JP2008225439A - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光学物品1は、光学基材10と、光学基材10の表面に設けられたコーティング層2と、を備え、TMAを用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、光学基材10の熱機械分析を実施した場合において、光学基材10のTg+10℃の測定温度における光学基材10の厚みの変形量が、初期温度における光学基材10の厚みの10%以上であり、コーティング層2は、光学基材10のTg以下の温度で硬化する材料から形成される。
【選択図】図1
Description
ここで、重合後にモールド型から外した光学基材には、内部応力が残留しているため、物理的衝撃などの外力に弱いと言われている。
そのため、重合後、各種機能が付与される前の光学基材に、ガラス転移点(Tg)を超える温度でのアニール処理を施すことが多い。これにより、光学基材の内部応力を緩和させ、光学物品の形状および度数の安定化を図ることができる。
このような課題は、特許文献1〜3に記載の樹脂材料に限定されず、熱可塑性を有する樹脂材料に共通するものであった。
すなわち、本発明の光学物品に光学基材のTg以上の温度でのアニール処理を施した場合、光学基材は軟化するが、光学基材の表面に設けられたコーティング層は軟化しない。
コーティング層がアニール処理によって軟化した光学基材の変形を防ぐので、意図した形状および度数の光学物品が得られる。
なお、アニール処理によれば、光学基材の内部応力を緩和させ、光学物品の形状および度数の安定化を図ることができる。
例えば、加熱重合により原料組成物を硬化させる場合には、外部からの加熱が光学基材のTg以下であることが必要である。
また、例えば、紫外線などのエネルギー照射によって原料組成物を硬化させる場合にも、重合中における原料組成物の温度が光学基材のTg以下となるように調整することが必要である。
これに対し、本発明では、コーティング層が、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成される光学基材のTg以下の温度で硬化され、光学基材の表面に形成されていることにより、コーティング層が高温下でも軟らかくなることがなく、コーティング層が変形しないことによって、結果的に光学基材の形状を維持することになる。
このため、アニール処理でTgを超える温度で光学基材を加熱しても、形状および度数を維持することが可能となり、高屈折率で光学特性に優れた光学物品を提供することができる。
この発明では、光学基材の変形防止用のコーティング層が、光学基材の表面に形成されていることにより、コーティング層が光学基材の形状変化を防止することから、アニール処理を施しても形状および度数が維持されることが可能となる光学物品を提供することができる。
この発明では、コーティング層は、従来の光学物品に備えられているプライマ層、ハードコート層、反射防止層の少なくとも一つを兼ねることができるため、製造工程を増やすことなくコーティング層を備えた光学物品を製造できる。このため、構成を複雑にすることなく、アニール処理を施しても変形のない光学物品を提供することができる。
このコーティング層形成工程において、光学基材は、そのTg以上の温度には加熱されない。よって、熱可塑性を有する光学基材が変形する可能性が低い。
これにより、光学基材の内部応力を緩和させ、光学物品の形状および度数の安定化を図ることができる。
これに対し、本発明では、コーティング層形成工程において、光学基材の表面に、変形防止用のコーティング層を形成する。コーティング層は、アニール工程においても軟化しないので、その形状を維持することができ、コーティング層に隣接する光学基材の形状もまた維持される。
これに対し、本発明では、コーティング層形成工程が、光学基材の変形防止用のコーティング層を、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成される光学基材のTg以下の温度で硬化して、光学基材の表面に形成することにより、光学基材の形状を変わりにくくした後に基材組成物から形成される光学基材のTgを超える温度でアニール工程を行って光学基材の内部応力を緩和させる。このことから、形状および度数を維持する光学物品の製造方法を提供することができる。
この発明では、コーティング層形成工程が、プライマ層形成工程と、ハードコート層形成工程と、反射防止層形成工程との少なくとも一つを兼ねることにより、アニール工程の後の工程が短縮する。このことから、簡略化された光学物品の製造方法を提供することができる。
図1は、本実施形態の光学物品の概略構成を示す断面図である。
図2〜5は、それぞれ光学物品の製造方法の実施形態1〜9を示すフローチャート図である。
図6〜8は、本実施形態の光学物品の製造方法を示す概略図である。
図1は、本実施形態の光学物品1を示す。以下、光学物品1について、図1に基づき説明する。本実施形態では、光学物品1はメガネレンズである。
図1において、本実施形態の光学物品1は、光学基材10と、光学基材10の表面に形成されたコーティング層2とを備えている。なお、コーティング層2の表面には、2点鎖線で示す層Pを備えていてもよい。
つまり、光学基材10は、熱可塑性を有する。
