JP2008219982A - 同期モータの位置推定方法およびそのプログラム - Google Patents

同期モータの位置推定方法およびそのプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】計算量を低減させること。
【解決手段】同期モータ30に与える電圧指令値と電流の検出値との関係を表す基本電圧電流モデルを推定回転座標系に基づいて座標変換することにより第1の電圧電流モデルを求め、該第1の電圧電流モデルを離散化して第2の電圧電流モデルを求め、該第2の電圧電流モデルを第3の電圧電流モデルに変形し、該第3の電圧電流モデルについて同定理論を適用して電圧電流に関するパラメータ行列を求め、該パラメータ行列を用いて、同期モータの停止時または低速回転時における回転子の位置を演算する同期モータの位置推定方法であって、前記パラメータ行列は、電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方を用いて表されている同期モータの位置推定方法を提供する。
【選択図】図9

Description

本発明は、同期モータの停止時または低速回転時における回転子の位置を推定する同期モータの位置推定方法および該方法を実現させるためのプログラムに関するものである。
IPM(Interior Permanent Magnet)モータ等の同期モータにおいては、停止状態や低速回転時に誘起電圧が生じないため、誘起電圧を利用して位置推定を行う方法を採用することができない。
停止状態や低速回転時における同期モータの位置推定方法として、例えば、特許文献1に記載される方法が知られている。
特許文献1に開示されている同期モータの位置推定方法では、同期モータに印加する電圧に対する電流応答から位置情報を含むモータパラメータを同定し、そのパラメータから回転子の位置を推定している。
特開2005−57834号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されている位置推定方法は、計算量が多いという問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、計算量を低減させることのできる同期モータの位置推定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、同期モータに与える電圧指令値と電流の検出値との関係を表す基本電圧電流モデルを推定回転座標系に基づいて座標変換することにより第1の電圧電流モデルを求め、該第1の電圧電流モデルを離散化して第2の電圧電流モデルを求め、該第2の電圧電流モデルを第3の電圧電流モデルに変形し、第3の電圧電流モデルについて同定理論を適用して電圧電流に関するパラメータ行列を求め、該パラメータ行列を用いて、同期モータの停止時または低速回転時における回転子の位置を演算する同期モータの位置推定方法であって、前記パラメータ行列は、電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方を用いて表されている同期モータの位置推定方法を提供する。
本発明によれば、パラメータ行列が電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方によって表されているので、未知のパラメータをいずれか一方に制限することが可能となる。これにより、パラメータ行列において導出すべきパラメータの数を減らすことができ、従来の位置推定方法に比べて、計算量を低減することができる。この結果、位置推定に要する時間の短縮、処理負担の軽減を図ることができる。
上記同期モータとして、表面磁石型同期モータ(SPMSM)、埋め込み磁石型同期モータ(IPMSM)、シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)等が一例として挙げられる。
また、「低回転時」とは、電気角での角速度をωreとすると抵抗Rに比べLdωre,Lqωreが充分小さい状態で回転しているときのことをいう。
上記同期モータの位置推定方法において、前記パラメータ行列は、例えば、同期モータの固定子の巻線抵抗、インダクタンス、モータ電圧、及びモータ電流の間に成立する関係式を用いて、電圧に関するパラメータまたは電流に関するパラメータを消去することにより得られた行列である。
