以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図、図2は同機構部の平面説明図である。
この画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(色を区別しないときは「記録ヘッド7」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、各色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の液体吐出ヘッドで構成することもできる。
また、キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送するため、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
また、図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニット55が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット55は搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。この維持回復機56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット61内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ3は維持回復機構55側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
次に、記録ヘッド7を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図3では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU211と、CPU211が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ34にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なっている。
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
次に、上記の画像形成装置によって印刷画像を出力するための本発明に係る画像形成方法をコンピュータに実行させる本発明に係るプログラムを搭載した画像処理装置との組合せで構成される本発明に係る画像形成システムの一例について図6を参照して説明する。
この印刷システム(画像形成システム)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ500とが、所定のインターフェイス又はネットワークで接続されて構成されている。
画像処理装置400は、図7に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインターフェイスを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しないが、光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインターフェイス(外部I/F)407が接続されている。
画像処理装置400の記憶装置406には、本発明に係るプログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。この画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、この画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
ここで、画像処理装置400側のプログラムで本発明に係る画像処理方法を実行する例について図8の機能ブロック図を参照して説明する。
これはほとんどの画像処理を画像処理装置としてのPCのようなホストコンピュータで行なう場合であり、比較的安い廉価機のインクジェット記録装置で好適に用いられている構成である。
画像処理装置400(PC)側の本発明に係るプログラムであるプリンタドライバ411は、アプリケーションソフトなどから与えられた画像データ410をモニタ表示用の色空間から記録装置(画像形成装置)用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行なうCMM(Color Management Module)処理部412、CMYの値から黒生成/下色除去を行なうBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部413、記録装置の特性やユーザーの嗜好を反映した入出力補正を行なうγ補正処理部414、画像データに対して中間調処理を行なう中間調処理部415、中間調処理の結果を記録装置から噴射するドットの印写順序のパターン配置に置き換えるドット配置処理部416(中間調処理の一部とすることもできる。)、中間調処理及びドット配置処理で得られた印刷画像データであるドットパターンデータを各ノズル位置に合わせてデータ展開するラスタライジング部417を含み、ラスタライジング部417の出力418をインクジェットプリンタ500に送出する。
次に、インクジェットプリンタ500側で本発明に係る画像処理方法の一部を実行する例について図9の機能ブロック図を参照して説明する。
これは、高速で処理することができるため、高速機で好適に用いられている構成である。
画像処理装置400(PC)側のプリンタドライバ421は、アプリケーションソフトなどから与えられた画像データ410をモニタ表示用の色空間から記録装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行なうCMM(Color Management Module)処理部422、CMYの値から黒生成/下色除去を行なうBG/UCR(black eneration/ Under Color Removal)処理部423と、記録装置の特性やユーザーの嗜好を反映した入出力補正を行なう本発明に係るγ補正処理部424を有し、このγ補正処理部424で生成した画像データをインクジェットプリンタ500に送出する。
一方、インクジェットプリンタ500のプリンタコントローラ511(制御部200)は、画像データに対して中間調処理を行なう中間調処理部415、中間調処理の結果を記録装置から噴射するドットの印写順序のパターン配置に置き換えるドット配置処理部416(中間調処理の一部とすることもできる。)、中間調処理及びドット配置処理で得られた印刷画像データであるドットパターンデータを各ノズル位置に合わせてデータ展開するラスタライジング部517を含み、ラスタライジング部517の出力を印刷制御部207に与える。
本発明に係る画像形成方法は、図8及び図9のいずれの構成であっても好適に適用することができる。ここでは、図8に示す構成のように、インクジェット記録装置側では、装置内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。
すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400(ホストコンピュータ)内にソフトウェアとして組み込まれたプリンタドライバ411で画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)が生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され,インクジェットプリンタ500が印刷出力される例で説明する。
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。なお、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置(ホストコンピュータ)400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換される。
その後、これらの記録ドットパターン(画像データ410)に対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、上述したように、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインタフェースを経由してインクジェット記録装置500へ転送されるものである。
次に、本発明に係る画像形成方法におけるドット配置について説明する。
吸収性の悪い用紙では、着弾したインクが用紙に吸収しきれないため、インクの伸びが悪く、紙面に溢れたインクがビーディングといわれる濃度ムラを引き起こす。
インク付着量を抑え、紙面に溢れるインク量を少なくすればビーディングは抑えられるが、このような吸収性の悪い用紙はインクの伸びが悪いため、紙面の埋まりが悪く、記録ヘッドの製造バラツキや用紙の送り誤差などの種々の原因によっておこるドットの形成位置ズレによって、白スジが発生し、画像品質を劣化させる原因となる。
これを解決する方法として、前述したように、従来からマルチパス印字という方法が知られている。このマルチパスによるドット形成の一例について図10を参照して説明すると、例えば2パス印字を行う場合、1パス目(記録ヘッドの1回目の走査)でドットD11を印字し、2パス目(記録ヘッドの2回目の走査)でドットD12を印字する。このように、マルチパス印字は、複数回記録ヘッドを走査することで主走査方向の記録ラインを形成するため、隣接するドットにインク乾燥時間を確保でき(特に、上下左右に隣接するドット間に時間差がつけられるために有効である。)、ビーディングが発生しにくい。また、異なるノズルで主走査方向の記録ラインを形成するため、ズレが分散され埋まりの悪さが目立ちにくくなる。
この図10は2パスの例であるが、1パス目に形成されるドットD11と2パス目に形成されるドットD12に乾燥時間が取れるために濃度ムラがおきにくい。また、ズレに対しても1つのラインを複数のノズルを利用して形成するためズレが分散される。例えば、図11(a)に示すように、1パスで印字を行った場合には図で上から2段目と3段目との中段のラインにずれ(隙間500)が生じている。これに対して、同じ記録ヘッドを用いて2パス印字を行った場合には、図11(b)に示すように、2パス目は別のノズルで同じラインを形成するためズレが分散されて、結果的にずれが目立ちにくくなる。
これらの図10及び図11では2パスの例で説明したが、パス数を増やせばより、インク乾燥時間やドット形成位置の分散性が稼げるため画像品質は良好になる。
しかしながら、このマルチパス印字は、1つの記録ラインに対して複数回記録ヘッドを走査する必要があるため、印字スループットが低下することになる。また、ラインプリンタのようなライン型画像形成装置では通常ヘッドを固定して印字を行うため、マルチパス印字を採用することが困難になる。
したがって、印字スル−プットを向上させるには、1パス印字が好ましいが、1パス印字では、1つの記録ラインを1回の走査で形成するため、記録媒体に着弾したインクの乾燥時間が確保できないことから、ビーディングが発生しやすく、ズレの分散も困難なため埋まりをよくする必要がある。特に、ライン型画像形成装置では、通常1パスによる高速印字となるため、これらの問題は特に顕著に生じる。
そこで、本発明に係る画像形成方法では、複数のサイズのドットを組み合わせることで、主走査方向(記録ヘッドのノズル列と直交する方向)に連続するドット列にくびれを持たせ、副走査方向(記録ヘッドのノズル列に沿う方向)に隣接するくびれを持ったドット列同士を山同士が重なりにくいように配置することで、ビーディングを低減するとともにドットの埋まりの改善を図っている。
ここでは、圧電アクチュエータ方式の記録ヘッドを用いて複数サイズのドットを形成する画像形成装置について説明するが、静電型アクチュエータを用いる静電型ヘッド、発熱抵抗体などのサーマル型アクチュエータを用いるサーマル型ヘッドにおいて、複数サイズのドットを実現するような場合もこれに当てはまる。例えば、複数のサイズの異なる吐出口を有するノズル板を用いたり、あるいは、特性の異なる複数の発熱抵抗体を用いることで、複数のサイズの液滴を吐出させて、複数サイズのドットを形成するようにすることができる。また、ここでは、シリアルプリンタ(シリアル型画像形成装置)について説明を行うが、本発明は、ラインプリンタ(ライン型画像形成装置)についても適用することができる。
一般に、複数サイズのドットを利用して画像を形成するいわゆる多値で画像形成が可能な画像形成装置においては、低階調は小さなドットで紙面を埋め、高階調になるに従い、大きなドットを使って紙面を埋めている。
本発明で課題としているビーディング現象は、ベタ部付近のインク付着量の多い部分で特に問題となる現象である。これは、高階調では大きなドットを使って紙面を埋めるが、記録媒体上でのインクが円形状をしているため、ドット同士の重なり合いが大きくなり、紙面に溢れたインクが濃度ムラを起こすためである。特に、1パス印字においては、隣接するドットが連続して形成されるため、インクの乾燥時間が確保できず、ビーディング現象も顕著になる。この場合、主走査方向のドットは連続して形成される。副走査方向はインターレス処理が入る場合は連続ではないが、マルチパス動作を行わない分、副走査方向の隣接ドットの着弾時間差も小さくなる。
