JP2008202310A - 地中埋設用函体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 多数の骨格部材を積み重ねた積層構造物を保護シートで覆って内蔵し、地中に埋設する地中埋設用函体において、該地中埋設用函体を構成する各壁面が、多数の分割された鋼製枠相互を局部変形を吸収可能な連結手段で連結しており、地震などの多方面からの外力が加わった場合に、上記函体自体が変形して、慣性力を柔軟に免れうることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
従来の防災水槽は、コンクリート製や鋳鉄製などの強固な外郭壁の構築によって貯留水を格納しているが、設計時に要求される設計震度以上の大規模地震に被災した場合には振動に伴う慣性力と地盤変位によって外郭壁自体が損傷または破損し、損傷部または破損部からの漏水が原因で、緊急インフラとして機能できない虞れがある。
これらの外郭壁は単位ブロックの形状と重量が大きいので、建設敷地として所定の面積を要すること、敷地には矩形に近い形状が要求されること、設置工事に大型重機を用いることなどの制約が課せられていた。
また、コンクリート製の防災水槽の場合は、中小規模地震時にも生ずる貯留水の表面波によって天井部が破損して地表が陥没し、直上の地上設備に損傷を与える虞れもある。
一方、例えば、特許第2901959号の積層構造物の発明では、地下貯水構造物として、地面を掘り下げて形成された空間に骨格部材を積層して積層構造物を形成する構造が開示されている。
また、特許第3710192号の水貯留用タンクの発明では、タンク用空間内に複数の単位骨格部材を積み重ねて空間保持骨格を構成する構成が開示されている。
これらの骨格部材からなる積層構造物や空間保持骨格は、全体として空間内で一定の強度を有するものの、コンクリートを打設したタンクなどの損傷を防ぐことはできなかった。
この発明の別の課題は、函体が、多数の鋼製枠を連結してなるので、設置用地の平面形状や面積に合わせて適宜対応した形状とすることができ、且つ単位鋼製枠は、骨格部材と同様に軽量であるために、短期間に小型重機と人力で建設可能とした地中埋設用函体を提供することにある。
また、アンカー部材を取り付けることで、函体に地下水や地盤の液状化による浮力に抵抗させる機能を付加することもできる。
多数の骨格部材を積み重ねた積層構造物を保護シートで覆って内蔵し、地中に埋設する地中埋設用函体において、
該地中埋設用函体を構成する各壁面が、多数の分割された鋼製枠相互を局部変形を吸収可能な連結手段で連結しており、
地震などの多方面からの外力が加わった場合に、上記函体自体が変形して、慣性力を柔軟に免れうることを特徴多数の骨格部材を積み重ねた積層構造物を保護シートで覆って内蔵し、地中に埋設する地中埋設用函体において、
該地中埋設用函体を構成する各壁面が、多数の分割された鋼製枠相互を局部変形を吸収可能な連結手段で連結しており、
地震などの多方面からの外力が加わった場合に、上記函体自体が変形して、慣性力を柔軟に免れうることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記地中埋設用函体が、相互に連結して函体底壁面を形成する多数の底部鋼製枠と、相互に連結して函体側壁面を形成する多数の側部鋼製枠と、相互に連結して函体上壁面を形成する多数の上部鋼製枠と、前記側部鋼製枠と底部鋼製枠または側部鋼製枠と上部鋼製枠とを連結する連結梁片と、前記多数の側部鋼製枠で形成された函体側壁面のコーナ部分に配置されて異なる函体側壁面相互を連結するコーナ柱片とからなっていることを特徴とする。
また、請求項3の発明では、
前記連結手段の主要部分が、掛止または嵌め合わせによる係合構造からなっていることを特徴とする。
請求項4の発明では、
前記底壁面を形成する底部鋼製枠の全部または一部に孔部を形成し、該孔部に地中に打ち込むアンカー部材を貫入して地中埋設用函体を固定してなり、
地下水や地震時の液状化現象にて生ずる浮力に抵抗しうることを特徴とする。
更に、請求項5の発明では、
前記底部鋼製枠が、底面となる底部鋼製枠本体の両端で起立する立片部と、該立片部から前記本体中央側に向かって水平の延びるフランジ面とを有しており、
函体底壁面を形成する多数の底部鋼製枠のフランジ面が実質的に同一の水平面上に形成され、
積層構造物の設置前に、函体底壁面の下に敷設する砕石と調整砂が形成する設置面の不陸状態を解消し、平坦精度を向上しうることを特徴とする。
