JP2008223588A - 油圧式VVT(VariableValveTiming:VVT)の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】例えば冷間始動時においても、油温を精度良く予測することで、当該油圧式VVTの制御性を向上させる。
【解決手段】油圧式VVTの制御装置は、作動油によって作動可能な油圧式VVT(63a、63b)を制御するための制御装置である。この装置は、所定幅(T3)のパルス信号を与えて油圧式VVTを駆動する駆動手段(80)と、与えられるパルス信号のうち最初のものである初動パルス信号に対して油圧式VVTが応答する際の、応答遅れの実測値(Δt1、Δt2)及び応答速度の実測値(Δk1、Δk2)のうち少なくとも一方を特定する特定手段(41、42a、42b、80)とを備える。そして、特定された少なくとも一方と作動油の油温との相関に基づいて、作動油の油温を推定する推定手段(80)とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】油圧式VVTの制御装置は、作動油によって作動可能な油圧式VVT(63a、63b)を制御するための制御装置である。この装置は、所定幅(T3)のパルス信号を与えて油圧式VVTを駆動する駆動手段(80)と、与えられるパルス信号のうち最初のものである初動パルス信号に対して油圧式VVTが応答する際の、応答遅れの実測値(Δt1、Δt2)及び応答速度の実測値(Δk1、Δk2)のうち少なくとも一方を特定する特定手段(41、42a、42b、80)とを備える。そして、特定された少なくとも一方と作動油の油温との相関に基づいて、作動油の油温を推定する推定手段(80)とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば内燃機関に備わる油圧式VVTを制御するための制御装置に関する。
この種の制御装置によって制御される油圧式VVTは、吸気バルブや排気バルブのバルブタイミング,リフト量及び作用角等を可変とする。具体的に例えば、エンジン制御回路で目標バルブタイミングと実バルブタイミングとの偏差に基づいて制御信号(言い換えれば、デューティ値)のデューティ比が算出され、そのデューティ比に応じて油圧制御弁(Oil Control Valve:OCV)が駆動され、進角室や遅角室に供給する作動油の流量(油圧)を変化させることで、バルブタイミングが進角又は遅角される。このような機構は、出力向上,燃費節減及び排気エミッション低減等を目的としており、かかる目的を達成するにあたっては制御性(あるいは、応答性)が高い程望ましい。
かかる要請のもと、例えば、油圧制御弁に対するデューティ値の振動中心値が不感帯の中心付近にあるときでも、デューティ値の振動範囲を不感帯の外側の応答性の良い領域へはみ出させることで、制御性を向上可能とする技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、油圧制御弁の作動油の油温を正確に把握しなければ、制御性を十分には向上しきれない。作動油の油音に応じてその粘度が異なり、油圧式VVTの制御性も異なるからである。具体的には、作動油の油音が低いほど、その粘度も増加し、油圧式VVTの制御性が低下する傾向にある。したがって、特に冷間始動時のように油温が低いと想定される場合には、油温の把握が望ましい。
そこで、例えば、エンジンの冷却水温と作動油の温度には大きな差がないと考えて、始動初期の冷却水温及び始動後の経過時間に基づいて油圧式VVT(この場合は、CVVT)の油温を予測する技術が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、例えば前述の特許文献2に開示された技術では、作動油の油温を正確に予測しきれないおそれがある。始動停止繰返し,モード走行状態,及びアイドル放置状態等の運転条件の違いによって、エンジンの冷却水温と作動油との関係が異なるからである。
本発明は、例えば上述した課題点に鑑みてなされたものであり、各種運転条件が混在するなかで、油圧式VVTに用いられる作動油の油温を、特に冷間始動時においても精度良く予測することで、当該油圧式VVTの制御性を向上させるための、油圧式VVTの制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る油圧式VVTの制御装置は、上記課題を解決するために、
作動油によって作動可能な油圧式VVTを制御するための制御装置であって、
所定幅のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する駆動手段と、
前記与えられるパルス信号のうち最初のものである初動パルス信号に対して前記油圧式VVTが応答する際の、応答遅れの実測値(Δt)及び応答速度の実測値(Δk)のうち少なくとも一方を特定する特定手段と、
