JP2008192396A - 電極材料及びその製造方法、並びに該電極材料を使用した電界放射装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素繊維のような導電性繊維の円周方向に放射状に酸化亜鉛系ウィスカーを成長させることによって電極材料を構成する。好ましい酸化亜鉛系ウィスカーとしては、アルミニウム添加酸化亜鉛ウィスカーが用いられる。また、大気圧開放型のCVD装置を使用し、導電性繊維に直接通電加熱することによって繊維表面にウィスカーを成長させることが好ましい。
【選択図】図1
Description
冷陰極から得られる単位面積、単位時間当たりに電界放射される電流密度Jは式(1)のFowler−Nordheim(F−N)式で表すことができる。
Y. Ohkawara, T. Naijo, T. Washio, S. Ohshio, H. Ito and H. Saitoh: Jpn. J. Appl. Phys. 40(2001)7013-7017. H. Saitoh, T. Washio and S. Ohshio: Adv. In Tec. of Mat. Proc. J. 6(2004)47-52. H. Saitoh, H. Akasaka, T. Washio, Y. Ohkawara, S. Ohshio, H. Ito, H.Saitoh: J. Appl. Phys.41(2002)6169-6173.
図2に示すように、従来の冷陰極ではシリコン基板上にZnO:Alウイスカーがほぼ垂直にならび、ウイスカー間の間隙を十分にあけることができなかった。そのため、陽極が陰極から比較的遠いと、ウイスカーの先端の集合があたかも平面に見えてしまうため、電界集中が弱くなる。そのためZnO:Alウイスカーの先端の曲率半径が小さいにもかかわらず、電界集中係数は思ったほどには伸びなかった。
また、本発明は、前記電極材料を用いた安価で性能の良い電界放射装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明はつぎの1〜11の構成を採用するものである。
1.導電性繊維の円周方向に放射状に酸化亜鉛系ウィスカーを成長させたことを特徴とする電極材料。
2.導電性繊維が炭素繊維であることを特徴とする1に記載の電極材料。
3.酸化亜鉛系ウィスカーがアルミニウム添加酸化亜鉛ウィスカーであることを特徴とする1又は2に記載の電極材料。
4.酸化亜鉛系ウィスカーの先端部に金属酸化物膜又はアモルファス炭素系膜から選択されたトップコートを設けたことを特徴とする1〜3のいずれかに記載の電極材料。
5.導電性繊維の直径が0.1〜10μmであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の電極材料。
6.酸化亜鉛系ウィスカーの直径が0.1〜10μm、長さが1〜50μmであることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の電極材料。
7.酸化亜鉛系ウィスカーの密度が104〜107本/mm2、ウィスカー先端の曲率半径が1〜100nmであることを特徴とする1〜6のいずれかに記載の電極材料。
8.大気開放型化学気相析出法により、導電性繊維に通電加熱しながらその表面に酸化亜鉛系ウィスカーを成長させることを特徴とする1〜7のいずれかに記載の電極材料の製造方法。
9.さらに、酸化亜鉛系ウィスカーの先端部に金属酸化物膜又はアモルファス炭素系膜を蒸着させてトップコートを設けることを特徴とする8に記載の電極材料の製造方法。
10.1〜7のいずれかに記載された電極材料により構成された冷陰極と、該冷陰極に対向する陽極を有することを特徴とする電界放射装置。
11.電界放射装置が陽極に蛍光体層を設けた発光素子であることを特徴とする10に記載の電界放射装置。
図1及び図2は本発明の電極材料を説明するための模式図であり、図1は本発明の電極材料を示す図、また図2は従来の電極材料を示す図である。
本発明の電極材料1は、図1にみられるように、炭素繊維2の円周方向において、放射状に酸化亜鉛系ウィスカー3を成長させたものである。この電極材料1では、ウイスカー3の先端部4における数密度が、根元部5における数密度に比較して大幅に減少したものとなる。したがって、この電極材料1を冷陰極とし、これに対向する陽極を設けた電界放射装置では、ウイスカー3の先端部4に集中する電界が大幅に増加する。
本発明では、上記の構成を採用することによって、冷陰極の電極材料として使用した際の電界集中係数を、従来の電極材料を使用した場合の5〜100倍程度に向上させることが可能となる。
図3は、ウイスカーを成長させる炭素繊維に、1μmの直径を有するZnO:Alウイスカーが成長したときの電界集中係数(β)と炭素繊維の直径との関係について、幾何学的な形状をもとに計算で求め結果を示す図である。シリコン基板を使用する従来の電極材料では直径が無限大と定義できるため、ほぼβ=1000である。炭素繊維が細くなるにしたがって電界集中係数が上がり、とくに10μmよりも細くなると急激に大きくなることがわかる。したがって、炭素繊維の太さは10μmよりも細くなるほど有効である。ただし、ZnO:Alウイスカーの太さが細くても0.1μm程度なので、実用的には炭素繊維の直径も0.1μm程度以上とすることになる。
