JP2004198568A - 電子写真感光体、その製造方法、それを備えた電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真感光体、その製造方法、それを備えた電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】耐摩耗性、耐傷性及び耐析出性が良好であり、感光体特性の変化、劣化が非常にすくなく、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮することができる電子写真感光体、それを備えた電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジ並びに上記の良好な特性を持つ電子写真感光体を安定的に製造する製造方法を提供することである。
【解決手段】円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有する電子写真感光体であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化された化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された電子写真感光体において、該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させたことを特徴とする電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジ。
【選択図】 なし
【解決手段】円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有する電子写真感光体であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化された化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された電子写真感光体において、該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させたことを特徴とする電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は円筒状の電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体に用いられる材料として有機光導電材料が、その無公害性、高生産性といった点で利点を有するため広く利用されている。これらの電子写真感光体は電気的及び機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体として利用される場合が多い。一方、当然のことながら電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、さらには光学的特性を備えていることが要求される。特に繰り返し使用される感光体にあっては、その感光体の表面層にはコロナ帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。
【0003】
具体的には、コロナ帯電時に発生するオゾンによる劣化のために感度低下、帯電能低下及び残留電位増加などが起こったり、摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生することなどに対する耐久性などが要求されている。
【0004】
さらに感光体表面層には、トナー像の転写性や転写後の残留トナーのクリーニング性に優れていることが要求され、そのためには表面エネルギーが小さく、滑り性が高いことが必要であり、且つこれらの性能が繰り返し使用時にも低下しにくいことが望まれる。
【0005】
感光体の表面は一般に薄い樹脂層であり、樹脂の特性が非常に重要である。上述の諸条件をある程度満足する樹脂として、近年アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが実用化されているが、前述したような特性の全てがこれらの樹脂で満足されるわけではなく、特に感光体の高耐久化を図る上では該樹脂の被膜硬度は十分高いとは言い難い。これらの樹脂を表面層形成用の樹脂として用いた場合でも繰り返し使用時において表面層の摩耗が起こり、さらに傷が発生することがあるという問題点があった。また、有機電子写真感光体の高感度化に対する要求から、電荷輸送物質などの低分子量化合物が感光層中に比較的大量に添加される場合が多く、電子写真感光体を長期にわたって保存する際に前述の低分子量成分が析出してしまい、層分離するといった問題もあった。
【0006】
これらの問題点を解決する手段として、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる試みが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このように電荷輸送層用の樹脂に硬化性の樹脂を用い、電荷輸送層を硬化、架橋することによって、機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性、耐傷性は大きく向上し、且つ低分子量成分の析出防止に対しても多大な効果がある。しかしながら、有機電荷輸送物質と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては、電荷輸送能が用いる樹脂に大きく依存するため、例えば硬度が十分高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなくなり易く、繰り返し使用時に残留電位の上昇が見られるなど、これまでの系では高い硬度と十分な電荷輸送能の両立について検討の余地が残されていた。
【0007】
以上の状況に対して本発明者らは、電子写真感光体の表面層を、少なくとも放射線照射によって重合可能な官能基を有する化合物を放射線照射により硬化させて形成することによって上記課題が大幅に改善されることを開示した(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−127652号公報
【特許文献2】
特開平11−265085号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、放射線照射により重合可能な官能基を有する化合物を硬化させて表面層を形成しようとする場合には、放射線の照射方法によっては感光体の特性が大きく変化してしまうことがあり、従って、感度などの電気的特性と硬さ、耐磨耗性などの機械的特性をより高い次元で両立することができる円筒状の電子写真感光体を安定的に製造するためにはさらなる研究が必要であった。
【0010】
本発明の目的は、従来の樹脂を表面層として使用した電子写真感光体の有していた問題点を解決し、優れた耐摩耗性、耐傷性及び耐析出性を有する電子写真感光体、それを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することである。
【0011】
さらに本発明の目的は、繰り返し使用時における残留電位の上昇などの感光体特性の変化、劣化が非常にすくなく、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮することができる電子写真感光体、それを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は、上記の良好な特性を持つ電子写真感光体を安定的に製造することができる製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、円筒状の導電性支持体と、該支持体に形成される感光層とを有する電子写真感光体であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された層である電子写真感光体において、該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させたことを特徴とする電子写真感光体である。
【0014】
また、本発明は、円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有した電子写真感光体の製造方法であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成される電子写真感光体の製造方法において、該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させることを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、上記電子写真感光体を備えた電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジである。
【0016】
【発明の実施の形態】
感光体の表面を形成する層(以下、単に「表面層」ともいう)に、放射線照射により重合または架橋し硬化する樹脂を含有させる方法としては、放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を適当な溶媒に溶解し、該化合物を含有する感光体表面層用の塗布溶液を円筒状導電性支持体上に塗布し、その後に放射線を照射して硬化させる方法が挙げられる。この溶解液を円筒状導電性支持体上に塗布する方法は、例えば浸漬コーテイング法、スプレイコーテイング法、カーテンコーテイング法、スピンコーテイング法などが知られている。電子写真感光体を効率よく大量生産するには浸漬コーテイング法が最良であり、本発明においても浸漬塗布は可能である。
【0017】
本発明の感光体の構成は、円筒状の導電性基体上に感光層として電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した構成、または逆に電荷輸送層、電荷発生層をこの順に積層した構成、さらには電荷発生物質と電荷輸送物質を結着樹脂中に分散した単層より構成されるもののいずれの構成をとることも可能である。さらに前記感光層上に表面保護層を形成することも可能である。
【0018】
本発明は少なくとも感光体の表面層に、放射線照射により重合または架橋し硬化する樹脂を含有させればよい。本発明では、適当な材料を分散させ前記の化合物を硬化させて感光層の全部を形成しても良いが、電子写真感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性及び耐久性の点より、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光体構成、または前記電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光層上に表面保護層を形成した構成が好ましい。本発明の利点は電荷輸送性を損なうことなく電荷輸送層または保護層を硬化することが可能になる点にもある。従って感光体表面に保護層を形成する構成の場合には、該保護層中の構成物質として、正孔輸送化合物など、電荷輸送機能を有する化合物が含有されていることが好ましい。
【0019】
本発明で使用する、放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物は、放射線照射によって硬化が可能であれば特に他の制約はない。ただし、中でも分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物は、反応性の高さ、反応速度の速さ、放射線照射による硬化によって達成される硬度の高さの点で好ましい。従って、本発明では、表面層が、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を放射線照射によって重合または架橋し硬化することによって得られた樹脂を含有することが好ましい。また、不飽和重合性官能基が少なくともアクリル基、メタクリル基及びスチレン基のいずれかを含むことが特に好ましい。さらに該感光体の表面層が、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を含有する溶液を塗布後、放射線照射により該化合物を重合または架橋させ硬化することにより形成されることがより一層好ましい。
【0020】
本発明における不飽和重合性官能基を有する化合物は、その構造単位の繰り返しよりモノマーとオリゴマーに大別される。モノマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがなく、比較的分子量の小さいものを示し、オリゴマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である。また、ポリマーまたはオリゴマーの末端のみに不飽和重合性官能基を有するマクロマーも本発明の表面層用の硬化性化合物として使用可能である。本発明では感光体の耐久性と電気的な特性の両立という点からモノマーを使用することが好ましい。
【0021】
