JP2008195954A - 自動変速機用潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い金属−金属間の摩擦係数が実現できると共に、ペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数の向上をも実現できる自動変速機用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】硫黄と窒素と炭素と水素とのみから構成され分子内に硫黄元素を40質量%以上含有する非油溶性の含硫黄化合物、或いは、アルキルチウラムジスルフィド化合物、チアジアゾール類、ジベンジルポリスルフィド、分子内に硫黄元素を20質量%以上含有する含硫黄複素環式化合物、硫化オレフィン及びアルキルジチオールからなる群から選択される1以上の油溶性の含硫黄化合物を、硫黄元素含有量が潤滑油全体に対して0.08質量%より多く、2.0質量%以下の範囲となるよう潤滑油基材に配合し、且つ前記含硫黄化合物は溶解されていることを特徴とする自動変速機用潤滑油添加剤組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属ベルト式無段変速機用又は湿式クラッチを有する自動変速機用に好適に用いることができる自動変速機用潤滑油添加剤組成物及び自動変速機用潤滑油組成物に関する。
現在汎用されている金属ベルト式無段変速装置はVベルトとプーリとの間の摩擦によってトルクを伝達しているが、伝達トルク容量を大きくすることが困難であるので、大入力に耐えることができずに主に小排気量エンジンを搭載する小型車に用いられていた。しかしながら、無段変速装置がエンジンとの組み合わせにおけるその理論的な効率の良さから注目されており、小型車以外の車両にも適用できるよう改良することが求められている。
伝達トルク容量を増加させるにはVベルトとプーリとの間の押し付け圧力を大きくするか、若しくはベルト−プーリ間の摩擦係数を大きくすることで達成できる。押し付け圧力を大きくするとベルト、プーリの摩耗量が増大するので、摩擦係数を大きくすることが望まれており、その摩擦係数増大機能が潤滑油組成物にも求められている。
従来技術として、特許文献1には金属塩系清浄剤を0.1〜2.0質量部及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を0.1〜2.0質量部配合することで摩擦係数が増大するベルト式無段変速機用潤滑油組成物が開示されている。また、特許文献2には基油にアルキル基又はアルケニル基で置換された環状ジカルボン酸又は鎖状ジカルボン酸から選択される少なくとも1種の化合物を含有する添加剤を組成物全量基準で、0.1〜12質量%含有させることで摩擦係数を増大させる自動変速機用潤滑油組成物が開示されている。
特許文献3には灰分を含まないジアルキルジチオチアジアゾール(特許文献3の明細書中には「ジアルキルチアジアゾール」と記載されているが、(0031)段落の(化1)及び(0144)段落の(化2)には化学命名法に従うとジアルキルジチオチアジアゾールが記載されている。潤滑油の分野では「ジアルキルジチオチアジアゾール」を「ジアルキルチアジアゾール」と称することが一般的である。なお、本明細書中における他の「ジアルキルチアジアゾール」との記載はすべて本来の化学命名法に従った化合物である)を添加した自動変速機用オイルが開示されている。
特開平11−92779号公報 特開2000−44979号公報 特開2002−309280号公報 特公昭52−19845号公報 特開平9−118892号公報 WO95/09904号公報 特開2000−160182号公報 特開平11−323371号公報
しかしながら、特許文献1の潤滑油組成物では、ジアルキルジチオリン酸亜鉛が金属−金属間の摩擦係数増大には有効であるものの、同時に使用されるペーパ摩擦材について目詰まりを生じさせ、ロックアップクラッチ等の湿式クラッチにおける摩擦特性を悪化させるという不都合があった。
また、特許文献2及び3の潤滑油組成物では摩擦係数増大効果が充分とはいえなかった。
そこで、本発明では、更に高い金属−金属間の摩擦係数が実現できると共に、ペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数の向上をも実現でき、結果として伝達トルク容量を増大できる自動変速機用潤滑油組成物を提供することを解決すべき課題とする。
(1)上記課題を解決する請求項1に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、硫黄と窒素と炭素と水素とのみから構成され分子内に硫黄元素を40質量%以上含有する非油溶性の含硫黄化合物、或いは、アルキル基を1つ以上有するアルキルチウラムジスルフィド化合物、下式(2)又は(3)で表されるチアジアゾール類、それぞれのベンジル基のベンゼン環上の水素が1以上の炭化水素基で置換されていてもよいジベンジルポリスルフィド、硫黄と炭素と水素とを含み窒素を含むことができ分子内に硫黄元素を20質量%以上含有する含硫黄複素環式化合物、硫化オレフィン及びアルキルジチオールからなる群から選択される1以上の油溶性の含硫黄化合物を、
硫黄元素含有量が潤滑油全体に対して0.08質量%より多く、2.0質量%以下の範囲となるよう潤滑油基材に配合し、且つ前記含硫黄化合物は溶解されていることにある。
Figure 2008195954
(式(2)中、Rは炭化水素基;式(3)中、Rは炭化水素基、Xは水素、メルカプト基又は炭化水素基)
上記課題を解決する請求項2に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項1において、前記含硫黄化合物がジメルカプトチアジアゾール及び/又はその重合体からなるジメルカプトチアジアゾール類であることにある。
上記課題を解決する請求項3に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項2において、前記ジメルカプトチアジアゾール及び/又はその重合体が、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその重合体であることにある。
上記課題を解決する請求項4に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項1において、前記含硫黄化合物がアルキルチアジアゾールチオール及び/又はテトラアルキルチウラムジスルフィドであることにある。
上記課題を解決する請求項5に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項1において、前記含硫黄化合物が下式(4)で表された硫化オレフィンであることにある。
1−Sx−R2…(4)
(式(4)中、R1及びR2は炭素数20以下の炭化水素基であり、xは自然数である。)
上記課題を解決する請求項6に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項1において、前記油溶性の含硫黄化合物が炭素数1〜12のアルキル基をもつ、アルキルチオチアジアゾール及び/又はジアルキルチアジアゾールであることにある。
上記課題を解決する請求項7に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項1において、前記油溶性の含硫黄化合物はベンゾチアゾール及び/又はベンゾチオフェンであることにある。
上記課題を解決する請求項8に係る自動変速機用潤滑油組成物の特徴は、請求項1〜7の何れか1項において、リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステル、亜リン酸エステルアミン塩、リン酸、及びジチオリン酸亜鉛からなる群から選択される1以上の化合物を全体に対して0.01質量%〜2質量%含有することにある。
