JP2008210168A - 家具設計装置及び設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ユニットの積み重ねで家具を設計する場合に、家具設計の専門的知識が無くとも、ユニットの板接合構造やデザインに応じて、板材の重複等に対する処理を選択できて、かつ的確に処理が行える家具設計装置等を提案する。
【解決手段】 複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計できる装置であって、隣接するユニット間で部材の重複や不整合が生じる場合に、対処方法を選択できる選択手段と、ユニット設計情報を格納した記憶手段と、部材の重複や不整合を検知する手段と、検知手段が部材の重複等を検知した場合に、選択された対処方法と設計情報とに基づいて、重複等を解消する変更手段とを備えた。
【選択図】 図4
【解決手段】 複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計できる装置であって、隣接するユニット間で部材の重複や不整合が生じる場合に、対処方法を選択できる選択手段と、ユニット設計情報を格納した記憶手段と、部材の重複や不整合を検知する手段と、検知手段が部材の重複等を検知した場合に、選択された対処方法と設計情報とに基づいて、重複等を解消する変更手段とを備えた。
【選択図】 図4
Description
本発明は、家具設計の素人である家具購入者でも、簡単な操作で必要な大きさで好みの構造の収納家具を設計でき、しかも使用部材の重複や部材間の不整合を解消することができる家具設計装置等に関する。
近年、家具のサイズや構成を変更でき、家具の購入者が必要とするサイズと構造とを備え、かつ購入者が好むデザインのオーダーメイド家具を簡単に設計製作できる設計装置等が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの設計装置では、どのようなサイズのどのような構造の家具でも、表示画面上で自由に設計できる。特に、特許文献2に記載の家具設計装置では、直方体形状のユニットと、ユニットの直方体形状の内部空間を意味するセルと、セルを分割する棚板等を意味するパーツとの組み合わせを基本単位にし、このユニットを複数組み合わせることにより、任意形状で任意の大きさの収納家具が構成可能となっている。ユニットを積み重ねる方法はわかりやすく、家具設計の専門的知識がなくとも一応の家具を構成できる利点がある。
ユニットとしては、少なくとも二枚の側板と一枚の天板と一枚の底板と一枚の(多くは無化粧の)背板とを直方体形状に組み合わされていれば良く、このようなユニットを設計の基本単位にすることで、家具設計が容易となる。さらに必要により、ユニットにバックパネル(化粧有り)、扉、引き出し、棚板、台輪(家具の脚部)、カウンタ天板等を組み合わせて、家具を構成する単位とすることができる。
しかし、これらのユニットを複数組み合わせて実際の家具を製作すると、ユニットどうしが接する面では、隣接するユニットの板どうしが積層されて二重になり、構造上の重複が生じることになる。板が二重となる重複構造は、家具が重くなって材料の無駄遣いとなるし、デザイン的にも好ましくない場合がありうる。一方で、板どうしの接合構造上やデザイン上の観点から板が二重になっても問題ない場合もあるため、一律に重複構造を修正する必要はないが、修正する場合には、家具設計の素人である家具購入者が的確に行うことは困難で、家具を設計する場合の大きな障害となっていた。
同様なことは、家具の下部に設けられて床と直接接する脚部となるいわゆる台輪の構造や、ユニットの直方体に挿入された引き出しの前板等の構成部材と直方体等との関係付け方等の、実際の家具設計の細部にわたって多岐に生じる。そのため、ユニットを積み重ねて家具を構成する方法は一見簡単そうに見えるにもかかわらず、実際には、構造の細部において家具設計の専門的知識が必要となり、実用的な家具を設計するのは意外に困難という問題点を有していた。
特願平9−285580号公報
WO01/009778号国際公開公報
本発明は、ユニットの積み重ねで家具を設計する場合に、家具設計の専門的知識が無くとも、ユニットの板接合構造やデザインに応じて、板材の重複等に対する処理が的確に行える家具設計装置等を提案することを課題とする。
発明の第1は、複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計できる家具設計装置であって、隣接する前記ユニット間で前記部材の重複または不整合が生じる場合に、あらかじめ定められた中から対処方法を選択できる選択手段と、前記ユニットの設計情報を格納したユニット情報記憶手段と、前記の部材の重複または不整合を検知する検知手段と、前記検知手段が前記の部材の重複または不整合を検知した場合に、前記選択された対処方法と前記設計情報とに基づいて、当該重複または不整合を解消する設計変更手段とを備えたことを特徴とする家具設計装置である。
ここで、前記の対処方法に、前記検知手段が前記の部材の重複を検知した場合に、前記の設計変更手段が、当該重複する部材のいずれかを消去する方法を含むことは好ましい。また、前記の対処方法に、前記検知手段が部材の不整合を検知した場合に、前記の設計変更手段が、当該不整合となる部材のサイズ変更を行う方法を含むことは好ましい。また、前記の不整合となる部材が、引き出し構成部材、棚板、扉、背板、バックパネル、カウンタ天板からなる群から選ばれたいずれかであることは好ましい。また、前記の対処方法に、前記のサイズ変更に際して、部材のサイズを変更するが家具の外枠位置は変更しない方法を含むことは好ましい。また、前記の対処方法に、前記検知手段が部材の不整合を検知した場合に、前記の設計変更手段が、当該不整合となる部材の交換を行う方法を含むことは好ましい。また、前記の部材の不整合が台輪間の間隙の発生であり、前記の交換が、一体化された台輪への交換であることは好ましい。また、前記の検知手段は、前記表示画面上に家具として既配置の部材が占める空間座標と、最新に配置された部材が占める空間座標とを比較して、前記の重複または不整合を検知することは好ましい。
発明の第2は、複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計できる家具設計方法であって、隣接する前記ユニット間で前記部材の重複または不整合が生じる場合に、あらかじめ定められた中から対処方法を選択するステップと、前記の部材の重複または不整合を検知するステップと、前記検知ステップで前記の部材の重複または不整合を検知した場合に、前記選択された対処方法とユニット情報記憶手段に格納された前記ユニットの設計情報とから、当該重複または不整合を解消するステップとを実行することを特徴とする家具設計方法である。
