JP2008223263A - 衛生設備室用部材 - Google Patents

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Yutaka Kasai
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【課題】安価でリサイクル性に優れた衛生設備室用部材を提供する。
【解決手段】浴室における防水パンなどの衛生設備室用部材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を用いている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば浴室などの衛生設備室に使用される衛生設備室用部材に関する。
例えば浴槽と洗い場とを1つのユニットとして構成したユニットバスなどの浴室の床は、一般に、FRP(Fiber Reinforced Plastic)が用いられている。これは、FRPが、浴室の床に求められる強度、防水性、成形性、意匠性、コストなど、様々な要件をバランスよく満たしているためであり、ユニットバス誕生から現在までの長い間、中心的な素材となっている。
しかし、近年の資源循環型社会形成のための様々な動きを受けて、リサイクル性の低いFRPなどの熱硬化性樹脂を用いることが中心だった浴室業界にも、リサイクル性に優れた熱可塑性樹脂を用いることが提案されてきている(例えば、特許文献1、2)。
ただし、一般的な熱可塑性樹脂は、特別高価なものではないが、現在の中心的な普及材料であるFRPなどの熱硬化性樹脂に比べ、コストメリットがそれほど大きなものでもないため、なかなか抜本的な思い切った材料変更には至らず、実質的にはほとんど普及していないのが実情である。
したがって、浴室等の衛生設備室用部材の材料として熱可塑性樹脂の普及を広く促し、資源循環型社会形成に大きく貢献するためには、コストメリットの大きな安価な材料を使う必要がある。
特開平11−210039号公報 特開2001−248198号公報
本発明は、安価でリサイクル性に優れた衛生設備室用部材を提供する。
本発明の一態様によれば、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を用いたことを特徴とする衛生設備室用部材が提供される。
本発明によれば、安価でリサイクル性に優れた衛生設備室用部材が提供される。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、衛生設備室用部材として、例えば、浴室における洗い場床として用いられる防水パンを例に挙げて説明する。図1は、その防水パン1の斜視図である。
防水パン1は、樹脂材を浅底の器状(パン状)に成型してなり、浴室外部に湯水を漏出させない防水性を有する。防水パン1には、排水ピット2が貫通穴として形成され、防水パン1の表面には排水ピット2に向けた排水勾配がつけられている。
本実施形態では、循環型社会形成推進基本法に基づく容器包装リサイクル法で扱われる例えば食品容器梱包廃棄物等の廃プラスチックの中から所望の熱可塑性樹脂を分離抽出し、それを材料に防水パン1を成型する。容器梱包廃棄物は、一般家庭から日常的に排出され、各自治体がそれを回収し、処理業者によって処分、あるいは再利用されるプラスチックゴミであるため、様々な種類の樹脂の混合体となっているが、本実施形態では、それらプラスチックゴミを構成する様々な熱可塑性樹脂素材の中から、比較的含有量が多く、再利用時の成形性もよく、リサイクル性に優れた材料であるポリプロピレン及びポリエチレンを衛生設備室用部材(防水パン1)の材料として用いる。
すなわち、防水パン1を構成する樹脂材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンを90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上含み、防水パン1を構成する樹脂材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる。したがって、本実施形態によれば、非常に安価に防水パン1を形成できるとともに、廃棄物を再利用することによって環境面への負荷も小さくすることができる。もちろん、ポリプロピレン及びポリエチレンは熱可塑性樹脂であるので、不要になったら再度溶かして作り直しが可能であるため、資源循環型社会の形成に大きく貢献できる。