一般式(1)において、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。R1は、炭素数1〜4のアルキレン基であり、X1は、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または(1−2)、または(1−3)のいずれかである。
本実施形態のコーティング層2は、プライマ層、ハードコート層、および反射防止層の少なくとも一つである。
つまり、コーティング層2は、図1において、一層構成に描画しているが、一層構成もしくは複数の層からなる複層構成である。
そして、コーティング層2は、光学基材10の変形防止用であって、光学基材10のTg以下の温度で硬化されることにより形成される。
(構成1)コーティング層2はプライマ層およびハードコート層からなる二層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、反射防止層である。
(構成2)コーティング層2はハードコート層からなる一層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、反射防止層である。
(構成3)コーティング層2はプライマ層およびハードコート層および反射防止層からなる三層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、形成されていない。
(構成4)コーティング層2は複数の無機層が積層された反射防止層からなる多層構成になっている。2点鎖線で示す層Pは、形成されていない。
図2〜図5は、本実施形態の光学物品の製造方法の例を示すフローチャート図である。
以下、本実施形態の製造方法について、以下に示す4つの実施形態について図2〜図5に基づきそれぞれ説明する。
図2において、光学物品1の製造方法の第1実施形態を説明する。第1実施形態の方法では、基材形成工程として、まず、光学基材10の原料である基材組成物11を調合する原料調合工程(S101)を実施し、続けて、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)を実施し、その後に、コーティング層形成工程を実施する。ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)の具体的な手順については後述する。
コーティング層形成工程は、光学基材10の表面にプライマ層を形成するプライマ層形成工程(S105)と、プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート層形成工程(S106)とを備え、これらの工程を順順に実施する。これにより、光学基材10の表面に、構成1で示されるプライマ層およびハードコート層からなるコーティング層2が形成される。なお、これらの工程の具体的な手順については後述する。
コーティング層形成工程の後に、アニール工程(S107)を行う。
このアニール工程では、プライマ層およびハードコート層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
アニール工程の後に、反射防止層形成工程(S108)を行う。これにより、光学物品1が完成する。なお、アニール工程の後に、反射防止層形成工程を行うとしたが、反射防止層形成工程を行わずに、光学物品1が完成するとしてもよい。反射防止層形成工程(S108)の具体的な手順については後述する。
光学物品1の製造方法の第2実施形態を図3に基づいて説明する。図3において、光学物品1の製造方法の第2実施形態は、コーティング層形成工程として、第1実施形態と比べてプライマ層形成工程は行わないとし、光学基材10の表面にハードコート層形成工程(S205)を行うことに特徴がある。これにより、光学基材10の表面に、構成2に示すコーティング層2が形成される。アニール工程(S206)は、図2に示すアニール工程(S107)と同様に、コーティング層形成工程の後に行う。このアニール工程では、ハードコート層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
アニール工程の後に、図2に示す反射防止層形成工程(S108)と同様に、反射防止層形成工程(S207)を行う。これにより、光学物品1が完成する。
基材形成工程は、図2に示す基材形成工程S101〜S104と同様のため、同一の符号を付与して説明を省略する。
第2実施形態の方法において、ハードコート形成工程(S205)およびアニール工程(S206)および反射防止層形成工程(S207)は、図2に示すハードコート層形成工程(S106)およびアニール工程(S107)および反射防止層形成工程(S108)とそれぞれ同様である。