この濃度ムラを抑えるには、インク付着量を抑えることが重要になるが、単純にドットサイズを小さくすると紙面の埋まりが悪くなる。例えば、図12(a)に示すようサイズのドットに対して、図12(b)に示すように相対的に小さなサイズのドットを用いた場合、図12(a)では画像が埋まっているが、同図(b)ではインク付着量が少なくなるものの、ドットのサイズが小さくなる分、隙間501が生じるなど画像の埋まりが悪くなる。特に、1パス印字では、マルチパス印字のようにドットの形成位置のズレを分散させることができないため、ドット形成位置にズレが生じると、抜け部分がスジ上に連なりやすく、図12(b)に示すように、もともとドットの埋まりが悪い場合、いわゆる白スジという現象を引き起こしてしまうことになる。
そこで、本発明においては、図13に示すように、複数サイズのドットのうち最大サイズ(最大径)のドットDlとこれより小さなサイズ(小さな径)のドットDsとを組み合わせて、主走査方向のドット列(ドットが並んだもの)にくびれをつくり、副走査方向に隣接するくびれの山同士が重なりにくいようにドットを形成することで、無駄なインクの重なりを防いで、紙面を埋める。
つまり、液滴を吐出する複数のノズルが並ぶノズル列を有する記録ヘッドから液滴を吐出させ、連続的に配置されるドットで構成されるドット列を含む画像を形成するとき、最大サイズのドットDlとこれより小さなサイズのドットDsとを組み合わせ、記録ヘッドのノズル列に直交する方向(ここでは、主走査方向)のドット列にドットDsでくびれを形成し、かつ、記録ヘッドのノズル列に沿う方向(ここでは、副走査方向)では、互いに隣接するドット列の一方のドット列のくびれ(ドットDsを配置した部分)に対して山となる部分(ドットDlを配した部分)が他方のドット列のくびれに対応する位置に各ドットDl、Dsを配置する。
ここでは、インク量(液滴量)に差をつけることで異なる径のドットを形成し、くびれをつくる例について説明する。
ベタなどのインク付着量の多い階調では、前述した図12(a)に示すように、ドットの重なり部分が多いため紙面にインクが溢れビーディングが起きやすい。ビーディングを抑えるためにはインク付着量を抑えたいが、単純に使用するドットサイズを抑えてしまうと、前述した図12(b)に示すように埋まりが悪くなる。そこで、図14に示すように、異なるサイズドットを組み合わせることで、無駄なインクの重なりを防ぎながら紙面を埋める。
このとき、ドットDlを主走査方向に少なくとも1ドット以上間隔を空けて形成することで、その間にドットDsを入れることでくびれを形成する。このドットDlを配置する間隔については、一定間隔でも良いし、不定間隔でもよい。この実施形態では一定間隔の例について説明する。また、このドットDlを副走査方向に隣接しないようにする、つまり、くびれに対応する山となる部分に隣り合うノズル列のくびれの部分が対応するように配置することで、副走査方向のインク重なり量を低減しビーディングの発生を低減する。
ドットの配置の仕方については、ドットDlとドットDsを、前述した図13に示すように1ドット置きに交互に形成(配置)されることがもっとも効果的である。ただし、ドット径の選び方、印字モード、温湿度、用紙によっては、インク付着量が用紙の許容量を超えてしまうことがあることから、図14に示すようにドットDlを複数ドット置き(この例ではドットDsを3個挟む間隔)で配置することもできる。
この場合、ドットの形成位置ずれが発生してもドットDlとドットDsが完全に離れることがなく、また、インク付着量を記録媒体が許容できるインク付着量以下に抑える必要がある。
そこで、最も大きなサイズのドットDlとこれより小さなサイズのドットDsの組み合わせについて説明する。複数サイズのドットを形成するできる場合において、以下の2つ条件(条件1、条件2)を満たすドットDlとドットDsの組み合わせがあるとき、ドットDlとドットDsを、以下の条件1、条件2を満たす範囲内でドットDlとドットDsのドット径の和が、最大になるように設定する。この条件下では、上述した図13に示すように本発明の効果が高い1ドット置きにドットDlとドットDsを配置するというドット配置が可能になる。
<条件1>
前記最大径のドットDlとこれより小さい径のドットDsのドット径の和がN以上を満たしている。
ここで、N=2×(解像度ピッチ+平均ドット形成位置ズレ量)である。
<条件2>
Pm≧(Pl+Ps)/2の関係を満たしている。
ここで、Pl:前記最大径のドット1つ形成するのに必要な記録液滴量、
Ps:前記最大径より小さいドットを1つ形成するのに必要な記録液滴量、
Pm:記録媒体上に形成される画像が濃度ムラなく形成できる記録媒体の単位画素あたりの最大記録液滴付着量
条件1のように、画像形成時の平均ズレ量を見込んで「N」を設定し、ドットDlとドットDsのドット径の和がN以上を満たすように使用するドットDlとドットDsを選ぶことで、ズレが起きたときにも隣接するドットDlとドットDsが完全に離れきってしまうことはなくなる。つまり、図15(a)に示すように、ドットDlの径とドットDsの径の和(Dls)がN(N=2×(解像度ピッチ+平均ドット形成位置ズレ量)以上の関係を満たしていれば、同図(b)に示すように、ズレがないときにはドットDlとドットDsが重なり、同図(c)に示すように、ズレが発生してもドットDlとドットDsが完全に離れることがなくなる。また、記録液滴量Pl、Psについても、インク付着量を記録媒体が許容できるインク付着量以下に抑えることで、ビーディング発生の危険を回避する。
ここで、条件1のN値算出式において、N値を解像度ピッチとズレ量で求める理由及びN値以上であれば、ズレが起きたときにもドットが完全に離れきってしまうことがなくなるのは、次の理由による。
実際の印字の際には、ノズルの製造バラツキや用紙の送りムラなどの様々な原因から紙面に形成されるドット位置にはバラツキが生じる。特に、1パスで画像を形成するときには、このドットの形成位置のズレによって生じた隙間がスジ状になりやすく障害画像となる。
ビーディングの抑制という観点では、インク付着量を絞りたいが、付着量を減らすとスジが発生する原因になることから、大きなドットの径と小さなドットの径の合計値が、最低でも解像度ピッチにズレ量を加えたものを超えるようにすることで、隙間がライン状に生じにくくする。
例えば、解像度が600dpi=約42μmでズレが10μmほど起こり得る場合、(大ドット径+小ドット径)≧N=2×(42+10)になるドット径のドットDl、Dsを選択する。
なお、副走査方向(図13の上下方向)で平均ズレ量を考慮するため、平均的に離れることが少なくなるが、最大量のズレが起こった場合にズレが発生することはある。
また、上記の2つの条件を満たすドットDlとドットDsがないような場合、つまりは、Nの確保、Pmの値の関係から、インク付着量を抑えざるを得ない場合、次のようにして、ドットDlを使用する割合いを減らすことでインク付着量の調整を行う。
つまり、ドットDlとドットDsを、ドットDlとドットDsの和がN以上になるような条件で設定し、ドットDlを少なくとも主走査方向にT以上の間隔を空けて形成することで、インク付着量の調整を行う。
ここで、Tとは、T≧(Pl−Pm)/(Pm−Ps)を満たすもっとも小さな正の整数である。
このT≧(Pl−Pm)/(Pm−Ps)の関係式は、主走査方向のライン1つあたり、Tドット間隔でドットDlを使った場合の1画素当たりインク付着量が記録媒体の許容値をこえないようにした条件であるため、少なくともTドット以上の間隔を空けてドットDlを配置している限り、インク付着量は記録媒体の許容値をこえることはない。
つまり、1ライン(主走査方向)当たりTドット間隔でドットDlを形成した場合、(T+1)毎にドットDlが入ることになるので、1画素当たりのインク付着量は、図16に示すように、ドットDlのインク付着量をPl、ドットDsのインク付着量をPsとしたとき、(Pl+T×Ps)/(T+1)となる。この結果がPmを超えないようにしているので、Pm≧(Pl+T×Ps)/(T+1)、となる。したがって、T≧(Pl−Pm)/(Pm−Ps)に設定することで、インク付着量が過剰になることがなくなる。
これに対して、単純に「N」を引き下げ、ドットサイズを小さくすると、前述した図12(b)に示すように、ドット同士が離れやすくなり、隙間を作る原因となるが、上述した方法をとることで、図14に示すように、Nを確保しつつドットDlの割合を減らし、インク付着量を抑えることが可能になる。
後述する記録媒体、記録ヘッド、インクによって本発明者らが評価した600dpi、1パス1/2インターレスで画像を形成した場合、Pm=11pl、Pl=15pl、Ps=10plであり、このときT≧4であるため、4ドット以上間隔をあけてドットDlを使用することで、Nを確保したまま、インク付着量を抑えることができることを確認した。
ここで、ドット位置ズレの情報を取得する手段を備えることで、ドット位置ズレ情報に基づいて、つまりズレの程度に応じて、N、Tを設定変更することができる。ズレが大きい場合、埋まりを確保する必要があるため、Nは大きく設定される。Nが大きいと、インク付着量が増加しやすくなるため、Tも大きくなりやすい。
ズレの情報は、ズレをチェックするチャートを印字させ、そこから画像形成装置の使用者にズレ量を入力させてもよいし、スキャナなどからチャートを読み込ませ自動でズレ量を取得してもよい。
また、画像形成装置にセンサ等を搭載することで、画像形成装置周囲の環境情報、例えば、温度、湿度などの情報を取得し、Pm、Tを切り替えることが可能になる。
ビーディングはインクが用紙に吸収されず紙面に溢れることが原因となるため、温湿度が強く影響する。したがって、温度、湿度に応じて、Pm、Tを設定変更することで、インク乾燥性に応じたドット配置が可能になる。例えば温度が高い場合や湿度が低い場合など用紙の乾燥性がよい場合は、ビーディングが起きにくくなるため、Pmを大きくとれ、Tを小さくできる。
さらに、ビーディングや埋まりの状況は解像度やインターレス、パス数などの印字条件にも大きく左右されるため、印字条件によって、Pm、Tを設定することでより最適な条件下で印字ができるようになる。先ず、パス数が多い場合は、インク乾燥時間が稼げるためPmは大きく、Tは小さくできる。次に、解像度については、ドットの記録密度が高くなると、紙面トータルでのインク重なり量(隣接するドット同士のインク重なり量の合計)は多くなるためドット径の観点からはビーディングが起きやすくなる。その代わり、解像度を増やすためインターレス数が増えるため、インク乾燥時間は多く取れるようになる。また、解像度が高くなると、図17(a)〜(c)に示すように、隣接するドット1つ1つの重なり量は小さいためズレには弱くなる。そのため、解像度、パス数、インターレス数を考慮してPmを設定し、Nを確保した上で、PmをこえないようにTを設定することが重要になる。
なお,上記の説明では,所定サイズのドットが最大サイズのドットである場合を例にして説明しているが,これに限るものではなく,例えば前述したように大,中,小のサイズがある場合,中サイズと小サイズの組合せでもよく,もちろんこれ以上のサイズのドットを形成する場合には相対的に所定サイズのドットとこれより小さいサイズのドットを組み合わせればよい。
次に、本発明に係る画像形成システムで使用する記録媒体について説明する。吸収性が低いメディアでは、着弾したインクが紙面に溢れ、ビーディングを起こしやすい。このビーディングを抑えるにはインク付着量を削減したいが、吸収性が低いメディアの上ではインクが広がりづらいため、インク付着量が減ると、紙面が埋めきれなくなってしまう。特に1パス印字においては、インク乾燥時間の確保、ズレの分散が困難なためこれらの問題が顕著になる。したがって、このような吸収性の低いメディアでは、本発明のように異なるサイズのドットを組み合わせることで、無駄なインクの重なりを防いで紙面を埋めることが重要になる。
本発明ではそのような記録媒体(記録用メディアともいう。)として、次に挙げる記録媒体を使用することが好ましい。
記録用メディアは、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記記録用メディアにおいては、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおけるインクの記録用メディアへの転移量は、4〜15ml/m2であり、更には6〜14ml/m2が好ましい。また、純水の記録用メディアへの転移量は、4〜26ml/m2が好ましく、更には8〜25ml/m2がより好ましい。
前記接触時間100msでの前記インク及び純水の転移量が少なすぎると、ビーディングが発生しやすくなることがあり、多すぎると、記録後のインクドット径が所望の径よりも小さくなりすぎることがある。
動的走査吸液計で測定した接触時間400msにおけるインクの記録用メディアへの転移量は、7〜20ml/m2であり、8〜19ml/m2が好ましい。また、純水の記録用メディアへの転移量は、5〜29ml/m2が好ましく、10〜28ml/m2がより好ましい。
前記接触時間400msでの転移量が少なすぎると、乾燥性が不十分であるため、拍車痕が発生しやすくなることがあり、多すぎると、ブリードが発生しやすく、乾燥後の画像部の光沢が低くなりやすくなることがある。
