JP2008209747A - 電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法、及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法、及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】 膜性の均一性が良好で、電気的特性と機械的特性とをより高い次元で両立させた電子写真感光体の製造方法、及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】 導電性支持体と感光層とを有し、且つ最表面層が不活性ガス雰囲気中で電子線照射により少なくとも硬化して改質される層である電子写真感光体において、該電子線照射時に電子線照射装置における電子線取出窓と被照射体である電子写真感光体との間の電子線軌跡上で、且つ該窓と該電子写真感光体の双方に接触しない位置に膜状部材を備え、該電子線を該膜状部材を透過させて電子写真感光体に照射することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法に関し、特に、最表面層が不活性ガス雰囲気中で電子線照射により少なくとも硬化して改質される層である電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法に関する。また、該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジに関する。
電子写真感光体の表面層には、帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、場合によってはクリーニング処理といった電気的あるいは機械的外力が繰り返し直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。一方で、電子写真感光体には、感度や残留電位及び電位安定性などの電気的特性も当然のことながら要求され、上述の耐久性と両立を計ることは難課題とされてきた。
こうした問題点に対して、重合性官能基を有する化合物を含有した表面層を、電子線照射によって硬化させて形成した感光体を用いることで、機械的強度と感度や残留電位などの電気的特性との両立を達成することが提案されている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、これらの場合、有機樹脂に対して高い透過性をもつ電子線を照射しているので、電子線は表面層に留まらず表面層より下層にもその高いエネルギーを与えている。そのダメージのため、残留電位や特に高速プロセススピードにおける繰り返し使用時の電位安定性などの感光体特性には、未だ改善の余地を残している。
上述の電子線照射による感光体劣化現象を軽減するためには、電子線の感光体に対する透過深度(被照射体表面からの浸透深さ距離)を落すことが有効な手段の一つとして挙げられる。被照射物に対する電子線の透過深度はその電子線の加速電圧に大きく依存することが知られる。しかし、使用する電子線照射装置によっては、特に電子線取出窓の昇温による技術的問題により、感光体劣化を十分に軽減できるほど低い加速電圧で電子線照射が行えない場合がある。
このような技術的問題を有する電子線照射装置において、感光体に対する電子線透過性をより軽減するような照射条件設計として、感光体に対する電子線透過深度が加速電圧に顕著に依存してビーム電流にはそれほど依存しないことを巧みに利用し、ビーム電流を硬化に必要な値よりも高めに設定して照射距離を遠ざけるという照射設計が考えられる。しかし、この場合、ビーム電流を必要以上に流す必要があるために電子線取出窓に過度の熱負荷をかけてしまい、また、照射距離を遠ざける必要があるために不活性ガス雰囲気に置換するのに必要な照射空間の容積が増えて置換システムの負担が大きくなってしまう。
すなわち、電子線照射によって感光体表面層を形成しようとする場合において、感光体の電気的特性と機械的特性とをより高い次元で両立するために、感光体に対する電子線透過深度をより軽減するような工夫を電子線照射装置に施すことは非常に有意義である。
工夫の一つとして、電子線透過窓の昇温を防ぐために該窓を冷却風により冷却する方法がある。しかし、電子写真感光体に代表されるように、塗膜に部分的白濁やムラなどの欠陥が全く無いような優れた膜性均一性を要求される対象物において、硬化前塗膜の近傍が冷却風に暴露されることは、有機溶剤の蒸発潜熱により塗膜温度が低下し雰囲気中の水分が塗膜上に結露するブラッシング現象が起きやすく、塗膜外観に悪影響を及ぼしやすくなる。
さらには、感光体表面層に用いる塗料中には比較的低分子の材料を多く含むため、常時あるいは電子線照射時において感光体表面から塗料分子が揮発しやすく、電子線照射装置における電子線取出窓の汚染が進行しやすいという問題も発生している。
特開平11−265085号公報 特開2000−66425号公報 特開昭54−143645号公報
本発明は、電子写真感光体の最表面層を電子線照射により硬化させる場合において特有に顕在化する上術課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明の目的は、既存の電子線照射装置において不活性ガス置換に必要な照射空間容積を増大させることなく、感光体に対する電子線透過深度を低減することができる電子写真感光体の製造方法を提供することである。そして、電子線照射装置に施す工夫としては、装置の大掛かりな改造を必要とせず、既存の電子線照射装置でも簡便に対処できるものであることがコスト的に好ましく、さらに、電子線の感光体に対する透過深度を微調整できるようなものであることが、膜厚や材料などが細微に異なる種々の電子写真感光体を製造する上で好ましい。
さらに本発明の目的は、膜性の均一性が良好で、しかも残留電位及び電位安定性と優れた耐摩耗性及び耐傷性とをより高い次元で両立した電子写真感光体を提供することである。
さらに本発明の目的は、該電子写真感光体を備える電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジを提供することにある。