発明の第3は、複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、隣接する前記ユニット間で前記部材の重複または不整合が生じる場合に、あらかじめ定められた中から対処方法を選択できる選択機能と、前記ユニットの設計情報を格納したユニット情報記憶機能と、前記の部材の重複または不整合を検知する検知機能と、前記検知機能が前記の部材の重複または不整合を検知した場合に、前記選択された対処方法と前記設計情報とに基づいて、当該重複または不整合を解消する設計変更機能を実行させることを特徴とする家具設計プログラムである。
発明の第4は、上記のプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
ユニットの組み合わせにより家具が簡単に設計でき、その際、板どうしの重複や部材の不整合等が生じることなく、家具に関する専門的な設計知識が無くとも、家具の細部にわたる設計が問題なく行える。
以下、本発明の実施の形態例を図面を参照しながら説明する。家具設計装置は、スタンドアローンのコンピュータとそれにインストールされた専用プログラムから構成することができるし、専用ハードウェアを用いて専用装置として構成することもできる。また、インターネット等のネットワークを介したクライアントサーバシステム等を用い、専用プログラムをサーバで動かすようにして構成することもでき、具体的な形態は特に制限されない。以下では、スタンドアロンのコンピュータに家具設計プログラムが組み込まれて、家具設計装置が構成されている例で説明する。
家具設計装置では、表示画面上におけるユニットの組み合わせにより、目的とする家具を構成する。ここで言うユニットとは、複数の部材を組み合わせて構成され、家具を構成する基本単位となる単純形状の箱類をいう。箱類を構成する部材としては、原則として2枚の側板と天板と底板との4枚の板が挙げられ、箱類は、これらを横向きの四角筒形状に背板を組み合わせてなる。四角筒は、単純な四角筒であっても良いし、側板の下部が下に突出するようにして脚を設けたり、天板の左右の一端または左右両端が外側に突出するようにしても良い。
ユニットの構成例を図1に示す。図1には、各種ユニットの正面模式図を示した。ユニットを構成する板の接合構造としては、側板が天板や底板に被さってイモ接合やダボ接合等された側板被せ(図1(1))、天板や底板が側板に優先してイモ接合やダボ接合等された天地被せ(図1(2))、天板等と側板とがトメ構造で接合されたもの(図1(3))などが選択可能である。また、箱類には、必要により奥板、扉類、引き出し、台輪等を備えるようにしても良く、図1では、引き出しを設けた例(図1(4)、引き出しの前板を表示)や台輪を設けた例(図1(5))を示した。
家具は、これらの箱類を、表示画面上で選択し、家具を構成するように画面上で移動して、画面上の上下左右方向に積み重ねていくことで構成される。このようにして家具を構成することで、家具設計の素人である購入者にも容易かつ直感的に好みの家具が設計できる。従って、ここで言う家具としては、このようなユニットの組み合わせにより構成できる本棚、食器棚、ローキャビネット、飾り棚、テレビ台のごとき壁に背面を接して配置される家具や、ユニットを脚部に利用して天板を載せて構成される机類等が例示される。
図2は、家具設計装置で実行される家具設計方法の全体処理を示したフローチャートである。図2の処理が開始されると、まず家具の仕様設定処理が実行される(S100ステップ)。この処理では、まず、どのユニット群を用いて家具を構成するかの選択入力を促す画面が表示される。ユニット群ごとに、各群を構成する複数のユニットに共通する板の接合構造、基本デザインのパターン、標準の色調、板の厚み等の標準サイズ等があらかじめ定められている。なお、ユニットの基本デザインのパターンとしては、北欧風、イタリア風、ドイツ風、現代風、和風等が例示でき、それぞれにあらかじめ標準の色調を設定しておくのが望ましい。
家具設計装置のディスプレイ上には、いずれのユニット群を使用するかの選択入力を促す画面が表示され、いずれかのユニットを表示画面上で選択して入力することにより、家具の仕様設定処理がなされる。表示画面上で選択されたデータは、記憶部の所定のアドレスに格納される。なお、ユニットやその構成部材の色調やサイズは後から変更可能である。どのユニット群が選択されたかは、後述の個別家具設計情報に格納される。
次に、家具を設計する際の設計条件の設定処理がなされる(S200ステップ)。この処理では、複数のユニットを組み合わせて家具を設計する際に生じる、部材の重複や不整合を解消する設計変更処理を行うか行わないか、行う場合はどのように処理するかがあらかじめ選択される。ここにいう部材の重複とは、左右方向に隣接して組み合わされたユニット間で、それぞれのユニットの右側板と左側板とが互いに接する状態となり、構造上の重複が生じている状態を言う。また、部材の不整合とは、重複解消処理等の何らかの事情により、部材のサイズが不足または過大となって、互いに接合されるべき部材が接合されない状態が生じたり、予定されない間隙が部材間に生じたりすることを言う。なお、部材の重複や不整合となる場合は、あらかじめわかっているから、その検知手段があらかじめプログラム中に設けられている。また、プログラム中には部材の重複や不整合に際して選択可能な対処方法もあらかじめ定められており、家具設計装置の後述の記憶手段にそのためのプログラムが格納されている。
この設計条件の設定処理が実行されると、まず設計条件の選択入力を促す設計条件設定画面がディスプレイに表示される。この画面例を図3に示す。図3の例では、画面上半分に先に選択されたユニット群の仕様が表示され、下半分に設計条件の設定入力を促す画面が表示されている。この図3中で、「板重複解消」とは、部材の重複が生じた場合に、重複を解消する処理を行うか否か、行う場合に、側板どうしが重なった場合に一方の側板を消去する処理を行うか否かの処理を言い、チェックボックスに入力することで、いずれかを選択する。
また、図中で「外寸の保持」とは、ユニットを組み合わせて表示画面上で構成された家具の外寸を、部材の重複や不整合に伴う設計変更処理を行う前と行った後とで、保持するか否かの処理を言い、これもいずれかを選択する。この項目は、家具を設置する場所によっては、家具の大きさが正確に定まる必要があり、設計変更処理によって家具の外寸が自動的に変更されないようにするためのものである。
また、「前板間隔」とは、ユニットに引き出しが挿入されており、かつ引き出しの前板(引き出しに向かって手前側の板)が、側板や天板に被さっている場合に(アウトセット)、隣接するユニットの前板間で保持すべき間隔を言う。この項目が設けられているのは、引き出しを持つユニットが隣接して組み合わされた場合に、設計変更処理が行われると、デザイン上や機能上の理由から前板間の間隔を調整する処理が必要になることによる。
