JP2008192689A - 電極、薄膜素子、回路基板、配線形成方法、および回路基板の製造方法 - Google Patents

電極、薄膜素子、回路基板、配線形成方法、および回路基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液状材料の描画パターンを制御して、接続信頼性を向上させることができる配線形成方法および回路基板の製造方法を提供する。接続信頼性を向上することができる電極、薄膜素子、および回路基板を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る回路基板は、電極21,22を備える基板2と、基板2上に配置された、電極14,15を備える薄膜素子1と、液状材料の塗布および乾燥により形成された、薄膜素子1の電極14,15および基板2の電極21,22を接続する配線30と、を有し、薄膜素子1の電極14,15に、塗布時に液状材料の流れを堰き止める溝17が形成されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、電極、薄膜素子、回路基板、配線形成方法、および回路基板の製造方法に関するものである。
化合物半導体基板から薄膜状の光素子を剥がして、当該光素子をLSIなど任意基板へ転写する方法が開示されている(特許文献1参照)。これによれば、薄膜状の光素子の厚さは数ミクロンなのでLSI上に直接モノリシックに形成した場合と同じディメンジョンで素子の集積化を実現できる。元の基板上に光素子を高密度に形成した後、必要な数の光素子を必要な場所にだけ転写実装するので、光素子の無駄をなくすことができる。転写実装は、低温、低エネルギープロセスなのでLSI回路にダメージを与えにくいというメリットもある。
また、LSI上に光素子を転写実装した後に、インクジェット法を用いて、光素子の電極と基板上の電極とを接続する金属配線を形成する技術が開示されている(特許文献2参照)。これによれば、金属配線をワイヤボンド法で形成するのとは異なり、平面的な配線を得ることができる。また、フォトリソグラフィ法で金属配線を形成するのに比べて、製造工程を簡素化することができ、コストを低減することができる。
特開2003−197881号公報 特開2005−109435号公報
しかしながら、導電性材料を含む液状材料を塗布する際に、液状材料が広がることにより、液状材料が配線領域からはみ出てしまい、素子不良を発生させることがある。例えば、薄膜素子が面発光レーザの場合、レーザ共振器上面にレーザ放射口を備えたリング状の電極が形成され、この電極が電極パッドへと連続的に引き出されている。この電極パッドへ液状材料を塗布すると、電極表面上を液状材料が濡れ広がってレーザ放射口を塞いでしまい素子不良となることがある。また、アノードとカソードなど異なる電極間をまたいでインクが広がると短絡を招く。液体材料の広がりを抑制するため、電極表面に撥液処理を施した場合には、電極に対する配線の密着性が低下するという問題がある。
本発明の目的は、液状材料の描画パターンを制御して、接続信頼性を向上させることができる配線形成方法および回路基板の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、接続信頼性を向上することができる電極、薄膜素子、および回路基板を提供することにある。
本発明に係る電極は、配線に接続される電極であって、前記配線を形成するための液状材料の流れを堰き止める溝が表面に形成されている。
これによれば、電極の表面に溝が形成されていることから、溝の一方側に塗布された液状材料が、溝の他方側へ進行することを防止することができる。なお、溝は、電極を貫通してもしていなくてもよい。これにより、液状材料の塗布領域と、配線の禁止領域との間に溝を設けることにより、配線の禁止領域へ液状材料が流れ込んで配線が形成されることを防止することができる。
本発明に係る薄膜素子は、配線に接続される電極を備える薄膜素子であって、前記配線を形成するための液状材料の流れを堰き止める溝が前記電極に形成されている。
これによれば、溝により液状材料の描画パターンを制御することができることから、他の素子や基板の電極と、当該薄膜素子の電極の接続信頼性を向上させることができる。
