JP2008242425A - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】屈折率の異なる様々なプラスチック基材を扱い、かつ干渉縞の発生が抑制され、且つ優れた耐擦傷性や密着性を有する表面処理層を形成できる光学物品を提供すること。
【解決手段】異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間に設けられた屈折率調整層としてプライマー層3は、基材側に基材と略同じ屈折率の部位を有し、ハードコート層側にハードコート層と略同じ屈折率の部位を有し、屈折率調整層としてプライマー層3の屈折率は、基材2と略同じ屈折率からハードコート層4と略同じ屈折率へと連続して変化している。このことから、基材2とハードコート層4との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチックレンズその他の光学物品およびその製造方法に関する。
従来、プラスチック基材からなるプラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、割れ難く、また染色加工が容易であるといった長所を有しているが、傷つきやすいため、プラスチック基材の表面にハードコート層を形成することにより、プラスチックレンズの表面の硬度を向上させている。
また、プラスチック基材とハードコート層との密着性を維持させるために、プラスチック基材とハードコート層との間にプライマー層を備えた光学物品が知られている。
そして、プラスチック基材の屈折率とハードコート層またはプライマー層の屈折率とが相違することで干渉縞が発生するので、干渉縞の発生を抑制するために、プラスチック基材の屈折率と略同じ屈折率のハードコート層とプライマー層とを、浸漬法、スプレーコート法、スピンコート法などにより形成している(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−308844号公報(第8〜第17頁)
しかしながら、材料の多様化により、異なる屈折率を有するプラスチック基材が開発されている。特許文献1の従来例では、干渉縞の発生を抑制するために、様々な屈折率のプラスチック基材ごとに、ハードコート層形成用組成物およびプライマー層形成用組成物などを調製し用意することが必要とされている。近年では、プラスチック基材の高屈折率化に伴い、干渉縞の発生を抑制する目的で、ハードコート層やプライマー層も高屈折率化する必要があり、高屈折率を発現する無機酸化物微粒子などのフィラー成分の使用量が増大する傾向にある。この場合、フィラー成分以外の耐擦傷性や密着性など耐久性を発現するバインダー成分の使用量が減少することになり、結果として耐久性が不足することになる。特にハードコート層では干渉縞の発生を抑制しようとすると、基本性能である表面硬度の向上が不十分になるという課題があった。
また、様々な屈折率のプラスチック基材に対応する為に、複数種類の屈折率を有するハードコート層形成用組成物およびプライマー層形成用組成物はそれぞれ専用の製造工程(製造ライン)が必要となり、品質管理を複雑にするという問題があった。これにより、光学物品の製造効率を著しく低下させるという課題があった。
本発明の目的は、屈折率の異なる様々なプラスチックレンズ基材に対して、干渉縞の発生を抑制し、且つ耐久性に優れた表面処理層を形成することが可能であり、且つ製造上における品質管理が簡便で、製造効率に優れる製造工程を備えた光学物品およびその製造方法を提供することである。
本発明の光学物品は、基材と、前記基材の上に設けられ前記基材とは屈折率が異なるハードコート層と、前記ハードコート層と前記基材との間に設けられるプライマー層とを備え、前記プライマー層は、前記基材側に備えられ前記基材と略同じ屈折率の基材側部位と、前記ハードコート層側に備えられ前記ハードコート層と略同じ屈折率のハードコート層側部位と、前記基材側部位と前記ハードコート層側部位との間に備えられ前記基材の屈折率と前記ハードコート層の屈折率の間の屈折率を有する中間部位とからなる屈折率調整層であり、前記屈折率調整層における各部位の屈折率が前記基材側と前記ハードコート層側との間で段階的に変化していることを特徴とする。
この発明によれば、異なる屈折率の基材とハードコート層との間に設けられた屈折率調整層としてのプライマー層は、基材側に基材と略同じ屈折率の部位を有し、ハードコート層側にハードコート層と略同じ屈折率の部位を有し、さらにこのプライマー層の屈折率は、基材と略同じ屈折率からハードコート層と略同じ屈折率へと段階的に変化している。このことから、基材とハードコート層との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
また、プライマー層が所定の屈折率調整層であるので、基材とハードコート層との密着性を維持し、耐擦傷性および耐久品質が優れたハードコート層を形成できる上、プライマー層の屈折率が連続して変化していることから、光学物品の構成を複雑にすることなく基材とハードコート層との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
ここで、プライマー層(屈折率調整層)の膜厚は、薄いほど干渉縞を低減する効果が得られる。しかし、薄すぎると耐擦傷性や密着性等の耐久特性が低下する。そのため、これらを両立させる範囲は、0.1〜4μmが好ましい。
尚、中間部位は、屈折率が単一の部位(或は層)から構成されるとしてもよいが、屈折率が異なる複数の部位(或は層)から構成されていてもよい。単一の部位とするか、複層の部位とするかは、基材とハードコート層との屈折率の差によって適宜決定される。例えば、屈折率の差が大きい場合には、複数の部位を用いた方が好ましい。
なお、このような屈折率の段階的あるいは連続的変化については、例えば特開平7−56001に記載がある。しかし、該公報に記載された発明の課題は、反射特性の変動防止や反射率の安定性確保の為に、ハードコート表面の屈折率を反射防止設計の基準波長における屈折率に調整するものであり、課題解決手段としての構成は、ハードコート層の屈折率を厚さ方向に段階的に変化させるものである。また、特開平10−26702にも同様な屈折率の段階的あるいは連続的変化について記載がある。しかし、該公報に記載された発明の課題は、フォトクロミック性能と耐擦傷性であり、CVD法によりハードコート層の一部について屈折率を徐々に変化させた変成層とするものである。従って、上述した各公報に記載された発明に関しては、課題の点からも構成の点からも本願発明を何ら示唆するものではない。
本発明の光学物品では、前記基材が、チオウレタン系樹脂およびエピスルフィド系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
この発明によれば、基材として、チオウレタン系樹脂およびエピスルフィド系樹脂から選ばれる少なくとも一種を用いるので、基材の屈折率を上げることが容易であり、薄型でかつ干渉縞の少ない眼鏡レンズ等の光学物品を提供することが容易となる。
本発明の光学物品では、前記基材の屈折率が、1.6以上であることが好ましく、より好ましくは1.66以上であり、さらに好ましくは1.70以上、もっとも好ましくは1.72以上である。
この発明によれば、基材の屈折率が、1.66以上であるので、薄型でかつ干渉縞の少ない眼鏡レンズ等の光学物品を提供することが容易となる。そのような基材としては、チオウレタン系樹脂あるいはエピスルフィド系樹脂が好ましく適用できる。
本発明の光学物品では、前記中間部位が、単一の屈折率を有する部位からなることが好ましい。
この発明によれば、中間部位を単一部位とすることでプライマー層(屈折率調整層)をより簡便な構成とできるため、効率的かつ効果的に基材とハードコート層との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
本発明の光学物品では、前記ハードコート層は、酸化ケイ素微粒子を含むことが好ましい。
この発明によれば、ハードコート層に酸化ケイ素を主体とする無機酸化物微粒子を含むことにより、耐擦傷性、密着性など耐久性に優れた光学物品を製造することができる。
本発明の光学物品の製造方法は、前記屈折率調整層としてのプライマー層を形成する工程が、前記基材の表面上に前記基材側部位を塗布形成する基材側部位塗布工程と、前記基材側部位塗布工程の後、前記基材側部位の表面上に前記中間部位を塗布形成する中間部位塗布工程と、前記中間部位塗布工程の後、前記中間部位の表面上に前記ハードコート層側部位を塗布形成するハードコート層側部位塗布工程とを有し、前記各工程では、互いに屈折率の異なる複数種類の屈折率調整材を選択し、塗布することを特徴とする。
