JP2008214713A - 継目無鋼管用ビレットおよび継目無鋼管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C≦0.05%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:20.0〜30.0%、Ni:5.0〜11.0%、Mo:2.5〜4.0%、Al:0.001〜0.100%およびN:0.05〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のS≦0.010%、P≦0.040%であって、ビレット半径をR0、ビレットの穴繰り半径をX、ビレット横断面の中心から任意の偏析部位置までの距離をR、該位置でのMoの偏析度をSとしたとき、ビレットに穴繰り加工を施さない場合は(1)式の関係を満足し、また、穴繰り加工を施す場合は、(2)式の関係を満足する継目無鋼管用ビレット、および該ビレットを用いて製造された継目無鋼管である。
S-2/{(R2/R0 2)×100}-1≦0・・(1)、S-2/{(R2−X2)/(R0 2−X2)×100}-1≦0・・(2)
【選択図】図1
Description
S≦〔2/{(R2/R0 2)×100}〕+1 ・・・(1A)
2)ビレットに穴繰り加工を施す場合
S≦〔2/{(R2−X2)/(R0 2−X2)×100}〕+1 ・・・(2A)
(b)上記(a)に記載の関係を満足させるためには、下記の方法を用いることができる。
扁平率の小さい鋳型を用いて鋳造するか、または鋳込方法や冷却方法を調整することにより偏析部の位置が鋳片の中央部に位置するように鋳造し、ビレット中心から任意の偏析部の位置までの距離(R)を小さくする。
上記1)の他に、均熱時間を調整することにより、Moを拡散させて偏析度(S)を低下させる。このとき、鋳造コスト、均熱コストなどを含めたトータル製造コストが最小となるように、操業条件を決定する。
(2)質量%で、C:0.05%以下、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:20.0〜30.0%、Ni:5.0〜11.0%、Mo:2.5〜4.0%、Al:0.001〜0.100%およびN:0.05〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のSが0.010%以下、Pが0.040%以下であって、ビレット半径をR0、穴繰り加工されたビレット横断面において中心から任意の偏析部の位置までの距離をR、該任意の偏析部の位置でのMoの偏析度をS、穴繰り半径をXとしたとき、R0、R、SおよびXが下記(2)式で表される関係を満足することを特徴とする継目無鋼管用ビレット(以下、「第2発明」と記す)。
(3)前記Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、W:0.1〜3.0%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.05〜0.30%、Ti:0.005〜0.030%およびB:0.0005〜0.0050%のうちの1種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の継目無鋼管用ビレット(以下、「第3発明」と記す)。
1−1 ビレット寸法、偏析部の位置およびMoの偏析度の適正な相互関係
本発明者らは、ビレット半径、ビレット中心から偏析部の位置までの距離およびMoの偏析度の間の適切な相互関係、さらに、ビレットに穿孔圧延などの熱間製管を行うための穴繰り加工を施す場合については、穴繰り半径をも加えた各量の間の適切な相互関係を求めるため、後述する実施例にて得られた試験結果を整理し、下記の関係を得た。
S≦〔2/{(R2−X2)/(R0 2−X2)×100}〕+1 ・・・(2A)
したがって、上記の関係から、ビレットに穴繰り加工を施さない場合には、第1発明で規定する前記(1)式により表される関係を、また、ビレットに穴繰り加工を施す場合には、第2発明で規定する前記(2)式により表される関係を、満足する必要のあることが判明した。
上記(1A)式または(2A)式で表されるビレット寸法、偏析部の位置およびMoの偏析度の相互関係を満足するビレットを製造するには、下記の方法を採用することが好ましい。
鋳造により鋳片内部に発生した偏析部は、ほぼそのままビレット内部に偏析部として残存する。そのため、ビレットの横断面における比率{(R2/R0 2)×100}または{(R2−X2)/(R0 2−X2)×100}の値を小さくするためには、横断面の扁平比(長辺と短辺の比)の小さい鋳型を用いて鋳造するか、または鋳造中の冷却方法を含めた鋳造方法を調整することにより、極力、偏析部が鋳片の中心部に位置するように鋳造することが好ましい。このような鋳造方法により、ビレット中心から任意の偏析部の位置までの距離(R)を小さくすることが可能となる。
上記1)とあわせて、偏析部におけるMoの偏析度(S)を低減する方法としては、均熱(ソーキング)によるMoの偏析度の低減効果を活用することが効果的である。均熱温度は、高温であるほど、偏析部における固相内拡散によりMoなどの偏析元素が高濃度領域から低濃度領域に向かって移動しやすくなり、その結果、偏析度が軽減されやすい。
2−1 必須構成元素
C:0.05%以下
Cは、鋼の強度を向上させる作用を有する元素であるが、その含有率が0.05%を超えて高くなると鋼中に炭化物が析出しやすくなり、耐食性が劣化する。このため、C含有率は0.05%以下とした。なお、C含有率は鋼の強度向上のため、0.01%以上とすることが好ましい。