前記特定された少なくとも一方の実測値と前記作動油の油温との相関に基づいて、前記作動油の油温を推定する推定手段とを備える。
作動油によって作動可能な油圧式VVTを制御するための制御装置であって、
所定幅のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する駆動手段と、
前記与えられるパルス信号のうち最初のものである初動パルス信号に対して前記油圧式VVTが応答する際の、応答遅れの実測値(Δt)及び応答速度の実測値(Δk)のうち少なくとも一方を特定する特定手段と、
前記特定された少なくとも一方の実測値と前記作動油の油温との相関に基づいて、前記作動油の油温を推定する推定手段とを備える。
この油圧式VVTの制御装置によると、以下のようにして作動油の油温を好適に推定できるので、当該油圧式VVTの制御性が向上する。まず、この油圧式VVTの制御装置は、点火時期,空気量或いは燃料噴射量を連続的に可変の内燃機関に備わっており、作動油によって作動可能な油圧式VVTを制御するための制御装置である。ここで、「作動油によって作動可能な油圧式VVT」は、作動油を利用して、バルブタイミング,バルブリフトあるいは位相差等の動弁特性を連続可変とする可変動弁機構である。「作動油」の種類は特に限定されず、必ずしも油である必要はない。
この油圧式VVTを駆動するには、例えばECUのような駆動手段によって、所定幅のパルス信号が与えられる。言い換えれば、印加する電圧のデューティ比に応じて、油圧式VVTは駆動される。
このように与えられるパルス信号のうち最初のものである初動パルス信号に対して油圧式VVTが応答する際の、応答遅れの実測値及び応答速度の実測値のうち少なくとも一方が、例えばカム角センサ及びECUを含む特定手段によって特定される。ここで、「最初のもの(パルス信号)」というのは、当該油圧式VVTが製造されてから初めて与えられるパルス信号のみを指すのではなく、所定期間(例えば、当該機関が始動してから停止するまでの運転期間、あるいはインチング制御期間)内における最初のものを指す。「初動パルス信号に対して前記油圧式VVTが応答する」とは、初動パルスが与えられた結果、作動油を介して、油圧式VVTの動弁特性が変化することをいう。「応答遅れ」とは、初動パルス信号の入力タイミングと油圧式VVTの応答タイミングとの時間的なズレをいう。「応答速度」とは、油圧式VVTの動弁特性の時間的な変化量乃至時間微分値をいう。「応答遅れ」及び「応答速度」は、初動パルスの立ち上がりに対応するもののみならず、立ち下がりに対応するものも含まれる。
ここで、本願発明者の研究によると、このように特定された少なくとも一方の実測値と前記作動油の油温とは所定の相関を有することが判明している。具体的には、応答遅れの実測値と作動油の油温とは所定の温度域(例えば、―25℃乃至0℃)においては傾きが負の比例関係を有し、他方で、応答速度の実測値と作動油の油温とは所定の温度域においては傾きが正の比例関係を有することが判明している。従って、この相関に基づいて例えば予め備えられたマップ上での対応値を読み取ることで、作動油の油温が、EUCのような推定手段によって推定される。なお、「少なくとも一方の実測値」というからには、「応答遅れの実測値」及び「応答速度の実測値」の両方から油温を推定することもある。この場合は、ロバスト性向上の観点から、例えば両値を平均するとよい。
以上みてきたように、本発明に係る油圧式VVTの制御装置によると、冷間始動時などのように機関温度が低い状態のように、冷却水温から油温を直接推定することが困難な場合でも、作動油の特性を間接的に示すと考えられる応答遅れや応答速度を特定することにより、当該作動油の油温を好適に推定可能となる。これにより、油圧式VVTの制御性を向上可能となり、実践上非常に有効である。
本発明に係る油圧式VVTの制御装置の一の態様では、上記課題を解決するために、
前記油圧式VVTが備わるエンジンの冷却水温に基づいて、応答遅れの予測値(T1)を特定する予測手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記初動パルス信号のパルス幅(T3)を、前記特定される応答遅れの予測値(T1)よりも長い期間に設定するとともに、該設定されたパルス幅(T3)のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する。
前記油圧式VVTが備わるエンジンの冷却水温に基づいて、応答遅れの予測値(T1)を特定する予測手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記初動パルス信号のパルス幅(T3)を、前記特定される応答遅れの予測値(T1)よりも長い期間に設定するとともに、該設定されたパルス幅(T3)のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する。