本発明に係る回路基板は、電極を備える基板と、前記基板上に配置された、電極を備える薄膜素子と、液状材料の塗布および乾燥により形成された、前記薄膜素子の電極および前記基板の電極を接続する配線と、を有し、前記薄膜素子の電極に、塗布時に前記液状材料の流れを堰き止める溝が形成されている。
これによれば、溝により液状材料の描画パターンを制御することができることから、基板の電極と薄膜素子の電極の接続信頼性を向上させることができる。
本発明に係る配線形成方法は、電極同士を接続する配線が形成されるべき配線領域の外側であって、いずれかの前記電極内の領域に溝を形成する工程と、前記配線領域に液状材料を塗布する工程と、前記液状材料を乾燥させて、前記配線領域に前記配線を形成する工程と、を有する。
これによれば、溝の一方側である配線領域に塗布された液状材料は、溝の位置で進行が妨げられることから、溝の他方側へ進行することを防止することができる。これにより、配線領域に液状材料を留めることができ、配線領域の外側へ液状材料が流れ込んで配線が形成されることを防止することができる。溝の形成は、電極のパターン形成と同時にしても、電極のパターン形成とは別にしてもよい。
好ましくは、前記液状材料の塗布は、インクジェットノズル又はディスペンサを用いて前記液状材料を前記配線領域に滴下することにより行なう。これにより、パターニングを行なわずに、所望の領域にのみ液状材料を塗布することができる。
本発明に係る回路基板の製造方法は、基板上に、溝が形成された電極を備える薄膜素子を形成する工程と、前記基板とは異なる基板であって、電極を備える基板上に、前記薄膜素子を転写する工程と、前記薄膜素子の電極および前記基板の電極を接続するパターンで液状材料を塗布する工程と、前記液状材料を乾燥させて、前記配線を形成する工程と、を有する。
これによれば、溝により液状材料の描画パターンを制御することができることから、基板の電極と薄膜素子の電極の接続信頼性を向上させた回路基板を実現することができる。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、薄膜素子を基板に接合した状態を示す断面図である。図2は、薄膜素子を基板に接合した状態を示す平面図である。図1は、図2のA−A’線の断面図である。
本実施形態では、薄膜素子1が、面発光レーザ(VCSEL:Vertical-cavity surface-emitting lasers)を備えている例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
基板2は、特に限定されず、シリコン、セラミック、ガラス、ガラスエポキシ、プラスチック、ポリイミドなど任意の部材を適用することができる。そして、基板2には、電子素子、電気光学素子、電極又は集積回路(図示せず)などが設けられているものとする。
また、基板2の表面の所望位置には、電極21,22が設けられている。電極21,22は、少なくともその再表面が金(Au)からなる金電極であることが好ましい。金電極はメッキ法などで形成することができる。電極21,22の材料としては、金を含む合金、白金、銀、銅、ニッケルなどを用いることもできる。
薄膜素子1は、基板2上に接合されている。薄膜素子1と基板2との接合は、例えば接着剤により、薄膜素子1の底面と基板2の表面とを接着することで行う。薄膜素子1は、半導体層11と、素子部12と、絶縁層13と、電極(アノード電極)14と、電極(カソード電極)15とを有する。
半導体層11は、例えばn型のAlGaAs多層膜からなるDBR(Distributed Bragg Reflector)ミラーを構成している。半導体層11の厚さは、例えば3μmである。
素子部12は、半導体層11の上面における中央付近の領域に形成されている。素子部12は、半導体層11側からAlGaAsからなる活性層と、p型のAlGaAs多層膜からなるDBRミラーとを備える。これらのn型半導体、活性層及びp型半導体によって面発光レーザをなす光共振器が形成されている。
絶縁層13は、半導体層11の上面に設けられており、アノードとなる電極14側と半導体層11(n型半導体)側とが短絡することを防いでいる。そして、絶縁層13は、半導体層11の上面における中央付近からその半導体層11の一方端に向かって形成され、更に半導体層11の側面を覆うように形成されている。絶縁層13の厚さは、例えば2〜3μmである。絶縁層13は、例えばポリイミド、樹脂、ガラス、セラミック又は酸化シリコン(SiO2)などからなる材料で形成する。