また、本発明における不飽和重合性官能基を有する化合物は、電荷輸送物質であることが、感光体の耐久性と電気的な特性の両立という点から特に好ましい。中でも正孔輸送化合物であることが好ましい。
【0022】
不飽和重合性官能基を有する正孔輸送化合物としては、例えば不飽和重合性官能基を有する公知の正孔輸送化合物や、公知の正孔輸送化合物の一部に不飽和重合性官能基を付加した化合物などであれば良い。公知の正孔輸送化合物の例としてはヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、トリフェニルアミン化合物などが挙げられるが、正孔輸送化合物はこれらの化合物に特に限定されるものではなく、正孔輸送能を有する化合物であればいかなる化合物も使用可能である。さらに、本発明において感光体表面層の硬度を十分に確保するために、不飽和重合性官能基を有する化合物は一分子中に複数の不飽和重合性官能基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0023】
本発明に用いることのできる、放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物の例を表1及び表2に示すが、これに限られるものではない。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
前記放射線照射によって硬化した表面層を電子写真感光体に用いた場合に、十分な硬度を示す上に感光体特性を劣化させず残留電位の上昇が起こりにくくなる明確な理由は判明していない。ただ、感光層においては、良好な特性を発現させる上で、極性の強い物質または酸化電位の低い物質は大きな弊害となることが知られていることから、従来の硬化樹脂の系と比較して、本発明で形成される樹脂ではそのような極性の強い物質または酸化電位の低い物質が硬化反応の過程で生じないか、または非常に少ないことが原因の一つではないかと推測できる。
【0027】
さらにまた、同じ構造式の官能基を有する化合物でも、これを熱または紫外線で硬化する場合には、熱または光反応開始剤の添加が必要となるため、残留電位の増加や感度の低下といった感光体特性の劣化が起こり易いが、本発明においては、反応開始剤を用いることなく硬化を行うことができるので、良好な感光体特性を得ることができているとも考えられる。
【0028】
本発明の電子写真感光体の感光層は円筒状の導電性支持体上に形成される。本発明の電子写真感光体が有する導電性支持体は、円筒状の形状で且つ導電性を有するものであればよい。例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属や合金を円筒状に成形したもの、アルミニウム及び銅などの金属箔を円筒状プラスチックにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫などを円筒状プラスチックに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、円筒状プラスチック及び紙などが挙げられる。
【0029】
本発明においては導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、基体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層の材料としてはポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ、ゼラチンなどが知られている。これらはそれぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1〜2μm程度が好ましい。
【0030】
本発明の感光体が機能分離型の感光体である場合には、電荷発生層及び電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε、X型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アンスアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンまたは特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコンなどが挙げられる。
【0031】
機能分離型感光体の場合、電荷発生層は前記の電荷発生物質を質量比で0.3〜4倍量の結着剤樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミルなどの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥されて形成されるか、または前記電荷発生物質の蒸着膜など、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0032】
また、電荷輸送物質としては、ピレン、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾールなどのカルバゾール系化合物、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾンなどのヒドラゾン系化合物、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[キノリル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[6−メトキシ−ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、スピロピラゾリンなどのピラゾリン系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル)オキサゾールなどのオキサゾール系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズチアゾールなどのチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタンなどのトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス−4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)エタンなどのポリアリールアルカン類などが挙げられる。
【0033】
一般的には、電荷輸送層は上記電荷輸送物質を成膜性の樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート樹脂などと混合し、成膜して電荷輸送層とする。
【0034】
本発明において電子写真感光体が電荷輸送層、電荷発生層の順に円筒状の導電性支持体上に感光層が積層される場合には電荷発生層に、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した感光体においては電荷輸送層に、放射線照射により重合または架橋し硬化された樹脂を含有させる。すなわち、電荷発生層または電荷輸送層用の塗布溶液に放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を含有させ、これを用いて塗布し、その後に放射線を照射して硬化させる。
【0035】
単層構成の感光体の場合には、少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及び/または放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を分散、または溶解した溶液を塗布、乾燥後、放射線照射による硬化を行うことにより感光層を形成する。
【0036】
また本発明の電子写真感光体は、円筒状の導電性支持体上に形成した積層構成または単層構成の感光層の上に保護層を形成することも可能であり、この場合には保護層中に、放射線照射により重合または架橋し硬化した樹脂を含有させる。
【0037】
本発明の感光体の表面層には各種添加剤を添加することができる。該添加剤とは酸化防止剤、紫外線吸収剤などの劣化防止剤やテトラフルオロエチレン樹脂粒子、フッ化カーボンなどの滑剤などである。
【0038】
本発明においては、電子写真感光体の表面層を放射線照射によって形成する。本発明において使用する放射線とは電子線及びガンマ線であるが、装置の大きさ、安全性、コストの面で電子線が有利である。電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型などいずれの形式も使用することができる。
【0039】
電子写真感光体においては、電子写真画像の均一性や繰り返し画像形成時の画像安定性の観点から、感度、残留電位などの電気特性や表面の硬さ、滑り性の感光体の円周方向の均一性が非常に重要となる。ところが、感光体に放射線照射した場合には、感光体の感度及び残留電位が照射した放射線量によって変化し、また、表面層の硬化度や滑り性などの表面特性も放射線量によって変化し易いことを本発明者等は見出した。
【0040】
一方、放射線照射装置は一般的に一方向からの照射であり、とくに装置コスト面及び汎用性に優れる小型で自己遮蔽型の電子線照射装置を用いる場合には、電子線の照射は一方向からとなる。中でも電子線を照射する装置として、図2に示すように、線状の陰極から放出された熱電子を電子線として取り出し、前記電子線を加速する電子線発生部と、被照射体に電子線を照射する照射室と、前記電子線発生部内の真空雰囲気と照射室雰囲気とを仕切るとともに前記電子線を透過させる隔膜とを備える電子線照射装置を用いることは、生産装置のコストを抑え、後述の電子写真感光体を製造する上での電子線の好適な加速電圧、吸収線量率を達成できるという点で非常に有利であるが、円筒状の被照射物により均一に放射線を照射することが必要であった。
【0041】
そこで本研究者らの鋭意検討の結果、円筒状の導電性支持体を有する電子写真感光体に上記感光体の特性の均一性を保ち、且つ表面層を十分硬化させることのできる放射線の照射は、放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させることで達成され、特に放射線照射が一方向からであり、放射線照射時間内に該感光体をその円筒軸を中心に2回転以上回転させることで非常に良好に達成されることが判明した。
【0042】
本発明の円筒状の電子写真感光体においては、電気特性及び耐久性能を発現させ、且つそれらの均一性を実現する上で放射線の照射条件が非常に重要である。放射線が電子線の場合に、特に重要な条件は、被照射体表面での電子線吸収線量率(単位時間あたりの電子線吸収量)、被照射体表面での電子線吸収線量、電子線の加速電圧及び電子線照射時間内での支持体の回転回数である。本発明において電子線を用いる場合はこれらの因子を好適に設定することにより、電気特性、耐久性能及び均一性を満足する円筒状の電子写真感光体の製造が可能となる。
【0043】
放射線が電子線の場合に、電子線吸収線量率は1×103〜2×107Gy/secの範囲が好適であり、1×104〜2×106Gy/secの範囲がより好ましい。電子線吸収線量率が低すぎると表面層の硬化度が低下し、高すぎる場合には表面層の硬さ、表面自由エネルギーが不均一になる傾向にある。
【0044】
感光体での電子線吸収線量は1〜500kGyが好ましく、さらに好ましくは5〜300kGyの範囲である。吸収線量が低すぎる場合には表面層の硬化が十分ではなくなり易く、高すぎる場合には感光体の感度、残留電位が悪化し易くなる。
【0045】
電子線の加速電圧は好ましくは50〜200kVの範囲である。200kVを超えると導電性支持体を含めて電子写真感光体の劣化が顕著となり易く、加速電圧が低すぎると表面層の硬化が膜厚方向で不均一となり易い。
【0046】
本発明における電子線照射時間内での支持体の回転回数は、2回転以上であることが好ましく、20回転以下であることが好ましい、より好ましくは2回転以上10回転以下がである。2回転未満では均一性が低下し易く、20回転を超えると表面層の硬化性が低下する傾向にある。
【0047】
放射線が電子線の場合には、上記4つの条件が好適に設定されることによって感度、残留電位などの電気特性が極めて良好で、均一性も極めて高い円筒状の電子写真感光体を、安定的に製造することが可能となる。
【0048】
なお、電子線の吸収線量率及び吸収線量については、公知の測定手段を用いて被照射体表面における吸収線量を測定しても良いが、本発明では被照射体表面での吸収線量を必ずしも測定する必要はなく、被照射体への照射線量から感光体表面での吸収線量を換算することができる。すなわち、電子線の吸収線量率及び吸収線量は、本発明で用いられる電子線照射装置の出力調整によって制御することができる。
【0049】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0050】