光学物品1の製造方法の第3実施形態を図4に基づいて説明する。図2において、コーティング層形成工程としてプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を行うとしたことを、本実施形態では、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート層形成工程(S306)に引き続いて反射防止層形成工程(S307)を実施してコーティング層形成工程が行われることに特徴がある。これにより、光学基材10の表面に、構成3に示すコーティング層2を形成する。アニール工程(S308)は、図2に示すアニール工程(S107)と同様に、コーティング層形成工程の後に行う。これにより、光学物品1が完成する。このアニール工程では、プライマ層、ハードコート層および反射防止層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与する。また、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート層形成工程(S306)およびアニール工程(S308)は、図2に示すプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)およびアニール工程(S107)とそれぞれ同様である。
光学物品1の製造方法の第4実施形態を図5に基づいて説明する。図5に示す光学物品1の製造方法は、図2において、コーティング層形成工程としてプライマ層形成工程(S105)およびハードコート層形成工程(S106)を行うとしたことを、プライマ層形成工程およびハードコート層形成工程は行わず、反射防止層形成工程(S405)のみからコーティング層形成工程を実施することに特徴がある。これにより、光学基材10の表面に、構成4に示すコーティング層2を形成する。アニール工程(S406)は、図2に示すアニール工程(S107)と同様に、コーティング層形成工程の後に行う。これにより、光学物品1が完成する。なお、アニール工程では、反射防止層からなるコーティング層2および光学基材10を光学基材10のTgを超える温度で加熱することで実施される。
なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与する。
図6は、基材形成工程の一例を示す概略図である。図6(A)(B)は原料調合工程(S101)の後に行うガラスモールド注入工程(S102)の具体的手順を示す概略図であり、図6(C)は熱硬化工程(S103)の具体的手順を示す概略図であり、図6(D)は離型工程(S104)の具体的手順を示す概略図である。
熱硬化工程(S103)では、図6(C)に示すように、加熱または紫外線照射などで基材組成物11を硬化させ、光学基材10を形作る。さらに、熱硬化工程(S103)の後に、離型工程(S104)を行う。
離型工程(S104)では、図6(D)に示すように、粘着テープ23を一対のガラスモールド21,22および光学基材10から取り外し、一対のガラスモールド21,22を光学基材10から離間させて、光学基材10を取り出す。これにより、光学基材10を形成する。
図7,8は、光学物品1の製造方法のコーティング層形成工程の例を示す概略図である。
図7は、コーティング層形成工程において、ウェットプロセスの一例として、浸漬法によるコーティング層2の形成に用いる浸漬装置30の構成を示す概略斜視図である。以下、上述の各実施形態のコーティング層形成工程の一例として、浸漬法によるプライマ層形成工程(S105)について、図7に基づき説明する。
昇降部31は、把持具33とロッド32とを備え、把持具33はロッド32に連結されている。昇降部31は、図7に示す矢印の方向に昇降する構造になっている。把持具33が光学基材10の外周面部を把持し、昇降部31が降下することにより、タンク34内のコーティング組成物Lに、光学基材10を浸漬させる。浸漬後、昇降部31を上昇することにより、タンク34内から光学基材10を引き上げ、コーティング組成物Lが光学基材10に塗布される。塗布後、光学基材10に塗布されたコーティング組成物Lに、加熱または紫外線照射などで硬化処理を施し、コーティング組成物Lを硬化させることにより、プライマ層が形成された光学基材10を得る。これにより、コーティング組成物Lからなるコーティング層2が光学基材10の表面に形成された光学物品1を得る。なお、引き上げ速度および硬化処理条件などについては、適宜決定することができる。
また、浸漬装置30を用いたハードコート層形成工程(S106)および反射防止層形成工程(S108)において、ハードコート層および反射防止層を形成する方法は前述と略同じであり、タンク34内にシリコーン系、アクリル系材料などからなるハードコート組成物を収納するか、または有機物からなる有機層組成物を収納するかが相違するものであり、さらには、引き上げ速度および硬化処理条件も相違するものである。なお、ハードコート組成物や反射防止層用有機層組成物は従来と同じ材料を使用する。
以下、上述の各実施形態のコーティング層形成工程の一例として反射防止層形成工程(S405)に用いる真空蒸着法について、図8に基づき説明する。
ガス供給装置43は、Ar,N2,O2などのガスを内蔵するガスシリンダと、ガスの流量を制御する流量制御装置とを備えている。ガスシリンダに内蔵されたガスは、流量制御装置を介して真空容器41内に導入される。
圧力計44は、真空容器41内の圧力を検出する。圧力計44によって検出された圧力値に基づき、排気装置42の圧力調節バルブが、制御部(図示せず)からの制御信号により制御されて、真空容器41内の圧力が所定の圧力値に保たれる。圧力の調整方法としては、排気口のコンダクタンスを変化させる方法とガスを導入して導入量を変化させる方法などがあるがどちらでもかまわない。したがって、真空容器41内の圧力は、ガス供給装置43のガスシリンダから供給されるガスの流量を制御する流量制御装置を制御する方法でも可能である。また、特に調整をしないで排気後の残圧で圧力を調整する場合は、屈折率が変化する場合があるので膜厚の調整が必要になる。とくに圧力制御を行わない場合には蒸着中に大きく圧力が変化する場合がある。