ここで、前記動的走査吸収液計(dynamic scanning absorptometer;DSA,紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88〜92頁、空閑重則)は、極めて短時間における吸液量を正確に測定できる装置である。前記動的走査吸液計は、吸液の速度をキャピラリー中のメニスカスの移動から直読する、試料を円盤状とし、この上で吸液ヘッドをらせん状に走査する、予め設定したパターンに従って走査速度を自動的に変化させ、1枚の試料で必要な点の数だけ測定を行う、という方法によって測定を自動化したものである。紙試料への液体供給ヘッドはテフロン(登録商標)管を介してキャピラリーに接続され、キャピラリー中のメニスカスの位置は光学センサで自動的に読み取られる。具体的には、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水又はインクの転移量を測定した。接触時間100ms及び接触時間400msにおける転移量は、それぞれの接触時間の近隣の接触時間における転移量の測定値から補間により求めることができる。測定は23℃50%RHで行った。
<支持体>
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材繊維主体の紙、木材繊維及び合成繊維を主体とした不織布のようなシート状物質などが挙げられる。
前記紙としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材パルプ、古紙パルプなどが用いられる。前記木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、NBSP、LBSP、GP、TMPなどが挙げられる。
前記古紙パルプの原料としては、財団法人古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。具体的には、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙等のプリンタ用紙;PPC用紙等のOA古紙;アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙等の塗工紙;上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートン等の非塗工紙、などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記古紙パルプは、一般的に、以下の4工程の組み合わせから製造される。
(1)離解は、古紙をパルパーにて機械力と薬品で処理して繊維状にほぐし、印刷インキを繊維より剥離する。
(2)除塵は、古紙に含まれる異物(プラスチックなど)及びゴミをスクリーン、クリーナー等により除去する。
(3)脱墨は、繊維より界面活性剤を用いて剥離された印刷インキをフローテーション法、又は洗浄法で系外に除去する。
(4)漂白は、酸化作用や還元作用を用いて、繊維の白色度を高める。
前記古紙パルプを混合する場合、全パルプ中の古紙パルプの混合比率は、記録後のカール対策から40%以下が好ましい。
前記支持体に使用される内添填料としては、例えば、白色顔料として従来公知の顔料が用いられる。前記白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のような白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等のような有機顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記支持体を抄造する際に使用される内添サイズ剤としては、例えば、中性抄紙に用いられる中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。これらの中でも、中性ロジンサイズ剤又はアルケニル無水コハク酸が特に好適である。前記アルキルケテンダイマーは、そのサイズ効果が高いことから添加量は少なくて済むが、記録用紙(メディア)表面の摩擦係数が下がり滑りやすくなるため、インクジェット記録時の搬送性の点からは好ましくない場合がある。
<塗工層>
前記塗工層は、顔料及びバインダー(結着剤)を含有してなり、更に必要に応じて、界面活性剤、その他の成分を含有してなる。
前記顔料としては、無機顔料、もしくは無機顔料と有機顔料を併用したものを用いることができる。
前記無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、非晶質シリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クロライトなどが挙げられる。これらの中でも、カオリンは光沢発現性に優れており、オフセット印刷用の用紙に近い風合いとすることができる点から特に好ましい。
前記カオリンには、デラミネーテッドカオリン、焼成カオリン、表面改質等によるエンジニアードカオリン等があるが、光沢発現性を考慮すると、粒子径が2μm以下の割合が80質量%以上の粒子径分布を有するカオリンが、カオリン全体の50質量%以上を占めていることが好ましい。
前記カオリンの添加量は、前記塗工層の全顔料100質量部に対し50質量部以上が好ましい。前記添加量が50質量部未満であると、光沢度において十分な効果が得られないことがある。前記添加量の上限は特に制限はないが、カオリンの流動性、特に高せん断力下での増粘性を考慮すると、塗工適性の点から、90質量部以下がより好ましい。
前記有機顔料としては、例えば、スチレン−アクリル共重合体粒子、スチレン−ブタジエン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の水溶性ディスパージョンがある。これら有機顔料は2種以上が混合されてもよい。
前記有機顔料の添加量は、前記塗工層の全顔料100質量部に対し2〜20質量部が好ましい。前記有機顔料は、光沢発現性に優れていることと、その比重が無機顔料と比べて小さいことから、嵩高く、高光沢で、表面被覆性の良好な塗工層を得ることができる。前記添加量が2質量部未満であると、前記効果がなく、20質量部を超えると、塗工液の流動性が悪化し、塗工操業性の低下に繋がることと、コスト面からも経済的ではない。
前記有機顔料には、その形態において、密実型、中空型、ドーナツ型等があるが、光沢発現性、表面被覆性及び塗工液の流動性のバランスを鑑み、平均粒子径は0.2〜3.0μmが好ましく、より好ましくは空隙率40%以上の中空型が採用される。
前記バインダーとしては、水性樹脂を使用するのが好ましい。
前記水性樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかが好適に用いられる。前記水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;ポリウレタン;ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、四級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムの共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等セルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、又はこれらの変性物、ポリエステルとポリウレタンの共重合体等の合成樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉、又は各種変性澱粉、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルとポリウレタンの共重合体、などが特に好ましい。
前記水分散性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体、などが挙げられる。また、メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ヒドロキシプロピレン尿素、イソシアネート等の架橋剤を含有してよいし、N−メチロールアクリルアミドなどの単位を含む共重合体で自己架橋性を持つものでもよい。これら水性樹脂の複数を同時に用いることも可能である。
前記水性樹脂の添加量は、前記顔料100質量部に対し、2〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。前記水性樹脂の添加量は前記記録用メディアの吸液特性が所望の範囲に入るように決定される。
前記着色剤として水分散性の着色剤を使用する場合には、カチオン性有機化合物は必ずしも配合する必要はないが、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択使用することができる。例えば、水溶性インク中の直接染料や酸性染料中のスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基等と反応して不溶な塩を形成する1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー、ポリマーなどが挙げられ、これらの中でも、オリゴマー又はポリマーが好ましい。
前記カチオン性有機化合物としては、例えば、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン縮合物、ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩)、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物、ポリ(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ)、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリ(アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩)、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・二酸化イオウ)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・ジアリルアミン塩酸塩誘導体)、アクリルアミド・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、アクリル酸塩・アクリルアミド・ジアリルアミン塩酸塩共重合物、ポリエチレンイミン、アクリルアミンポリマー等のエチレンイミン誘導体、ポリエチレンイミンアルキレンオキサイド変性物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン塩酸塩等の低分子量のカチオン性有機化合物と他の比較的高分子量のカチオン性有機化合物、例えば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等とを組み合わせて使用するのが好ましい。併用することにより、単独使用の場合よりも画像濃度を向上させ、フェザリングが更に低減される。
前記カチオン性有機化合物のコロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム、トルイジンブルー使用)によるカチオン当量は3〜8meq/gが好ましい。前記カチオン当量がこの範囲であれば上記乾燥付着量の範囲で良好な結果が得られる。
ここで、前記コロイド滴定法によるカチオン当量の測定に当たっては、カチオン性有機化合物を固形分で0.1質量%となるように蒸留水で希釈し、pH調整は行わないものとする。
前記カチオン性有機化合物の乾燥付着量は、0.3〜2.0g/m2が好ましい。前記カチオン性有機化合物の乾燥付着量が0.3g/m2未満であると、充分な画像濃度向上やフェザリング低減の効果が得られないことがある。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性活性剤、非イオン活性剤のいずれも使用することができる。これらの中でも、非イオン活性剤が特に好ましい。前記界面活性剤を添加することにより、画像の耐水性が向上するとともに、画像濃度が高くなり、ブリーディングが改善される。
前記非イオン活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙られる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール、ショ糖などが挙げられる。また、エチレンオキサイド付加物については、水溶性を維持できる範囲で、エチレンオキサイドの一部をプロピレンオキサイドあるいはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドに置換したものも有効である。置換率は50%以下が好ましい。前記非イオン活性剤のHLB(親水性/親油性比)は4〜15が好ましく、7〜13がより好ましい。
前記界面活性剤の添加量は、前記カチオン性有機化合物100質量部に対し、0〜10質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。
前記塗工層には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、その他の成分を添加することができる。該その他の成分としては、アルミナ粉末、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。