また、台輪(家具の一番下にある高さ5〜10cm位で、上部部分よりやや引っ込んだ台の部分)を設けた家具を構成する場合に、台輪付のユニットを隣接させると、直方体の部分より台輪部分がやや引っ込んでいるため、台輪どうしは直接接しない。そのため、側板や天板の重複の場合と同じような設計変更処理ができない。そこで、「台輪調整」とは、設計変更処理の際に、この台輪部分をどのように処理するかをあらかじめ定めておくためのものである。図中の「する」とは、各ユニットの台輪に対して設計変更処理を行うか否かを選択する項目である。「蹴込み板延長」とは、設計変更処理を行った場合に、台輪の前面に全部の台輪の前面に跨って一枚の化粧用の蹴込み板を設ける処理を行うか否かを定める項目である。また、図中の「交換」とは、隣接するユニットの複数の台輪を、一体化された一つの台輪に交換することを言う。
これらの他に、部材の重複または不整合の例として、カウンタトップを設けたユニットの場合も挙げられる。カウンタトップの左右幅に関しては、ユニットの左右幅より片側で0.2mm〜0.5mm程度大きくなるように、いわゆる「チリ」が設けられるのが普通であるが、このようなカウンタトップを設けたユニットどうしが左右に隣接する場合に、左右にチリ分だけ突出しているカウンタトップだけが接し、側板どうしは接触せずにチリの2倍長さだけの間隔が空いてしまうことになる。この場合に、不整合と判断して、カウンタトップが接している部分のチリを無くするようにしても良い。同様な事情は天地被せのユニットに関しても生じ得る
上記のように、部材の重複または不整合が生ずる場合はあらかじめ決まっているから、プログラム中にはそれらの検知手段と、それらの重複または不整合が検知された場合に選択しうる対処方法とがあらかじめ設けられている。
図3では、設計変更処理の対象となる設計条件設定の例として、上記のものを例示したが、例えば、隣接する天地ユニットの互いに接する天板や底板を、一枚の天板や底板にそれぞれ交換するか否かを選択する項目等を設けるようにしても良いし、また、部材の重複が生じた場合に、重複を解消して部材を消去するのではなく、接している2面のそれぞれの表面化粧を行わないようにする項目を設定するようにしても良い。さらにその他の項目を設けても良く、特に制限されない。このように部材の重複や不整合が生じた場合にどのように対処するかの方法をあらかじめ定めることにより、家具設計装置で取り扱う家具の仕様やデザインに従って異なる対処方法を選択することが可能になり、各種の家具を設計できる柔軟性を持たせることが可能になる。例えば、できるだけ板重複を無くして少ない部材でコストパフォーマンスに優れた家具を設計することや、トメ接ぎを多用すると共に板の重複を逆用して重厚なデザインの家具とすること等のいずれも可能となる。これら設定されたデータは記憶部の所定アドレスに格納される。
次に、家具設計条件の設定が完了すると、実際に家具を表示画面上で構成する家具設計処理を行う(図2のS300ステップ)。この処理を図4のフローチャートを用いて詳しく説明する。処理がスタートすると、まず、家具設計画面がディスプレイ上に表示される(S310ステップ)。家具設計画面の例を図5に示す。この家具設計画面1では、画面上半分のユニット表示枠2に、家具設計に使用できるユニット10の正面図が複数表示され、これらからユニットを選択できるようになっている。枠2の右端にはユニットの次候補を表示可能にする次候補ボタン4が設けられ、枠2の左端にはユニットの前候補を表示可能にする前候補ボタン3が設けられている。
ユニット表示枠2に表示されるユニット(またはそのアイコン)は、ユニット情報記憶手段に格納されている標準サイズのユニット情報に対応している。なお、ユニットは、標準サイズをデフォルトとしており、必要により所定の操作により標準寸法を修正することでサイズ変更することができる。また、画面下半分には、ユニット配置枠5が表示され、画面左下隅に原点8を有するXY座標軸6、7を基準として、各ユニットが配置可能となっている。
なお、この例では、説明を簡単にするために家具やユニットの正面図だけを画面表示しているが、実際の設計データは仮想の三次元設計空間内のものとして取り扱われるから、それから得られる平面図や側面図を併用しても良く、斜視図を同時に画面表示するようにしても良い。また、この例では、やはり説明の簡単化のために、ユニット配置枠5の画面座標系は、家具に設けられた全体座標系(家具に向かって左下隅手前に原点があるものとする)と、表示画面に固定された座標系であるX軸6とY軸7と座標原点8とが一致するようにしているから、家具は、ユニット配置枠5の左下隅を家具全体の座標原点として設計することになる。家具の全体座標系の原点位置や軸方向と画面座標系のそれらとが異なっていても良いのは言うまでもない。また、この例では、各種操作を指定するためのボタン類やツールバー等を特に表示していないが、必要により表示することは任意である。
設計画面が表示されると、ユニットを選択・移動して目的とする家具を構成する処理を行う。まず設計終了処理とユニットの選択処理のいずれかが行われるまで、S320と230ステップとを繰り返す待ち状態となる。設計終了処理が行われた場合は、S320ステップから右に分岐して家具設計処理が終了する。また、いずれかのユニットの選択処理が行われた場合は、フローはS330ステップから下に分岐して、選択されたユニットのサイズ変更処理を行うか移動処理を行うかの処理選択ステップに入る(S340ステップ)。そして、S350ステップで、選択されたユニットの一辺が指定されてドラッグされることでユニットのサイズが変更される。
また、S360ステップでは、選択されたユニットがドラッグされて移動する。ここで指定されたユニットが、ユニット表示枠2のユニットである場合には、ユニット画像のコピーが移動するように処理がなされ、移動位置が決まった段階でユニットの標準仕様情報に従ってコピーが画面表示される。一方、指定されたユニットがユニット配置枠5にすでに配置されたものである場合は、指定されたユニットの位置を単に移動する処理がなされる。これを複数回繰り返すことにより、任意のユニットをユニット配置枠5の任意の位置に配置できるから、自由な構成の家具を設計することができる。このように簡単な操作で家具を設計できるので、家具設計の素人である購入者も容易かつ直感的に家具を設計することができる。
続いて、重複または不整合の検知手段と、それに対応した設計変更手段とが実行される。以下では、3つの具体例を用いて説明するが、重複または不整合の検知対象はこれらに限定されるものではない。まず、重複解消処理を行うか否かの判断を行う(S370ステップ)。この判断ステップでは、設計条件設定処理(S200ステップ)において重複解消処理に関して入力された結果に従う。重複解消処理を行わない旨が設定されている場合は、フローは右に分岐してS390ステップに移行する。重複解消処理を行う旨が設定されている場合は、フローは右に分岐して重複解消処理を実行する(S380ステップ)。ユニットに関する何らかの処理がなされるごとに重複板解消処理を行うようにすることで、最終的に得られる家具の外観と、画面上に表示される家具の外観とを常に一致させることができる。