アノードとなる電極14は、素子部12及び絶縁層13の上面を1つの金属膜で覆うように設けられている。そして、電極14は、素子部12のp型半導体とオーミック接触している。電極14の厚さは、例えば0.3μmである。電極14は、例えば、金(Au)からなる。電極14には、レーザ放射口16と、レーザ放射口16を囲むリング電極部14aが形成されており、このレーザ放射口16から、レーザが放出される。
カソードとなる電極15は、半導体層11の上面に設けられている。具体的には、素子部12とは異なる領域において電極15が設けられている。そして、電極15は、半導体層11をなすn型半導体とオーミック接触している。電極15は、例えば金(Au)からなるが、電極14とは異なる材料であってもよい。
本実施形態に係る電極構造では、電極14,15に溝17が設けられている点に特徴がある。溝17は、電極14、15内であって配線領域の外側の領域に設けられる。配線領域とは、配線を形成すべき領域をいう。溝17の幅は、液状材料を堰き止めるために、例えば5μm以上あることが好ましい。
溝17は、両方の電極14,15に設けられている必要はなく、図3に示すように、少なくともいずれかの電極14,15に形成されていればよい。薄膜素子1が、面発光レーザである場合には、液状材料によりレーザ放射口16が塞がるのを防ぐため、少なくとも電極14側に溝17を設けることが好ましい。また、溝17は、電極14だけでなくその下層の絶縁層13にも形成されていてもよい。上記の溝17は、基板2とは異なる基板上への薄膜素子1の製造工程において、電極や絶縁層に形成される。
<電極への溝の形成方法>
電極14,15は、フォトリソグラフィによりパターニングするため、フォトマスクパターンに溝17のパターンを追加するだけでよく、なんら追加工程はない。例えば、電極14,15はリフトオフ法で形成される。具体的には、レジストマスクをフォトリソグラフィによりパターン形成し、真空蒸着で電極材を蒸着し、有機溶媒中で超音波振動を与えてレジストを除去すると、レジストのなかった領域に電極膜が形成される。
<絶縁層への溝の製造方法>
絶縁層13は、例えば感光性ポリイミドをフォトパターニングして形成するので、こちらもフォトマスクパターンに溝17のパターンを追加するだけでよい。具体的には感光性ポリイミド前駆体ワニスをスピンコートし、プリベークで固める。そして、フォトマスクを用いてUV露光し、レジスト現像液で現像し、ベークして完全にイミド化して硬化することにより絶縁層13を形成することができる。
溝17が深くなりすぎると、デッドスペースとなって後のプロセスで問題になることがある。例えば薬液の置換不良やゴミの噛み込みなどがある。これをさけるためには図3のような浅い溝17にすればよい。溝17のエッジの角度が十分あればインクの進行を止められる。溝17を浅く形成するには、絶縁層パターニングの露光を2回行う方法が最も簡単である。
例えば、前述の絶縁層形成工程において、溝パターンのあるフォトマスクを用いて1回目のUV露光を行う。これに続けて、溝パターンのないフォトマスクを用いて弱い露光量で2回目のUV露光を行う。1回目および2回目のUV露光量を調整することにより、溝17の深さを調節できる。感光性ポリイミドは、ポジ型であっても、ネガ型であってもよい。
<配線形成方法>
次に、配線領域に液状材料3を塗布する。具体的には、電極14および電極22を繋ぐ領域、並びに電極15および電極21を繋ぐ領域が配線領域である。当該工程では、導電性材料を含む液状材料3の液滴をインクジェットノズルなどから吐出して、その液滴を配線領域の内側に着弾させる。また、導電性材料を含む液状材料3の液滴をインクジェットノズルなどから吐出して、その液滴を配線領域の内側に着弾させる。
液状材料3を配線領域に塗布した後、その液状材料3について乾燥処理及び熱(焼結)処理を施す。これにより、導電性材料を含む液状材料3は、金属膜などの導電性膜となり、配線となる。
図4および図5は、配線形成後の回路基板を示し、図4は断面図であり、図5は平面図である。
これらにより、基板2の電極22と薄膜素子1のアノード電極14とを接続する配線30が形成され、基板2の電極21と薄膜素子1のカソード電極15とを接続する配線30が形成される。したがって、基板2と、その基板2に電気的及び機械的に接続された薄膜素子1とからなる回路基板も完成する。