前記塗工層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記支持体上に塗工層液を含浸又は塗布する方法により行うことができる。前記塗工層液の含浸又は塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレス、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーターなど各種塗工機で塗工することができる。これらの中でも、コストの点から、抄紙機に設置されているコンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレスなどで含浸又は付着させ、オンマシンで仕上げる方法が好ましい。
前記塗工層液の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形分で、0.5〜20g/m2が好ましく、1〜15g/m2がより好ましい。0.5g/m2未満であるとインクを十分吸収することができないためインクがあふれて文字滲みが生じてしまう。逆に20g/m2を超えると紙の風合いが損なわれ、折り曲げづらくなったり、筆記具で書き加えづらくなるなどの不具合が生じてしまう。
前記含浸又は塗布の後、必要に応じて乾燥させてもよく、この場合の乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜250℃程度が好ましい。
前記記録用メディアは、更に支持体の裏面にバック層、支持体と塗工層との間、また、支持体とバック層間にその他の層を形成してもよく、塗工層上に保護層を設けることもできる。これらの各層は単層であっても複数層であってもよい。
本発明の記録用メディアは、吸液特性が上記本発明の範囲であれば、インクジェット記録用メディアの他、市販のオフセット印刷用コート紙、グラビア印刷用コート紙などであってもよい。
本発明の記録用メディアの坪量は、50〜250g/m2であることが好ましい。50g/m2未満であるとコシがないために搬送経路の途中で記録用メディアが詰まってしまうなどの搬送不良が生じやすい。250g/m2を超えるとコシが大きくなりすぎるため搬送経路の途中にある曲線部で記録用メディアが曲がりきれず、やはり記録用メディアが詰まってしまうなどの搬送不良が生じやすい。
以上のような記録媒体は、ドットが染み込んで広がることがほとんどなく、印刷する際にはドット位置精度の善し悪しが画像品質の劣化に与える影響が大きい。なぜなら、吸収性が低いメディアの上ではインクが広がりづらいため、ドット位置精度が少しでも低くなるとメディアをインクが埋めきらない箇所、つまり、白抜け部が生じてしまうためである。この埋めきれない箇所は画像濃度ムラ、画像濃度低下につながり、画像品質の低下に現れる。
そのような記録媒体に記録する場合に本発明の印写方法を使用すると、ドット位置精度の悪さを画像全体に分散化させるため、画像の品質を低下させない効果が特に大きくなる。
ここで、本発明の画像形成方法を実施するにあたり、使用する画像形成装置としての記録装置について説明する。本発明の画像形成方法は、ドット位置精度が低い場合に画質の低下を防ぐことができるが、ドット位置精度が高い記録装置を使用するとより効果がある。そこで、本発明ではそのような記録装置として、次に挙げる記録装置を使用することを想定している。
記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドのノズル板が撥水性、撥インク性に優れていると、仮に表面張力が低いインクを用いてもインク滴の形成(粒子化)を良好にできる。また、撥水性を高めることによりメニスカスが正常に形成され、インクが噴射する際に一方方向に引っ張られることがなくなり、その結果、インクの噴射曲がりが少なく、ドット位置精度が高い画像を得ることができる。
<撥インク層>
本発明を実施するときに用いられる撥インク層の表面粗さRaは、0.2μm以下にすることが好ましい。表面粗さRaを0.2μm以下にすることで、ワイピング時の拭き残しを低減することができる。
次に、液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)のノズル板について図18及び図19を参照して説明する。
本実施形態では、インクジェットヘッドの基材であるノズル板1711がNiの電鋳により作製され、その表面に膜厚0.1μm以上のシリコーン樹脂皮膜である撥インク膜1712が形成されており、その表面粗さはRa=0.2以下にすることが好ましい。また、撥インク膜1712の膜厚は0.5μm以上であることがより好ましい。インク1703の充填時には、図19(c)に示すように、シリコーン樹脂皮膜による撥インク膜1712とノズル板1711の境界部分にメニスカス(液面)Pが形成される。
ワイピング時の吹き残しを低減することにより、インク滴吐出の際に噴射曲がりが起きにくくなり、着弾位置精度が向上する。これに加え、本発明の画像形成方法を実施することで、同じ着弾精度でも着弾位置バラツキを均等化できるため、より高い画像品質の印刷物を得ることができる。
<ラウンド形状>
インクジェットヘッドのインク吐出用の開口部が開設された面に形成された撥インク膜の該開口部近傍における当該開口部の中心線に垂直な平面での断面積が、基材表面から離れるにつれて順次大きくなっていくよう形成される。
上記した撥インク膜の開口部近傍における形状は、曲面形状であることが好ましい。
上記した開口部の中心線を含む平面での断面における撥インク膜の当該開口部近傍の曲線の曲率半径が、該撥インク膜の厚み以上であることが好ましい。
上記した開口部の中心線を含む平面での断面における撥インク膜の当該開口部縁端から当該開口部近傍の曲線が略円弧曲線をなし、該円弧の曲率半径が、該撥インク膜の厚み以上であることが好ましい。
上記した開口部の中心線を含む平面での断面における撥インク膜の当該開口部縁端を通る接線が、当該端部を含むノズル部材表面からの角度が90度未満であることが好ましい。
ノズル板1711の開口部は、図19中に一点鎖線で示す中心線に垂直な平面による断面が、この中心線を中心とした略円形となるよう開設されている。また、ノズル板1711におけるインク吐出面に形成された撥インク膜1712は、この中心線に垂直な平面による開口部分の断面積がノズル板2から離れるにつれて順次大きくなっていくよう形成されている。
より詳細には、撥インク膜1の開口部分は、図19(a)に示すように、ノズル板1711の開口部縁端から開口部近傍の曲線が曲率半径rのラウンド形状となっている。この曲率半径rは、撥インク膜1の開口部分近傍以外における厚みd以上であることが好ましい。
この厚みdは、撥インク膜1の開口部分であるラウンド部分以外の部分における厚みであり、好ましくは撥インク膜の最大厚みであってよい。
このように、ノズル板2の開口部と連接される撥インク膜1712の開口部分が、略尖鋭端のない形状(尖形部分のないなめらかな曲線)で、引っ掛かり部分のない曲線になっていることにより、ゴムなどの材料で形成されたワイパーでワイピングした場合であっても、尖形部分がワイパーに引っ掛かって撥インク膜1712がノズル板1711から剥離するといったことのないようすることができる。
また、図19(b)に示すように、ノズル板2の開口部の中心線を含む平面での断面における、撥インク膜1712の開口部分縁端を通る接線は、この開口部分縁端に連接されるノズル板1711の開口部縁端を含むノズル板1711表面からの角度θが90度未満となっていることが好ましい。
このように、撥インク膜1712の開口部分縁端での接線とノズル板表面2との角度θが90度未満であることにより、図19(c)に示すように、撥インク膜1712とノズル板1711との境界部分にメニスカス(液面)Pが安定的に形成され、他の部分にメニスカスPが形成される可能性を大きく減らすことができる。
このことにより、メニスカスの形成面を安定させることができるため、本ノズル板1711を含むインクジェットヘッドを用いた画像形成装置で画像形成を行う際のインクの噴射安定性を良好なものとすることができる。
本実施形態で用いるシリコーン樹脂としては、室温硬化型の液状シリコーンレジンが望ましく、特に加水分解反応を伴うものが好ましい。下記の実施例では東レ・ダウコーニング株式会社製のSR2411を用いた。
表1は、本実施形態でのインクジェットヘッドでの撥インク膜1712における、ノズル板1711の開口部縁端から開口部縁端近傍の形状と、ノズル周囲のインク溜まり、エッジ剥離、噴射安定性に関して評価した結果である。
撥インク膜1712のエッジ部(開口部分縁端近傍)に略尖鋭端が含まれる形状の物では、ノズル周囲にインク溜まりが見られ、ワイピングによるエッジの剥離が発生した。
ラウンド形状のものでは、何れもインク溜まりは発生しなかったが、比較例として図20(a)に例示するようなr<dのもので一部エッジの剥離が発生し、図20(b)に例示すようなθ>90度のものでは液滴の噴射が不安定な結果であった。
すなわち、図20(c)に示すように、r<dのものや、θ>90度のものでは、インク1713の充填時に、撥インク膜1712とノズル板1711の境界部分にメニスカス(液面)Pが形成される場合と、撥インク膜1712’における開口部分中心に向けての凸部(開口部分における中心線に垂直な断面積が最も小さくなる部分)にメニスカスQが形成される場合とがありうる。このため、こうしたノズル板1711を含むインクジェットヘッドを用いた画像形成装置で画像形成を行う際のインクの噴射安定性にばらつきが発生してしまうこととなった。
次に、上述した本実施形態に係るインクジェットヘッドのノズル部材の製造方法について説明する。
図21は、本実施形態に係るディスペンサ1721を用いた塗布により、シリコーン樹脂を塗布して撥インク膜1712を形成する構成を示す図である。
Ni電鋳によるノズル板1711のインク吐出面側にシリコーン溶液を塗布するためのディスペンサ1721が配置され、ノズル板1711とニードル1722先端とが予め定められた一定の距離間隔を保ったままとなるように、ニードル1722先端からシリコーン1723を吐出しながらディスペンサ1721を走査することにより、上述した図18及び図19に示したようにノズル板1711のインク吐出面に選択的にシリコーン樹脂皮膜を形成することができた。
本実施形態で使用したシリコーン樹脂は、常温硬化型シリコーンレジンSR2411(東レ・ダウコーニング株式会社製)粘度:10mPa・sを用いた。ただし、ノズル孔及びノズル板裏面に若干のシリコーンの周り込みが見られた。このようにして選択的に形成したシリコーン樹脂皮膜の厚さは1.2μmであり、表面粗さ(Ra)は0.18μmであった。
本実施形態に係るニードル1722先端の塗布口は、図22に示すように、塗布対象であるノズル板1711への塗布幅だけの幅が確保されている。このことにより、ディスペンサ1721を塗布方向に1回走査するだけで、塗布対象全体への塗布を完了させることができる。すなわち、塗布動作のための走査方向を1方向のみとすることができ、図23のように方向を変えたり、反対方向に走査したりといった必要を無くすることができる。
ここで一般のニードル1722の先端は、図23に示すように、塗布対象であるノズル板1711への塗布幅よりはるかに狭いため、塗布対象全体への塗布を完了させるためには、塗布動作のための走査方向を90度変えて移動させたり、反対方向に走査したりして複数方向に走査する必要があり、塗布対象全体への均一な厚みでの塗布が困難であった。
本実施形態によれば、ニードル1722先端の塗布口の幅が塗布対象であるノズル板1711への塗布幅だけ確保されることにより、塗布対象全体に渡って塗布する厚みを均一とすることができ、精度のよい表面仕上がりとすることができる。
図24は、本実施形態に係るディスペンサ1721を用いた塗布動作を示す図である。基本構成は上述した図21と同様であるが、ノズル板1711のノズル孔(開口部)から気体1724を噴射しながらシリコーンを塗布する。この気体1724としては、塗布するシリコーンと化学反応を起こしにくい気体であれば各種のものを用いてよく、例えば空気であってもよい。
このように気体1724をノズル孔から噴射しながら塗布を行うことにより、ノズル板1711のノズル孔を除くノズル表面だけにシリコーン樹脂皮膜を形成することができる。また、上述のように気体1724を噴射しないで同様のシリコーン樹脂を用いて塗布し、予め定められた深さまでシリコーン樹脂が進入した後、ノズル板1711から気体1724を噴射させると、図25に示すように、ノズル内壁の所望の深さ(たとえば数μm程度)までシリコーン樹脂の撥インク層を形成することができる。
すなわち、上述したインク吐出面の撥インク膜1712に加えて、ノズル板1711の開口部縁端から予め定められた深さまでごく薄い撥インク膜1712a(開口部内壁の撥インク膜)を形成することができる。
このようにして作製したノズル板の撥インク膜1712に対して、EPDMゴム(ゴム硬度50度)を用いてワイピングを実施した。その結果、1000回のワイピングに対してもノズル板の撥インク膜1712は、良好な撥インク性を維持することができた。また撥インク膜が形成されたノズル部材を、70℃のインクに14日間浸漬処理した。その結果、その後も初期と変わらない撥インク性を維持することができた。
<撥水層膜厚>
図26は、本発明の画像形成システムに搭載しているインクジェットヘッドの一例を示した図で、エキシマレーザ加工でノズル孔が形成された状態を示している。ノズル板1802は樹脂部材1821と高剛性部材1825とを熱可塑性接着剤1826で接合したもので、樹脂部材1821の表面はSiO2薄膜層1822とフッ素系撥水層1823を順次積層形成したものであり、樹脂部材1821に所要径のノズル孔1804を形成し、高剛性部材1825にはノズル孔1804に連通するノズル連通口1827を形成している。SiO2薄膜層1822の形成には、比較的熱のかからない、すなわち、樹脂部材に熱的影響の発生しない範囲の温度で成膜可能な方法で形成する。具体的にはスパッタリング,イオンビーム蒸着,イオンプレーティング,CVD(化学蒸着法),P−CVD(プラズマ蒸着法)などが適しているといえる。