導電性支持体と感光層とを有し、且つ最表面層が不活性ガス雰囲気中で電子線照射により少なくとも硬化して改質される層である電子写真感光体において、該電子線照射時に電子線照射装置における電子線取出窓と被照射体である電子写真感光体との間の電子線軌跡上で、且つ該窓と該電子写真感光体の双方に接触しない位置に膜状部材を備え、該電子線を該膜状部材を透過させて電子写真感光体に照射することを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
また、上記製造方法で製造された電子写真感光体、及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジである。
本発明は、電子線照射時に電子線照射装置における電子線取出窓と被照射体である電子写真感光体との間の電子線軌跡上で、且つ該窓と該電子写真感光体の双方に接触しない位置に膜状部材を備え、該電子線を該膜状部材を透過させて電子写真感光体に照射することから、既存の電子線照射装置に大掛かりな改造を必要とせず、不活性ガス置換に必要な照射空間容積を増大させることなく、感光体に対する電子線透過深度を低減することができる。そのため、膜状部材を備えないで、且つ膜状部材を備えた際と同じ加速電圧及び感光体表面吸収線量の電子線照射条件にて電子線照射して製造された電子写真感光体と比較して、残留電位及び電位安定性と優れた耐摩耗性及び耐傷性とをより高い次元で両立した電子写真感光体、及びそれを備える電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジを提供することができる。また、膜状部材を電子線取出窓と電子写真感光体との間に備えることにより、連続製造においても感光体の膜性均一性欠陥の発生を抑え、さらに電子線取出窓の汚染進行を抑制することができる。本発明の膜状部材には、汎用の樹脂やゴム材料を使用できるため、既存の電子線照射装置でも簡便に対処することができ、さらに樹脂やゴム材料はミクロンレベルの膜厚制御が比較的容易であることから、感光体に対する電子線透過深度及び表面吸収線量を微調整するのに好適である。
最表面層とは感光体の表面を形成する層を言い、最表面層に電子線照射により重合または架橋し硬化する樹脂を含有させる方法としては、電子線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を適当な溶媒に溶解し、該化合物を含有する感光体表面層用の塗布溶液を導電性支持体上に塗布し、その後に電子線を照射して硬化させる方法が挙げられる。この溶解液を導電性支持体上、あるいは感光層として寄与する少なくとも1層の上に塗布する方法は、例えば浸漬塗布法、スプレイコーテイング法、カーテンコーテイング法、スピンコーテイング法などが知られている。電子写真感光体を効率よく大量生産するには浸漬塗布法が最良であり、本発明においても浸漬塗布は可能である。
本発明の感光体の構成は、導電性基体上に感光層として電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した構成、または逆に電荷輸送層、電荷発生層をこの順に積層した構成、さらには電荷発生物質と電荷輸送物質を結着樹脂中に分散した単層より構成されるもののいずれの構成をとることも可能である。さらに前記感光層上に表面保護層を形成することも可能である。
本発明は少なくとも感光体の表面層に、電子線照射により重合あるいは架橋することで硬化する材料を含有させればよい。本発明では、適当な材料を分散させ前記の化合物を硬化させて感光層の全部を形成しても良いが、電子写真感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性及び耐久性の点より、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光体構成、または前記電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光層上に表面保護層を形成した構成が好ましい。本発明の利点は電荷輸送性を損なうことなく電荷輸送層または保護層を硬化することが可能になる点にもある。従って感光体表面に保護層を形成する構成の場合には、該保護層中の構成物質として、正孔輸送化合物など、電荷輸送機能を有する化合物が含有されていることが好ましい。
本発明で使用する、電子線照射により硬化して改質される表面層を構成する化合物は、電子線照射によって硬化が可能であるものであれば特に他の制約はない。ただし、中でも分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物は、反応性の高さ、反応速度の速さ、電子線照射による硬化によって達成される硬度の高さの点で好ましい。従って、本発明では、表面層が、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を電子線照射によって重合または架橋し硬化することによって得られた樹脂を含有することが好ましい。また、不飽和重合性官能基が少なくともアクリル基、メタクリル基及びスチレン基のいずれかを含むことが特に好ましい。さらに該感光体の表面層が、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を含有する溶液を塗布後、電子線照射により該化合物を重合または架橋させ硬化することにより形成されることがより一層好ましい。
上記の不飽和重合性官能基を有する化合物は、その構造単位の繰り返しよりモノマーとオリゴマーに大別される。モノマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがなく、比較的分子量の小さいものを示し、オリゴマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である。また、ポリマーまたはオリゴマーの末端のみに不飽和重合性官能基を有するマクロマーも本発明の表面層用の硬化性化合物として使用可能である。
また、上記の不飽和重合性官能基を有する化合物は、電荷輸送物質であることが、感光体の耐久性と電気的な特性の両立という点から特に好ましい。中でも正孔輸送化合物であることが好ましい。