<液状材料の具体例>
次に、上記液状材料3の具体例について説明する。液状材料3は、導電性微粒子を溶媒に分散させた液状体からなるものとすることができる。例えばその液状材料3を配線領域に塗布した後、溶媒を蒸発させ、さらに導電性微粒子を焼結させることで、導電膜からなる配線を形成することができる。溶媒は、揮発性を有するものとしてもよい。このようにすると、塗布された液状材料3に対して特別な乾燥処理を施さずに、所定時間放置するだけで溶媒を揮発させることができる。また乾燥時間を短縮することができる。溶媒の具体例としては、水、アルコール類、アセトン、キシレン、トルエン、テトラデカン、Nメチルピロリドン、フロン類などを挙げることができる。
また、液状材料3を構成する溶媒には、バインダー材を含ませてもよい。例えばバインダー材として、樹脂を溶媒に溶解させたものを用いる。そのバインダー材は、そのバインダー材を含む溶媒を揮発させて導電膜を形成させたときに、その導電膜内に残るものとしてもよい。このようにすると、液状材料3に対して乾燥処理及び熱処理を加えて導電膜を形成したときに、その導電膜の機械的な強度を高めることができ、その導電膜(配線)と配線領域(基板)の表面との密着性を高めることができる。また、導電膜の厚みなどの制御もすることができる。また、バインダー材は、導電性微粒子を熱処理してなる導電膜に対して保護膜として機能するものであってもよい。バインダー材の具体例としては、エポキシ、アクリル、ポリイミドなどを挙げることができる。
また、バインダー材として導電性有機高分子を用いてもよい。このようにすると、導電性微粒子の間を導電性有機高分子で満たすことができ、液状材料3を用いて導電率の高い良好な配線を形成することができる。すなわち、非常に細い配線でありながら抵抗値が低く、断線及び短絡の発生率の低い配線を簡易に形成することができる。導電性有機高分子の具体例としては、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチアジル、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを挙げることができる。
溶媒に分散される上記導電性微粒子としては、例えば銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、錫、はんだなどの金属を用いることができる。また、上記導電性微粒子としては、例えばカーボンパウダー、フラーレン、カーボンナノチューブなどのカーボンを用いることができる。このようにすると、液状材料3を用いて、さらに導電率が高く、機械的な強度も高く、柔軟性を持たせることができる良好な配線を形成することができる。
<塗布方法の具体例>
次に、液状材料3の塗布方法の具体例について説明する。本実施形態では、選択的に、所望の配線領域のみに液状材料3を塗布する手法を用いる。
選択的に液状材料3を塗布する手法としては、例えばインクジェット式プリンタなどで用いられているようなインクジェットノズルから液状材料3を液滴として吐出する液滴吐出方式を用いる。また、ディスペンサを用いて液状材料3を液滴として吐出してもよい。これらの手法によれば、初めから配線領域のみに液状材料3を滴下することができるので、液状材料3が無駄となることが殆どない。また、配線領域に対応したマスクなどを作成する必要もないので、設計変更などにも容易に対応でき、製造コストを低減することができる。
また、スクリーン印刷法を用いて、選択的に液状材料3を塗布してもよい。スクリーン印刷法とは、印刷する基材(基板2及び薄膜素子1)の上に、開口部の有無でパターンが形成されたスクリーンを置き、その開口部を利用して、開口部分だけに液状材料3を付着させる印刷方法である。ここで、開口部が配線領域に対応する位置に配置される。スクリーン印刷法によれば、基材の全面に液状材料3を塗布するスピンコート法などを使用した場合と比較して液状材料3の無駄を低減することができる。このスクリーン印刷法でも、ディスペンサーなどを使用した非接触塗布が可能である。すなわち、スクリーンを介して、液状材料3の液滴を塗布することなどにより、より精密かつ微細に所望の配線領域に液状材料3を塗布することができ、精密かつ微細であって信頼性の高い配線を設けることができる。