大気開放型CVD法は、気化させた金属化合物を加熱された基材表面に吹付けて、基材表面で酸素、水等の大気中に含まれる化合物と反応させて、基材表面にウィスカー等を成長させる方法として広く知られている。原料となる金属化合物としては、例えば、金属又は金属類似元素の原子にアルコールの水酸基の水素が金属で置換されたアルコキシド類、金属または金属類似元素の原子にアセチルアセトン、エチレンジアミン、ビピペリジン、ビピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロニン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素などから選ばれる配位子を1種あるいは2種以上有する各種の錯体等を使用することができる。この中でも、金属アセチルアセトナート化合物、金属アルコキシド化合物等がより好ましく用いられる。
キャリアガスとしては、使用する金属化合物と反応するものでなければ、特に限定はされない。具体例として、窒素ガスやヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス、炭酸ガス、有機弗素ガス、あるいはヘプタン、ヘキサン等の有機物質等が挙げられる。これらのうちで安全性、経済性の上から不活性ガスが好ましい。窒素ガスが経済性の面より最も好ましい。
また、酸化亜鉛系ウィスカーの密度(根元部の密度)は、104〜107本/mm2程度とすることが好ましい。
また、酸化亜鉛系ウィスカーの先端部に金属酸化物膜又はアモルファス炭素系膜から選択されたトップコートを設けることによって、電界集中係数をさらに向上させることができる。トップコートを構成する好ましい材料としては、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、アモルファス水素化窒化炭素、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
また、図6の冷陰極51では、支持基板42に設けた左右の電極43,43間に、同様の炭素繊維2を1本配置することによって冷陰極を構成したものである。そして、図7の冷陰極61では、支持基板42に設けた左右の電極43,43間に、複数の炭素繊維2を網目状に配置することによって、冷陰極を構成したものである。
この例では、図5の支持基板42に代えて支持枠体44,44を使用し、その左右両側に設けた銅等の導電性金属により構成された電極43,43間に、繊維の円周方向に酸化亜鉛系ウィスカーを成長させた複数の炭素繊維2を配置することによって冷陰極71を構成したものである。したがって、隣接する炭素繊維2は空間を空けて平行に配置されたものとなる。
この電界放射装置81は、図5の冷陰極41に平行に対向させて、石英ガラス等からなる基板82上にITO等からなる蛍光体層83を設けた陽極84を配置したものである。そして、冷陰極41と陽極84は石英等からなるスペーサー85、85により隔てられ、それぞれ電源86に接続されている。
陽極84は、銅、金、銀、白金等の導電性金属により構成することもできる。また、陽極84の蛍光体層83に変えて他の放射線源となる物質層を設けることができ、例えばX線を放出する物質層を設けた場合には、X線発生素子とすることができる。
この電界放射装置91では、図9の電界放射装置81において、冷陰極41に代えて図8の冷陰極71を使用した以外は、図9の電界放射装置81と同様の構成を有する。この装置91では、冷陰極71の隣接する炭素繊維の間には空間が存在するために、ウィスカー3の先端から放出された電子によって蛍光体層83が励起されて発光した光は、図の点線矢印で示したように、炭素繊維間の空間を通過して冷陰極71側で観測される。特に、陽極84を構成する基板82として、光透過性の無い基板を使用した場合には、冷陰極71側方向のみに光が放射する、従来の発光素子とは全く異なる発光機構の素子を得ることができる。
(実施例1)
図4の大気開放型CVD装置21を使用し、直径5μmの炭素繊維上にアルミニウム添加酸化亜鉛ウイスカー(ZnO:Alウイスカー)を次の手順で成長させて、本発明の電極材料を製造した。
原料となる金属錯体ビスアセチルアセトナト亜鉛Zn(C5H7O2)28.0gをボート32に、金属錯体トリスアセチルアセトナトアルミニウムAl(C5H7O2)30.5gをボート33に入れて、ボート33がノズル28側になるように気化器25内にセットした。キャリアガスとして窒素供給源22から窒素を流量1.2L/minで流しながら、気化器25を加熱して115℃で原料を気化させた。気化された原料はキャリアガスによってノズル28に輸送され、スリット27から加熱電源29により直接通電加熱された炭素繊維2上に吹付けられ、炭素繊維2上で熱分解して、繊維の円周方向に放射状にZnO:Alウイスカーを成長させた。得られた電極材料を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察した映像を、図11に示す。ZnO:Alウイスカーのウィスカー長は10−40μm、ウィスカー径は1−2μm、先端曲率半径は約20nmであった。