SiO2薄膜層1822の膜厚は、密着力が確保できる範囲で必要最小限の厚さとするのが工程時間,材料費から見て有利である。この膜厚があまり厚くなると、エキシマレーザでのノズル孔加工に支障がでてくる場合があるからである。すなわち、樹脂部材1821はきれいにノズル孔形状に加工されていても、SiO2薄膜層1822の一部が十分に加工されず、加工残りになることがある。したがって、具体的には密着力が確保でき、エキシマレーザ加工時にSiO2薄膜層1822が残らない範囲として、膜厚1Å〜300Åの範囲が適しているといえる。より好適には、10Å〜100Åの範囲が適している。実験結果では、SiO2膜厚が30Åでも密着性は十分であり、エキシマレーザによる加工性についてはまったく問題がなかった。また、300Åでは僅かな加工残りが観察されたが使用可能範囲であり、300Åを超えるとかなり大きな加工残りが発生し、使用不可能なほどのノズル異形が見られた。
撥インク層の材料はインクをはじく材料であればいずれも用いることができるが、具体的には、フッ素系撥水材料、シリコーン系撥水材料を挙げることができる。
フッ素系撥水材料については、いろいろな材料が知られているが、ここでは、パーフルオロポリオキセタン及び変性パーフルオロポリオキセタンの混合物(ダイキン工業製、商品名:オプツールDSX)を1Å〜30Åの厚さに蒸着することで必要な撥水性を得ている。実験結果では、オプツールDSXの厚さは、10Åでも20Å,30Åでも撥水性,ワイピング耐久性能に差は見られなかった。よって、コストなどを考慮するとより好適には、1Å〜20Åが良い。また、フッ素系撥水層1823の表面には樹脂製のフィルムに粘着材を塗布した粘着テープ1824が貼り付けられていて、エキシマレーザ加工時の補助機能をはたしている。
また、シリコーン系撥水材料を用いることもできる。シリコーン系撥水材料としては、室温硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマーがあり、基材表面に塗布され、室温で大気中に放置することにより重合硬化して撥インク性の皮膜が形成されることが好ましい。
上記したシリコーン系撥水材料は加熱硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマーであり、基材表面に塗布され、加熱処理することにより硬化し撥インク性の皮膜を形成することであってもよい。
シリコーン系撥水材料は紫外線硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマーであり、基材表面に塗布され、紫外線を照射することにより硬化し撥インク性の皮膜を形成することであってもよい。
シリコーン系撥水材料の粘度が1000cp(センチポイズ)以下であることが好ましい。
図27は、ノズル孔を加工する際に使用するエキシマレーザ加工機の構成を示した図で、レーザ発振器1881から射出されたエキシマレーザビーム1882はミラー1883,1885,1888によって反射され、加工テーブル1890に導かれている。レーザビーム1882が加工テーブル1890に至るまでの光路には、加工物に対して最適なビームが届くように、ビームエキスパンダ1884,マスク1886,フィールドレンズ1887,結像光学系1889が所定の位置に設けられている。加工物(ノズルプレート)1891は加工テーブル1890の上に載置され、レーザビームを受けることになる。加工テーブル1890は、周知のXYZテーブル等で構成されていて、必要に応じて加工物1891を移動し所望の位置にレーザビームを照射することができるようになっている。ここでレーザは、エキシマレーザを利用して説明したが、アブレーション加工が可能である短波長な紫外光レーザであれば、種々なレーザが利用可能である。
図28は、本発明に係る画像形成システムに搭載したインクジェットヘッドの製造方法におけるノズル板製造工程を模式的に示した図で、図28(a)は、ノズル形成部材の基材となる材料を示しており、ここでは、樹脂フィルム1821として、例えば、Dupont製ポリイミドフィルムであるカプトン(商品名)の粒子無しのフィルムを使用している。一般的なポリイミドフィルムはロールフィルム取り扱い装置での取り扱い性(滑り)からフィルム材料の中にSiO2(シリカ)などの粒子が添加されている。ところが、エキシマレーザでノズル孔加工を行う場合には、SiO2(シリカ)の粒子がエキシマレーザによる加工性が悪いためノズル異形が発生する。よって、ここでの材料は、SiO2(シリカ)の粒子が添加されていないフィルムを使用しているのである。
図28(b)は、樹脂フィルム1821の表面にSiO2薄膜層1822を形成する工程を示しており、このSiO2薄膜層1822の形成は真空チャンバ内で行われるスパッタリング工法が適しており、膜厚は数Å〜200Å程度が適しており、ここでは10〜50Åの厚さに形成している。ここで、スパッタリングの方法としては、Siをスパッタした後、Si表面にO2イオンを当てることでSiO2膜を形成する方法を用いることが、SiO2膜の樹脂フィルム1821への密着力が向上すると共に、均質で緻密な膜が得られ、撥水膜のワイピング耐久性向上により効果的であることがわかった。
図28(c)は、フッ素系撥水剤1823aを塗布する工程であり、塗布方法としては、スピンコータ,ロールコータ,スクリーン印刷,スプレーコータなどの方法が使用可能であるが、真空蒸着で成膜する方法が撥水膜の密着性を向上させることにつながるので、より効果的であることが確認された。また、その真空蒸着は、図26(b)でのSiO2薄膜層1822を形成した後、そのまま真空チャンバ内で実施することでさらに良い効果が得られることもわかった。すなわち、従来は、SiO2薄膜層1822を形成後、一旦真空チャンバからワークを取り出すので、不純物などが表面に付着することにより密着性が損なわれるものと考えられる。なお、フッ素系撥水材料については、いろいろな材料が知られているが、ここでは、フッ素非晶質化合物としてパーフルオロポリオキセタンまたは変形パーフルオロポリオキセタンまたは双方の混合物を使用することで、インクに対する必要な撥水性を得ることができた。前述のダイキン工業製「オプツールDSX」は「アルコキシシラン末端変性パーフルオロポリエーテル」と称されることもある。
図28(d)は、撥水膜蒸着後の空中放置工程であり、これによりフッ素系撥水剤1823aとSiO2薄膜層1822とが、空気中の水分を仲介として化学的結合をし、フッ素系撥水層1823になる。
図28(e)は、粘着テープ1824を貼り付ける工程であり、フッ素系撥水層1823の塗布された面に粘着テープ1824を貼り付ける。この粘着テープ1824を貼るときには気泡が生じないように貼り付けることが必要である。気泡があると、気泡のある位置に開けたノズル孔は、加工時の付着物などで品質の良くないものになってしまうことがあるからである。
図28(f)は、ノズル孔1804の加工工程で、ポリイミドフィルム1821側からエキシマレーザを照射してノズル孔1804を形成する。ノズル孔1804の加工後は、粘着テープ1824を剥がして使用することになる。なお、ここでは、図26で説明したノズル板1802の剛性を上げるために用いられる高剛性部材1825は説明を省略したが、この工程に適用すれば、図28(d)工程と図28(e)工程の間に実施するのが適当である。
図29は、上記インクジェットヘッド製造方法によりインクジェットヘッドを製造するときに使用する装置について概要を示す図で、この装置1900は、USAのOCLI(OPTICAL COATING LABORATORY INC.)が開発した、「メタモードプロセス」と呼ばれる工法を装置化したものであり、ディスプレイなどの反射防止・防汚膜の作製に使用されている。図にあるように、ドラム1901の周囲4個所にステーションであるSiスパッタ1902,O2イオンガン1903,Nbスパッタ1904,オプツール蒸着1905が配置されて、全体が真空引きできるチャンバの中にある。先ず、Siスパッタ1902によりSiをスパッタし、その後、O2イオンガン1903によりO2イオンをSiに当ててSiO2とする。そのあとNbスパッタ1904,オプツール蒸着1905でNb,オプツールDSXを適宜蒸着する。反射防止膜の場合は、NbとSiO2を所定の厚さで必要層数重ねた後蒸着することになる。ここでは、反射防止膜の機能は必要ないので、Nbは不要でSiO2,オプツールDSXを1層ずつつければ良い。この装置を使用することで、上述したように、SiO2薄層1822を形成した後、そのまま真空チャンバ内でオプツールDSXの真空蒸着を実施するのが可能となる。
<臨界表面張力>
撥インク層の臨界表面張力は5〜40mN/mであることが好ましい。さらに、5〜30mN/mであることがより好ましい。30mN/mを超えると、長期の使用においてインクがノズルプレートに対して濡れすぎる現象が生じるため、繰り返し印刷をしているとインクの吐出曲がりや粒子化異常が生じてしまう。また、40mN/mを超えると、初期からノズルプレートに対して濡れすぎる現象が生じるため、初期からインクの吐出曲がりや粒子化異常が生じてしまう。
表2に記載する撥インク材料をアルミニウム基盤上に塗布し、加熱乾燥することで撥インク層つきノズルプレートを作成した。撥インク層の臨界表面張力を測定したところ表2のようになった。
臨界表面張力はZisman法で求めることができる。つまり、表面張力が既知の液体を撥インク層の上にたらし、接触角θを測定し、液体の表面張力をx軸にCOSθをy軸にプロットすると右肩下がりの直線が得られる(Zisman Plot)。この直線がY=1(θ=0)となるときの表面張力を臨界表面張力γcとして算出することができる。その他の方法として、Fowkes法、Owens and Wendt法、Van Oss法を用いて臨界表面張力を求めることもできる。
前述したヘッド製造方法と同様に撥インク層つきノズルプレートを用いてインクジェットヘッドを作製した。これに後述する製造例1のシアンインクを用いてインクを噴射させた。インクの飛翔課程をビデオ撮影して観察したところ、いずれのノズルプレートを用いた場合にも正常に粒子化していることを確認し、吐出安定性が良好であることを確認した。
これらを実施することにより、吐出安定性が良好になり、その結果、噴射曲がりなどの障害が起きにくくなる。また、低表面張力のインクを用いてもドット位置精度が高いため、吸収性が低いメディアを用いてもインクがメディアを埋めることができる。これによって画像濃度ムラや画像濃度の低下は起こらず、高い画像品質の印刷物を得ることができる。本発明と併せて前記インクジェットヘッドを用いることで、同じ着弾精度でも着弾位置バラツキを均等化できるため、より高い画像品質の印刷物を得ることができる。
ノズルプレート(ノズル板)が撥水性、撥インク性に優れていると、仮に表面張力が低いインクを用いてもインク滴の形成(粒子化)を良好にできる。また、撥水性を高めることによりメニスカスが正常に形成され、インクが噴射する際に一方方向に引っ張られることがなくなり、その結果、インクの噴射曲がりが少なく、ドット位置精度が高い画像を得ることができる。本発明の画像形成方法は、ドット位置精度が低い場合に画質の低下を防ぐこともできるが、このようにドット位置精度が高い記録装置を使用する場合にも大きな効果がある。
<記録材料について>
ここで、本発明の画像形成方法を実施するにあたり、使用する記録材料について説明する。前記記録媒体に前記記録装置を使用して記録する場合でも、記録材料によって不具合があらわれる可能性がある。たとえば、表面張力が非常に小さい場合には、本発明の記録装置におけるノズルプレートに濡れすぎてインク滴の形成(粒子化)がうまくできなかったり、本発明の記録媒体上での滲みが顕著となり、安定したインクの吐出が得られないことがある。また、非常に大きい場合には、記録媒体へのインク浸透が十分に起こらず、ビーディングの発生や乾燥時間の長時間化を招くことがある。そのような場合には本発明の画像形成方法は効果が低い。そこで、本発明の画像形成方法にて記録する際に使用する記録材料としては、本発明の効果をより高めるために次のものを使用することを想定している。
<インク>
本発明のインクは、少なくとも水、着色剤、及び湿潤剤を含有してなり、浸透剤、界面活性剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記インクは、25℃における表面張力が、15〜40mN/mであり、20〜35mN/mがより好ましい。前記表面張力15/m未満であると、本発明のノズルプレートに濡れすぎてインク滴の形成(粒子化)がうまくできなかったり、本発明で用いる記録用メディア上での滲みが顕著となり、安定したインクの吐出が得られないことがあり、40mN/mを超えると、記録用メディアへのインク浸透が十分に起こらず、ビーディングの発生や乾燥時間の長時間化を招くことがある。
ここで、前記表面張力は、例えば、表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z)を用い、白金プレートを使用して25℃で測定することができる。
<着色剤>
前記着色剤としては、顔料、染料、及び着色微粒子の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
前記着色微粒子としては、顔料及び染料の少なくともいずれかの色材を含有させたポリマー微粒子の水分散物が好適に用いられる。