この発明によれば、異なる屈折率の基材とハードコート層との間に設ける屈折率調整層としての基材側部位層と中間層とハードコート側部位層とにおいて、複数種類の屈折率調整材を選択して基材側部位の屈折率を基材の屈折率と略同じにし、ハードコート側部位の屈折率をハードコート層の屈折率と略同じにし、中間部位の屈折率を基材側部位の屈折率とハードコート側部位の屈折率の中間の屈折率にすることができる。これにより、段階的に屈折率を変化させている屈折率調整層を設けることが可能となる。このことから、基材とハードコート層との異なる屈折率により、光学物品に干渉縞が発生することを抑制できる汎用の製造工程を備えた生産効率の優れた光学物品の製造方法を提供することが可能となる。
本発明の光学物品の製造方法は、前記屈折率調整材は、前記基材と略同じ屈折率の基材側屈折率調整層材と、前記ハードコート層と略同じ屈折率のハードコート層側屈折率調整層材とからなり、前記中間部位塗布工程が、前記基材側屈折率調整層材と前記ハードコート層側屈折率調整層材を混合したものを塗布することにより前記中間部位を形成することが好ましい。
この発明によれば、異なる屈折率の基材とハードコート層との間に設ける屈折率調整層としての基材側部位層と中間層とハードコート側部位層とにおいて、2種類の屈折率調整材を選択して基材側部位層の屈折率を基材の屈折率と略同じにし、ハードコート側部位層の屈折率をハードコート層の屈折率と略同じにし、基材側屈折率調整層材とハードコート層側材を混合したものにより中間部位を形成することにより、中間部位の屈折率を基材側部位の屈折率とハードコート側部位の屈折率の中間の屈折率にすることができる。これにより、段階的に屈折率を変化させている屈折率調整層としてのプライマー層を設けることが可能となる。このことから、光学物品における基材とハードコート層と屈折率差に起因する干渉縞が発生することを抑制できる汎用の製造工程を備えた生産効率の優れた光学物品の製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の光学物品の構成を示す概略断面図である。
図2は、図1に示す光学物品の一部を拡大して示す部分拡大図である。
本実施形態では、光学物品はメガネレンズである。
図1および図2において、光学物品1は、基材2と、屈折率調整層としてのプライマー層3と、ハードコート層4と、反射防止層5とを備えている。
プライマー層3は、基材2の上に形成されている。図2に示すように、プライマー層3は、基材側部位層11、中間層12、およびハードコート層側部位層13からなる。そして、基材側部位層11、中間層12、およびハードコート層側部位層13は、基材2の上からハードコート層4へ順番に形成されている。
プライマー層3の上には、ハードコート層4が形成されている。そして、ハードコート層4の上には、反射防止層5が形成されている。
先ず、基材2のプラスチック基材について説明する。プラスチック基材としては、公知の素材を使用することができる。プラスチック基材の具体例としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、チオウレタン系樹脂、エポキシ樹脂系、エピスルフィド系樹脂などが挙げられる。このうち高屈折率素材としては、ポリ(チオ)イソシアネート化合物とポリチオール化合物等の活性水素基(メルカプト基)を有する化合物との反応によって得られるチオウレタン系樹脂や、分子内に1個以上のジスルフィド結合(S−S)を有し、且つエポキシ基及び/又はエピスルフィド基を有するエピスルフィド系樹脂などが挙げられる。
メガネレンズの薄型化のためには、プラスチック基材として、屈折率が1.6以上であることが好ましく、より好ましくは1.66以上であり、さらに好ましくは1.70以上、もっとも好ましくは1.72以上である。
このようなプラスチック基材としては、上述した各樹脂の中で、特にチオウレタン系樹脂やエピスルフィド系樹脂が好ましい。
チオウレタン系樹脂の主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物を用いることができる。イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
また、メルカプト基を有する化合物としても、公知の化合物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外にも、硫黄原子を含むポリチオールがより好ましく用いられ、その具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
また、エピスルフィド系樹脂の場合、原料モノマーとして用いられるエピスルフィド基を持つ化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。例えば、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。
また、プラスチック基材の高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも硫黄原子を含有する化合物をより好ましく用いることができる。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
本発明におけるプラスチック基材の製造方法としては、特に限定されることなく、一般にメガネレンズ用プラスチック基材の製造に用いられている重合方法を用いることができる。例えば、素材としてビニル系モノマーを用いる場合には、有機過酸化物等の熱重合開始剤を用いて、熱硬化を行い、プラスチック基材を製造することができる。また、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を用いて、紫外線を照射することによってモノマーを硬化させ、プラスチック基材を製造することもできる。原料としての重合性組成物には、必要に応じて光安定剤、酸化防止剤などの添加剤を混合してもよい。
また、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって得られるチオウレタン系樹脂の場合には、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を混合した後、ウレタン樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱硬化することによって製造できる。硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
さらに、エピスルフィド基を有する化合物を含む原料モノマーから得られるエピスルフィド系樹脂の場合には、エピスルフィド基を有する化合物を単独で、またはエピスルフィド基と共重合可能な他のモノマーと混合した後、エポキシ樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって製造できる。
エポキシ樹脂用の硬化触媒は特に制限はないが、具体例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン、エチルメチルイミダゾール等のイミダゾール類、などが挙げられる。また、エピスルフィド基を持つ化合物と共重合可能な他のモノマーとしては、水酸基を持つ化合物、メルカプト基を持つ化合物、1級または2級アミン、カルボキシル基を持つ化合物などが挙げられる。
水酸基を持つ化合物の具体例としては、イソプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート等の多価アルコール類が挙げられる。メルカプト基を持つ化合物の具体例としては、チオフェノール、エチルチオグリコレート、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
上記プラスチック基材を製造する一例としては、注型重合が挙げられる。注型重合では、対向配置した2枚の円形のガラス型の側面を粘着テープやガスケットで固定することで、ガラス型間の隙間を封止したモールドを組み立て、このモールドに前記重合性組成物を注入充填し、熱エネルギー又は光エネルギーにより重合硬化させ、最終的にガラス型から離型することで、プラスチック基材を製造することができる。
次に、ハードコート層4のハードコート層について説明する。ハードコート層は、公知の素材を使用することができる。ハードコート層を形成する素材の具体例としては、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、チオウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。このうち耐擦傷性や耐久性の点でシリコン系樹脂を用いることが好ましい。シリコン系樹脂としては、有機ケイ素化合物を主成分とする組成物を用いることができ、その具体例としては、テトラアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニル(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。
