前記光学基材の変形防止用のコーティング層を前記光学基材のガラス転移点以下の温度で形成するコーティング層形成工程と、前記コーティング層形成工程の後に、前記コーティング層および前記光学基材を前記光学基材のガラス転移点を超える温度で加熱するアニ−ル工程と、を備え、TMA(Thermomechanical Analyzer)を用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、前記光学基材の熱機械分析を実施した場合において、前記光学基材のガラス転移点+10℃の測定温度における前記光学基材の厚みの変形量が、前記初期温度における前記光学基材の厚みの10%以上であることを特徴とする。
この発明によれば、基材形成工程で形成された熱可塑性の光学基材の表面に、光学基材のTg以下の温度で、変形防止用のコーティング層を形成する(コーティング層形成工程)。
このコーティング層形成工程において、光学基材は、そのTg以上の温度には加熱されない。よって、熱可塑性を有する光学基材が変形する可能性が低い。
コーティング層形成工程に続くアニール工程では、コーティング層および光学基材を光学基材のTgを超える温度で加熱する。
これにより、光学基材の内部応力を緩和させ、光学物品の形状および度数の安定化を図ることができる。
ここで、従来は、熱可塑性を備える光学基材を含む光学物品にアニール工程を実施すると、光学基材が変形し、最終製品である光学物品の形状および度数が維持されず、品質低下が引き起こされるという課題があった。
これに対し、本発明では、コーティング層形成工程において、光学基材の表面に、変形防止用のコーティング層を形成する。コーティング層は、アニール工程においても軟化しないので、その形状を維持することができ、コーティング層に隣接する光学基材の形状もまた維持される。
したがって、本発明の光学物品の製造方法によれば、光学基材のTg以上の温度でのアニール工程を実施しても光学基材の形状が変わりにくく、形状および度数を維持することができる優れた光学物品を製造することができる。
本発明において、前記基材形成工程では、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から前記光学基材を形成することが好ましい。
式(1)中、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または式(1−2)、または式(1−3)のいずれかである。
一般式(1)で示される化合物は、屈折率が高く、光学特性に優れた光学基材を与える一方、熱可塑性を有するためアニール処理によって変形を生じるという問題点があった。
これに対し、本発明では、コーティング層形成工程が、光学基材の変形防止用のコーティング層を、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成される光学基材のTg以下の温度で硬化して、光学基材の表面に形成することにより、光学基材の形状を変わりにくくした後に基材組成物から形成される光学基材のTgを超える温度でアニール工程を行って光学基材の内部応力を緩和させる。このことから、形状および度数を維持する光学物品の製造方法を提供することができる。
本発明の光学物品の製造方法では、前記コーティング層形成工程は、前記光学基材の表面にプライマ層を形成するプライマ層形成工程と、前記光学基材の表面もしくは前記プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、前記光学基材の表面もしくは前記ハードコート層の表面もしくは前記プライマ層の表面に反射防止層を形成する反射防止層形成工程との少なくとも一つを兼ねる構成が好ましい。
この発明では、コーティング層形成工程が、プライマ層形成工程と、ハードコート層形成工程と、反射防止層形成工程との少なくとも一つを兼ねることにより、アニール工程の後の工程が短縮する。このことから、簡略化された光学物品の製造方法を提供することができる。
本発明では、熱可塑性を有する光学基材の表面に、光学基材のTg以下の温度で硬化する材料から形成されるコーティング層を設けたので、光学基材のTg以上の温度でのアニール処理を施した場合にも、コーティング層の存在によって光学基材の変形を防ぐことができ、意図した形状および度数の光学物品を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明による光学物品およびその製造方法は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態の光学物品の概略構成を示す断面図である。
図2〜5は、それぞれ光学物品の製造方法の実施形態1〜9を示すフローチャート図である。
図6〜8は、本実施形態の光学物品の製造方法を示す概略図である。
[光学物品]
図1は、本実施形態の光学物品1を示す。以下、光学物品1について、図1に基づき説明する。本実施形態では、光学物品1はメガネレンズである。
図1において、本実施形態の光学物品1は、光学基材10と、光学基材10の表面に形成されたコーティング層2とを備えている。なお、コーティング層2の表面には、2点鎖線で示す層Pを備えていてもよい。
TMAを用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、光学基材10の熱機械分析を実施した場合において、光学基材10のTg+10℃の測定温度における光学基材10の厚みの変形量が、初期温度における光学基材10の厚みの10%以上である。
つまり、光学基材10は、熱可塑性を有する。
光学基材10は、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11からなる高屈折率を有する樹脂材料から形成されることが好ましい。
一般式(1)において、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または(1−2)、または(1−3)のいずれかである。
通常、光学物品1は、光学基材10の表面に、プライマ層、ハードコート層、および反射防止層が、内側から外側に向けて積層されているが、物品によっては、プライマ層や反射防止層が省略されることがある。
本実施形態のコーティング層2は、プライマ層、ハードコート層、および反射防止層の少なくとも一つである。
つまり、コーティング層2は、図1において、一層構成に描画しているが、一層構成もしくは複数の層からなる複層構成である。
そして、コーティング層2は、光学基材10の変形防止用であって、光学基材10のTg以下の温度で硬化されることにより形成される。
このため、コーティング層2および2点鎖線で示す層Pは、以下に示す構成例が挙げられる。
(構成1)コーティング層2はプライマ層およびハードコート層からなる二層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、反射防止層である。
(構成2)コーティング層2はハードコート層からなる一層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、反射防止層である。
(構成3)コーティング層2はプライマ層およびハードコート層および反射防止層からなる三層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、形成されていない。
(構成4)コーティング層2は複数の無機層が積層された反射防止層からなる多層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、形成されていない。
プライマ層は、ウレタン樹脂などで形成されている。ハードコート層は、シリコーン系、アクリル系材料などで形成されている。反射防止層は、一層構成もしくは複数の層からなる複層構成である。複層構成の例としては、SiOからなる層と、ZrOまたはTiOからなる層とが、交互に積層された構成である。
[光学物品の製造方法]
図2〜図5は、本実施形態の光学物品の製造方法の例を示すフローチャート図である。
以下、本実施形態の製造方法について、以下に示す4つの実施形態について図2〜図5に基づきそれぞれ説明する。
いずれの光学物品1の製造方法においても、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から光学基材10を形成する基材形成工程を行い、この基材形成工程の後に、光学基材10の表面に光学基材10の変形防止用のコーティング層2を形成するコーティング層形成工程と、コーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱するアニ−ル工程とを備える。
[第1実施形態]
図2において、光学物品1の製造方法の第1実施形態を説明する。第1実施形態の方法では、基材形成工程として、まず、光学基材10の原料である基材組成物11を調合する原料調合工程(S101)を実施し、続けて、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)を実施し、その後に、コーティング層形成工程を実施する。ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)の具体的な手順については後述する。