S380ステップの重複解消処理を図6のフローチャートを用いて詳しく説明する。まずS350ステップかS360ステップで処理対象となったユニットに付されている一体化フラグが外して、部材ごとに分解し、個別に処理できるようにする。ユニットは、デフォルトではユニットごとに一体として移動等の処理がなされるよう一体化フラグが有効になっているので、ユニットを構成する部材ごとに検知処理や寸法変更処理等が行えるようにするために、一体化フラグを外すか若しくは無効化する処理を行う(S381ステップ)。これにより、部材ごとの処理が可能になる。
ここでユニットのデータ構造とユニットの分解とを簡単に説明する。図7(1)は、側板被せのもっとも簡単なユニット10の模式的な斜視図である。また、図7(2)はそのユニットのデータ構成の概念図である。ユニット10は、底板20、2枚の側板30、40、天板50及び図示されない背板が、脚無しの直方体になるように組み合わされている。ユニット10には、図7(1)に向かって手前側左下隅を原点11とし、原点から右向きにx1軸12、上向きにy1軸13、図面手前側から奥に向かうz1軸14からなる局所座標系が固定されている。このユニット10は、原点11から対角頂点15に延びたベクトルで外形が規定され、これに側板被せまたは天地被せ等の別と板厚とにより、内部の形状が規定される。各部材は、図5(2)に示したように、後述の一体化フラグによりユニット全体に結びつけられており、一体化フラグが有効となっている場合は、ユニット全体として移動やサイズ変更の処理がなされるが、一体化フラグが無効とされたあとは、部材ごとに処理を行えるようになる。
図6のフローチャートに戻り、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットまたは部材に、他の部材との重複が生じているか否かが検知される(S382ステップ)。この検知は、処理対象となった部材と厚み方向が同じで、かつ厚み方向に直角の面どうしが接する他の部材があるか否かを、処理対象となった部材が占める空間座標と、他の部材が占める空間座標とを比較することで行う。具体的には、S350またはS360ステップで処理対象となったユニットまたは部材が占める空間座標に基づいて、部材の各面の位置座標により判断される。なお、各ユニットの移動に際しては、実際のユニットや部材同様に互いに排他的である必要があるから、設計画面上で既配置のユニットに対して、新たに他のユニットを配置した場合に、既配置のユニットまたは部材が占める空間座標と、新たに配置された他のユニットまたは部材が占める空間座標とを比較する比較手段と、既配置ユニットが占める空間に新配置のユニットが入り込ませる入力がなされた場合に、その入力を無効とする重複回避手段とが設けられている。従って、ここでいう重複とは、実際の家具の部材における構造上の重複と同じ意味である。
S382ステップで部材の重複がないと判断された場合、例えば、移動されたユニットが家具設計の最初のユニットであるような場合は、フローは右に分岐して重複板解消処理を終了する。一方、部材(板)の重複有りと判断された場合は、フローは下に分岐して、重複部材を消滅させるか否かを判断する(S383ステップ)。この判断は、S200ステップの設計条件設定において、側板消去を行うことが選択されていたかどうかを参照して行う。消去する旨がいずれも選択されていない場合はフローは右に分岐して重複板解消処理を終了する。一方、少なくともいずれかを消去する旨が選択されている場合は、フローは下に分岐して、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットまたは部材のうちの、他の部材と重複している部材であって消去対象となっている部材を消去する(S384ステップ)。これにより重複状態が解消される。
ここで、消去された部材を介して、ユニットどうしが互いに接合される状態となっていた場合は、上記の消去の結果、残った部材間に予定されない間隙が発生して家具が構成できなくなる。そのため、消去により新たな間隙が発生したか否かが続いて判断される(S385ステップ)。この判断もそれぞれの部材の空間座標を比較して行われる。部材間に新たな間隙が発生していない場合は重複解消処理を終了する。新たな間隙が発生している場合は、家具の外寸を保持するか否かが判断される(S386ステップ)。外寸を保持するとは、画面上に構成されている家具の外寸寸法を変化させないで重複解消処理を行うことを言う。この判断は、S200ステップの設計条件設定において、外寸の保持が有りと選択されているか否かを参照して行う。
外寸を保持する場合は、フローはS386ステップから右に分岐して、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットまたは部材のうち、消去された部材に接合していた部材の長さを、消去された部材の方向に延長することで間隙を埋めるように処理する(S387ステップ)。すなわち、部材が有する空間座標を変更することで間隙を埋める処理を行う。これにより、家具の部材間の長さが変化するが、家具の外寸は保持したまま、間隙を埋めることができる。一方、外寸を保持する旨が選択されていない場合は、フローは左に分岐して、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットまたは部材の全部を、生じた間隙を埋める方向に平行移動する(S388ステップ)。この結果、家具の外寸が変化するが、家具の部材間距離は保持したまま間隙を埋めることができる。これで重複板解消処理の一連のフローが終了する。
ここで、図8を用いて、重複板解消処理をより具体的に説明する。図8(1)は、底板20aと右側板30aと左側板40aと天板50aとからなるユニットaがまずユニット配置枠に配置されており、さらに底板20bと右側板30bと左側板40bと天板50bとからなる同じ大きさのユニットbが、ユニットaの向かって右に接するように移動・配置された状態を示す正面図である。各ユニットの幅をw、高さをhとする。この場合、ユニットaの右側板30aとユニットbの左側板40cとが、接触面62で互いに接して重複状態となっている。
この重複状態を解消する旨があらかじめ選択されており、さらに側板消去を行う旨があらかじめ選択されていると、図8(1)に記載されたようにユニットbがユニットaに接して配置されると、図8(2)に記載のように、直ちに新しいユニットbの左側板40cが消去され、左側板40cがあった部分に間隙が生じる。このままでは、既配置のユニットaと新しく移動してきたユニットbとが接合されない状態となるので、この間隙を埋める処理が必要となる。