これらの化合物を有する本発明の自動変速機用潤滑油組成物は、接触する部材表面に高い摩擦係数をもつ硫黄系反応被膜を形成するために高い金属−金属間の摩擦係数が実現できると考えられる。
その結果、金属ベルト式の無段変速機のベルト−プーリ間における金属−金属間の摩擦係数を増大させると共に、良好なμ−v特性をもつので、伝達できるトルク容量を増加させることができる。また、目詰まり等の不都合を起こすことなくペーパ摩擦材に用いることができ、湿式クラッチ機構を有する自動変速機の伝達トルク容量を増大させることができる。
なお、本明細書中における化合物が「油溶性」であるとは、対象となる化合物を希釈油や基油(希釈油・基油は実際に用いるもの)に対して沈殿(化合物が固体の場合)乃至は分離(化合物が液体の場合)を生じることなく均一に混合できることをいう。対象となる化合物の濃度としては全体に対して0.5質量%となるように配合して検討を行う。均一に混合するか否かは加熱して対象となる化合物を溶解し、室温にまで冷却した後に確認してもよい。加熱条件としては対象となる化合物の融点及び分解点を温度の上限として30分程度の条件から選択する。
なお、油溶性及び非油溶性は、純粋な化合物を対象とする場合ばかりでなく、複数の化合物が混合した物(例、ジメルカプトチアジアゾールとコハク酸イミド化合物類との混合物)についても判断できる。また、第3の化合物である添加剤(可溶化剤)の添加により可溶化した場合にもその化合物は油溶性であると判断する。
なお、本明細書中において記載した一般式の化学構造中において重複する記載(例えば、炭化水素基についてR、その他の基としてX)があるが、それらの間には特に関係はなく、それぞれ独立して決定することができる化学構造を示す。
(2)(i)ジメルカプトチアジアゾールを配合した潤滑油として、特許文献4には少なくとも1種のジメルカプトチアジアゾールからなる混合物を加熱処理することによって得られた潤滑材用添加剤組成物が開示されている。また、特許文献5には0.025〜5質量%のジメルカプトチアジアゾール及びその誘導体並びにそれらの混合物を有することで空気移動を減らしギヤ保護を改良する潤滑流体が開示されている。
(ii)そして、含硫黄化合物を配合した潤滑油として、特許文献6には%CAが5以下である基油に対し硫黄系添加剤、リン系添加剤及び窒素系添加剤を組成中の元素比100N/(S+P)が重量基準で4〜10となるように配合した充分なハイポイド性能を有し、且つスラッジの発生が少なく、高速・高温回転部に用いるオイルシール寿命の長い高速ギア用潤滑油組成物が開示されている。硫黄系添加剤の具体例としては特許文献6の第4頁に硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化油脂、硫化鉱油、チオリン酸化合物、チオカーバメート化合物、チオカーボネート化合物、スルホキシド及びチオールスルフィネートが開示される。
また、特許文献7にはアミン系酸化防止剤及び無灰のジチオカーバメート、硫化オレフィン及びフェノール系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種の酸化防止剤を配合した熱安定性及び酸化安定性に優れる潤滑剤
特許文献8には(A)硫黄分が0.7質量%以下である基油、(B)炭化水素硫化物、硫化テルペン及び硫化油脂から選んだ硫黄化合物を、基油の0.05〜8質量%、(C)炭素数8以上のアルキル基を有する酸性リン酸エステル及びそのアルキルアミン塩から選んだリン化合物を、基油の0.1〜6質量%、及び(D)アルケニルコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体を、基油の0.1〜7質量%、を配合した極圧性、耐熱性及びギヤの変速特性に優れたギヤ油組成物が開示されている。
(iii)しかしながら、これらの(i)及び(ii)に挙げた従来技術におけるジメルカプトチアジアゾールの添加(i)又は含硫黄化合物の添加(ii)は摩擦係数の増大の観点から行われたものではなく、組み合わせる化合物、配合量等の条件によっては摩擦係数増大効果が認められない場合があった。本発明では全く新しい観点から自動変速機用潤滑油組成物についての研究を行った結果、臨界的な効果を発見し本組成を発明したのであり、単純に組成を最適化したものではない。
以上、説明したように、潤滑油組成物に対してジメルカプトチアジアゾール、その重合体及び/又は非油溶性の含硫黄化合物と、コハク酸イミド化合物類とを配合することで、金属ベルト式CVTにおける金属−金属間接触部の摩擦係数を増加し且つ良好なμ−v特性を発揮できることから、CVTの伝達トルク容量を増大する潤滑油添加剤組成物及び潤滑油組成物を提供することができた。同様の効果は油溶性の含硫黄化合物を潤滑油組成物に添加しても達成できる。
また、ペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数を増大することができることから、湿式クラッチを有する自動変速機の伝達トルク容量を増大する潤滑油添加剤組成物及び潤滑油組成物を提供することができた。
(自動変速機用潤滑油組成物)
(第1実施形態)
本実施形態の自動変速機用潤滑油組成物(以下、単に、「潤滑油組成物」と称する)は含硫黄化合物と潤滑油基材とを有する。含硫黄化合物は潤滑油基材に対して硫黄元素の含有量が潤滑油組成物全体の質量を基準として0.08質量%より多く、2.0質量%以下の範囲で配合されている。含硫黄化合物は潤滑油組成物中にて溶解された状態で含まれている。
含硫黄化合物は非油溶性の含硫黄化合物、或いは、油溶性の含硫黄化合物から選択される。両者を混合して用いても良い。非油溶性の含硫黄化合物としては硫黄と窒素と炭素と水素とのみから構成され分子内に硫黄元素を40質量%以上含有する化合物である。非油溶性の含硫黄化合物は分散剤などの適正な添加剤により潤滑油基材に可溶化することができる。非油溶性の含硫黄化合物は分散剤と混合後、加熱することにより容易に可溶化される。
非油溶性の含硫黄化合物としては、式(3)で示すようなアルキルチアジアゾールチオール(XがSH)又はアルキルチアジアゾール(Xが水素)、そして下式(5)で示すようなテトラアルキルチウラムジスルフィドが例示できる。非油溶性の含硫黄化合物としては、メルカプトチアジアゾール類及びその重合体を含む。非油溶性の含硫黄化合物は単独で用いても良いし、複数種類を任意の組み合わせで用いても良い。「ジメルカプトチアジアゾール及びその重合体」とはジメルカプトチアジアゾールとそれらの重合体とを含む概念である。ジメルカプトチアジアゾールには2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、4,5−ジメルカプト−1,2,3−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾール及び3,4−ジメルカプト−1,2,5−チアジアゾールがある。このうち入手性の観点からは2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、4,5−ジメルカプト−1,2,3−チアジアゾール及び3,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾールが好ましく、さらには2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールがより好ましい。本発明でジメルカプトチアジアゾールという場合にはこれらの化合物を単独で又は任意に組み合わせたものを意味する。
メルカプトチアジアゾールの重合体とは2以上のメルカプトチアジアゾール類の−SH基間でジスルフィド結合を形成し重合させたものである。重合度は特に限定しないが2量体以下のジメルカプトチアジアゾール及び単量体のジメルカプトチアジアゾールが好ましい。
これらのメルカプトチアジアゾール類は単独で用いても良いし、複数種類を任意の組み合わせで用いても良い。
Figure 2008195954