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置から構成される。本発明の電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体に、形成すべき画像に応じた潜像を形成し、これを現像することにより、普通紙など、画像を表示するための記録媒体(転写材)に画像を形成するものであれば特に限定されず、上記電子写真感光体の他に、従来より知られている種々の手段、装置及び部材などを必要に応じて用いることができる。
【0051】
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真プロセスカートリッジから構成される。本発明の電子写真プロセスカートリッジは、複数の工程を実現することのできる手段や装置などが一体的に構成され、且つ電子写真装置本体に着脱自在に設けられるものであり、本発明の電子写真感光体を含む構成であれば、用いる手段や装置及び部材などを任意に選択することができる。例えばプロセスカートリッジについて各種手段や装置などの選択例としては、感光体と現像装置とクリーニング装置との組み合わせを好適に例示することができる。このようなプロセスカートリッジとして構成することにより、より一層優れたメンテナンス性が実現され、ユーザー自身によるトナー交換などのメンテナンスがより容易となる。
【0052】
次に、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置の概略構成を示した。図において、1は像担持体としての円筒状の電子写真感光体であり、軸1aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。該感光体1はその回転過程で、帯電手段2によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部3にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0053】
形成された静電潜像は、次いで現像手段4でトナー現像され、そのトナー現像像が、転写手段5により不図示の給紙部から感光体1と転写手段5との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。像転写を受けた転写材Pは感光体面から分離された後、像定着手段8へ導入され、像定着を受けて複写物(コピー)として機外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段6にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、図示しない前露光手段により除電露光7が感光体1に照射され、感光体1の除電処理がされて繰り返して像形成に使用される。
【0054】
感光体1の均一帯電手段2としてはコロナ帯電装置が一般に広く使用されているが、近年オゾン発生の低減、装置の小型化に有利であるという理由から接触帯電装置の使用が広がってきた。中でもローラ状の帯電器を感光体に接触させるタイプのローラ帯電器は非常に一般的になりつつある。本発明の感光体はこの接触帯電方式の帯電を行う電子写真装置において、特に優れた耐久性、耐画像流れ、耐画像ボケ性を発揮する。
【0055】
電子写真装置として、上述の感光体や現像手段、クリーニング手段などの構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジとしても良い。例えば、感光体1とクリーニング手段6とを一体化して一つの装置ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成にしてもよい。このとき上記の装置ユニットのほうに帯電手段及び/または現像手段を伴って構成してもよい。なお、図1には、感光体1、帯電手段2、現像手段4及びクリーニング手段6を支持部材100にて互いの手段などを稼働位置に設け、電子写真装置本体に設けられた案内手段101によって案内され、装置本体に対して一体的且つ着脱自在に構成された本発明のプロセスカートリッジの一態様が示されている。
【0056】
また、光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、または、原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、発光ダイオードアレイの駆動、または液晶シャッターアレイの駆動などが行われることにより行われる。
【0057】
図2は本発明の実施例で使用する電子線照射装置の概略構成図である。
本実施例で用いる電子線照射装置は図2に示すように、電子線発生部10と、照射室20と、照射窓部30とを備えるものである。
【0058】
電子線発生部10は、電子線を発生するターミナル12と、ターミナル12で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管14とを有するものである。また、電子線発生部10の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図示しない拡散ポンプなどにより10-4〜10-6Paの真空に保たれている。
【0059】
ターミナル12は、熱電子を放出する線状のフィラメント12aと、フィラメント12aを支持するガン構造体12bと、フィラメント12aで発生した熱電子をコントロールするグリッド12cとを有する。フィラメント12a及びグリッド12cの図面の奥行き方向の長さは、少なくとも被照射体の放射線が照射されるべき部分の円筒軸方向の長さより長くすれば、被照射体の円筒軸方向は1回の電子線照射で全体が照射可能である。
【0060】
また、電子線発生部10には、フィラメント12aを加熱して熱電子を発生させるための不図示の加熱用電源と、フィラメント12aとグリッド12cとの間に電圧を印加する同じく不図示の制御用直流電源と、グリッド12cと照射窓部30に設けられた窓箔32との間に電圧を印加する加速用直流電源とが設けられている。
【0061】
照射室20は、円筒状の被照射体1’表面に電子線を照射する照射空間22を含むものである。後述の実施例のように、電子写真感光体の表面層を硬化させる場合には、硬化を安定させるため、照射室20の内部は不活性ガス雰囲気としている。ここで不活性ガスとは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどである。また、円筒状の被照射体1’は照射室20内をコンベアなどの搬送手段により矢印Aの方向へ搬送される。
【0062】
さらに、少なくともこの円筒状の被照射体1’が電子線照射窓部30を通過し電子線を照射される時間内は、導電性支持体をその円筒軸を中心にして回転させることによって、該被照射体1’は矢印Bの方向に円筒軸を中心にして回転している。なお、電子線発生部10及び照射室20の周囲は電子線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないように、鉛遮蔽が施されている。
【0063】
照射窓部30は、金属箔からなる窓箔32と、窓箔32を冷却すると共に窓箔32を支持する窓枠構造体34とを有するものである。窓箔32は、電子線発生部10内の真空雰囲気と照射室20内の空気雰囲気とを仕切るものであり、また窓箔32を介して照射室20内に電子線を取り出すものである。
【0064】
加熱用電源によりフィラメント12aに電流を通じて加熱するとフィラメント12aは熱電子を放出し、この熱電子は、フィラメント12aとグリッド12cとの間に印加された制御用直流電源の制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、グリッド12cを通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、このグリッド12cから取り出された電子線は、グリッド12cと窓箔32との間に印加された加速用直流電源の加速電圧により加速管14内の加速空間で加速された後、窓箔32を突き抜け、照射窓部30の下方の照射室20内を搬送される円筒状の被照射体1’に照射される。なお、通常は、加熱用電源と加速用直流電源とを所定の値に設定し、制御用直流電源を可変にすることにより、ビーム電流の調整が可能となる。
【0065】
以下、実施例に従って説明する。
【0066】
【実施例】
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(質量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3,000)0.002部を直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料を導電性支持体である直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分間乾燥して、膜厚20μmの導電層を形成した。
【0067】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調製した。この塗料を前記の導電層上に浸漬塗布方法によって塗布し、100℃で20分間乾燥し、0.6μmの中間層を形成した。
【0068】
次に、CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2度の9.0度、14.2度、23.9度及び27.1度に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラール(商品名エスレックBM2、積水化学(株)製)2部及びシクロヘキサノン35部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬塗布方法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0069】
次いで、表1の化合物例No.11の化合物40部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、図2に示す電子線照射装置を用いて電子線を照射した。
【0070】
電子線照射装置は、円筒軸方向の電子線照射幅450mm、電子線照射窓部における矢印A方向の有効電子線照射幅(電子線密度がピーク位置での密度の1/e以上である幅)が3cm、加熱乾燥した後の電荷輸送層を有する円筒状の被照射体1’は矢印A方向にベルトコンベアにより一定速度で移動しながら電子線照射窓部の有効電子線照射幅の中を通過する際に電子線照射を受ける構造となっている。電子線照射条件は、加速電圧150kV、吸収線量率20kGy/sec(有効電子線照射幅内での平均)、コンベア速度10mm/sec、回転速度60rpmとし、この場合の電子線照射時間内(被照射体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での被照射体の円筒軸中心の回転数、すなわち導電性支持体の円筒軸中心の回転数は3回転であり、吸収線量は18kGyであった。以上の条件にて電子線を照射し前記塗料の膜を硬化することによって膜厚18μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0071】
この感光体をキヤノン(株)製複写機GP−40に入れ、初期の感光体特性(暗部電位Vd、光減衰感度(暗部電位−650V設定で−150Vに光減衰させるために必要な光量)、残留電位Vsl(光減衰感度の光量の3倍の光量を照射したときの電位))を円筒周方向の電位のフレ幅も含めて測定し、さらに20,000枚の通紙耐久実験を行い、画像欠陥の発生の有無の観察、感光体の削れ量、削れムラ(円筒周方向での削れ量のムラ)及び耐久後の前記感光体特性を測定し、各々の変化値ΔVd、ΔVl(初期にVlが−150Vとなる光量と同量の光量を耐久後に照射したときのVlの変化量)、ΔVslを円筒周方向の電位のフレ幅も含めて求めた。なお、ΔVd、ΔVl及びΔVslに関し、値が正であるということは、耐久後において電位の絶対値が低下したことを示し、逆に、負であるということは、電位の絶対値が増加したことを示す。
【0072】
なお、感光体の各電位は、複写機GP40の現像ユニットの位置に電位計(Trek Model 344)を装着して測定し、感度は、Vlを−150Vとする光量を感光体表面に相当する位置に装着した光量計にて測定した。感光体の削れは、うず電流測定による測定(膜厚計:Fishcer Permascope)及び干渉膜厚計(大塚電子製)により求めた。
【0073】
結果を表3に示す。表3に見られるように本発明の円筒状の感光体では初期の感光体特性が円筒周方向での電位のフレも含めて良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久においても感光体特性にほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0074】
(実施例2〜5)