また、ハードコート層には耐擦傷性や密着性を向上させる目的で、無機酸化物微粒子を用いることができる。無機酸化物微粒子の具体例としては、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Ti、Siなどの金属から選ばれる酸化物の単独微粒子および/またはこれらの複合微粒子から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。このうち、ハードコート層自体の耐擦傷性、密着性、耐光性、透明性といった観点から酸化ケイ素を主体とする無機酸化物微粒子を用いることが好ましい。酸化ケイ素はその他の無機酸化物微粒子に比べて硬度が高く、耐光性に優れ、可視光領域における着色が少ない性質を有しており、ハードコート層に好適な無機酸化物微粒子である。上記無機酸化物微粒子の配合量は、ハードコート層を形成する組成物中の固形分の5〜80重量%、特に10〜60重量%の範囲が望ましい。配合量が少なすぎると、ハードコート層の耐擦傷性が不十分となる場合があり、配合量が多過ぎると、ハードコート層にクラックが発生したり、密着性が不十分となる場合がある。
更に、ハードコート層を形成する組成物には、ハードコート層の耐久性や硬化性、外観性を向上させる目的で、多官能エポキシ化合物、ジシラン化合物などの改質剤、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、顔料、フォトクロミック化合物、耐熱耐光安定剤などを併用することができる。
次いで、プライマー層3について説明する。プライマー層3は、公知の素材を使用することができる。プライマー層3を形成する素材の具体例としては、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、チオウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。また本実施形態では、プライマー層は屈折率調整層として形成されており、図2において基材2と略同じ屈折率の部位を基材2側に有しハードコート層4と略同じ屈折率の部位をハードコート層4側に有し、基材2側とハードコート層4側との間で連続して屈折率が変化している。つまり、本実施形態においては、図2に2点鎖線で示すように、屈折率調整層としてのプライマー層3は、3層からなる複層構造である。
このようにプライマー層は屈折率調整層であり、プライマー層を形成する組成物はプライマー層の屈折率を調整できるように所望の屈折率を発現させる必要がある。この際、プライマー層の屈折率を調整する為に、無機酸化物微粒子を用いる方法が挙げられる。無機酸化物微粒子の具体例としては、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Ti、Siなどの金属から選ばれる酸化物の単独微粒子および/またはこれらの複合微粒子から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。無機酸化物微粒子の配合量は、プライマー層の屈折率により適宜決定されるが、プライマー層を形成する組成物中の固形分の5〜80重量%、特に10〜60重量%の範囲が望ましい。配合量が少なすぎると、プライマー層の屈折率が不十分となる場合があり、配合量が多過ぎると、プライマー層にクラックが発生したり、密着性が不十分となる場合がある。
また、プライマー層3を屈折率調整層として形成する具体例として、以下に示す屈折率調整材が挙げられる。即ち、高屈折率のプライマー層を形成できるプライマー組成物A、中屈折率のプライマー層を形成できるプライマー組成物B、および低屈折率のプライマーを形成できるプライマー組成物Cの少なくとも1つである。このため、屈折率調整層としてのプライマー層3は、以下に示す構成例が一例として挙げられる。
「構成1」;基材側部位層11はプライマー組成物Aからなり、中間層12はプライマー組成物AおよびCからなり、ハードコート層側部位層13はプライマー組成物Cからなる。
「構成2」;基材側部位層11はプライマー組成物AおよびBからなり、中間層12はプライマー組成物A、B、およびCからなり、プライマー層側部位層13はプライマー組成物Cからなる。
「構成3」;基材側部位層11はプライマー組成物Bからなり、中間層12はプライマー組成物BおよびCからなり、ハードコート層側部位層13はプライマー組成物Cからなる。
「構成4」;基材側部位層11はプライマー組成物Aからなり、中間層12はプライマー組成物Bからなり、ハードコート層側部位層13はプライマー組成物Cからなる。
以下、本実施形態に係る光学物品1の製造方法について説明する。
図3〜5は、本実施形態に係る光学物品の製造方法の一例を示す概略図である。
図3は、調整層形成工程において、インクジェット法による屈折率調整層としてのプライマー層3の形成方法を示す概略図である。
図4は、ハードコート層形成工程において、浸漬法によるハードコート層4の形成に用いる浸漬装置30の構成を示す概略斜視図である。この浸漬装置30は、調整層形成工程において、浸漬法による屈折率調整層としてのプライマー層3の形成に用いることができる。
図5は、反射防止層形成工程において、真空蒸着法による反射防止層5の形成に用いる真空蒸着装置40の構成を示す概略断面図である。
図6は、調整層形成工程において、インクジェット法による屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係を例示している。
本実施形態に係る光学物品1の製造方法は、基材の上に屈折率調整層としてのプライマー層を形成する調整層形成工程と、屈折率調整層としてのプライマー層の上にハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、ハードコート層の上に反射防止層を形成すると反射防止層形成工程とを備える。
本実施形態に係る光学物品1の製造方法は、調整層形成工程において、浸漬法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、インクジェット法などの手法で形成することが可能であるが、以下ではインクジェット法を用いる製造方法と、浸漬法を用いる製造方法について説明する。
まず、インクジェット法を用いて屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する調整層形成工程について、図3に基づき説明する。
液滴吐出法の一例として、インクジェット法を用いることにより、吐出ヘッド20A、20B、20Cから、それぞれ屈折率調整材としてのプライマー組成物A、B、Cを吐出する。具体的には、図3に示すように、吐出ヘッド20Aからプライマー組成物Aを吐出し、吐出ヘッド20Bからプライマー組成物Bを吐出し、そして、吐出ヘッド20Cからプライマー組成物Cを吐出する。
吐出ヘッド20A、20B、および20Cから、3種類の屈折率調整材としてのプライマー組成物A、B、およびCを選択して、基材2の上に塗布する。つまり、プライマー組成物A、B、およびCの塗布比率を変化させて塗布する。
まず、プライマー組成物A、B、およびCの塗布比率を変化させ、基材側部位層の屈折率を基材の屈折率と略同じにする。引き続き、プライマー組成物A、B、およびCの塗布比率を連続して変化させて塗布することにより、中間層の屈折率を、基材側部位層と略同じ屈折率からハードコート層と略同じ屈折率へと変化させる。そして、プライマー組成物A、B、およびCの塗布比率を変化させ、ハードコート側部位層の屈折率をハードコート層の屈折率と略同じにする。
吐出ヘッド20A、20B、および20Cの基材2に対する動作の一例として、以下の方法が挙げられる。
プライマー層3が形成される基材2の面の水平方向に、たとえばX軸方向およびY軸方向に、吐出ヘッド20A、20B、および20Cが動作する。このとき、プライマー組成物A、B、およびCを、基材2の上に塗布する。また、プライマー層3が形成される基材2の面に対して垂直方向のZ軸方向に沿うように、吐出ヘッド20A、20B、および20Cが動作して、基材2との吐出距離を適宜選ぶ方法が備えられているとなおよい。
また、プライマー層3が形成される基材2の面に対して垂直方向のZ軸を中心に基材2を回転させ、吐出ヘッド20A、20B、および20Cが、基材2の回転する軸に対して垂直方向に動作する。たとえば、X軸方向またはY軸方向に動作する。このとき、プライマー組成物A、B、およびCを、基材2の上に塗布する。そして、基材2の回転するZ軸の方向に沿うように、吐出ヘッド20A、20B、および20Cが動作して、基材2との吐出距離を適宜選ぶ方法が備えられているとなおよい。