ここで、外寸の保持を行う旨があらかじめ選択されている場合には、ユニットbの天板50cと底板20cの長さが接触面62に到達する方向にサイズ変更(延長)されて間隙が埋まる。その結果、図8(3)に示す家具が得られる。図8(3)に示された家具は、高さがhで幅が2wと、図8(1)の家具と同じ外寸であり、左側板40cの消去にもかかわらず家具の外寸が保持されている。
一方、家具の外寸を保持する旨が選択されていない場合の処理結果を図8(3’)に示す。(3’)は、図8(2)において、天板と底板のサイズ変更を行わず、ユニットc全体を間隙を埋める方向(図中のA方向)に平行移動し、ユニットaとユニットcとを接合したものである。図8(3’)の家具は、図8(3)の家具とは異なり、左側板40cの厚み分だけ、幅が元の2wよりも小さくなっている。つまり、家具の外寸が保持されていない。
このように重複板解消処理を行うことで、ユニットの組み合わせにより家具を構成することにより生じる、構造上またはデザイン上の重複を解消することが可能になり、家具設計装置でユニットの組み合わせにより設計できる家具の範囲が拡がる。この結果、家具設計の素人でも容易に好みの家具を設計できるようになる。
次に、図4のフローチャートに戻り、被せ修正処理を行うか否かを判断する(S390ステップ)。ここにいう被せ修正処理とは、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットが引き出し構成部材、棚板、扉、背板、バックパネル、カウンタ天板等のパーツ類を含むものであった場合に、重複板解消処理により引き出しや扉類に生じた接合状態や大きさの不整合を解消するための処理を言う。この判断は、S200ステップの設計条件設定において、前板間隔の数字が入力されているか否かを参照して行う。数字が入力されていない場合は、下に分岐してS410ステップに移行する。一方、数字が入力されている場合は、被せ修正処理を行うので、フローは右に分岐して被せ修正処理が実行される(S400ステップ)。
この被せ修正処理のフローを、図9のフローチャートを用いて、引き出しの場合を代表例にとって具体的に説明する。処理がスタートすると、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットが、引き出し等の被せ処理を必要とするパーツ類を含むものであるか否かが判断される(S401ステップ)。この判断は、あらかじめユニットごとの仕様を定めているユニット情報およびそれに組み合わされたパーツ類の情報とを参照して行う。いずれも含まない場合、被せ修正処理を行う必要がないので処理を終了する。
処理対象となったユニットにパーツ類のいずれかを含む場合は、フローはS401ステップから下に分岐して、処理対象となったユニットにおいて重複板の消去処理がなされたか否かが判断される(S402ステップ)。消去処理がなされていない場合、引き出しや扉類の不整合は生じないので、そのまま処理を終了する。一方、重複板の消去処理がなされている場合は、不整合が生じている可能性があるので、フローはS402ステップから下に分岐して、処理対象となったユニットに上下方向または左右方向に隣接するユニットにおいて、引き出し等のパーツ類が含まれているか否かを判断する(S403ステップ)。これは、隣接するユニットに引き出しなどが有るかどうかによって、処理の内容が変化するためである。
隣接するユニットに引き出しなどが含まれている場合、フローはS403ステップから下に分岐して、S200ステップの設計条件設定において入力された前板間隔の数字を用いて、前板どうしまたは扉どうしの間隔が、入力された数字となるようにそれぞれの前板または扉の辺の位置を変更して対称的になるように調整する(S404ステップ)。また、合わせて引き出しの側板や底板の位置とサイズも調整する。これにより、隣接する引き出しの前板や扉どうしがぶつかったり、それらの間に予定しないすきまが生じたりすることが無くなる。
また、隣接するユニットのいずれにも引き出しなどが含まれていない場合は、フローはS403ステップから左に分岐して、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットの、引き出しの前板等や扉類の大きさを消去された部材の方向に延長し、合わせて引き出しを構成する部材を移動することで調整する。これで被せ修正処理を終了する。
上記の被せ修正処理を、図10を用いてより具体的に説明する。図10(1)は、既配置のユニットaの右隣に、引き出しを含むユニットeを接触面66で接するようにして配置した状態の正面図である。なお、ユニットeは、底板20eと右側板30eと左側板40eと天板50eと引き出しとからなり、引き出しは側板及び底板(いずれも図示されていない)とアウトセットされた前板70とからなる。前板は側板や天板等の厚みの半分の距離に達する大きさである。
ここで、上記の重複板解消処理が実行されると、ユニットeの左側板40eが重複状態にあるため消去される。この状態を図10(2)に示す。左側板40eが消去されたため、引き出しの側板や底板とサイズが合わなくなり、さらに前板の左側には予定されない隙間67が生じることになる。そして、外寸を保持する旨が設定されていると、天板と底板とが接触面66に向かう方向に延長されて右側板30aと接合する。この状態を図10(3)に示す。これで重複解消処理が終了することになるが、これだけでは、すきま67は残ったままである。そこで、ユニットeの前板を含めた引き出しのサイズを、隙間67を覆うように図面に向かって左側に前板や底板の拡張および側板部材の移動を行い、前板の左端辺がユニットaの右側板30aの厚みの半分に達するように、被せ修正処理が行われる。このようにして得られた家具の状態を図10(4)に示す。部材の重複が解消されると共に、予定しない隙間が生じないように処理されている。
なお、ユニットaも引き出しまたは扉類等のパーツ類を含むユニットであった場合は、ユニットeの前板の左端辺と、ユニットaの前板の右端辺との間隔が、S200ステップの設計条件設定において入力された前板間隔の数字に合致するように、サイズ変更がなされる。これらのように被せ修正処理がなされることで、ユニットaが引き出しや扉類を含むユニットである場合も、部材の重複や不整合が生じない家具を設計することが可能になる。
次に、また図4に戻り、台輪修正処理を行うか否かが判断される(S410ステップ)。この判断は、S200ステップの設計条件設定において、台輪調整の項目の「する」にチェックが入力されたか否かにより判断する。チェックがない場合、フローは台輪修正処理を行わずにS320ステップに戻り、以下終了処理がなされるまで処理サイクルを繰り返す。一方、台輪調整の項目の「する」にチェックが入力されている場合には、フローはS410ステップから右に分岐して台輪修正処理が実行される(S420ステップ)。この台輪修正処理を図11のフローチャートを用いてより具体的に説明する。