感光体電荷輸送層に用いる化合物を表4に示すように(表中、実施例3の混合比は質量比)代えた他は、実施例1と同様にして実施例2〜5に対応する電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0075】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期の感光体特性が円筒周方向での電位のフレも含めて良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久においても感光体特性にほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0076】
(実施例6)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0077】
ついで、表2の化合物例No.36を15部及び下記構造式(E)のスチリル化合物25部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、実施例1と同条件で電子線を照射し、膜厚15μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製し評価した。結果を表3に示す。表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0078】
【化1】
【0079】
(実施例7)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0080】
ついで、表2の化合物例No.22を30部及び下記構造式(F)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(数平均分子量20,000)10部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、実施例1と同条件で電子線を照射し、膜厚13μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製し評価した。結果を表3に示す。表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0081】
【化2】
【0082】
(実施例8)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0083】
ついで、上記構造式(E)のスチリル化合物20部及び上記構造式(F)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(数平均分子量20,000)10部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調製した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。この時の電荷輸送層の膜厚は10μmであった。
【0084】
次いで、表2の化合物No.28の60部をブチルアルコール50部/エチルアルコール50部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層用塗料を調製した。この塗料を浸漬コーテイング法により先の電荷輸送層上に塗布し、実施例1と同じ条件で電子線を照射し表面保護層を硬化し、膜厚5μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。この感光体を実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0085】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期の感光体特性が円筒周方向での電位のフレも含めて良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久においても感光体特性にほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0086】
(実施例9)
実施例8において表面保護層に用いる化合物を表1の化合物No.9に代えた他は、実施例8と同様にして実施例9の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0087】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体においても初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0088】
(実施例10)
実施例8において表面保護層用に用いる化合物を表2の化合物No.31及び35を重量比1:1の混合物に代えた他は、実施例8と同様にして実施例10の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0089】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体においても初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0090】
(比較例1)
実施例8において表面保護層を設けず、電荷輸送層の膜厚を15μmにした感光体を比較例1の感光体とし、評価した。
【0091】
評価結果を表3に示す。表3に示すように比較例においては初期特性は良好であったが、耐久での表面層の削れが大きく、これによってカブリなどの画像欠陥が発生している。
【0092】
(実施例11〜16)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、吸収線量率を、ビーム電流を変化させることにより、各々0.5kGy/sec、5kGy/sec、20kGy/sec、500kGy/sec、15MGy/sec、30MGy/sec(有効電子線照射幅内での平均)とし、コンベア速度及び回転速度を吸収線量率に応じて調節することにより、電子線照射時間内(被照射体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での導電性支持体の円筒軸中心の回転数を3回転、吸収線量を180kGyに固定して電子線を照射した以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0093】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが、吸収線量率が0.5kGy/secでは耐久での削れが若干増加増加しており、30MGy/secの場合には円筒周方向で耐久での削れ量にムラが発生し、その結果、耐久後のVl及びVslにおいて円筒周方向に電位ムラが増加した。
【0094】
(実施例17〜21)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、導電性支持体回転速度を変化させ、電子線照射時間内(感光体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での導電性支持体の円筒軸中心の回転数を各々、1、2、10、20、30回転とした以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0095】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが回転数が1回転では初期、耐久後ともにVl、Vslに円筒周方向の電位ムラが大きくなり、30回転の場合には耐久での削れが増加した。
【0096】
(実施例22〜28)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、コンベアスピードと回転速度の調節により、被照射体表面への電子線吸収線量を各々0.5、1、50、300、500、700、1000kGyとし、吸収線量率及び電子線照射時間内(被照射体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での支持体の円筒軸中心の回転数を固定した以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0097】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが電子線吸収線量が0.5kGyでは耐久での削れが増加し、700、1000kGyでは線量が増すに従って初期及び耐久後の感度の悪化及び残留電位Vslが増加する傾向にあった。
【0098】
(実施例29〜33)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、電子線の加速電圧を各々40、70、100、200、300kVとした以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0099】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが加速電圧が40kVでは耐久での削れに円筒周方向でのムラが見られ、300kVでは初期及び耐久後の感度の悪化及び残留電位Vslが増加した。
【0100】
(実施例34)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射において、コンベアを用いず、円筒状の被照射体を図2の電子線照射装置の電子線照射部に設置し、60rpmの回転速度で回転させた後、加速電圧のオンオフによって3秒間電子線を照射した以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0101】
評価結果を表3に示す。表3に示すように初期、耐久での特性ともに良好であった。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【発明の効果】
本発明は、円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有する電子写真感光体で、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された層であり、放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させた電子写真感光体を用いることから、優れた耐析出性、耐クラック性、耐摩耗性及び耐傷性を有するという優れた効果を奏する電子写真感光体、及びそれを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することができる。
【0105】
さらに本発明は、感度残留電位などの特性も良好であり、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮する電子写真感光体、及びそれを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することができる。
【0106】
さらに本発明は、上記の良好な特性を持つ電子写真感光体を安定的に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例で用いた電子線照射装置の概略図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
1’ 被照射体
2 帯電手段
3 露光部
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 除電露光
8 像定着手段
10 電子線発生部
12 ターミナル
12a フィラメント
12b ガン構造体
12c グリッド
14 加速管
20 照射室
22 照射空間
30 照射窓部
32 窓箔(隔膜)
34 窓枠構造体
100 支持部材
101 案内手段
L 光像露光
P 転写材
【発明の属する技術分野】
本発明は円筒状の電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置並びに電子写真プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体に用いられる材料として有機光導電材料が、その無公害性、高生産性といった点で利点を有するため広く利用されている。これらの電子写真感光体は電気的及び機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体として利用される場合が多い。一方、当然のことながら電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、さらには光学的特性を備えていることが要求される。特に繰り返し使用される感光体にあっては、その感光体の表面層にはコロナ帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。
【0003】
具体的には、コロナ帯電時に発生するオゾンによる劣化のために感度低下、帯電能低下及び残留電位増加などが起こったり、摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生することなどに対する耐久性などが要求されている。
【0004】