(式(5)におけるRはすべて独立して決定される炭化水素基である。)
アルキルチアジアゾールチオールの式(3)(XはSH基)中のRは炭素数が好ましくは12以下、より好ましくは5以下であり、特に好ましくはメチルチアジアゾールである。テトラアルキルチウラムジスルフィドの式(5)中のRはそれぞれ独立して炭素数が好ましくは3以下、より好ましくはすべてのRが1又は2であり、特に好ましくはテトラメチルチウラムジスルフィド又はテトラエチルチウラムジスルフィドである。Rを構成する炭化水素基の炭素数をこの範囲内で調節することで非油溶性又は油溶性にする。非油溶性である場合には硫黄元素の含有量が40質量%以上であり、油溶性の場合には後述するように20質量%以上である。
油溶性の含硫黄化合物としては、アルキル基を1つ以上有するアルキルチウラムジスルフィド化合物、式(2)又は(3)で表されるチアジアゾール類、それぞれのベンジル基のベンゼン環上の水素が1以上の炭化水素基で置換されていてもよいジベンジルポリスルフィド、硫黄と炭素と水素とを含み窒素を含むことができ分子内に硫黄元素を20質量%以上含有する含硫黄複素環式化合物、硫化オレフィン、及びアルキルジチオールからなる群から選択される化合物である。
ジベンジルポリスルフィドは一般式(6)で表される化合物が例示できる。好ましくはnが2の化合物である。
Figure 2008195954
(式(6)中、nは1以上の整数、式中には示さないがいずれのベンゼン環も炭素数1以上の炭化水素基で水素を置換可能である。)
硫黄と炭素と水素とを含み窒素を含むことができ分子内に硫黄元素を20質量%以上含有する含硫黄複素環式化合物は複素環化合物である。単環式化合物であるか、縮合環式化合物であるかは問わない。好ましくは、環中に炭素、窒素及び硫黄を含む化合物である。
単環式化合物で好ましいものとしてはチアゾール、イソチアゾール、ジチアジン等が挙げられる。縮合環式化合物としては前述した炭素、窒素及び硫黄を含む単環式化合物や、ベンゼン、チオフェン、チアゾール、ピロール、ピリジン等の環等を縮合させた構造をもつものであって縮合環が硫黄、炭素及び水素からなる化合物である。縮合環中には窒素を含むこともできる。縮合環式化合物で好ましいものとしてはベンゾチアゾール、アゾールチオール、ベンゾチオフェン等である。特にベンゾチアゾール、アゾールチオール及び/又はベンゾチオフェンが好ましい。ベンゾチアゾールにはベンゾ[d]イソチアゾールを含む。アゾールチオールはチオール基の数は限定しない。ベンゾチオフェンはベンゾ[b]チオフェン又はベンゾ[c]チオフェンである。更に、これら複素環には炭化水素基等の置換基をもつことができる。
アルキルジチオールは、炭化水素化合物の2つの水素がSH基で置換された化合物である。好ましくは、デカンジチオール等のように、直鎖状の炭化水素化合物の両末端の水素をSH基で置換した化合物である。炭素数としては5〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。
さらに本潤滑油添加剤組成物にはその他にも希釈油を含有させることができる。希釈油としては特に限定しないが、後述する潤滑油組成物の説明における潤滑油基材を好適に用いることができる。その他に本潤滑油添加剤組成物は更に適正な添加剤を含有することができる。
ジメルカプトチアジアゾール及び/又はその重合体並びにコハク酸イミド化合物類の含有量は特に限定しないが、その配合割合としては、全体に対して、硫黄元素の含有量をa質量%、窒素元素の含有量をb質量%としたときのa/bの値が0.9より大きいことが好ましく、1.4より大きいことがより好ましい。
分散剤としてコハク酸イミド化合物類を添加することができる。コハク酸イミド化合物類はコハク酸イミド骨格を1又は2つもつ化合物であり、コハク酸イミドのイミノ基の水素をポリアルキルアミンで置換した化合物であり、さらにはイミノ基以外の水素の一部をも炭化水素基で置換した化合物である。そして本発明に用いられるコハク酸イミド化合物類はこれらの化合物を単独で用いることができる他、複数種類を組み合わせて用いることができる。
具体的には、コハク酸イミド化合物類としては、式(1)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。なお、本明細書ではコハク酸イミド化合物類のコハク酸イミド骨格が1つ含まれる化合物を「モノタイプ」2つ含まれる化合物を「ビスタイプ」と称する。
Figure 2008195954
(R1、R4は炭化水素基、R2、R3は炭素数1〜4の炭化水素基;n≧0、m≧0)
特に好ましいコハク酸イミド化合物類としては、式(1)中のR1及びR4がポリイソブテニル基である化合物である
さらに、好ましいコハク酸イミド化合物類としては式(1)中のR2及びR3が−C24−である化合物である。
コハク酸イミド化合物類は数平均分子量が2000より小さいことが好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
コハク酸イミド化合物類を製造する方法としては特に限定しないが、一例を挙げると以下の方法で行うことが可能である。
1又はR4に対応する炭化水素基で置換された無水コハク酸(又はコハク酸や他のアシル化剤)と、R2に対応したアルキレン基をもつポリアルキレンアミン等と混合し、加熱することで得ることができる。
本実施形態の潤滑油組成物は含有する含硫黄化合物によって摩擦係数増大効果が発揮できると考えられる。摩擦係数増大効果は潤滑油に添加する含硫黄化合物に由来する硫黄元素の潤滑油組成物中における濃度に依存する。潤滑油組成物中における潤滑油添加剤組成物中の含硫黄化合物由来の硫黄元素の濃度については後に詳述するが、参考までに以下にまとめて記載する。含硫黄化合物由来の硫黄元素濃度の下限値としては、全体に対して0.08質量%より大きく、好ましくは0.17質量%より大きく、より好ましくは0.33質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上が挙げられる。含硫黄化合物由来の硫黄元素濃度の上限値としては、全体に対して2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下が挙げられる。
(1)潤滑油基材
本発明の潤滑油組成物に用いられる潤滑油基材は、特に限定されるものではなく、一般に潤滑油基材として用いられているものならば何でも使用することができる。すなわち、これらに該当するものとしては、鉱油、合成油、或いはそれらの混合油がある。鉱油としては、原油の常圧又は減圧蒸留により誘導される潤滑油原料をフェノール、フルフラール、N−メチルピロリドンの如き芳香族抽出溶剤で処理して得られる溶剤精製ラフィネート、潤滑油原料を水素化処理用触媒の存在下において水素化処理条件下で水素と接触させて得られる水素化処理油、ワックスを異性化用触媒の存在下において異性下条件下で水素と接触させて得られる異性化油、あるいは溶剤精製工程と水素化処理工程及び異性化工程等を組み合わせて得られる潤滑油留分などを挙げることができる。いずれの製造法においても、脱蝋工程、水素化仕上げ工程、白土処理工程等の工程は、常法により、任意に採用することができる。鉱油の具体例としては、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油及びブライトストック等が挙げられ、要求性状を満たすように適宜混合することにより潤滑油基材を調製することができる。
合成油としては、例えば、ポリα−オレフィン,α−オレフィンコポリマー,ポリブテン,アルキルベンゼン,ポリオールエステル,二塩基酸エステル,ポリオキシアルキレングリコール,ポリオキシアルキレングリコールエステル,ポリオキシアルキレングリコールエーテル,ヒンダードエステル,シリコーンオイルなどを挙げることができる。