Siは、鋼の精錬過程において脱酸剤として作用し、また、鋼の耐水蒸気酸化性の改善に有効な元素である。しかし、その含有率が1.00%を超えて高くなると、加工性を害し、また、金属間化合物の生成を促進しやすくなって、熱間加工性を低下させることから、含有率を1.00%以下とした。一方、Siは、鋼の強度を向上させる作用も有するので、前記の耐水蒸気酸化性改善および強度向上の効果を得るためには0.10%以上含有させる必要がある。含有率の好ましい範囲は、0.15〜0.50%である。
Mnは、鋼の熱間加工性を改善する作用を有する元素であり、その効果を得るためには、0.1%以上を含有させる必要がある。一方、その含有率が1.5%を超えて高くなると、鋼を硬化させ、加工性、溶接性および耐食性の劣化を招く。このため、Mnの含有率の範囲を0.1〜1.5%とした。含有率の好ましい範囲は0.1〜1.0%である。
Sは、鋼の耐食性、靭性および熱間加工性に有害な不純物元素であり、その含有率が0.010%を超えて高くなると、圧延時に疵が発生しやすくなる。したがって、その含有率は0.010%以下に抑える必要があり、さらに、可能な限り低くするのが好ましい。
Pは、Sと同様に、鋼の耐食性、靭性および熱間加工性に有害な不純物元素であり、その含有率が0.040%を超えて高くなると、圧延時に疵が発生しやすくなる。したがって、その含有率は0.040%以下に抑える必要があり、さらに、できる限り低くするのが好ましい。
Crは、フェライト相を安定化させる作用を有する元素であり、その含有率が20%未満では、二相ステンレスとして必要な鋼組織が得られず、十分な耐食性を確保できない。一方、その含有率が30.0%を超えて高くなると、金属間化合物の析出が顕著になり、耐食性のみならず、熱間加工性や溶接性も劣化する。このため、Cr含有率は20.0〜30.0%の範囲とした。なお、Cr含有率の好ましい範囲は22.0〜27.0%である。
Niは、オーステナイト相を安定化させる作用を有する元素であり、その含有率が5.0%未満では、鋼組織中のフェライト量が多くなりすぎて、二相ステンレス鋼としての特徴が消失する。フェライト相が多くなると窒化物が析出しやすくなり耐食性が劣化する。一方、Ni含有率が11.0%を超えて高くなると、フェライト相が少なくなり、二相ステンレス鋼としての特徴が薄れる。また、金属間化合物が析出し、靭性や加工性を損なうことになる。このため、Ni含有率は5.0〜11.0%の範囲とした。Ni含有率の好ましい範囲は5.0〜10.0%である。
Moは、鋼中に固溶して強度を上昇させる固溶強化元素である。また、耐食性、特に耐孔食性および耐隙間腐食性を向上させるためにも有効な元素であり、上記の効果を得るには、その含有率を2.5%以上とする必要がある。一方、Mo含有率が4.0%を超えて高くなると、金属間化合物が析出し、靭性や加工性の劣化を招く。このため、Mo含有率は2.5〜4.0%とした。Mo含有率の好ましい範囲は2.5〜3.5%である。
Alは、鋼の脱酸作用を有する元素である。その効果を得るためには、0.001%以上を含有させる必要がある。しかし、Al含有率が0.100%を超えて高くなると、AlNとして析出し、靱性および耐食性の劣化を招くので、Al含有率は0.100%以下とした。Al含有率の好ましい範囲は0.001〜0.040%である。ここで、Al含有率とは、酸可溶Al(sol.Al)の含有率を意味する。
Nは、Cr、Mo、Wなどのフェライト相形成元素を比較的多く含有する鋼の熱的安定性および耐食性を向上させるのに有効な元素である。上記の効果を得るには、N含有率を0.05%以上とする必要がある。一方、その含有率が0.50%を超えて高くなると、熱間加工性が低下するのみならず、鋼中に窒化物が生成し、溶接時の靱性および耐食性が低下する。このため、N含有率の適正範囲は0.05〜0.50%とした。N含有率の好ましい範囲は0.20〜0.40%である。
Cu、W、Nb、V、Ti、BおよびCa
これらの元素のうち、Cu、W、Nb、V、TiおよびBは、鋼の耐酸化性、耐食性、クリープ強度などを向上させる効果を有する元素であり、含有してもしなくてもよいが、これらのうちから選ばれた1種以上を下記の含有率の範囲内で含有させることにより、上記の効果を得ることができる。また、Caは、鋼中の介在物を安定化かつ無害化することにより靭性や熱間加工性を向上させる作用を有する元素である。これらの効果を得たい場合には、下記の含有率の範囲内で含有させることにより、その効果を得ることができる。
Cuは、オーステナイト安定化元素として鋼組織を安定にし、また鋼の耐酸化性および耐食性の改善に有効な元素である。上記の効果を要求される場合には、0.1%以上を含有させることにより、これらの効果を得ることができる。しかし、その含有率が2.0%を超えて高くなると、クリープ強度の低下や熱間加工性の劣化を招く。このため、Cu含有率は0.1〜2.0%の範囲とすることが好ましい。含有率のさらに好ましい範囲は0.1〜1.8%である。
Wは、クリープ強度を上昇させる作用を有する元素であり、耐食性、特に耐孔食性および耐隙間腐食性を向上させるのにも有効な元素である。0.1%以上を含有させることにより、上記の効果を得ることができる。一方、Wが3.0%を超えて多く含有されると、靭性や加工性を損なう。このため、Wの含有率は0.1〜3.0%の範囲とすることが好ましい。Wのさらに好ましい含有率の範囲は0.1〜2.5%である。
Nbは、CおよびNと結合して炭窒化物を形成し、鋼の強度およびクリープ強度の向上に有効な作用を発揮する元素である。0.005%以上を含有させることにより、上記の効果を得ることができるが、一方、その含有率が0.20%を超えて高くなると、靭性、溶接性またはクリープ強度が損なわれる。このため、Nbの含有率は0.005〜0.20%の範囲とすることが好ましい。Nb含有率のさらに好ましい範囲は0.005〜0.15%である。
