JP2008221081A - 微粒子膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バインダー樹脂を全く含まず、簡単な方法で製造することができ、かつ安定性の高い微粒子膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の反応性基を有する第1の膜化合物で表面が覆われた微粒子21と、第1の反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤12とを含む混合物を基材31の表面に塗布し、第1の反応性基と架橋反応基との架橋反応により硬化することにより微粒子膜10を得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、微粒子膜およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、微粒子の表面に導入された反応性基と架橋剤との架橋反応により微粒子を含む塗膜を硬化して得られる微粒子膜およびその製造方法に関する。
基材の表面に配列した微粒子を含む微粒子膜は、表面保護膜、反射防止膜、高密度磁気記録再生に対応した磁気記録媒体等の幅広い用途に用いられており、様々な方法により製造されている。すでに知られている微粒子膜の製造方法としては、移流集積法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)等の微粒子の自律的集積力を利用した方法、金属酸化物微粒子の懸濁液を基材に塗布後焼結する方法、バインダー樹脂中に微粒子を分散させて塗布し、バインダー樹脂を硬化する方法、固体基板の表面に両親媒性分子を付着させて形成されたバインダー層の表面に微粒子凝集膜を形成固定させる方法(例えば、特許文献1参照)等が挙げられる。
特開平8−229474号公報
しかしながら、これらの微粒子膜の製造方法には以下のような課題が存在する。
微粒子の自律的集積力を利用する方法では、微粒子を固定化する方法が組み込まれていないため、微粒子膜の安定性に問題がある。
金属酸化物微粒子の懸濁液を基材に塗布後焼結する方法では、焼結工程を要するため微粒子膜の製造工程が複雑になるとともに、有機微粒子の製膜に用いることができない。
バインダー樹脂中に微粒子を分散させて塗布し、バインダー樹脂を硬化する方法では、微粒子本来の物性や機能が大部分損なわれるという大きな課題がある。
固体基板の表面に両親媒性分子を付着させて形成されたバインダー層の表面に微粒子凝集膜を形成固定させる方法では、バインダー層の形成工程を要するため微粒子膜の製造工程が複雑になる。
本発明は、前記課題に鑑み、バインダー樹脂を全く含まず、簡単な方法で製造することができ、かつ安定性の高い微粒子膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段として提供される第1の発明に係る微粒子膜は、第1の反応性基を有する第1の膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた微粒子と、前記第1の反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤とを含む混合物を基材の表面に塗布し、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化している。
第1の発明に係る微粒子膜において、前記第1の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
第1の発明に係る微粒子膜において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
第1の発明に係る微粒子膜において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であってもよい。
第1の発明に係る微粒子膜において、前記基材の表面は、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で覆われており、前記第2の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合を介して前記基材の表面に固定されていることが好ましい。
第1の発明に係る微粒子膜において、前記第1および第2の膜化合物が同一の化合物であってもよい。
第1の発明に係る微粒子膜において、前記第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法は、第1の反応性基および第1の結合基を分子の両端にそれぞれ有する第1の膜化合物を微粒子と接触させ、前記第1の結合基と前記微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記第1の膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた反応性微粒子を製造する工程と、前記反応性微粒子、前記第1の反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤、および溶媒とを混合してペースト状の膜前駆体を製造する工程と、基材の表面に前記膜前駆体の塗膜を形成する工程と、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により前記塗膜を硬化させる工程とを有する。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第1の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であってもよい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基がエポキシ基を有する官能基であり、前記架橋剤がイミダゾール誘導体であってもよい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基がアミノ基およびイミノ基のいずれか一方を含む官能基であり、前記架橋剤が2または3以上のイソシアネート基を有する化合物および2または3以上のエポキシ基を有する化合物のいずれか一方であってもよい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記膜前駆体を前記基材に塗布する前に、該基材に、第2の結合基および前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を接触させ、前記第2の結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第2の膜化合物で表面が覆われた反応性基材を製造する工程をさらに含むことが好ましい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第1および第2の膜化合物が同一の化合物であってもよい。
第2の発明に係る微粒子膜の製造方法において、前記第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であってもよい。