この態様によると、ECUのような予測手段を更に備える。これにより、油圧式VVTが備わるエンジンの冷却水温に基づいて、応答遅れの予測値(T1)が特定される。ここで、油圧式VVTが備わるエンジンの冷却水温と油圧式VVTの油温とは正の相関を有し(つまり、冷却水温が上昇すれば油温も上昇する)、油温と応答遅れとは負の相関を有する(つまり、油温が上昇すれば応答遅れは下降する)。そこで、この関係を予め実験的に定めてマップとして記録しておき、冷却水温に対応する値を読み取ることで、応答遅れの予測値(T1)を特定できる。初動パルス信号のパルス幅(T3)は、上述のように特定される応答遅れの予測値(T1)よりも長い期間に設定される。設定されたパルス幅(T3)のパルス信号が駆動手段によって与えられ、もって油圧式VVTが駆動される。その結果、インチング制御における繰り返し回数を低減できるので、待ち時間や応答遅れを低減でき、もって油温の推定精度が向上する。また、応答遅れ(T1)は、油圧式VVTの動作源である作動油の特性を間接的に表すところ、応答遅れ(T1)に基づいてパルス幅(T3)を設定することで、油圧式VVTの動作源である作動油の現状に即したパルス幅(T3)を設定可能となる。
このように初動パルス信号のパルス幅(T3)を設定する態様では、
前記特定手段は、前記応答遅れの実測値及び前記応答速度の実測値のうち少なくとも一方を定期的に更新し、
前記駆動手段は、前記初動パルス信号のパルス幅(T3)を、前記特定される応答遅れの予測値(T1)と、前記応答速度の実測値が少なくとも1回更新されるまでの時間(T2)とを加えた期間に設定するとともに、該設定されたパルス幅(T3)のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動するようにしてもよい。
前記特定手段は、前記応答遅れの実測値及び前記応答速度の実測値のうち少なくとも一方を定期的に更新し、
前記駆動手段は、前記初動パルス信号のパルス幅(T3)を、前記特定される応答遅れの予測値(T1)と、前記応答速度の実測値が少なくとも1回更新されるまでの時間(T2)とを加えた期間に設定するとともに、該設定されたパルス幅(T3)のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動するようにしてもよい。
この態様によると、少なくとも1回は応答速度の実測値が更新されるものとして、更新されるまでの時間(T2)を加えておくことで、十分な幅の初動パルス信号を与えることができる。その結果、仮に、初動パルス信号のパルス幅(T3)を算出する際に冷却水温の上昇に伴い、応答遅れの予測値(T1)が極端に短くなったとしても、初動パルス信号のパルス幅(T3)を十分に確保できる。
このようなパルス幅(T3)の初動パルス信号が入力される態様では、
前記特定される応答遅れの実測値(Δt)が、前記設定される初動パルス信号のパルス幅(T3)よりも短い場合には、前記駆動手段は、前記油圧式VVTが応答して以降の前記初動パルス信号の入力を解除するようにしてもよい。
前記特定される応答遅れの実測値(Δt)が、前記設定される初動パルス信号のパルス幅(T3)よりも短い場合には、前記駆動手段は、前記油圧式VVTが応答して以降の前記初動パルス信号の入力を解除するようにしてもよい。
この態様によると、油圧式VVTが予想よりも早く応答し始める場合には、設定される初動パルス信号の入力が途中で解除され(言い換えれば、応答以降のパルス入力が0にされ)、もって油圧式VVTの不要な駆動を回避できる。
本発明の作用及び他の利得は、次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
以下、発明を実施するための最良の形態として本発明の一実施形態を、図面に基いて詳細に説明する。
(1)第1実施形態
(1−1)基本構成
以下、この発明に係る油圧式VVTの制御装置を具体化した一実施形態の基本構成について、図1、図2及び図8に基づいて詳細に説明する。
(1−1)基本構成
以下、この発明に係る油圧式VVTの制御装置を具体化した一実施形態の基本構成について、図1、図2及び図8に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る油圧式VVTの制御装置が適用されるガソリン機関1の概略構成図である。
図1において、ガソリン機関1のシリンダブロック2は複数のシリンダ3を備えている。上記シリンダ3内に設けられたピストン4は、クランクシャフト5にコンロッド6を介して連結されている。このコンロッド6によりピストン4の往復運動がクランクシャフト5の回転運動へと変換されるようになっている。
上記シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド7が取り付けられている。そして、上記シリンダ3においてピストン4の上端とシリンダヘッド7との間には、燃焼室8が形成されている。また、シリンダヘッド7には、燃焼室8内に燃料を直接噴射するインジェクタ16や点火プラグ11が設けられている。上記燃焼室8に対応して設けられた吸気ポート12及び排気ポート13は、それぞれ吸気通路14及び排気通路15に接続されている。