また、タンポ印刷法を用いて、選択的に液状材料3を塗布してもよい。タンポ印刷法とは、被印刷面が平坦でなく凸凹していても良好に印刷できる手法である。すなわち、タンポ印刷法では、例えば金属の版に配線領域を反転させた溝を掘り、その溝に液状材料3を刷り込み、その版にシリコンゴムなどからなるタンポを押し付け、タンポ上に液状材料3を転写する。次いで、そのタンポを薄膜素子1が接合された基板2の所定場所(配線領域)に押し付け、転写を完了させる。これにより配線領域に液状材料3が塗布される。
<液状材料を硬化させる処理>
配線領域に塗布された液状材料3を硬化させて導電膜を形成し配線とするためには、乾燥処理を行い、次いで熱処理を行う。ここで、配線領域への液状材料3の塗布と乾燥処理とは略同時に行うこととしてもよい。例えば、薄膜素子1及び基板2の温度を高めておいた状態で液状材料3を塗布する。このようにすると、液状材料3を用いて、迅速かつ良好に配線を形成することができる。ここで、基板2及び薄膜素子1の全体の温度を高めるのではなく、配線領域のみを選択的に加熱してもよい。例えばレーザ光を照射することにより選択的に加熱する。このようにすると、基板2及び薄膜素子1に設けられている機能素子に熱的ダメージを与えることを回避することができる。また、上記乾燥処理と熱処理とを略同時に行うこととしてもよい。また、配線領域への液状材料3の塗布と乾燥処理と熱処理とを、略同時に行うこととしてもよい。このようにすると、さらに迅速かつ良好に配線を形成することができる。
上記の本実施形態に係る配線形成方法では、液状材料を塗布し、乾燥および焼結させることにより、配線30を形成している。液状材料を塗布した後に、液状材料は広がろうとするが、液状材料が溝17に差し掛かると、液状材料33が溝17により堰き止められ、配線領域の外側へ広がることが抑制される。この原理について説明する。
図6は、溝17による液状材料の広がりのストッパ作用を説明するための図である。
図6に示すように、電極14,15表面に溝17を設けると、液状材料3を塗布したとき溝17のエッジ部で液状材料3の接触角が小さくなる。この角度が前進接触角の臨界θ以下になると液滴の先端は前進できなくなる。その結果溝17を超えての液滴の進行を食い止めることができる。特に、前進接触角の臨界θは、溝17の壁面からの角度となるため、液状材料3の進行を確実に食い止めることができる。また、溝17の壁面の立ち上がり角度を変えることにより、前進接触角の臨界θを最適化することも可能である。具体的には、溝17をすり鉢状に形成することにより、臨界θがより電極14側に傾くことになるため、液状材料3の進行をより確実に食い止めることができる。
図7は、溝17を設けた本実施形態における液状材料3の広がりの様子を示す図である。図8は、溝のない従来例における液状材料3の広がりの様子を示す図である。
図7に示すように、溝17により、液状材料3がレーザ放射口16へ広がることを抑制することができる。これに対して、図8に示す溝17のない比較例では、液状材料3が広がってレーザ放射口16の一部を覆ってしまう。
これらにより、本実施形態によれば、液状材料3を正確に配線領域内にのみ塗布することができ、液状材料3と配線領域の表面との密着性を向上させることができるので、薄膜素子1の電極と基板2の電極とを接続する配線を微細な配線パターンでありながら信頼性の高いものとして形成することができる。
きわめて単純な構成で、配線の禁止領域(レーザ放射口や受光部、など)を保護することができる。あるいは電極外周部に適用すると電極外へ配線がはみ出すことがなくなり、隣接する電極同士の短絡を防げる。さらに、撥液表面処理などと異なり、電極パッドへの配線の密着性を損なうことはない。
<溝および電極の変形例>
次に、溝および電極の変形例について、図9から図14を参照して説明する。図9から図14は、溝および電極の他の構造例を示す平面図である。
図9は、溝17を円弧状にし、最も電流経路の狭くなる部分Xの幅を広げている例を示す。これにより、リング電極部14aへの電流経路が狭くなることを抑制することができ、抵抗の増大を抑制することができる。