さらに感光体表面層には、トナー像の転写性や転写後の残留トナーのクリーニング性に優れていることが要求され、そのためには表面エネルギーが小さく、滑り性が高いことが必要であり、且つこれらの性能が繰り返し使用時にも低下しにくいことが望まれる。
【0005】
感光体の表面は一般に薄い樹脂層であり、樹脂の特性が非常に重要である。上述の諸条件をある程度満足する樹脂として、近年アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが実用化されているが、前述したような特性の全てがこれらの樹脂で満足されるわけではなく、特に感光体の高耐久化を図る上では該樹脂の被膜硬度は十分高いとは言い難い。これらの樹脂を表面層形成用の樹脂として用いた場合でも繰り返し使用時において表面層の摩耗が起こり、さらに傷が発生することがあるという問題点があった。また、有機電子写真感光体の高感度化に対する要求から、電荷輸送物質などの低分子量化合物が感光層中に比較的大量に添加される場合が多く、電子写真感光体を長期にわたって保存する際に前述の低分子量成分が析出してしまい、層分離するといった問題もあった。
【0006】
これらの問題点を解決する手段として、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる試みが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このように電荷輸送層用の樹脂に硬化性の樹脂を用い、電荷輸送層を硬化、架橋することによって、機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性、耐傷性は大きく向上し、且つ低分子量成分の析出防止に対しても多大な効果がある。しかしながら、有機電荷輸送物質と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては、電荷輸送能が用いる樹脂に大きく依存するため、例えば硬度が十分高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなくなり易く、繰り返し使用時に残留電位の上昇が見られるなど、これまでの系では高い硬度と十分な電荷輸送能の両立について検討の余地が残されていた。
【0007】
以上の状況に対して本発明者らは、電子写真感光体の表面層を、少なくとも放射線照射によって重合可能な官能基を有する化合物を放射線照射により硬化させて形成することによって上記課題が大幅に改善されることを開示した(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−127652号公報
【特許文献2】
特開平11−265085号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、放射線照射により重合可能な官能基を有する化合物を硬化させて表面層を形成しようとする場合には、放射線の照射方法によっては感光体の特性が大きく変化してしまうことがあり、従って、感度などの電気的特性と硬さ、耐磨耗性などの機械的特性をより高い次元で両立することができる円筒状の電子写真感光体を安定的に製造するためにはさらなる研究が必要であった。
【0010】
本発明の目的は、従来の樹脂を表面層として使用した電子写真感光体の有していた問題点を解決し、優れた耐摩耗性、耐傷性及び耐析出性を有する電子写真感光体、それを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することである。
【0011】
さらに本発明の目的は、繰り返し使用時における残留電位の上昇などの感光体特性の変化、劣化が非常にすくなく、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮することができる電子写真感光体、それを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は、上記の良好な特性を持つ電子写真感光体を安定的に製造することができる製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、円筒状の導電性支持体と、該支持体に形成される感光層とを有する電子写真感光体であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された層である電子写真感光体において、該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させたことを特徴とする電子写真感光体である。
【0014】
また、本発明は、円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有した電子写真感光体の製造方法であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成される電子写真感光体の製造方法において、該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させることを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、上記電子写真感光体を備えた電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジである。
【0016】
【発明の実施の形態】
感光体の表面を形成する層(以下、単に「表面層」ともいう)に、放射線照射により重合または架橋し硬化する樹脂を含有させる方法としては、放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を適当な溶媒に溶解し、該化合物を含有する感光体表面層用の塗布溶液を円筒状導電性支持体上に塗布し、その後に放射線を照射して硬化させる方法が挙げられる。この溶解液を円筒状導電性支持体上に塗布する方法は、例えば浸漬コーテイング法、スプレイコーテイング法、カーテンコーテイング法、スピンコーテイング法などが知られている。電子写真感光体を効率よく大量生産するには浸漬コーテイング法が最良であり、本発明においても浸漬塗布は可能である。
【0017】
本発明の感光体の構成は、円筒状の導電性基体上に感光層として電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した構成、または逆に電荷輸送層、電荷発生層をこの順に積層した構成、さらには電荷発生物質と電荷輸送物質を結着樹脂中に分散した単層より構成されるもののいずれの構成をとることも可能である。さらに前記感光層上に表面保護層を形成することも可能である。
【0018】
本発明は少なくとも感光体の表面層に、放射線照射により重合または架橋し硬化する樹脂を含有させればよい。本発明では、適当な材料を分散させ前記の化合物を硬化させて感光層の全部を形成しても良いが、電子写真感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性及び耐久性の点より、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光体構成、または前記電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光層上に表面保護層を形成した構成が好ましい。本発明の利点は電荷輸送性を損なうことなく電荷輸送層または保護層を硬化することが可能になる点にもある。従って感光体表面に保護層を形成する構成の場合には、該保護層中の構成物質として、正孔輸送化合物など、電荷輸送機能を有する化合物が含有されていることが好ましい。
【0019】
本発明で使用する、放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物は、放射線照射によって硬化が可能であれば特に他の制約はない。ただし、中でも分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物は、反応性の高さ、反応速度の速さ、放射線照射による硬化によって達成される硬度の高さの点で好ましい。従って、本発明では、表面層が、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を放射線照射によって重合または架橋し硬化することによって得られた樹脂を含有することが好ましい。また、不飽和重合性官能基が少なくともアクリル基、メタクリル基及びスチレン基のいずれかを含むことが特に好ましい。さらに該感光体の表面層が、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を含有する溶液を塗布後、放射線照射により該化合物を重合または架橋させ硬化することにより形成されることがより一層好ましい。
【0020】
本発明における不飽和重合性官能基を有する化合物は、その構造単位の繰り返しよりモノマーとオリゴマーに大別される。モノマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがなく、比較的分子量の小さいものを示し、オリゴマーとは不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である。また、ポリマーまたはオリゴマーの末端のみに不飽和重合性官能基を有するマクロマーも本発明の表面層用の硬化性化合物として使用可能である。本発明では感光体の耐久性と電気的な特性の両立という点からモノマーを使用することが好ましい。
【0021】
また、本発明における不飽和重合性官能基を有する化合物は、電荷輸送物質であることが、感光体の耐久性と電気的な特性の両立という点から特に好ましい。中でも正孔輸送化合物であることが好ましい。
【0022】
不飽和重合性官能基を有する正孔輸送化合物としては、例えば不飽和重合性官能基を有する公知の正孔輸送化合物や、公知の正孔輸送化合物の一部に不飽和重合性官能基を付加した化合物などであれば良い。公知の正孔輸送化合物の例としてはヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、トリフェニルアミン化合物などが挙げられるが、正孔輸送化合物はこれらの化合物に特に限定されるものではなく、正孔輸送能を有する化合物であればいかなる化合物も使用可能である。さらに、本発明において感光体表面層の硬度を十分に確保するために、不飽和重合性官能基を有する化合物は一分子中に複数の不飽和重合性官能基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0023】
本発明に用いることのできる、放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物の例を表1及び表2に示すが、これに限られるものではない。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
前記放射線照射によって硬化した表面層を電子写真感光体に用いた場合に、十分な硬度を示す上に感光体特性を劣化させず残留電位の上昇が起こりにくくなる明確な理由は判明していない。ただ、感光層においては、良好な特性を発現させる上で、極性の強い物質または酸化電位の低い物質は大きな弊害となることが知られていることから、従来の硬化樹脂の系と比較して、本発明で形成される樹脂ではそのような極性の強い物質または酸化電位の低い物質が硬化反応の過程で生じないか、または非常に少ないことが原因の一つではないかと推測できる。
【0027】
さらにまた、同じ構造式の官能基を有する化合物でも、これを熱または紫外線で硬化する場合には、熱または光反応開始剤の添加が必要となるため、残留電位の増加や感度の低下といった感光体特性の劣化が起こり易いが、本発明においては、反応開始剤を用いることなく硬化を行うことができるので、良好な感光体特性を得ることができているとも考えられる。
【0028】
本発明の電子写真感光体の感光層は円筒状の導電性支持体上に形成される。本発明の電子写真感光体が有する導電性支持体は、円筒状の形状で且つ導電性を有するものであればよい。例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属や合金を円筒状に成形したもの、アルミニウム及び銅などの金属箔を円筒状プラスチックにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫などを円筒状プラスチックに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、円筒状プラスチック及び紙などが挙げられる。
【0029】
本発明においては導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、基体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層の材料としてはポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ、ゼラチンなどが知られている。これらはそれぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1〜2μm程度が好ましい。