まず、図4のS350またはS360ステップで処理対象となったユニットが台輪を含んでいるか否かが判定される(S421ステップ)。この判定は、処理対象になっているユニットのユニット情報を参照して行う。台輪を含まない場合はそのまま台輪修正処理を終了する。台輪を含む場合は、フローは下に分岐して、処理対象ユニットの左右の少なくともいずれかに隣接して他のユニットが配置されているかどうかを判断する(S422ステップ)。配置されていない場合は、台輪修正の必要がないのでそのまま台輪修正処理を終了する。一方、隣接して他のユニットが配置されている場合は、その他のユニットも台輪を含むと考えられるから、台輪間に予定しない間隙が生じて不整合となる。
そこで次に、処理対象ユニットと他のユニットの台輪を合わせて、一体化された一つの台輪に交換するか否かが判断される(S423ステップ)。この判断は、S200ステップの設計条件設定において、「交換」の項目にチェックが入力されているか否かにより判断される。チェックが入力されていない場合は、フローは下に分岐してS424ステップに移行し、隣接する台輪の前面に、台輪をつなぐようにして一枚の蹴込み板を設ける処理が実行される(S424テップ)。これにより台輪間の間隙が見えなくなる。必要な場合は、台輪の後面にも蹴込み板を設ける。これで台輪修正処理が終了する。
このように台輪修正処理を行うことで、ユニットを組み合わせた場合に生じる台輪間に予定しない間隙が生じるという不整合を的確に処理することが可能になり、家具設計の素人でもユニットを組み合わせて容易に台輪を用いた家具を設計できる。
この台輪修正処理を、図12を用いてより具体的に説明する。図12(1)は、既配置の台輪付ユニットfの向かって右隣に、新しく同じく台輪付のユニットgが、接触面68で接するように配置された状態を示した正面図である。ユニットfの台輪80fと、ユニットgの台輪80gの間には、予定されない台輪間隙81が生じて不整合となっている。これに上記の側板の重複解消処理と台輪修正処理とを行う。
図12(2)は、側板に対する上記の重複解消処理がなされ、さらに二つの台輪の前面をつなぐように一枚の蹴込み板を設ける台輪修正処理を行った結果を示した正面図である。蹴込み番の裏側では、台輪間隙81は残ったままであるが、蹴込み板82により正面からは間隙81が見えなくなっている。
また、図12(2’)は、ユニットfの台輪80fとユニットgの台輪80gとを、一体化された一つの台輪85に交換した場合を示した正面図である。この場合、台輪の奥行き方向部材84は両端に二本だけとなり、統一感のあるすっきりした外観を与えることができる。
台輪修正処理が終了すると、図4のフローはS320ステップに戻り、再び処理対象となる新しいユニットが指定されるか、または設計終了処理がなされるかの待ち状態に戻る。家具を構成する操作が継続する限り、S320〜S420ステップを繰り返し、家具の構成が完了して終了操作がなされた段階で、フローはS320ステップから右に分岐して家具設計処理が終了する。これで図2のS300ステップが終了し、続いてS500ステップの図面作成処理に移行する。
図面作成処理では、あらかじめ用意されたテンプレートを利用して家具全体設計図、家具部材設計図、部材リストがそれぞれ作成され、それらの保存と必要な出力がなされる。これで家具設計処理が終了する。
このように、ユニットを組み合わせて家具を設計する際に、家具の部材の重複や、引き出しや扉類の処理、さらには台輪の処理のような、単純にユニットを組み合わせただけでは処理できない部分を、デザインや設計者の好みに合わせた処理を選択できるので、家具設計の自由度が高くなる。また、部材の重複や不整合が生じても、それらを解消する処理を選択できるので、すっきりしたデザインの家具から重厚な印象の家具までを自由に設計可能になる。その際、家具設計の素人でも容易に目的とする家具を設計することが可能になる。
次に、このような家具設計方法を実行するための家具設計装置の構成について説明する。図16は、家具設計装置をスタンドアロンのコンピュータを用いて構成した場合の制御面からみた概略構成を示した図である。家具設計装置は、ハードディスクのごとき記憶装置により構成された記憶部210と、CPUとRAM内に、記憶部から随時読み出されたプログラムとデータとで構成された処理部200と、必要によりインターネット等に接続するための通信インターフェイス230と、キーボードやマウス等の入力手段としての入力デバイス222と、CRTや液晶表示装置等の画面表示装置であるディスプレイ220と、プリンタ221とが、必要なインターフェイスを介して共通バスで接続されて構成されている。
まず、コンピュータの記憶部210から説明する。記憶部210には、家具仕様情報211、設計条件情報212、ユニット情報213、ユニット部材情報214、個別家具設計情報215、定型図面情報216、個別家具図面情報217、及びコンピュータの動作に必要な各種のプログラム類や操作に必要な画面情報類(図示していない)が格納されている。
家具仕様情報211は、家具設計の前段階として、ユニット群ごとに、群に含まれるユニットに共通する板の接合構造、北欧風、イタリア風、ドイツ風、現代風、和風等を含む基本デザインのパターン、標準の色調及び選択できる色調の範囲、板の厚みやユニットの寸法等の標準サイズなどの、家具を構成するユニット群を選択する際に必要な情報を画面表示するための画面情報が格納されている。
設計条件情報212は、複数のユニットを組み合わせて家具を設計する際に生じる、部材の重複や不整合を解消するために、選択できる対処方法の情報が格納されている。具体的には、図3に示したがごとき選択画面を表示するための画面情報が含まれる。さらに、家具設置位置の寸法や、目標とする家具の外寸を設定できる画面の画面情報等を含めても良い。
ユニット情報213は、家具の部材である複数種類のユニットの標準設計情報の集合であり、ユニット群ごとに、そしてユニット群に含まれるユニットごとに、ユニットに固定されている局所座標系、全体形状を決める関数、側板被せか天地被せか等の接ぎ構造と奥板や脚等のユニットの付属品、引き出しや扉類や台輪などが含まれているかどうか、板厚、局所座標系における標準サイズの場合の対角頂点座標等の、各ユニットを設計するために必要な情報が、あらかじめ定められて格納されている。
ユニット情報213を格納したテーブル例の概念図を図14に示す。図14の例において平行直方体とは、各辺が局所座標系の各軸に平行な直方体を言い、対角頂点標準座標とは、ユニットに固定された局所座標により定められる、原点と対角位置にあるユニットの標準的な頂点座標を言う。数字は対角頂点座標の一例を示している。なお、この例に示された標準的なユニットは、各辺の長さが同じ立方体形状であるが、それに限定されるものではない。部材テーブルとは、ユニットを構成する部材の情報を格納したテーブルのIDまたはそれが格納されているアドレスを言う。一体化フラグとは、これが有効の場合には、ユニットを一体として選択・移動を可能とし、一方、無効の場合は、ユニットを部材ごとに分解して、部材単位で選択・移動を可能とするフラグである。