これらの潤滑油基材は、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油を組み合わせて使用してもよい。本発明で使用する潤滑油基材は、100℃において、通常、2〜20mm2/sの動粘度を有し、好適な動粘度は3〜15mm2/sの範囲である。潤滑油潤滑油基材の動粘度がこの範囲内であると、低温粘度が良好で、かつ充分な潤滑性をもつことから自動変速機のギヤ軸受、クラッチ等の摺動部において摩耗を抑制できるという利点をもつ。
(2)その他の成分
本潤滑油組成物は上述の潤滑油基材に必須成分として前述の潤滑油添加剤組成物を添加することで好ましい効果を発揮する。
さらに必要に応じて、各種添加剤、たとえば粘度指数向上剤、流動点降下剤、無灰分散剤、金属清浄剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、極圧剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、消泡剤、着色剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加することができる。
粘度指数向上剤としては、一般にポリメタクリレート系、オレフィンコポリマー系(ポリイソブチレン系、エチレン−プロピレン共重合体系)、ポリアルキルスチレン系、スチレン−ブタジエン水添共重合体系、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系等が挙げられ、例えば、低温特性の点から、ポリメタクリレート系が好ましく用いられる。その分子量としては、剪断安定性などの点から数平均分子量で10,000〜1,000,000、更に10,000〜100,000、特に10,000〜70,000の範囲にあることが好ましい。また、上記粘度指数向上剤を配合した基油としては、特に、低温始動性能の点から、粘度指数(VI)が130以上、特に160以上であるものが好ましく使用される。これらは、通常3〜35質量%の割合で使用される。
流動点降下剤としては、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、例えば、ポリメタクリレートが好ましく用いられる。これらは、通常0.01〜5質量%の割合で使用される。
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド系、ポリアルケニルコハク酸アミド系、ベンジルアミン系、コハク酸エステル系、コハク酸エステル−アミド系及びホウ素含有無灰分散剤等が挙げられる。これらの中でもポリアルケニルコハク酸イミド(ポリブテニルコハク酸イミド)系が好ましく用いられる。これらは、通常0.1〜10質量%の割合で使用される。
金属清浄剤としては、Ca、Mg、Ba等のスルホネート系、フェネート系、サリシレート系、ホスホネート系のものがあり、これらは、通常0.05〜5質量%の割合で使用される。
さらに、これらの化合物の塩基価が50〜400mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。
酸化防止剤としては、一般にアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジターシャリ−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジターシャリ−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤更に、ジチオリン酸亜鉛等が挙げられ、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。これらは、通常0.05〜5質量%の割合で使用される。特に無灰系酸化防止剤(ヒンダーフェノール系及びアミン系のうちの1種以上)を0.05〜2質量%含むことが好ましい。
これらは湿式クラッチを有する自動変速機用潤滑油組成物として用いる場合には、さらに摩擦調整剤としても作用する。
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能である。摩擦調整剤としては任意の量で含有させることができる。例えば、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%程度含有させることが望ましい。摩擦調整剤としては、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数8〜24の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が例示できる。アミン化合物としては、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基若しくはアルケニル基を有する脂肪族(ポリ)アミン、又はこれらのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。脂肪酸アミドとしては、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基等を有する脂肪酸と、脂肪族(ポリ)アミンとのアミド等が例示できる。脂肪酸金属塩としては、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基等を有する脂肪酸の、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が例示できる。
耐摩耗剤としては、一般にジチオリン酸金属塩(Zn、Pb、Sb、Moなど)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn、Moなど)、ナフテン酸金属塩(Pbなど)、脂肪酸金属塩(Pbなど)、硫化油脂、硫黄化合物、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、例えば、リン酸エステル系、亜リン酸エステル系が好ましく用いられる。これらは、通常0.05〜5質量%の割合で使用される。
極圧剤としては、硫化油脂、ジベンジルサルファイド、ジブチルジサルファイド、ジチオリン酸亜鉛、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、これらは、通常0.05〜3質量%の割合で使用される。特に、極圧剤としてリン酸系極圧剤及び硫黄系極圧剤のうちの1種以上を0.05〜2質量%含有することが好ましい。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等が挙げられ、これらは、通常0.001〜3質量%の割合で使用される。
〔金属ベルト式CVTでの効果:金属−金属間の摩擦特性〕
(評価材)
各種の含硫黄化合物と数平均分子量1000のコハク酸イミド化合物類と希釈油としての水素化精製鉱油とを混合して、140℃で30分間撹拌することによって、油溶性混合物としての潤滑油添加剤組成物(添加剤1〜6)を得た。含硫黄化合物としては図1に化学構造式を示す6種類の化合物を用い、コハク酸イミド化合物類と共に、表1に示す割合で混合した。表1には各含硫黄化合物中の硫黄元素の含有量を質量基準で示した。
コハク酸イミド化合物類としては前述の実施形態の欄で説明した式(1)で示した化学構造式中のR1、R4がポリイソブテン、R2及びR3が−C24−のビスタイプのコハク酸イミド化合物類である。このようなコハク酸イミド化合物類はそれぞれ分子量が制御されたポリイソブテニル無水コハク酸とポリエチレンアミンとを鉱油中で混合し、80℃程度で加熱することによって得られる。なお、このコハク酸イミド化合物類は日本ルーブリゾール社よりLZ6412として市販されている。
なお、添加剤1及び2に配合した2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及びその2量体は以下ジメルカプトチアジアゾール及びその2量体と称する。
Figure 2008195954