コーティング層形成工程は、光学基材10の表面にプライマ層を形成するプライマ層形成工程(S105)と、プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート層形成工程(S106)とを備え、これらの工程を順順に実施する。これにより、光学基材10の表面に、構成1で示されるプライマ層およびハードコート層からなるコーティング層2が形成される。なお、これらの工程の具体的な手順については後述する。
コーティング層形成工程の後に、アニール工程(S107)を行う。
このアニール工程では、プライマ層およびハードコート層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
アニール工程の後に、反射防止層形成工程(S108)を行う。これにより、光学物品1が完成する。なお、アニール工程の後に、反射防止層形成工程を行うとしたが、反射防止層形成工程を行わずに、光学物品1が完成するとしてもよい。反射防止層形成工程(S108)の具体的な手順については後述する。
[第2実施形態]
光学物品1の製造方法の第2実施形態を図3に基づいて説明する。図3において、光学物品1の製造方法の第2実施形態は、コーティング層形成工程として、第1実施形態と比べてプライマ層形成工程は行わないとし、光学基材10の表面にハードコート層形成工程(S205)を行うことに特徴がある。これにより、光学基材10の表面に、構成2に示すコーティング層2が形成される。アニール工程(S206)は、図2に示すアニール工程(S107)と同様に、コーティング層形成工程の後に行う。このアニール工程では、ハードコート層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
アニール工程の後に、図2に示す反射防止層形成工程(S108)と同様に、反射防止層形成工程(S207)を行う。これにより、光学物品1が完成する。
基材形成工程は、図2に示す基材形成工程S101〜S104と同様のため、同一の符号を付与して説明を省略する。
第2実施形態の方法において、ハードコート形成工程(S205)およびアニール工程(S206)および反射防止層形成工程(S207)は、図2に示すハードコート層形成工程(S106)およびアニール工程(S107)および反射防止層形成工程(S108)とそれぞれ同様である。
[第3実施形態]
光学物品1の製造方法の第3実施形態を図4に基づいて説明する。図2において、コーティング層形成工程としてプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を行うとしたことを、本実施形態では、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート層形成工程(S306)に引き続いて反射防止層形成工程(S307)を実施してコーティング層形成工程が行われることに特徴がある。これにより、光学基材10の表面に、構成3に示すコーティング層2を形成する。アニール工程(S308)は、図2に示すアニール工程(S107)と同様に、コーティング層形成工程の後に行う。これにより、光学物品1が完成する。このアニール工程では、プライマ層、ハードコート層および反射防止層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与する。また、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート層形成工程(S306)およびアニール工程(S308)は、図2に示すプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)およびアニール工程(S107)とそれぞれ同様である。
[第4実施形態]
光学物品1の製造方法の第4実施形態を図5に基づいて説明する。図5に示す光学物品1の製造方法は、図2において、コーティング層形成工程としてプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を行うとしたことを、プライマ層形成工程およびハードコート層形成工程は行わず、反射防止層形成工程(S405)のみからコーティング層形成工程を実施することに特徴がある。これにより、光学基材10の表面に、構成4に示すコーティング層2を形成する。アニール工程(S406)は、図2に示すアニール工程(S107)と同様に、コーティング層形成工程の後に行う。これにより、光学物品1が完成する。なお、アニール工程では、反射防止層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与する。
[基材形成工程]
図6は、基材形成工程の一例を示す概略図である。図6(A)(B)は原料調合工程(S101)の後に行うガラスモールド注入工程(S102)の具体的手順を示す概略図であり、図6(C)は熱硬化工程(S103)の具体的手順を示す概略図であり、図6(D)は離型工程(S104)の具体的手順を示す概略図である。
図6(A)に示すように、成型用ガラスモールド20は光学基材10を成形するためのものである。成型用ガラスモールド20において、ガラス製の一対のガラスモールド21,22は隙間を介して対向配置され、一対のガラスモールド21,22の外周面に粘着テープ23が巻きつけられて、キャビティ24を形成している。一対のガラスモールド21,22および粘着テープ23により囲まれたキャビティ24は、度数が約−3Dの光学基材10を形作るように形成されている。
ガラスモールド注入工程(S102)では、図6(B)に示すように、注入ノズル25を用いて、キャビティ24に、原料調合工程において得た基材組成物11を注入する。そして、ガラスモールド注入工程(S102)の後に、熱硬化工程(S103)を行う。
熱硬化工程(S103)では、図6(C)に示すように、加熱または紫外線照射などで基材組成物11を硬化させ、光学基材10を形作る。さらに、熱硬化工程(S103)の後に、離型工程(S104)を行う。
離型工程(S104)では、図6(D)に示すように、粘着テープ23を一対のガラスモールド21,22および光学基材10から取り外し、一対のガラスモールド21,22を光学基材10から離間させて、光学基材10を取り出す。これにより、光学基材10を形成する。
[コーティング層形成工程]
図7,8は、光学物品1の製造方法のコーティング層形成工程の例を示す概略図である。
図7は、コーティング層形成工程において、ウェットプロセスの一例として、浸漬法によるコーティング層2の形成に用いる浸漬装置30の構成を示す概略斜視図である。以下、上述の各実施形態のコーティング層形成工程の一例として、浸漬法によるプライマ層形成工程(S105)について、図7に基づき説明する。
浸漬装置30は、タンク34と昇降部31とを備えている。タンク34内には、コーティング組成物Lとしてのウレタン樹脂などからなるプライマ組成物が収納されている。
昇降部31は、把持具33とロッド32とを備え、把持具33はロッド32に連結されている。昇降部31は、図7に示す矢印の方向に昇降する構造になっている。把持具33が光学基材10の外周面部を把持し、昇降部31が降下することにより、タンク34内のコーティング組成物Lに、光学基材10を浸漬させる。浸漬後、昇降部31を上昇することにより、タンク34内から光学基材10を引き上げ、コーティング組成物Lが光学基材10に塗布される。塗布後、光学基材10に塗布されたコーティング組成物Lに、加熱または紫外線照射などで硬化処理を施し、コーティング組成物Lを硬化させることにより、プライマ層が形成された光学基材10を得る。これにより、コーティング組成物Lからなるコーティング層2が光学基材10の表面に形成された光学物品1を得る。なお、引き上げ速度および硬化処理条件などについては、適宜決定することができる。
また、浸漬装置30を用いたハードコート層形成工程(S106)および反射防止層形成工程(S108)において、ハードコート層および反射防止層を形成する方法は前述と略同じであり、タンク34内にシリコーン系、アクリル系材料などからなるハードコート組成物を収納するか、または有機物からなる有機層組成物を収納するかが相違するものであり、さらには、引き上げ速度および硬化処理条件も相違するものである。なお、ハードコート組成物や反射防止層用有機層組成物は従来と同じ材料を使用する。
図8は、コーティング層形成工程において、ドライプロセスの一例として、真空蒸着法によるコーティング層の形成に用いる真空蒸着装置40の構成を示す概略断面図である。
以下、上述の各実施形態のコーティング層形成工程の一例として反射防止層形成工程(S405)に用いる真空蒸着法について、図8に基づき説明する。
真空蒸着装置40は、真空容器41、および排気装置42、およびガス供給装置43、および圧力計44を備えている。真空蒸着装置40は、いわゆる電子ビーム真空蒸着装置である。