上記燃焼室8に対応して設けられた吸気バルブ17及び排気バルブ18は、前記吸気ポート12及び排気ポート13をそれぞれ開閉する。同吸気バルブ17及び排気バルブ18は、それぞれ吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32の回転に伴い、吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32にそれぞれ設けられたカム(図示略)が回転することによって開閉動作する。吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32の先端に各々設けられたタイミングプーリ33、34は、タイミングベルト35を介してクランクシャフト5に駆動連結されており、例えばクランクシャフト5が2回転すると各タイミングプーリ33、34が1回転するようになっている。そして、ガソリン機関1の運転時には、クランクシャフト5の回転力はタイミングベルト35及び各タイミングプーリ33、34を介して吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32に伝達される。こうして、吸気バルブ17、及び排気バルブ18はクランクシャフト5の回転に同期して、すなわち各ピストン4の往復移動に対応して所定のタイミングで開閉駆動される。
クランクシャフト5に近接してクランク角センサ41が設けられている。このクランク角センサ41は、クランクシャフト5の回転位相(クランク角)を検出しており、またその検出結果に基づいてガソリン機関1(クランクシャフト5)の機関回転速度NEが検出される。吸気カムシャフト31に近接して吸気側カム角センサ42aが設けられており、同吸気側カム角センサ42a及びクランク角センサ41の出力信号に基づいて吸気カムシャフト31の回転位相(カム角)が検出される。同様に、排気カムシャフト32に近接して排気側カム角センサ42bが設けられており、同排気側カム角センサ42b及びクランク角センサ41の出力信号に基づいて排気カムシャフト32の回転位相(カム角)が検出される。
前記点火プラグ11にはイグナイタから出力される高電圧が印加される。点火プラグ11の点火タイミングは、イグナイタからの高電圧出力タイミングにより決定される。そして、ガソリン機関1は、吸気通路14からの吸入空気とインジェクタ16から噴射された燃料とからなる混合気を点火プラグ11にて点火し、燃焼室8内で爆発させて機関出力を得る。このときに発生する燃焼ガスは排気通路15へ排出され、触媒70にて浄化される。
前記吸気通路14の一部には、吸気の脈動を抑えるためのサージタンク51が設けられている。サージタンク51の上流側には、アクセルペダルの操作に基づいて開度が変更されるスロットルバルブ53が設けられており、このスロットルバルブ53の開度を変更することにより燃焼室8内へ吸入される空気量が調節される。また、スロットルバルブ53の近傍には同スロットルバルブ53の開度を検出するスロットル開度センサ54が取り付けられている。また、上記スロットルバルブ53の上流側には、ガソリン機関1に吸入される吸入空気量Qaに応じた出力が得られるエアフロメータ55が設けられている。
本実施の形態において、吸気カムシャフト31に設けられたタイミングプーリ33には油圧式VVTである吸気バルブタイミング可変機構60aが設けられている。また、排気カムシャフト32に設けられたタイミングプーリ34にも油圧式VVTである排気バルブタイミング可変機構60bが設けられている。
この吸気バルブタイミング可変機構60aは、クランクシャフト5に対するタイミングプーリ33と吸気カムシャフト31との相対回転位相を油圧の作用により変更することで、吸気バルブ17のバルブ特性であるバルブタイミングを連続的に変更する機構である。また、排気バルブタイミング可変機構60bは、クランクシャフト5に対するタイミングプーリ34と排気カムシャフト32との相対回転位相を油圧の作用により変更することで、排気バルブ18のバルブ特性であるバルブタイミングを連続的に変更する機構である。
吸気バルブタイミング可変機構60aは、タイミングプーリ33に対し吸気カムシャフト31の相対回転位相を進めるための進角側圧力室と、同相対回転位相を遅らせるための遅角側圧力室とを備えており、進角側圧力室には進角側油圧通路P1aを通じて、遅角側圧力室には遅角側油圧通路P2aを通じて流体である作動油がそれぞれ供給される。同様に、排気バルブタイミング可変機構60bは、タイミングプーリ34に対する排気カムシャフト32の相対回転位相を進めるための進角側圧力室と、同相対回転位相を遅らせるための遅角側圧力室とを備えており、進角側圧力室には進角側油圧通路P1bを通じて、遅角側圧力室には遅角側油圧通路P2bを通じて作動油がそれぞれ供給される。