成型性、寸法安定性、強度など成型品の材料として要求される各種の性能においては、一般にポリエチレンよりもポリプロピレンの方が優れている面が多い。しかし、ポリプロピレンは低温時に脆くなりやすいという弱点がある。これに対して、ポリエチレンは寸法安定性、強度等はポリプロピレンより劣るが、粘り強くて割れにくく、低温時もその性質が変わりにくい特性を持つ。すなわち、ポリプロピレンにポリエチレンを混合すればポリプロピレンの持つ弱点をポリエチレンによって補填することができ、結果として、ポリプロピレンの優れた特性である成形性、寸法安定性、強度を確保しつつ、ポリエチレンの配合によって耐衝撃性、低温脆性を向上させることができる。ポリプロピレンとポリエチレンは同じオレフィン系の熱可塑性樹脂に属し、お互いの相溶性が比較的高く、両者の相乗的効果を得やすい。
例えば冬場の浴室は居間などの居室に比べて人の居る時間が短いため、温度が特に低くなりやすい。また、残水が蒸発(気化)した際に床面が冷やされたり、冷水を吐水したりするため、洗い場床等の浴室部材にポリエチレンを含有させて低温脆性を向上させることは有用である。
また、床は、直接、地面に設置されているわけでなく支持脚を介して数箇所で全体を支えられている構造であり、且つそこに使用者の体重等が加わるものであるため局所的な荷重が加わると撓む可能性がある。また、例えば、洗面器を落とした際の衝撃や、風呂椅子に着座している状態では風呂椅子の脚から局所的な荷重が加わったりもする。さらに、浴室床は大きなものであるため局所的な荷重が加わると撓んでしまうおそれがある。こういったことを踏まえると、粘り強さ、割れにくさを付与できるポリエチレンを含有していることは効果的である。
浴室の床は防水性が要求され、仮に、床の強度や粘り強さが不十分で破損するような事態になった場合、建築土台に水が浸入し土台を腐らせてしまうおそれがあり、この点からも、本実施形態のように強度に優れたポリプロピレンと、粘り強さを有するポリエチレンとの混合樹脂を用いることで、強度と粘り強さの2つの条件を確実に満たすことができる。
また、浴室床が大きなものであることは成形性に関して問題となりやすいが、優れた成形性を有するポリプロピレンを含有する材料を用いることで、浴室床のような大きなものでも良好な成形性を確保できる。
ポリプロピレンに対してポリエチレンを配合することでポリプロピレンの弱点を補うことができるが、ポリエチレンの配合割合があまり高くなると、逆にポリプロピレンの優れた特性を打ち消す場合があるため、ポリプロピレンとポリエチレンとの配合割合は、ポリエチレンよりもポリプロピレンの方を多くすることが望ましい。
なお、ポリプロピレンの耐衝撃性や低温脆性を向上させるために、グラスファイバーなどの繊維質を添加することも考えられるが、グラスファイバーを添加した場合、コストアップやリサイクル性の低下をまねいてしまう。これに対して、本実施形態では、グラスファイバーなどは添加されず、ポリプロピレンに対してポリエチレンを添加することで耐衝撃性や低温脆性の向上を図っており、コストアップやリサイクル性の低下をまねかない。
また、ポリプロピレンとポリエチレンは物理的特性が良く似たオレフィン系の樹脂であり、ともに比重が1未満であるため、水中比重分離法を用いて、他の材料からポリプロピレンとポリエチレンとの混合物を分別するのは容易であるが、ポリプロピレンとポリエチレンとを相互に分離するのは難しくコストがかかる。したがって、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合材料を用いることで、両者を互いに分離する必要が無く、そのためのコストを要せず、素材コストがより安価になり、結果として安価な防水パンを提供できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、廃プラスチックから分離され再生された樹脂材を用いることで素材コストが安価になり、且つ廃棄物の再利用であるので資源循環型社会形成に大きく役立ち、しかもポリプロピレン及びポリエチレンの混合樹脂材を用いることで浴室用部材(防水パン)の素材として問題ない十分な特性を具備させることができる。
一般に、廃プラスチックは様々な素材、色柄の材料から構成されているため、その廃プラスチックから分離・精製されて得られるポリプロピレン及びポリエチレンの混合樹脂材は、望む色柄や質感にできないことが多い。また、純度高く精製していないものは特に表面の荒れなどが発生しやすく、成型したそのままの表面は意匠面としては使えないのが現実である。よって、人目にさらされたり、触れる部分には、廃プラスチックを用いた樹脂材とは別に表層材を設けることが望ましい。
図2は、前述した防水パン1と、表層材4との固定構造の具体例を表す模式図である。図2に表す具体例では、表層材4は、例えばテープ状の粘着材(両面テープ)5によって、防水パン1において浴室内に面する(露出する)部分である上面を覆って防水パン1の表面上に固定される。
図3は、防水パン1と表層材4との固定構造の他の具体例を表す模式図である。図3に表す具体例では、表層材4は、粘性を有する不定形の粘着材(例えばパテなど)8によって、防水パン1において浴室内に面する(露出する)部分である上面を覆って防水パン1の表面上に固定される。