請求項1〜7記載の微粒子膜、および請求項8〜16記載の微粒子膜の製造方法は、第1の反応性基を有する第1の膜化合物で表面が覆われた微粒子と、第1の反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤とを含む混合物を基材の表面に塗布し、第1の反応性基と架橋反応基との架橋反応により塗膜を硬化させるため、硬化させる際にバインダー樹脂が不要な安定性の高い微粒子膜およびその製造方法を提供できる。
特に、請求項2記載の微粒子膜においては、第1の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるため、微粒子本来の物性や機能を保持することができる。
請求項3記載の微粒子膜においては、第1の反応性基と架橋反応基との架橋反応により形成される結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されるN−CHCH(OH)結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項4記載の微粒子膜においては、第1の反応性基と架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項5記載の微粒子膜においては、基材の表面が、架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物で覆われており、第2の反応性基と架橋反応基との架橋反応により形成された結合を介して基材の表面に固定されるので、剥離強度を向上できる。
請求項6記載の微粒子膜においては、第1および第2の膜化合物が同一の化合物であるので、製造コストを低減できる。
請求項7記載の微粒子膜においては、第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、微粒子膜の剥離強度をより向上できる。
請求項8〜16記載の微粒子膜の製造方法においては、まず、第1の膜化合物で表面が覆われた反応性微粒子を調製し、これに架橋剤と溶媒を混合しペースト状の膜前駆体を製造する。次いでこれを基材の表面に塗布し膜前駆体の塗膜を形成し、第1の反応性基と架橋剤中の架橋反応基との架橋反応により塗膜を硬化させ、微粒子膜を製造するので、バインダー樹脂が不要であり、基材表面へのバインダー層の形成や焼結等の工程を行うことなく簡便に微粒子膜を製造できる。
請求項9記載の微粒子膜の製造方法においては、第1の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、微粒子本来の物性や機能を保持することができる。
請求項10記載の微粒子膜の製造方法においては、架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項11記載の微粒子膜の製造方法においては、第1の反応性基と架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項12記載の微粒子膜の製造方法においては、第1の反応性基と架橋反応基との第1の反応性基がエポキシ基を有する官能基であり、架橋剤がイミダゾール誘導体であるので、加熱により強固なN−CHCH(OH)結合が形成し、得られる微粒子膜の強度を向上できる。
請求項13記載の微粒子膜の製造方法においては、第1の反応性基がアミノ基およびイミノ基のいずれか一方を含む官能基であり、架橋剤が2または3以上のイソシアネート基を有する化合物および2または3以上のエポキシ基を有する化合物のいずれか一方であるので、加熱により強固なN−CHCH(OH)結合およびNH−CONH結合のそれぞれいずれかが形成し、得られる微粒子膜の強度を向上できる。
請求項14記載の微粒子膜の製造方法においては、膜前駆体を塗布する前の基材に架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物で表面が覆われた反応性基材を製造する工程をさらに含むので、得られる微粒子膜の剥離強度を向上できる。
請求項15記載の微粒子膜の製造方法においては、第1および第2の膜化合物が同一の化合物であるので、製造コストを低減できる。
請求項16記載の微粒子膜の製造方法においては、第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、微粒子膜の剥離強度をより向上できる。
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態に係る微粒子膜について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る微粒子膜10は、シリカ微粒子(微粒子の一例)21の表面がエポキシ基(第1の反応性基の一例)を有する膜化合物(第1の膜化合物)の単分子膜23で被覆されたエポキシ化シリカ微粒子(反応性微粒子の一例)11と、エポキシ基と反応して結合を形成するイミノ基およびアミノ基(架橋反応基の一例)を有する架橋剤の一例である2−メチルイミダゾール12とを含む混合物からなる膜前駆体を、エポキシ基(第2の反応性基の一例)を有する膜化合物(第2の膜化合物)の単分子膜33で覆われた板ガラス(基材の一例)31であるエポキシ化板ガラス(反応性基材の一例)13の表面に塗布し、得られた膜前駆体の塗膜14(図3参照)を、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により硬化することにより得られる。
微粒子膜10の製造方法は、図2(a)、(b)に示すように、エポキシ基を有する膜化合物をシリカ微粒子21と接触させ、エポキシ化シリカ微粒子11を製造する工程Aと、板ガラス31にエポキシ基を有する膜化合物を接触させ、エポキシ化板ガラス13を製造する工程Bと、エポキシ化シリカ微粒子11、2−メチルイミダゾール12、および溶媒とを混合してペースト状の膜前駆体を製造する工程Cと、エポキシ化板ガラス13の表面に膜前駆体を塗布し、図3に示すような塗膜14を形成する工程Dと、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により塗膜14を硬化させ、微粒子膜10を製造する工程Eとを含んでいる。
以下、工程A〜Eについてより詳細に説明する。
工程Aでは、エポキシ基を有する膜化合物をシリカ微粒子21と接触させ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜で表面が覆われたエポキシ化シリカ微粒子11を製造する。
用いることのできるシリカ微粒子21の粒径に特に制限はないが、10nm〜0.1mmの範囲内であることが好ましい。シリカ微粒子21の粒径が10nm未満である場合には、膜化合物の分子サイズの影響が無視できなくなり、粒径が0.1mmを上回る場合には、シリカ微粒子21の表面積に対する質量の割合が大きくなるため、架橋反応によりその質量を支持できなくなる。
エポキシ基を有する膜化合物としては、シリカ微粒子21の表面に吸着または結合し、自己組織化により単分子膜を形成することのできる任意の化合物を用いることができるが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にエポキシ基(オキシラン環)を含む官能基を、他方の末端にアルコキシシリル基(第1の結合基の一例)をそれぞれ有し、下記の一般式(化1)で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。
Figure 2008221081