上記同期モータの位置推定方法において、前記パラメータ行列に、前記同期モータの固定子の巻線抵抗が含まれている場合には、該同期モータの固定子の巻線抵抗を既知として取り扱うことが好ましい。
このように、同期モータの固定子の巻線抵抗を既知として取り扱うことにより、未知のパラメータの数を更に低減させることができる。この結果、計算量を更に低減させることが可能となる。
上記同期モータの位置推定方法において、前記同期モータの停止時における回転子の位置を推定する場合には、例えば、前記第2の電圧電流モデルが以下の(4)式で表され、前記第3の電圧電流モデルが以下の(5)式で表され、前記パラメータ行列が以下の(8)式または以下の(20)式で表される。
Figure 2008219982
本発明は、第3の電圧電流モデルについて同定理論を適用して電圧電流に関するパラメータ行列を演算する処理と、該パラメータ行列を用いて、同期モータの停止時または低速回転時における回転子の位置を演算する処理とをコンピュータに実行させるための同期モータの位置推定プログラムであって、前記第3の電圧電流モデルは、同期モータに与える電圧指令値と電流の検出値との関係を表す基本電圧電流モデルを推定回転座標系に基づいて座標変換することにより第1の電圧電流モデルを求め、該第1の電圧電流モデルを離散化して第2の電圧電流モデルを求め、該第2の電圧電流モデルを変形することにより求められたモデルであり、前記パラメータ行列は、電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方を用いて表されている同期モータの位置推定プログラムを提供する。
本発明によれば、パラメータ行列が電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方を用いて表されているので、未知のパラメータの数を減少させることができる。これにより、パラメータ行列において導出すべきパラメータの数を減らすことができ、従来の位置推定方法に比べて、計算量を低減することができる。この結果、位置推定に要する時間の短縮、処理負担の軽減を図ることができる。
上記同期モータの位置推定プログラムにおいて、前記パラメータ行列は、例えば、同期モータの固定子の巻線抵抗、インダクタンス、モータ電圧、及びモータ電流の間に成立する関係式を用いて、電圧に関するパラメータまたは電流に関するパラメータを消去することにより得られた行列である。
上記同期モータの位置推定プログラムにおいて、前記パラメータ行列に、前記同期モータの固定子の巻線抵抗が含まれている場合には、該同期モータの固定子の巻線抵抗を既知として取り扱うことが好ましい。
このように、同期モータの固定子の巻線抵抗を既知として取り扱うことにより、未知のパラメータの数を更に低減させることができる。この結果、計算量を更に低減させることが可能となる。
上記同期モータの位置推定プログラムにおいて、前記同期モータの停止時における回転子の位置を推定する場合には、例えば、前記第2の電圧電流モデルが以下の(4)式で表され、前記第3の電圧電流モデルが以下の(5)式で表され、前記パラメータ行列が以下の(8)式または以下の(20)式で表される。
Figure 2008219982
本発明によれば、計算量を低減させることができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係る同期モータの位置推定方法およびプログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、同期モータの位置推定方法に用いられる計算式の導出過程について説明する。
一般的に、同期モータの回転座標上での電圧電流モデル(基本電圧電流モデル)は、以下の(1)式で与えられる。
Figure 2008219982
(1)式において、vはd軸電圧、vはq軸電圧、iはd軸電流、iはq軸電流、Lはd軸の定常(静的)インダクタンス、Lはq軸の定常(静的)インダクタンス、L´はd軸の過渡(動的)インダクタンス、L´はq軸の過渡(動的)インダクタンス、Kは誘電電圧定数、ωreは電気角での角速度、pは微分演算子である。
上記静的インダクタンスLと動的インダクタンスL´とは、図1に示すように、駆動電流0での値と、駆動点での値となっている。なお、d軸,q軸は、図2に示すように、固定座標系のα軸,β軸から位置θre回転させた座標軸を示すもので、d軸は回転子の磁極方向を向き、q軸はd軸に直交する向きとなっている。
