JP2008201901A - 非拡散性潤滑剤組成物及び基油の拡散防止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】この発明は,シリコーン系グリースに含まれるシリコーン系オイルの潤滑部以外への油分の滲み出し拡散を防止することができる非拡散性潤滑剤組成物及び基油の拡散防止方法を提供することである。
【解決手段】 この非拡散性潤滑剤組成物は,シリコーン系グリース3に基油拡散防止剤5及び有機溶剤4を配合して構成されている。非拡散性潤滑剤組成物1を基材表面2に塗布し,基油拡散防止剤5が溶け込んだ有機溶剤4が基材表面2に拡散して蒸発し,シリコーン系グリース3の周囲に基油拡散防止剤5の膜が形成され,それによって基油拡散防止剤5の膜によりシリコーン系グリース3に含まれるシリコーン系オイルの基材表面2での拡散が防止される。
【選択図】図1
【解決手段】 この非拡散性潤滑剤組成物は,シリコーン系グリース3に基油拡散防止剤5及び有機溶剤4を配合して構成されている。非拡散性潤滑剤組成物1を基材表面2に塗布し,基油拡散防止剤5が溶け込んだ有機溶剤4が基材表面2に拡散して蒸発し,シリコーン系グリース3の周囲に基油拡散防止剤5の膜が形成され,それによって基油拡散防止剤5の膜によりシリコーン系グリース3に含まれるシリコーン系オイルの基材表面2での拡散が防止される。
【選択図】図1
Description
この発明は,シリコーン系グリースに含まれる基油であるシリコーン系オイルが基材表面の潤滑部以外の領域に滲み出して拡散するニジミが発生するのを防止する非拡散性潤滑剤組成物及び基材表面での基油の拡散防止方法に関する。
近年,精密機器,測定機器,検査機器等の機器について,急速な高性能化,小型化,高速摺動化に伴って,それらの機器の機械的な潤滑部,回転部,摺動部等に使用されている潤滑剤に対しても,従来よりも更に優れた特性や品質が要求されるようになってきた。
ところで,潤滑剤については,より広い技術分野にわたって使用可能とするため,例えば,コンピュータ制御による自動化の促進がより低トルク化,耐熱性,低温性,メンテナンスフリーを実現させるための長寿命化等の各種の性能の要求となってきている。その結果として,潤滑油の基油成分が鉱油から合成油へと変わり,その合成油も合成炭化水素油からシリコーン油やフッ素油へと技術展開されてきている。
従来技術として,グリース中の油分が拡散しないグリースの基油拡散防止剤が知られている。該グリースの基油拡散防止剤は,合成潤滑油を基油とするグリースに添加するためであり,疎水性基としてパーフルオロカーボンチェーンをもち且つ親水性基としてヒドロキシエチレン基又はそのリン酸エステルを末端にもつフッ素系界面活性剤から構成されている(例えば,特許文献1参照)。
また,オゾン層の破壊という環境問題が起きることがなく,人体に対する毒性の問題や引火という危険な状況が発生することがないグリースの拡散防止法及びグリースの拡散防止剤が知られている。該グリースの拡散防止法は,フッ素系界面活性剤が0.05重量部乃至15重量部,水及び水に溶解する溶剤が99.5重量部乃至85重量部から成るグリースの拡散防止剤を基材の表面に付着させる第1工程と,付着した前記拡散防止剤を乾燥させる第2工程とから構成されている(例えば,特許文献2参照)。
更に,フッ素系ポリマーをフッ素系溶剤に溶かした拡散防止剤を部品に塗布する必要がない非拡散組成物が知られている。該非拡散組成物は,フッ素系シラン化合物を潤滑油又はグリースに少なくとも0.01質量%以上含有することを特徴とするものである(例えば,特許文献3参照)。
また,グリースに添加することにより油分拡散を小さく抑えるグリースの基油拡散防止剤が知られている。該グリースの基油拡散防止剤は,合成潤滑油を基油とするグリースに添加するための基油拡散防止剤であり,疎水性基としてパーフルオロカーボンチェーンをもち且つ親水性基としてポリオキシエチレンをもつフッ素系界面活性剤から成ることを特徴とするものである(例えば,特許文献4参照)。