オイルパン65に貯留されている作動油はオイルポンプ62によって吸入され、この吸入された作動油は同オイルポンプ62によってオイルコントロールバルブ(以下、OCVという)63a、63bに供給される。これらOCV63a、63bは、スプール弁を備えるリニアソレノイドバルブであって、内蔵された電磁ソレノイドへの駆動信号を変化させることにより、より具体的には印加する電圧のデューティ比DRを変化させることにより、作動油の供給先や供給量を変更することができるようになっている。
OCV63aに供給された作動油は、進角側油圧通路P1a、あるいは遅角側油圧通路P2aのいずれかに供給され、各油圧通路に選択的に作動油が供給されることにより、クランクシャフト5に対する吸気カムシャフト31の相対回転位相が変更され、もって吸気バルブ17のバルブタイミングが変更される。より具体的には、OCV63aの駆動信号のデューティ比である吸気側デューティ比DRinが「50%」近傍のときに進角側油圧通路P1a及び遅角側油圧通路P2aは閉鎖され、これにより吸気バルブタイミング可変機構60aの駆動は停止されて、吸気バルブ17のバルブタイミングは現状値に保持される。また、吸気側デューティ比DRinが「50%」近傍よりも大きくなると、進角側油圧通路P1aへの作動油供給がなされて、吸気バルブタイミング可変機構60aは進角側に駆動され、もって吸気バルブ17のバルブタイミングは進角側に変更される。このときには吸気側デューティ比DRinが大きくなるほど作動油の流量が増大し、吸気バルブタイミング可変機構60aの進角側への駆動速度は速くなる。一方、吸気側デューティ比DRinが「50%」近傍よりも小さくなると、遅角側油圧通路P2aへの作動油供給がなされて、吸気バルブタイミング可変機構60aは遅角側に駆動され、もって吸気バルブ17のバルブタイミングは遅角側に変更される。このときには吸気側デューティ比DRinが小さくなるほど作動油の流量が増大し、吸気バルブタイミング可変機構60aの遅角側への駆動速度は速くなる。
同様に、OCV63bに供給された作動油は、進角側油圧通路P1b、あるいは遅角側油圧通路P2bのいずれかに供給され、各油圧通路に選択的に油が供給されることにより、クランクシャフト5に対する排気カムシャフト32の相対回転位相が変更され、もって排気バルブ18のバルブタイミングが変更される。より具体的には、OCV63bの駆動信号のデューティ比である排気側デューティ比DRexが「50%」近傍のときに進角側油圧通路P1b及び遅角側油圧通路P2bは閉鎖され、これにより排気バルブタイミング可変機構60bの駆動は停止されて、排気バルブ18のバルブタイミングは現状値に保持される。また、排気側デューティ比DRexが「50%」近傍よりも大きくなると、遅角側油圧通路P2bへの作動油供給がなされて、排気バルブタイミング可変機構60bは遅角側に駆動され、もって排気バルブ18のバルブタイミングは遅角側に変更される。このときには排気側デューティ比DRexが大きくなるほど作動油の流量が増大し、排気バルブタイミング可変機構60bの遅角側への駆動速度は速くなる。一方、排気側デューティ比DRexが「50%」近傍よりも小さくなると、進角側油圧通路P1bへの作動油供給がなされて、排気バルブタイミング可変機構60bは進角側に駆動され、もって排気バルブ18のバルブタイミングは進角側に変更される。このときには排気側デューティ比DRexが小さくなるほど作動油の流量が増大し、排気バルブタイミング可変機構60bの進角側への駆動速度は速くなる。
上記ガソリン機関1の点火時期制御、燃料噴射量制御、あるいは各バルブタイミング機構の位相制御に基づくバルブタイミングの制御等の各種制御は、制御装置(以下、ECUともいう)80によって行われる。この制御装置80は中央処理制御装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータを中心として構成されている。例えば制御装置80には、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)が設けられている。また制御装置80には、演算結果や予め記憶されたデータ等を機関停止後も保存するためのバックアップRAM、入力インターフェース、出力インターフェース等も設けられている。そして、前記クランク角センサ41、吸気側カム角センサ42a、排気側カム角センサ42b、冷却水温を検出する水温センサ43、スロットル開度センサ54、及びエアフロメータ55等からの出力信号が前記入力インターフェースを通じて入力されるようになっている。これら各センサ41〜43、54、55等の出力信号により、ガソリン機関1の運転状態が検出される。
一方、出力インターフェースは、各々対応する駆動回路等を介してインジェクタ16、点火プラグ11用のイグナイタ、OCV63a及びOCV63b等に接続されている。そして、制御装置80は上記各センサ41〜43、54、55等からの信号に基づき、ROM内に格納された制御プログラム及び初期データに従い、上記インジェクタ16、イグナイタ、OCV63a(吸気バルブタイミング可変機構60a)、及びOCV63b(排気バルブタイミング可変機構60b)等を好適に制御する。