次に、回転子が停止状態であることを前提とすると、上記(1)式は以下に示す(2)式に変形することができる。
Figure 2008219982
続いて、(2)式を推定回転座標系に基づいて座標変換を行うと、以下に示す(3)式で表される第1の電圧電流モデルが得られる。
Figure 2008219982
γ軸,δ軸は、図3に示すように、回転座標系のd軸,q軸から位置推定誤差Δθreずれた位置座標の軸を示すもので、γ軸はd軸からのずれであり、δ軸はq軸からのずれである。
次に、上記(3)式を計算機上で実行するために、離散化を行う。(3)式を離散化した電圧電流モデル(第2の電圧電流モデル)は、以下の(4)式で与えられる。
Figure 2008219982
上記(4)式において、ΔTは離散時間で、n番目のある時刻とn+1番目のある時刻の間の時間である。
次に、上記(4)式を変形することにより、以下の(5)式で表される第3の電圧電流モデルを得る。
Figure 2008219982
(5)式において、Yはn+1番目のある時刻の電流、zはn番目のある時刻の電流と電圧である。また、Θは、以下の(6)式で表されるパラメータ行列で示される。
Figure 2008219982
ここで、上記(6)式で表されるパラメータ行列Θのパラメータa11〜a22、b11〜b22の間には、上記(3)式から以下の(7)式に示される関係が成立する。つまり、電流に関するパラメータa11〜a22、電圧に関するパラメータb11〜b22、同期モータの固定子の巻線抵抗R、及びインダクタンスに関するパラメータLδ,Lγの間には、以下の(7)式に示す関係が成立する。
Figure 2008219982
上記(7)式から、電流に関するパラメータa11〜a22、電圧に関するパラメータb11〜b22のいずれか一方を他方のパラメータで表現することが可能となる。例えば、電流に関するパラメータa11〜a22を電圧に関するパラメータb11〜b22により表すことで、(6)式に示したパラメータ行列Θは、以下の(8)式に示されるように、電流に関するパラメータa11〜a22が消去されたパラメータ行列Θとして表現することが可能となる。
Figure 2008219982
次に、上記(8)式で示されるパラメータ行列Θを数値解析により同定する。同定は、例えば、パラメータ行列Θの誤差を示す値、ここでは、以下の式(9)に示す”y−Θ(k−1)z”を逐次最小二乗法により集束させることにより行う。(9)式におけるP(k)は、(10)式で表される。
なお、同定の方法については、以下に示す方法に限られず、公知の数値解析モデルを採用することとしてもよい。
Figure 2008219982
Figure 2008219982
ここで、パラメータ行列Θにおいて求めなければならないパラメータは、電圧に関するパラメータb11〜b22に限定されるので、(10)式で用いられる共分散行列Pも以下の(11)式に示すように、ほとんどの要素を0とすることができる。これにより、従来の位置推定方法に比べて計算量を減少させることができる。
Figure 2008219982
続いて、上記(9)式、(10)式によりパラメータ行列Θが同定されると、パラメータ行列Θのパラメータb11〜b22を用いて以下の(12)式を演算することにより、位置推定誤差Δθre(θ上の山形マークを省略する。以下、同様である)を求める。更に、(12)式により求められた位置推定誤差Δθreを用いて、(13)式を演算することにより、最終的な値である推定回転座標系における回転子の位置θreを求める。
Figure 2008219982
Figure 2008219982
上記(13)式において、K1,K2,K3は制御系の設計ゲインを示しており、これらの大きさを変えることにより、推定の特性を変更することができる。また、1/sは積分を、1/sは二重積分を表している。
次に、回転子の停止時における磁極の判定方法について説明する。
例えば、表面磁石型同期モータ(SPMSM)、埋め込み磁石型同期モータ(IPMSM)等の同期モータについては、上述した計算方法では磁極の判定を行うことができない。従って、以下の方法により、磁極を求める。