グリース成分中から油分の離油,離漿を無くし,潤滑に供する部分のみに油分が存在し,その他の部分にはグリースが拡散しない非拡散性フッ素系グリース組成物が知られている。該非拡散性フッ素系グリース組成物は,フッ素系グリースに各種シリコーン油を0.1〜50%含むことを特徴とするものである(例えば,特許文献5参照)。
また,塗布面からのグリース成分中の油分又は油状添加物の拡散が抑制されるシリコーングリース組成物が知られている。該シリコーングリース組成物は,変性シリコーンオイルを基油とし,疎水基としてのポリフルオロアルキレン基と,親水基としてのポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン基とからなるフッ素系界面活性剤が配合されている。ポリフルオロアルキレン基は,炭素数が3〜21であるパーフルオロアルキレン基であり,また,ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンの単位数は,1〜10である(例えば,特許文献6参照)。
特公平4−46999号公報
特開平4−224896号公報
特開平5−78682号公報
特開平8−176575号公報
特開2000−109874号公報
特開2005−247998号公報
しかしながら,グリースについて,潤滑油の基油が上記のように鉱油から合成油に変わると,グリース化し難い点がもたらす性能の維持,特に,低トルク化への要求に応えるため,より低粘度の合成油を使用することになるので,離油及び離漿を如何に抑えるかが重要な技術的課題となってきた。
例えば,精密機器類が小型化し高集積化してくると,潤滑剤を必要とする箇所の近くに電気接点部分,レンズ,樹脂部品等の機器が存在し,それらにグリースから分離した基油が滲出即ち拡散してくると,接点不良を起こしたり,レンズを曇らしたり,樹脂部品を汚染したり等の問題が発生し,最終的には精密機器そのものの性能を停止させてしまうなどの重大なトラブルを発生させたりし,機器に対して好ましくない状況が発生する。また,グリースによるこのような好ましくない報告例が存在している。
上記のような問題を防止するために,グリースからの油分の離油や離漿の少ない潤滑剤や,基油が潤滑面以外の領域に拡散しない潤滑剤の開発が,各方面から強く要望されてきている。
特に,シリコーン系オイルを含むシリコーン系潤滑剤は,基油拡散防止のための添加剤に適当なものが存在しないため,各方面からシリコーン系潤滑剤の基油の滲出即ち拡散防止が求められている。
上記各公報に開示されている従来の技術は,潤滑油の基油として,合成油を使用するものであり,具体的には,合成炭化水素油,エチレンとα−オレフィンとのコオリゴマ−油,シリコーン油,ジエステル油等が使用されている。しかしながら,いずれの技術も,シリコーン系オイルを含む潤滑剤,例えば,シリコーン系グリースに対しては,要求に応えきれるものではない。
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,シリコーン系オイルの基油を含んでいるシリコーン系グリースに基油拡散防止剤と有機溶剤を混合することにより,シリコーン系グリースに含まれるシリコーン系オイルが基材表面の潤滑部以外の領域へ滲み出して拡散するニジミが発生するのを防止することができる非拡散性潤滑剤組成物及び基材表面での基油の拡散防止方法を提供することである。
この発明は,シリコーン系オイルを基油として含んでいるシリコーン系グリース5.00〜98.00重量部に,基油拡散防止剤0.03〜15.00重量部と有機溶剤2.00〜95.00重量部を配合したことから成る非拡散性潤滑剤組成物に関する。