図10は、図2に示す溝を分割した例を示す。図10に示す溝17間の領域Yにおいても電流が流がれる。図9に比べ電流経路を直線状に最短にできるので、図9に示す構造に比べて、抵抗を下げることができる。液状材料は表面張力があるので、領域Yの幅が十分小さければ(液状材料により異なるがおおよそ50ミクロン以下、好ましくは30ミクロン以下である)スリット端でピニングされ、液状材料が領域Yを通過することを抑制することができる。
図11は、溝17を2重に配置した例を示す。これにより、仮に液状材料が溝17を乗り越えた場合でも2つめの溝17で確実に堰き止めることができる。
図12は、電極14の両サイドへ溝17を追加した例を示す。これにより、電極14の両サイドに隣接する素子が存在する場合に、これらの素子側へ液状材料が流れ込むことを防止でき、これらの素子との短絡を防止することができる。
図13は、図12の変形例を示し、細かなドット状の溝17を設けた例を示す。溝17の幅が小さいので、一つ一つは堰止め効果は小さいが多重に配置することで液状材料の進行の勢いを和らげ確実に堰き止めることができる。
図14は、リング電極部14aに対して溝17が配置された方向とは異なる2方向に電流経路を設けた電極の例を示す。これにより、リング電極部14aへの電流経路を広げることができる。
<薄膜素子の転写の詳細>
次に、本発明に係る上記薄膜素子1の転写方法について図15から図23を参照して説明する。本製造方法は、エピタキシャルリフトオフ(ELO)法をベースにしている。また本製造方法では、薄膜素子1としての化合物半導体素子を最終基板上に接着する場合について説明するが、最終基板の種類及び形態に関係なく本製造方法を適用することができる。
<第1工程>
図15において、基板110は、半導体基板であり、例えばガリウム・ヒ素化合物半導体基板とする。基板110における最下位層には、犠牲層111を設けておく。犠牲層111は、アルミニウム・ヒ素(AlAs)からなり、厚さが例えば数百nmの層である。
例えば、犠牲層111の上層には半導体層11を設ける。半導体層11の厚さは、例えば1μmから10μm程度とする。そして、半導体層11において素子部12を作成する。素子部12としては、例えば発光ダイオード(LED)、面発光レーザ(VCSEL)、フォトダイオード(PD)、DFBレーザなどが挙げられる。これらの半導体層11および素子部12は、何れも基板110上に多層のエピタキシャル層を積層して形成されたものである。また、各素子部12に接続する電極14,15も形成する。図示はしないが、当該工程において、絶縁層13が形成され、また、電極14または電極15に溝17が形成される。
<第2工程>
図16に示すように、各素子部12を分割する分離溝121を形成する。分離溝121は、少なくとも犠牲層111に到達する深さをもつ溝とする。例えば、分離溝の幅及び深さともに、10μmから数百μmとする。また、分離溝121は、後述するところの選択エッチング液が当該分離溝121を流れるように、行き止まりなく繋がっている溝とする。さらに、分離溝121は、格子状に形成することが好ましい。
また、分離溝121相互の間隔を数十μmから数百μmとすることで、分離溝121によって分割・形成される各素子部12のサイズを、数十μmから数百μm四方の面積をもつものとする。分離溝121の形成方法としては、フォトリソグラフィとウェットエッチングによる方法、またはドライエッチングによる方法を用いる。また、クラックが基板に生じない範囲でU字形溝のダイシングで分離溝121を形成してもよい。
<第3工程>
図17に示すように、中間転写フィルム131を基板110の表面(素子部12側)に貼り付ける。中間転写フィルム131は、表面に粘着剤が塗られたフレキシブルな帯形状のフィルムである。
<第4工程>
図18に示すように、分離溝121に選択エッチング液141を注入する。本工程では、犠牲層111のみを選択的にエッチングするために、選択エッチング液141として、アルミニウム・ヒ素に対して選択性が高い低濃度の塩酸を用いる。
<第5工程>
図19に示すように、分離溝121への選択エッチング液141の注入後、所定時間の経過により、犠牲層111のすべてを選択的にエッチングして基板110から取り除く。
<第6工程>
図20に示すように、犠牲層111が全てエッチングされると、基板110から半導体層11が切り離される。そして、本工程において、中間転写フィルム131を基板110から引き離すことにより、中間転写フィルム131に貼り付けられている半導体層11を基板110から引き離す。