また、図3の固定構造では、防水パン1表面において粘着材8が供給される部分に、粘着材8が入り込む逃げ溝7を設けている。逃げ溝7は、防水パン1の表面からくぼんで設けられている。防水パン1表面上への粘着材8の供給時に、粘着材8が局所的に盛り上がった部分が生じても、粘着材8が逃げ溝7に入り込むことで、防水パン1表面上における粘着材8の凹凸が緩和され、結果として粘着材8の上に貼り付けられる表層材4における良好な平坦性を確保できる。
防水パン1自体の材料に所望の色柄、質感を求めるのが困難な場合でも、防水パン1とはことなる材料の表層材4を設けることで、浴室内に露出される部分に所望の色柄、質感、意匠性を付与することが可能になる。また、表層材4に、軟質仕上げやクッション性を付与したり、断熱機能を付与することで、洗い場床に対してさらに付加価値(やわらかく、温かい質感等)を与えることができる。表層材4としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン等の汎用樹脂、水に強く、意匠性に優れ、浴室床の表面部の機能を満たす仕上げ素材等を用いることができる。
浴室洗い場床の最表面を構成する表層材4は、湯水にさらされる環境下にあり、単に防水パン1の上に載置されているだけでは、防水パン1の表面と表層材4の裏面との間に水分が入り込み、様々な不具合を誘発する可能性がある。したがって、表層材4は、防水パン1に対して液密に固定される必要がある。
前述した図2、3に表した固定構造の場合、粘着材5、8として防水性を有するものを使えば、その粘着材5、8を防水シール材として機能させることができ、表層材4と防水パン1との間への水分の浸入を防止でき、信頼性及び商品価値を高めることができる。また、表層材4と防水パン1との間に、別途防水シール材を設けてもよい。
表層材は、防水パン1に対して後から貼り付ける形態に限らず、表層材と防水パン1とを、防水パン1の成型時に併せてインサート成型することで、防水パン1に対して表層材を熱溶着させてもよい。この場合、溶着部分を防水シール材として機能させることができる。あるいは、表層材としては、防水パン1の表面に塗装された塗装膜であってもよい。
廃プラスチックは、一般家庭等から回収後、再利用材料として精製する過程で、十分な洗浄工程を経て製造されるが、食品梱包容器などを由来とするものは、洗浄工程の条件によっては材料の匂いが少し残ることがある。これらは人体に有害であったり、衛生的に問題があるようなものではないが、浴室部材として使おうとする際には比較的狭い密室空間で使用することとなるため、感能的に気になる可能性も生じる。
そこで、防水パン1を構成する樹脂材の匂いが浴室内に流入することを抑制するガスバリア機能を有する表層材を設けることが望ましい。前述した意匠性等を付与するための表層材に、例えば消臭材等を添加させることでガスバリア機能を持たせてもよいし、意匠等のための表層材とは別に、その意匠材の下にガスバリア機能を有する表層材を設けて防水パン1の表面を覆ってもよい。このような構成にすることで、廃プラスチック材特有の匂いが浴室内に流入することを抑制でき、浴室など密閉された空間における使用時での適応性が向上できる。また、防水パン1を構成する樹脂材の必要以上の洗浄工程や脱臭工程などを省くことができ、コストを低減できる。
本発明の衛生設備室用部材は、防水パンに限らず、浴室ユニットを構成する他の部材、例えば壁パネル、天井パネル、バスエプロン、浴槽等であってもよい。また、衛生設備室も浴室に限らず、シャワー室、トイレ等であってもよく、したがって、本発明は、シャワー室、トイレ等で使われる樹脂部材にも適用可能である。
本発明の実施形態に係る衛生設備室用部材の斜視図。 本発明の実施形態において防水パンと表層材との固定構造の具体例を表す模式図。 本発明の実施形態において防水パンと表層材との固定構造の他の具体例を表す模式図。
符号の説明
1…衛生設備室用部材、4…表層材

Claims (5)

  1. 廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を用いたことを特徴とする衛生設備室用部材。
  2. 前記樹脂材とは異なる材料からなる表層材が、前記樹脂材における衛生設備室内に面する部分を覆って設けられたことを特徴とする請求項1記載の衛生設備室用部材。
  3. 前記表層材は、前記樹脂材の匂いが前記衛生設備室内に流入することを抑制するガスバリア機能を有することを特徴とする請求項2記載の衛生設備室用部材。
  4. 前記表層材は、前記樹脂材に対して液密に固定されたことを特徴とする請求項2または3に記載の衛生設備室用部材。
  5. 前記樹脂材は、ポリエチレンよりもポリプロピレンの方を多く含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生設備室用部材。
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