以上のようにして、インクジェット法を用いることにより、形成した屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係が生地側とハードコート層側とで変化する(図6参照)。
図4は、調整層形成工程において、ウェットプロセスの一例として、浸漬法による屈折率調整層としてのプライマー層3の形成に用いる浸漬装置30の構成を示す概略斜視図である。調整層形成工程に用いる浸漬法について、図4に基づき説明する。
浸漬装置30は、タンク34と昇降部31とを備えている。タンク34内には、プライマー組成物Aが収納されている。
昇降部31は、把持具33とロッド32とを備え、把持具33はロッド32に連結されている。昇降部31は、図4に示す矢印の方向に昇降する構造になっている。把持具33が基材2の外周面部を把持し、昇降部31が降下することにより、タンク34内のプライマー組成物Aに、基材2を浸漬させる。浸漬後、昇降部31が上昇することにより、タンク34内から基材2が引き上げられ、プライマー組成物Aが基材2に塗布される。
塗布後、基材2に塗布されたプライマー組成物Aに、加熱または紫外線照射などで硬化処理を施し、プライマー組成物Aを硬化させることにより、基材側部位層11が形成された基材2を得る。なお、引き上げ速度および硬化処理条件などについては、適宜決定することができる。
引き続き、基材側部位層11を形成した後に、浸漬装置30を用いて調整層形成工程において、中間層12およびハードコート層側部位層13を形成する方法は前述と略同じであり、タンク34内にプライマー組成物Bを収納するか、またはプライマー組成物Cを収納するかが相違するものであり、さらには引き上げ速度および硬化条件も相違するものである。
以下、本実施形態のハードコート層形成工程について説明する。ハードコート形成工程において、浸漬法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、インクジェット法などの手法で形成することが可能であるが、以下ではその一例として、浸漬法を用いる製造方法について説明する。
浸漬装置30を用いて、ハードコート層形成工程において、ハードコート層4を形成する方法は前述と略同じであり、タンク34内にハードコート組成物L1またはL2を収納するかが相違するものであり、さらには、引き上げ速度および硬化処理条件も相違するものである。以上のようにして、浸漬法を用いた実施例において、形成した屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係は段階的に変化する。
なお、調整層形成工程およびハードコート層形成工程における硬化処理としては、たとえば焼成などの加熱処理、または光処理、または風干しにより乾燥させる自然乾燥処理などが行われる。また、加熱処理、光処理、自然乾燥処理などを併せて行われてもよく、硬化処理条件については、適宜決定することができる。
たとえば、調整層形成工程の硬化処理は、屈折率調整層としてのプライマー層3を構成する各層を形成した後に都度行われることに限らず、適宜何回行われてもよく、また調整層形成工程の最後に一回だけ行われてもよい。
次いで、本実施形態における反射防止層形成工程について説明する。反射防止形成工程において、浸漬法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、インクジェット法などの手法で形成することが可能であるが、以下ではその一例として、ドライプロセスによる製造方法について説明する。図5は、反射防止層形成工程において、ドライプロセスの一例として、真空蒸着法による反射防止層の形成に用いる真空蒸着装置40の構成を示す概略断面図である。反射防止層形成工程に用いる真空蒸着法ついて、図5に基づき説明する。
真空蒸着装置40は、真空容器41、および排気装置42、およびガス供給装置43、および圧力計44を備えている。真空蒸着装置40は、いわゆる電子ビーム真空蒸着装置である。
真空容器41は、真空容器41内に蒸着材料がセットされた蒸発源46,47、蒸発源46,47の蒸着材料を加熱溶解し蒸発させるフィラメント48、基材2が載置される基材支持台45、基材2を加熱するための基材加熱用ヒータ49などを備えている。また、必要に応じて真空容器41内に残留した水分を除去するためのコールドトラップや、酸素などのガスを導入し、導入したガスをイオン化し加速して基材2に照射する装置、層厚を管理するための装置などが具備される。蒸着材料としては、無機物であるSiO、ZrO、またはTiOなどが挙げられる。
蒸発源46,47は、蒸着材料がセットされたるつぼであり、真空容器41内の下部に配置されている。フィラメント48が発熱することによって発生する熱電子を、電子銃により加速、偏向して、蒸発源46,47にセットされた蒸着材料に照射し蒸発させる。いわゆる電子ビーム蒸着が行われる。電子ビームの電流値に特に制限はないが、当該電流値は蒸着速度との密接な関係があるため必要な蒸着速度に応じて調整できる。また、蒸着材料を蒸発させる他の方法として、タングステンなどの抵抗体に通電し蒸着材料を溶融し気化する方法、いわゆる抵抗加熱蒸着、そして高エネルギーのレーザー光を蒸発させたい材料に照射する方法などがある。
基材支持台45は、所定数の基材2を載置する支持台であり、蒸発源46,47と対向した真空容器41内の上部に配置されている。基材支持台45は、基材2に形成される反射防止層5の均一性を確保し、かつ量産性を高めるために回転機構を有するのが好ましい。
基材加熱用ヒータ49は、たとえば赤外線ランプからなり、基材支持台45の上部に配置されている。基材加熱用ヒータ49は、基材2を加熱することにより基材2のガス出しあるいは水分とばしを行い、基材2の表面に形成される層の密着性を確保する。なお、赤外線ランプの他に抵抗加熱ヒータなどを用いることができるが、基材2の材質がプラスチックまたは樹脂の場合には、赤外線ランプを用いるのが好ましい。
排気装置42は、真空容器41内を高真空に排気する装置であり、ターボ分子ポンプと、真空容器41内の圧力を一定に保つ圧力調節バルブとを備えている。
ガス供給装置43は、Ar,N,Oなどのガスを内蔵するガスシリンダと、ガスの流量を制御する流量制御装置とを備えている。ガスシリンダに内蔵されたガスは、流量制御装置を介して真空容器41内に導入される。
圧力計44は、真空容器41内の圧力を検出する。圧力計44によって検出された圧力値に基づき、排気装置42の圧力調節バルブが、図示しない制御部からの制御信号により制御されて、真空容器41内の圧力が所定の圧力値に保たれる。圧力の調整方法としては、排気口のコンダクタンスを変化させる方法とガスを導入して導入量を変化させる方法などがあるがどちらでもかまわない。したがって、真空容器41内の圧力は、ガス供給装置43のガスシリンダから供給されるガスの流量を制御する流量制御装置を制御する方法でも可能である。また、特に調整をしないで排気後の残圧で圧力を調整する場合は、屈折率が変化する場合があるので層厚の調整が必要になる。とくに圧力制御を行わない場合には蒸着中に大きく圧力が変化する場合がある。
以下、本発明の詳細について、実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
先ず、プラスチック基材として、以下の5種類の基材2を用意した。
(1)セイコープレステージレンズ生地(エピスルフィド系樹脂、屈折率1.74、以下、「生地1.74」と記す。)
(2)セイコーラピダリーレンズ生地(チオウレタン系樹脂、屈折率1.70、以下、「生地1.70」と記す。)
(3)セイコースーパーソブリンレンズ生地(チオウレタン系樹脂、屈折率1.67、以下、「生地1.67」と記す。)
(4)セイコースーパールーシャスレンズ生地(チオウレタン系樹脂、屈折率1.60、以下、「生地1.60」と記す。)
次に、以下に示す手順により、ハードコート組成物L1を調製した。
ステンレス製容器に、ブチルセロソルブ1000重量部を投入し、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌する。その後、0.1モル/リットル塩酸水溶液300重量部を添加して一昼夜攪拌を続けることにより、シラン加水分解物を得る。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7001)30重量部を加えて1時間攪拌する。その後、酸化ケイ素を主体とする微粒子ゾル(イソプロパノール分散、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名オスカル1432)7300重量部を加えて2時間攪拌し、混合させる。次いで、エポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名EX−313)250重量部を加えて2時間攪拌する。その後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部を加え