これらにより、素子部12が形成された半導体層11は、分離溝121の形成及び犠牲層111のエッチングによって分割されて、所定の形状(例えば、微小タイル形状)の薄膜素子1とされ、中間転写フィルム131に貼り付け保持されることとなる。ここで、半導体層11の厚さが例えば1μmから8μm、大きさ(縦横)が例えば数十μmから数百μmであるのが好ましい。
<第7工程>
図21に示すように、薄膜素子1が貼り付けられた中間転写フィルム131を移動させることで、最終基板となる基板2の所望の位置に薄膜素子1をアライメントする。ここで、基板2は、例えば、シリコン半導体からなり、金(Au)からなる電極21が形成されている。なお、別の領域には、電極22も形成されている。また、基板2の所望の位置には、薄膜素子1を接着するための接着剤20を塗布しておく。
<第8工程>
図22に示すように、基板2の所望の位置にアライメントされた薄膜素子1を、中間転写フィルム131越しに裏押し治具181で押しつけて基板2に接合する。ここで、所望の位置には接着剤20が塗布されているので、その基板2の所望の位置に薄膜素子1が接着される。
<第9工程>
図23に示すように、中間転写フィルム131の粘着力を消失させて、薄膜素子1から中間転写フィルム131を剥がす。中間転写フィルム131の粘着剤は、紫外線(UV)又は熱により粘着力が消失するものにしておく。UV硬化性の粘着剤とした場合は、裏押し治具181を透明な材質にしておき、裏押し治具181の先端から紫外線(UV)を照射することで中間転写フィルム131の粘着力を消失させる。熱硬化性の接着剤とした場合は、裏押し治具181を加熱すればよい。あるいは第6工程の後で、中間転写フィルム131を全面紫外線照射するなどして粘着力を全面消失させておいてもよい。粘着力が消失したとはいえ実際には僅かに粘着性が残っており、薄膜素子1は非常に薄く軽いので中間転写フィルム131に保持される。
その後、加熱処理などを施して、薄膜素子1を基板2に本接合する。薄膜素子1を基板2に接合させた後に、上述したように、薄膜素子1の電極と基板2の電極を接続する配線を形成する。
これらにより、基板2が例えばシリコンであっても、その基板2上の所望位置にガリウム・ヒ素製の面発光レーザなどを備える薄膜素子1を形成するというように、面発光レーザなどをなす半導体素子を当該半導体素子とは材質の異なる基板上に形成することが可能となる。また、半導体基板上で面発光レーザなどを完成させてから微小タイル形状に切り離すので、面発光レーザを組み込んだ集積回路などを作成する前に、予め面発光レーザなどをテストして選別することが可能となる。また、上記製造方法によれば、半導体基板の表層部のみを薄膜素子1として半導体基板から切り取り、フィルムにマウントしてハンドリングすることができるので、薄膜素子1を個別に選択して基板2に接合することができ、ハンドリングできる薄膜素子1のサイズを従来の実装技術のものよりも小さくすることができる。
さらに上記製造方法によれば、薄膜素子1の電極と基板2の電極とを接続する配線について、液状材料を塗布することにより、微細なパターンとして且つ形成面に対して密着性よく設けることができる。したがって、上記製造方法によれば、従来よりもコンパクトであり、配線短絡及び断線の発生確率が低く、かつ高速に動作する薄膜デバイス(回路装置)を備えた集積回路などを容易かつ低コストで製造することができる。
<電子機器>
上記実施形態の薄膜素子1および回路基板を備えた電子機器の例について説明する。
上記実施形態の薄膜素子は、面発光レーザ、発光ダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタ、高電子移動度トランジスタ、ヘテロバイポーラトランジスタ、インダクター、キャパシター又は抵抗などに適用することができる。これらの薄膜素子を備えた応用回路又は電子機器としては、光インターコネクション回路、光ファイバ通信モジュール、レーザプリンタ、レーザビーム投射器、レーザビームスキャナ、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダ、変位センサ、圧力センサ、ガスセンサ、血液血流センサ、指紋センサ、高速電気変調回路、無線RF回路、携帯電話、無線LANなどが挙げられる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