請求項6の発明では、
前記地中埋設用函体が、多目的防災水槽の函体からなることを特徴とする。
また、この函体内に内蔵される多数の骨格部材に合成樹脂製の部材を使用すれば個々の骨格部材自体が可撓性を有し、また、積層構造物を包む保護シートにも伸縮性のある素材を使用することで、函体内部も変形性能の高いフレキシブルな構造となる。
そこで、多目的防災水槽として用いた場合には、設計震度のレベル設定に関わらず巨大地震時の慣性力を直接的に耐荷することを免れる免震構造が実現され、貯留された多目的水の確保が保証される。
なお、中小規模地震時に生ずる貯留水の表面波には、前記骨格部材群の消波作用によって函体上面壁の損壊と地表面の陥没を避けることができる。
また、鋼製枠や骨格部材は多数に分割されており、それぞれの単体重量は比較的軽量であるので、掘削作業以外は人力での施工が可能であり、大型重機を使用することなく従来の貯留水槽に較べて施工期間を大幅に短縮できる。
さらに、骨格部材も鋼製枠も多数に分割されたコンパクトな形状なので、自由な立体形を形成することができ、多目的防災水槽を建設する敷地の平面形状にも面積にも制約を受けることなく構築することができる。
上記アンカー部材の貫入長、個数および配置は支持地盤の地質状況に合わせて適宜選定することができる。
また、函体内に骨格部材を設置する作業では底部敷設面の平坦度が極めて重要となるが、従来の転圧作業にては砕石と調整砂が形成する設置面の平坦度を確保することが難しく、施工性を著しく阻害している。
そこで、底部鋼製枠に平坦性を確保させれば、転圧などの作業性と骨格部材の設置精度を大幅に向上することができる。
図1は、多目的防災水槽1の一部を切り欠いた全体構造の鳥瞰図であって、地中に埋設された函体4は、該函体4を構成する函体底壁面4Aと、周壁となる函体側壁面4Bと、函体上壁面4Cとを有する密封されたボックス状からなっている。
該函体4で形成された空間内には、多数の骨格部材2を縦横且つ上下に積み重ねた積層構造物20を保護シート3で覆って内蔵している。
ここで骨格部材2は、多数を組み合わせて空隙率の高い通水性を有する1つの骨格を形成するものであればよく、一例として、特公平4−026648号や特許第3710192号で開示された合成樹脂製の容器状部材や骨格部材を用いた例を示したが、特許第2901959号のような骨格部材など、その他の公知の骨格部材を用いることができる。
また、この骨格部材2は合成樹脂であれば軽量で可撓性を有するので好ましいが、金属製、あるいは金属と合成樹脂とのハイブリット構造のものなど、適宜用いることができる。
次ぎに、函体4の函体底壁面4Aは、多数の薄板鋼板からなる底部鋼製枠41を相互に連結手段8で連結して形成される。
底部鋼製枠41は、図4および図8(a)に一層明瞭に示すように、幅狭で長尺に延びる扁平な底片部41aと、その両端で上向きに直角に垂設された一対の側片部41bと、該一対の側片部の上端からそれぞれ内向きに直角に折れ曲がり水平に中途位置まで延びる上部フランジ片41cとからなっており、対向する上部フランジ片41c間には隙間Sが形成されて、内部空間と連通する開口となっている。
また、上記一対の上部フランジ片41cは、実質的に1つの水平面を形成している。
このようにして、底片部41aが水平な底面を形成し、上部フランジ片41cが、底面と平行に上方へ離間した実質的な水平面を形成する。
本実施例では、アンカー用の孔7は円形からなっているが、孔の形状は矩形その他の任意の形状であってもよい。
また、アンカー用の孔7の位置と前記ボルト孔の位置関係が、図示例では平面から見て略等間隔にずれるように配置されているが、この両者の孔の配置関係や配置する数は特に限定されるものではなく、用途や現場の地質などの条件に合わせて適宜設計して変更することができる。
連結手段8は、薄板鋼板からなる鋼製枠41〜45を連結するもので、ほとんどを掛け止めや嵌め合わせ構造とすることで、圧縮時に連結部分の緩み代で局部変形の吸収に対応するようになっている。
また、上記変形の吸収を損なわない範囲で、建方時の安定性と安全性を確保するため連結ボルトやフックなどの構造を一部に用いてもよい。
なお引張力に対しては鋼製枠41〜45の薄板鋼板の弾性変形による。
次ぎに、函体4の函体側壁面4Bは、多数の薄板鋼板からなる側部鋼製枠42を相互に連結手段8で連結して形成される。