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,前記シリコーン系グリースの基油として,25℃での動粘度が1〜500000mm2 /sのシリコーン系オイルを1種又は2種以上が配合されているものである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物において,前記シリコーン系オイルは,ジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル,メチルハイドロジェンシリコーンオイル,又は各種の変性シリコーンオイルである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,前記シリコーン系グリースの増ちょう剤として,金属石けん及び非金属石けんの群から選択された1種又は2種以上が配合されているものである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,前記基油拡散防止剤として,フッ素系界面活性剤及びフッ素系シラン化合物の群から選択された1種又は2種以上が配合されているものである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,前記有機溶剤として,フッ素系溶剤,アルコール系溶剤,エーテル系溶剤,エステル系溶剤,炭化水素系溶剤の群から選択された1種又は2種以上が配合されているものである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,酸化防止剤,油性剤,極圧剤,腐食防止剤,金属不活性剤,ポリマー,固体潤滑剤から選択される1種又は2種以上の非拡散性を損害しない添加剤を配合することができるものである。
また,この発明は,上記の基油を含んでいる非拡散性潤滑剤組成物を,相対移動可能な潤滑部材の少なくとも一方の基材表面に塗布し,前記非拡散性潤滑剤組成物の前記基材表面への塗布により前記基油拡散防止剤が溶け込んだ前記有機溶剤が前記基材表面に拡散し,次いで前記有機溶剤が前記基材表面から蒸発し,前記基材表面に塗布された前記シリコーン系グリースの少なくとも周囲に前記基油拡散防止剤の膜が前記基材表面に形成され,前記基油拡散防止剤の前記膜により前記基油の前記基材表面への拡散を防止することを特徴とする基材表面での基油の拡散防止方法に関する。
この発明は,上記のように構成したので,基材表面でのシリコーン系グリースの基油の滲み出し即ち拡散が抑制される。即ち,この非拡散性潤滑剤組成物は,精密機器,検査機器,測定機器等の各種機器の潤滑部,摺動部,回転部の基材表面に塗布して潤滑に供する部分以外へのシリコーン系オイルの流出を抑制した非拡散性に優れたものとなる。即ち,この非拡散性潤滑剤組成物は,シリコーン系グリース中のシリコーン系オイルが潤滑面以外へニジミ出していく現象を阻害した非拡散性に優れたものであり,基油となる潤滑剤の特性を阻害することなく,潤滑面以外への基油拡散を防止することができる。
以下,この発明による非拡散性潤滑剤組成物及び基油の拡散防止方法について説明する。この非拡散性潤滑剤組成物は,小型化,高集積化して精密機器,検査機器,測定機器等の各種機器における回転部,摺動部,潤滑部における基材表面に塗布して使用し,油分の基材表面でのニジミ,拡散を防止した好ましいものである。即ち,この非拡散性潤滑剤組成物は,基材表面に塗布して潤滑剤を必要とする箇所の近くの電気接点部分の接点不良,レンズ等を曇らしたり,樹脂部品等が汚損,損傷等の問題を発生させることなく,機器の耐久化,長寿命化等の性能に悪影響を与えず,グリースによるトラブルを発生させないものである。
この発明による非拡散性潤滑剤組成物は,その主要な構成要素が,シリコーン系グリ ース,有機溶剤,及び基油拡散防止剤から構成されている。この非拡散性潤滑剤組成物は,特に,基油拡散防止のための有効な手段がなかったシリコーン系グリースを基グリースとしている。この非拡散性潤滑剤組成物は,基グリースとなるシリコーン系グリース以外に,有機溶剤と基油拡散防止剤を適正量配合することによって,はじめて十分な基油拡散防止効果が得られるものであり,即ち,シリコーン系グリースに,有機溶剤と基油拡散防止剤の両者を配合した場合のみ,十分な基油拡散防止効果が得られるものである。
この非拡散性潤滑剤組成物は,特に,シリコーン系オイルの基油を含んでいるシリコーン系グリース5.00〜98.00重量部に,基油拡散防止剤0.03〜15.00重量部と有機溶剤2.00〜95.00重量部を配合したもので作製することができる。この非拡散性潤滑剤組成物について,具体的には,シリコーン系グリースは,好ましくは15〜77.00重量部の範囲であり,基油拡散防止剤は,0.03〜15.00が好ましい範囲であり,また,有機溶剤は,好ましくは20.00〜82.00重量部の範囲である。