不飽和重合性官能基を有する正孔輸送化合物としては、例えば不飽和重合性官能基を有する公知の正孔輸送化合物や、公知の正孔輸送化合物の一部に不飽和重合性官能基を付加した化合物などであれば良い。公知の正孔輸送化合物の例としてはヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、トリフェニルアミン化合物などが挙げられるが、正孔輸送化合物はこれらの化合物に特に限定されるものではなく、正孔輸送能を有する化合物であればいかなる化合物も使用可能である。さらに、本発明において感光体表面層の硬度を十分に確保するために、不飽和重合性官能基を有する化合物は一分子中に複数の不飽和重合性官能基を有する化合物を使用することが好ましい。また、一分子中に複数の不飽和重合性官能基を有する化合物と、一分子中に一つの不飽和重合性官能基を有する化合物を混合しても良い。
本発明に用いることのできる、電子線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物の例を表1及び表2に示すが、これに限られるものではない。
Figure 2008209747
Figure 2008209747
前記電子線照射によって硬化した表面層を電子写真感光体に用いた場合に、十分な硬度を示す上に感光体特性を劣化しにくく残留電位の上昇が起こりにくくなる明確な理由は判明していない。ただ、感光層においては、良好な特性を発現させる上で、極性の強い物質または酸化電位の低い物質は大きな弊害となることが知られていることから、従来の硬化樹脂の系と比較して、本発明で形成される樹脂ではそのような極性の強い物質または酸化電位の低い物質が硬化反応の過程で生じないか、または非常に少ないことが原因の一つではないかと推測できる。
さらにまた、同じ構造式の官能基を有する化合物でも、これを熱または紫外線で硬化する場合には、熱または光反応開始剤の添加が必要となるため、残留電位の増加や感度の低下といった感光体特性の劣化が起こり易いが、本発明においては、高いエネルギー効率で反応開始剤を用いることなく硬化を行うことができるので、良好な感光体特性を得ることができているとも考えられる。
本発明の電子写真感光体の感光層は導電性支持体上に形成される。本発明の電子写真感光体が有する導電性支持体は、導電性を有するものであればよい。例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属あるいは合金や、アルミニウム及び銅などの金属箔をプラスチックにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫などをプラスチックに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチック及び紙などが挙げられる。
本発明においては導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、基体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層の材料としてはポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ、ゼラチンなどが知られている。これらはそれぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1〜2μm程度が好ましい。
本発明の感光体が機能分離型の感光体である場合には、電荷発生層及び電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε、X型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アンスアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンまたは特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコンなどが挙げられる。さらに、これらの電荷発生物質を混合して使用しても良い。
機能分離型感光体の場合、電荷発生層は前記の電荷発生物質を質量比で0.3〜4倍量の結着剤樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミルなどの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥されて形成されるか、または前記電荷発生物質の蒸着膜など、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
また、電荷輸送物質としては、ピレン、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾールなどのカルバゾール系化合物、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾンなどのヒドラゾン系化合物、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[キノリル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[6−メトキシ−ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、スピロピラゾリンなどのピラゾリン系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル)オキサゾールなどのオキサゾール系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズチアゾールなどのチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタンなどのトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス−4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)エタンなどのポリアリールアルカン類などが挙げられる。
