JP2008191067A - 生化学用容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一端が開口されている容器部材を有する生化学用容器であって、前記容器部材はポリエステル樹脂又はポリエステル共重合体を含むものであり、更に前記容器部材内表面の少なくとも一部が側鎖に感光性の官能基を有する水溶性樹脂で被覆されており、更に前記水溶性樹脂がポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン及び、ポリエチレングリコールの中から選ばれるものである。
【選択図】なし
Description
近年、測定系の高感度化に伴い扱う試料が微量になり、容器内表面に対する蛋白質や細胞の非特異的な吸着の影響が問題になってきた。
そのため、容器内表面に親水性を付与する事で生体由来物質の吸着を低減させる種々の技術が開示されている。
しかしながら、ポリヒドロキシエチルメタクリレート共重合体またはポリイソプロピルアクリルアミドやプロピオネート、さらにポリビニルアルコールといった親水性化合物を培養容器内面にコーティングする方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)が開示されているが、コーティングした親水性化合物が培地水溶液中に溶出し、細胞の機能・形態に影響を与える可能性があった。
更にポリヒドロキシエチルメタアクリレート共重合体等を使用した場合は、親水性化合物が放射線に対する耐性を有していないため、コーティング後に放射線で滅菌することが出来ないものが多く、無菌性を必要とする生化学容器においては無菌状況下での生産を余儀なくされていた。
更に、容器内表面にポリエチレンオキシドやプロピルイソシアネート等の親水性材料をグラフトする事により、表面に親水性を付与する方法が開示されているが、グラフト鎖長を均一に制御する事が難しく、更にグラフト鎖の導入密度を上げる事が困難である事から、改質のばらつきが大きく、充分な改質効果を得る事が難しいという問題点を有していた。(例えば、特許文献4参照)
(1)一端が開口されている容器部材を有する生化学用容器であって、前記容器部材はポリエステル樹脂又はポリエステル共重合体を含むものであり、更に前記容器部材内表面の少なくとも一部が側鎖に感光性の官能基を有する水溶性樹脂で被覆されていることを特徴とする生化学用容器。
(2)前記水溶性樹脂がポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン及び、ポリエチレングリコールの中から選ばれるものである請求項1記載の生化学用容器。
(3)遠心分離用に用いられる容器を含むものである請求項1又は2記載の生化学用容器。
本発明は、一端が開口されている容器部材を有する生化学用容器であって、上記容器部材はポリエステル樹脂又はポリエステル共重合体を含むものであり、更に上記容器部材内表面の少なくとも一部が側鎖に感光性の官能基を有する水溶性樹脂で被覆されていることを特徴とする生化学用容器である。
上記樹脂材料から本発明の生化学用容器を製造する場合、例えば射出成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形により上記生化学用容器を製造することができる。
上記樹脂材料の中でもポリエチレンテレフタレート樹脂共重合体が射出成形性に優れるため好ましく、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂共重合体としては例えば、テレフタル酸−エチレングリコール−ビスフェノールAエチレンオキサイド(1〜4)重縮合物、またはテレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール重縮合物等が挙げられる。上記樹脂材料には成形性向上、耐候性向上を目的として、本発明の目的を損なわない範囲で炭化水素系、脂肪酸アミド系等の添加剤を添加することができる。
ここで水溶性樹脂とは、水分子とのイオンもしくは水素結合により水和し、その結果として水に溶解する樹脂のことであり、言い換えれば水溶性樹脂とは水に溶解するために分子内の主鎖に対して必要充分な量のイオン性もしくは極性の側鎖を持つ樹脂のことである。
具体的には例えばアジド基を含む官能基、ジアゾ基を含む官能基、ジアジド基を含む官能基等が挙げられる。これらの中でもアジド基を含む官能基が好ましい。これにより、実用的な230〜500nmの波長で反応させる事が出来、更に優れた解像性により皮膜の形成性を向上することができる。