真空容器41は、真空容器41内に蒸着材料がセットされた蒸発源46,47、蒸発源46,47の蒸着材料を加熱溶解し蒸発させるフィラメント48、光学基材10が載置される基材支持台45、光学基材10を加熱するための基材加熱用ヒータ49などを備えている。また、必要に応じて真空容器41内に残留した水分を除去するためのコールドトラップや、酸素などのガスを導入し、導入したガスをイオン化し加速して光学基材10に照射する装置、膜厚を管理するための装置などが具備される。蒸着材料としては、無機物であるSiO、ZrO、またはTiOなどが挙げられる。
蒸発源46,47は、蒸着材料がセットされたるつぼであり、真空容器41内の下部に配置されている。フィラメント48が発熱することによって発生する熱電子を、電子銃により加速、偏向して、蒸発源46,47にセットされた蒸着材料に照射し蒸発させる。いわゆる電子ビーム蒸着が行われる。電子ビームの電流値に特に制限はないが、当該電流値は蒸着速度との密接な関係があるため必要な蒸着速度に応じて調整できる。また、蒸着材料を蒸発させる他の方法として、タングステンなどの抵抗体に通電し蒸着材料を溶融し気化する方法、いわゆる抵抗加熱蒸着、そして高エネルギーのレーザー光を蒸発させたい材料に照射する方法などがある。
基材支持台45は、所定数の光学基材10を載置する支持台であり、蒸発源46,47と対向した真空容器41内の上部に配置されている。基材支持台45は、光学基材10に形成されるコーティング層2の均一性を確保し、かつ量産性を高めるために回転機構を有するのが好ましい。
基材加熱用ヒータ49は、たとえば赤外線ランプからなり、基材支持台45の上部に配置されている。基材加熱用ヒータ49は、光学基材10を加熱することにより光学基材10のガス出しあるいは水分とばしを行い、光学基材10の表面に形成される層の密着性を確保する。なお、赤外線ランプの他に抵抗加熱ヒータなどを用いることができるが、光学基材10の材質がプラスチックまたは樹脂の場合には、赤外線ランプを用いるのが好ましい。
排気装置42は、真空容器41内を高真空に排気する装置であり、ターボ分子ポンプと、真空容器41内の圧力を一定に保つ圧力調節バルブとを備えている。
ガス供給装置43は、Ar,N,Oなどのガスを内蔵するガスシリンダと、ガスの流量を制御する流量制御装置とを備えている。ガスシリンダに内蔵されたガスは、流量制御装置を介して真空容器41内に導入される。
圧力計44は、真空容器41内の圧力を検出する。圧力計44によって検出された圧力値に基づき、排気装置42の圧力調節バルブが、制御部(図示せず)からの制御信号により制御されて、真空容器41内の圧力が所定の圧力値に保たれる。圧力の調整方法としては、排気口のコンダクタンスを変化させる方法とガスを導入して導入量を変化させる方法などがあるがどちらでもかまわない。したがって、真空容器41内の圧力は、ガス供給装置43のガスシリンダから供給されるガスの流量を制御する流量制御装置を制御する方法でも可能である。また、特に調整をしないで排気後の残圧で圧力を調整する場合は、屈折率が変化する場合があるので膜厚の調整が必要になる。とくに圧力制御を行わない場合には蒸着中に大きく圧力が変化する場合がある。
以下に、本実施形態の実施例1〜9について説明する。
[実施例1]
実施例1において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成1に示す二層構成である。
実施例1に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、上述した第1実施形態を示す図2である。
まず、基材形成工程として、原料調合工程(S101)、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)を順順に行う。以下、基材形成工程について、図2および図6を参照して説明する。
原料調合工程(S101)において、光学物品1を形成する光学基材10の組成物として、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成する。
光学基材10の原料としてテトラキス(2,3−エピチオプロピルチオ)スズ(以下、『Sn−1』と記す。)を30g、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業製)0.3gを添加し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後に、重合触媒としてN,Nジメチルシクロへキシルアミン0.1gを加えて混合した後、1.5kPa以下に減圧した状態で攪拌しながら15分間脱気を行うことにより、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を得る。Sn−1からなる基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTgは、110℃である。
原料調合工程(S101)の後に、ガラスモールド注入工程(S102)を行う。ガラスモールド注入工程(S102)では、図6(A)に示す成型用ガラスモールド20に、図6(B)に示すようにして、基材組成物11を注入する。
ガラスモールド注入工程(S102)の後に、熱硬化工程(S103)を行う。熱硬化工程(S103)では、図6(C)に示すように、成型用ガラスモールド20および成型用ガラスモールド20に注入された基材組成物11を、30℃から120℃まで20時間かけて昇温し、基材組成物11を重合硬化させることにより、光学基材10を形作る。
熱硬化工程(S103)の後に、離型工程(S104)を行う。これにより、図6(D)に示すように、光学基材10を得る。ここで、光学基材10は、度数が約−3Dであることを確認した。また、2枚の鏡面仕上げされたガラスフラット板を用いて、厚さ2mmのプラスチック板を作成し、ダイヤモンドカッタで光学基材10を切り出した。切り出された光学基材10の屈折率を、アッベ屈折率計を用いて、気温20℃で589.3nmのD線の屈折率を測定し、nd=1.794であることを確認した。
離型工程(S104)の後に、コーティング層形成工程として、プライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を順順に行う。まず、プライマ層形成工程(S105)について図7を参照して説明する。
ステンレス製のタンク34内に、メチルアルコール220g、水91.8gを投入し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後、酸化チタン、酸化スズ、および酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、全固形物濃度20重量%、触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク1120Z」、以下、「オプトレイク1120Z」と記す)を加え、攪拌して混合する。攪拌混合後、水性ポリエステル(伊藤光学株式会社製)77gを加え、攪拌して混合する。シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)0.1gを添加して、2時間攪拌して混合する。これにより、プライマ層を形成するためのコーティング組成物Lとして、プライマ組成物を得る。プライマ組成物の中に、離型工程(S104)の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に、プライマ組成物を塗布する。引き上げ速度は、200mm/minとする。プライマ組成物が塗布された光学基材10に、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、光学基材10の表面に形成されたプライマ層を得る。
プライマ層形成工程(S105)の後に、ハードコート層形成工程(S106)を行う。以下、ハードコート形成工程(S106)について図7を参照して説明する。
ステンレス製のタンク34内に、ブチルセロソルブ62.5gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン67.1gを投入し、十分に攪拌して混合する。その後攪拌しながら、タンク34内に、0.1モル/リットル塩酸30.7gを滴下し、さらに4時間攪拌する。その後、一昼夜熟成させることにより、シラン加水分解物を得る。このシラン加水分解物の中に、オプトレイク1120Zを325g、ならびにグリセロールジグリシジルエーテル(ナガセ化成株式会社製、商品名「デナコールEX−313」)12.5gを添加する。その後、鉄(III)アセチルアセトナート1.36gおよびシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7001」、以下、「L−7001」と記す)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.26gを添加して、4時間攪拌する。その後、一昼夜熟成させることにより、コーティング組成物Lとして、ハードコートα層形成用コーティング組成物を得る。