一般的には、電荷輸送層は上記電荷輸送物質を成膜性の樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート樹脂などと混合し、成膜して電荷輸送層とする。その際の膜厚としては8〜30μm程度が好ましい。30μmよりも高すぎる場合には、潜像の解像度や光応答性が低下する傾向にあり、8μmよりも小さすぎる場合には帯電システムにも依るが静電容量の問題から帯電が困難となる傾向にある。
本発明において電子写真感光体が電荷輸送層、電荷発生層の順に導電性支持体上に感光層が積層される場合には電荷発生層に、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した感光体においては電荷輸送層に、電子線照射により重合または架橋し硬化された樹脂を含有させる。すなわち、電荷発生層または電荷輸送層用の塗布溶液に電子線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を含有させ、これを用いて塗布し、その後に電子線を照射して硬化させる。
単層構成の感光体の場合には、少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及び/または電子線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を分散、または溶解した溶液を塗布、乾燥後、電子線照射による硬化を行うことにより感光層を形成する。
また本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に形成した積層構成または単層構成の感光層の上に保護層を形成することも可能であり、この場合には保護層中に、電子線照射により重合または架橋し硬化した樹脂を含有させる。
本発明の感光体の表面層には各種添加剤を添加することができる。該添加剤とは例えば酸化防止剤、ラジカル補足剤などの電子線劣化防止剤、テトラフルオロエチレン樹脂粒子やフッ化カーボンなどの滑剤、金属酸化物や無機微粒子などの導電剤や耐磨耗剤である。
本発明の電子線照射により硬化される最表面層の膜厚は、2〜8μmの範囲であることが好ましい。膜厚が8μmより高すぎると長期的に使用した場合、徐々に耐磨耗性が大きくなる傾向にあり、膜厚が2μmよりも低すぎると長期的に使用した場合、感光体表面において傷が発生しやすくなる。
本発明においては、電子写真感光体の表面層を電子線照射によって形成する。加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型などいずれの形式も使用することができる。
電子線を照射する装置として、図2に示すように、線状の陰極から放出された熱電子を電子線として取り出し、前記電子線を加速する電子線発生部と、被照射体に電子線を照射する照射室と、前記電子線発生部内の真空雰囲気と照射室雰囲気とを仕切るとともに前記電子線を透過させる隔膜とを備える電子線照射装置を用いることは、生産装置のコストを抑え電子写真感光体を製造する上で非常に有利である。
本発明において、電子写真感光体の電気特性及び耐久性能を発現させるためには、電子線の照射条件が非常に重要である。特に重要な条件は、電子線の加速電圧、被照射体表面での電子線吸収線量、及び膜状部材の材質と膜厚である。これらの因子を好適に設定することにより、良好な電気特性及び耐久性能を満足する電子写真感光体の製造が可能となる。
電子線の加速電圧は、60〜100kVの範囲から電子線が膜状部材を透過して感光体に到達することができる値を適宜選択すれば良い。100kVより高すぎる場合には膜状部材を介することによる電子線透過深度の低減効果が発現しにくくなり、電子写真感光体の劣化が顕著となり易い。加速電圧が60kVより低すぎる場合には膜状部材の材料及び膜厚の選択余地が狭まる傾向にあり、また表面層の硬化が膜厚方向で不均一となり易い。
感光体表面での電子線吸収線量は5〜50kGyの範囲であることが好ましい。吸収線量が50kGyより高すぎる場合には感光体の感度、残留電位が悪化し易く、5kGyより低すぎる場合には表面層の硬化が不十分になり易くなる。尚、電子線の表面線量測定は米国FAR WEST TECHNOLOGY社の厚さ50μmあるいは10μmの線量測定用フィルムを用いて測定することができる。近年ではシミュレーションソフトを用いて、被照射体の吸収線量さらには各種被照射体材料に対する深度線量分布を概算することができる。
膜状部材は使用する電子線照射装置の許容する加速電圧にて射出される電子線が透過可能で且つ感光体に到達可能となる材質及び膜厚から適宜選択すれば良い。材質の密度が1.7g/cm3より高すぎる材質の場合には加速電圧60〜100kVの電子線を透過させるための膜厚を薄く設定する必要があるために取り扱いが困難になり、また、膜状部材の膜厚均一性ムラが感光体表面の吸収線量ムラとして認知されやすくなる。材質の密度が0.8g/cm3より低すぎる材質の場合には膜の均一性を維持したまま該膜を支持することが困難になる傾向にある。
膜状部材の材質としては電子線照射に対して材質劣化を起こしにくいものが好ましく、材質劣化を起こしにくい樹脂材料としては例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ、などが挙げられ、また材質劣化を起こしにくいゴム材料としては例えば、ラテックス、ウレタンゴム、天然ゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。また、膜状部材には上述の材料に、有機または無機微粒子等を混合して該膜状部材に対する電子線透過性を微調整して使用しても良い。
膜状部材の膜厚としては10〜30μmが好ましい。膜厚が30μmより厚すぎる場合には電子線が膜状部材を透過するために必要な加速電圧の選択域が狭まる傾向にある。膜厚が5μmより低すぎる場合には繰返しあるいは連続の電子線照射によって発生する材質劣化が、膜形状変化として顕在化し易くなる。
上記の条件が好適に設定されることによって、電気特性及び耐久性能が高い電子写真感光体を安定的に製造することが可能となる。