得られた添加剤1〜6を硫黄元素の含有量が全体の質量を基準として0.33質量%となるように、各種のオートマチックトランスミッションフルード(ATF)用添加剤(表2に示す粘度指数向上剤、金属清浄剤(過塩基性Caスルフォネート)、極圧剤としてのリン酸エステル、摩擦調整剤、酸化防止剤、消泡剤)と混合して、それぞれ潤滑油基材としての水素化精製鉱油に配合することで、試験用の潤滑油組成物(実施例1、2及び試験例1〜4)を得た。
さらに、試験例5として添加剤を含有させない潤滑油組成物を、そして、試験例6〜8として、市販のCVTF3種類を用意した。
なお、ATF用添加剤の添加量としては実施例1、2及び試験例1〜5についてすべて同じであり、ATF及びベルト式CVT用フルード(CVTF)として必要な諸特性を満足するように決定した。
Figure 2008195954
(評価方法)
CVT用金属ベルトのエレメント(材質:スティール)を切り出したブロック試片(幅7mm、厚み1.4〜1.8mm)を試験に供して、ASTM D2714に記載されているLFW−1型試験機を用いて、各実施例及び試験例の潤滑油組成物の摩擦係数を求めた。相手リング試片にはFALEX S−10試片(材質:スティール、φ35mm、幅8mm)を用いた。
荷重を付加して摩擦係数が安定するまでなじみ運転を行った後に、表3に示す条件で摩擦係数を測定した。すべり速度を設定した後に安定した時点での摩擦係数を測定した。
Figure 2008195954
(結果)
すべり速度500mm/sの条件下での評価結果を図2に示す。ジメルカプトチアジアゾール類を含有する実施例1及び2の潤滑油組成物は、ジメルカプトチアジアゾール類以外の含硫黄化合物を含有する試験例1〜4の潤滑油組成物及び含硫黄化合物を含有しない試験例5の潤滑油組成物並びに試験例6〜8の市販のCVTFと比べて高い金属−金属間の摩擦係数を示すことが明らかとなった。
さらに、実施例1の潤滑油組成物及び実施例2の潤滑油組成物を用いた場合の摩擦係数のすべり速度依存性を図3及び4に示す。また、試験例2(ジベンジルスルフィド)の潤滑油組成物及び試験例5(含硫黄化合物なし)の潤滑油組成物を用いた場合の摩擦係数のすべり速度依存性を図5及び6に示す。
実施例1及び2の潤滑油組成物は、試験例2及び5の潤滑油組成物と比較して、全体的に摩擦係数が大きいばかりか、すべり速度が増加するに伴い摩擦係数が低下する傾向、すなわちμ−v特性の負勾配性が小さく金属ベルト式CVTに適用した場合に良好な摩擦特性が得られることが予測できる。
以上の結果から、金属−金属間の接触においては高い摩擦係数及び良好なμ−v特性を付与できる潤滑油添加剤組成物及び潤滑油組成物としては添加剤1及び2とそれらの添加剤を配合した実施例1及び2の潤滑油組成物、すなわちジメルカプトチアジアゾール又はその2量体とコハク酸イミド化合物類とを含む潤滑油添加剤組成物及び潤滑油組成物が有効であることが明らかとなった。ここに示したその他の含硫黄化合物ではコハク酸イミド化合物類と組み合わせても高い摩擦係数及び良好なμ−V特性が得られない。
〔湿式クラッチでの効果:湿式クラッチ−金属間の摩擦特性〕
(評価材)
ジメルカプトチアジアゾールと前述の「金属ベルト式CVTでの効果」欄でも用いた数平均分子量1000のビスタイプのコハク酸イミド化合物類とを混合して140℃で30分間撹拌することで潤滑油添加剤組成物としての油溶性混合物を得た。その組成及び硫黄元素含有量を表4に示す。
Figure 2008195954
得られたそれぞれの添加剤8〜11と粘度指数向上剤とを潤滑油基材としての水素化精製鉱油に配合して、実施例3〜5及び試験例9の単純配合系の潤滑油組成物を得た。組成、ジメルカプトチアジアゾール及び混合物中の硫黄元素の含有量を表5に示す。
Figure 2008195954
また、添加剤7〜9及び11(ジメルカプトチアジアゾール及びコハク酸イミド化合物類)にATF用の各種添加剤を配合し、潤滑油基材としての水素化精製鉱油に配合したフルフォーミュレート系の潤滑油組成物を調製した。その組成を表6に示す。いずれの潤滑油組成物もジメルカプトチアジアゾールの添加量以外は同じとした。さらに、試験例7で用いた市販のCVTFを試験例11の潤滑油組成物として用いた。
Figure 2008195954
(評価方法)
JASOの自動変速機油摩擦特性試験方法(M348−95)に準じて、SAE No.2型試験機を用いて、ペーパ摩擦材とスティール材とを組み合わせた湿式クラッチにおける摩擦特性を評価した。ペーパ摩擦材にはSD1777X材を用い、スティール材にはS35C材を用いた。
摩擦特性としては、回転数0.7rpmの一定すべり条件下での低速引きずり試験を実施して、引きずり開始直後の摩擦係数の最大値(μs)を摩擦係数の評価尺度として用いた。さらに、低速引きずり試験の後に、摩擦材とスティール材との摩擦によって3600rpmで回転している慣性板を静止させる係合試験を行った。
この一連の試験の組み合わせを2000サイクル繰り返し行い、μsの値の変化によって、各試験用の潤滑油組成物について耐久性を評価した。
(結果)
実施例3〜5及び試験例9(単純配合系)の潤滑油組成物におけるμsの値のサイクル数依存性の測定結果を図7に示す。実施例3〜5の潤滑油組成物におけるμsの値は、試験例9の潤滑油組成物におけるμsの値と比較して、全般を通して高い値を示した。
すなわち、ペーパ摩擦材と金属(スティール材)とを組み合わせた湿式クラッチにおいても、金属ベルト式CVTにおける場合と同様に、ジメルカプトチアジアゾールの配合によって、摩擦係数が大きくなることが明らかとなった。μsの値はジメルカプトチアジアゾールを配合していない試験例9の0.15程度からジメルカプトチアジアゾールを配合した実施例3〜5における0.20程度にまで大きく上昇しており、金属−金属間の摩擦係数がジメルカプトチアジアゾールを配合することで0.11から0.13に上昇したことと比較してもより大きな摩擦係数増大効果が認められた。
次にジメルカプトチアジアゾールの配合量に着目すると、0.13質量%含有する場合(実施例5)から、それより多い場合(実施例4(0.26質量%)、3(0.52質量%))になると、2000サイクル経過時のμsの値に顕著な差異が認められ、耐久性が向上することが明らかとなった。
つまり、潤滑油組成物はジメルカプトチアジアゾールに由来する硫黄元素含有量が0.08質量%(実施例5)よりも多くなる(実施例4、3)ようにジメルカプトチアジアゾールを添加することが好ましいことが明らかとなった。また、(硫黄元素含有量)/(窒素元素含有量)の値が、実施例5に添加した添加剤10では0.9であり、好ましい実施例(3、4)に添加した添加剤8及び9ではそれぞれ2.0及び1.4であったので、潤滑油添加剤組成物としては0.9より大きいことが好ましいことが明らかとなった。
そして、実施例6〜8及び試験例10(フルフォーミュレート系)並びに試験例11(市販品)の潤滑油組成物におけるμsのサイクル数依存性の測定結果を図8に示す。実施例6〜8の潤滑油組成物におけるμsの値は、単純配合系における結果と同様に、試験例10及び11の潤滑油組成物におけるμsの値と比較して、全般を通して高い値を示している。
すなわち、ジメルカプトチアジアゾールを配合することでフルフォーミュレート系の潤滑油組成物においても、摩擦係数が大きくなることが明らかとなった。
次にジメルカプトチアジアゾールの配合量に着目すると、0.26質量%含有する場合(実施例8)から、それより多い場合(実施例7(0.52質量%)、6(0.78質量%))になると、2000サイクル経過時のμsの値に顕著な差異が認められ、耐久性が向上することが明らかとなった。
つまり、潤滑油組成物はジメルカプトチアジアゾールに由来する硫黄元素含有量が0.17質量%(実施例8)よりも多くなる(実施例7、6)ようにジメルカプトチアジアゾールを添加することが好ましいことが明らかとなった。また、(硫黄元素含有量)/(窒素元素含有量)の値が、実施例8に添加した添加剤9では1.4であり、好ましい実施例(6、7)に添加した添加剤7及び8ではそれぞれ2.4及び2.0であったので、今回検討したフルフォーミュレート系の潤滑油添加剤組成物としては1.4より大きいことが好ましいことが明らかとなった。