ハードコートα層形成用コーティング組成物の中に、プライマ層形成工程においてプライマ層が形成された光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に形成されたプライマ層の表面に、ハードコートα層形成用コーティング組成物を塗布する。引き上げ速度は、200mm/minとする。ハードコートα層形成用コーティング組成物が塗布された光学基材10に、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、プライマ層の表面に形成されたハードコートα層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成1に示すコーティング層2を形成する。
ハードコート層形成工程(S106)の後に、アニール工程(S107)を行う。アニール工程(S107)において、コーティング層2としてプライマ層およびプライマ層の表面にハードコートα層が形成された光学基材10に、125℃で3時間のアニール処理を施す。これにより、光学物品1が完成する。
アニール工程(S107)の後に、図7に示す浸漬装置30を用いて、反射防止層形成工程(S108)を行う。アニール処理を施された光学基材10の表面に形成されたプライマ層、そしてこのプライマ層の表面に形成されたハードコートα層の表面に、2点鎖線で示す層Pとして反射防止層を形成する。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例2]
以下に、本発明の実施例2について、図面に基づき説明する。
実施例2において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成2に示す一層構成である。
実施例2に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、上述した第2実施形態を示す図3である。
図3に示すように、実施例2の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、ハードコート層形成工程(S205)のみを実施することに特徴がある。なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
離型工程(S104)の後に、コーティング層形成工程として、実施例2のハードコート層形成工程(S205)を行う。以下、ハードコート層形成工程(S205)について図7を参照して説明する。
コーティング組成物Lとして、前述のハードコートα層形成用コーティング組成物の中に、離型工程(S104)の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に、ハードコートα層形成用コーティング組成物を塗布する。引き上げ速度は、実施例1と同様に、200mm/minとする。ハードコートα層形成用コーティング組成物が塗布された光学基材10に、実施例1と同様にして、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、光学基材10の表面にハードコートα層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成2に示すコーティング層2を形成する。
ハードコート層形成工程(S205)の後に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程(S206)を行う。アニール工程(S206)の後に、実施例1に示す反射防止層形成工程(S108)と同様に反射防止層形成工程(S207)を行う。アニール処理を施された光学基材10の表面に形成されたハードコートα層の表面に、2点鎖線で示す層Pとして反射防止層を形成する。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例3]
以下に、本発明の実施例3について、図面に基づき説明する。
実施例3において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成2に示す一層構成である。
実施例3に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、実施例2と同じく上述した第2実施形態を示す図3である。
実施例3の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、図3に示すハードコート層形成工程(S205)において、ハードコートβ層を形成することに特徴がある。なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
以下、実施例3のハードコート層形成工程(S205)について図7を参照して説明する。
ステンレス製のタンク34内にブチルセロソルブ1000重量部を投入し、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸300重量部を添加して一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得る。このシラン加水分解物中にL−7001を30重量部、加えて1時間撹拌した後、酸化チタンを主体とする複合微粒子ゾル(オプトレイク1120Z)を7300重量部加え2時間撹拌混合した。次いでエポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名デナコールEX−313)250重量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部を加えて1時間攪拌し、2μmのフィルターで濾過を行うことで、コーティング組成物Lとして、ハードコートβ層形成用コーティング組成物を得る。
ハードコートβ層形成用コーティング組成物の中に、離型工程の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に、ハードコートβ層形成用コーティング組成物を塗布する。引き上げ速度は、実施例1と同様に、200mm/minとする。ハードコートβ層形成用コーティング組成物が塗布された光学基材10に、実施例1と同様にして、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、光学基材10の表面にハードコートβ層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成2に示すコーティング層2を形成する。
ハードコート層形成工程(S205)の後に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程(S206)を行う。アニール工程(S206)の後に、実施例1に示す反射防止層形成工程(S108)と同様に反射防止層形成工程(S207)を行う。アニール処理を施された光学基材10の表面に形成されたハードコートβ層の表面に、2点鎖線で示す層Pとして反射防止層を形成する。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例4]
以下に、本発明の実施例4について、図面に基づき説明する。
実施例4において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成3に示す三層構成である。
実施例4に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、上述した第3実施形態を示す図4である。
図4に示すように、実施例4の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート層形成工程(S306)を行い、引き続いて反射防止層形成工程(S307)を実施することに特徴がある。なお、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート形成工程(S306)は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。また、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
以下、ハードコート層形成工程の後に行う、反射防止層形成工程(S307)について、図7を参照して説明する。
ステンレス製のタンク34内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル48.6gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン14.1gを投入し、十分に攪拌して混合する。その後攪拌しながら、タンク34内に、0.1モル/リットル塩酸4gを滴下し、さらに5時間攪拌する。その後、イソプロパノール分散中空シリカゲル(平均粒径91nm、固形濃度30重量%、触媒化成工業株式会社製)33.3gを添加して十分に攪拌して混合する。そしてL−7001を0.03g添加し、十分攪拌し、溶解させることにより固形分濃度20%のコーティング原液を得る。この固形分濃度20%のコーティング原液に、300ppm濃度のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)を含有するプロピレングリコールモノエーテル溶液114.7gを添加し、十分に攪拌し、コーティング組成物Lとして、反射防止層用有機層組成物である固形分濃度約4.7%のコーティング液を得る。