実施例1において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成1に示す二層構成である。
まず、基材形成工程として、原料調合工程(S101)、ガラスモールド注入工程(S102)、熱硬化工程(S103)、および離型工程(S104)を順順に行う。以下、基材形成工程について、図2および図6を参照して説明する。
原料調合工程(S101)において、光学物品1を形成する光学基材10の組成物として、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成する。
光学基材10の原料としてテトラキス(2,3−エピチオプロピルチオ)スズ(以下、『Sn−1』と記す。)を30g、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業製)0.3gを添加し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後に、重合触媒としてN,Nジメチルシクロへキシルアミン0.1gを加えて混合した後、1.5kPa以下に減圧した状態で攪拌しながら15分間脱気を行うことにより、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を得る。Sn−1からなる基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTgは、110℃である。
ステンレス製のタンク34内に、メチルアルコール220g、水91.8gを投入し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後、酸化チタン、酸化スズ、および酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、全固形物濃度20重量%、触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク1120Z」、以下、「オプトレイク1120Z」と記す)を加え、攪拌して混合する。攪拌混合後、水性ポリエステル(伊藤光学株式会社製)77gを加え、攪拌して混合する。シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)0.1gを添加して、2時間攪拌して混合する。これにより、プライマ層を形成するためのコーティング組成物Lとして、プライマ組成物を得る。プライマ組成物の中に、離型工程(S104)の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に、プライマ組成物を塗布する。引き上げ速度は、200mm/minとする。プライマ組成物が塗布された光学基材10に、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、光学基材10の表面に形成されたプライマ層を得る。
ステンレス製のタンク34内に、ブチルセロソルブ62.5gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン67.1gを投入し、十分に攪拌して混合する。その後攪拌しながら、タンク34内に、0.1モル/リットル塩酸30.7gを滴下し、さらに4時間攪拌する。その後、一昼夜熟成させることにより、シラン加水分解物を得る。このシラン加水分解物の中に、オプトレイク1120Zを325g、ならびにグリセロールジグリシジルエーテル(ナガセ化成株式会社製、商品名「デナコールEX−313」)12.5gを添加する。その後、鉄(III)アセチルアセトナート1.36gおよびシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7001」、以下、「L−7001」と記す)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.26gを添加して、4時間攪拌する。その後、一昼夜熟成させることにより、コーティング組成物Lとして、ハードコートα層形成用コーティング組成物を得る。
ハードコートα層形成用コーティング組成物の中に、プライマ層形成工程においてプライマ層が形成された光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に形成されたプライマ層の表面に、ハードコートα層形成用コーティング組成物を塗布する。引き上げ速度は、200mm/minとする。ハードコートα層形成用コーティング組成物が塗布された光学基材10に、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、プライマ層の表面に形成されたハードコートα層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成1に示すコーティング層2を形成する。
以下に、本発明の実施例2について、図面に基づき説明する。
実施例2において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成2に示す一層構成である。