上記制御装置80は、吸気バルブタイミング可変機構60aの駆動制御を通じて吸気バルブ17のバルブタイミング制御を行う。こうした吸気バルブ17のバルブタイミング制御では、同吸気バルブ17の実バルブタイミングが機関運転状態に基づいて設定される目標バルブタイミングとなるように吸気バルブタイミング可変機構60aが駆動される。ここで、吸気バルブ17の実バルブタイミングとしては吸気カムシャフト31の実際の変位角である吸気側実変位角VTinが用いられ、吸気バルブ17の目標バルブタイミングとしては吸気カムシャフト31の目標変位角である吸気側目標変位角VTTinが用いられる。そして、吸気側デューティ比DRinが可変設定されて吸気バルブタイミング可変機構60aの駆動がフィードバック制御又はフィードフォワード制御されることにより、吸気バルブ17のバルブタイミングは速やかに目標バルブタイミングに調整される。
同様に、上記制御装置80は、排気バルブタイミング可変機構60bの駆動制御を通じて排気バルブ18のバルブタイミング制御を行う。こうした排気バルブ18のバルブタイミング制御では、同排気バルブ18の実バルブタイミングが機関運転状態に基づいて設定される目標バルブタイミングとなるように排気バルブタイミング可変機構60bが駆動される。ここで、排気バルブ18の実バルブタイミングとしては排気カムシャフト32の実際の変位角である排気側実変位角VTexが用いられ、排気バルブ18の目標バルブタイミングとしては排気カムシャフト32の目標変位角である排気側目標変位角VTTexが用いられる。そして、排気側デューティ比DRexが可変設定されて排気バルブタイミング可変機構60bの駆動がフィードバック制御又はフィードフォワード制御されることにより、排気バルブ18のバルブタイミングは速やかに目標バルブタイミングに調整される。
なお、上記の各バルブタイミング制御で用いられる変位角とは、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を表す値であって、その変化角度はクランク角度(°CA)に換算されている。上記吸気側実変位角VTinは、クランク角センサ41及び吸気側カム角センサ42aからの検出信号に基づき求められる。吸気側実変位角VTinは、吸気バルブ17のバルブタイミングが最大限遅角されているときに「0°CA」とされるものであり、この最大遅角タイミングから吸気バルブ17のバルブタイミングがどれだけ進角されているかを表す値となっている。また、上記排気側実変位角VTexは、クランク角センサ41及び排気側カム角センサ42bからの検出信号に基づき求められる。この排気側実変位角VTexは、排気バルブ18のバルブタイミングが最大限進角されているときに「0°CA」とされるものであり、この最大進角タイミングから排気バルブ18のバルブタイミングがどれだけ遅角されているかを表す値となっている。
ここで、冷間始動時などのように機関温度が低い状態では、油温が低く作動油の粘度が高くなるため、OCV63bの作動速度が低下したり、作動油の流動速度が低下したりする等して排気バルブタイミング可変機構60bの駆動速度が低下するようになる。そのため、このような状況で排気バルブタイミング可変機構60bの駆動をフィードバック制御すると、ハンチングやオーバシュートが生じやすくなり、同機構の制御性が不安定になるおそれがある。
一方、そのような機関低温時において、図8に示すように、排気バルブタイミング可変機構60bの強制駆動と駆動休止とを繰り返し行うことで同機構を繰り返し微動させる制御、いわゆるインチング制御を実施する場合には、バルブタイミングが少しずつ目標値に向かうため、ハンチングやオーバシュートが生じにくく、同機構の制御性は安定するようになる。ただし、このインチング制御による動作、いわゆるインチング動作では排気バルブ18のバルブタイミングが少しずつ目標値に向かうため、その変化速度は遅くなる。従って、バルブタイミングの変更に際し、その変更開始から変更完了に至るまでインチング制御を行うようにすると、実値が目標値に到達するまでの時間が長くなり、排気バルブタイミング可変機構60bの駆動制御についてその応答性が低下するといった不具合が生じてしまう。
特に、機関低温時において、図2に示すエンジン冷却水温と油温との関係(低温始動)からもわかるように、冷却水温から油温を正確に推測することは困難であり、それゆえに、OCV63a(吸気バルブタイミング可変機構60a)、及びOCV63b(排気バルブタイミング可変機構60b)等の制御性が低下するおそれがある。すなわち、始動停止繰返し,アイドル放置,モード走行等の多様な運転状況に応じて、低温ほどエンジン油温と冷却水温との温度上昇度合いに差異が生じるため、冷却水温からではなく、別のパラメータから油温を推定する必要がある。