この固形分濃度約4.7%のコーティング液の中に、ハードコート層形成工程(S306)の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面からプライマ層およびハードコートα層の順に形成されたハードコートα層の表面に、固形分濃度約4.7%のコーティング液を塗布する。引き上げ速度は、実施例1と同様に、100mm/minとする。固形分濃度約4.7%のコーティング液が塗布された光学基材10に、実施例1と同様にして、80℃で30分間の加熱処理を施し、反射防止層用有機層を得る。これにより、ハードコートα層の表面に形成された反射防止層用有機層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成3に示すコーティング層2を形成する。
反射防止層形成工程(S307)の後に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程(S308)を行う。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例5]
以下に、本発明の実施例5について、図面に基づき説明する。
実施例5において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成4に示す多層構成である。
実施例5に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、上述した第4実施形態を示す図5である。
図5に示すように、実施例5の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、反射防止層形成工程(S405)のみを実施することに特徴がある。なお、基材形成工程は、実施例1の図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
離型工程(S104)の後に、コーティング層形成工程として反射防止層形成工程(S405)を行う。以下、反射防止層形成工程(S405)について図8を参照して説明する。
離型工程(S104)の後の光学基材10に、プラズマ処理を施す。プラズマ処理の条件は、アルゴンプラズマ400Wで60秒間とする。プラズマ処理された光学基材10の表面から順に、第1層としてのSiO、第2層としてのZrO、第3層としてのSiO、第4層としてのZrO、第5層としてのSiOを、図8に示す真空蒸着装置40を用いて、真空蒸着法により形成する。真空蒸着装置40は、真空器械工業株式会社製、装置名「BMC−1000」を用いる。これにより、コーティング層2として、無機層である第1層、第2層、第3層、第4層、および第5層からなる反射防止多層膜を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成4に示すコーティング層2を形成する。
反射防止多層膜を構成する第1層から第5層のそれぞれの光学的膜厚は、次に示すとおりである。第1層としてのSiOの光学的膜厚は0.083λ、第2層としてのZrOの光学的膜厚は0.17λ、第3層としてのSiOの光学的膜厚は0.075λ、第4層としてのZrOの光学的膜厚は0.195λ、第5層としてのSiOの光学的膜厚は0.025λとする。そして、第1層、ならびに第2層、第3層、および第4層、ならびに第5層の光学的膜厚は、それぞれλ/4となる。反射防止多層膜の波長λは、設計値520nmとする。
反射防止層形成工程の後に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程(S406)を行う。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例6]
以下に、本発明の実施例6について、図面に基づき説明する。
実施例6において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成4に示す多層構成である。
実施例6に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、実施例5と同じく上述した第4実施形態を示す図5である。
実施例6の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、図5に示す反射防止層形成工程(S405)において、SiOおよびTiOからなる7層の反射防止層を形成することに特徴がある。なお、基材形成工程は、実施例1の図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
離型工程(S104)の後に、コーティング層形成工程として、反射防止層形成工程(S405)を行う。以下、実施例6の反射防止層形成工程(S405)について図8を参照して説明する。
離型工程(S104)の後の光学基材10に、プラズマ処理を施す。プラズマ処理の条件は、アルゴンプラズマ400Wで60秒間とする。プラズマ処理された光学基材10の表面から順に、第1層としてのSiO、第2層としてのTiO、第3層としてのSiO、第4層としてのTiO、第5層としてのSiO、第6層としてのTiO、第7層としてのSiOを、図8に示す真空蒸着装置40を用いて、真空蒸着法により形成する。これにより、コーティング層2として、無機層である第1層、第2層、第3層、第4層、第5層、第6層、および第7層からなる反射防止多層膜を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成4に示すコーティング層2を形成する。
反射防止多層膜を構成する第1層から第7層のそれぞれの光学的膜厚は、次に示すとおりである。第1層としてのSiOの光学的膜厚は0.083λ、第2層としてのTiOの光学的膜厚は0.070λ、第3層としてのSiOの光学的膜厚は0.10λ、第4層としてのTiOの光学的膜厚は0.18λ、第5層としてのSiOの光学的膜厚は0.065λ、第6層としてのTiOの光学膜厚は0.14λ、第7層としてのSiOの光学的膜厚は0.26λとする。そして、第1層、ならびに第2層、第3層、第4層、第5層、および第6層、ならびに第7層の光学的膜厚は、それぞれλ/4となる。反射防止多層膜の波長λは、設計値520nmとする。
反射防止層形成工程(S405)の後に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程(S406)を行う。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例7]
以下に、本発明の実施例7について、図面に基づき説明する。
実施例7において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
実施例7に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、実施例1と同じく上述した第1実施形態を示す図2である。
実施例7の光学物品の製造方法は、図2に示す原料調合工程(S101)において、光学基材10の原料としてSn−1を用いて光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成するとしたことを、光学基材10の原料としてテトラキス(3−オキセタニルチオ)スズ(以下、『Sn−2』と記す。)を用いることに特徴を有している。
以下、原料調合工程(S101)について説明する。
原料調合工程(S101)において、光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成する。
光学基材10の原料としてSn−2を30g、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業製)0.3g、重合触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸0.3gを添加し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後に、重合触媒としてN,Nジメチルシクロへキシルアミン0.1gを加えて混合した後、1.5kPa以下に減圧した状態で攪拌しながら15分間脱気を行うことにより、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を得る。Sn−2を含む基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTgは、110℃である。
原料調合工程(S101)の後に、実施例1と同様に、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)を行う。これにより、光学基材10を得る。ここで、光学基材10は、度数が約−3Dであることを確認した。また、2枚の鏡面仕上げされたガラスフラット板を用いて、厚さ2mmのプラスチック板を作成し、ダイヤモンドカッタで光学基材10を切り出した。切り出された光学基材10の屈折率を、アッベ屈折率計を用いて、気温20℃で589.3nmのD線の屈折率(nd)を測定し、nd=1.754であることを確認した。なお、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