この非拡散性潤滑剤組成物について,シリコーン系グリースの基油として,25℃での動粘度が1〜500000mm2 /sのシリコーン系オイルが1種又は2種以上配合されていることが好ましい。また,シリコーン系オイルは,ジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル,メチルハイドロジェンシリコーンオイル,又は各種の変性シリコーンオイルを1種又は2種以上配合しているものである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物において,シリコーン系グリースの増ちょう剤として,金属石けん及び非金属石けんの群から選択された1種又は2種以上が配合されているものである。シリコーン系グリースの増ちょう剤である金属石けんは,好ましくは,ナトリウム石けん,ナトリウムコンプレックス石けん,リチウム石けん,リチウムコンプレックス石けん,アルミニウム石けん,アルミニウムコンプレックス石けん,カルシウム石けん,カルシウムコンプレックス石けん及び/又はカルシウムスルフォネートコンプレックス石けんである。また,非金属石けんは,好ましくは,ウレア化合物,シリカゲル,ベントナイト化合物及び/又はポリテトラフルオロエチレンである。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,有機溶剤として,フッ素系溶剤,アルコール系溶剤,エーテル系溶剤,エステル系溶剤,炭化水素系溶剤の群から選択された1種又は2種以上が配合されているものである。特に,フッ素系溶剤としては,ハイドロフルオロエーテル(HFE),ハイドロフルオロカーボン(HFC)及び/又はパーフルオロカーボン(PFC)であることが好ましい。
また,この非拡散性潤滑剤組成物は,基油拡散防止剤として,フッ素系界面活性剤及びフッ素系シラン化合物の群から選択された1種又は2種以上が配合されているものである。特に,基油拡散防止剤は,有機溶剤に溶解するものが好ましい。
更に,この非拡散性潤滑剤組成物は,酸化防止剤,油性剤,極圧剤,腐食防止剤,金属不活性剤,ポリマー,固体潤滑剤から選択される1種又は2種以上の非拡散性を阻害しない添加剤を配合することができるものであり,使用環境によって適正な添加剤を添加することが可能である。
この前記非拡散性潤滑剤組成物は,シリコーン系オイルの基油を含んでいるシリコーン系グリース,有機溶剤,及び基油拡散防止剤の配合比をコントロールすることによって,透明な溶液部分と,グリース状又は縣濁した溶液部分とから成る2層を形成している。しかも,この非拡散性潤滑剤組成物は,上記の状態になっている場合には,シリコーン系オイルの拡散防止効果が高くなる。前記2層の形成は,主にシリコーン系グリース中のシリコーン系オイルと有機溶剤との相溶性に依存する。
この発明による非拡散性潤滑剤組成物は,以下のような製法によって生成される。この非拡散性潤滑剤組成物の製法は,予め準備したシリコーン系グリースに,必要量の有機溶剤及び基油拡散防止剤を加え,よく攪拌することにより得られるものである。
次に,図1を参照して,この発明による基材表面での基油の拡散防止方法の一実施例を説明する。非拡散性潤滑剤組成物1は,上記のように,シリコーン系オイルの基油を含んでいるシリコーン系グリース3中に,基油拡散防止剤5が溶けた有機溶剤4の混合液10が配合されたものである。この基材表面での基油の拡散防止方法は,例えば,相対移動可能な潤滑部材の基材表面2に非拡散性潤滑剤組成物1を塗布することにより,シリコーン系グリース3における基油のシリコーン系オイルが基油拡散防止剤5の作用によって基材表面2に拡散するのを防止するものである。まず,図1の(a)に示すように,非拡散性潤滑剤組成物1を基材表面2に塗布することにより,図1の(b)に示すように,基油拡散防止剤5の溶け込んだ有機溶剤4の混合液10が,基材表面2にシリコーン系グリース3より先に直ちに拡散する。次いで,図1の(c)に示すように,基材表面2から混合液10中の有機溶剤4が速やかに蒸発し,基材表面2上に基油拡散防止剤5が残されて基材表面2に基油拡散防止剤5が付着して膜となる。即ち,基油拡散防止剤5の膜は,基材表面2に塗布されたシリコーン系グリース3の少なくとも周囲に環状に形成され,それによって基材表面2上の基油拡散防止剤5の環状膜によってシリコーン系グリース3に含まれるシリコーン系オイルの基油が基材表面2の他領域へと拡散するのを防止することができる。