また本発明において、円筒状の電子写真感光体に電子線を照射する場合には、電子線照射時間内での支持体の回転回数は、2回転以上20回転以下であることが好ましい、より好ましくは2回転以上10回転以下である。2回転未満では円筒周方向の吸収線量均一性が低下し易く、20回転を超えると表面層の硬化性が低下する傾向にある。
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置から構成される。本発明の電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体に、形成すべき画像に応じた潜像を形成し、これを現像することにより、普通紙など、画像を表示するための記録媒体(転写材)に画像を形成するものであれば特に限定されず、上記電子写真感光体の他に、従来より知られている種々の手段、装置及び部材などを必要に応じて用いることができる。
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真プロセスカートリッジから構成される。本発明の電子写真プロセスカートリッジは、複数の工程を実現することのできる手段や装置などが一体的に構成され、且つ電子写真装置本体に着脱自在に設けられるものであり、本発明の電子写真感光体を含む構成であれば、用いる手段や装置及び部材などを任意に選択することができる。例えばプロセスカートリッジについて各種手段や装置などの選択例としては、感光体と帯電部材と現像装置とクリーニング装置あるいは補助部材との組み合わせを好適に例示することができる。このようなプロセスカートリッジとして構成することにより、より一層優れたメンテナンス性が実現され、ユーザー自身によるトナー交換などのメンテナンスがより容易となる。
次に、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置の概略構成を示した。図において、1は像担持体としての円筒状の電子写真感光体であり、軸1aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。該感光体1はその回転過程で、帯電手段2によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部3にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
形成された静電潜像は、次いで現像手段4でトナー現像され、そのトナー現像像が、転写手段5により不図示の給紙部から感光体1と転写手段5との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。像転写を受けた転写材Pは感光体面から分離された後、像定着手段8へ導入され、像定着を受けて複写物(コピー)として機外へプリントアウトされる。像転写後の転写残りトナーはクリーニング手段6にて除去される。あるいは、クリーニング手段を持たず、転写残りトナーが現像手段4に回収される機構を有するクリーナーレスシステムにおいては、図示しない補助手段により転写残りトナーの静電状態が均一化され、転写残りトナーは再び現像手段4内に回収される。尚、像転写後の感光対体面は、図示しない前露光手段により除電露光7が照射され除電処理される場合もある。
感光体1の均一帯電手段2としてはコロナ帯電装置が一般に広く使用されているが、近年オゾン発生の低減、装置の小型化に有利であるという理由から接触帯電装置の使用が広がってきた。中でもローラ状の帯電器を感光体に接触させるタイプのローラ帯電器は非常に一般的になりつつある。本発明の感光体はこの接触帯電方式の帯電を行う電子写真装置において、特に優れた耐久性、耐画像流れ、耐画像ボケ性を発揮する。
電子写真装置として、上述の感光体や帯電手段、現像手段、クリーニング手段あるいは補助手段などの構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジとしても良い。例えば、感光体1とクリーニング手段6とを一体化して一つの装置ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成にしてもよい。このとき上記の装置ユニットのほうに帯電手段及び/または現像手段を伴って構成してもよい。なお、図1には、感光体1、帯電手段2、現像手段4及びクリーニング手段6を支持部材100にて互いの手段などを稼働位置に設け、電子写真装置本体に設けられた案内手段101によって案内され、装置本体に対して一体的且つ着脱自在に構成された本発明のプロセスカートリッジの一態様が示されている。
また、光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、または、原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、発光ダイオードアレイの駆動、または液晶シャッターアレイの駆動などが行われることにより行われる。
図2は本発明の実施例で使用する電子線照射装置の概略構成図である。
本実施例で用いる電子線照射装置の概略的構成は、図2に示すように電子線発生部10と、照射室11と、照射窓部13とを備えるものである。
電子線発生部10は、電子線を発生するターミナル12と、ターミナル12で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管20とを有するものである。また、電子線発生部10の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図示しない拡散ポンプなどにより10-4〜10-6Paの真空に保たれている。
ターミナル12は、熱電子を放出する線状のフィラメント12aと、フィラメント12aを支持するガン構造体12bと、フィラメント12aで発生した熱電子をコントロールするグリッド12cとを有する。フィラメント12a及びグリッド12cの図面における奥行き方向の長さは、少なくとも被照射体の電子線が照射されるべき部分の図面における奥行き方向の長さもより長くすれば、被照射体は1回の電子線照射で全体が照射されることが可能である。
また、電子線発生部10には、フィラメント12aを加熱して熱電子を発生させるための不図示の加熱用電源と、フィラメント12aとグリッド12cとの間に電圧を印加する同じく不図示の制御用直流電源と、グリッド12cと照射窓部13に設けられた電子線取出窓14との間に電圧を印加する加速用直流電源とが設けられている。