そこで本実施形態では、図3に示すフローチャートに従い、応答遅れの実測値及び応答速度の実測値のうち少なくとも一方と、作動油の油温との相関に基づいて、当該油温を推定する。
(1−2)基本動作
以下、この発明に係る油圧式VVTの制御装置を具体化した一実施形態の基本動作について、図1〜図2に加えて、図3〜図7に基づいて詳細に説明する。
以下、この発明に係る油圧式VVTの制御装置を具体化した一実施形態の基本動作について、図1〜図2に加えて、図3〜図7に基づいて詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る油圧式VVTの制御装置による油温推定処理を示すフローチャートである。
図3において、先ず、当該ガソリン機関1の冷間始動の際に、水温センサ43が冷却水温を検出して、この出力値を制御装置80の入力インターフェースに入力する(ステップS1)。制御装置80は、例えば読出専用メモリ(ROM)に予め保存されているマップを参照して、入力された冷却水温に対応する応答遅れの予測値T1を特定する(ステップS2)。そして、制御装置80は、OCV63a(吸気バルブタイミング可変機構60a)、及びOCV63b(排気バルブタイミング可変機構60b)等のインチング制御を実施するにあたり、吸気側デューティ比DRinや排気側デューティ比DRexの初動パルス信号のパルス幅(T3)を、図4に示すタイムチャート中の予測値(破線)のように設定する。すなわち、「初動パルス信号のパルス幅(T3)=応答遅れの予測値(T1)+応答速度が少なくとも1回更新されるまでの時間(T2)」として設定する(ステップS3)。制御装置80は、T3が設定された初動パルス信号を、OCV63a及びOCV63bに入力する(ステップS4)。そして、初動パルス信号に対する油圧式VVTの応答の有無、すなわちOCV63a及びOCV63bの応答の有無が、吸気側実変位角VTin又は排気側実変位角VTexに基づいて検出される(ステップS5)。
ここで、油圧式VVTの応答が検出されると、制御装置80は、初動パルス信号の立ち上がりタイミングと油圧式VVTの応答タイミングとの時間的なズレとして、立ち上がり時の応答遅れの実測値Δt1を特定する(図4の実測値(実線)を参照)。そして、図6に示すVVT応答遅れΔtと作動油の油温との相関を示すマップに従って、立ち上がり時の応答遅れの実測値Δt1に対応する、作動油の油温を推定する(ステップS6)。なお、一度立ち上がった初動パルス信号は、設定されたT3が経過しなくても、油圧式VVTが応答し始めるタイミングに合わせて、立ち下げてもよい。例えば、応答遅れの予測値T1が経過する前に、油圧式VVTが応答し始める場合には、その時点で当該初動パルス信号の入力を解除してもよい(図4参照)。
また更に、本願発明者の研究によると、図6に加えて図7のマップに示すように、作動油の油温は、VVT応答遅れΔtとのみならず、VVT応答速度Δkとも相関を有することが判明している。そこでロバスト性向上の観点からも、図5に示すように、(1)初動パルス信号の立ち上がり時の応答遅れの実測値Δt1に加えて又は代えて、他のパラメータを用いて、作動油の油温を推定する。ここでいう他のパラメータには例えば、
(2)初動パルス信号の立ち上がり時の応答速度の実測値Δk1(例えば、吸気側カム角センサ42aあるいは排気側カム角センサ42bの最大実変位角CAmaxを、応答し始めてからCAmaxに達成するまでの所要時間Δt12で除した値)、
(3)初動パルス信号の立ち下がり時の応答遅れの実測値Δt2、
(4)初動パルス信号の立ち下がり時の応答速度の実測値Δk2(例えば、吸気側カム角センサ42aあるいは排気側カム角センサ42bの最大実変位角CAmaxを、CAmaxから元の変位角に戻るまでの所要時間Δt21で除した値)
が含まれる。これらのパラメータに対応した油温を夫々求め、例えば求めた油温の平均値をとることで、作動油の油温を油温のセンシング手段抜きでも好適に推定できる。
(2)初動パルス信号の立ち上がり時の応答速度の実測値Δk1(例えば、吸気側カム角センサ42aあるいは排気側カム角センサ42bの最大実変位角CAmaxを、応答し始めてからCAmaxに達成するまでの所要時間Δt12で除した値)、
(3)初動パルス信号の立ち下がり時の応答遅れの実測値Δt2、
(4)初動パルス信号の立ち下がり時の応答速度の実測値Δk2(例えば、吸気側カム角センサ42aあるいは排気側カム角センサ42bの最大実変位角CAmaxを、CAmaxから元の変位角に戻るまでの所要時間Δt21で除した値)
が含まれる。これらのパラメータに対応した油温を夫々求め、例えば求めた油温の平均値をとることで、作動油の油温を油温のセンシング手段抜きでも好適に推定できる。
以上説明した実施形態によれば、ガソリン機関1の温度が低い状態のように、水温センサ43の冷却水温から油温を直接推定することが困難な場合でも、作動油の特性を直接的に示すと考えられる応答遅れや応答速度を特定することにより、当該作動油の油温を好適に推定可能となる。これにより、油圧式VVTの制御性を向上可能となり、実践上非常に有効である。