〔コハク酸イミド化合物類の検討〕
(評価材)
分散剤としてコハク酸イミド化合物類及びカルボン酸エステルを用いて、ジメルカプトチアジアゾールの分散性を評価した。
コハク酸イミド化合物類としては、実施形態の欄で説明した式(3)中のR1、R4がポリイソブテン、R2及びR3が−C24−のビスタイプのコハク酸イミド化合物類であるモノタイプ(数平均分子量1000)及びビスタイプ(数平均分子量1000及び2000)の3種類の化合物を用いた。カルボン酸エステルは平均分子量1000の化合物を用いた。
これらのコハク酸イミド化合物類を、コハク酸イミド化合物類に由来する窒素元素含有量が一定となるようにジメルカプトチアジアゾールと共に、希釈油としての水素化精製鉱油に混合し140℃で30分間加熱することで油溶性混合物を得た。カルボン酸エステルはビスタイプのコハク酸イミド化合物類(数平均分子量1000)と同一の配合割合で配合した。
Figure 2008195954
(結果)
表7に示したように、分散剤としてコハク酸イミド化合物類を用いた添加剤12〜14の組み合わせではすべてジメルカプトチアジアゾールを溶解させることができた。一方、分散剤としてカルボン酸エステルを用いた添加剤15では、ほとんどジメルカプトチアジアゾールを溶解することができず、油溶性混合物が得られなかった。
つまり、ジメルカプトチアジアゾールを潤滑油組成物に配合するためにコハク酸イミド化合物類を配合することが好適であることが明らかとなった。
(潤滑油組成物の調製)
前述の添加剤12〜14をコハク酸イミド化合物類及びジメルカプトチアジアゾールの配合量が表8に示す割合になるように、潤滑油基材としての水素化精製鉱油に粘度指数向上剤と共に配合して各実施例の潤滑油組成物を得た。
また、試験例の潤滑油組成物として添加剤12〜14の組成においてジメルカプトチアジアゾールを含有しない油溶性混合物を調製し、コハク酸イミド化合物類の含有量が表8に示す割合になるように、潤滑油基材としての水素化精製鉱油に粘度指数向上剤と共に配合して各試験例の潤滑油組成物を得た。
Figure 2008195954
(評価方法)
前述の「湿式クラッチでの効果」欄で説明した方法と同様の方法で2000サイクル試験を行い2000サイクル後のμsの値を測定した。
(結果)
結果を図9に示す。図9から明らかなように、ジメルカプトチアジアゾールを配合した実施例9〜11の潤滑油組成物はいずれも、ジメルカプトチアジアゾールを含有しない試験例の潤滑油組成物と比較して高いμsの値を示している。ジメルカプトチアジアゾールを含有する実施例9〜11の潤滑油組成物間で比較すると、ビスタイプのコハク酸イミド化合物類で数平均分子量が1000である実施例9の潤滑油組成物は、数平均分子量が2000の実施例11の潤滑油組成物よりも2000サイクル時のμsの値が0.02程度高く、極めて優れた値を示すことが明らかとなった。モノタイプのコハク酸イミド化合物類であって数平均分子量が1000の化合物を配合した実施例10の潤滑油組成物も実施例9と同様に極めて優れたμsの値を示すことが明らかとなった。
つまり、コハク酸イミド化合物類は、数平均分子量が2000より小さいこと、より好ましくは数平均分子量1000以下であることがμsの値の耐久性の観点から好ましいことが明らかとなった。
また、コハク酸イミド化合物類の化学構造として、モノタイプ、ビスタイプ共に摩擦係数増大の効果が大きかった。ここでビスタイプのコハク酸イミド化合物類を配合した実施例9の潤滑油組成物とモノタイプのコハク酸イミド化合物類を配合した実施例10の潤滑油組成物とのμs値の差異は少なく、いずれのタイプのコハク酸イミド化合物類も使用できることが明らかとなった。
〔含硫黄化合物の油溶性及び金属−金属間摩擦特性の評価〕
(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(以下、ジメルカプトチアジアゾールと称する)の油溶性の評価)
ジメルカプトチアジアゾールは非油溶性の含硫黄化合物であり、単独で油にほとんど溶解しない。ジメルカプトチアジアゾールと分散剤とから成る混合物の油溶性の評価を行った。分散剤としては、数平均分子量1000のビスタイプのコハク酸イミド化合物類及び数平均分子量が1000のポリイソブテニル無水コハク酸(以下、単に「無水コハク酸」と称する)の2種類を用いた。
混合割合および、ジメルカプトチアジアゾールの油への可溶化の可否を表9に示す。ジメルカプトチアジアゾールとコハク酸イミド化合物類ならびに希釈油としての水素化精製鉱油とを混合して、140℃で30分間撹拌することによって、油溶性混合物としての添加剤組成物(添加剤16)が得られた。一方、分散剤として無水コハク酸を用いた場合には、ジメルカプトチアジアゾールは一部可溶化したものの全ては油に溶解せず、油溶性混合物が得られなかった(添加剤17)。
なお、本実施例での含硫黄化合物の油溶性および非油溶性の区別は、記載した含硫黄化合物の配合割合にて希釈油と混合した混合物において、含硫黄化合物の沈殿(固体の場合)もしくは分離(液体の場合)が発生することなく、均一に混合されるか否かで判断した。
Figure 2008195954
(ジメルカプトチアジアゾールを含有する潤滑油組成物)
実施例12として、添加剤16と、各種のATF用添加剤とを併せて潤滑油基材としての水素化精製鉱油に配合した後、80℃で約30分間加熱・撹拌することによって、潤滑油組成物を調製した。
実施例13では、ジメルカプトチアジアゾールと分散剤である無水コハク酸と各種のATF用添加剤とを併せて水素化精製鉱油に配合し、140℃に加熱し約30分間撹拌することによって、ジメルカプトチアジアゾールを可溶化した潤滑油組成物を得ることができた。ジメルカプトチアジアゾールが無水コハク酸によって油溶性の化合物になった理由としては、無水コハク酸の作用のみならず、Ca−スルフォネート等の他の添加剤もジメルカプトチアジアゾールの可溶化剤として機能していると推測されること、ジメルカプトチアジアゾールの絶対量が少ないことなどが考えられる。
なお、本実施例における潤滑油組成物に関して、含硫黄化合物が可溶化したか否か(油溶性および非油溶性の区別)は、実施例および試験例にて希釈油及び潤滑油基材として用いた水素化精製鉱油に対して、含硫黄化合物が0.50質量%の濃度で加熱混合(140℃、30分間)した場合に、油全体に対して含硫黄化合物が沈殿(固体の場合)もしくは分離(液体の場合)することなく、均一に混合されるか否かで判断した。
実施例13における無水コハク酸の配合量については、モル数換算で実施例12におけるコハク酸イミドの配合量と同一となるように調整した。ジメルカプトチアジアゾールの配合量については、実施例12および実施例13の硫黄含有量が0.33質量%で同一となるようにした。
試験例15および試験例16として、実施例12(試験例15)および実施例13(試験例16)の組成を基に、それぞれジメルカプトチアジアゾールを含有していない試料油を調製した。試料油の調製は、実施例12と同様に、80℃で約30分間加熱・撹拌して行った。
いずれの潤滑油組成物に関しても、粘度指数向上剤、過塩基性Ca−スルフォネート、リン酸エステル、摩擦調整剤、酸化防止剤および消泡剤の種類ならびに配合量は同一である。ジメルカプトチアジアゾール以外の添加剤については、清浄分散性、粘度特性、摩耗防止性および酸化防止性等のATFおよびベルト式CVT用フルード(CVTF)として必要な諸特性を満足するように、配合量を決定した。実施例12及び13、試験例15及び16について組成を表10に示す。
Figure 2008195954
(非油溶性の含硫黄化合物とコハク酸イミド化合物類との混合物の油溶性の評価)