ユニット部材情報214は、ユニット情報213において特定された、各ユニットを構成する複数の部材の設計情報である。図15にその例の概念図を示す。図15は、図14のユニット番号01のユニットを構成する部材の部材テーブル0001にあたる。ユニットを構成する4つの部材が、部材の形状、部材に固定された局所座標系の、ユニットに固定された局所座標系から見た原点位置、対角頂点座標で規定される部材の大きさ、部材の厚み方向を特定するデータが格納されている。この例では、部材のサイズ修正は、対角頂点座標を変化させることにより行われる。これによりユニットが家具設計空間内に配置された場合の各部の空間座標が特定できる。
個別家具設計情報215は、家具設計装置で設計された個別家具の設計情報の集合であり、どのユニットをどの位置に配置するかを家具ごとに特定する。個別家具設計情報215は、設計処理がなされるたびに新たに生成されるか、または既存の情報が修正される。家具または家具設計画面に固定された全体座標系に基づいて、各ユニットに固定された局所座標系の原点位置を特定することで、家具の構成が特定される。
定型図面情報216は、実際の家具製作に必要な家具全体設計図、家具部材設計図、部材リスト等のあらかじめ作成されたテンプレート情報が格納されている。これらを個別家具設計情報215と組み合わせることで、個別家具を製作するために必要な個別の設計図やリストの集合である個別家具図面情報217が生成できる。
次に、家具設計装置の処理部200の機能について説明する。処理部200は、家具仕様設定部201、設計条件設定部202、家具設計処理部203、重複解消処理部204、被せ修正処理部205、台輪修正処理部206、家具図面出力部207等を備えている。家具仕様設定部201は、新しい家具の設計処理が開始されたときに、家具設計の前提となるユニット選択等の入力を促す画面情報を、家具仕様情報211から読み出してディスプレイ上に表示し、画面から入力された選択データを個別家具設計情報215に格納する処理を行う。具体的には図1のフローチャートのS100ステップの処理を行う。
設計条件設定部202は、図2のフローチャートのS200ステップの処理を行い、家具仕様設定部201が受け付けた家具仕様に基づき、家具設計に際して生じる板重複や部材の不整合などの処理方法等を選択するための画面情報を、設計条件情報212から読みだして画面表示する。画面から家具設計に使用するユニット群の選択情報が入力されると、記憶部の個別家具設計情報215に格納する。
家具設計処理部203は、図2のS300ステップのうち、図4のS310〜S360ステップまでの処理を行い、家具設計画面上で、ユニットの指定、移動、サイズ変更等の各入力を随時受け付け、入力に従って各ユニットを操作して、目的とする個別家具を表示画面上で組み立てる処理を行う。なお、各ユニットや部材の移動に際しては、実際のユニットや部材同様に互いに排他的とするために、家具設計処理部203は、設計画面上に既配置のユニットが有る場合に新たに他のユニットを配置すると、既配置のユニットまたは部材が占める空間座標と、新たに配置された他のユニットまたは部材が占める空間座標とを比較する比較処理と、既配置ユニットが占める空間に新配置のユニットが入り込ませる移動入力がなされた場合に、その移動入力を無効とする重複回避処理とを随時行う。
重複解消処理部204は、図2のS300ステップのうち、図4のS370ステップの処理とS380ステップすなわち図6のフローチャートの処理とを行い、重複部材の検知、消去、予定されない間隙の発生の検知、間隙が発生した場合のサイズ変更処理または移動処理を行う。
被せ修正処理部205は、図2のS300ステップのうち、図4のS390ステップと、S400ステップすなわち図9のフローチャートの処理とを行い、処理対象ユニットが引出しや扉類等を含むか否かや、含む場合に、先行するステップで生じた不整合の検知及び、その不整合を解消するためのサイズ変更処理または移動処理を実行する。
台輪修正処理部206は、図2のS300ステップのうち、図4のS410ステップの処理とS420ステップすなわち図11のフローチャートの処理とを行い、台輪の検知(これが不整合の検知手段となる)、台輪の交換や蹴込み板の設置等の設計変更手段を実行する。
家具図面出力部207は、図2のS500ステップの処理を行い、家具設計処理により得られた個別家具設計情報215に基づき、定型図面情報216に格納されているあらかじめ用意されたテンプレートを利用して、個別家具の家具全体設計図、家具部材設計図、部材リストをそれぞれ作成して出力または保存する。
以上、家具設計方法の説明及び、家具設計装置としてのコンピュータの構成及び動作の説明を通じて本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の具体的態様に限定されるものではなく、様々な変型が可能である。例えば、上記では、ユニットに対する個々のサイズ変更処理や移動処理がなされるごとに、重複板解消処理、被せ修正処理、台輪修正処理等がなされる例で説明したが、ユニットを組み合わせて家具全体の構成が完成してから、重複板解消処理、被せ修正処理、台輪修正処理等を行っても良い。また、重複板解消処理や被せ修正処理はユニットに対するサイズ変更処理や移動処理ごとに行い、台輪修正処理は家具全体の構成が完成してから行うように、不整合の種類によって異なる処理時期を選択できるようにしても良い。個々のサイズ変更処理や移動処理がなされるごとに重複板解消処理等を行う方が、画面表示された家具と実際に得られる家具の外観が常に一致しているのでより好ましい。
また、上記では、重複部材が生じた場合に、新しく配置されたユニットに含まれる重複部材を消去するようにしているが、既配置のユニットの重複部材を消去するようにしても良いし、二つの重複部材を新しい単一の部材に交換するように処理しても良く、重複を解消する方法は任意である。ただし、新しく配置されたユニットの重複部材を消去する処理を行うのが処理の上で簡便であり好ましい。
また、上記では、ユニットを組み合わせにより生じる重複または不整合の検知手段及び、それらに対処する設計変更手段として、3つの具体例を用いて説明したが、いずれか1つまたは2つを有するようにしてもよいし、これら3つに加えて他の重複または不整合に関して、それぞれの検知手段と設計変更手段とを備えるようにしても良い。他の重複または不整合としては、例えば、互いに隣接する複数の天板または底板が有る場合に、それらを単一の天板または底板に交換する検知手段と設計変更手段とを備えていても良い。これにより、部材の接合の手間が減少すると共に、構造的に強固な家具が得られる。また、天板の上にカウンタトップを備えたユニットの場合に、カウンタトップの側面どうしが接触する状態を重複または不整合とする検知手段と、その場合に、接触した側のカウンタトップのチリを無くするようにする設計変更手段とを設けるようにしても良い。同様な処理は、天地被せのユニットどうしが左右に隣接して配置された場合にも行うことができる。