て1時間攪拌する。その後、2μmのフィルターで濾過を行い、ハードコート組成物L1を調整した。
次に、以下に示す手順により、ハードコート組成物L2を調製した。
ステンレス製容器に、ブチルセロソルブ1000重量部を投入し、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌する。その後、0.1モル/リットル塩酸水溶液300重量部を添加して一昼夜攪拌を続けることにより、シラン加水分解物を得る。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7001)30重量部を加えて1時間攪拌する。その後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名「オプトレイク」、以下「オプトレイク」と記す。)7300重量部を加えて2時間攪拌し、混合させる。次いで、エポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名EX−313)250重量部を加えて2時間攪拌する。その後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部を加えて1時間攪拌
する。その後、2μmのフィルターで濾過を行い、ハードコート組成物L2を調整した。
次いで、以下に示す手順により、屈折率調整材としてのプライマー組成物Aを調整した。
ステンレス製容器内に、メチルアルコール3700重量部、純水250重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」と記す。)1000重量部を投入し、十分に攪拌する。その後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名「オプトレイク」、以下「オプトレイク」と記す。)2800重量部を加えて攪拌し、混合させる。次いで、ポリエステル樹脂2200重量部を加えて攪拌し、混合させる。その後、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」、以下「L−7604」と記す。)2重量部を加えて一昼夜攪拌を続ける。その後、2μmのフィルターで濾過を行うことにより、プライマー組成物Aを得た。
次に、以下に示す手順により、屈折率調整材としてのプライマー組成物Bを調整した。ステンレス製容器内に、メチルアルコール3700重量部、純水250重量部、PGME1000重量部を投入し、十分に攪拌する。その後、オプトレイク1400重量部および酸化ケイ素を主体とする微粒子ゾル(イソプロパノール分散、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名「オスカル1432」、以下「オスカル」と記す。)1400重量部を加えて攪拌し、混合させる。次いで、ポリエステル樹脂2200重量部を加えて攪拌し、混合させる。その後、L−7604を、2重量部を加えて一昼夜攪拌を続ける。その後、2μmのフィルターで濾過を行うことにより、プライマー組成物Bを得る。
更に、以下に示す手順により、屈折率調整材としてのプライマー組成物Cを調整した。ステンレス製容器内に、メチルアルコール3700重量部、純水250重量部、PGME1000重量部を投入し、オスカル2800重量部を加えて攪拌し、混合させる。次いで、ポリエステル樹脂2200重量部を加えて攪拌し、混合させる。その後、L−7604を2重量部、加えて一昼夜攪拌を続ける。その後、2μmのフィルターで濾過を行うことにより、プライマー組成物Cを得る。
以下に、本実施形態の実施例について説明する。
図6は、本発明の実施形態にかかる実施例1〜4の調整層形成工程において、インクジェット法により形成した屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係を示す図である。
[実施例1]
以下に、本発明の実施例1について説明する。
図2に示す光学物品1において、2点鎖線で複層構成に示している屈折率調整層としてのプライマー層3は、「構成1」に示す複層構成である。基材2は、上述した生地1.74を用いる。
実施例1の製造方法は、調整層形成工程において、インクジェット法を用いて屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
基材2である生地1.74の表面に、調整層形成前処理を施す。以下、調整層形成前処理について説明する。
まず、基材2である生地1.74の表面にアルカリ処理を施す。アルカリ処理の条件は、50℃に保たれた2モル/リットルの水酸化カリウム水溶液に5分間の浸漬とする。その後、中和処理を行う。中和処理の条件は、生地1.74の表面を純水で洗浄し、25℃に保たれた1.0モル/リットル硫酸に1分間浸漬とする。その後、純水洗浄ならびに乾燥および放冷を行う。
調整層形成前処理の次に、調整層形成工程を行う。以下、インクジェット法を用いた調整層形成工程について、図3を参照して説明する。
プライマー組成物AおよびCを用い、調整層形成前処理が施された基材2の上に屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
まず、プライマー組成物Aを、基材2の表面に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材2の表面に基材側部位層11を形成する。このとき、基材側部位層11の屈折率は、1.74である。基材側部位層11の層厚は、100nmである。
次いで、プライマー組成物AおよびCの塗布比率A/Cを、連続的に100/0から50/50へ、引き続き0/100へ変化させながら、プライマー組成物AおよびCを基材側部位層11の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材側部位層11の上に中間層12を形成する。このとき、中間層12の層厚は、700nmである。中間層12の屈折率は、基材側部位層11側から離れるにしたがい層厚700nmの間で、1.74から1.50へ連続的に変化している。
さらに、プライマー組成物Cを、中間層12の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、中間層12の上にハードコート層側部位層13を形成する。このとき、ハードコート層側部位層13の屈折率は、1.50である。ハードコート層側部位層13の層厚は、100nmである。その後、硬化処理を施す。硬化処理条件は、80℃で20分間の焼成とする。
これにより、図6に一点鎖線で示すように、屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係は、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.74から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3を得る。プライマー層3の層厚は、900nmである。
調整層形成工程の後に、ハードコート層形成工程を行う。以下、浸漬法を用いたハードコート層形成工程について、図4を参照して説明する。
屈折率調整層としてのプライマー層3が形成された基材2を、ハードコート組成物L1の中に浸漬する。その後、ハードコート組成物L1中より引き上げることにより、プライマー層3が形成された基材2に、ハードコート組成物L1を塗布する。その後、乾燥させることにより、プライマー層3の上にハードコート層4を形成する。硬化処理条件は、80℃で30分間の焼成とする。このとき、ハードコート層4の屈折率は、1.50である。ハードコート層4の層厚は、2200nmである。
その後、125℃に保たれたオーブン内で3時間加熱して、基材2にプライマー層3とハードコート層4とが形成された基材2を得る。
ハードコート層形成工程の後に、反射防止層形成工程を行う。以下、真空蒸着法を用いた反射防止層形成工程について、図5を参照して説明する。
まず、プライマー層3とハードコート層4とが形成された基材2にプラズマ処理を行う。プラズマ処理の条件は、アルゴンプラズマ400Wで60秒間とする。
その後、プラズマ処理された基材2に形成されたハードコート層4の表面から順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層で構成される反射防止層5としての