実施例1において、炭素繊維として直径7μmの炭素繊維を使用した以外は実施例1と同様にして、炭素繊維の円周方向に放射状にZnO:Alウイスカーを成長させて、電極材料を製造した。得られた電極材料をFE−SEM で観察した映像を、図12に示す。ZnO:Alウイスカーのウィスカー長は10−40μm、ウィスカー径は1−2μm、先端曲率半径は約20nmであった。
実施例1において、炭素繊維に代えてシリコン単結晶基板を使用し、この単結晶基板を加熱装置により加熱しながら、実施例1と同様の手順で基板上にZnO:Alウイスカーを成長させて、従来の電極材料を製造した。得られた電極材料をFE−SEM で観察した映像を、図13に示す。ZnO:Alウイスカーのウィスカー長は6μm、ウィスカー径は1−2μm、先端曲率半径は約20nmであった。
実施例1で得られた直径5μmの炭素繊維にウィスカー成長させた電極材料を使用して、図5に示す冷陰極41を製造した。この冷陰極41では、2枚の銅電極43、43間に実施例1で得られた電極材料15本を平行に配置したものである。
この冷陰極41を用いて、図9に示す電界放出装置(発光素子)81を製造した。陽極84としては銅電極を使用し、石英からなるスペーサー85により冷陰極41と1mmの間隔を空けて平行に対向させて配置するとともに、両電極を電源86に接続した。
実施例3において、実施例1で得られた電極材料に代えて、実施例2で得られた電極材料(直径7μmの炭素繊維にウィスカー成長)を使用した以外は、実施例3と同様にして電界放出装置を製造した。
実施例3において、実施例1で得られた電極材料に代えて、比較例1で得られた従来の電極材料(シリコン単結晶基板にウィスカー成長)を使用した以外は、実施例3と同様にして電界放出装置を製造した。
実施例3、4及び比較例2で得られた電界放出装置を使用して、1×10−4Pa以下の真空度で電極間に電圧を印加し、各装置の電界放出特性を測定した結果を図14に示す。
閾値電界(放射電流密度1μA/cm2時の電界)は、実施例3の直径5μmの炭素繊維にウィスカー成長させた電極材料を使用した装置では0.3V/μmであり、実施例4の直径7μmの炭素繊維にウィスカー成長させた電極材料を使用した装置では1.1V/μmであった。これに対して、比較例2のシリコン単結晶基板にウィスカーを成長させた従来の電極材料を使用した装置では4.4V/μmであり、本発明の電極材料を使用することにより、大幅な電界放出特性の向上が認められた。
2 炭素繊維
3、13 ウィスカー
4、14 先端部
5、15 根元部
12、82 基板
21 大気開放型CVD装置
22 ガス供給源
23 フローメーター
24、26 配管
25 気化器
27 スリット
28 ノズル
29、86 電源
30 扉
31 チャンバー
32、33 ボート
41,51,61,71 冷陰極
42 支持基板
43 電極
44 支持枠体
81、91 電界放射装置
83 蛍光体層
84 陽極
85 スペーサー
Claims (11)
- 導電性繊維の円周方向に放射状に酸化亜鉛系ウィスカーを成長させたことを特徴とする電極材料。
- 導電性繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の電極材料。
- 酸化亜鉛系ウィスカーがアルミニウム添加酸化亜鉛ウィスカーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極材料。
- 酸化亜鉛系ウィスカーの先端部に金属酸化物膜又はアモルファス炭素系膜から選択されたトップコートを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極材料。
- 導電性繊維の直径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極材料。
- 酸化亜鉛系ウィスカーの直径が0.1〜10μm、長さが1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極材料。
- 酸化亜鉛系ウィスカーの密度が104〜107本/mm2、ウィスカー先端の曲率半径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極材料。
- 大気開放型化学気相析出法により、導電性繊維に通電加熱しながらその表面に酸化亜鉛系ウィスカーを成長させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極材料の製造方法。
- さらに、酸化亜鉛系ウィスカーの先端部に金属酸化物膜又はアモルファス炭素系膜を蒸着させてトップコートを設けることを特徴とする請求項8に記載の電極材料の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載された電極材料により構成された冷陰極と、該冷陰極に対向する陽極を有することを特徴とする電界放射装置。
- 電界放射装置が陽極に蛍光体層を設けた発光素子であることを特徴とする請求項10に記載の電界放射装置。
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