上記水溶性樹脂としては、例えばポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリジエチレングリコールジアクリレート、およびそれらを構成するモノマー同士の共重合体、また2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のモノマー(例えばブチルメタクリレート等)との共重合体等が挙げられる。これらの中でもポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールの中から選ばれるものが好ましい。これにより、生体由来物質の吸着を低減し、実験の精度を向上することができる。
上記水溶性樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、100以上、10000以下が好ましく、特に200以上、5,000以下が好ましい。平均重合度が100以上であると、均一な皮膜を成形することができ、また、平均重合度が10000以下であれば作業性に適した水溶性の粘度とすることができる。
本発明の生化学用容器に用いられる樹脂材料は放射線への耐性も優れており、滅菌後の経時劣化の影響を受けにくい点も特徴である。放射線の吸収線量については特に限定するものではないが、吸収線量が低すぎると滅菌性は確保されず、高すぎると細胞培養容器および被覆層が劣化してしまう放射線の吸収線量としては1kGy以上、50kGy以下が好ましく、5kGy以上、30kGy以下が特に好ましい。これによって本発明の生化学用容器の特性を充分に保持したまま滅菌性を付与する事ができる。
(実施例)
樹脂材料としてポリエステル共重合体(ユニチカポリエステル社製、MA−1344)を用いて、射出成形(成形機:日精樹脂工業社製 60t、シリンダー温度:250℃−260℃−260℃−230℃、射出圧力:700kg/cm2、金型冷却:30℃)により高さ120mm、内径14.8mmのチューブ(遠沈管)を成形した。得られたチューブにプラズマ処理装置 (BRANSON/IPC社製 SERIES7000)を用いてプラズマ処理(酸素プラズマ5分間)を行い、水溶性樹脂として側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコール(東洋合成工業社製 AWP、平均重合度1600、感光基の導入率0.65mol%)をアルミ箔で遮光をしたガラス容器中で、20容量%エタノール水溶液に溶解し、0.6重量%の溶液を調整した。
上述のチューブに上記水溶性樹脂の水溶液15mLを分注し1分間後、分注した水溶性樹脂の水溶液を排出し、チューブを裏返した状態で40℃60分間一次乾燥した後、UVランプで250nmのUV光を0.1mW/cm2×3分間照射して水溶性樹脂を硬化した後純水で3回繰り返し洗浄し、乾燥後、γ線を吸収線量10kGyで照射(ラジエ工業株式会社)して、本発明の生化学用容器(チューブ)を得た。
得られたチューブの表面には、上記水溶性樹脂で形成される層が厚さ100nmで形成されていた。なお、層の厚さは液体窒素中で破断したディッシュの破断面を電子顕微鏡(FEI社製 Quanta400F)を用いて測定した。
実施例1の工程から水溶性樹脂の分注、及びUVランプによる硬化、洗浄、乾燥までの工程を除き、チューブを得た。
樹脂材料としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、J246MA)を用い、射出成形の条件を以下のようにした以外は、実施例1と同様にしてチューブを得た。
射出成形を成形機:日精樹脂工業製 60t、シリンダー温度:225℃−220℃−195℃−185℃、射出圧力:680kg/cm2、金型冷却:30℃の条件で行なった。
樹脂材料としてメチルペンテン(TPX)樹脂(三井石油化学社製、RT−31)を用い、射出成形の条件を以下のようにした以外は、実施例1と同様にしてチューブを得た。
射出成形を成形機:日精樹脂工業製 60t、シリンダー温度:290℃−270℃−255℃−255℃、射出圧力:700kg/cm2、金型冷却:50℃の条件で行なった。
樹脂材料としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製 HF77)用い、射出成形の条件を以下のようにした以外は、実施例1と同様にしてチューブを得た。
射出成形を成形機:日精樹脂工業製 60t、シリンダー温度:265℃−265℃−240℃−190℃、射出圧力:700kg/cm2、金型冷却:60℃の条件で行なった。
得られたチューブについて、以下の評価を行なった。評価項目、内容及び得られた結果を表1に示す。
ラット新生児由来ミクログリア細胞を含む培養液を実施例及び各比較例で得られたチューブに各々10mLづつ分注し、1000rpm、5分間遠心分離操作をおこなった。
遠心分離後各チューブから上清を捨て、7mLの培養液で再分散し血球計算版にて細胞数をカウントした。
2.1ウシ血清イムノグロブリン吸着性