図3に示すように、実施例2の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、ハードコート層形成工程(S205)のみを実施することに特徴がある。なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
コーティング組成物Lとして、前述のハードコートα層形成用コーティング組成物の中に、離型工程(S104)の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に、ハードコートα層形成用コーティング組成物を塗布する。引き上げ速度は、実施例1と同様に、200mm/minとする。ハードコートα層形成用コーティング組成物が塗布された光学基材10に、実施例1と同様にして、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、光学基材10の表面にハードコートα層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成2に示すコーティング層2を形成する。
以下に、本発明の実施例3について、図面に基づき説明する。
実施例3において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成2に示す一層構成である。
実施例3の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、図3に示すハードコート層形成工程(S205)において、ハードコートβ層を形成することに特徴がある。なお、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
ステンレス製のタンク34内にブチルセロソルブ1000重量部を投入し、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸300重量部を添加して一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得る。このシラン加水分解物中にL−7001を30重量部、加えて1時間撹拌した後、酸化チタンを主体とする複合微粒子ゾル(オプトレイク1120Z)を7300重量部加え2時間撹拌混合した。次いでエポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名デナコールEX−313)250重量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部を加えて1時間攪拌し、2μmのフィルターで濾過を行うことで、コーティング組成物Lとして、ハードコートβ層形成用コーティング組成物を得る。
ハードコートβ層形成用コーティング組成物の中に、離型工程の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面に、ハードコートβ層形成用コーティング組成物を塗布する。引き上げ速度は、実施例1と同様に、200mm/minとする。ハードコートβ層形成用コーティング組成物が塗布された光学基材10に、実施例1と同様にして、80℃で30分間の加熱処理を施す。これにより、光学基材10の表面にハードコートβ層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成2に示すコーティング層2を形成する。
以下に、本発明の実施例4について、図面に基づき説明する。
実施例4において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成3に示す三層構成である。
図4に示すように、実施例4の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート層形成工程(S306)を行い、引き続いて反射防止層形成工程(S307)を実施することに特徴がある。なお、プライマ層形成工程(S305)およびハードコート形成工程(S306)は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。また、基材形成工程は、図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
ステンレス製のタンク34内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル48.6gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン14.1gを投入し、十分に攪拌して混合する。その後攪拌しながら、タンク34内に、0.1モル/リットル塩酸4gを滴下し、さらに5時間攪拌する。その後、イソプロパノール分散中空シリカゲル(平均粒径91nm、固形濃度30重量%、触媒化成工業株式会社製)33.3gを添加して十分に攪拌して混合する。そしてL−7001を0.03g添加し、十分攪拌し、溶解させることにより固形分濃度20%のコーティング原液を得る。この固形分濃度20%のコーティング原液に、300ppm濃度のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)を含有するプロピレングリコールモノエーテル溶液114.7gを添加し、十分に攪拌し、コーティング組成物Lとして、反射防止層用有機層組成物である固形分濃度約4.7%のコーティング液を得る。