多層反射防止層を図5に示す真空蒸着装置40((株)シンクロン製)を用いて形成する。5つの層の光学的層厚は、最初のSiO2層、次のZrO2とSiO2の等価膜層および次のZrO2層、最上層のSiO2層について、それぞれλ/4である。反射防止多層膜の波長λは、設計値520nmである。
このようにして、レンズ基材の表面に、レンズ基材の表面から離れるにしたがって屈折率が1.74から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3と、プライマー層3の上に形成されたハードコート層4と、ハードコート層4の上に形成された反射防止層5とを備えた光学物品1を得る。
[実施例2]
以下に、本発明の実施例2について説明する。
図2に示す光学物品1において、2点鎖線で複層構成に示している屈折率調整層としてのプライマー層3は、「構成2」に示す複層構成である。基材2は、上述した生地1.70を用いる。
実施例2の製造方法は、実施例1と同様に、調整層形成工程において、インクジェット法を用いて屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
基材2である生地1.70の表面に、調整層形成前処理を施す。調整層形成前処理は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。
調整層形成前処理の次に、調整層形成工程を行う。以下、インクジェット法を用いた調整層形成工程について、図3を参照して説明する。
プライマー組成物A、B、およびCを用い、調整層形成前処理が施された基材2の上に屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
まず、プライマー組成物AおよびBの塗布比率A/Bを、たとえば71/29に選択して、基材2の表面に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材2の表面に基材側部位層11を形成する。このとき、基材側部位層11の屈折率は、1.70である。基材側部位層11の層厚は、実施例1と同様に、100nmである。
次いで、プライマー組成物A、B、およびCの塗布比率A/B/Cを、連続的に71/29/0から50/50/0へ、引き続き、0/100/0へ、そして、0/50/50へ、さらに0/0/100へ変化させながら、プライマー組成物A、B、およびCを基材側部位層11の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、中間層12を形成する。このとき、中間層12の屈折率は、基材側部位層11側から離れるにしたがい層厚700nmの間で、1.70から1.50へ連続的に変化している。中間層12の層厚は、実施例1と同様に、700nmである。
さらに、プライマー組成物Cを、中間層12の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、中間層12の上にハードコート層側部位層13を形成する。このとき、ハードコート層側部位層13の屈折率は、1.50である。ハードコート層側部位層13の層厚は、実施例1と同様に、100nmである。その後、硬化処理を施す。硬化処理条件は、実施例1と同様に、80℃で20分間の焼成とする。
これにより、図6に実線で示すように、屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係は、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.70から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3を得る。プライマー層3の層厚は、実施例1と同様に、900nmである。
調整層形成工程の後に、ハードコート層形成工程および反射防止層形成工程を行う。ハードコート層形成工程および反射防止層形成工程は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。
このとき、実施例1と同様に、ハードコート層4の屈折率は1.50であり、ハードコート層4の層厚は2200nmであり、反射防止層5の波長λは設計値520nmである。
このようにして、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.70から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3と、プライマー層3の上に形成されたハードコート層4と、ハードコート層4の上に形成された反射防止層5とを備えた光学物品1を得る。
[実施例3]
以下に、本発明の実施例3について説明する。
図2に示す光学物品1において、2点鎖線で複層構成に示している屈折率調整層としてのプライマー層3は、「構成2」に示す複層構成である。基材2は、上述した生地1.67を用いる。
実施例3の製造方法は、実施例1と同様に、調整層形成工程において、インクジェット法を用いて屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
基材2である生地1.67の表面に、調整層形成前処理を施す。調整層形成前処理は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。
調整層形成前処理の次に、調整層形成工程を行う。以下、インクジェット法を用いた調整層形成工程について、図3を参照して説明する。
プライマー組成物A、B、およびCを用い、調整層形成前処理が施された基材2の上に屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
まず、プライマー組成物AおよびBの塗布比率A/Bを、たとえば50/50に選択して、基材2の表面に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材2の表面に基材側部位層11を形成する。このとき、基材側部位層11の屈折率は、1.67である。基材側部位層11の層厚は、実施例1と同様に、100nmである。
次いで、プライマー組成物A、B、およびCの塗布比率A/B/Cを、連続的に50/50/0から、0/100/0へ、引き続き0/50/50へ、そして0/0/100へ変化させながら、プライマー組成物A、B、およびCを基材側部位層11の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材側部位層11の上に中間層12を形成する。このとき、中間層12の屈折率は、基材側部位層11側から離れるにしたがい層厚700nmの間で、1.67から1.50へ連続的に変化している。中間層12の層厚は、実施例1と同様に、700nmである。
さらに、プライマー組成物Cを、中間層12の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、中間層12の上にハードコート層側部位層13を形成する。このとき、ハードコート層側部位層13の屈折率は、1.50である。ハードコート層側部位層13の層厚は、実施例1と同様に、100nmである。その後、硬化処理を施す。硬化処理条件は、実施例1と同様に、80℃で20分間の焼成とする。
これにより、図6に破線で示すように、屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係は、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.67から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3を得る。プライマー層3の層厚は、実施例1と同様に、900nmである。
調整層形成工程の後に、ハードコート層形成工程および反射防止層形成工程を行う。ハードコート層形成工程および反射防止層形成工程は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。
このとき、実施例1と同様に、ハードコート層4の屈折率は1.50であり、ハードコート層4の層厚は2200nmであり、反射防止層5の波長λは設計値520nmである。
このようにして、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.67から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3と、プライマー層3の上に形成されたハードコート層4と、ハードコート層4の上に形成された反射防止層5とを備えた光学物品1を得る。
[実施例4]
以下に、本発明の実施例4について説明する。
図2に示す光学物品1において、2点鎖線で複層構成に示している屈折率調整層としてのプライマー層3は、「構成3」に示す複層構成である。基材2は、上述した生地1.60を用いる。