照射室11は、電子線を膜状部材17に透過させて被照射体1’表面に照射する照射空間19を含むものである。後述の実施例のように、照射室11の内部は硬化を安定させるため、不活性ガス雰囲気としている。ここで不活性ガスとは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどである。
膜状部材17は図面に示すように電子線取出窓14及び被照射体1’の双方に接触しない位置で、電子線照射部における矢印A方向の有効電子線照射幅(電子線密度がピーク位置での密度の1/e(自然対数の底)以上である幅)を十分覆うように設置していれば良く、膜状部材の支持及び面状態の均一性維持のため、膜状部材支持体18を用いる、または照射室内壁等に直接取り付けて設置することが望ましい。
膜状部材の電子線照射方向軸における配置は、電子線取出窓14及び被照射体1’の双方に接触しない位置であれば良いが、窓冷却機よりも被照射体1’側の位置であることが好ましい。電子線取出窓14に近いほど、電子線照射による電子線取出窓14の発熱の影響を避けやすくなり、一方で被照射体1’に近いほど被照射体表面から発生する揮発性物質の汚染を受けやすくなる。また、膜状部材面の電子線照射方向軸に対する角度は、電子線取出窓14及び被照射体1’の双方に接触しない角度で固定されていれば特に制約はない。
被照射体1’はコンベアなどの運搬手段により照射空間19における電子線照射部まで運搬された後、照射窓部13下にて電子線照射を受け、照射室11内を矢印Aの方向へ搬送される。さらに、該コンベアは照射窓部13下で停止させずに照射窓部13下を通過させながら、電子線照射を行うこともできる。
被照射体1’が円筒状の場合には、図面に示すように、少なくとも電子線照射部において電子線を照射される時間内は、導電性支持体をその円筒軸を中心にして回転している。
なお、電子線発生部10及び照射室11の周囲は電子線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないように、鉛遮蔽が施されている。電子線照射装置の機種によっては鉛遮蔽が必要でない場合もある。
照射窓部13は、金属箔からなる電子線取出窓14と、電子線取出窓14を冷却すると共に電子線取出窓14を支持する窓枠構造体15とを有するものである。さらに、電子線取出窓14を不活性ガスの冷却風を用いて冷却するための窓冷却機16を円筒軸(紙面上)方向の照射室内壁に備えている。電子線取出窓14は、電子線発生部10内の真空雰囲気と照射室11内の不活性ガス雰囲気とを仕切るものであり、また電子線取出窓14を介して照射室11内に電子線を取り出すものである。
加熱用電源によりフィラメント12aに電流を通じて加熱するとフィラメント12aは熱電子を放出し、この熱電子は、フィラメント12aとグリッド12cとの間に印加された制御用直流電源の制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、グリッド12cを通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、このグリッド12cから取り出された電子線は、グリッド12cと電子線取出窓14との間に印加された加速用直流電源の加速電圧により加速管20内の加速空間で加速された後、電子線取出窓14を突き抜け、膜状部材18を透過し、照射窓部13の下方の被照射体1’に向けて照射される。なお、通常は、加熱用電源と加速用直流電源とを所定の値に設定し、制御用直流電源を可変にすることにより、ビーム電流の調整が可能となる。
以下、実施例に従って説明する。
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(質量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3,000)0.002部を直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料を導電性支持体である直径30mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分間乾燥して、膜厚15μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調製した。この塗料を前記の導電層上に浸漬塗布方法によって塗布し、100℃で20分間乾燥し、0.6μmの中間層を形成した。
次に、CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2度の7.4度及び28.2度に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を3部、ポリビニルブチラール(商品名エスレック(登録商標)BM2、積水化学(株)製)1.5部及びシクロヘキサノン35部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で24時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬塗布方法で塗布して、100℃で10分間乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次いで、表1の化合物例No.28の化合物40部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、図2に示す電子線照射装置を用いて電子線を照射した。
電子線照射装置の照射室内には、膜状部材として三菱樹脂(株)製の膜厚11μmのPETフィルムを、その面状態が均一になるように膜状部材支持体で張った状態で、その膜面を電子線照射方向に対して垂直に、且つ円筒軸方向に対しては平行にして窓冷却機よりも被照射体側の位置に設置した。電子線照射の一連のプロセスは、加熱乾燥後の電荷輸送層を有する被照射体をコンベアによって照射室内に搬入した後、照射室内の窒素ガス置換を開始し、照射室内の酸素濃度が30ppmにまで低下した時点で、被照射体を回転速度200rpmで回転させながら加速電圧及びビーム電流のオンオフによってPETフィルムを介して1秒間電子線照射を行い、照射が終了したら被照射体を矢印A方向に排出するというプロセスとなっている。尚、窒素ガス置換において酸素濃度を30ppmにまで低下させるのに要する時間を短くするために、照射室内の容積は極力小さく設計されている。