【0030】
本発明の感光体が機能分離型の感光体である場合には、電荷発生層及び電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε、X型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アンスアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンまたは特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコンなどが挙げられる。
【0031】
機能分離型感光体の場合、電荷発生層は前記の電荷発生物質を質量比で0.3〜4倍量の結着剤樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミルなどの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥されて形成されるか、または前記電荷発生物質の蒸着膜など、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0032】
また、電荷輸送物質としては、ピレン、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾールなどのカルバゾール系化合物、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾンなどのヒドラゾン系化合物、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[キノリル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[6−メトキシ−ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、スピロピラゾリンなどのピラゾリン系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル)オキサゾールなどのオキサゾール系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズチアゾールなどのチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタンなどのトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス−4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)エタンなどのポリアリールアルカン類などが挙げられる。
【0033】
一般的には、電荷輸送層は上記電荷輸送物質を成膜性の樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート樹脂などと混合し、成膜して電荷輸送層とする。
【0034】
本発明において電子写真感光体が電荷輸送層、電荷発生層の順に円筒状の導電性支持体上に感光層が積層される場合には電荷発生層に、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した感光体においては電荷輸送層に、放射線照射により重合または架橋し硬化された樹脂を含有させる。すなわち、電荷発生層または電荷輸送層用の塗布溶液に放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を含有させ、これを用いて塗布し、その後に放射線を照射して硬化させる。
【0035】
単層構成の感光体の場合には、少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及び/または放射線照射により重合または架橋し硬化することが可能な化合物を分散、または溶解した溶液を塗布、乾燥後、放射線照射による硬化を行うことにより感光層を形成する。
【0036】
また本発明の電子写真感光体は、円筒状の導電性支持体上に形成した積層構成または単層構成の感光層の上に保護層を形成することも可能であり、この場合には保護層中に、放射線照射により重合または架橋し硬化した樹脂を含有させる。
【0037】
本発明の感光体の表面層には各種添加剤を添加することができる。該添加剤とは酸化防止剤、紫外線吸収剤などの劣化防止剤やテトラフルオロエチレン樹脂粒子、フッ化カーボンなどの滑剤などである。
【0038】
本発明においては、電子写真感光体の表面層を放射線照射によって形成する。本発明において使用する放射線とは電子線及びガンマ線であるが、装置の大きさ、安全性、コストの面で電子線が有利である。電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型などいずれの形式も使用することができる。
【0039】
電子写真感光体においては、電子写真画像の均一性や繰り返し画像形成時の画像安定性の観点から、感度、残留電位などの電気特性や表面の硬さ、滑り性の感光体の円周方向の均一性が非常に重要となる。ところが、感光体に放射線照射した場合には、感光体の感度及び残留電位が照射した放射線量によって変化し、また、表面層の硬化度や滑り性などの表面特性も放射線量によって変化し易いことを本発明者等は見出した。
【0040】
一方、放射線照射装置は一般的に一方向からの照射であり、とくに装置コスト面及び汎用性に優れる小型で自己遮蔽型の電子線照射装置を用いる場合には、電子線の照射は一方向からとなる。中でも電子線を照射する装置として、図2に示すように、線状の陰極から放出された熱電子を電子線として取り出し、前記電子線を加速する電子線発生部と、被照射体に電子線を照射する照射室と、前記電子線発生部内の真空雰囲気と照射室雰囲気とを仕切るとともに前記電子線を透過させる隔膜とを備える電子線照射装置を用いることは、生産装置のコストを抑え、後述の電子写真感光体を製造する上での電子線の好適な加速電圧、吸収線量率を達成できるという点で非常に有利であるが、円筒状の被照射物により均一に放射線を照射することが必要であった。
【0041】
そこで本研究者らの鋭意検討の結果、円筒状の導電性支持体を有する電子写真感光体に上記感光体の特性の均一性を保ち、且つ表面層を十分硬化させることのできる放射線の照射は、放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させることで達成され、特に放射線照射が一方向からであり、放射線照射時間内に該感光体をその円筒軸を中心に2回転以上回転させることで非常に良好に達成されることが判明した。
【0042】
本発明の円筒状の電子写真感光体においては、電気特性及び耐久性能を発現させ、且つそれらの均一性を実現する上で放射線の照射条件が非常に重要である。放射線が電子線の場合に、特に重要な条件は、被照射体表面での電子線吸収線量率(単位時間あたりの電子線吸収量)、被照射体表面での電子線吸収線量、電子線の加速電圧及び電子線照射時間内での支持体の回転回数である。本発明において電子線を用いる場合はこれらの因子を好適に設定することにより、電気特性、耐久性能及び均一性を満足する円筒状の電子写真感光体の製造が可能となる。
【0043】
放射線が電子線の場合に、電子線吸収線量率は1×103〜2×107Gy/secの範囲が好適であり、1×104〜2×106Gy/secの範囲がより好ましい。電子線吸収線量率が低すぎると表面層の硬化度が低下し、高すぎる場合には表面層の硬さ、表面自由エネルギーが不均一になる傾向にある。
【0044】
感光体での電子線吸収線量は1〜500kGyが好ましく、さらに好ましくは5〜300kGyの範囲である。吸収線量が低すぎる場合には表面層の硬化が十分ではなくなり易く、高すぎる場合には感光体の感度、残留電位が悪化し易くなる。
【0045】
電子線の加速電圧は好ましくは50〜200kVの範囲である。200kVを超えると導電性支持体を含めて電子写真感光体の劣化が顕著となり易く、加速電圧が低すぎると表面層の硬化が膜厚方向で不均一となり易い。
【0046】
本発明における電子線照射時間内での支持体の回転回数は、2回転以上であることが好ましく、20回転以下であることが好ましい、より好ましくは2回転以上10回転以下がである。2回転未満では均一性が低下し易く、20回転を超えると表面層の硬化性が低下する傾向にある。
【0047】
放射線が電子線の場合には、上記4つの条件が好適に設定されることによって感度、残留電位などの電気特性が極めて良好で、均一性も極めて高い円筒状の電子写真感光体を、安定的に製造することが可能となる。
【0048】
なお、電子線の吸収線量率及び吸収線量については、公知の測定手段を用いて被照射体表面における吸収線量を測定しても良いが、本発明では被照射体表面での吸収線量を必ずしも測定する必要はなく、被照射体への照射線量から感光体表面での吸収線量を換算することができる。すなわち、電子線の吸収線量率及び吸収線量は、本発明で用いられる電子線照射装置の出力調整によって制御することができる。
【0049】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0050】
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置から構成される。本発明の電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体に、形成すべき画像に応じた潜像を形成し、これを現像することにより、普通紙など、画像を表示するための記録媒体(転写材)に画像を形成するものであれば特に限定されず、上記電子写真感光体の他に、従来より知られている種々の手段、装置及び部材などを必要に応じて用いることができる。
【0051】
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体を備えた電子写真プロセスカートリッジから構成される。本発明の電子写真プロセスカートリッジは、複数の工程を実現することのできる手段や装置などが一体的に構成され、且つ電子写真装置本体に着脱自在に設けられるものであり、本発明の電子写真感光体を含む構成であれば、用いる手段や装置及び部材などを任意に選択することができる。例えばプロセスカートリッジについて各種手段や装置などの選択例としては、感光体と現像装置とクリーニング装置との組み合わせを好適に例示することができる。このようなプロセスカートリッジとして構成することにより、より一層優れたメンテナンス性が実現され、ユーザー自身によるトナー交換などのメンテナンスがより容易となる。
【0052】
次に、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置の概略構成を示した。図において、1は像担持体としての円筒状の電子写真感光体であり、軸1aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。該感光体1はその回転過程で、帯電手段2によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部3にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0053】
形成された静電潜像は、次いで現像手段4でトナー現像され、そのトナー現像像が、転写手段5により不図示の給紙部から感光体1と転写手段5との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。像転写を受けた転写材Pは感光体面から分離された後、像定着手段8へ導入され、像定着を受けて複写物(コピー)として機外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段6にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、図示しない前露光手段により除電露光7が感光体1に照射され、感光体1の除電処理がされて繰り返して像形成に使用される。
【0054】
感光体1の均一帯電手段2としてはコロナ帯電装置が一般に広く使用されているが、近年オゾン発生の低減、装置の小型化に有利であるという理由から接触帯電装置の使用が広がってきた。中でもローラ状の帯電器を感光体に接触させるタイプのローラ帯電器は非常に一般的になりつつある。本発明の感光体はこの接触帯電方式の帯電を行う電子写真装置において、特に優れた耐久性、耐画像流れ、耐画像ボケ性を発揮する。
【0055】
電子写真装置として、上述の感光体や現像手段、クリーニング手段などの構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジとしても良い。例えば、感光体1とクリーニング手段6とを一体化して一つの装置ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成にしてもよい。このとき上記の装置ユニットのほうに帯電手段及び/または現像手段を伴って構成してもよい。なお、図1には、感光体1、帯電手段2、現像手段4及びクリーニング手段6を支持部材100にて互いの手段などを稼働位置に設け、電子写真装置本体に設けられた案内手段101によって案内され、装置本体に対して一体的且つ着脱自在に構成された本発明のプロセスカートリッジの一態様が示されている。