離型工程(S104)の後、実施例1と同様に、コーティング層形成工程として、プライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を順順に行う。このようにして、光学基材10の表面に、構成1に示すコーティング層2を形成する。コーティング層形成工程の後に、アニール工程(S107)および反射防止層形成工程(S108)を順順に行う。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例8]
以下に、本発明の実施例8について、図面に基づき説明する。
実施例8において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
実施例8に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、実施例1と同じく上述した第1実施形態を示す図2である。
実施例8の光学物品の製造方法は、図2に示す原料調合工程(S101)において、光学基材10の原料としてSn−1を用いて光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成するとしたことを、光学基材10の原料としてテトラキス(2,3−エポキシ−1−プロピルチオ)スズ(以下、『Sn−3』と記す。)を用いることに特徴がある。
以下、原料調合工程(S101)について説明する。
原料調合工程において、光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成する。
光学基材10の原料としてSn−3を30g、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業製)0.3g、重合触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸0.015gを添加し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後に、重合触媒としてN,Nジメチルシクロへキシルアミン0.1gを加えて混合した後、1.5kPa以下に減圧した状態で攪拌しながら15分間脱気を行うことにより、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を得る。Sn−3を含む基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTgは、110℃である。
原料調合工程の後に、実施例1と同様に、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)を行うことにより、光学基材10を得る。ここで、光学基材10は、度数が約−3Dであることを確認した。また、2枚の鏡面仕上げされたガラスフラット板を用いて、厚さ2mmのプラスチック板を作成し、ダイヤモンドカッタで光学基材10を切り出した。切り出された光学基材10の屈折率を、アッベ屈折率計を用いて、気温20℃で589.3nmのD線の屈折率(nd)を測定し、nd=1.758であることを確認した。なお、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
離型工程(S104)の後、実施例1と同様に、コーティング層形成工程として、プライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を順順に行う。このようにして、光学基材10の表面に、構成1に示すコーティング層2を形成する。コーティング層形成工程の後に、アニール工程(S107)および反射防止層形成工程(S108)を順順に行う。これにより、光学物品1が完成する。
[実施例9]
以下に、本発明の実施例9について、図面に基づき説明する。
実施例9において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
実施例9に係る光学物品1の製造方法を示すフローチャート図は、実施例1と同じく上述した第1実施形態を示す図2である。
実施例9の光学物品の製造方法は、図2に示すアニール工程(S107)において、プライマ層およびプライマ層の表面に形成されたハードコートα層が形成された光学基材10の凹面側を下にして、凹面側と対向する台の上または光学基材10の周縁と同様の形状に形成されたリング状治具の上に配置し、アニール処理を施すとしたことを、図9に示すように、光学基材10の凹面側を下にして、光学基材10の凹面側の形状に沿うように凸面形状を有したガラス型26の凸面形状の上に配置し、アニール処理を施すことを特徴とする。アニール処理は、実施例1と同様に125℃で3時間とする。これにより、光学物品1が完成する。実施例9のアニール工程(S107)以外の製造方法は、実施例1の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
[実施例10]
基材形成工程において、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)ペレットを射出成形法によりレンズ形状に加工して光学基材10を得た以外は、実施例1と同様にして光学物品1を製造した。
PMMAペレットからフラット板を作成し、TMAを用いてTgを測定したところ、110℃であった。
[実施例11]
基材形成工程において、市販のPst(ポリスチレン)ペレットを射出成形法によりレンズ形状に加工して光学基材10を得た以外は、実施例1と同様にして光学物品1を製造した。
Pstペレットからフラット板を作成し、TMAを用いてTgを測定したところ、95℃であった。
上述の実施例1〜11において、光学基材10を構成する基材組成物11を重合させて得られる樹脂(つまり光学基材)のTgは110℃または95℃である。よって、コーティング層2を光学基材10に形成する加熱処理の温度は、基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTg以下の80℃で硬化されることにより形成される。また、コーティング層2が形成された光学基材10に施すアニール処理の温度は、光学基材10のTgを超える125℃である。
[比較例1]
比較例1において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、形成されていない無層構成である。
比較例1の光学物品の製造方法は、実施例1に係る光学物品1の製造方法において、離型工程(S104)の後に、コーティング層形成工程としてプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を行い、その後にアニール工程(S107)を行うとしたことを、離型工程(S104)の後にアニール工程を行うことを特徴とする。
離型工程(S104)の後、光学基材10に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程を行う。なお、必要に応じて、アニール工程後に、コーティング層形成工程を行うとしてもよい。
[比較例2]
比較例2において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
比較例2の光学物品の製造方法は、実施例1のハードコート形成工程において、鉄(III)アセチルアセトナートを用いるとしたことを、鉄(III)アセチルアセトナートを含まないとすることを特徴とする。
離型工程(S104)の後、実施例1と同様に、コーティング層形成工程として、プライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を順順に行う。そして、ハードコート層形成工程(S106)の後に、プライマ層およびハードコート層が形成された光学基材10に、実施例1に示すアニール工程(S107)と同様にアニール工程を行う。
ここで、上述の実施例1〜11、ならびに比較例1、2の光学基材およびこれを用いた光学物品について、以下に示す評価方法により評価を行った。評価項目は、変形防止用のコーティング層2の硬化具合、ならびに光学基材10およびこれを用いた光学物品1の変形具合とした。
以下、各評価項目についての評価方法を説明する。
(I)硬化具合評価方法。
変形防止用のコーティング層形成工程の後の光学基材を手で触ることにより、硬化具合を観察した。硬化具合を、次の3段階に分けて評価した。
○:変形防止用のコーティング層が、ベタベタしない、あるいは崩れない。
×:変形防止用のコーティング層がベタベタする、あるいは変形防止用のコーティング層の少なくとも一部が光学基材から簡単に取れてしまう。
−:変形防止用のコーティング層を形成していないため、評価不能である。
(II)変形具合評価方法。
アニール工程の後の光学基材またはこれを用いた光学物品の変形具合を、目視により観察した。変形具合を次の3段階に分けて評価した。
◎:光学基材またはこれを用いた光学物品が変形していない。