また、上記では不整合の例として引き出しや台輪の例を用いて説明したが、ユニットを構成する部材を互いに接合するためのダボやダボ穴または嵌め込み溝等の、位置、長さ、深さ、数を含めるようにしても良い。また、カウンタ天板の向かって手前側への飛び出し長さを含めるようにしても良い。これはカウンタ天板を有する複数のユニットのいずれかに、引き出しを設けるようにした場合に、その引き出しの前板の厚みに合わせてカウンタ天板の飛び出し長さを大きくするのであるが、隣接するユニットのカウンタ天板の飛び出し長さを引出を有するユニットの飛び出し長さに合わせる処理である。
さらに、上記では、二枚の側板と一枚ずつの天板と底板と背板とを有するユニットを基本に説明したが、複数のユニットが組み合わされたものを単位として家具を構成するようにしても良い。例えば、3×3となるようにユニットを組み合わせた複合的単位を構成し、これを組み合わせて家具を構成しても良い。この場合に、複合的単位に含まれる各ユニット間の重複または不整合に関しても、上記と同様に解消処理を適用することができるし、また、複合的な単位間に上記と同様な解消処理を適用することもできる。
また、上記では、重複が生じる例として側板どうしの重複の例を用いて説明したが、上下にユニットが積層された場合の天板と底板との重複およびそれに対する解消処理も含めるようにしても良い。ただし、上下にユニットを積層する場合、強度の問題が生じやすいので、重複解消するより、互いに重複する天板と底板とを互いにネジなどにより接合する処理を行うようにするのが好ましい。
また、上記の各種処理の結果、側板どうしの間隔や底板と天板との間隔等のような、対応する部材間距離が1つの家具内で個別に変化することになりやすいから、それらを一定に揃えてデザイン上の統一感を持たせるように、部材位置を修正する処理部を設けても良い。
また、上記では、設計に使用できる全部のユニットについて、重複や不整合の検知手段と、それを解消する設計変更手段とがあらかじめプログラム内に設定された例で説明したが(図3)、ユニットごとに重複または不整合の条件を設定し、これに対する設計変更手段の条件も設定できるようにしても良い。例えば、既配置のユニットに接するように新たなユニットにを配置した場合に、新たなユニットの既配置ユニットに接する部材が自動的に消去されるユニットと、同じように配置しても既配置ユニットに接する部材が消去されないままのユニットとを区別してあらかじめ設定できるようにしても良い。このようにユニットごとに検知手段と設計変更手段とをあらかじめ設定できるようにすると、家具設計の自由度がより大きくなる。
また、本発明は、コンピュータに上記の家具設計方法を実行させるためのプログラムであってもよい。また、そのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。ここで、記録媒体とは、フレキシブルディスク、CD、DVD、MO、フラッシュメモリ等のリムーバブル媒体、内蔵か外付けかを問わないHD等をいう。
Claims (11)
- 複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計できる家具設計装置であって、前記ユニットの設計情報を格納したユニット情報記憶手段と、隣接する前記ユニット間で前記部材の重複または不整合が生じる場合に、あらかじめ定められた中から対処方法を選択できる選択手段と、前記の部材の重複または不整合を検知する検知手段と、前記検知手段が前記の部材の重複または不整合を検知した場合に、前記選択された対処方法と前記設計情報とに基づいて、当該重複または不整合を解消する設計変更手段とを備えたことを特徴とする家具設計装置。
- 前記の対処方法に、前記検知手段が前記の部材の重複を検知した場合に、前記の設計変更手段が、当該重複する部材のいずれかを消去する方法を含むことを特徴とする請求項1に記載の家具設計装置。
- 前記の対処方法に、前記検知手段が部材の不整合を検知した場合に、前記の設計変更手段が、当該不整合となる部材のサイズ変更を行う方法を含むことを特徴とする請求項1に記載の家具設計装置。
- 前記の不整合となる部材が、引き出し構成部材、棚板、扉、背板、バックパネル、カウンタ天板からなる群から選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の家具設計装置。
- 前記の対処方法に、前記のサイズ変更に際して、部材のサイズを変更するが家具の外枠位置は変更しない方法を含むことを特徴とする請求項3に記載の家具設計装置。
- 前記の対処方法に、前記検知手段が部材の不整合を検知した場合に、前記の設計変更手段が、当該不整合となる部材の交換を行う方法を含むことを特徴とする請求項1に記載の家具設計装置。
- 前記の部材の不整合が台輪間の間隙の発生であり、前記の交換が、一体化された台輪への交換であることを特徴とする請求項6に記載の家具設計装置。
- 前記の検知手段は、前記表示画面上に家具として既配置の部材が占める空間座標と、最新に配置された部材が占める空間座標とを比較して、前記の重複または不整合を検知することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の家具設計装置。
- 複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計できる家具設計方法であって、隣接する前記ユニット間で前記部材の重複または不整合が生じる場合に、あらかじめ定められた中から対処方法を選択するステップと、前記の部材の重複または不整合を検知するステップと、前記検知ステップで前記の部材の重複または不整合を検知した場合に、前記選択された対処方法とユニット情報記憶手段に格納された前記ユニットの設計情報とから、当該重複または不整合を解消するステップとを実行することを特徴とする家具設計方法。
- 複数の部材からなるユニットを複数組み合わせて表示画面上で家具を設計する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、隣接する前記ユニット間で前記部材の重複または不整合が生じる場合に、あらかじめ定められた中から対処方法を選択できる選択機能と、前記ユニットの設計情報を格納したユニット情報記憶機能と、前記の部材の重複または不整合を検知する検知機能と、前記検知機能が前記の部材の重複または不整合を検知した場合に、前記選択された対処方法と前記設計情報とに基づいて、当該重複または不整合を解消する設計変更機能を実行させることを特徴とする家具設計プログラム。
- 請求項10に記載のプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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