上式において、Eはエポキシ基を有する官能基を、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるエポキシ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(1)〜(12)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(3) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(8) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(9) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(12) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
ここで、(CHOCH)CHO−基は、化2で表される官能基(グリシドキシ基)を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、化3で表される官能基(3,4−エポキシシクロヘキシル基)を表す。
Figure 2008221081
Figure 2008221081
エポキシ化シリカ微粒子11の製造は、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基とシリカ微粒子21の表面の水酸基22との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液中にシリカ微粒子21を分散させ、室温の空気中で反応させることにより行われる。
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルおよびチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
アルコキシシリル基とシリカ微粒子21の表面の水酸基22とが縮合反応を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合はシリカ微粒子21の表面または隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本はシリカ微粒子21の表面のケイ素原子と結合している。
Figure 2008221081
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、シリカ微粒子21の表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、シリカ微粒子21をよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
例えば、縮合触媒として、ジブチルスズオキサイドの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化シリカ微粒子11の製造を行うと、エポキシ化シリカ微粒子11の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化シリカ微粒子11の製造を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
反応液の製造には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤または蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物および縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23で表面が覆われたエポキシ化シリカ微粒子11が得られる。このようにして製造されるエポキシ化シリカ微粒子11の断面構造の模式図を図2(b)に示す。
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
反応後、生成したエポキシ化シリカ微粒子11を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化シリカ微粒子11の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化シリカ微粒子11の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化シリカ微粒子11に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程C以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
なお、本実施の形態においては、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
Figure 2008221081
上式において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるアミノ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(21)〜(28)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
(21) H2N(CH2)Si(OCH)3
(22) H2N(CH2)Si(OCH)3
(23) H2N(CH2)Si(OCH)3
(24) H2N(CH2)Si(OCH)3
(25) H2N(CH2)Si(OC)3
(26) H2N(CH2)Si(OC)3
(27) H2N(CH2)Si(OC)3
(28) H2N(CH2)Si(OC)3
反応液において用いることのできる縮合触媒のうち、スズ(Sn)塩を含む化合物は、アミノ基と反応して沈殿を生成するため、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物に対しては縮合触媒として用いることができない。
したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様の化合物を単独でまたは2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
用いることのできる助触媒の種類およびそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、および助触媒の濃度、反応条件ならびに反応時間についてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様であるので、説明を省略する。
また、本実施の形態においては、微粒子としてシリカ微粒子を用いたが、他の無機微粒子、有機微粒子、および有機−無機ハイブリッド微粒子を用いることもできる。
無機微粒子の具体例としては、導体微粒子、半導体微粒子、絶縁体微粒子、磁気微粒子、蛍光体微粒子、光吸収微粒子、光透過微粒子、顔料微粒子が挙げられる。
有機微粒子の具体例としては、有機蛍光体微粒子、有機光吸収微粒子、有機光透過微粒子、有機顔料微粒子、薬物微粒子が挙げられる。
有機−無機ハイブリッド微粒子の具体例としては、DDS(Drug Delivery System)用薬物微粒子、化粧用微粒子、有機−無機ハイブリッド顔料微粒子が挙げられる。
シリカ微粒子以外の微粒子であっても、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な微粒子の具体例としては、アルミナ、酸化鉛等の金属酸化物の微粒子、金属微粒子等が挙げられる。