○:光学基材またはこれを用いた光学物品がほとんど変形していない。
×:光学基材またはこれを用いた光学物品が著しく変形している。
上述の評価結果を表1に示す。
光学基材の表面に光学基材の変形防止用のコーティング層を形成しない比較例1、ならびに光学基材の表面に光学基材の変形防止用のコーティング層としてプライマ層および鉄(III)アセチルアセトナートを含まないハードコート層を形成した比較例2に対して、光学基材の表面に光学基材の変形防止用のコーティング層を形成した実施例1〜11は、変形防止用のコーティング層の硬化具合が優れ、ならびに光学基材およびこれを用いた光学物品の変形防止が優れていることを確認することができる。
従って、上述の各実施形態によれば、コーティング層2が、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTg以下の温度で硬化され、光学基材10の表面に形成されていることにより、コーティング層2が光学基材の形状を維持することから、形状および度数が維持されることが可能となる光学物品1を提供することができる。
また、上述の各実施形態では、光学基材10の変形防止用のコーティング層2が、光学基材10の表面に形成されていることにより、変形防止用のコーティング層2が光学基材10の形状変化を防止することから、形状および度数が維持されることが可能となる光学物品1を提供することができる。
上述の各実施形態では、コーティング層2は、従来の光学物品に備えられているプライマ層、ハードコート層、反射防止層の少なくとも一つを兼ねることができるため、製造工程を増やすことなく製造できる。このため、構成を複雑にすることなく、変形のない光学物品を提供することができる。
上述の各実施形態では、コーティング層形成工程が、光学基材10の変形防止用のコーティング層2を、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTg以下の温度で硬化して、光学基材10の表面に形成することにより、光学基材10の形状を変わりにくくした後に光学基材10のTgを超える温度でアニール工程を行って光学基材10の内部応力を緩和させる。このことから、形状および度数を維持する光学物品1の製造方法を提供することができる。
上述の各実施形態では、コーティング層形成工程が、プライマ層形成工程と、ハードコート層形成工程と、反射防止層形成工程との少なくとも一つを兼ねることにより、アニール工程の後の工程が短縮する。このことから、簡略化された光学物品1の製造方法を提供することができる。
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、上述の各実施形態では、光学基材10は、凹面および凸面を有した形状としていたが、本発明では、平面を2つ有した形状としてもよく、平面、凹面、および凸面の組み合わせにより、凹面または凸面を2つ有した形状としてもよく、凹面と平面と、凸面と平面とを有した形状としてもよい。また、光学基材の形状は、円形状としたが、本発明では、多面体または球体などとしてもよい。
本発明は、プラスチック製眼鏡レンズに利用できる他、防塵ガラス、防塵水晶、コンデンサレンズ、プリズム、マイクロレンズアレイ、光ディスクの反射防止、ディスプレイの反射防止、太陽電池の反射防止、光アイソレータなどにも利用することができる。
本発明の実施形態にかかる光学物品の概略構成を示す断面図。 本実施形態にかかる光学物品の製造方法の実施例1、7〜9に係る光学物品の製造方法を示すフローチャート図。 本発明の実施形態にかかる光学物品の製造方法の実施例2、3に係る光学物品の製造方法を示すフローチャート図。 本発明の実施形態にかかる光学物品の製造方法の実施例4に係る光学物品の製造方法を示すフローチャート図。 本発明の実施形態にかかる光学物品の製造方法の実施例5、6に係る光学物品の製造方法を示すフローチャート図。 本実施形態にかかる光学物品の製造方法の基材形成工程を示す概略図。 本実施形態にかかる光学物品の製造方法のコーティング層形成工程の一例を示す概略図。 本実施形態にかかる光学物品の製造方法のコーティング層形成工程の一例を示す概略図。 本実施形態にかかる光学物品の製造方法の実施例9に係るアニール工程を示す概略断面図。
符号の説明
1…光学物品、2…コーティング層、10…光学基材、11…基材組成物、20…成型用ガラスモールド、21,22…ガラスモールド、23…粘着テープ、24…キャビティ、25…注入ノズル、26…ガラス型、30…浸漬装置、31…昇降部、32…ロッド、33…把持具、34…タンク、40…真空蒸着装置、41…真空容器、42…排気装置、43…ガス供給装置、44…圧力計、45…基材支持台、46,47…蒸発源、48…フィラメント、49…基材加熱用ヒータ、L…コーティング組成物、P…層

Claims (7)

  1. 光学基材と、
    前記光学基材の表面に設けられたコーティング層と、
    を備え、
    TMA(Thermomechanical Analyzer)を用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、前記光学基材の熱機械分析を実施した場合において、前記光学基材のガラス転移点+10℃の測定温度における前記光学基材の厚みの変形量が、前記初期温度における前記光学基材の厚みの10%以上であり、
    前記コーティング層は、前記光学基材のガラス転移点以下の温度で硬化する材料から形成される
    ことを特徴とする光学物品。
  2. 請求項1に記載の光学物品において、
    前記光学基材は、
    一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成される
    ことを特徴とする光学物品。

    (式(1)中、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または式(1−2)、または式(1−3)のいずれかである。)
  3. 請求項1または請求項2に記載の光学物品において、
    前記コーティング層は、前記光学基材の変形防止用のコーティング層である
    ことを特徴とする光学物品。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光学物品において、
    前記コーティング層は、プライマ層、ハードコート層、反射防止層の少なくとも一つを兼ねる
    ことを特徴とする光学物品。
  5. 光学基材を形成する基材形成工程と、
    前記基材形成工程の後に、前記光学基材の表面に前記光学基材の変形防止用のコーティング層を前記光学基材のガラス転移点以下の温度で形成するコーティング層形成工程と、
    前記コーティング層形成工程の後に、前記コーティング層および前記光学基材を前記光学基材のガラス転移点を超える温度で加熱するアニ−ル工程と、
    を備え、
    TMA(Thermomechanical Analyzer)を用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、前記光学基材の熱機械分析を実施した場合において、
    前記光学基材のガラス転移点+10℃の測定温度における前記光学基材の厚みの変形量が、前記初期温度における前記光学基材の厚みの10%以上である
    ことを特徴とする光学物品の製造方法。
  6. 請求項1に記載の光学物品の製造方法において、
    前記基材形成工程では、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から前記光学基材を形成する
    ことを特徴とする光学物品の製造方法。

    (式(1)中、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。Rは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または式(1−2)、または式(1−3)のいずれかである。)
  7. 請求項5または請求項6に記載の光学物品の製造方法において、
    前記コーティング層形成工程は、
    前記光学基材の表面にプライマ層を形成するプライマ層形成工程と、
    前記光学基材の表面もしくは前記プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、
    前記光学基材の表面もしくは前記ハードコート層の表面もしくは前記プライマ層の表面に反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、
    の少なくとも一つを兼ねる
    ことを特徴とする光学物品の製造方法。
JP2007278536A 2007-02-14 2007-10-26 光学物品の製造方法 Expired - Fee Related JP5145864B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007278536A JP5145864B2 (ja) 2007-02-14 2007-10-26 光学物品の製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007033114 2007-02-14