磁石型同期モータは永久磁石を有しているので、図4及び図5に示すように、d軸電流が0の場合でも、d軸の磁束は誘起電圧定数K分存在する。このため、d軸電流が負の場合と正の場合で動的インダクタンスが異なる。本実施形態では、この原理を用いて、磁極判定を行うこととしている。
具体的には、上述したパラメータ行列Θの同定をγ軸電流がプラスの場合とマイナスの場合の2つに分けてそれぞれ行う。これにより、プラスとマイナスの場合で、得られるインダクタンスパラメータが異なるため、その大きさにより極性判別を行う。γ軸電流が正の場合は、そのときの電圧と電流値を以下の(14)式のデータとして扱い、γ軸電流が負の場合は、そのときの電圧と電流値を以下の(15)式のデータとして扱う。このように得られたデータより、2つのパラメータ行列Θ,Θをそれぞれ同定する。
Figure 2008219982
Figure 2008219982
この場合の位置推定Δθreは、以下の(16)式で求められる。
Figure 2008219982
パラメータ行列Θ,Θの同定が収束すると、以下の(17)式に示される条件で極性判定が行われ、回転子の位置θiniが決定される。具体的には、以下の(17)式に示す、d軸電流iが正、負の場合に対応するd軸インダクタンスL´d+,L´d−の大小により、回転子の位置θiniが、以下の(18)式、(19)式のように決定されると共に、回転子の極性が判定される。
これにより、図4のようにd軸方向とN極の方向が合っている場合と、図5のようにd軸方向とN極の方向が反対の場合とを見分けることができる。
Figure 2008219982
Figure 2008219982
Figure 2008219982
すなわち、d軸電流が負の場合のd軸インダクタンスL´d−が、正の場合のd軸インダクタンスL´d+より大きいLdifが正の場合は、回転子の磁極はN極と判定される。また、d軸インダクタンスLd−がd軸インダクタンスLd+より小さいLdifが負の場合は、回転子の磁極はS極と判定される。
上述した計算方法によれば、位置を推定している情報を用いて磁極の判別も行えるため、特別な磁極判別用の信号を重畳することなく回転子の位置と磁極判別が可能である。
以上、説明したように、本実施形態に係る同期モータの位置推定方法によれば、パラメータ行列Θを電流に関するパラメータおよび電圧に関するパラメータのいずれか一方を用いて表すので、未知のパラメータを減少させることが可能となる。これにより、従来の位置推定方法に比べて、計算量を低減することが可能となる。この結果、回転子の位置推定に要する時間の短縮、処理負担の軽減を図ることができる。
例えば、特開2005−57834号公報の明細書に記載されている「数13」をスカラー量で表すと、図6に示される(a)式に、また、「数14」をスカラー量で表すと、図6に示される(b)式となる。
一方、上述した本実施形態に係る同期モータの位置推定方法において、上述の「数13」に相当する行列をスカラー量で表すと図7に示される(c)式に、また、「数14」に相当する行列をスカラー量で表すと、図7に示される(d)式となる。
このように、本実施形態に係る同期モータの位置推定方法によれば、特開2005−57834号公報に開示されている同期モータの位置推定方法に比べて、計算量を大幅に軽減できることがわかる。
更に、本実施形態に係る同期モータの位置推定方法によれば、パラメータ行列Θに含まれる同期モータの固定子の巻線抵抗Rを既知として取り扱うので、未知のパラメータを更に減少させることができる。これにより、回転子の位置推定に要する時間を更に短縮することができるとともに、処理負担の更なる軽減を図ることができる。
ここで、本実施形態では、固定子の巻線抵抗Rを既知として、例えば、定数として取り扱うため、回転状況や環境温度等の外的要因に応じて変化する変数として取り扱う場合に比べて誤差が大きいという懸念がある。
そこで、既知の固定子の巻線抵抗をRcとして、本実施形態に係る同期モータの位置推定方法を実現したときの位置推定の精度を検証した。図8は、あるモータの固定子の巻線抵抗Rcが温度等の要因によりRpに変化したときの位置推定の誤差を示した図である。図9において横軸は、計算式に用いた既知の巻線抵抗Rcを実際の抵抗Rpにより除算した値Rc/Rp、縦軸は位置推定の誤差を示している。図8からわかるように、計算式で用いる巻線抵抗Rcが実際の抵抗Rpよりも大きくなると誤差が急峻に増加することから、計算式で用いる巻線抵抗Rcは、温度変化を考えて実際の抵抗Rpが最も小さくなる場合を想定して設定することが好ましい。このように固定子の巻線抵抗Rc(R)を決定することで、誤差の問題を解消することができる。
なお、本実施形態においては、パラメータ行列Θを電圧に関するパラメータb11〜b22を用いて表現した場合について説明したが、これに代えて、パラメータ行列Θから電圧に関するパラメータb11〜b22を消去し、電流に関するパラメータa11〜a22で表されたパラメータ行列Θを用いて、上述した回転子の位置推定を行うこととしてもよい。この場合には、パラメータ行列Θは、以下の(20)式にて表される。
Figure 2008219982
また、本実施形態においては、同期モータの停止時における回転子の位置推定について説明したが、同期モータの低速回転時における回転子の位置推定においても、上述と同様の方法に基づいて、計算式に用いられる電圧に関するパラメータまたは電流に関するパラメータを行列式から消去することにより、未知のパラメータを減少させることが可能となる。これにより、同期モータの低速回転時における回転子の位置推定においても処理負担の軽減、処理時間の短縮を図ることができる。
例えば、同期モータの低速回転時においては、特開2005−57834号公報の明細書に記載されている「数30」のパラメータ行列において、電流に関するパラメータa11〜a22または電圧に関するパラメータb11〜b22を、いずれかのパラメータを用いて表すことにより、未知のパラメータの数を減少させることが可能となる。これにより、計算量を減少させることができ、処理負担の軽減、処理時間の短縮を図ることができる。
次に、上述した本実施形態に係る同期モータの位置推定方法を実現する装置について説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る同期モータの位置推定方法が適用される同期モータの位置推定装置の概略構成を示したブロック図である。
図9に示すように、同期モータの位置推定装置1は、電流指令値生成部10、電流制御部11、2相3相変換部12、3相2相変換部13、および位置推定部14を主な構成として備えている。
電流指令値生成部10は、後述する位置推定部14が上述したパラメータ行列を同定することのできる推定回転座標(γ−δ座標)の電流指令値iγ ,iδ を生成して出力する。ここで、パラメータ行列を同定することのできる電流指令値とは、例えば、足達修一,「MATLABによる制御のためのシステム同定」,第1版,東京電機大学出版社,1996年11月30日,p95−96に述べられているように、4次のPE性を満たす入力信号をいう。図10(a)に電流指令値生成部10により生成される電流指令値iγ の一例を、図10(b)に電流指令値生成部10により生成される電流指令値iδ の一例を示す。
図10(a)、(b)に示される位置推定周期は、後述する図11の位置推定周期に対応している。
電流制御部11は、上記電流指令値iγ 、iδ と後述する3相2相変換部13から出力される検出電流iγ,iδとの差分に基づいて、推定回転座標における電圧指令値vγ ,vδ を生成し、2相3相変換部12に出力する。
2相3相変換部12は、後述する位置推定部14によって推定された回転子の推定位置θre或いはθiniを用いて、電流制御部11から入力された電圧指令値vγ ,vδ をU相,V相,W相の各相に対する電圧指令値v ,v 、v に変換し、これをインバータ20に出力する。
これにより、インバータ20が電圧指令値v ,v 、v に応じて駆動することにより、所望の電圧,電流が同期モータ30に供給される。インバータ20と同期モータ30とを接続する3相若しくはこのうちの2相の配線に流れる電流は電流センサ等の電流検出部により検出される。このとき、2相の場合は、i+i+i=0の関係より、残りの1相が求められる。求められたこれら3相の検出電流i,i、iは3相2相変換部13に入力される。
図12に、3相の配線に流れる電流を検出する電流検出部の一例を示す。図12に示すように、電流検出部は、インバータを構成するブリッジ回路の各相に対応する下アームに介挿されるシャント抵抗と、シャント抵抗の両端の信号が入力信号として入力される増幅器とを備えている。このような構成とすることで、高周波成分を除去することが可能となり、電流検出の精度を向上させることができる。
図9に戻り、3相2相変換部13は、3相の検出電流値i,i、iを推定回転座標γ−δの2相の検出電流値iγ,iδに変換し、位置推定部14に出力するとともに、電流制御部11にフィードバックする。
位置推定部14は、例えば、CPU,RAM,ROM等を含むマイクロコンピュータを有している。上述した同期モータの位置推定方法を実現させるための一連の処理手順は、プログラム(同期モータの位置推定プログラム)の形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、マイクロコンピュータ内に内蔵されるROM等のほか、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。
位置推定部14は、電流制御部11により生成された推定回転座標の電圧指令値vγ ,vδ および3相2相変換部13から与えられる推定回転座標の検出電流値を入力情報y,zとしてプログラムに与えることにより、上述したパラメータ行列Θ、或いは、パラメータ行列Θ,Θを同定し、これらのパラメータ行列を用いて同期モータ30の回転子の位置θre,或いは、θiniを推定する。
このような同期モータの位置推定装置1においては、図11に示すように、最初の位置推定周期において、電流指令値生成部10によって生成された電流指令値i(iγ 、iδ )に基づいてインバータ20が駆動されることにより、インバータ20から同期モータ30に電流iが流れる。この電流i(i,i、i)がサンプリングされて3相2相変換部13を介して電流制御部11にフィードバックされ、電流制御部11によって電圧指令値v(vγ ,vδ )が生成され、これに基づき、2相3相変換部12によって、電圧指令値v(v ,v ,v )が生成される。
この電圧指令値v(v ,v ,v )は、次の位置推定周期T2においてインバータ20に与えられる。
一方、位置推定部14は、初回の位置推定周期T1において検出された検出電流値i(n−1)とその前の位置推定周期にインバータから出力されている電圧指令値とを上述したzに用い、今回検出された検出電流i(n)をyに用いることにより、回転子の位置推定を行う。
そして、上述した電流検出、電圧指令値の生成、及び位置推定が位置推定周期毎に繰り返し行われることにより、位置推定部14におけるパラメータ行列Θの誤差が徐々に集束され、最終的にパラメータ行列Θが同定される。そして、このパラメータ行列Θを用いることにより、最終的な回転子の位置が推定される。
ここで、位置推定周期と電流指令値が変更される電流制御周期とは任意の自然数倍で同期させることが好ましい。これは、位置推定周期内で電流指令値が変化すると、入力と出力との整合性がとれなくなり、位置推定に含まれる誤差が増大するおそれがあるとともに、計算量が増加するからである。
なお、位置推定周期は電流制御周期の1倍以上であればよいが、倍数が大きいほど、入力に対する出力の変動が少なくなるので、処理を簡便化することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る同期モータの位置推定プログラムおよび位置推定装置によれば、処理負担の軽減および処理時間の短縮を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
静的インダクタンスLと動的インダクタンスL´との関係を説明するための図である。 同期モータにおける固定座標系のα−β座標と、回転座標系のd−q座標との関係を説明するための図である。 同期モータにおける回転座標系のd−q座標と、推定回転座標系のγ−δ座標との関係を説明するための図である。 d軸方向にN極が一致している場合のd軸電流と磁束Φとの関係の一例を示した図である。 d軸方向とN極の方向とが反対の場合のd軸電流と磁束Φとの関係の一例を示した図である。 従来の同期モータの位置推定方法による計算量と本発明の一実施形態に係る同期モータの位置推定方法による計算量とを比較するための図であり、従来の位置推定方法を利用した場合の計算式を示した図である。 従来の同期モータの位置推定方法による計算量と本発明の一実施形態に係る同期モータの位置推定方法による計算量とを比較するための図であり、本実施形態に係る位置推定方法を利用した場合の計算式を示した図である。 固定子の巻線抵抗を既知の定数として取り扱うことによる回転子の位置推定の誤差を示した図である。 本発明の一実施形態に係る同期モータの位置推定方法が適用される同期モータの位置推定装置の概略構成を示すブロック図である。 電流指令値生成部により生成される電流指令値の一例を示した図である。 電流指令値の出力タイミング、3相電流の検出タイミング、回転子の位置推定のタイミング等を示したタイミングチャートである。 電流検出部の概略構成の一例を示した図である。
符号の説明
1 同期モータの位置推定装置
10 電流指令値生成部
11 電流制御部
12 2相3相変換部
13 3相2相変換部
14 位置推定部
20 インバータ
30 同期モータ

Claims (8)

  1. 同期モータに与える電圧指令値と電流の検出値との関係を表す基本電圧電流モデルを推定回転座標系に基づいて座標変換することにより第1の電圧電流モデルを求め、
    該第1の電圧電流モデルを離散化して第2の電圧電流モデルを求め、
    該第2の電圧電流モデルを第3の電圧電流モデルに変形し、
    該第3の電圧電流モデルについて同定理論を適用して電圧電流に関するパラメータ行列を求め、
    該パラメータ行列を用いて、同期モータの停止時または低速回転時における回転子の位置を演算する同期モータの位置推定方法であって、
    前記パラメータ行列は、電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方を用いて表されている同期モータの位置推定方法。
  2. 前記パラメータ行列は、同期モータの固定子の巻線抵抗、インダクタンス、モータ電圧、及びモータ電流の間に成立する関係式を用いて、電圧に関するパラメータまたは電流に関するパラメータを消去することにより得られた行列である請求項1に記載の同期モータの位置推定方法。
  3. 前記パラメータ行列に、前記同期モータの固定子の巻線抵抗が含まれている場合において、該同期モータの固定子の巻線抵抗を既知として取り扱う請求項1または請求項2に記載の同期モータの位置推定方法。
  4. 前記同期モータの停止時における回転子の位置を推定する場合において、
    前記第2の電圧電流モデルが以下の(4)式で表され、
    前記第3の電圧電流モデルが以下の(5)式で表され、
    前記パラメータ行列が以下の(8)式または以下の(20)式で表される請求項1から請求項3のいずれかに記載の同期モータの位置推定方法。
    Figure 2008219982
  5. 第3の電圧電流モデルについて同定理論を適用して電圧電流に関するパラメータ行列を演算する処理と、
    該パラメータ行列を用いて、同期モータの停止時または低速回転時における回転子の位置を演算する処理と
    をコンピュータに実行させるための同期モータの位置推定プログラムであって、
    前記第3の電圧電流モデルは、
    同期モータに与える電圧指令値と電流の検出値との関係を表す基本電圧電流モデルを推定回転座標系に基づいて座標変換することにより第1の電圧電流モデルを求め、該第1の電圧電流モデルを離散化して第2の電圧電流モデルを求め、該第2の電圧電流モデルを変形することにより求められたモデルであり、
    前記パラメータ行列は、
    電圧に関するパラメータおよび電流に関するパラメータのいずれか一方を用いて表されている同期モータの位置推定プログラム。
  6. 前記パラメータ行列は、同期モータの固定子の巻線抵抗、インダクタンス、モータ電圧、及びモータ電流の間に成立する関係式を用いて、電圧に関するパラメータまたは電流に関するパラメータを消去することにより得られた行列である請求項5に記載の同期モータの位置推定プログラム。
  7. 前記パラメータ行列に、前記同期モータの固定子の巻線抵抗が含まれている場合において、該同期モータの固定子の巻線抵抗を既知として取り扱う請求項5または請求項6に記載の同期モータの位置推定プログラム。
  8. 前記同期モータの停止時における回転子の位置を推定する場合において、
    前記第2の電圧電流モデルが以下の(4)式で表され、
    前記第3の電圧電流モデルが以下の(5)式で表され、
    前記パラメータ行列が以下の(8)式または以下の(20)式で表される請求項1から請求項3のいずれかに記載の同期モータの位置推定プログラム。
    Figure 2008219982
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