単独では非油溶性である各種の含硫黄化合物に対して、可溶化剤としてのコハク酸イミド化合物類及び水素化精製鉱油を混合し、140℃で30分間加熱・撹拌した後の油溶性の評価を行った。供試した非油溶性の含硫黄化合物は、ジメルカプトチアジアゾール、メチルチアジアゾールチオール(式(3)においてRがメチル基、XがSH基である化合物、Rがメチル基であるので非油溶性である)、テトラメチルチウラムジスルフィド及びテトラエチルチウラムジスルフィド(式(5)においてRがすべてメチル基又はエチル基である化合物、Rがすべてメチル基又はエチル基であるので非油溶性である)、チオシアヌル酸及びチオビスベンゼンチオールである。チオシアヌル酸及びチオビスベンゼンチオールの化学構造を下式に示す。そして、それぞれの配合量及び油への溶解性を表11に示す。
Figure 2008195954
Figure 2008195954
Figure 2008195954
添加剤18及び添加剤22、添加剤20及び添加剤23は、それぞれ用いる添加剤は同一であり、含硫黄化合物の配合量が異なる。表11及び12に示したように、ジメルカプトチアジアゾール、メチルチアジアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびテトラエチルチウラムジスルフィドは、コハク酸イミド化合物類との加熱混合によって、非油溶性の含硫黄化合物が油に可溶化され、油溶性混合物としての潤滑油添加剤組成物が得られた。
一方、表12に示したように、チオシアヌル酸およびチオビスベンゼンチオールは、これらの非油溶性の含硫黄化合物が完全には油に溶解せず、油溶性混合物が得られなかった。
表11及び12に示した添加剤18〜23を用いて実施例14〜19及び添加剤を加えない試験例17の潤滑油組成物を調製した。実施例14〜17では含硫黄化合物に由来する硫黄元素含有量を0.33質量%に、実施例18及び19では0.5質量%になるように添加剤の添加量を調整した。組成を表13に示す。
Figure 2008195954
(油溶性の含硫黄化合物を含む潤滑油組成物の調製)
単独で油溶性の含硫黄化合物を用いて、潤滑油組成物を調製した。供試した油溶性の含硫黄化合物はテトラブチルチウラムジスルフィド及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(式(5)においてRがすべてブチル基又は2−エチルヘキシル基である化合物、Rがすべてブチル基又は2−エチルヘキシル基であるので油溶性である)、メチルチオチアジアゾールチオール(式(2)においてRがメチル基である化合物、油溶性である)、ジメチルチアジアゾール(式(3)においてR及びXがメチル基である化合物、R及びXがメチル基であるので油溶性である)、ベンジルジスルフィド(式(6)においてnが2である化合物)、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン(ベンゾ[c]チオフェン)、硫化オレフィン(式(4)においてR1及びR2が炭素数16の炭化水素基(1−メチル−ペンタデシル基:硫黄元素に結合する炭素が第2級炭素)であり、Xの平均は5である化合物;大日本インキ化学工業製、商品名DAILUBE GS−420)、デカンジチオール、二硫化sec−ブチル、ジチオリン酸ジプロピル及びジブチルカルバミン酸亜鉛である。そして、それぞれの配合量及び油への溶解性を表14及び15に示す。
実施例20〜実施例28ならびに試験例18〜試験例20の含硫黄化合物の配合量については、硫黄含有量が0.33質量%で同一となるように調製した。実施例29は、実施例27の組成を基に、硫黄含有量が0.50質量%となるように、硫化オレフィンの配合量を増量したものである。また、含硫黄化合物を配合していない潤滑油組成物として試験例21を調製した。
Figure 2008195954
Figure 2008195954
(評価方法)
CVT用金属ベルトのエレメント(材質:スティール)を切り出したブロック試片を試験に供して、ASTM D2714に記載されているLFW−1型試験機を用いて、各実施例及び試験例の潤滑油組成物の摩擦係数を求めた。相手リング試片にはFALEX S−10試片(材質:スティール)を用いた。
荷重を付加して摩擦係数が安定するまでなじみ運転を行った後に、前述した表3に示す条件で摩擦係数を測定した。すべり速度を設定した後に安定した時点(約1分)での摩擦係数を測定した。
(結果)
(ジメルカプトチアジアゾールを可溶化した潤滑油組成物)
実施例12、13、試験例15、16及び市販のCVTFについて、すべり速度が500mm/sである条件における摩擦係数の測定結果を図10に示す。市販のCVTFとしては前述の試験例7を用いた。
分散剤としてコハク酸イミドを用いた場合の実施例12と試験例15とを比較すると、ジメルカプトチアジアゾールを含有した実施例12は、含硫黄化合物を含有していない試験例15に比べて、金属−金属間接触において高い摩擦係数を示した。
分散剤として無水コハク酸を用いた場合の実施例13と試験例16とを比較すると、上記のコハク酸イミドの場合と同様に、ジメルカプトチアジアゾールを含有した実施例13が、試験例16に比べて高い摩擦係数を示した。
さらに、実施例12および実施例13は、市販CVTFに比べても、高い摩擦係数を有することが分かった。
(ジメルカプトチアジアゾール以外の非油溶性の含硫黄化合物をコハク酸イミド化合物類で可溶化した潤滑油組成物)
実施例14〜17及び試験例17について、すべり速度が500mm/sである条件における摩擦係数の測定結果を図11に示す。
含硫黄化合物としてジメルカプトチアジアゾール(実施例14)、メチルチアジアゾールチオール(実施例15)、テトラメチルチウラムジスルフィド(実施例16)およびテトラエチルチウラムジスルフィド(実施例17)をそれぞれ用いた潤滑油組成物はいずれも、含硫黄化合物を配合していない試験例17に比べて、金属−金属間接触において高い摩擦係数を示した。高い摩擦係数を示す順に挙げると、実施例14、15、17そして16の順となった。これらの化合物は、実施例12及び13の結果から、分散剤としてコハク酸イミド化合物類ばかりでなく無水コハク酸を用いても高い摩擦係数が得られることが予測される。
ここで、実施例14〜17の潤滑油組成物に含まれる含硫黄化合物は、分子内に硫黄元素を40質量%以上含有し、かつ分子全体が硫黄、窒素、炭素および水素のみから構成される単独では非油溶性の含硫黄化合物である。
(油溶性の含硫黄化合物を用いた潤滑油組成物)
実施例20〜28及び試験例18〜21について、すべり速度が500mm/sである条件における摩擦係数の測定結果を図12に示す。油溶性の含硫黄化合物としては、テトラブチルチウラムジスルフィド(実施例20)、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(実施例21)、メチルチオチアジアゾールチオール(実施例22)、ジメチルチアジアゾール(実施例23)、ジベンジルジスルフィド(実施例24)、ベンゾチアゾール(実施例25)、ベンゾチオフェン(実施例26)、硫化オレフィン(実施例27)、デカンジチオール(実施例28)を配合した潤滑油組成物は、含硫黄化合物を含有しない試験例21の潤滑油組成物に対して高い金属−金属間摩擦係数を示した。
一方、油溶性含硫黄化合物として、二硫化sec−ブチル(試験例18)、ジチオりん酸ジプロピル(試験例19)及びジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(試験例20)を配合した潤滑油組成物は、含硫黄化合物を含有しない試験例21に比べて摩擦係数が小さくなった。したがって、高摩擦特性は全ての油溶性の含硫黄化合物を配合した場合において得られるのではなく、特定の含硫黄化合物を配合した場合においてのみ得られることが分かった。
〔湿式クラッチでの効果:湿式クラッチ−金属間の摩擦特性〕
(評価方法)