電子線照射条件は、加速電圧80kVで、PETフィルムを透過した後の被照射体表面における吸収線量が15kGyになるようにビーム電流値を設定した。以上の条件にて電子線を照射し前記塗料の膜を硬化することによって膜厚15μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
この感光体をキヤノン(株)製レーザープリンターLASER SHOT LBP−930の改造機に入れ、常温常湿下(23℃、55%RH)において初期暗部電位(Vd)がー700Vになるように帯電設定をし、−700Vから−200Vに減衰させるために必要な光量の3倍光量を照射したときの電位を初期残留電位(Vr)として測定した。
次に新たに上記と同様の方法で作成した感光体を、上記と同様の改造機に入れ、常温低湿下(23℃、10%RH)において、暗部電位(Vd)を−700V、明部電位(Vl)を−200V、転写電流を+5.5μAとし、プロセススピードを300mm/sに改造して連続1,000枚の連続Vl通紙耐久実験を行い、初期と耐久直後での暗部電位及び明部電位の変動量の絶対値(それぞれ|ΔVd|と|ΔVl|)を測定した。さらに続けて10,000枚の通紙耐久実験を行い、その感光体の削れ量を渦電流式膜厚測定器(Fishcer製、Permascope)で測定を行った。結果を表3に示す。
表3に見られるように本実施例の感光体では初期残留電位が低く良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久における電位変動も小さいというように、非常に良好な感光体特性を示している。
(実施例2)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
次いで、下記構造式(A)のトリアリールアミン化合物7部及び下記構造式(B)の繰り返し単位を有するポリカーカーボネート樹脂(数平均分子量20,000)10部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調製した。この塗料を前記の電荷発生層の上に浸漬塗布方法で塗布して、100℃で50分間乾燥して、膜厚12μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 2008209747
Figure 2008209747
次いで、表2の化合物No.11の60部をブチルアルコール50部/エチルアルコール50部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層用塗料を調製した。この塗料を浸漬コーティング法により先の電荷輸送層上に塗布し、実施例1と同じ条件で電子線を照射し表面保護層を硬化し、膜厚4μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。この感光体を実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本実施例の感光体では初期残留電位が低く良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久における電位変動も小さいというように、非常に良好な感光体特性を示している。
(実施例3〜5)
実施例2において、表面保護層に用いる化合物を表4に示すように(表4中、実施例5の混合比は質量比)代えた他は、実施例2と同様にして実施例3〜5に対応する電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本実施例の感光体では初期残留電位が低く良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久における電位変動も小さいというように、非常に良好な感光体特性を示している。
(実施例6〜8)
実施例2において、電子線加速電圧と表面保護層膜厚を表5に示すように代えて、それぞれ被照射体表面における吸収線量が15kGyになるようにビーム電流値を設定した他は、実施例2と同様にして実施例6〜8に対応する電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本実施例の感光体では初期残留電位と電位変動、あるいは削れにおいて僅かながら悪化するものもあるが、良好な感光体特性を維持できている。
(実施例9〜11)
実施例2において、膜状部材の材質あるいは総膜厚を表6に示すように代えて、それぞれ被照射体表面における吸収線量が15kGyになるようにビーム電流値を設定した他は、実施例2と同様にして実施例9〜11に対応する電子写真感光体を作製し、評価した。尚、膜状部材としてのポリイミドはリガク(株)製の品名“ポリイミド・カプトン(登録商標)”を、シリコーンゴムは三菱樹脂(株)製の品名“珪樹(登録商標)”を使用した。結果を表3に示す。
表6に見られるように本実施例の感光体では初期残留電位が低く良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久における電位変動も小さいというように、非常に良好な感光体特性を示している。
(実施例12〜14)
実施例2において、被照射体表面での吸収線量を7kGy、30kGy、60kGyになるようにビーム電流を設定した他は、実施例2と同様にして実施例12〜14に対応する電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本実施例の感光体では初期残留電位と電位変動、あるいは削れにおいて僅かながら悪化するものもあるが、良好な感光体特性を維持できている。
(実施例15)