ここで、前記「色材を含有させた」とは、ポリマー微粒子中に色材を封入した状態及びポリマー微粒子の表面に色材を吸着させた状態の何れか又は双方を意味する。この場合、本発明のインクに配合される色材はすべてポリマー微粒子に封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、該色材がエマルジョン中に分散していてもよい。前記色材としては、水不溶性又は水難溶性であって、前記ポリマーによって吸着され得る色材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、前記「水不溶性又は水難溶性」とは、20℃で水100質量部に対し色材が10質量部以上溶解しないことを意味する。また、「溶解する」とは、目視で水溶液表層又は下層に色材の分離や沈降が認められないことを意味する。
前記色材を含有させたポリマー微粒子(着色微粒子)の体積平均粒径は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。0.01μm未満であると微粒子が流動しやすいための文字滲みが大きくなったり、耐光性が劣ってしまう。逆に、0.16μmを超えると、ノズルが目詰まりやすくなったり、発色性が悪くなってしまう。
前記着色剤としては、例えば、水溶性染料、油溶性染料、分散染料等の染料、顔料等が挙げられる。良好な吸着性及び封入性の観点からは油溶性染料及び分散染料が好ましいが、得られる画像の耐光性からは顔料が好ましく用いられる。
なお、前記各染料は、ポリマー微粒子に効率的に含浸される観点から、有機溶剤、例えば、ケトン系溶剤に2g/リットル以上溶解することが好ましく、20〜600g/リットル溶解することがより好ましい。
前記水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料であり、好ましくは耐水性、及び耐光性に優れたものが用いられる。
前記酸性染料及び食用染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142;C.I.アシッドレッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289;C.I.アシッドブルー 9,29,45,92,249;C.I.アシッドブラック 1,2,7,24,26,94;C.I.フードイエロー 3,4;C.I.フードレッド 7,9,14;C.I.フードブラック 1,2などが挙げられる。
前記直接性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144;C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227;C.I.ダイレクトオレンジ 26,29,62,102;C.I.ダイレクトブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202;C.I.ダイレクトブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171などが挙げられる。
前記塩基性染料としては、例えば、C.I.べーシックイエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91;C.I.ベーシックレッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112;C.I.べーシックブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155;C.I.ベーシックブラック 2,8などが挙げられる。
前記反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブブラック 3,4,7,11,12,17;C.I.リアクティブイエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67;C.I.リアクティブレッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97;C.I.リアクティブブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95などが挙げられる。
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、有機顔料のいずれであってもよい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックなどが好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。なお、前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記顔料の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用のもの、カラー用のもの、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記カラー用のものとしては、黄色インク用では、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、150、153、などが挙げられる。
マゼンタ用では、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B (Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、などが挙げられる。
シアン用では、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63等が挙げられる。
また、中間色としてはレッド、グリーン、ブルー用として、C.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントバイオレット3,19,23,37、C.I.ピグメントグリーン7,36などが挙げられる。
前記顔料としては、少なくとも1種の親水基が顔料の表面に直接若しくは他の原子団を介して結合した分散剤を使用することなく安定に分散させることができる自己分散型顔料が好適に用いられる。その結果、従来のインクのように、顔料を分散させるための分散剤が不要となる。前記自己分散型顔料としては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
前記自己分散型顔料の体積平均粒径は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR(ただし、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表す)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
また、前記親水基中における「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、等が挙げられる。前記有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。前記アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
前記カチオン性親水基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましく、次に挙げる第4級アンモニウム基がより好ましく、これらのいずれかが顔料表面に結合されたものが色材として好適である。
前記親水基が結合されたカチオン性の自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、次の構造式で表されるN−エチルピリジル基を結合させる方法としては、カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジウムブロマイドで処理する方法などが挙げられる。
前記親水基が、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。上記した親水基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合する場合の具体例としては、例えば、−C2H4COOM(ただし、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウムを表す)、−PhSO3M(ただし、Phはフェニル基、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウムを表す)、−C5H10NH3+等が挙げられる。
また、顔料分散剤を用いた顔料分散液を用いることもできる。
前記顔料分散剤としては、前記親水性高分子化合物として、天然系では、アラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子などが挙げられる。半合成系では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子などが挙げられる。純合成系では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸のホモポリマーや他の親水基を有するモノマーの共重合体からなるようなカルボキシル基を導入したものが高分子分散剤として特に好ましい。 前記共重合体の重量平均分子量は、3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましく、7,000〜15,000が更に好ましい。
前記顔料と前記分散剤との混合質量比(顔料:分散剤)は、1:0.06〜1:3が好ましく、1:0.125〜1:3がより好ましい。
前記着色剤の前記インクにおける添加量は、6〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。前記添加量が6質量%未満であると、着色力の低下により、画像濃度が低くなったり、粘度の低下によりフェザリングや滲みが悪化することがあり、15質量%を超えると、インクジェット記録装置を放置しておいた場合等に、ノズルが乾燥し易くなり、不吐出現象が発生したり、粘度が高くなりすぎることにより浸透性が低下したり、ドットが広がらないために画像濃度が低下したり、ぼそついた画像になることがある。
<湿潤剤>
前記湿潤剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール化合物、ラクタム化合物、尿素化合物及び糖類から選択される少なくとも1種が好適である。
前記ポリオール化合物としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用して使用してもよい。
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−プルパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール1,3−プロパンジオール、1,5ペンタンジオール、1、6ヘキサンジオール、グリセロール、1、2、6−ヘキサントリオール、1、2、4−ブタントリオール、1、2、3−ブタントリオール、ペトリオールなどが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
これらの中でも、溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる点から、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンが好適である。
前記ラクタム化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタムから選択される少なくとも1種が挙げられる。
前記尿素化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される少なくとも1種が挙げられる。前記尿素類の前記インクへの添加量は、一般的に0.5〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
前記糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)、多糖類、又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースが好適であり、マルチトース、ソルビトース、グルコノラクトン、マルトースが特に好ましい。
前記多糖類とは、広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることができる。
前記糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(ただし、一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、特に糖アルコールが好ましい。該当アルコールとしては、例えば、マルチトール、ソルビット、などが挙げられる。
前記湿潤剤の前記インク中における含有量は、10〜50質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。前記含有量が少なすぎると、ノズルが乾燥しやすくなり液滴の吐出不良が発生することがあり、多すぎるとインク粘度が高くなり、適正な粘度範囲を超えてしまうことがある。