ウシ血清イムノグロブリンの吸着性を次のように評価した。ウシ血清イムノグロブリン(Bovine gamma globulin standard 23210 PIERCE社製)をヨウ素(125I)標識し、1.0E-7g/mLの濃度にリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、実施例及び各比較例で得られたチューブに各々1.0mLづつ分注し、37℃で1時間静置した。その後、0.05容量%のTween20含有リン酸バッファーで3回洗浄を繰り返し、各チューブ本体をγ線カウンターで測定した。
別途作成した検量線から各チューブ本体に残留したヨウ素(125I)標識ウシ血清イムノグロブリンの重量を求め、各溶液濃度の吸着率を算出した。
ウシ血清アルブミンの吸着性を次のように評価した。ウシ血清アルブミン(23209 PIERCE社製)を0.5μg/mLに希釈した溶液を、実施例及び各比較例で得られたチューブに各々5.0mLづつ分注し、37℃で1時間インキュベートした後0.05容量%tween20入りリン酸緩衝液pH7.4で3回洗浄した。
次にブロッキングとして3.0重量%スキムミルク入りリン酸緩衝液pH7.4溶液を5.5mLづつ分注し、37℃で1時間インキュベートした後0.05容量%tween20入りリン酸緩衝液pH7.4で3回洗浄した。次にペルオキシターゼ標識坑ウシ血清アルブミン抗体(55285 CAPPEL社製)をリン酸緩衝液pH7.4で1.0μg/mLに希釈した溶液を各チューブに5.0mLづつ分注し室温で30分インキュベートした後0.05容量%tween20入りリン酸緩衝液pH7.4で3回洗浄し、ぺルオキシターゼ用発色キット(SUMILON ML−1120T 住友ベークライト社製)を使用して発色させた後プレートリーダーを使用して450/630nmの吸光度を測定した。
別途作成した検量線から各チューブ本体に残留したペルオキシターゼ標識坑ウシ血清アルブミン抗体=ウシ血清アルブミンの重量を求め、吸着率を算出した。
ペルオキシターゼ標識アビジンの吸着性を次のように評価した。ペルオキシターゼ標識アビジン(43−4423 ZYMED社製)を0.5μg/mLに希釈した溶液を実施例及び各比較例で得られたチューブに各々5.0mLづつ分注し、室温で1時間静置した後、0.05%tween20入りリン酸緩衝液pH7.4で3回洗浄し、ぺルオキシターゼ用発色キット(SUMILON ML−1120T 住友ベークライト社製)を使用して発色させた後プレートリーダーを使用して450/630nmの吸光度を測定した。
別途作成した検量線から各チューブ本体に残留したペルオキシターゼ標識アビジンの重量を求め、吸着率を算出した。
実施例及び各比較例で得られたチューブを50℃の恒温槽に入れ、30日間保存後に上記2.3ペルオキシターゼ標識アビジン吸着性と同一の評価をおこない生体由来物質吸着制御性について劣化の有無を確認した。
実施例及び各比較例で得られたチューブに各々メタノール、エタノール、クロロホルム、を5.0mLづつ分注し、10分間放置した後、影響の有無を目視で判断した。
遠心強度は、遠心機を用いて評価した。
実施例及び各比較例で得られたチューブに各々純水1.5mLを分注し、遠心機(CF16RX形 日立多用途小型遠心機)にセットし、25℃、4640Gで10分間遠心した後で、目視により各チューブの変形、割れを確認した。
実施例及び各比較例で得られたチューブに各々純水1.5mLを分注し、−80℃のディープフリーザーに24時間静置した後、純水を廃棄し、目視によりチューブ本体の変形、割れを確認した。
一方、本発明の生化学用容器を用いなかった比較例1〜4においては、比較例1では細胞回収率が低く、生体由来物質の吸着性も認められた。
比較例2、3、4においては細胞回収率および生体由来物質の吸着性は実施例と同等であるが、比較例2、3では保存安定性試験において劣化が確認され、耐溶剤性、遠心強度、耐寒性については比較例2、3、4の何れも全ての項目を満足できるものはなかった。
Claims (3)
- 一端が開口されている容器部材を有する生化学用容器であって、前記容器部材はポリエステル樹脂又はポリエステル共重合体を含むものであり、更に前記容器部材内表面の少なくとも一部が側鎖に感光性の官能基を有する水溶性樹脂で被覆されていることを特徴とする生化学用容器。
- 前記水溶性樹脂がポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン及び、ポリエチレングリコールの中から選ばれるものである請求項1記載の生化学用容器。
- 遠心分離用に用いられる容器を含むものである請求項1又は2記載の生化学用容器。
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