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う油圧式VVTの制御装置も又、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…ガソリン機関、2…シリンダブロック、3…シリンダ、4…ピストン、5…クランクシャフト、6…コンロッド、7…シリンダヘッド、8…燃焼室、11…点火プラグ、12…吸気ポート、13…排気ポート、14…吸気通路、15…排気通路、16…インジェクタ、17…吸気バルブ、18…排気バルブ、31…吸気カムシャフト、32…排気カムシャフト、33、34…タイミングプーリ、35…タイミングベルト、41…クランク角センサ、42a…吸気側カム角センサ、42b…排気側カム角センサ、43…水温センサ、51…サージタンク、53…スロットルバルブ、54…スロットル開度センサ、55…エアフロメータ、60a…吸気バルブタイミング可変機構、60b…排気バルブタイミング可変機構、62…オイルポンプ、63a、63b…オイルコントロールバルブ(OCV)、65…オイルパン、70…触媒、80……制御装置、P1a、P1b…進角側油圧通路、P2a、P2b…遅角側油圧通路
Claims (4)
- 作動油によって作動可能な油圧式VVTを制御するための制御装置であって、
所定幅のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する駆動手段と、
前記与えられるパルス信号のうち最初のものである初動パルス信号に対して前記油圧式VVTが応答する際の、応答遅れの実測値及び応答速度の実測値のうち少なくとも一方を特定する特定手段と、
前記特定された少なくとも一方の実測値と前記作動油の油温との相関に基づいて、前記作動油の油温を推定する推定手段と
を備えることを特徴とする油圧式VVTの制御装置。 - 前記油圧式VVTが備わるエンジンの冷却水温に基づいて、応答遅れの予測値を特定する予測手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記初動パルス信号のパルス幅を、前記特定される応答遅れの予測値よりも長い期間に設定するとともに、該設定されたパルス幅のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載された油圧式VVTの制御装置。 - 前記特定手段は、前記応答遅れの実測値及び前記応答速度の実測値のうち少なくとも一方を定期的に更新し、
前記駆動手段は、前記初動パルス信号のパルス幅を、前記特定される応答遅れの予測値と、前記応答速度の実測値が少なくとも1回更新されるまでの時間とを加えた期間に設定するとともに、該設定されたパルス幅のパルス信号を与えて前記油圧式VVTを駆動する
ことを特徴とする請求項2に記載された油圧式VVTの制御装置。 - 前記特定される応答遅れの実測値が、前記設定される初動パルス信号のパルス幅よりも短い場合には、前記駆動手段は、前記油圧式VVTが応答して以降の前記初動パルス信号の入力を解除する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載された油圧式VVTの制御装置。
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JP2007062819A JP2008223588A (ja) | 2007-03-13 | 2007-03-13 | 油圧式VVT(VariableValveTiming:VVT)の制御装置 |
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ID=39842492
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Citations (3)
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---|---|---|---|---|
JPH1162643A (ja) * | 1997-08-28 | 1999-03-05 | Denso Corp | 内燃機関用バルブタイミング制御装置 |
JPH11236831A (ja) * | 1998-02-23 | 1999-08-31 | Unisia Jecs Corp | 可変動弁装置の駆動制御装置 |
JP2003254017A (ja) * | 2002-02-27 | 2003-09-10 | Toyota Motor Corp | 内燃機関のバルブ制御装置 |
-
2007
- 2007-03-13 JP JP2007062819A patent/JP2008223588A/ja active Pending
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