<浸透剤>
前記浸透剤としては、ポリオール化合物やグリコールエーテル化合物等の水溶性有機溶剤が用いられ、特に、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかが好適に用いられる。
前記ポリオール化合物の炭素数が8未満であると、十分な浸透性が得られず、両面印刷時に記録用メディアを汚したり、記録用メディア上でのインクの広がりが不十分で画素の埋まりが悪くなるため、文字品位や画像濃度の低下が生じることがある。
前記炭素数8以上のポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(溶解度:4.2%(25℃))、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール(溶解度:2.0%(25℃))、などが好適である。
前記グリコールエーテル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
前記浸透剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられ、前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。該アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品として、例えば、エアープロダクツ社(米国)のサーフィノール104、82、465、485、TGなどが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタイン、などが挙げられる。
これら界面活性剤の中でも、下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び(VI)で示される界面活性剤が好適である。
ただし、前記一般式(I)中、R1は、アルキル基を表し、炭素数6〜14の分岐していてもよいアルキル基を表す。hは、3〜12の整数を表す。Mは、アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、及びアルカノールアミンから選択されるいずれかを表す。
ただし、前記一般式(II)中、R2は、アルキル基を表し、炭素数5〜16の分岐していてもよいアルキル基を表す。Mは、アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、及びアルカノールアミンから選択されるいずれかを表す。
ただし、前記一般式(III)中、R3は、炭化水素基を表し、例えば、分岐していてもよい炭素数6〜14のアルキル基を表す。kは5〜20の整数を表す。
ただし、前記一般式(IV)中、R4は、炭化水素基を表し、例えば、炭素数6〜14のアルキル基を表す。jは、5〜20の整数を表す。
ただし、前記一般式(V)中、R6は、炭化水素基を表し、例えば、炭素数6〜14の分岐していてもよいアルキル基を表す。L及びpは、1〜20の整数を表す。
ただし、前記一般式(VI)中、q及びrは0〜40の整数を表す。
以下、前記構造式(I)、及び(II)の界面活性剤を具体的に遊離酸型で示す。先ず、(I)の界面活性剤としては、次の(I−1)ないし(I−6)で表わされるものを挙げることができる。
次に、(II)の界面活性剤としては、次の(II−1)ないし(II−4)で表わされるものを挙げることができる。
前記フッ素系界面活性剤としては、下記一般式(A)で表されるものが好適である。
ただし、前記一般式(A)中、mは、0〜10の整数を表す。nは、1〜40の整数を表す。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、近年問題視されているフッ素化合物の生体蓄積性についても低く安全性の高いものであり、特に好ましい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも住友スリーエム社製)、メガファックF−470、F1405、F−474(いずれも大日本インキ化学工業社製)、ゾニールTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれもデュポン社製)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも株式会社ネオス社製)、PF−151N(オムノバ社製)などが挙げられる。これらの中でも、信頼性と発色向上に関して良好な点から、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(デュポン社製)が特に好ましい。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂エマルジョン、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
<樹脂エマルジョン>
前記樹脂エマルジョンは、樹脂微粒子を連続相としての水中に分散したものであり、必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有しても構わない。
前記分散相成分としての樹脂微粒子の含有量(樹脂エマルジョン中の樹脂微粒子の含有量)は一般的には10〜70質量%が好ましい。また、前記樹脂微粒子の粒径は、特にインクジェット記録装置に使用することを考慮すると、平均粒径10〜1000nmが好ましく、20〜300nmがより好ましい。
前記分散相の樹脂微粒子成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられ、これらの中でも、アクリルシリコーン系樹脂が特に好ましい。
前記樹脂エマルジョンとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販の樹脂エマルジョンとしては、例えば、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、プライマルAC−22、AC−61(アクリル系樹脂エマルジョン、ローム・アンド・ハース製)、ナノクリルSBCX−2821、3689(アクリルシリコーン系樹脂エマルジョン、東洋インキ製造株式会社製)、#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂エマルジョン、御国色素社製)などが挙げられる。
前記樹脂エマルジョンにおける樹脂微粒子成分の前記インクにおける添加量としては、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。前記添加量が0.1質量%未満であると、耐目詰まり性及び吐出安定性の向上効果が十分でないことがあり、50質量%を超えると、インクの保存安定性を低下させてしまうことがある。
前記防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、などが挙げられる。 前記pH調整剤としては、インクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができる。
該pH調製剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、などが挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、等が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、等が挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、等が挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、等が挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)、等が挙げられる。
本発明のインクは、少なくとも水、着色剤、及び湿潤剤、必要に応じて浸透剤、界面活性剤、更に必要に応じてその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
前記インクの粘度は、25℃で、1cps以上30cps以下が好ましく、2〜20cpsがより好ましい。前記粘度が20cpsを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがある。
前記インクのpHとしては、例えば、7〜10が好ましい。
前記インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を形成することができる。
前記記録媒体に前記記録装置を使用して記録する場合でも、たとえば記録材料の表面張力が不適なものを使用すると粒子化やビーディングなどの不具合が生じる。本発明で説明しているような、インク吸収性の悪い記録媒体では、ビーディングの問題は特に顕著に現れてしまう。上記に記載した記録材料では、この点において優れている。本発明による画像形成方法を用いることによって画質の低下を防ぐことは可能であるが、上記に記載した記録材料を使用することによって、より高い画質の印刷物を得ることが可能となる。
以上により、1パス印字のような高速印字条件下でも、インクの無駄な重なり合いながら効率的に紙面を埋めることでビーディングを低減と埋まりの達成をすることが可能になる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(調製例1)
−銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃にて1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。次に、ポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は15,000であった。
次に、得られたポリマー溶液28g、銅フタロシアニン顔料26g、1mol/L水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に攪拌した。その後、3本ロールミル(株式会社ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20.0質量%の青色のポリマー微粒子分散体160gを得た。
得られたポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50%)は93nmであった。
(調製例2)
−ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
調製例1において、銅フタロシアニン顔料をC.I.ピグメントレッド122に変更した以外は、調製例1と同様にして、赤紫色のポリマー微粒子分散体を調製した。
得られたポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50%)は127nmであった。
(調製例3)
−モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製−
調製例1において、銅フタロシアニン顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更した以外は、調製例1と同様にして、黄色のポリマー微粒子分散体を調製した。
得られたポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50%)は76nmであった。
(調製例4)
−スルホン化剤処理したカーボンブラック分散体の調製−
市販のカーボンブラック顔料(デグサ社製、「プリンテックス#85」)150gをスルホラン400ml中に良く混合し、ビーズミルで微分散後、アミド硫酸15gを添加して140〜150℃で10時間攪拌した。得られたスラリーをイオン交換水1000ml中に投入し、12,000rpmで遠心分離機により表面処理カーボンブラックウェットケーキを得た。得られたカーボンブラックウェットケーキを2,000mlのイオン交換水中に再分散し、水酸化リチウムにてpHを調整し、限外濾過膜により脱塩濃縮して顔料濃度10質量%のカーボンブラック分散体とし、平均孔径1μmのナイロンフィルターで濾過し、カーボンブラック分散体を得た。
得られたカーボンブラック分散体について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50%)は80nmであった。
(製造例1)
−シアンインクの作製−
調製例1の銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール23.0質量%、グリセリン8.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、フッ素系界面活性剤としてのFS−300(DuPont社製)2.5質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、シアンインクを調製した。
(製造例2)
−マゼンタインクの作製−