【0056】
また、光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、または、原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、発光ダイオードアレイの駆動、または液晶シャッターアレイの駆動などが行われることにより行われる。
【0057】
図2は本発明の実施例で使用する電子線照射装置の概略構成図である。
本実施例で用いる電子線照射装置は図2に示すように、電子線発生部10と、照射室20と、照射窓部30とを備えるものである。
【0058】
電子線発生部10は、電子線を発生するターミナル12と、ターミナル12で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管14とを有するものである。また、電子線発生部10の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図示しない拡散ポンプなどにより10-4〜10-6Paの真空に保たれている。
【0059】
ターミナル12は、熱電子を放出する線状のフィラメント12aと、フィラメント12aを支持するガン構造体12bと、フィラメント12aで発生した熱電子をコントロールするグリッド12cとを有する。フィラメント12a及びグリッド12cの図面の奥行き方向の長さは、少なくとも被照射体の放射線が照射されるべき部分の円筒軸方向の長さより長くすれば、被照射体の円筒軸方向は1回の電子線照射で全体が照射可能である。
【0060】
また、電子線発生部10には、フィラメント12aを加熱して熱電子を発生させるための不図示の加熱用電源と、フィラメント12aとグリッド12cとの間に電圧を印加する同じく不図示の制御用直流電源と、グリッド12cと照射窓部30に設けられた窓箔32との間に電圧を印加する加速用直流電源とが設けられている。
【0061】
照射室20は、円筒状の被照射体1’表面に電子線を照射する照射空間22を含むものである。後述の実施例のように、電子写真感光体の表面層を硬化させる場合には、硬化を安定させるため、照射室20の内部は不活性ガス雰囲気としている。ここで不活性ガスとは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどである。また、円筒状の被照射体1’は照射室20内をコンベアなどの搬送手段により矢印Aの方向へ搬送される。
【0062】
さらに、少なくともこの円筒状の被照射体1’が電子線照射窓部30を通過し電子線を照射される時間内は、導電性支持体をその円筒軸を中心にして回転させることによって、該被照射体1’は矢印Bの方向に円筒軸を中心にして回転している。なお、電子線発生部10及び照射室20の周囲は電子線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないように、鉛遮蔽が施されている。
【0063】
照射窓部30は、金属箔からなる窓箔32と、窓箔32を冷却すると共に窓箔32を支持する窓枠構造体34とを有するものである。窓箔32は、電子線発生部10内の真空雰囲気と照射室20内の空気雰囲気とを仕切るものであり、また窓箔32を介して照射室20内に電子線を取り出すものである。
【0064】
加熱用電源によりフィラメント12aに電流を通じて加熱するとフィラメント12aは熱電子を放出し、この熱電子は、フィラメント12aとグリッド12cとの間に印加された制御用直流電源の制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、グリッド12cを通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、このグリッド12cから取り出された電子線は、グリッド12cと窓箔32との間に印加された加速用直流電源の加速電圧により加速管14内の加速空間で加速された後、窓箔32を突き抜け、照射窓部30の下方の照射室20内を搬送される円筒状の被照射体1’に照射される。なお、通常は、加熱用電源と加速用直流電源とを所定の値に設定し、制御用直流電源を可変にすることにより、ビーム電流の調整が可能となる。
【0065】
以下、実施例に従って説明する。
【0066】
【実施例】
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(質量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3,000)0.002部を直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料を導電性支持体である直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分間乾燥して、膜厚20μmの導電層を形成した。
【0067】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調製した。この塗料を前記の導電層上に浸漬塗布方法によって塗布し、100℃で20分間乾燥し、0.6μmの中間層を形成した。
【0068】
次に、CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2度の9.0度、14.2度、23.9度及び27.1度に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラール(商品名エスレックBM2、積水化学(株)製)2部及びシクロヘキサノン35部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬塗布方法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0069】
次いで、表1の化合物例No.11の化合物40部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、図2に示す電子線照射装置を用いて電子線を照射した。
【0070】
電子線照射装置は、円筒軸方向の電子線照射幅450mm、電子線照射窓部における矢印A方向の有効電子線照射幅(電子線密度がピーク位置での密度の1/e以上である幅)が3cm、加熱乾燥した後の電荷輸送層を有する円筒状の被照射体1’は矢印A方向にベルトコンベアにより一定速度で移動しながら電子線照射窓部の有効電子線照射幅の中を通過する際に電子線照射を受ける構造となっている。電子線照射条件は、加速電圧150kV、吸収線量率20kGy/sec(有効電子線照射幅内での平均)、コンベア速度10mm/sec、回転速度60rpmとし、この場合の電子線照射時間内(被照射体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での被照射体の円筒軸中心の回転数、すなわち導電性支持体の円筒軸中心の回転数は3回転であり、吸収線量は18kGyであった。以上の条件にて電子線を照射し前記塗料の膜を硬化することによって膜厚18μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0071】
この感光体をキヤノン(株)製複写機GP−40に入れ、初期の感光体特性(暗部電位Vd、光減衰感度(暗部電位−650V設定で−150Vに光減衰させるために必要な光量)、残留電位Vsl(光減衰感度の光量の3倍の光量を照射したときの電位))を円筒周方向の電位のフレ幅も含めて測定し、さらに20,000枚の通紙耐久実験を行い、画像欠陥の発生の有無の観察、感光体の削れ量、削れムラ(円筒周方向での削れ量のムラ)及び耐久後の前記感光体特性を測定し、各々の変化値ΔVd、ΔVl(初期にVlが−150Vとなる光量と同量の光量を耐久後に照射したときのVlの変化量)、ΔVslを円筒周方向の電位のフレ幅も含めて求めた。なお、ΔVd、ΔVl及びΔVslに関し、値が正であるということは、耐久後において電位の絶対値が低下したことを示し、逆に、負であるということは、電位の絶対値が増加したことを示す。
【0072】
なお、感光体の各電位は、複写機GP40の現像ユニットの位置に電位計(Trek Model 344)を装着して測定し、感度は、Vlを−150Vとする光量を感光体表面に相当する位置に装着した光量計にて測定した。感光体の削れは、うず電流測定による測定(膜厚計:Fishcer Permascope)及び干渉膜厚計(大塚電子製)により求めた。
【0073】
結果を表3に示す。表3に見られるように本発明の円筒状の感光体では初期の感光体特性が円筒周方向での電位のフレも含めて良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久においても感光体特性にほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0074】
(実施例2〜5)
感光体電荷輸送層に用いる化合物を表4に示すように(表中、実施例3の混合比は質量比)代えた他は、実施例1と同様にして実施例2〜5に対応する電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0075】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期の感光体特性が円筒周方向での電位のフレも含めて良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久においても感光体特性にほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0076】
(実施例6)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0077】
ついで、表2の化合物例No.36を15部及び下記構造式(E)のスチリル化合物25部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、実施例1と同条件で電子線を照射し、膜厚15μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製し評価した。結果を表3に示す。表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0078】
【化1】
【0079】
(実施例7)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0080】
ついで、表2の化合物例No.22を30部及び下記構造式(F)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(数平均分子量20,000)10部をジクロロメタン20部、トルエン40部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層上に浸漬塗布方法で塗布し、50℃で15分間乾燥した後、実施例1と同条件で電子線を照射し、膜厚13μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製し評価した。結果を表3に示す。表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0081】
【化2】
【0082】
(実施例8)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0083】
ついで、上記構造式(E)のスチリル化合物20部及び上記構造式(F)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(数平均分子量20,000)10部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調製した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。この時の電荷輸送層の膜厚は10μmであった。
【0084】
次いで、表2の化合物No.28の60部をブチルアルコール50部/エチルアルコール50部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層用塗料を調製した。この塗料を浸漬コーテイング法により先の電荷輸送層上に塗布し、実施例1と同じ条件で電子線を照射し表面保護層を硬化し、膜厚5μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。この感光体を実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0085】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体でも初期の感光体特性が円筒周方向での電位のフレも含めて良好であり、耐久での削れが少なく、且つ耐久においても感光体特性にほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0086】