本実施の形態においては、膜化合物として微粒子の表面の活性水素基と縮合反応するシラン化合物を用いたが、例えば、金微粒子や金メッキ層を有する微粒子の場合には、膜化合物として金原子と強い結合を形成するチオール化合物を用いることができる。
(以上工程A)
工程Bでは、工程Aにおいて用いたものと同様のエポキシ基を有する膜化合物を板ガラス31に接触させ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33で表面が覆われたエポキシ化板ガラス13を製造する。
なお、板ガラス31の大きさには特に制限はない。
エポキシ化板ガラス13の製造は、エポキシ基およびアルコキシシリル基(第2の結合基の一例)を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と板ガラス31の表面の水酸基との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液を板ガラス31の表面に塗布し、室温の空気中で反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法により行うことができる。
工程Bにおいて用いることのできるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の種類、縮合触媒、助触媒の種類およびそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、および助触媒の濃度、反応条件ならびに反応時間については工程Aと同様であるので、説明を省略する。
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物および縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33で表面が覆われたエポキシ化板ガラス13が得られる。
洗浄溶媒としては、工程Aと同様の洗浄溶媒を用いることができる。
反応後、生成したエポキシ化板ガラス13を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化板ガラス13の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化板ガラス13の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化板ガラス13に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程C以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
なお、本実施の形態においてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、工程Aと同様、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
また、本実施の形態においては工程Aと同一のアルコキシシラン化合物を用いているが、異なるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。ただし、工程Cにおいて用いる架橋剤の架橋反応基と反応して結合を形成する反応性基を有するものでなければならない。
本実施の形態においては、板ガラスを基材として用いたが、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な基材の具体例としては、陶磁器、ほうろう、石板、鋼板、アルミニウム板、シリコンウェーハ等の金属板等が挙げられる。
本実施の形態においては、膜化合物として基材の表面の活性水素基と縮合反応するシラン化合物を用いたが、工程Aと同様、例えば、金メッキ層を有する基材の場合には、膜化合物として金原子と強い結合を形成するチオール化合物を用いることができる。
(以上工程B)
工程Cでは、エポキシ化シリカ微粒子11、2−メチルイミダゾール12、および溶媒とを混合してペースト状の膜前駆体を製造する。
2−メチルイミダゾールはエポキシ基と反応するアミノ基およびイミノ基をそれぞれ1−位および3−位に有しており、下記の化6に示すような架橋反応により結合を形成する。
Figure 2008221081
2−メチルイミダゾール12の添加量は、エポキシ化シリカ微粒子11の5〜15重量%が好ましい。2−メチルイミダゾール12の添加量がエポキシ化シリカ微粒子11の5重量%未満だと、製造させる微粒子膜10の強度が低くなり、15重量%を上回ると、膜前駆体がゲル化を起こしやすくなる等ハンドリングが悪化する。膜前駆体の製造には、2−メチルイミダゾール12が可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、および毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
膜前駆体の製造に用いる溶媒の量は、エポキシ化シリカ微粒子11の粒径、製造する微粒子膜10の膜厚等によって適宜定められるため一義的に決定することは困難であるが、得られる膜前駆体の粘度が5〜20Pa・sとなる程度の量が好ましく、より具体的にはエポキシ化シリカ微粒子11および2−メチルイミダゾール12の10〜50重量%である。具体的には、エポキシ化シリカ微粒子11の表面を2−メチルイミダゾール12の単分子被膜で被覆するために必要な量に設定すればよい。
エポキシ化シリカ微粒子11、2−メチルイミダゾール12、および溶媒の混合は、撹拌ばね、ハンドミキサー等の任意の手段により行うことができる。
本実施の形態においては、架橋剤として2−メチルイミダゾールを用いたが、下記化7で表される任意のイミダゾール誘導体を用いることができる。あるいは、イミダゾール−金属錯体を用いてもよい。
Figure 2008221081
化7で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、下記(31)〜(38)に示すものが挙げられる。
(31) 2−メチルイミダゾール(R=Me、R=R=H)
(32) 2−ウンデシルイミダゾール(R=C1123、R=R=H)
(33) 2−ペンタデシルイミダゾール(R=C1531、R=R=H)
(34) 2−メチル−4−エチルイミダゾール(R=Me、R=Et、R=H)
(35) 2−フェニルイミダゾール(R=Ph、R=R=H)
(36) 2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R=Ph、R=Et、R=H)
(37) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R=Ph、R=Me、R=CHOH)
(38) 2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R=Ph、R=R=CHOH)
なお、Me、Et、およびPhは、それぞれメチル基、エチル基、およびフェニル基を表す。
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ジシアンジアミド、ノボラック等のフェノール誘導体等の化合物を架橋剤として用いてもよい。この場合、架橋反応を促進するためにイミダゾール誘導体を触媒として用いてもよい。