調製例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール22.5質量%、グリセリン9.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、フッ素系界面活性剤としてのFS−300(DuPont社製)2.5質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、1-アミノ-2,3-プロパンジオール0.5重量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、マゼンタインクを調製した。
(製造例3)
−イエローインクの作製−
調製例3のモノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール24.5質量%、グリセリン8.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、フッ素系界面活性剤としてのFS−300(DuPont社製)2.5質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、イエローインクを調製した。
(製造例4)
−ブラックインクの作製−
調製例4のカーボンブラック分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール22.5質量%、グリセリン7.5質量%、2−ピロリドン2.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、フッ素系界面活性剤としてのFS−300DuPont社製)2.5質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、及びコリン0.2質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上によりブラックインクを調製した。
(製造例5)
−シアンインクの作製−
調製例1の銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール23.0質量%、グリセリン8.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、シアンインクを調製した。
(製造例6)
−マゼンタインクの作製−
調製例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール22.5質量%、グリセリン9.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、マゼンタインクを調製した。
(製造例7)
−イエローインクの作製−
調製例3のモノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール24.5質量%、グリセリン8.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、イエローインクを調製した。
(製造例8)
−ブラックインクの作製−
調製例4のカーボンブラック分散体20.0質量%、3−メチル−1,3−ブタンジオール22.5質量%、グリセリン7.5質量%、2−ピロリドン2.0質量%、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール2.0質量%、防腐防カビ剤としてのプロキセルLV(アベシア社製)0.2質量%、及び2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を適量加えて100質量%とし、その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。以上により、ブラックインクを調製した。
次に、得られた製造例1〜4の各インクについて、以下のようにして、表面張力、及び粘度を測定した。結果を表3に示す。
<粘度の測定>
粘度は、R−500型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、コーン1°34’×R24、60rpm、3分後の条件により、25℃で測定した。
<表面張力の測定>
表面張力は、表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z)を用い、白金プレートを使用して25℃で測定した静的表面張力である。
−支持体の作製−
下記配合の0.3質量%スラリーを長網抄紙機で抄造し、坪量79g/m2の支持体を作製した。なお、抄紙工程のサイズプレス工程で、酸化澱粉水溶液を固形分付着量が片面当り、1.0g/m2になるように塗布した。
・広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)・・・80質量部
・針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)・・・20質量部
・軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業株式会社製)・・・10質量部
・硫酸アルミニウム・・・1.0質量部
・両性澱粉(商品名:Cato3210、日本NSC株式会社製)・・・1.0質量部
・中性ロジンサイズ剤(商品名:NeuSize M−10、ハリマ化成株式会社製)・・・0.3質量部
・歩留まり向上剤(商品名:NR−11LS、ハイモ社製)・・・0.02質量部
(製造例9)
−記録用メディア1の作製−
顔料としての粒子径2μm以下の割合が97質量%のクレー70質量部、平均粒子径1.1μmの重質炭酸カルシウム30質量部、接着剤としてのガラス転移温度(Tg)が−5℃のスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン8質量部、リン酸エステル化澱粉1質量部、及び助剤としてのステアリン酸カルシウム0.5質量部を加え、更に水を加えて固形分濃度60質量%の塗工液を調製した。
得られた塗工液を、上記作製した支持体に片面当り固形分付着量が8g/m2になるように、ブレードコーターを用いて両面に塗工し、熱風乾燥後、段スーパーカレンダー処理を行い、「記録用メディア1」を作製した。
(製造例10)
−記録用メディア2の作製−
顔料としての粒子径2μm以下の割合が97質量%のクレー70質量部、平均粒子径1.1μmの重質炭酸カルシウム30質量部、接着剤としてのガラス転移温度(Tg)が−5℃のスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン7質量部、リン酸エステル化澱粉0.7質量部、助剤としてのステアリン酸カルシウム0.5質量部を加え、更に水を加えて固形分濃度60質量%の塗工液を調製した。
得られた塗工液を、上記作製した支持体に片面当り固形分付着量が8g/m2になるように、ブレードコーターを用いて両面塗工し、熱風乾燥後、段スーパーカレンダー処理を行い、「記録用メディア2」を作製した。
(実施例1)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
製造例4のブラックインク、製造例3のイエローインク、製造例2のマゼンタインク、及び製造例1のシアンインクからなる「インクセット1」を常法により調製した。
得られたインクセット1と、上記記録用メディア1とを用いて、300dpi、ノズル解像度384、ノズルを有する本発明に係る画像形成装置を使用し、画像解像度600dpi、最大インク滴18plにて印字を行った。二次色の総量規制を140%にして付着量規制を実施し、ベタ画像、及び文字を印写して、画像プリントを得た。
(比較例1)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、記録用メディアとして市販のオフセット用コート紙(商品名;オーロラコート、坪量=104.7g/m2、日本製紙(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(比較例2)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、記録用メディアとして市販のインクジェット用マットコート紙(商品名;スーパーファイン専用紙、セイコーエプソン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(実施例2)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、記録用メディアとして上記記録用メディア2を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(実施例3)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、記録用メディアとしてグラビア印刷用コート紙(商品名;スペースDX、坪量=56g/m2、日本製紙株式会社製)(以下、「記録用メディア3」とする)を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(比較例3)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、製造例8のブラックインク、製造例7のイエローインク、製造例6のマゼンタインク、及び製造例5のシアンインクからなるインクセット2を用い、記録用メディアとして上記の記録用メディア1を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(比較例4)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、インクセット1の代わりに上記インクセット2を用い、記録用メディアとして市販のオフセット用コート紙(商品名;オーロラコート、坪量=104.7g/m2、日本製紙株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(比較例5)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、インクセット1の代わりに上記インクセット2を用い、記録用メディアとして市販のインクジェット用マットコート紙(商品名;スーパーファイン専用紙、セイコーエプソン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
(比較例6)
−インクセット、記録用メディア、及び画像記録−
実施例1において、インクセット1の代わりに上記インクセット2を用い、記録用メディアとして上記の記録用メディア2を用いた以外は、実施例1と同様にして、印写を実施し、画像プリントを得た。
次に、記録用メディア1、記録用メディア2、記録用メディア3、及び比較例4〜5で用いた記録用メディアについて、以下のようにして、動的走査吸液計による純水、及び製造例1のシアンインクの転移量を測定した。結果を表4に示す。
また、記録用メディア1,記録用メディア2、及び比較例4〜5で用いた記録用メディアについて、以下のようにして、動的走査吸液計による製造例5のシアンインクの転移量を測定した。結果を表5に示す。
<動的走査吸液計による純水及びシアンインクの転移量の測定>
各記録用メディアについて、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水又はシアンインクの転移量を測定した。接触時間100ms及び接触時間400msにおける転移量は、それぞれの接触時間の近隣の接触時間における転移量の測定値から補間により求めた。
次に、得られた実施例1〜3及び比較例1〜6の各画像プリントについて、以下のようにして、ビーディング、ブリード、拍車痕、及び光沢感を評価した。結果を表6に示す。
<ビーディング>
各画像プリントのグリーンべた画像部のビーディングの程度を目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ビーディングの発生なく均一な印刷である。
○:かすかにビーディングの発生が認められる。
△:明確にビーディングの発生が認められる。
×:甚だしいビーディングの発生が認められる。
<ブリードの評価>
各画像プリントの黄地中の黒文字のブリードの程度を目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ブリードの発生なく鮮明な印刷である。
○:かすかにブリードの発生が認められる。
△:明確にブリードの発生が認められる。
×:文字の輪郭がはっきりしないほど滲みが発生している。
<拍車痕の評価>
各画像プリントの拍車痕の程度を目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:全く認められない。
○:かすかに認められる。
△:拍車痕が認められる。
×:明確に拍車痕が認められる。
<光沢感の評価>
各画像プリントの画像部の光沢感の程度を目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:高い光沢感がある。
○:光沢感がある。
×:光沢感が認められない。
表1〜表4の結果から、少なくとも水、着色剤、及び湿潤剤を含有してなり、25℃における表面張力が20〜35mN/mであるインクと、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおけるインクの記録用メディアへの転移量が4〜15ml/m2であり、かつ接触時間400msにおけるインクの記録用メディアへの転移量が7〜20ml/m2である記録用メディアと、を組み合わせた実施例1〜3のインクメディアセットは、比較例1〜6のインクメディアセットに比べて、ビーディング、ブリード、拍車痕、及び光沢感のすべてについて良好な評価結果が得られることが認められた。