(実施例9)
実施例8において表面保護層に用いる化合物を表1の化合物No.9に代えた他は、実施例8と同様にして実施例9の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0087】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体においても初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0088】
(実施例10)
実施例8において表面保護層用に用いる化合物を表2の化合物No.31及び35を重量比1:1の混合物に代えた他は、実施例8と同様にして実施例10の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0089】
表3に見られるように本実施例の円筒状の感光体においても初期及び耐久実験において、非常に安定した良好な特性を示している。
【0090】
(比較例1)
実施例8において表面保護層を設けず、電荷輸送層の膜厚を15μmにした感光体を比較例1の感光体とし、評価した。
【0091】
評価結果を表3に示す。表3に示すように比較例においては初期特性は良好であったが、耐久での表面層の削れが大きく、これによってカブリなどの画像欠陥が発生している。
【0092】
(実施例11〜16)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、吸収線量率を、ビーム電流を変化させることにより、各々0.5kGy/sec、5kGy/sec、20kGy/sec、500kGy/sec、15MGy/sec、30MGy/sec(有効電子線照射幅内での平均)とし、コンベア速度及び回転速度を吸収線量率に応じて調節することにより、電子線照射時間内(被照射体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での導電性支持体の円筒軸中心の回転数を3回転、吸収線量を180kGyに固定して電子線を照射した以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0093】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが、吸収線量率が0.5kGy/secでは耐久での削れが若干増加増加しており、30MGy/secの場合には円筒周方向で耐久での削れ量にムラが発生し、その結果、耐久後のVl及びVslにおいて円筒周方向に電位ムラが増加した。
【0094】
(実施例17〜21)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、導電性支持体回転速度を変化させ、電子線照射時間内(感光体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での導電性支持体の円筒軸中心の回転数を各々、1、2、10、20、30回転とした以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0095】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが回転数が1回転では初期、耐久後ともにVl、Vslに円筒周方向の電位ムラが大きくなり、30回転の場合には耐久での削れが増加した。
【0096】
(実施例22〜28)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、コンベアスピードと回転速度の調節により、被照射体表面への電子線吸収線量を各々0.5、1、50、300、500、700、1000kGyとし、吸収線量率及び電子線照射時間内(被照射体の円筒軸が有効電子線照射幅内にいる時間)での支持体の円筒軸中心の回転数を固定した以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0097】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが電子線吸収線量が0.5kGyでは耐久での削れが増加し、700、1000kGyでは線量が増すに従って初期及び耐久後の感度の悪化及び残留電位Vslが増加する傾向にあった。
【0098】
(実施例29〜33)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射条件のうち、電子線の加速電圧を各々40、70、100、200、300kVとした以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0099】
評価結果を表3に示す。表3に示すようにいずれもおおむね初期、耐久での特性ともに良好であるが加速電圧が40kVでは耐久での削れに円筒周方向でのムラが見られ、300kVでは初期及び耐久後の感度の悪化及び残留電位Vslが増加した。
【0100】
(実施例34)
実施例8において、表面保護層塗布後の電子線照射において、コンベアを用いず、円筒状の被照射体を図2の電子線照射装置の電子線照射部に設置し、60rpmの回転速度で回転させた後、加速電圧のオンオフによって3秒間電子線を照射した以外は実施例8と同様にして感光体を作製し、評価した。
【0101】
評価結果を表3に示す。表3に示すように初期、耐久での特性ともに良好であった。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【発明の効果】
本発明は、円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有する電子写真感光体で、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された層であり、放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させた電子写真感光体を用いることから、優れた耐析出性、耐クラック性、耐摩耗性及び耐傷性を有するという優れた効果を奏する電子写真感光体、及びそれを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することができる。
【0105】
さらに本発明は、感度残留電位などの特性も良好であり、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮する電子写真感光体、及びそれを備える電子写真装置及び電子写真プロセスカートリッジを提供することができる。
【0106】
さらに本発明は、上記の良好な特性を持つ電子写真感光体を安定的に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例で用いた電子線照射装置の概略図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
1’ 被照射体
2 帯電手段
3 露光部
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 除電露光
8 像定着手段
10 電子線発生部
12 ターミナル
12a フィラメント
12b ガン構造体
12c グリッド
14 加速管
20 照射室
22 照射空間
30 照射窓部
32 窓箔(隔膜)
34 窓枠構造体
100 支持部材
101 案内手段
L 光像露光
P 転写材
Claims (22)
- 円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有する電子写真感光体であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成された層である電子写真感光体において、
該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させたことを特徴とする電子写真感光体。 - 前記放射線照射が一方向からであり、放射線照射時間内に、該支持体を2回転以上回転させたことを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記放射線が電子線であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記電子線の照射における被照射体表面での電子線吸収線量率が1×103〜2×107Gy/secの範囲であることを特徴とする請求項3記載の電子写真感光体。
- 前記電子線の照射における被照射体表面での電子線吸収線量が1〜500kGyの範囲であることを特徴とする請求項3または4に記載の電子写真感光体。
- 前記電子線の加速電圧が50〜200kV以下であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記電子線の照射時間内の支持体の回転数が2回以上20回転以内であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記電子写真感光体の表面を形成する層が含有する樹脂は、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を放射線照射によって重合または架橋し硬化することによって得られた樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記不飽和重合性官能基が少なくともアクリル基、メタクリル基及びスチレン基のいずれかを含むことを特徴とする請求項8記載の電子写真感光体。
- 前記分子内に不飽和重合性官能基をもつ化合物が正孔輸送化合物であることを特徴とする請求項8または9に記載の電子写真感光体。
- 円筒状の導電性支持体と、該支持体上に形成される感光層とを有した電子写真感光体の製造方法であって、且つ該電子写真感光体の少なくとも表面を形成する層は、放射線照射により重合または架橋し硬化する化合物を含有する層に放射線を照射することによって形成される電子写真感光体の製造方法において、
該放射線照射時に、該支持体をその円筒軸を中心に回転させることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記放射線照射が一方向からであり、放射線照射時間内に、該支持体を2回転以上回転させることを特徴とする請求項11記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記放射線が電子線であることを特徴とする請求項11または12に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記電子線の照射における被照射体表面での電子線吸収線量率が1×103〜2×107Gy/secの範囲であることを特徴とする請求項13記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記電子線の照射における被照射体表面での電子線吸収線量が1〜500kGyの範囲であることを特徴とする請求項13または14に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記電子線の加速電圧が50〜200kV以下であることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記電子線の照射時間内の支持体の回転数が2回以上20回転以内であることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記電子写真感光体の表面を形成する層が含有する樹脂は、分子内に不飽和重合性官能基を有する化合物を放射線照射によって重合または架橋し硬化することによって得られた樹脂であることを特徴とする請求項11乃至17のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記電子写真感光体の表面を形成する層は、分子内に不飽和重合性官能基をもつ化合物を含有する溶液の塗膜に放射線を照射することによって形成されることを特徴とする請求項18記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記分子内に不飽和重合性官能基をもつ化合物が正孔輸送化合物であることを特徴とする請求項18または19に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする電子写真装置。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくともひとつの手段とを有し、これらが一体に支持され、且つ電子写真装置本体に着脱自在に構成されていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
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