この固形分濃度約4.7%のコーティング液の中に、ハードコート層形成工程(S306)の後の光学基材10を、図7に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、光学基材10の表面からプライマ層およびハードコートα層の順に形成されたハードコートα層の表面に、固形分濃度約4.7%のコーティング液を塗布する。引き上げ速度は、実施例1と同様に、100mm/minとする。固形分濃度約4.7%のコーティング液が塗布された光学基材10に、実施例1と同様にして、80℃で30分間の加熱処理を施し、反射防止層用有機層を得る。これにより、ハードコートα層の表面に形成された反射防止層用有機層を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成3に示すコーティング層2を形成する。
以下に、本発明の実施例5について、図面に基づき説明する。
実施例5において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成4に示す多層構成である。
図5に示すように、実施例5の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、反射防止層形成工程(S405)のみを実施することに特徴がある。なお、基材形成工程は、実施例1の図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
離型工程(S104)の後の光学基材10に、プラズマ処理を施す。プラズマ処理の条件は、アルゴンプラズマ400Wで60秒間とする。プラズマ処理された光学基材10の表面から順に、第1層としてのSiO2、第2層としてのZrO2、第3層としてのSiO2、第4層としてのZrO2、第5層としてのSiO2を、図8に示す真空蒸着装置40を用いて、真空蒸着法により形成する。真空蒸着装置40は、真空器械工業株式会社製、装置名「BMC−1000」を用いる。これにより、コーティング層2として、無機層である第1層、第2層、第3層、第4層、および第5層からなる反射防止多層膜を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成4に示すコーティング層2を形成する。
反射防止多層膜を構成する第1層から第5層のそれぞれの光学的膜厚は、次に示すとおりである。第1層としてのSiO2の光学的膜厚は0.083λ、第2層としてのZrO2の光学的膜厚は0.17λ、第3層としてのSiO2の光学的膜厚は0.075λ、第4層としてのZrO2の光学的膜厚は0.195λ、第5層としてのSiO2の光学的膜厚は0.025λとする。そして、第1層、ならびに第2層、第3層、および第4層、ならびに第5層の光学的膜厚は、それぞれλ/4となる。反射防止多層膜の波長λは、設計値520nmとする。
以下に、本発明の実施例6について、図面に基づき説明する。
実施例6において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、構成4に示す多層構成である。
実施例6の光学物品の製造方法は、コーティング層形成工程として、図5に示す反射防止層形成工程(S405)において、SiO2およびTiO2からなる7層の反射防止層を形成することに特徴がある。なお、基材形成工程は、実施例1の図2に示す基材形成工程と同様のため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
離型工程(S104)の後の光学基材10に、プラズマ処理を施す。プラズマ処理の条件は、アルゴンプラズマ400Wで60秒間とする。プラズマ処理された光学基材10の表面から順に、第1層としてのSiO2、第2層としてのTiO2、第3層としてのSiO2、第4層としてのTiO2、第5層としてのSiO2、第6層としてのTiO2、第7層としてのSiO2を、図8に示す真空蒸着装置40を用いて、真空蒸着法により形成する。これにより、コーティング層2として、無機層である第1層、第2層、第3層、第4層、第5層、第6層、および第7層からなる反射防止多層膜を得る。このようにして、光学基材10の表面に、構成4に示すコーティング層2を形成する。
反射防止多層膜を構成する第1層から第7層のそれぞれの光学的膜厚は、次に示すとおりである。第1層としてのSiO2の光学的膜厚は0.083λ、第2層としてのTiO2の光学的膜厚は0.070λ、第3層としてのSiO2の光学的膜厚は0.10λ、第4層としてのTiO2の光学的膜厚は0.18λ、第5層としてのSiO2の光学的膜厚は0.065λ、第6層としてのTiO2の光学膜厚は0.14λ、第7層としてのSiO2の光学的膜厚は0.26λとする。そして、第1層、ならびに第2層、第3層、第4層、第5層、および第6層、ならびに第7層の光学的膜厚は、それぞれλ/4となる。反射防止多層膜の波長λは、設計値520nmとする。
以下に、本発明の実施例7について、図面に基づき説明する。
実施例7において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