即ち,この非拡散性潤滑剤組成物である非拡散性シリコーン系潤滑剤組成物は,金属表面やプラスチック材料表面の基材表面2に塗布された場合に,その流動性の違いから,シリコーン系グリース3よりも先に,基油拡散防止剤5が溶け込んだ有機溶剤4の混合液10が基材表面2上に拡散する。この時,基グリースとなるシリコーン系グリース3からシリコーン系オイルが基材表面2上に滲み出るよりも先に,有機溶剤4が基材表面2から蒸発し,金属表面上やプラスチック表面上の基材表面2に取り残された基油拡散防止剤5が膜を形成する。基グリースとなるシリコーン系グリース3は,有機溶剤4の蒸発後に,基油拡散防止5の膜の上又は内側に存在した状態になっているため,シリコーン系グリース3に含まれるシリコーン系オイルの基材表面2上への拡散が基油拡散防止剤5の膜によって防止されることになる。
以下に,図2,表1及び表2を参照して,この発明による非拡散性潤滑剤組成物の具体的な実施例1〜5及び比較例1〜6について説明する。この非拡散性潤滑剤組成物は,基グリースとなるシリコーン系グリースに,有機溶剤と基油拡散防止剤とを配合した後に,よく攪拌し,調整したものであり,これを評価試料7にした。
良く攪拌した試料サンプル即ち評価試料7をニジミ試験用の樹脂フィルム6上に,直径約3mm,厚さ約2mmの大きさに塗り,25℃の恒温槽内に24時間及び144時間放置し,油分の広がり具合を観察した。評価は,油分の広がり領域8を,半径の値の拡散幅9で表示する方法で行なった。この非拡散性潤滑剤組成物のニジミ試験のニジミ測定値は,図2に示す状態でそれぞれ測定した。
この発明による非拡散性潤滑剤組成物の実施例として,評価試料7として5種類の試料を作製し,実施例1〜5についてのニジミ試験を行い,その効果を確認した。実施例1〜5では,基油にシリコーン系オイルを含む一般的なシリコーン系グリースに,それぞれ異なる量のフッ素系有機溶剤とフッ素系基油拡散防止剤を配合したものであり,実施例1〜5で用いた基グリースとなるシリコーン系グリースは,試料温度25℃における混和ちょう度を310〜340とした。その結果を表1に示す。
実施例1〜5について,24時間放置の基油即ち油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,0.7〜4.1の範囲内に納まり,また,144時間放置の基油即ち油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,1.8〜10.0の範囲内に納まり,いずれの実施例1〜5でも樹脂フィルム6上での基油即ち油分の拡散防止に極めて良好な結果を得ることができた。
また,この発明による非拡散性潤滑剤組成物を,従来の組成物と比較するため,比較例1〜6を作製し,比較例1〜6についてのニジミ試験を行った。比較例1は,前記実施例で使用したシリコーン系グリースを用い,また,比較例2〜4は,前記実施例で使用したシリコーン系グリースにそれぞれ異なる量のフッ素系基油拡散防止剤を配合したものを用い,更に,比較例5〜6は,前記実施例で使用したシリコーン系グリースにフッ素系有機溶剤を配合したものを用いた。その結果を表2に示す。