実施例4の製造方法は、実施例1と同様に、調整層形成工程において、インクジェット法を用いて屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
基材2である生地1.60の表面に、調整層形成前処理を施す。調整層形成前処理は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。
調整層形成前処理の次に、調整層形成工程を行う。以下、インクジェット法を用いた調整層形成工程について、図3を参照して説明する。
プライマー組成物BおよびCを用い、調整層形成前処理が施された基材2の上に屈折率調整層としてのプライマー層3を形成する。
まず、プライマー組成物Bを、基材2の表面に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材2の表面に基材側部位層11を形成する。このとき、基材側部位層11の屈折率は、1.60である。基材側部位層11の層厚は、実施例1と同様に、100nmである。
次いで、プライマー組成物BおよびCの塗布比率B/Cを、連続的に100/0から50/50へ、引き続き0/100へ変化させながら、プライマー組成物BおよびCを基材側部位層11の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、基材側部位層11の上に中間層12を形成する。このとき、中間層12の屈折率は、基材側部位層11側から離れるにしたがい層厚700nmの間で、1.60から1.50へ連続的に変化している。中間層12の層厚は、実施例1と同様に、700nmである。
さらに、プライマー組成物Cを、中間層12の上に塗布する。その後、乾燥させることにより、中間層12の上にハードコート層側部位層13を形成する。このとき、ハードコート層側部位層13の屈折率は、1.50である。ハードコート層側部位層13の層厚は、実施例1と同様に、100nmである。その後、硬化処理を施す。硬化処理条件は、実施例1と同様に、80℃で20分間の焼成とする。
これにより、図6に二点鎖線で示すように、屈折率調整層としてのプライマー層3の屈折率と層厚との関係は、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.60から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3を得る。プライマー層3の層厚は、実施例1と同様に、900nmである。
調整層形成工程の後に、ハードコート層形成工程および反射防止層形成工程を行う。ハードコート層形成工程および反射防止層形成工程は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。
このとき、実施例1と同様に、ハードコート層4の屈折率は1.50であり、ハードコート層4の層厚は2200nmであり、反射防止層5の波長λは設計値520nmである。
このようにして、基材2の表面に、基材2の表面から離れるにしたがって屈折率が1.60から1.50まで連続的に変化しているプライマー層3と、プライマー層3の上に形成されたハードコート層4と、ハードコート層4の上に形成された反射防止層5とを備えた光学物品1を得る。
以下、比較例1〜4について説明する。
図7は、比較例1〜4におけるプライマー層の屈折率と層厚との関係を示す図である。
図7において、破線は比較例1,2におけるプライマー層の屈折率と層厚との関係を示し、実線は比較例3,4におけるプライマー層の屈折率と層厚との関係を示している。
なお、比較例1〜4において、調整層形成前処理、ハードコート層形成工程、および反射防止層形成工程は、実施例1と同様の手順および条件により施すため、説明を省略する。また、比較例1〜4において形成されるハードコート層4の屈折率は、実施例1と同様に、1.50である。ハードコート層4の層厚は、実施例1と同様に、2200nmである。そして、反射防止層5の波長λは、実施例1と同様に、設計値520nmである。
[比較例1]
比較例1において、図2に2点鎖線で複層構成に図示している屈折率調整層としてのプライマー層3を、一層に形成した単層構成が特徴である。基材2は、上述した生地1.74を用いる。
基材2である生地1.74の表面に、調整層形成前処理を施した後に、浸漬法を用いた調整層形成工程を行う。
プライマー組成物Aを用い、調整層形成前処理が施された基材2の上にプライマー層3を形成する。
プライマー組成物Aの中に、離型工程の後の基材2を、図4に示す浸漬装置30を用いて浸漬する。これにより、基材2の表面に、プライマー組成物Aを塗布する。引き上げ速度は、200mm/minとする。プライマー組成物Aが塗布された基材2に、硬化処理を施す。硬化処理条件は、実施例1と同様に、80℃で20分間の焼成とする。これにより、基材2の表面にプライマー層3を形成する。このとき、プライマー層3の屈折率は、1.74である。プライマー層3の層厚は、実施例1と同様に、900nmである。
[比較例2]
比較例2は、比較例1と同様に、図2に2点鎖線で複層構成に図示している屈折率調整層としてのプライマー層3を、一層に形成した単層構成が特徴である。基材2は、上述した生地1.70を用いる。
基材2である生地1.70の表面に、調整層形成前処理を施した後に、浸漬法を用いた調整層形成工程を行う。
比較例1と同様の手順および条件により調整層形成前処理が施された基材2の上にプライマー層3を形成する。このとき、プライマー層3の屈折率は、1.74である。実施例1と同様に、プライマー層3の層厚は、900nmである。
[比較例3]
比較例3は、比較例1と同様に、図2に2点鎖線で複層構成に図示している屈折率調整層としてのプライマー層3を、一層に形成した単層構成が特徴である。基材2は、上述した生地1.67を用いる。
基材2である生地1.67の表面に、調整層形成前処理を施した後に、浸漬法を用いた調整層形成工程を行う。
プライマー組成物Bを用い、比較例1と同様の手順および条件により調整層形成前処理が施された基材2の上にプライマー層3を形成する。このとき、プライマー層3の屈折率は、1.60である。プライマー層3の層厚は、実施例1と同様に、900nmである。
[比較例4]
比較例4は、比較例1と同様に、図2に2点鎖線で複層構成に図示している屈折率調整層としてのプライマー層3を、一層に形成した単層構成が特徴である。基材2は、上述した生地1.60を用いる。
基材2である生地1.60の表面に、調整層形成前処理を施した後に、浸漬法を用いた調整層形成工程を行う。
プライマー組成物Bを用い、比較例1と同様の手順および条件により調整層形成前処理が施された基材2の上にプライマー層3を形成する。このとき、プライマー層3の屈折率は、1.60である。プライマー層3の層厚は、実施例1と同様に、900nmである。
ここで、上述の実施例1〜4および比較例1〜4の光学物品について、以下に示す評価を行った。評価項目は、干渉縞の発生具合、耐擦傷性の2項目とした。
(1)干渉縞の発生具合
光学物品の干渉縞の発生具合について、暗箱内で三波長型蛍光灯下で目視により観察した。干渉縞の発生具合を次の2段階に分けて評価した。
○:干渉縞の発生が確認されず、優れた外観が得られている。
×:干渉縞の発生が確認でき、外観が不良である。
(2)耐擦傷性
スチールウール(日本スチールウール(株)製、#0000番)を用いて、得られたレンズ表面を1kgの荷重を掛けながら10往復させた。この時に発生した傷の程度を目視評価により次の5段階に分けて評価した。
a:傷が発生していない。
b:1〜5本程度の傷が発生している。
c:5〜20本程度の傷が発生している。
d:20本以上の傷が発生している。
e:レンズ表面全体に傷が発生している。
上述の評価の結果を表1に示す。
Figure 2008242425
プライマー層を単層構成とした比較例1〜4の光学物品に対して、プライマー層を複層構成とした実施例1〜4の光学物品は、干渉縞の発生がなく、優れていることを確認することができる。