Vは、CおよびNと結合して炭窒化物を形成し、鋼の強度およびクリープ強度の向上に有効な作用を発揮し、また、耐食性を向上させる作用も有する元素である。その含有率を0.05%以上とすることにより上記の効果を得ることができるが、一方、その含有率が0.30%を超えて高くなると、逆にクリープ強度の低下や耐食性の低下を招く。したがって、Vの含有率は0.05〜0.30%の範囲とすることが好ましい。V含有率のさらに好ましい範囲は0.10〜0.25%である。
Tiは、炭窒化物を形成し、鋼の強度およびクリープ強度を向上させる作用を有する元素である。その含有率が0.005%未満では十分な効果が得られず、一方、0.030%を超えて高くなると、鋼の靭性を損なう。このため、Tiの含有率は0.005〜0.030%の範囲とすることが好ましい。Tiのさらに好ましい含有率の範囲は0.005〜0.020%である。
Bは、焼入れ後の強度向上、およびクリープ強度の向上に有効であり、また、結晶粒界へのSの偏析を抑制して熱間加工性を向上させる作用を有する元素である。その含有率が0.0005%未満では十分な効果が得られず、一方、含有率が0.0050%を超えて高くなると、溶接性、加工性または耐食性の劣化を招く。上記の理由から、Bの含有率は0.0005〜0.0050%とすることが好ましい。B含有率のさらに好ましい範囲は0.0005〜0.0040%である。
Caは、鋼中で酸化物を形成し、介在物を安定化かつ無害化することにより靭性を向上させ、また熱間加工性も向上させる作用を有する元素である。0.0001%以上を含有させることにより、上記の効果を得ることができる。一方、その含有率が0.0060%を超えて高くなると、鋼の靭性を損なう。このため、Caを含有させる場合は、その含有率の範囲を0.0001〜0.0060%とするのが好ましい。Ca含有率のさらに好ましい範囲は0.0001〜0.0035%である。
電気炉、AOD炉精錬、VOD炉精錬およびバブリング処理の一連の工程により、表1に示す化学成分組成を有する供試鋼を溶製した。
試験番号1〜29は、本発明で規定する条件を満足する本発明例についての試験であり、試験番号30〜34は、本発明で規定する条件を満足しない比較例についての試験である。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.05%以下、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:20.0〜30.0%、Ni:5.0〜11.0%、Mo:2.5〜4.0%、Al:0.001〜0.100%およびN:0.05〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のSが0.010%以下、Pが0.040%以下であって、ビレット半径をR0、ビレット横断面において中心から任意の偏析部の位置までの距離をR、該任意の偏析部の位置でのMoの偏析度をSとしたとき、R0、RおよびSが下記(1)式で表される関係を満足することを特徴とする継目無鋼管用ビレット。
S−〔2/{(R2/R0 2)×100}〕−1≦0 ・・・・(1) - 質量%で、C:0.05%以下、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:20.0〜30.0%、Ni:5.0〜11.0%、Mo:2.5〜4.0%、Al:0.001〜0.100%およびN:0.05〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のSが0.010%以下、Pが0.040%以下であって、ビレット半径をR0、穴繰り加工されたビレット横断面において中心から任意の偏析部の位置までの距離をR、該任意の偏析部の位置でのMoの偏析度をS、穴繰り半径をXとしたとき、R0、R、SおよびXが下記(2)式で表される関係を満足することを特徴とする継目無鋼管用ビレット。
S−〔2/{(R2−X2)/(R0 2−X2)×100}〕−1≦0 ・・・・(2) - 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、W:0.1〜3.0%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.05〜0.30%、Ti:0.005〜0.030%およびB:0.0005〜0.0050%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の継目無鋼管用ビレット。
- 前記Feの一部に代えて、さらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.0060%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の継目無鋼管用ビレット。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の継目無鋼管用ビレットを用いて製造された継目無鋼管。
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- 2007-03-06 JP JP2007055897A patent/JP5082509B2/ja active Active
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