実施例2において、感光体を電子線照射部において停止させて電子線照射を行う代わりに、酸素濃度が30ppmに維持された照射室内を、被照射体表面における吸収線量が15kGyになるような速度で稼働するコンベアにより、電子線照射部を矢印A方向に通過させながら電子線照射を行った他は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本実施例の感光体では初期特性が良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久における電位変動も小さいというように、非常に良好な感光体特性を示している。
(比較例1)
実施例2において、PETフィルムを窓箔と被照射体との間に設置しないで、被照射体表面における吸収線量が15kGyになるようにビーム電流値を設定した他は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本比較例の感光体では、耐久での削れは少ないが初期残留電位が若干高く、さらに耐久における電位変動も若干大きいというように、実施例においてよりも劣った感光体特性を示している。
(比較例2)
実施例2において、PETフィルムを窓箔と被照射体との間に設置しないで、被照射体表面における吸収線量が15kGyになるように被照射体を電子線取出窓から遠ざけた他は、実施例2と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表3に示す。
表3に見られるように本比較例の感光体では初期残留電位が低く良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久における電位変動も小さいというように、非常に良好な感光体特性を示している。しかし、被照射体と電子線取出窓との間の距離を大きくした故に、照射室内の容積は実施例と比較して大きくする必要があり、本比較例では窒素置換に要する時間が実施例と比較して長くなったため、連続製造には不向きであることが判った。
(実施例16)
実施例2と同様の方法で感光体を300本連続して製造し、感光体表面の部分的白濁やムラなどの膜性を目視評価して膜性NG品の本数を調べた。また、300本連続製造後の電子線取出チタン箔の汚れ状態を、拡大レンズを用いて目視評価した。結果を表7に示す。
(比較例3)
比較例1と同様の方法で感光体を300本連続して製造し、感光体表面の部分的白濁やムラなどの膜性を目視評価して膜性NG品の本数を調べた。また、300本連続製造後の電子線取出チタン箔の汚れ状態を、拡大レンズを用いて目視評価した。結果を表7に示す。
Figure 2008209747
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本発明の電子写真感光体及び電子写真感光体製造方法と、該電子写真感光体それを備える電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジは、電子写真方式を採用した複写機、プリンターなどの画像形成装置に利用することができる。
本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す概略図である。 本発明の実施例で用いた電子線照射装置の概略図である。
符号の説明
1 電子写真感光体
1a 感光体回転軸
1’ 被照射体
2 帯電手段
3 露光部
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 除電露光
8 像定着手段
10 電子線発生部
11 照射室
12 ターミナル
12a フィラメント
12b ガン構造体
12c グリッド
13 照射窓部
14 電子線取出窓
15 窓枠構造体
16 窓冷却機
17 膜状部材
18 膜状部材支持体
19 照射空間
20 加速管
100 支持部材
101 案内手段
L 光像露光
P 転写材

Claims (11)

  1. 導電性支持体と感光層とを有し、且つ最表面層が不活性ガス雰囲気中で電子線照射により少なくとも硬化して改質される層である電子写真感光体において、該電子線照射時に電子線照射装置における電子線取出窓と被照射体である電子写真感光体との間の電子線軌跡上で、且つ該窓と該電子写真感光体の双方に接触しない位置に膜状部材を備え、該電子線を該膜状部材を透過させて電子写真感光体に照射することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記膜状部材の密度が0.8g/cm3以上1.7g/cm3以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記膜状部材が、樹脂またはゴムを主成分とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記電子線照射時における電子線の加速電圧が60kV以上100kV以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記電子写真感光体の最表面層の膜厚が2μm以上8μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記電子写真感光体の表面での電子線吸収線量が5kGy以上50kGy以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記電子線照射装置が、前記電子線取出窓を冷却する手段を備えることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記電子線取出窓を冷却する手段が、電子線照射方向軸において電子線取出窓と前記膜状部材との間に位置することを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
  10. 請求項9に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする電子写真装置。
  11. 請求項9に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段とを有し、これらが一体に支持され、且つ電子写真装置本体に着脱自在に構成されていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
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