側部鋼製枠42は、図4および図8(b)に示すように、幅狭で長尺に延びる扁平な側片部42aと、その一端で外向きに直角に垂設された第1縦垂片部42bと、他端で第1縦垂片部42bと対峙して平行に延びる第2縦垂片部42cと、該第2縦垂片部42cの先端に形成されて上記第1縦垂片部42bの先端に嵌合係止する連結手段8の一例としてのフック部42dと、上下両端において前記第1縦垂片部42bと第2縦垂片部42cの間に掛け渡される第1横垂片部42eと第2横垂片部42eとからなっている。
側部鋼製枠42は、本実施例の場合、函体側壁面4Bの高さと同じ長さに設定されている。
そして、前記第2縦垂片部42c’のフック部42d’を前記第1縦垂片部42bに外嵌して側部鋼製枠42、42’相互を係止する。
これにより、内壁面が平坦な面となり、外壁面には第1縦垂片部42bと第2縦垂片部42cとが一体に係合してフィン状に突出する突起46が一定間隔に形成される。
次ぎに、函体4の函体上壁面4Cは、多数の薄板鋼板からなる上部鋼製枠43を相互に連結手段8で連結して形成される。
上部鋼製枠43は、本実施例の場合、函体4の縦横の一方の長さよりやや長い長さに設定され、上記側部鋼製枠42と同様の構成からなっている。
即ち、この上部鋼製枠43相互を1枚の略プレート状に組み立てる際には、その上片部43aを同一水平面とし、一方の上部鋼製枠43の第1縦垂片部43bと隣接する他方の上部鋼製枠43の第2縦垂片部43cとをフック部43dで係止して連結し、前記と同様の突起46’が一定間隔に形成される。
第1端部鋼製枠51は、前記上片部43aより幅広く設定されて取付時に函体4より外側に突出する長さに設定された端部上片部51aと、該端部上片部51aの一方の端部で直角に垂設された端部第1縦垂片部51bとからなっている。
この函体上壁面4Cは、その外周に沿った縁部が、側部鋼製枠42の第1横垂片部42eと重なって接しており、その部分で連結手段8としてのボルトとナットによる締付により連結している(図示省略)。
次ぎに、本実施例の場合、上記函体側壁面4Bと函体底壁面4Aとを連結するために横に延びるコーナ部分に薄板鋼板からなる連結梁片45を内側から接触させて連結手段8で連結する。
該連結梁片45は、断面が縦片45aと横片45bとにより略L状に形成された所定の長尺のアングル材からなっている。
更に、函体側壁面4Bと函体上壁面4Cとの横に延びるコーナ部分にのみ連結梁片45を内側から接触させて連結するものでもよい。
また、コーナで隣接する函体側壁面4B、4Bの間には、薄板鋼板からなって上下方向に延びるコーナ柱片44が介設されて函体側壁面4B、4B相互を連結手段8で連結して函体4のコーナとなっている。
隙間が広い場合には、断面チャンネル状の補助片44’を側部鋼製枠42との間に挟んでコーナ柱片44を設けてもよい(図3参照)。
そして、このコーナ柱片44は、側部鋼製枠42と共に前記連結梁片45によって連結手段8としてのボルト止めにより連結する。
そこで、函体は、まず地面を掘って凹所を設け、底面に砕石5を敷設し、その上に調整砂15を敷設して凹所の底面を平坦な設置面に整地する。
その上に、函体底壁面4Aを組立てて載置し、該函体底壁面4Aの上に袋状の保護シート3、本実施例では貯留層であるためゴムシートなどの耐水性を有する保護シート3を載置する。
上記保護シート3内に骨格部材2を充填して積層構造物20を組み立て、また函体底壁面4Aの外周に沿って函体側壁面4Bを組立てていく。
そして、連結梁片45を用いて函体底壁面4Aと函体側壁面4Bとを連結する。
する。
そして、函体上壁面4Cを組立て、上記函体側壁面4Bの上に重ねて両者を連結して函体4が組み上がり、前記凹所を埋め戻し土6で埋め戻すことで、積層構造物20を保護シート3に密封した函体4を地中に埋設した多目的防災水槽が完成する。
この発明では、図7に示すように、砕石5の敷設後に直接、または調整砂15を介して底部鋼製枠41を敷設することで、骨格部材2を積み重ねる際の設置面となる上部フランジ片41c群の平坦度16を可及的に水平面に近く調整することができるので、積層構造物20の組立精度を向上させることができる。
図2の断面図と図3の平面図には、建設敷地に形状的な制約条件が課せられた場合の実施例を示している。
函体4は上記のように構成されているので、各壁面4A〜4Cは分割された多数の鋼製枠41〜43や片44,45を連結手段8で連結したものであり、その連結個所は局部変形を吸収できるようになっているので、図5のイメージ図が示すように、函体4は、骨格部材2からなる積層構造物20の可撓性、保護シート3の伸縮性も相俟って設計震度以上の地震による慣性力11に対して柔軟に変形することで、函体4が破壊することなく貯留水を確保できる。