従って、本実施形態によれば、異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間に設けられた屈折率調整層としてプライマー層3は、基材側に基材と略同じ屈折率の部位を有し、ハードコート層側にハードコート層と略同じ屈折率の部位を有し、屈折率調整層としてプライマー層3の屈折率は、基材2と略同じ屈折率からハードコート層4と略同じ屈折率へと連続して変化している。このことから、基材2とハードコート層4との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間に設けられた屈折率調整層としての基材側部位層とハードコート側部位層と中間層とにおいて、基材側部位層11の屈折率は基材2の屈折率と略同じであり、ハードコート層側部位層13の屈折率はハードコート層側部位層13の屈折率と略同じであり、中間層12の屈折率は基材側部位層11の屈折率とハードコート層4の屈折率と間の屈折率である。このため、異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間で屈折率調整層としてプライマー層3の屈折率が段階的に変化した3層から構成している。このことから、屈折率調整層を3層から構成するという具体的手段が好ましく、基材2とハードコート層4との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
本実施形態では、屈折率調整層をプライマー層3とすることにより、基材2とハードコート層4との密着性を維持し、ハードコート4層の耐擦傷性および耐久品質が優れ、且つプライマー層3の屈折率が連続して変化していることから、光学物品1の構成を複雑にすることなく基材2とハードコート層4との異なる屈折率による干渉縞の発生を抑制することができる。
本実施形態では、異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間に、複数種類の屈折率調整材を選択して基材2とハードコート層4との間で連続して屈折率を変化させている屈折率調整層としてプライマー層3を設けることが可能となる。このことから、基材2の屈折率とハードコート層4の屈折率とが異なっていても、屈折率調整層としてプライマー層3により、光学物品1に干渉縞が発生することを抑制できる汎用の製造工程を備えた生産効率の優れた光学物品の製造方法を提供することができる。
本実施形態では、異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間に設ける屈折率調整層としての基材側部位層と中間層とハードコート側部位層とにおいて、複数種類の屈折率調整材を選択して基材側部位層11の屈折率を基材2の屈折率と略同じにし、ハードコート層側部位層13の屈折率をハードコート層4の屈折率と略同じにし、中間層12の屈折率を基材側部位層11の屈折率とハードコート層側部位層13の屈折率と間の屈折率にすることができる。これにより、段階的に屈折率を変化させている屈折率調整層としてプライマー層3を設けることが可能となる。このことから、基材2とハードコート層4との異なる屈折率により、光学物品1に干渉縞が発生することを抑制できる汎用の製造工程を備えた生産効率の優れた光学物品の製造方法を提供することが可能となる。
本実施形態では、異なる屈折率の基材2とハードコート層4との間に設ける屈折率調整層としての基材側部位層と中間層とハードコート側部位層とにおいて、少なくとも2種類の屈折率調整材を選択して基材側部位層11の屈折率を基材2の屈折率と略同じにし、ハードコート層側部位層13の屈折率をハードコート層4の屈折率と略同じにし、中間層12の屈折率を基材側部位層11の屈折率とハードコート層側部位層13の屈折率と間の屈折率にすることができる。これにより、連続的または段階的に屈折率を変化させている屈折率調整層を設けることが可能となる。このことから、基材2とハードコート層4との異なる屈折率により、光学物品に干渉縞が発生することを抑制できる汎用の製造工程を備えた生産効率の優れた光学物品の製造方法を提供することが可能となる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述の実施形態では、屈折率調整層の説明をわかりやすくするため、基材側部位層、中間層、およびハードコート側部位層の3種類としたが、本発明では、必ずしも層構成を明確にする必要はなく、例えば、複数の層の境界が判別できないほど屈折率が連続して変化しているのであれば1つの層としてもよい。
逆に、本発明では、中間層を複数層から形成するものでもよい。例えば、図4で示される浸漬法でプライマー層を形成する場合、プライマー組成物Bに代えて、屈折率が異なる複数の組成物を用い、これらの組成物を前述の手順で基材側部位に対して順次積層させるものでもよい。
基材の材質としても、前述の実施形態に示した材質に限定されるものではなく、例えば、ガラスから基材を構成するものでもよい。
本発明は、プラスチック製眼鏡レンズに利用できる他、防塵ガラス、防塵水晶、コンデンサレンズ、プリズム、マイクロレンズアレイ、光ディスクの反射防止、ディスプレイの反射防止、太陽電池の反射防止、光アイソレータにも利用することができる。
本発明の実施形態にかかる光学物品の構成を示す概略断面図。 実施形態にかかる光学物品の一部を拡大して示す部分拡大図。 実施形態にかかる調整層形成工程において、インクジェット法による屈折率調整層の形成方法を示す概略図。 本実施形態にかかるハードコート層形成工程および調整層形成工程において用いる浸漬装置の構成を示す概略斜視図。 本実施形態にかかる反射防止層形成工程において用いる真空蒸着装置の構成を示す概略断面図。 本実施形態にかかる調整層形成工程において、インクジェット法による屈折率調整層としてのプライマー層の屈折率と層厚との関係図。 比較例1〜4におけるプライマー層の屈折率と層厚との関係図。
符号の説明
1…光学物品
2…基材
3…プライマー層
4…ハードコート層
5…反射防止層
11…基材側部位層
12…中間層
13…ハードコート層側部位層
20A…吐出ヘッド
20B…吐出ヘッド
20C…吐出ヘッド
30…浸漬装置
31…昇降部
32…ロッド
33…把持具
34…タンク
40…真空蒸着装置
41…真空容器
42…排気装置
43…ガス供給装置
44…圧力計
45…基材支持台
46,47…蒸発源
48…フィラメント
49…基材加熱用ヒータ
A,B,C…プライマー層組成物
L1…ハードコート組成物
L2…ハードコート組成物

Claims (7)

  1. 基材と、
    前記基材の上に設けられ前記基材とは屈折率が異なるハードコート層と、
    前記ハードコート層と前記基材との間に設けられるプライマー層とを備え、
    前記プライマー層は、
    前記基材側に備えられ前記基材と略同じ屈折率の基材側部位と、
    前記ハードコート層側に備えられ前記ハードコート層と略同じ屈折率のハードコート層側部位と、
    前記基材側部位と前記ハードコート層側部位との間に備えられ前記基材の屈折率と前記ハードコート層の屈折率の間の屈折率を有する中間部位とからなる屈折率調整層であり、
    前記屈折率調整層における各部位の屈折率が前記基材側と前記ハードコート層側との間で段階的に変化していることを特徴とする光学物品。
  2. 請求項1に記載の光学物品において、
    前記基材が、チオウレタン系樹脂およびエピスルフィド系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする光学物品。
  3. 請求項1または請求項2に記載の光学物品において、
    前記基材の屈折率が、1.6以上であることを特徴とする光学物品。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学物品において、
    前記中間部位が、単一の屈折率を有する部位からなることを特徴とする光学物品。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の光学物品において、
    前記ハードコート層は、酸化ケイ素微粒子を含むことを特徴とする光学物品。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の光学物品を製造する方法において、
    前記屈折率調整層としてのプライマー層を形成する工程が、
    前記基材の表面上に前記基材側部位を塗布形成する基材側部位塗布工程と、
    前記基材側部位塗布工程の後、前記基材側部位の表面上に前記中間部位を塗布形成する中間部位塗布工程と、
    前記中間部位塗布工程の後、前記中間部位の表面上に前記ハードコート層側部位を塗布形成するハードコート層側部位塗布工程とを有し、
    前記各工程では、互いに屈折率の異なる複数種類の屈折率調整材を選択し、塗布することを特徴とする光学物品の製造方法。
  7. 請求項6に記載の光学物品の製造方法において、
    前記屈折率調整材は、
    前記基材と略同じ屈折率の基材側屈折率調整層材と、
    前記ハードコート層と略同じ屈折率のハードコート層側屈折率調整層材とからなり、
    前記中間部位塗布工程が、前記基材側屈折率調整層材と前記ハードコート層側屈折率調整層材を混合したものを塗布することにより前記中間部位を形成することを特徴とする光学物品の製造方法。
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