実施例7の光学物品の製造方法は、図2に示す原料調合工程(S101)において、光学基材10の原料としてSn−1を用いて光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成するとしたことを、光学基材10の原料としてテトラキス(3−オキセタニルチオ)スズ(以下、『Sn−2』と記す。)を用いることに特徴を有している。
原料調合工程(S101)において、光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成する。
光学基材10の原料としてSn−2を30g、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業製)0.3g、重合触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸0.3gを添加し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後に、重合触媒としてN,Nジメチルシクロへキシルアミン0.1gを加えて混合した後、1.5kPa以下に減圧した状態で攪拌しながら15分間脱気を行うことにより、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を得る。Sn−2を含む基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTgは、110℃である。
以下に、本発明の実施例8について、図面に基づき説明する。
実施例8において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
実施例8の光学物品の製造方法は、図2に示す原料調合工程(S101)において、光学基材10の原料としてSn−1を用いて光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成するとしたことを、光学基材10の原料としてテトラキス(2,3−エポキシ−1−プロピルチオ)スズ(以下、『Sn−3』と記す。)を用いることに特徴がある。
原料調合工程において、光学基材10を形成する一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を形成する。
光学基材10の原料としてSn−3を30g、紫外線吸収剤としてSEESORB701(シプロ化成工業製)0.3g、重合触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸0.015gを添加し、十分に攪拌して混合する。攪拌混合後に、重合触媒としてN,Nジメチルシクロへキシルアミン0.1gを加えて混合した後、1.5kPa以下に減圧した状態で攪拌しながら15分間脱気を行うことにより、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物11を得る。Sn−3を含む基材組成物11を重合させて得られる樹脂のTgは、110℃である。
以下に、本発明の実施例9について、図面に基づき説明する。
実施例9において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
実施例9の光学物品の製造方法は、図2に示すアニール工程(S107)において、プライマ層およびプライマ層の表面に形成されたハードコートα層が形成された光学基材10の凹面側を下にして、凹面側と対向する台の上または光学基材10の周縁と同様の形状に形成されたリング状治具の上に配置し、アニール処理を施すとしたことを、図9に示すように、光学基材10の凹面側を下にして、光学基材10の凹面側の形状に沿うように凸面形状を有したガラス型26の凸面形状の上に配置し、アニール処理を施すことを特徴とする。アニール処理は、実施例1と同様に125℃で3時間とする。これにより、光学物品1が完成する。実施例9のアニール工程(S107)以外の製造方法は、実施例1の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
基材形成工程において、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)ペレットを射出成形法によりレンズ形状に加工して光学基材10を得た以外は、実施例1と同様にして光学物品1を製造した。
PMMAペレットからフラット板を作成し、TMAを用いてTgを測定したところ、110℃であった。
[実施例11]
基材形成工程において、市販のPst(ポリスチレン)ペレットを射出成形法によりレンズ形状に加工して光学基材10を得た以外は、実施例1と同様にして光学物品1を製造した。
Pstペレットからフラット板を作成し、TMAを用いてTgを測定したところ、95℃であった。
比較例1において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、形成されていない無層構成である。
比較例2において、図1に示す光学物品1の一層に描画しているコーティング層2は、実施例1と同様に構成1に示す二層構成である。
以下、各評価項目についての評価方法を説明する。
変形防止用のコーティング層形成工程の後の光学基材を手で触ることにより、硬化具合を観察した。硬化具合を、次の3段階に分けて評価した。
○:変形防止用のコーティング層が、ベタベタしない、あるいは崩れない。
×:変形防止用のコーティング層がベタベタする、あるいは変形防止用のコーティング層の少なくとも一部が光学基材から簡単に取れてしまう。