なお、本実施の形態においては反応性基としてエポキシ基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、反応性基としてアミノ基またはイミノ基を有する膜化合物を用いる場合には、架橋反応基として2もしくは3以上のエポキシ基または2もしくは3以上のイソシアネート基を有する架橋剤を用いる。イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのジイソシアネート化合物の添加量は、2−メチルイミダゾールの場合と同様、エポキシ化シリカ微粒子の5〜15重量%が好ましい。この場合、膜前駆体の製造に用いることのできる溶媒としては、キシレン等の芳香族有機溶媒が挙げられる。
また、架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2または3以上のエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
(以上工程C)
工程Dでは、エポキシ化板ガラス13の表面に膜前駆体を塗布し、図3に示すような塗膜14を形成する。
膜前駆体の塗布には、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー法等の任意の方法により行うことができる。
(以上工程D)
工程Eでは、塗膜14を加熱し、エポキシ化シリカ微粒子11およびエポキシ化板ガラス13上のエポキシ基と2−メチルイミダゾール12との架橋反応により塗膜14を硬化させ、微粒子膜10を製造する。
加熱温度は、100〜200℃が好ましい。加熱温度が100℃未満だと、架橋反応の進行に長時間を要し、200℃を上回ると、被膜14の表面で架橋反応が迅速に進行することにより、閉じ込められた溶媒が揮発しにくくなり均一な微粒子膜10が得られない。
なお、本実施の形態においてはエポキシ化板ガラスを用いたが、工程Bを省略して普通の板ガラスを基材として用いてもよい。
工程Eにおいて、架橋反応により形成される結合は、共有結合、イオン結合、配位結合、および分子間力による結合のいずれであってもよいが、形成される微粒子膜10の強度および膜前駆体や塗膜14の形成の容易さ等を考慮すると、塗膜14の形成後に、加熱または光等のエネルギー線の照射により形成される共有結合が好ましい。
加熱により形成される共有結合の具体例としては、エポキシ基とアミノ基またはイミノ基との反応(化8参照)により形成されるN−CHCH(OH)結合、イソシアネート基とアミノ基との反応(化9参照)により形成されるNH−CONH結合等が挙げられる。
Figure 2008221081
Figure 2008221081
光照射により形成される共有結合の具体例としては、シンナモイル基(化10参照)またはカルコニル(chalconyl)基(化11)の光二量化反応により形成される共有結合が挙げられる。
Figure 2008221081
Figure 2008221081
(以上工程E)
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。
(実施例1)
(1)エポキシ化シリカ微粒子の製造
シリカ微粒子(平均粒径100nm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化12、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
Figure 2008221081
このようにして得られた反応液中にシリカ微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
(2)膜前駆体の製造、塗膜の形成、および微粒子膜の形成
(1)で製造したエポキシ化シリカ微粒子100重量部と、2−メチルイミダゾール7重量部を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合してペースト状の膜前駆体を得た。
このようにして得られた膜前駆体を青板ガラス上に塗布し、膜厚1μmの塗膜を形成した。
室温下でイソプロピルアルコールを蒸発させた後、青板ガラスおよびその上に形成された塗膜を170℃で30分間加熱することにより、微粒子膜を形成した。
(実施例2)
(1)エポキシ化シリカ微粒子の製造
シリカ微粒子(平均粒径1μm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化12)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
このようにして得られた反応液中にシリカ微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
(2)エポキシ化板ガラスの製造
青板ガラスを用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化11)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
反応液を青板ガラス板の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
(3)膜前駆体の製造、塗膜の形成、および微粒子膜の形成
(1)で製造したエポキシ化シリカ微粒子100重量部と、2−メチルイミダゾール7重量部を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合してペースト状の膜前駆体を得た。
(2)で製造したエポキシ化板ガラス上に膜前駆体を塗布し、膜厚10μmの塗膜を形成した。
室温下でイソプロピルアルコールを蒸発させた後、エポキシ化板ガラスおよび塗膜を170℃で30分間加熱することにより、微粒子膜を形成した。
得られた微粒子膜は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールとの架橋反応により形成された結合を介してエポキシ化板ガラスの表面に固定されているので、耐剥離強度および耐久性に優れていた。
(実施例3)
(1)アミノ化シリカ微粒子の製造
シリカ微粒子(平均粒径300nm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化13、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、および酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1v/v)に溶解し、反応液を調製した。
Figure 2008221081
このようにして得られた反応液中にシリカ微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物および酢酸を除去した。
(2)アミノ化板ガラスの製造
青板ガラスを用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化13)0.99重量部、および酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1v/v)に溶解し、反応液を調製した。
反応液を青板ガラス板の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物および酢酸を除去した。
(3)膜前駆体の製造、塗膜の形成、および微粒子膜の形成