上記実施形態では、薄膜素子が面発光レーザを備えている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薄膜素子が発光ダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタ、高電子移動度トランジスタ、ヘテロバイポーラトランジスタ、インダクター、キャパシター及び抵抗のうちの少なくとも一つを有することとしてもよい。
また、上記実施形態では、薄膜素子1と基板2とを電気的に接続する配線を形成する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め1つの基板上に形成された2つの電極同士間の配線など、液滴吐出方式を用いた各種配線の形成に適用することができる。
本発明は、薄膜素子1の電極に限定されず、液状材料を用いて配線と接続される全ての電極に適用することができる。フラットパネルディスプレイ、プリント配線基板、LSIの電極パッドなど、液滴吐出方式を用いた各種配線の形成に適用することができる。
本実施形態に係る薄膜素子を示す断面図である。 本実施形態に係る薄膜素子を示す平面図である。 本実施形態に係る回路基板を示す断面図である。 本実施形態に係る回路基板を示す平面図である。 薄膜素子の他の電極構造を示す断面図である。 溝による液滴のせき止める原理を示す図である。 溝が形成された電極上における液状材料の広がりの状態を示す図である。 溝がない電極上における液状材料の広がりの状態を示す図である。 溝の変形例を示す図である。 溝の変形例を示す図である。 溝の変形例を示す図である。 溝の変形例を示す図である。 溝の変形例を示す図である。 電極の変形例を示す図である。 薄膜素子の製造および転写方法の第1工程を示す断面図である。 同上の製造方法の第2工程を示す図である。 同上の製造方法の第3工程を示す図である。 同上の製造方法の第4工程を示す図である。 同上の製造方法の第5工程を示す図である。 同上の製造方法の第6工程を示す図である。 同上の製造方法の第7工程を示す図である。 同上の製造方法の第8工程を示す図である。 同上の製造方法の第9工程を示す図である。
符号の説明
1…薄膜素子、2…基板、3…液状材料、11…半導体層、12…素子部、13…絶縁層、14…電極、14a…リング電極部、15…電極、16…レーザ放射口、17…溝、21…電極、22…電極、30…配線

Claims (6)

  1. 配線に接続される電極であって、
    前記配線を形成するための液状材料の流れを堰き止める溝が表面に形成されている、
    電極。
  2. 配線に接続される電極を備える薄膜素子であって、
    前記配線を形成するための液状材料の流れを堰き止める溝が前記電極に形成されている、
    薄膜素子。
  3. 電極を備える基板と、
    前記基板上に配置された、電極を備える薄膜素子と、
    液状材料の塗布および乾燥により形成された、前記薄膜素子の電極および前記基板の電極を接続する配線と、を有し、
    前記薄膜素子の電極に、塗布時に前記液状材料の流れを堰き止める溝が形成されている、
    回路基板。
  4. 電極同士を接続する配線が形成されるべき配線領域の外側であって、いずれかの前記電極内の領域に溝を形成する工程と、
    前記配線領域に液状材料を塗布する工程と、
    前記液状材料を乾燥させて、前記配線領域に前記配線を形成する工程と、
    を有する配線形成方法。
  5. 前記液状材料の塗布は、インクジェットノズル又はディスペンサを用いて前記液状材料を前記配線領域に滴下することにより行なう、
    請求項4に記載の配線形成方法。
  6. 基板上に、溝が形成された電極を備える薄膜素子を形成する工程と、
    前記基板とは異なる基板であって、電極を備える基板上に、前記薄膜素子を転写する工程と、
    前記薄膜素子の電極および前記基板の電極を接続するパターンで液状材料を塗布する工程と、
    前記液状材料を乾燥させて、前記配線を形成する工程と、
    を有する回路基板の製造方法。
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