JASOの自動変速機油摩擦特性試験方法(M348−95)に準じて、SAE No.2型試験機を用いて、ペーパ摩擦材とスティール材とを組み合わせた湿式クラッチにおける摩擦特性を評価した。ペーパ摩擦材にはSD1777X材を用い、スティール材にはS35C材を用いた。なお、今回の評価試験で用いたスティール材の平面度が、前述した湿式クラッチ−金属間の摩擦特性で用いたスティール材と異なり、今回の試験では前述の試験よりも摩擦係数が小さく評価された。
摩擦特性としては、回転数0.7rpmの一定すべり条件下での低速引きずり試験を実施して、引きずり開始直後の摩擦係数の最大値(μs)を摩擦係数の評価尺度として用いた。さらに、低速引きずり試験の後に、摩擦材とスティール材との摩擦によって3600rpmで回転している慣性板を静止させる係合試験を行った。
この一連の試験の組み合わせを2000サイクル繰り返し行い、μsの値の変化によって、各試験用の潤滑油組成物について耐久性を評価した。
(結果)
(非油溶性の含硫黄化合物と分散剤との混合物を配合した潤滑油組成物)
実施例14、18、19及び比較例17の潤滑油組成物を用いた場合の湿式クラッチのμs値の試験繰り返しサイクル依存性を図13に示す。非油用の含硫黄化合物を分散剤のコハク酸イミドによって油溶化して配合した実施例14、18及び19はいずれも、含硫黄化合物を配合していない試験例17に比べて、高いμs値を示した。
ジメルカプトチアジアゾールとコハク酸イミドとの混合によって得た油溶性含硫黄化合物を配合した潤滑油組成物に関して、硫黄含有量が0.50質量%である実施例18と0.33質量%である実施例14とを比較すると、含硫黄化合物を高濃度で配合した実施例18の方が実施例14に比べて、試験繰返しサイクル数の増加に伴うμs値の低下が少なく、湿式クラッチにおいてより望ましい特性を有することが分かった。
2000サイクル時におけるμs値を比較すると、実施例14は0.130、実施例18は0.142、実施例19は0.132であり、含硫黄化合物を配合していない試験例17の0.093に比べて、40%程度高いμs値が得られた。このぺーパ摩擦材−金属間接触における摩擦係数増大効果は、前節に示した金属−金属間接触における効果(図11)に比べて大きい。
(油溶性の含硫黄化合物を配合した潤滑油組成物)
硫化オレフィンを硫化オレフィンに由来する硫黄元素含有量が0.5質量%となるように配合した実施例27及び含硫黄化合物を含有しない比較例21についてSAE No.2型摩擦試験においてμs値を測定した結果を図14に、実施例29及び比較例21について測定した結果を図15にそれぞれ示す。実施例27及び29は、試験例21に比べて、繰返し回数100〜2000サイクルの範囲で、安定した高いμs値を示した。
2000サイクル時におけるμs値を比較すると、硫化オレフィンを配合した実施例27及び29は0.157及び0.183であり、含硫黄化合物を配合していない試験例21の0.093に比べてそれぞれ60%及び97%高いμs値を示している。この摩擦係数増大効果は、本実施例の潤滑油組成物に配合した含硫黄化合物の中で最も大きい。また、ぺーパ摩擦材−金属間接触における摩擦係数増大効果は、金属−金属間接触における効果(図12)に比べて大きいことが分かる。
試験に用いた含硫黄化合物の化学構造式を示した図である。 金属−金属間の接触における各種含硫黄化合物の摩擦特性に及ぼす影響を示したグラフである。 実施例1における潤滑油組成物の金属−金属間の摩擦係数に対するμ−v特性を示したグラフである。 実施例2における潤滑油組成物の金属−金属間の摩擦係数に対するμ−v特性を示したグラフである。 試験例2における潤滑油組成物の金属−金属間の摩擦係数に対するμ−v特性を示したグラフである。 試験例5における潤滑油組成物の金属−金属間の摩擦係数に対するμ−v特性を示したグラフである。 実施例3〜5及び試験例9の潤滑油組成物のペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数(μs)のサイクル数依存性を示したグラフである。 実施例6〜8及び試験例10、11の潤滑油組成物のペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数(μs)のサイクル数依存性を示したグラフである。 実施例9〜11及び試験例12〜14の潤滑油組成物のペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数(μs)の2000サイクル後の値を示したグラフである。 金属−金属間の接触における分散剤の摩擦特性に及ぼす影響を示したグラフである。 金属−金属間の接触における各種含硫黄化合物の摩擦特性に及ぼす影響を示したグラフである。 金属−金属間の接触における各種含硫黄化合物の摩擦特性に及ぼす影響を示したグラフである。 実施例14、17、18及び試験例17の潤滑油組成物のペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数(μs)のサイクル数依存性を示したグラフである。 潤滑油組成物のペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数(μs)のサイクル数依存性を示したグラフである。 実施例29及び試験例21の潤滑油組成物のペーパ摩擦材−金属間の摩擦係数(μs)のサイクル数依存性を示したグラフである。

Claims (8)

  1. 硫黄と窒素と炭素と水素とのみから構成され分子内に硫黄元素を40質量%以上含有する非油溶性の含硫黄化合物、或いは、アルキル基を1つ以上有するアルキルチウラムジスルフィド化合物、下式(2)又は(3)で表されるチアジアゾール類、それぞれのベンジル基のベンゼン環上の水素が1以上の炭化水素基で置換されていてもよいジベンジルポリスルフィド、硫黄と炭素と水素とを含み窒素を含むことができ分子内に硫黄元素を20質量%以上含有する含硫黄複素環式化合物、硫化オレフィン及びアルキルジチオールからなる群から選択される1以上の油溶性の含硫黄化合物を、
    硫黄元素含有量が潤滑油全体に対して0.08質量%より多く、2.0質量%以下の範囲となるよう潤滑油基材に配合し、且つ前記含硫黄化合物は溶解されていることを特徴とする自動変速機用潤滑油組成物。
    Figure 2008195954
    (式(2)中、Rは炭化水素基;式(3)中、Rは炭化水素基、Xは水素、メルカプト基又は炭化水素基)
  2. 前記含硫黄化合物はジメルカプトチアジアゾール及び/又はその重合体からなるジメルカプトチアジアゾール類である請求項1に記載の自動変速機用潤滑油組成物。
  3. 前記ジメルカプトチアジアゾール及び/又はその重合体は、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその重合体である請求項2に記載の自動変速機用潤滑油組成物。
  4. 前記含硫黄化合物がアルキルチアジアゾールチオール及び/又はテトラアルキルチウラムジスルフィドである請求項1に記載の自動変速機用潤滑油組成物。
  5. 前記含硫黄化合物は下式(4)で表された硫化オレフィンである請求項1に記載の自動変速機用潤滑油添加剤組成物。
    1−Sx−R2…(4)
    (式(4)中、R1及びR2は炭素数20以下の炭化水素基であり、xは自然数である。)
  6. 前記油溶性の含硫黄化合物は炭素数1〜12のアルキル基をもつ、アルキルチオチアジアゾール及び/又はジアルキルチアジアゾールである請求項1に記載の自動変速機用潤滑油添加剤組成物。
  7. 前記油溶性の含硫黄化合物はベンゾチアゾール及び/又はベンゾチオフェンである請求項1に記載の自動変速機用潤滑油添加剤組成物。
  8. リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステル、亜リン酸エステルアミン塩、リン酸、及びジチオリン酸亜鉛からなる群から選択される1以上の化合物を全体に対して0.01質量%〜2質量%含有する請求項1〜7の何れか1項に記載の自動変速機用潤滑油組成物。
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