JP2007033114 2007-02-14
JP2007278536A JP5145864B2 (ja) 2007-02-14 2007-10-26 光学物品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008225439A true JP2008225439A (ja) 2008-09-25
JP5145864B2 JP5145864B2 (ja) 2013-02-20

Family

ID=39844077

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007278536A Expired - Fee Related JP5145864B2 (ja) 2007-02-14 2007-10-26 光学物品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5145864B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009113353A (ja) * 2007-11-07 2009-05-28 Seiko Epson Corp セミフィニッシュレンズの製造方法、セミフィニッシュレンズおよびプラスティックレンズの製造方法
JP2013186349A (ja) * 2012-03-08 2013-09-19 Hoya Lense Manufacturing Philippine Inc 光学部材の製造方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08211376A (ja) * 1995-02-02 1996-08-20 Teijin Ltd 透明積層フィルム
JPH08267689A (ja) * 1995-02-02 1996-10-15 Teijin Ltd 透明積層フィルム
JP2004213899A (ja) * 2002-12-26 2004-07-29 Kinki Yamaguchi Kagaku Kk 燃料電池用セパレーター及びその製造方法並びにそれを用いた燃料電池
JP2005321542A (ja) * 2004-05-07 2005-11-17 Sekisui Chem Co Ltd 光学フィルム
JP2006169190A (ja) * 2004-12-17 2006-06-29 Mitsui Chemicals Inc 重合性化合物およびその用途
JP2006182908A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Mitsui Chemicals Inc 重合性化合物およびその用途
JP2009113353A (ja) * 2007-11-07 2009-05-28 Seiko Epson Corp セミフィニッシュレンズの製造方法、セミフィニッシュレンズおよびプラスティックレンズの製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08211376A (ja) * 1995-02-02 1996-08-20 Teijin Ltd 透明積層フィルム
JPH08267689A (ja) * 1995-02-02 1996-10-15 Teijin Ltd 透明積層フィルム
JP2004213899A (ja) * 2002-12-26 2004-07-29 Kinki Yamaguchi Kagaku Kk 燃料電池用セパレーター及びその製造方法並びにそれを用いた燃料電池
JP2005321542A (ja) * 2004-05-07 2005-11-17 Sekisui Chem Co Ltd 光学フィルム
JP2006169190A (ja) * 2004-12-17 2006-06-29 Mitsui Chemicals Inc 重合性化合物およびその用途
JP2006182908A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Mitsui Chemicals Inc 重合性化合物およびその用途
JP2009113353A (ja) * 2007-11-07 2009-05-28 Seiko Epson Corp セミフィニッシュレンズの製造方法、セミフィニッシュレンズおよびプラスティックレンズの製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009113353A (ja) * 2007-11-07 2009-05-28 Seiko Epson Corp セミフィニッシュレンズの製造方法、セミフィニッシュレンズおよびプラスティックレンズの製造方法
JP2013186349A (ja) * 2012-03-08 2013-09-19 Hoya Lense Manufacturing Philippine Inc 光学部材の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5145864B2 (ja) 2013-02-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100839720B1 (ko) 광학 물품 및 그의 제조방법
JP2010102157A (ja) 光学物品およびその製造方法
EP2199835B1 (en) Optical component and manufacturing method of the optical component
JP4429515B2 (ja) 高分子樹脂積層体、その製造方法、および該積層体からなる成形物
JP5272218B2 (ja) セミフィニッシュレンズの製造方法
JP2011013654A (ja) 多層反射防止層およびその製造方法、プラスチックレンズ
EP2546682A2 (en) Optical element, method for manufacturing the same, and light-shielding coating material for the same
JP2008242425A (ja) 光学物品およびその製造方法
JP2008096828A (ja) 光学物品の製造方法とその光学物品
JP5145864B2 (ja) 光学物品の製造方法
JP4249937B2 (ja) 撥水性薄膜を有する光学部材およびレンズの製造方法
Hsu et al. Anti-reflective effect of transparent polymer by plasma treatment with end-hall ion source and optical coating
JP2007279203A (ja) 多層反射防止層およびその製造方法、プラスチックレンズ
JP2009217018A (ja) 光学物品及び光学物品の製造方法
Wendling et al. Creating Anti‐Reflective Nanostructures on Polymers by Initial Layer Deposition before Plasma Etching
JP2011017949A (ja) 光学物品の製造方法およびその方法により製造された光学物品
JP2006330742A (ja) 反射防止フイルム
JP6428864B2 (ja) 透明フィルム及びその製造方法
JP2005232565A (ja) 薄膜の製造方法
JP4862379B2 (ja) プラスチックレンズ及びプラスチックレンズの製造方法
JP4742603B2 (ja) プラスチックレンズの製造方法
JP6171275B2 (ja) 透明フィルム及びその製造方法
JP2007025631A (ja) 光学部品の製造方法及び光学部品
JP2010015006A (ja) 光学物品の製造方法及び光学物品
JPS62239104A (ja) 光学部品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100917

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120110

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120111

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120309

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121030

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121112

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151207

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees