以下、本発明に係る表示装置及びその製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。ここで、以下に示す実施形態においては、表示画素を構成する発光素子として、有機材料を塗布して形成される有機EL層を備えた有機EL素子を適用した場合について説明する。
<第1の実施形態>
(表示パネル)
まず、本発明に係る表示装置に適用される表示パネル(有機ELパネル)及び表示画素について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置に適用される表示パネルの画素配列状態の一例を示す概略平面図であり、図2は、本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される各表示画素(発光素子及び画素駆動回路)の回路構成例を示す等価回路図である。なお、図1に示す平面図においては、説明の都合上、表示パネル(絶縁性基板)の一面側(有機EL素子の形成側)から見た、各表示画素(色画素)に設けられる画素電極の配置と各配線層の配設構造との関係、及び、各表示画素の形成領域を画定するバンク(隔壁)との配置関係のみを示し、各表示画素の有機EL素子(発光素子)を発光駆動するために、各表示画素に設けられる図2に示す画素駆動回路内のトランジスタ等の表示を省略した。また、図1においては、画素電極及び各配線層、バンクの配置を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
本発明に係る表示装置(表示パネル)は、図1に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を有する色画素PXr、PXg、PXbを一組として、この組が行方向(図面左右方向)に繰り返し複数配列されるとともに、列方向(図面上下方向)に同一色の色画素PXr、PXg、PXbが複数配列されている。ここでは、隣接するRGB3色の色画素PXr、PXg、PXbを一組として一の表示画素PIXが形成されている。
表示パネル10は、図1に示すように、絶縁性基板11の一面側に突出し、柵状又は格子状の平面パターンを有して連続的に配設されたバンク(隔壁)17により、列方向に配列された同一色の複数の色画素PXr、PXg、又は、PXbの画素形成領域(各色画素領域)が画定される。また、各色画素PXr、PXg、又は、PXbの画素形成領域には、画素電極(例えばアノード電極)14が形成されているとともに、上記バンク17の配設方向に並行して列方向(図面上下方向)にデータライン(信号ライン)Ldが配設され、また、当該データラインLdに直交する行方向(図面左右方向)に走査ライン(選択ライン)Ls及び供給電圧ライン(例えばアノードライン)Laが並行に配設されている。
また、詳しくは後述するが、表示パネル10には、絶縁性基板11上に2次元配列された複数の表示画素PIXの画素電極14に対して共通に対向するように、単一の電極層(べた電極)からなる対向電極(例えばカソード電極)16が形成されている。
表示画素PIXの各色画素PXr、PXg、PXbは、図2に示すように、絶縁性基板11上に1乃至複数のトランジスタ(例えばアモルファスシリコン薄膜トランジスタ等)を有する画素駆動回路(又は画素回路)DCと、当該画素駆動回路DCにより制御される発光駆動電流が、上記画素電極14に供給されることにより発光動作する有機EL素子(発光素子)OLEDと、を備えた回路構成を有している。
画素駆動回路DCは、具体的には、例えば図2に示すように、ゲート端子が走査ラインLsに、ドレイン端子が表示パネル10の列方向に配設されたデータラインLdに、ソース端子が接点N11に各々接続されたトランジスタ(選択トランジスタ)Tr11と、ゲート端子が接点N11に、ドレイン端子が供給電圧ラインLaに、ソース端子が接点N12に各々接続されたトランジスタ(発光駆動トランジスタ)Tr12と、トランジスタTr12のゲート端子及びソース端子間に接続されたキャパシタCsと、を備えている。
ここでは、トランジスタTr11、Tr12はいずれもnチャネル型の薄膜トランジスタ(電界効果型トランジスタ)が適用されている。トランジスタTr11、Tr12がpチャネル型であれば、ソース端子及びドレイン端子が互いに逆になる。また、キャパシタCsはトランジスタTr12のゲート−ソース間に形成される寄生容量、又は、該ゲート−ソース間に付加的に設けられた補助容量、もしくは、これらの寄生容量と補助容量からなる容量成分である(図5参照)。
また、有機EL素子OLEDは、アノード端子(アノード電極となる画素電極14)が上記画素駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード端子(カソード電極)が、上述した単一の電極層により形成された対向電極16と一体的に形成された共通電圧ラインLcに接続されている。
図2に示した表示画素PIX(画素駆動回路DC及び有機EL素子OLED)において、走査ラインLsは、例えば図示を省略した走査ドライバに接続され、所定のタイミングで表示パネル10の行方向に配列された複数の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)を選択状態に設定するための選択電圧(走査信号)Sselが印加される。また、データラインLdは、図示を省略したデータドライバに接続され、上記表示画素PIXの選択状態に同期するタイミングで表示データに応じたデータ電圧(階調信号)Vpixが印加される。
また、供給電圧ラインLaは、例えば所定の高電位電源に直接又は間接的に接続され、各表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)に設けられる有機EL素子OLEDの画素電極(例えばアノード電極)14に表示データに応じた発光駆動電流を流すために、有機EL素子OLEDの対向電極16(例えばカソード電極;共通電圧ラインLc)に印加される基準電圧Vssより電位の高い、所定の高電圧(供給電圧Vdd)が印加され、また、共通電圧ラインLcは、例えば所定の低電位電源に直接又は間接的に接続され、絶縁性基板11上に2次元配列された全ての表示画素PIX(有機EL素子OLEDのカソード電極)に対して、単一の電極層により形成された対向電極16を介して、所定の低電圧(基準電圧Vss;例えば接地電位GND)が共通に印加されるように設定されている。
すなわち、各表示画素PIXにおいて、直列に接続されたトランジスタTr12と有機EL素子OLEDの組の両端(トランジスタTr12のドレイン端子と有機EL素子OLEDのカソード端子)にそれぞれ供給電圧Vddと基準電圧Vssを印加して有機EL素子OLEDに順バイアスを付与して有機EL素子OLEDが発光できる状態にし、さらに、階調信号Vpixに応じて流れる発光駆動電流の電流値を画素駆動回路DCにより制御している。
そして、このような回路構成を有する表示画素PIXにおける駆動制御動作は、まず、図示を省略した走査ドライバから走査ラインLsに対して、所定の選択期間に、選択レベル(オンレベル;例えばハイレベル)の選択電圧Sselを印加することにより、トランジスタTr11がオン動作して選択状態に設定される。このタイミングに同期して、図示を省略したデータドライバから表示データに応じた電圧値を有する階調信号VpixをデータラインLdに印加するように制御する。これにより、トランジスタTr11を介して、階調信号Vpixに応じた電位が接点N11(すなわち、トランジスタTr12のゲート端子)に印加される。
図2に示した回路構成を有する画素駆動回路DCにおいては、トランジスタTr12のドレイン−ソース間電流(すなわち、有機EL素子OLEDに流れる発光駆動電流)の電流値は、ドレイン−ソース間の電位差及びゲート−ソース間の電位差によって決定される。ここで、トランジスタTr12のドレイン端子(ドレイン電極)に印加される供給電圧Vddと、有機EL素子OLEDのカソード端子(カソード電極)に印加される基準電圧Vssは固定値であるので、トランジスタTr12のドレイン−ソース間の電位差は、供給電圧Vddと基準電圧Vssによって予め固定されている。そして、トランジスタTr12のゲート−ソース間の電位差は、階調信号Vpixの電位によって一義的に決定されるので、トランジスタTr12のドレイン−ソース間に流れる電流の電流値は、階調信号Vpixによって制御することができる。
このように、トランジスタTr12が接点N11の電位に応じた導通状態(すなわち、階調信号Vpixに応じた導通状態)でオン動作して、高電位側の供給電圧VddからトランジスタTr12及び有機EL素子OLEDを介して低電位側の基準電圧Vss(接地電位GND)に、所定の電流値を有する発光駆動電流が流れるので、有機EL素子OLEDが階調信号Vpix(すなわち表示データ)に応じた輝度階調で発光動作する。また、このとき、接点N11に印加された階調信号Vpixに基づいて、トランジスタTr12のゲート−ソース間のキャパシタCsに電荷が蓄積(充電)される。
次いで、上記選択期間終了後の非選択期間において、走査ラインLsに非選択レベル(オフレベル;例えばローレベル)の選択電圧Sselを印加することにより、表示画素PIXのトランジスタTr11がオフ動作して非選択状態に設定され、データラインLdと画素駆動回路DCとが電気的に遮断される。このとき、上記キャパシタCsに蓄積された電荷が保持されることにより、トランジスタTr12のゲート端子に階調信号Vpixに相当する電圧が保持された(すなわち、ゲート−ソース間の電位差が保持された)状態となる。
したがって、上記選択状態における発光動作と同様に、供給電圧VddからトランジスタTr12を介して、有機EL素子OLEDに所定の発光駆動電流が流れて、発光動作状態が継続される。この発光動作状態は、次の階調信号Vpixが印加される(書き込まれる)まで、例えば、1フレーム期間継続するように制御される。そして、このような駆動制御動作を、表示パネル10に2次元配列された全ての表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)について、例えば各行ごとに順次実行することにより、所望の画像情報を表示する画像表示動作を実行することができる。
なお、図2においては、表示画素PIXに設けられる画素駆動回路DCとして、表示データに応じて各表示画素PIX(具体的には、画素駆動回路DCのトランジスタTr12のゲート端子;接点N11)に書き込む階調信号Vpixの電圧値を調整(指定)することにより、有機EL素子OLEDに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所望の輝度階調で発光動作させる電圧指定型の階調制御方式の回路構成を示したが、表示データに応じて各表示画素PIXに書き込む電流値を調整(指定)することにより、有機EL素子OLEDに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所望の輝度階調で発光動作させる電流指定型の階調制御方式の回路構成を有するものであってもよい。
(表示画素のデバイス構造)
次いで、上述したような回路構成を有する表示画素(発光駆動回路及び有機EL素子)の具体的なデバイス構造(平面レイアウト及び断面構造)について説明する。ここでは、有機EL層において発光した光を、絶縁性基板を介して視野側(絶縁性基板の他面側)に出射するボトムエミッション型の発光構造を有する表示パネル(有機ELパネル)について示す。
図3は、本発明に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の一例を示す平面レイアウト図である。ここでは、図1に示した表示画素PIXの赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素PXr、PXg、PXbのうちの、特定の一の色画素の平面レイアウトを示す。なお、図3においては、画素駆動回路DCの各トランジスタ及び配線等が形成された層を中心に示す。また、図4(a)及び図4(b)は、図3に示した平面レイアウトを有する表示画素におけるIVA−IVA線(本明細書においては図3中に示したローマ数字の「4」に対応する記号として便宜的に「IV」を用いる。以下同じ)に沿った断面及びIVB−IVB線に沿った断面を示す概略断面図である。
図2に示した表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)は、具体的には、絶縁性基板11の一面側に設定された画素形成領域(各色画素PXr、PXg、PXbにおける有機EL素子の形成領域;図4中、Rpxとして表記)において、例えば図3に示すような平面レイアウトの上方及び下方の縁辺領域に行方向(図面左右方向)に延在するように走査ラインLs及び供給電圧ラインLaが各々配設されるとともに、これらのラインLs、Laに直交するように、上記平面レイアウトの左方の縁辺領域に列方向(図面上下方向)に延在するようにデータラインLdが配設されている。また、上記平面レイアウトの右方の縁辺領域には右側に隣接する色画素にまたがって列方向に延在するようにバンク(詳しくは後述する)17が配設されている。
ここで、例えば図3、図4(a)、(b)に示すように、データラインLdは、走査ラインLs及び供給電圧ラインLaよりも下層側(絶縁性基板11側)に設けられ、トランジスタTr11、Tr12のゲート電極Tr11g、Tr12gを形成するためのゲートメタル層をパターニングすることによって当該ゲート電極と同じ工程で形成され、その上に成膜されたゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCh1を介して、信号配線層Ldxと一体的に形成されたトランジスタTr11のドレイン電極Tr11dに接続されている。
また、走査ラインLsは、データラインLdよりも上層側に設けられ、トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成するためのソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって当該ソース電極、ドレイン電極と同じ工程で形成され、トランジスタTr11のゲート電極Tr11gの両端に位置するゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCh2を介してゲート電極Tr11gに接続されている。
ここで、走査ラインLsは、例えば下層配線部Ls0と上層配線部Ls1を積層した配線構造を有し、また、供給電圧ラインLa(後述する給電配線層Layを含む)も、下層配線部La0と上層配線部La1を積層した配線構造を有している。下層配線部Ls0、La0は、ともに、トランジスタTr12のソース電極Tr12s及びドレイン電極Tr12dと同層、又は、一体的に設けられ、当該ソース電極Tr12s及びドレイン電極Tr12dを形成するためのソース、ドレインメタル層をパターニングする工程において同時に形成される。
なお、下層配線部Ls0、La0は、各々、クロム(Cr)やチタン(Ti)等のマイグレーションを低減するための遷移金属層と、当該遷移金属層の上に設けられているアルミニウム単体やアルミニウム合金等の配線抵抗を低減するための低抵抗金属層と、の積層構造を有している。上層配線部Ls1、La1は、アルミニウム単体やアルミニウム合金等の配線抵抗を低減するための低抵抗金属の単層により形成するものであってもよいし、クロム(Cr)やチタン(Ti)等のマイグレーションを低減するための遷移金属層上に上記低抵抗金属層が設けられた積層構造を有するものであってもよい。
そして、画素駆動回路DCは、より具体的には、例えば図3に示すように、図2に示したトランジスタTr11が行方向に配設された走査ラインLs(又はデータラインLdに接続され、行方向に形成された信号配線層Ldx)に沿って延在するように配置され、また、トランジスタTr12が供給電圧ラインLaから列方向に突出して形成された給電配線層Lay(又はバンク17)に沿って延在するように配置されている。
ここで、各トランジスタTr11、Tr12は、周知の電界効果型の薄膜トランジスタ構造を有し、各々、ゲート電極Tr11g、Tr12gと、ゲート絶縁膜12を介して各ゲート電極Tr11g、Tr12gに対応する領域に形成された半導体層SMCと、該半導体層SMCの両端部に延在するように形成されたソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dと、を有している。
なお、各トランジスタTr11、Tr12のソース電極とドレイン電極が対向する半導体層SMC上には当該半導体層SMCへのエッチングダメージを防止するための酸化シリコン又は窒化シリコン等のチャネル保護層BLが形成され、また、ソース電極及びドレイン電極と半導体層SMCとの間には、当該半導体層SMCとソース電極及びドレイン電極とのオーミック接続を実現するための不純物層OHMが形成されている。
そして、図2に示した画素駆動回路DCの回路構成に対応するように、トランジスタTr11は、図3に示すように、ゲート電極Tr11gがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCh2を介して走査ラインLsに接続され、同ドレイン電極Tr11dが信号配線層Ldxと一体的に形成されている。
また、トランジスタTr12は、図3、図4に示すように、ゲート電極Tr12gがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCh3を介して上記トランジスタTr11のソース電極Tr11sに接続され、同ドレイン電極Tr12dが供給電圧ラインLaと一体的に形成された給電配線層Layに接続され、同ソース電極Tr12sが有機EL素子OLEDの画素電極14に直接接続されている。
有機EL素子OLEDは、図3、図4に示すように、上記トランジスタTr11、Tr12のゲート絶縁膜12上に設けられるとともに、トランジスタTr12のソース電極Tr12sに直接接続されて、所定の発光駆動電流が供給される画素電極(例えばアノード電極)14と、絶縁性基板11上に列方向に配設されたバンク17により画定された(バンク17間に設定された)画素形成領域Rpx(後述する有機化合物含有液の塗布領域に相当する)に形成された正孔輸送層15a(担体輸送層)と電子輸送性発光層15b(担体輸送層)からなる有機EL層(発光機能層)15と、絶縁性基板11上に2次元配列された各表示画素PIXに共通に設けられた単一の電極層(べた電極)からなる対向電極16と、が順次積層されている。
ここで、本実施形態に係る表示パネル10においては、ボトムエミッション型の発光構造を有しているので、画素電極14がITO等の透明な電極材料により形成されて光透過特性を有するとともに、対向電極16が光反射特性を有している。なお、対向電極16は、各画素形成領域Rpxだけでなく、当該画素形成領域Rpxを画定するバンク17上にも延在するように設けられている。
上述の構造では、走査ラインLsがソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって形成され、データラインLdがゲートメタル層をパターニングすることによって形成され、コンタクトホールCh1、Ch2によりドレイン電極やゲート電極に接続しているが、これに限らず、走査ラインLsがゲートメタル層をパターニングすることによって形成され、データラインLdがソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって形成されることでコンタクトホールCh1、Ch2を設けることなく、ゲート電極やドレイン電極と一体的に設けるようにしてもよい。
また、供給電圧ラインLa及び給電配線層Layは、ソース、ドレインメタル層と別層により形成されたが、ソース、ドレインメタル層をパターニングすることにより形成されていてもよい。この場合、供給電圧ラインLaがソース、ドレインメタル層をパターニングすることにより形成される他の配線と電気的に絶縁していなければならない。
バンク17は、表示パネル10に2次元配列される複数の表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)相互の境界領域であって、表示パネル10の列方向に(表示パネル10全体では図1に示すように柵状又は格子状の平面パターンを有するように)配設されている。ここで、図3、図4(a)に示すように、上記境界領域のうち、表示パネル10(絶縁性基板11)の列方向には上記トランジスタTr12が延在して形成されており、当該トランジスタTr12を被覆し、各画素形成領域Rpxに形成される画素電極14相互の層間絶縁膜としての機能を果たす絶縁膜13a、13bが形成され、バンク17は、絶縁膜13a、13b上に、絶縁性基板11表面から連続的に突出するように樹脂層を積層することにより形成されている。これにより、列方向に延在するバンク17により囲まれた領域(列方向(図1の上下方向)に配列された複数の表示画素PIXの画素形成領域Rpx)が、有機EL層15(正孔輸送層15a及び電子輸送性発光層15b)を形成する際の有機化合物材料の塗布領域として規定される。
本実施形態に適用されるバンク17は、少なくともバンク17の表面(側面及び上面)が、画素形成領域Rpxに塗布される有機化合物含有液に対して撥液性を有するように表面処理が施されている。また、バンク17は、例えば感光性の樹脂材料を用いて形成されている。
なお、上述した画素駆動回路DC、有機EL素子OLED及びバンク17が形成された絶縁性基板11の一面側は、図示を省略したメタルキャップや封止基板等を貼り合わせることにより封止されている。
そして、このような表示パネル10においては、トランジスタTr11、Tr12等の機能素子、走査ラインLsやデータラインLd、供給電圧ライン(アノードライン)La等の配線層からなる画素駆動回路DCにおいて、データラインLdを介して供給された表示データに応じた階調信号Vpixに基づいて、所定の電流値を有する発光駆動電流がトランジスタTr12のソース−ドレイン間に流れ、有機EL素子OLEDの画素電極14に供給されることにより、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL素子OLEDが上記表示データに応じた所望の輝度階調で発光動作する。
このとき、本実施形態に示した表示パネル10、つまり、画素電極14が光透過特性を有し、対向電極16が光反射特性を有することにより(すなわち、有機EL素子OLEDがボトムエミッション型であることにより)、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層15において発光した光は、光透過特性を有する画素電極14を介して直接、あるいは、光反射特性を有する対向電極16で反射し、絶縁性基板11(表示パネル10)を透過して、視野側である絶縁性基板11の他面側(図4、図5の図面下方)に出射される。
(表示装置の製造方法)
次に、本発明に係る表示装置(表示パネル)の製造方法について説明する。
図5乃至図8は、本発明に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の第1の実施形態を示す工程断面図である。ここでは、図4(a)、(b)に示したIVA−IVA線に沿った断面及びIVB−IVB線に沿った断面を、図5乃至図8の各図の右方及び左方に分けて示す。また、図9は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法における有機化合物含有液の塗布工程(塗布走査経路)を示す概念図であり、図10は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法における有機EL層(電子輸送性発光層)の形成工程を示す概念図である。なお、図10においては、有機化合物含有液を塗布する工程を概念的に示すために図示を簡略化し、便宜的に絶縁性基板上に画素電極や絶縁膜が直接形成された断面構造を示した。
上述した表示装置(表示パネル)の製造方法は、まず、図5(a)〜(d)に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側(図面上面側)に設定された表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の画素形成領域Rpxごとに、上述した画素駆動回路(図2、図3参照)DCのトランジスタTr11、Tr12やデータラインLd、信号配線層Ldx、走査ラインLsの下層配線部Ls0及び供給電圧ラインLaの下層配線部La0等の配線層を形成するとともに、有機EL素子OLEDのアノード電極となる画素電極14を形成する。
具体的には、透明な絶縁性基板11上にゲートメタル層を成膜してから、図5(a)に示すように、ゲートメタル層をパターニングすることによってゲート電極Tr11g、Tr12g、及び、データラインLdを同時に形成し、その後、絶縁性基板11の全域にゲート絶縁膜12、アモルファスシリコン等からなる半導体層SMCとなる半導体膜、チャネル保護層BLとなる窒化シリコン等の絶縁膜を連続被覆形成する。
次いで、図5(b)に示すように、上記絶縁膜、半導体膜を適宜パターニングしてゲート絶縁膜12上のゲート電極Tr11g及びTr12gに対応する領域に、チャネル保護層BL、半導体層SMCを順次形成する。その後、当該半導体層SMCの両端部にオーミック接続のための不純物層OHMを形成する。
次いで、図5(c)に示すように、上記ゲート絶縁膜12上であって、各表示画素PIXの画素形成領域Rpxの略中央領域(図3に示した平面レイアウトにおいてトランジスタTr11、Tr12や各種配線が配置された周辺部を除く領域)に矩形状の平面パターンを有し、錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide;ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム(Indium Zinc Oxide;IZO)等の透明な電極材料からなる(光透過特性を有する)画素電極14を形成する。この後、図3に示したように、データラインLd、トランジスタTr11及びTr12のゲート電極Tr11g、Tr12gの所定の位置の上面が露出するように、ゲート絶縁膜12にコンタクトホールCh1、Ch2、Ch3を形成する。
そして、図5(d)に示すように、トランジスタTr11及びTr12の半導体層SMCの両端部に上記不純物層OHMを介して延在するように、ソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成するとともに、走査ラインLsの下層配線部Ls0、供給電圧ラインLa(給電配線層Layを含む)の下層配線部La0、及び信号配線層Ldxを同時に形成する。
ここで、ソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12d、走査ラインLsの下層配線部Ls0、供給電圧ラインLaの下層配線部La0及び信号配線層Ldxは、図5(c)の工程後、ソース、ドレインメタル層を成膜した後、パターニングすることによって一括して形成される。これにより、信号配線層Ldxは、コンタクトホールCh1を介して下方に位置するデータラインLdに接続され、走査ラインLsは、コンタクトホールCh2を介して下方に位置するゲート電極Tr11gに接続され、ソース電極Tr11sは、コンタクトホールCh3を介して下方に位置するゲート電極Tr12gに接続される。また、トランジスタTr12のソース電極Tr12sの他端側は画素電極14上にまで延在して、電気的に接続される。
また、少なくとも、上述したトランジスタTr11のソース電極Tr11s及びドレイン電極Tr11d、トランジスタTr12のソース電極Tr12s及びドレイン電極Tr12d、走査ラインLsの下層配線部Ls0、供給電圧ラインLa(給電配線層Layを含む)の下層配線部La0及び信号配線層Ldxを形成するためのソース、ドレインメタル層は、例えば、クロム(Cr)単体又はクロム合金等からなる下層側の金属層と、アルミニウム(Al)単体又はアルミニウム−チタン(AlTi)、アルミニウム−ネオジウム−チタン(AlNdTi)等のアルミニウム合金からなる上層側の金属層と、を積層した配線構造を有している。
次いで、上記トランジスタTr11、Tr12、走査ラインLs及び供給電圧ラインLaの下層配線部Ls0、La0を含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、窒化シリコン(SiN)等の無機の絶縁性材料からなる絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜をパターニングして、図6(a)に示すように、走査ラインLsの下層配線部Ls0及び供給電圧ラインLaの下層配線部La0の上面、並びに、画素電極14の上面が露出する開口部を有する絶縁膜13aを形成する。
次いで、絶縁膜13aが形成された絶縁性基板11上に、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法、真空蒸着法、メッキ法等により、アルミニウム(Al)単体又はアルミニウム−チタン(AlTi)、アルミニウム−ネオジウム−チタン(AlNdTi)等のアルミニウム合金等の配線抵抗を低減するための低抵抗金属層(アルミ薄膜)を形成した後、パターニングすることにより、図6(b)に示すように、走査ラインLs及び供給電圧ラインLa(給電配線層Layを含む)の平面パターンに対応する領域にのみ、アルミ薄膜からなる上層配線部Ls1、La1が形成され、当該上層配線部Ls1、La1と上記下層配線部Ls0、La0からなる積層配線構造を有する走査ラインLs及び供給電圧ラインLa(給電配線層Layを含む)が形成される。
次いで、上記走査ラインLs及び供給電圧ラインLaを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、化学気相成長法(CVD法)等を用いて、例えば窒化シリコン等からなる絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜をパターニングして、図6(c)に示すように、上記トランジスタTr11、Tr12、走査ラインLs及び供給電圧ラインLa(給電配線層Layを含む)を被覆するとともに、各表示画素PIXの画素電極14の上面が露出する開口部を有する絶縁膜13bを形成する。
次いで、図7(a)に示すように、隣接する表示画素PIX間の境界領域に形成された上記絶縁膜13b上に、例えばポリイミド系やアクリル系等の感光性の樹脂材料からなるバンク17を形成する。具体的には、上記絶縁膜13bを含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、例えば1〜5μmの膜厚を有して形成された感光性樹脂層に対して、露光、現像処理を施すことにより、行方向に隣接する表示画素PIX間の境界領域であって、表示パネル10の列方向に延在する領域を含む柵状又は格子状の平面パターン(図1参照)を有するバンク(隔壁)17を形成する。ここで、樹脂材料としては、例えば東レ株式会社製のポリイミドコーティング材「フォトニースPW−1030」等を良好に適用することができる。これにより、表示パネル10の列方向に配列された同一色の複数の表示画素PIXの画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの有機EL層15の形成領域)がバンク17により囲まれて画定されて、絶縁膜13a、13bに形成された開口部により外縁が規定された画素電極14の上面が露出する(隔壁形成工程)。
次いで、絶縁性基板11を純水で洗浄した後、例えば酸素プラズマ処理やUVオゾン処理等を施すことにより、上記バンク17により画定された各画素形成領域Rpxに露出する画素電極14や絶縁膜13a、13bの表面を、後述する担体輸送層形成工程において使用する正孔輸送材料や電子輸送性発光材料の有機化合物含有液に対して親液化する処理を施す(親液化工程)。
次いで、バンク17の表面を上記有機化合物含有液に対して撥液化する。具体的には、絶縁性基板11を例えばフッ素系(フッ素化合物)の撥液処理溶液に浸漬した後、取り出した絶縁性基板11をアルコールや純水で洗浄、乾燥させて、バンク17の表面に撥液性の薄膜(被膜)を形成する。ここで、上記撥液処理溶液として例えばフッ化アルキルアミン等を適用した場合、酸化膜や窒化膜とは反応しないため、画素形成領域Rpx内に露出する画素電極14表面のITOやIZO等の金属酸化物や絶縁膜13a、13b表面には形成されず、上述した酸素プラズマ処理やUVオゾン処理により付与された親液性を保持する。
これにより、同一の絶縁性基板11上において、樹脂材料により形成されたバンク17の表面のみが撥液化処理され、当該バンク17により画定された各画素形成領域Rpxに露出する画素電極14の表面は撥液化されていない状態(親液性が保持された状態)が実現される。
このようなバンク17により各表示画素PIX(有機EL素子OLED)の画素形成領域Rpxを画定することにより、後述する担体輸送層形成工程において、有機化合物含有液をノズルプリンティング法やインクジェット法を用いて塗布し、有機EL層15の発光層(電子輸送性発光層15b)を形成する場合であっても、隣接する画素形成領域Rpxへの有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができ、隣接画素相互の混色を抑制して、赤、緑、青色の塗り分けが可能となる。
なお、本実施形態において使用する「撥液性」とは、後述する正孔輸送層となる正孔輸送材料を含有する有機化合物含有液や、電子輸送性発光層となる電子輸送性発光材料を含有する有機化合物含有液、もしくは、これらの溶液に用いる有機溶媒を、絶縁性基板上等に滴下して、接触角の測定を行った場合に、当該接触角が50°以上になる状態と規定する。また、「撥液性」に対峙する「親液性」とは、本実施形態においては、上記接触角が40°以下、好ましくは10°以下になる状態と規定する。
次いで、図7(b)に示すように、各色の画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの形成領域)に対して、連続した溶液(液流)を吐出するノズルプリンティング(ノズルコート)法、又は、互いに分離した不連続の複数の液滴を所定位置に吐出するインクジェット法等を適用して同一工程で、正孔輸送材料の溶液又は分散液を塗布した後、加熱乾燥させて正孔輸送層(担体輸送層)15aを形成する。
具体的には、有機高分子系の正孔輸送材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液として、例えばポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT/PSS;導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSSを水系溶媒に分散させた分散液)を、上記画素電極14上に塗布した後、絶縁性基板11が載置されているステージを100℃以上の温度条件で加熱して乾燥処理を行って残留溶媒を除去することにより、少なくとも画素電極14上に有機高分子系の正孔輸送材料を定着させて、担体輸送層である正孔輸送層15aを形成する。
ここで、画素形成領域Rpx内に露出する画素電極14の上面及びその外縁部の絶縁膜13a、13bの表面は、上記親液化処理により正孔輸送材料を含む有機化合物含有液に対して親液性を有しているので、バンク17により画定された画素形成領域Rpxに塗布された有機化合物含有液は、画素形成領域Rpx内(画素電極14及びその外縁部の絶縁膜13a、13b上)に十分馴染んで広がる。一方、バンク17は、塗布される上記有機化合物含有液(PEDOT/PSS)の高さに対して十分高く設定され、かつ、当該有機化合物含有液に対して十分な撥液性を有しているので、隣接する画素形成領域Rpxへの有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができる。
なお、この正孔輸送層15aの形成工程において、絶縁性基板11の列方向に画定された複数の表示画素PIXの画素形成領域Rpxに対して、正孔輸送材料を含む有機化合物含有液を例えば連続的に塗布するノズルプリンティング法を適用する場合、図9に示すように、図示を省略したノズルプリンティングマシンのノズルを、絶縁性基板11に対して列方向(図面上下方向)に走査させつつ往復動作させ、かつ、往路と復路で異なる列(隣接する列)の画素形成領域Rpxに塗布されるように(図中、矢印参照)、当該ノズルもしくは絶縁性基板11が載置されたステージを移動制御する。
次いで、図8(a)に示すように、各色の画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの形成領域)に対して、ノズルプリンティング法又はインクジェット法等を適用して、上記正孔輸送層15a上に電子輸送性発光材料の溶液又は分散液を塗布した後、加熱乾燥させて電子輸送性発光層(担体輸送層)15bを形成する。
具体的には、有機高分子系の電子輸送性発光材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液として、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む赤(R)、緑(G)、青(B)色の発光材料を、適宜水系溶媒或いはテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒に溶解または分散した0.1wt%〜5wt%の溶液を、例えば図10(a)〜(c)に示すように、上記正孔輸送層15a上に同量(一定量)ずつ3回(複数回)に分けて塗布した後、窒素雰囲気中で上記ステージを加熱して乾燥処理を行って残留溶媒を除去することにより、図8(a)、図10(d)に示すように、正孔輸送層15a上に有機高分子系の電子輸送性発光材料を定着させて、担体輸送層であり発光層でもある電子輸送性発光層15bを形成する。
ここで、画素形成領域Rpx内に形成された上記正孔輸送層15aの表面は、電子輸送性発光材料を含む有機化合物含有液に対して親液性を有しているので、バンク17により画定された画素形成領域Rpxに塗布された有機化合物含有液は、画素形成領域Rpx内(正孔輸送層15a上)に十分馴染んで広がる。一方、バンク17は、塗布される上記有機化合物含有液の高さに対して十分高く設定され、かつ、当該有機化合物含有液に対して十分な撥液性を有しているので、隣接する画素形成領域Rpxへの有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができる。
なお、図10においては、図示の都合上、画素形成領域Rpxに塗布される有機化合物含有液EM11〜EM13を便宜的に不連続の液滴状に示したが、ノズルプリンティング法を適用した場合には連続した液流状に吐出される。また、図10(a)〜(c)に示した1〜3回目の有機化合物含有液EM11〜EM13の塗布工程においては、上述した正孔輸送層15aの形成工程と同様に、ノズルプリンティングマシンのノズルNZLを図面に垂直方向(すなわち、図1、図9に示した絶縁性基板11の列方向)に走査させつつ往復動作させ、かつ、往路(例えば図9中、上から下に向かった走査方向による道筋)と復路(例えば図9中、下から上に向かった走査方向による道筋)で異なる列(同材料成膜により発光色が同色の画素となる次の列)の画素形成領域Rpxに塗布されるように、当該ノズルNZLもしくは絶縁性基板11が載置されたステージを移動制御する。
また、本実施形態においては、図9に示したように、ノズルNZLを表示パネル10(絶縁性基板11)に2次元配列された表示画素PIX(画素形成領域Rpx)に対して、略一定の走査速度で、かつ、各列ごとに往路走査及び復路走査を順次繰り返すことにより、いわゆる一筆書きの経路で1回分の塗布工程を実行する。したがって、2回目以降の塗布工程においても同様の動作が一定の周期で繰り返されるので、各画素形成領域Rpxに対するノズルの走査方向が常に一定に設定されるとともに、各回における有機化合物含有液の塗布量が略同一になり、かつ、各回相互の時間間隔が略一定となるように設定される。
この場合、有機化合物含有液として上述したキシレン等の揮発性の有機溶媒を用いた場合、次回の塗布工程(例えば2回目や3回目)までに塗布した溶媒が揮発して多少の自然乾燥が観測されるが、次回の塗布工程によって塗布される有機化合物含有液と良好に混合する程度の液状を保持している。
そして、図1に示したように、RGB3色の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)が各色ごとに列方向に配列され、かつ、RGBの3色が繰り返し配列された表示パネル10においては、各色ごとにノズルNZLを3列おきに往路走査と復路走査を繰り返して絶縁性基板11の全域を走査することにより3色分の塗布動作を実行し、このような動作を図10(a)〜(c)のように3回繰り返してRGBの各色に対応した電子輸送性発光層15bを形成する。
ここで、絶縁性基板11上に形成された各表示画素PIXの画素電極14上に形成される電子輸送性発光層15bの膜厚特性について詳しく検証する。
図11は、本実施形態に係る有機EL層(電子輸送性発光層)の形成工程における効果(膜厚の均一化)を実証するための実験データの一例であり、図12は、本実施形態に係る有機EL層(電子輸送性発光層)の形成工程における効果(膜厚のバラツキの縮小)を実証するための実験データの一例である。
ここでは、バンクにより画素形成領域が画定された単一の絶縁性基板において、ノズルプリンティング法を適用して赤色の発光材料をキシレン(有機溶媒)に2wt%の濃度で溶解又は分散した上述の有機化合物含有液を、図11(a)に示すように同画素に同量ずつ2回に分けて塗布(2回塗り)する場合と、図11(b)に示すように同画素に同量ずつ3回に分けて塗布(3回塗り)する場合の各画素(画素番号)における発光層の膜厚を測定した。この場合の基板温度は40℃、ノズルからの吐出量は129.56±0.94μl/min、ノズル走査速度は1回目の塗布走査では1.5m/s、2回目の塗布走査では1.25m/s、3回目の塗布走査では1.25m/sに設定した。なお、3回塗りにおける塗布総量は、2回塗りにおける塗布総量よりも塗布1回分多くなっている。
また、絶縁性基板に配列される1列の画素数を100画素、各表示画素(画素形成領域)における塗布領域の寸法を370×55μm、各表示画素(画素形成領域)における測定領域の寸法を325×20μmに設定し、各列100画素全てに連続して塗布した後、各列の表示画素のうち、列方向1画素おきに50画素(すなわち奇数番目又は偶数番目の画素)を抽出して各表示画素における上記測定領域内での発光層の膜厚を測定し、最大値(最厚値)、最小値(最薄値)及び平均値を算出して評価を行った。つまり、図11の横軸の画素番号は、各列方向に沿って配列された画素の配列順番の値であり、ここでは、奇数番目のみ膜厚を示している。
これによれば、各画素形成領域に有機化合物含有液を2回塗りした場合には、図11(a)に示すように、測定領域内の発光層の膜厚の最大値及び最小値ともバラツキがあったが、塗布総量を同じ条件にして1回塗りした場合に比べて膜厚のバラツキは抑えられ、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の5%以内であった表示画素は66%であり、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の2%以内であった表示画素は0%であった。
各画素形成領域に有機化合物含有液を3回塗りした場合には、図11(b)に示すように、測定領域内の発光層の膜厚の最大値及び最小値ともバラツキが大幅に抑制されて、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の5%以内であった表示画素は100%であり、同様に、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の2%以内であった表示画素は88%に達することが判明した。
また、単一画素における列方向の膜厚のバラツキを検証するため、絶縁性基板上の特定の表示画素(例えば、49画素目)を抽出し、当該測定領域の略全域で形成された発光層の膜厚の最大値及び最小値を測定し、各測定位置における平均値(平均膜厚)に対するバラツキ(平均膜厚を0に換算したときの膜厚の差分)を検証すると、図12に示すように、2回塗りの場合(図中、点線で表示)に比較して3回塗りの場合(図中、実線で表示)の方が膜厚のバラツキが大幅に抑制される(ほぼ平均膜厚に近似する)ことが判明した。
このように、ノズルプリンティング法やインクジェット法を用いて、同量の有機化合物含有液を複数回(例えば3回)に分けて塗布した後、加熱乾燥処理を行うことにより、画素電極14上に略均一な膜厚を有する電子輸送性発光層15bを含む有機EL層(発光機能層)15が形成される(担体輸送層形成工程)。
次いで、図8(b)に示すように、上記バンク17及び有機EL層15(正孔輸送層15a及び電子輸送性発光層15b)が形成された絶縁性基板11上に光反射特性を有し、各画素形成領域Rpxの有機EL層15を介して各画素電極14に対向する共通の対向電極(例えばカソード電極)16を形成する。
ここで、対向電極16は、例えば真空蒸着法やスパッタリング法を用いて、1〜10nm厚のカルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、インジウム(In)等の仕事関数の低い電子注入層(カソード電極)と、100nm以上の厚さのアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)、パラジウム銀(AgPd)系の合金、又は、ITO等の透明電極等からなる高仕事関数の薄膜(給電電極)と、を積層した電極構造を適用することができる。
また、対向電極16は、図1、図4に示したように、各画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの形成領域)内の上記画素電極14に対向する領域のみならず、各画素形成領域Rpx(有機EL素子OLEDの形成領域)を画定するバンク17及び絶縁膜13a、13b上にまで延在する単一の導電層(べた電極)として形成される(対向電極形成工程)。
次いで、上記対向電極16を形成した後、絶縁性基板11の一面側全域にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等からなる封止層18をCVD法等を用いて形成することにより、図4に示したような断面構造(ボトムエミッション型の発光構造)を有する複数の表示画素PIX(有機EL素子OLEDと画素駆動回路DC)がマトリクス状に配列された表示パネル10が完成する。なお、上記封止層18に加えて、又は、封止層18に替えて、UV硬化又は熱硬化接着剤を用いて、メタルキャップ(封止蓋)やガラス等の封止基板を接合するものであってもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る表示装置の製造方法によれば、発光層となる有機化合物含有液を塗布する工程において、ノズルから複数回に分けて、同量(一定量)もしくは略同等の量の有機化合物含有液を吐出することにより、少なくとも画素電極上を含む画素形成領域内の広い領域に当該有機化合物含有液を馴染ませて塗布して、発光層である電子輸送性発光層を平坦化することができるので、有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)の膜厚の薄い領域に発光駆動電流が集中して流れることに起因して、有機EL層(有機EL素子)の劣化が著しくなったり、発光開始電圧が設計値から変化して(ずれて)、所望の発光輝度が得られなくなる現象を抑制して、信頼性や表示画質に優れた表示パネルを提供することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明に係る表示装置の製造方法における第2の実施形態について説明する。ここで、表示パネルの画素配列状態や各表示画素の回路構成及び平面レイアウトは、上述した第1の実施形態と同等であるので、図1〜図9を適宜参照しながら、第2の実施形態に係る表示装置の製造方法に特徴的な工程ついてのみ具体的に説明する。
上述した第1の実施形態においては、各表示画素PIXの色を規定する発光層である電子輸送性発光層15bを平坦化するための手法として、ノズルプリンティング法やインクジェット法を用いて同量の有機化合物含有液を複数回に分けて塗布した後、絶縁性基板を加熱乾燥処理して発光層を形成する場合について説明したが、本実施形態においては、ノズルプリンティング法やインクジェット法を用いて有機化合物含有液を複数回に分けて塗布し、各回ごとに加熱乾燥処理を施して発光層の一部となる薄膜を順次積層形成するとともに、少なくとも最終回に塗布される有機化合物含有液により形成される薄膜により被覆される領域を、それ以前の回に塗布された有機化合物含有液により形成される薄膜の被覆領域よりも狭く(小さく)なるように制御して、平坦化された発光層(例えば電子輸送性発光層)を形成することを特徴としている。
本実施形態に係る発光層の形成方法は、具体的には、以下に示すような手法の一つ、又は、2つ以上の組み合わせを良好に適用することができる。
(1)複数回に分けて塗布する有機化合物含有液の量(塗布量)を制御して、最終回に塗布される有機化合物含有液の量を、それ以前の各回に塗布される有機化合物含有液の量よりも少なくするように設定する。
(2)有機化合物含有液を複数回に分けて塗布する際の絶縁性基板(厳密には絶縁性基板が載置されたステージ)の温度を制御して、最終回に塗布される有機化合物含有液の乾燥速度を、それ以前の各回における乾燥速度よりも速くするように設定する。
(3)塗布面の種類により親液性(濡れ性)が異なる有機化合物含有液(発光材料及び有機溶媒)を選択して、有機化合物含有液を塗布することにより形成される薄膜に対する親液性が、絶縁性基板又は下地となる部材(画素電極又は正孔輸送層)に対する親液性よりも小さくなるように設定する。
以下に、上述した(1)〜(3)の手法のうち、(1)の手法のみを適用した場合の有機EL層(電子輸送性発光層)の形成方法について説明する。ここで、上述した第1の実施形態と同等の製造方法については、その説明を簡略化又は省略する。
図13は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法における有機EL層(電子輸送性発光層)の形成工程の一例を示す概念図である。なお、図13においては、有機化合物含有液を塗布する工程を概念的に示すために図示を簡略化し、便宜的に絶縁性基板上に画素電極や絶縁膜が直接形成された断面構造を示した。
本実施形態に係る表示装置の製造方法は、上述した第1の実施形態と同様に、まず、絶縁性基板11表面から連続的に突出するようにバンク17を形成して、当該バンク17により各表示画素PIXの画素形成領域Rpxを画定し、当該絶縁性基板11に酸素プラズマ処理やUVオゾン処理を施して、少なくとも画素形成領域Rpx内に露出する画素電極14の上面を親液化する。ここで、上述した第1の実施形態においては、画素電極14の親液化処理の後、バンク17表面を撥液化処理する場合について説明したが、本実施形態においてはバンク17の撥液化処理を行わない。
次いで、画素形成領域Rpx内に正孔輸送材料を含む有機化合物含有液を塗布して、少なくとも画素電極14上に正孔輸送層15aを形成し、その後、図13(a)に示すように、1回目の塗布工程としてノズル(図示を省略)から電子輸送性発光材料を含む第1の量の有機化合物含有液EM21を吐出して画素形成領域Rpx内に塗布し、加熱乾燥処理を施して、図13(b)に示すように、電子輸送性発光材料の薄膜FL21を形成する。
有機化合物含有液EM21は、有機化合物含有液EM21の表面張力、有機化合物含有液EM21と正孔輸送層15aとの間の表面張力、有機化合物含有液EM21とバンク17との間の表面張力によって中央がへこむようなメニスカスが形成される。このため、1回目の塗布工程によりこの状態で乾燥して堆積された薄膜FL21は、中央がへこんだ形状になっている。ここで、第1の量は、有機化合物含有液EM21が例えはバンク17側面を含む画素形成領域Rpx内の全域に馴染んで広がる程度の比較的多い量に設定されている。
このように、画素形成領域Rpx内の画素電極14上に正孔輸送層15aを介して有機化合物含有液EM21が十分馴染んで薄く広がって有機化合物含有液EM21がバンク17に接することでこれらの界面での表面張力が発生してしまい、当該有機化合物含有液EM21の液面端部が撥液化処理を施してないバンク17側面に沿って迫り上がるように広がるので、有機化合物含有液EM21の液面は、絶縁性基板11表面の段差や、バンク17側面への両端部の迫り上がりにより、画素電極14中央付近の液面が相対的に低くなり、その液面に応じた表面段差を有する薄膜FL21が形成される。
次いで、図13(c)に示すように、2回目の塗布工程としてノズル(図示を省略)から電子輸送性発光材料を含む第2の量の有機化合物含有液EM22を吐出して画素形成領域Rpx内の画素電極14上の領域に塗布し、加熱乾燥処理を施して、図13(e)に示すように、電子輸送性発光材料の薄膜FL22を形成する。ここで、有機化合物含有液EM22は、1回目の有機化合物含有液EM21と同じ溶液であり、また、第2の量は、図13(d)、(e)に示すように、薄膜FL21上に塗布された有機化合物含有液EM22が、例えば画素電極14の平面パターンに対応する領域には広がるが、その液面の両端部がバンク17の側面に接しない、或いは接したとしても有機化合物含有液EM21とバンク17との間の表面張力が1回目の塗布のときと比べて相対的に大きくならない程度の比較的少ない量に設定されている。
これにより、図13(e)に示すように、1回目の塗布工程に基づく薄膜FL21の表面段差が比較的低く形成されていた画素形成領域Rpx内の画素電極14に対応する領域に、2回目の塗布工程において塗布された有機化合物含有液EM21が十分馴染んで広がるとともにバンク17による迫り上がりを抑えて、少なくとも画素形成領域Rpx内の画素電極14に対応する領域(又はバンク17による段差の影響を受けない領域)に薄膜FL21のへこみを緩和するように薄膜FL22が堆積されるので、平坦化された薄膜FL21及び薄膜FL22の積層構造が略均一な膜厚となる電子輸送性発光層15bが形成される。
なお、本実施形態においても、図10に示した場合と同様に、画素形成領域Rpxに塗布される有機化合物含有液EM21、EM22を、図示の都合上、便宜的に液滴状に示したが、ノズルプリンティング法を適用した場合には液流状に吐出される。また、図13(a)、(c)に示した1、2回目の有機化合物含有液EM21、EM22の塗布工程においては、上述した正孔輸送層15aの形成工程と同様に、ノズルNZLを図面に垂直方向(すなわち、図1、図9に示した絶縁性基板11の列方向)に走査させつつ往復動作させ、かつ、往路と復路で異なる列(同色となる次の列)の画素形成領域Rpxに塗布されるように、当該ノズルもしくは絶縁性基板11が載置されたステージを移動制御する。
ここで、1、2回目の有機化合物含有液EM21、EM22の量(第1及び第2の量)を変化させる手法としては、ノズルからの有機化合物含有液の吐出量自体を変化させる手法のほか、図9に示したような走査経路での塗布工程において、ノズルもしくはステージの移動速度(すなわち塗布走査速度)を変化させることにより、上記第1及び第2の量を任意に制御するものであってもよい。
また、図1に示したように、RGB3色の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)が各色ごとに列方向に配列され、かつ、RGBの3色が繰り返し配列された表示パネル10においては、各色ごとにノズルを3列おきに往路走査と復路走査を繰り返して絶縁性基板11の全域を走査することにより3色分の塗布動作を実行し、このような動作を図13(a)、(c)のように2回繰り返してRGBの各色に対応した電子輸送性発光層15bを形成する。
このように、本実施形態に係る表示装置の製造方法によれば、有機化合物含有液を塗布して発光層(例えば電子輸送性発光層)を形成する工程において、ノズルから有機化合物含有液を複数回に分けて塗布し、各回ごとに加熱乾燥処理を施して発光層の一部となる薄膜を順次積層形成するとともに、少なくとも最終回に塗布される有機化合物含有液の量を、それ以前の回に塗布される有機化合物含有液の量よりも少なくして、最終回の塗布により形成される薄膜の被覆領域を、それ以前の回の塗布により形成される薄膜の被覆領域よりも狭く(小さく)なるように制御することにより、複数の薄膜を積層してなる発光層の全体の膜厚を均一化することができる。
また、発光層となる複数の薄膜を順次積層形成し、各薄膜の被覆領域が変化するように制御することにより、絶縁性基板上に連続して突出するバンクによる段差の影響を抑制して、画素電極上の発光層を平坦化することができる。
したがって、上述した第1の実施形態と同様に、有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)の膜厚のバラツキに起因する有機EL層(有機EL素子)の劣化や発光輝度のずれを抑制して、信頼性や表示画質に優れた表示パネルを提供することができる。
ノズルにおける単位時間の有機化合物含有液の排出量が1回目との塗布と2回目以降で同じ場合、塗布量を減らすためにノズルの走査速度を2回目以降早くすればよい。
なお、上述した具体例においては、(1)の手法における有機EL層(電子輸送性発光層)の形成方法について説明したが、(2)の手法においては、具体的には、ノズルから有機化合物含有液を複数回に分けて塗布し、各回ごとに加熱乾燥処理を施して発光層の一部となる薄膜を順次積層形成する際に、少なくとも最終回(図13に示した塗布工程においては2回目)の塗布工程における絶縁性基板の温度を高く設定して、それ以前の回の塗布工程における有機化合物含有液よりも速く(例えばバンク側面に到達する前に)乾燥するようにし、最終回の塗布により形成される薄膜の被覆領域を、それ以前の回の塗布により形成される薄膜の被覆領域よりも狭く(小さく)なるように制御する。
また、(3)の手法においては、具体的には、ノズルから有機化合物含有液を複数回に分けて塗布し、各回ごとに加熱乾燥処理を施して発光層の一部となる薄膜を順次積層形成する際に、塗布面となる正孔輸送層15aにおける有機化合物含有液に対する親液性が、有機化合物含有液を塗布して形成された薄膜における有機化合物含有液に対する親液性よりも大きくなるように、有機化合物含有液をなる発光材料や有機溶媒を選択して、少なくとも最終回(図13に示した塗布工程においては2回目)の塗布工程における有機化合物含有液の広がりを、それ以前の回の塗布により形成される薄膜の被覆領域よりも狭く(小さく)なるように制御する。
このような(2)、(3)の手法によっても、複数の薄膜を積層してなる発光層(例えば電子輸送性発光層)の全体の膜厚を均一化することができる。
ところで、上述した第1及び第2の実施形態においては、有機化合物含有液が画素形成領域Rpxを越えて漏洩しないように絶縁性基板11表面から連続的に突出するようにバンク17が形成され、当該バンク17により画定された画素形成領域Rpxに有機化合物含有液を塗布する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バンクを用いることなく各画素形成領域が規定された絶縁性基板に有機化合物含有液を塗布して発光層を形成する場合であっても良好に適用することができる。以下に、具体的に説明する。
図14は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法における有機EL層(電子輸送性発光層)の形成工程の他の例を示す概念図である。なお、図14においては、有機化合物含有液を塗布する工程を概念的に示すために図示を簡略化し、便宜的に絶縁性基板上に画素電極や絶縁膜が直接形成された断面構造を示した。
本具体例に係る表示装置の製造方法は、まず、図14(a)に示すように、絶縁性基板11上に所定の配列(表示画素に対応する配列)で形成された複数の画素電極14間に、隣接する表示画素相互の境界となる絶縁膜13(上述した絶縁膜13a、13bに相当する)が形成され、少なくとも画素形成領域Rpx内に露出する画素電極14の上面を有機化合物含有液に対して親液化するとともに、絶縁膜13表面を有機化合物含有液に対して撥液化する。
次いで、各画素形成領域Rpxを含む絶縁性基板11全域に正孔輸送材料を含む有機化合物含有液を塗布して、少なくとも画素電極14上に正孔輸送層15aを形成する。このとき、有機化合物含有液は画素電極14上のみならず絶縁膜13上にも跨って塗布されるので、正孔輸送層15aは画素電極14と絶縁膜13との間の段差によって絶縁膜13上において隆起している。その後、図14(a)に示すように、1回目の塗布工程として電子輸送性発光材料を含む第1の量の有機化合物含有液EM31を吐出して絶縁膜13に囲まれた画素形成領域Rpx内に塗布し、加熱乾燥処理を施して、図14(b)に示すように、電子輸送性発光材料の薄膜FL31を形成する。
ここで、各表示画素PIX(画素形成領域Rpx)間に形成された絶縁膜13によって隆起している正孔輸送層15aは、画素電極14上において相対的に凹んでいるので第1の量の有機化合物含有液EM31も正孔輸送層15aの凹凸に影響され、有機化合物含有液EM31の液面は、画素電極14中央上の領域の液面が相対的に低くなり、その液面に応じた表面段差を有する薄膜FL31が形成される。
次いで、図14(c)に示すように、2回目の塗布工程として電子輸送性発光材料を含む第2の量の有機化合物含有液EM32を吐出して画素形成領域Rpx内の画素電極14上の領域に塗布し、加熱乾燥処理を施して、図14(e)に示すように、電子輸送性発光材料の薄膜FL32を形成する。ここで、有機化合物含有液EM32は、1回目の有機化合物含有液EM31と同じ溶液であり、また、第2の量は、図14(d)、(e)に示すように、薄膜FL31上に塗布された有機化合物含有液EM32が、例えば画素電極14の平面パターンに対応する領域には広がるが、その液面の両端部が画素形成領域Rpxを画定する絶縁膜13上までは広がらない程度の比較的少ない量に設定されている。
これにより、図14(e)に示すように、1回目の塗布工程に基づく薄膜FL31の表面段差が比較的低く形成されていた画素形成領域Rpx内の画素電極14に対応する領域に、2回目の塗布工程において塗布された有機化合物含有液EM31が十分馴染んで広がり、少なくとも画素形成領域Rpx内の画素電極14に対応する領域に薄膜FL31及び薄膜FL32を積層してなる、略均一な膜厚を有する電子輸送性発光層15bが形成される。
このように、本実施形態に係る表示装置の製造方法によれば、上述した各実施形態に示したように、絶縁性基板上に連続して突出するバンクを形成することなく画素電極上に均一な膜厚を有する発光層(電子輸送性発光層)を形成することができる。
したがって、上述した各実施形態と同様に、有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)の膜厚のバラツキに起因する有機EL層(有機EL素子)の劣化や発光輝度のずれを抑制して、信頼性や表示画質に優れた表示パネルを提供することができる。
なお、図13、図14に示した表示装置の製造方法においては、有機化合物含有液の塗布動作を2回実行する場合について説明したが、3回以上の複数回塗布動作を実行するものであってもよい。この場合、最終回の塗布動作において形成される薄膜の被覆領域を、それ以前の回の塗布動作により形成される薄膜の被覆領域よりも狭く(小さく)なるように制御するものであればよい。
(具体的な実験データによる効果の検証)
次に、上述した各実施形態について、さらに具体的な実験データを示して効果を検証する。
上述した第1実施形態において、1ライン240画素にして、1画素における画素電極14の開口部が縦266.5μm、横64μmで、画素電極14の親液化処理として酸素プラズマ処理を行ったものについて1回塗り、2回塗り、3回塗りの塗り総量が同じになるように設定して120番目の表面(中央の画素)の状態を測定した。ポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料を用いた2.0wt%キシレン溶液の塗布を行った。
図15は3回塗り、2回塗りの膜の表面の段差を測定したグラフである。
3回塗りでは、ノズルNZLの塗布走査速度が2.5m/sec、基板11の加熱温度が40℃、総塗布流量が80.87μl/minに設定し、流量のバラツキ(3σ値)が1.10μl/minであった。図15から明らかなように、膜表面の凹凸ばらつきが最も小さい結果となった。
2回塗りでは、ノズルNZLの塗布走査速度が1.5m/sec、基板11の加熱温度が40℃、総塗布流量が79.55μl/minに設定し、流量のバラツキ(3σ値)が1.07μl/minであった。膜表面の凹凸ばらつきが3回塗りより凹凸の程度が多少大きく見られた。
図16は1回塗りの膜の表面の段差を測定したグラフである。
1回塗りでは、ノズルNZLの塗布走査速度が1m/sec、基板11の加熱温度が40℃、総塗布流量が79.12μl/minに設定し、流量のバラツキ(3σ値)が1.11μl/minであった。1回塗りは膜厚が2回塗り、3回塗りより薄く、また、大きくばらつきが見られた。
図17は、3回塗りにおいて、1ライン240画素のうち6画素ごとに1画素の膜の表面の膜厚を測定したものであり、これらの測定を複数のラインで行い、最小値、最大値、平均値を求めたものである。最大値と最小値の差が膜厚の5%以内であった表示画素は100%であり、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の2%以内であった表示画素は97.5%であり、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の1.5%以内であった表示画素は77.5%であった。
図18は、2回塗りにおいて、1ライン240画素のうち6画素ごとに1画素の膜の表面の膜厚を測定したものであり、これらの測定を複数のラインで行い、最小値、最大値、平均値を求めたものである。最大値と最小値の差が膜厚の5%以内であった表示画素は100%であり、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の2%以内であった表示画素は72.5%であり、膜厚の平均値に対する最大値と最小値の差が膜厚の1.5%以内であった表示画素は17.5%であった。
また、第2実施形態において、1ライン240画素にして、1画素における画素電極14の開口部が縦266.5μm、横64μmで、画素電極14の親液化処理として酸素プラズマ処理を行ったものについて2回塗りでの横方向での膜厚のばらつきを測定した。ポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料を用いた2.0wt%キシレン溶液の塗布を行った。
2回塗りにおいて、基板11の加熱温度が40℃とし、1回目の塗布での塗布流量が84〜86μl/min、ノズルNZLの塗布走査速度が3.0m/secに設定し、2回目の塗布での塗布流量が46〜50μl/minと1回目より少なくし、ノズルNZLの塗布走査速度が1.0m/secから0.2m/secごとに上昇して3.0m/secまでの11パターンに設定した。
図19は、1回目の塗布での塗布流量が84.66μl/min、流量のバラツキ(3σ値)が1.37μl/min、2回目の塗布での塗布流量が46.86μl/min、流量のバラツキ(3σ値)が2.07μl/minであったときの画素の横方向での膜厚のバラツキを示すものであり、左側及び右側で高いのは、バンク17による影響である。ここで、画素内の膜厚が、膜厚の最小値(62.5nm)から最小値の110%となる68.75nmまでの間(最小値から+10%以内;図中では便宜的にハッチングを施して表記)に収まる横方向の長さが29μmあった。
また、図20は、2回目のノズルNZLの塗布走査速度をそれぞれ変調した場合の、それぞれの画素内の膜厚が、最小値から最小値の110%のまでの間(最小値から+10%以内)に収まる画素の横方向の長さをプロットしたグラフであり、ノズルNZLの塗布走査速度1.6m/sec〜2.4m/secが、画素の横方向の長さが28μmを越えて最も長かった。図21は、2回目のノズルNZLの塗布走査速度をそれぞれ1.2m/sec、2.2m/sec、2.8m/secとしたときの画素の横方向での表面の高さを示すグラフである。2回目のノズルNZLの塗布走査速度が1.4m/sec以下では、塗布走査速度が遅い(塗布量が多い)ため、バンク17の際部への吸い上げ量も多く、バンク17の頂点部への乗り上げが見られ、また、画素中央が薄くなってしまっている。
2回目のノズルNZLの塗布走査速度が2.6m/sec以上では、バンク17の際部に到達する前に乾燥する割合が高くなり、バンク17の際部よりやや中央寄りが突出するメニスカスが形成されている。乾燥速度が早くバンク17による吸い上げが抑えられ、また塗布走査速度が早い(塗布量が少ない)ため、平坦性が低下したと考えられる。
2回目のノズルNZLの塗布走査速度が1.4m/sec以下のように、塗布量が多いときは、基板11の加熱温度を上げる、もしくは低沸点溶媒を用い、乾燥速度を早めることによって膜厚の均一性の改善が可能となる。つまり、バンク17の頂点部やバンク17の際部へ吸い上がる前に乾燥しやすくなるため、平坦性は向上できる。
2回目のノズルNZLの塗布走査速度が2.6m/sec以上のように、塗布量が少ないとき、基板11の加熱温度を下げ、もしくは高沸点溶媒を用い、乾燥速度を遅くさせることによって膜厚の均一性の改善が可能となる。つまり、溶液がバンク17の際部に到達しやすくなるので上述したメニスカスの形成を抑え、平坦性は向上できる。
なお、上述した各実施形態においては、有機EL層が正孔輸送層及び電子輸送性発光層からなる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば正孔輸送兼電子輸送性発光層のみでもよく、正孔輸送性発光層及び電子輸送層でもよく、また、間に適宜担体輸送層が介在してもよく、その他の担体輸送層の組合せであってもよい。
そして、上述した各実施形態に示した表示装置の製造方法は、電子輸送性発光層のような発光層に限定されるものではなく、正孔輸送層や電子輸送層、その他の担体輸送層に対しても良好に適用することができる。さらに、これらの有機EL層(正孔輸送層や電子輸送層、発光層等)に限らず、有機溶液を塗布する湿式成膜法により他の有機膜を形成する場合にも良好に適用することができる。
また、上述した各実施形態においては、ボトムエミッション型の発光構造を有する表示パネルについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、トップエミッション型の発光構造を有するものであってもよい。この場合、画素電極はアルミニウムやクロム等の光反射特性を有する導電性材料により形成され、対向電極はITO等の光透過特性を有する導電性材料により形成されていればよい。
さらに、上述した各実施形態においては、画素電極をアノード電極としたが、これに限らずカソード電極としてもよい。このとき、有機EL層は、画素電極に接する担体輸送層が電子輸送性の層であればよい。