また、中小規模の地震時に生ずる貯留水の表面波10も骨格部材群の緩衝によって消波することができる。
本実施例では、地下水や地盤の液状化現象による函体4の浮力に対して、アンカー部材12により浮き上がりを防止する機能を有している。
前述の通り、底部鋼製枠41には、浮き上がり防止用アンカー部材12を設置するための孔7が穿設されている(図4参照)。
孔7は、円形の孔からなっており、図6に例示するアンカー部材12が地中に打ち込まれるようになっている。
アンカー部材12は、前記底部鋼製枠41の孔7より小径に設定されて、先端に設けられる鋼棒の刃先12aと、該刃先12aの鋼棒と同径で刃先12aの基端に連結される1または複数の樹脂製のロッド12bと、該ロッド12bと同径で最上段のロッド12bと連結される鋼製の抜止めロッド12dと、刃先12aやロッド12b、12dを連結する連結パイプ12cとからなっている。
このアンカー部材12は、地質に応じて連結するロッド12bの数を決めて適宜長さに設定することができる。
従って、図6の様に適宜に配置したアンカー部材12のそれぞれが下部および周辺の土質に対して円錐形のせん断面13を形成することで作用浮力に抵抗することができる。
またアンカー部材を分割構造とし、連結用のロッド12bや連結パイプは合成樹脂とすることで、より軽量化を図り、施工性をを向上することができるが、この発明ではアンカー部材の素材は特に限定されず、全て金属であってもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
2 骨格部材
3 保護シート
4 函体
4A 函体底壁面
4B 函体側壁面
4C 函体上壁面
5 砕石
6 埋め戻し土
7 アンカー用の孔
8 連結手段
10 貯留水の表面波
11 水平方向および鉛直方向の地震時慣性力
12 浮き上がり防止用アンカー部材
12a アンカー部材の鋼棒の刃先
12b アンカー部材の樹脂製棒
12c アンカー部材の連結パイプ
12d アンカー部材の鋼製ネジ部
13 浮き上がりに対する円錐形のせん断抵抗面
15 調整砂
16 骨格部材群設置時の設置面の不陸状態および平坦度
20 積層構造物
41 底部鋼製枠
42 側部鋼製枠
43 上部鋼製枠
44 コーナ柱片
45 連結梁片
Claims (6)
- 多数の骨格部材を積み重ねた積層構造物を保護シートで覆って内蔵し、地中に埋設する地中埋設用函体において、
該地中埋設用函体を構成する各壁面が、多数の分割された鋼製枠相互を局部変形を吸収可能な連結手段で連結しており、
地震などの多方面からの外力が加わった場合に、上記函体自体が変形して、慣性力を柔軟に免れうることを特徴とした地中埋設用函体。 - 地中埋設用函体が、相互に連結して函体底壁面を形成する多数の底部鋼製枠と、相互に連結して函体側壁面を形成する多数の側部鋼製枠と、相互に連結して函体上壁面を形成する多数の上部鋼製枠と、前記側部鋼製枠と底部鋼製枠または側部鋼製枠と上部鋼製枠とを連結する連結梁片と、前記多数の側部鋼製枠で形成された函体側壁面のコーナ部分に配置されて異なる函体側壁面相互を連結するコーナ柱片とからなっていることを特徴とする請求項1に記載の地中埋設用函体。
- 連結手段の主要部分が、掛止または嵌め合わせによる係合構造からなっていることを特徴とする請求項1に記載の地中埋設用函体。
- 底壁面を形成する底部鋼製枠の全部または一部に孔部を形成し、該孔部に地中に打ち込むアンカー部材を貫入して地中埋設用函体を固定してなり、
地下水や地震時の液状化現象にて生ずる浮力に抵抗しうることを特徴とする請求項1に記載の地中埋設用函体。 - 底部鋼製枠が、底面となる底部鋼製枠本体の両端で起立する立片部と、該立片部から前記本体中央側に向かって水平の延びるフランジ面とを有しており、
函体底壁面を形成する多数の底部鋼製枠のフランジ面が実質的に同一の水平面上に形成され、
積層構造物の設置前に、函体底壁面の下に敷設する砕石と調整砂が形成する設置面の不陸状態を解消し、平坦精度を向上しうることを特徴とする請求項1に記載の地中埋設用函体。 - 地中埋設用函体が、多目的防災水槽の函体からなることを特徴とする請求項1に記載の地中埋設用函体。
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