比較例1は,24時間放置の基油即ち油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,12.4であり,また,144時間放置の基油即ち油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,25.1であった。比較例2〜4は,24時間放置の油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,13.0〜14.0の範囲内であり,また,144時間放置の油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,23.8〜24.6であった。更に,比較例5〜6は,24時間放置の油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,10.0〜11.7の範囲内であり,また,144時間放置の油分の広がり領域8を示す拡散幅9は,19.0〜23.8であった。いずれの比較例1〜6でも樹脂フィルム6上での油分の拡散が大きく,満足できるものではなかった。
この発明による非拡散性潤滑剤組成物及び基材表面での基油の拡散防止方法は,精密機器,検査機器,測定機器,電気機器等の各種の機器における軸受部,回転部,摺動部等の潤滑部位の基材表面に塗布して適用して好ましいものである。
1 非拡散性潤滑剤組成物
2 基材表面
3 基グリース
4 有機溶剤
5 基油拡散防止剤
6 樹脂フィルム
7 評価試料
8 油分の拡散領域
9 油分の拡散幅
10 混合液
2 基材表面
3 基グリース
4 有機溶剤
5 基油拡散防止剤
6 樹脂フィルム
7 評価試料
8 油分の拡散領域
9 油分の拡散幅
10 混合液
Claims (8)
- シリコーン系オイルを基油として含んでいるシリコーン系グリース5.00〜98.00重量部に,基油拡散防止剤0.03〜15.00重量部と有機溶剤2.00〜95.00重量部を配合したことから成る非拡散性潤滑剤組成物。
- 前記シリコーン系グリースの基油として,25℃での動粘度が1〜
500000mm2 /sのシリコーン系オイルを1種又は2種以上が配合されていることから成る請求項1に記載の非拡散性潤滑剤組成物。 - 前記シリコーン系オイルは,ジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル,メチルハイドロジェンシリコーンオイル,又は各種の変性シリコーンオイルを1種又は2種以上が配合されていることから成る請求項1又は2に記載の非拡散性潤滑剤組成物。
- 前記シリコーン系グリースの増ちょう剤として,金属石けん及び非金属石けんの群から選択された1種又は2種以上が配合されていることから成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の非拡散性潤滑剤組成物。
- 前記基油拡散防止剤として,フッ素系界面活性剤及びフッ素系シラン化合物の群から選択された1種又は2種以上が配合されていることから成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の非拡散性潤滑剤組成物。
- 前記有機溶剤として,フッ素系溶剤,アルコール系溶剤,エーテル系溶剤,エステル系溶剤,炭化水素系溶剤の群から選択された1種又は2種以上が配合されていることから成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の非拡散性潤滑剤組成物。
- 酸化防止剤,油性剤,極圧剤,腐食防止剤,金属不活性剤,ポリマー,固体潤滑剤から選択される1種又は2種以上の非拡散性を損害しない添加剤が配合されていることから成る請求項1〜6のいずれか1項に記載の非拡散性潤滑剤組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーン系オイルを基油として含んでいるシリコーン系グリース,基油拡散防止剤及び有機溶剤を含む非拡散性潤滑剤組成物を,相対移動可能な部材の少なくとも一方の基材表面に塗布し,前記基材表面への前記非拡散性潤滑剤組成物の塗布により前記基油拡散防止剤が溶け込んだ前記有機溶剤が前記基材表面に拡散し,次いで前記有機溶剤が前記基材表面から蒸発し,前記基材表面に塗布された前記シリコーン系グリースの少なくとも周囲に前記基油拡散防止剤の膜が前記基材表面に形成され,前記基油拡散防止剤の前記膜により前記基油の前記基材表面上での拡散を防止することを特徴とする基材表面での基油の拡散防止方法。
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