−:変形防止用のコーティング層を形成していないため、評価不能である。
アニール工程の後の光学基材またはこれを用いた光学物品の変形具合を、目視により観察した。変形具合を次の3段階に分けて評価した。
◎:光学基材またはこれを用いた光学物品が変形していない。
○:光学基材またはこれを用いた光学物品がほとんど変形していない。
×:光学基材またはこれを用いた光学物品が著しく変形している。
光学基材の表面に光学基材の変形防止用のコーティング層を形成しない比較例1、ならびに光学基材の表面に光学基材の変形防止用のコーティング層としてプライマ層および鉄(III)アセチルアセトナートを含まないハードコート層を形成した比較例2に対して、光学基材の表面に光学基材の変形防止用のコーティング層を形成した実施例1〜11は、変形防止用のコーティング層の硬化具合が優れ、ならびに光学基材およびこれを用いた光学物品の変形防止が優れていることを確認することができる。
たとえば、上述の各実施形態では、光学基材10は、凹面および凸面を有した形状としていたが、本発明では、平面を2つ有した形状としてもよく、平面、凹面、および凸面の組み合わせにより、凹面または凸面を2つ有した形状としてもよく、凹面と平面と、凸面と平面とを有した形状としてもよい。また、光学基材の形状は、円形状としたが、本発明では、多面体または球体などとしてもよい。
Claims (7)
- 光学基材と、
前記光学基材の表面に設けられたコーティング層と、
を備え、
TMA(Thermomechanical Analyzer)を用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、前記光学基材の熱機械分析を実施した場合において、前記光学基材のガラス転移点+10℃の測定温度における前記光学基材の厚みの変形量が、前記初期温度における前記光学基材の厚みの10%以上であり、
前記コーティング層は、前記光学基材のガラス転移点以下の温度で硬化する材料から形成される
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1に記載の光学物品において、
前記光学基材は、
一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から形成される
ことを特徴とする光学物品。
(式(1)中、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。R1は、炭素数1〜4のアルキレン基であり、X1は、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または式(1−2)、または式(1−3)のいずれかである。)
- 請求項1または請求項2に記載の光学物品において、
前記コーティング層は、前記光学基材の変形防止用のコーティング層である
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光学物品において、
前記コーティング層は、プライマ層、ハードコート層、反射防止層の少なくとも一つを兼ねる
ことを特徴とする光学物品。 - 光学基材を形成する基材形成工程と、
前記基材形成工程の後に、前記光学基材の表面に前記光学基材の変形防止用のコーティング層を前記光学基材のガラス転移点以下の温度で形成するコーティング層形成工程と、
前記コーティング層形成工程の後に、前記コーティング層および前記光学基材を前記光学基材のガラス転移点を超える温度で加熱するアニ−ル工程と、
を備え、
TMA(Thermomechanical Analyzer)を用い、荷重50g、直径1mmの針入プローブ、初期温度25℃、昇温スピード10℃/minの条件で、前記光学基材の熱機械分析を実施した場合において、
前記光学基材のガラス転移点+10℃の測定温度における前記光学基材の厚みの変形量が、前記初期温度における前記光学基材の厚みの10%以上である
ことを特徴とする光学物品の製造方法。 - 請求項1に記載の光学物品の製造方法において、
前記基材形成工程では、一般式(1)で示される化合物を含有する基材組成物から前記光学基材を形成する
ことを特徴とする光学物品の製造方法。
(式(1)中、Mは、Sn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、またはGe原子である。R1は、炭素数1〜4のアルキレン基であり、X1は、S原子またはO原子であり、nは0〜4の整数を示す。Yは、下記の式(1−1)、または式(1−2)、または式(1−3)のいずれかである。)
- 請求項5または請求項6に記載の光学物品の製造方法において、
前記コーティング層形成工程は、
前記光学基材の表面にプライマ層を形成するプライマ層形成工程と、
前記光学基材の表面もしくは前記プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、
前記光学基材の表面もしくは前記ハードコート層の表面もしくは前記プライマ層の表面に反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、
の少なくとも一つを兼ねる
ことを特徴とする光学物品の製造方法。
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