(1)で製造したアミノ化シリカ微粒子100重量部と、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート9重量部を混合し、これにキシレン40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合してペースト状の膜前駆体を得た。
(2)で製造したアミノ化板ガラス上に膜前駆体を塗布し、膜厚3μmの塗膜を形成した。
室温下でキシレンを蒸発させた後、アミノ化板ガラスおよび塗膜を170℃で30分間加熱することにより、微粒子膜を形成した。
(実施例4)
微粒子として酸化鉛の微粒子を、基材として亜鉛鋼板をそれぞれ用い、実施例2と同様の方法により亜鉛鋼板の表面に酸化鉛の微粒子膜を形成した。
本発明の一実施の形態に係る微粒子膜の断面構造を模式的に表した説明図である。 同微粒子膜の製造方法において、エポキシ化シリカ微粒子を製造する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のシリカ微粒子の断面構造、(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成されたシリカ微粒子の断面構造をそれぞれ表す。 同微粒子膜の製造方法において、膜前駆体の塗膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図である。
符号の説明
10:微粒子膜、11:エポキシ化シリカ微粒子、12:2−メチルイミダゾール、13:エポキシ化板ガラス、14:塗膜、21:シリカ微粒子、22:水酸基、23:エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜、31:板ガラス、33:エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜

Claims (16)

  1. 第1の反応性基を有する第1の膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた微粒子と、前記第1の反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤とを含む混合物を基材の表面に塗布し、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化していることを特徴とする微粒子膜。
  2. 請求項1記載の微粒子膜において、前記第1の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする微粒子膜。
  3. 請求項1および2のいずれか1項に記載の微粒子膜において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする微粒子膜。
  4. 請求項1および2のいずれか1項に記載の微粒子膜において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であることを特徴とする微粒子膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子膜において、前記基材の表面は、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で覆われており、前記第2の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合を介して前記基材の表面に固定されていることを特徴とする微粒子膜。
  6. 請求項5記載の微粒子膜において、前記第1および第2の膜化合物が同一の化合物であることを特徴とする微粒子膜。
  7. 請求項5および6のいずれか1項に記載の微粒子膜において、前記第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする微粒子膜。
  8. 第1の反応性基および第1の結合基を分子の両端にそれぞれ有する第1の膜化合物を微粒子と接触させ、前記第1の結合基と前記微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記第1の膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた反応性微粒子を製造する工程と、前記反応性微粒子、前記第1の反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤、および溶媒とを混合してペースト状の膜前駆体を製造する工程と、基材の表面に前記膜前駆体の塗膜を形成する工程と、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により前記塗膜を硬化させる工程とを有することを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  9. 請求項8記載の微粒子膜の製造方法において、前記第1の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  10. 請求項8および9のいずれか1項に記載の微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  11. 請求項8および9のいずれか1項に記載の微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  12. 請求項10記載の微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基がエポキシ基を有する官能基であり、前記架橋剤がイミダゾール誘導体であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  13. 請求項10および11のいずれか1項記載の微粒子膜の製造方法において、前記第1の反応性基がアミノ基およびイミノ基のいずれか一方を含む官能基であり、前記架橋剤が2または3以上のイソシアネート基を有する化合物および2または3以上のエポキシ基を有する化合物のいずれか一方であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  14. 請求項8〜13のいずれか1項に記載の微粒子膜の製造方法において、前記膜前駆体を前記基材に塗布する前に、該基材に、第2の結合基および前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を接触させ、前記第2の結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第2の膜化合物で表面が覆われた反応性基材を製造する工程をさらに含むことを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  15. 請求項14記載の微粒子膜の製造方法において、前記第1および第2の膜化合物が同一の化合物であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
  16. 請求項14および15のいずれか1項に記載の微粒子膜の製造方法において、前記第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする微粒子膜の製造方法。
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