JP2007199056A - エンドトキシン活性の測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
リムルステストにおけるエンドトキシンの活性を増加させることで、微量のエンドトキシンでも、簡便に検出できうる方法を提供する。
【解決手段】
リムルステストによるエンドトキシン活性の測定方法において、試料液中に陽イオン性水溶性高分子および/または非イオン性水溶性高分子を添加し、リムルステストにて測定する。
【選択図】なし

Description

本発明は細菌内毒素であるエンドトキシンの測定方法に関するものであり、詳しくはエンドトキシンをカブトガニ血球抽出液由来成分をもって定量する方法であるリムルステストに関するものである。
エンドトキシンとはグラム陰性菌の細胞外膜に存在するリポ多糖体であり、発熱、炎症さらにはショック死などの毒作用を引き起こす性質から、注射用薬剤などの医薬品類、医療用具や透析液の品質管理上においては、生菌数とともに重要な管理項目となっている。
エンドトキシンを測定する方法としては、ウサギ発熱性試験、鶏胚致死試験、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、ガスマススペクトル等があるが、最も鋭敏、簡便かつ迅速な方法としてカブトガニ血球抽出物由来成分(以下LALと略す)を利用したリムルステストが挙げられる。
リムルステストとはLALにエンドトキシンを加えると凝固反応が生じる性質を応用した試験法で、1988年には日本薬局方にエンドトキシン試験法として収載されている。
リムルステストには、ゲル化法(ゲル化転倒法)、比濁法(比濁時間分析法)、合成基質法(比色法)の3方式が現在広く実施されている。
ゲル化法はLALと試料を混合し、37℃で60分反応させた後180°転倒させ、ゲル化を判定する半定量法である。比濁法はLALと試料を混合し、37℃において反応中の透過光量変化を観測して割り出されるゲル化時間からエンドトキシンを定量する方法である。合成基質法はLALとエンドトキシンとの反応によって活性化される酵素により分解して色素を遊離する合成基質を用い、遊離色素量からエンドトキシンを定量する方法である。
上記のそれぞれの手法に対し、各種試薬(例えば生化学工業製「エンドスペシー(登録商標)」や和光純薬製「リムルス−ES−Test−Wako」等)が既に市販され、広く一般に使用されている。
血液透析治療において、透析液にエンドトキシンが存在すると、血液透析膜を通過し、患者の血液中に混入することが指摘されている。その結果、患者の発熱や低血圧を引き起こすのみならず、貧血や透析アミロイド症、動脈硬化を促進することが報告されている。
そのため、透析液の清浄化は、透析治療のなかで大きな流れとなっており、透析液エンドトキシン濃度を限りなく低くすることが望まれている。
ここで、エンドトキシンの濃度が低く、リムルステストで検出できない場合、パイロセップというエンドトキシン吸着担体を用いて、試料液を濃縮することが提案されている。しかしながら、パイロセップは、高価なうえに操作が煩雑であるという問題点があった。
また、エンドトキシンは疎水性を示し、医療用材料に吸着しやすい。このため、医療用材料からエンドトキシンを抽出し、その安全性を確認することも求められる。抽出液としては、従来はアルブミン水溶液や界面活性剤などが用いられていた。しかしながら、アルブミンは生物由来物質であるため、ハンドリング性に問題があった。また界面活性剤は、その濃度が高いと、リムルス反応に影響を及ぼすし、タンパク質が固定化されたような変性しやすい医療用材料では使用できないという問題点があった。
本発明は、前述した従来技術の問題点を直視し、リムルステストにおけるエンドトキシンの活性を増加させることで、微量のエンドトキシンでも検出できうる方法を提供するものである。
本発明は、以下に記す簡単な前処理を施すことでリムルステストにおけるエンドトキシンの活性を増加させることで、微量のエンドトキシンでも検出できうるところに特徴を有する。
(1)試料液中に水溶性高分子を添加してリムルステストにて測定することを特徴とするエンドトキシン活性の測定方法。
(2)前記水溶性高分子が、陽イオン性水溶性高分子および/または非イオン性水溶性高分子であることを特徴とする(1)に記載のエンドトキシン活性の測定方法。
(3)前記非イオン性水溶性高分子が水溶液中で放射線照射された非イオン系水溶性高分子であることを特徴とする(2)に記載のエンドトキシン活性の測定方法。
(4)前記非イオン性水溶性高分子が、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールであることを特徴とする(2)または(3)に記載のエンドトキシン活性の測定方法。
(5)前記水溶性高分子水溶液をエンドトキシシン抽出液として用いることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のエンドトキシン活性の測定方法。
本発明を用いることにより、簡便かつ安価にリムルステストで微量のエンドトキシンを検出することができる。
本発明で言う試料液とは、エンドトキシン活性測定の対象となる溶液であれば、特に限定されるものではなく、医薬品を溶解させた溶液や、医療用具からの抽出液、人工透析における透析液などが挙げられる。
試料は無菌的且つパイロジェンフリー(エンドトキシンフリー)下で採取する。ポリプロピレン製容器や軟質ガラス製容器はエンドトキシンを吸着するといわれており、試料と長期にわたって接触させることは避けた方がよく、250℃以上で乾熱処理した「パイレックス(PYREX)」(登録商標)等の硬質ガラスを用いることが好ましい。また、パイロジェンフリーのポリスチレン容器も好適に使用できる。
採取した試料をリムルステスト試薬に所定量分注するが、試料をリムルステスト試薬に添加する前に、本発明の方法、すなわち試料液中に水溶性高分子を添加してリムルステストにて測定する方法を実施することで、リムルステストにおけるエンドトキシン活性を増加させることが出来る。
なお、ここでいうところの水溶性高分子とは、水に可溶な高分子のことを言い、25℃の水に対する溶解度が好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上の高分子のことをいう。
エンドトキシンは分子量5000〜2万くらいの単量体が集合し、分子量が数十万から数百万のミセルを形成している。このミセルの大きさによって、リムルス反応に対する活性が異なってくることが知られている。
本発明の方法において、試料液中に水溶性高分子を添加することでリムルステストにおけるエンドトキシン活性が増加する機構についての詳細は不明であるが、おそらく以下の2つの理由が考えられる。1つ目は、水溶性高分子が、エンドトキシンミセル構造をより安定化させる効果であり、2つ目は、エンドトキシンミセルが高分子へ集積される効果ではないかと考えられる。つまり、希薄な濃度においても、局所的に高濃度になることで、リムルス反応が促進されるのではないかと考えられる。
ここで、添加する水溶性高分子としては、陽イオン性水溶性高分子、非イオン性水溶性高分子または、これらの混合物であることが好ましい。
まず、非イオン性水溶性高分子は、エンドトキシンミセルを包接するような配置をとり、構造安定化に寄与する可能性が考えられる。ここで、非イオン性水溶性の高分子の例としては、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、デキストランなどが挙げられるが、なかでもポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、またはポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールとの混合物が入手のしやすさなどの点から好適に用いられる。さらにはこれらの誘導体であってもよい。ここで言うところの誘導体とは、共重合体やグラフト重合体が挙げられる。特に限定されないが、誘導体としてはビニルピロリドンやエチレングリコールの繰り返し単位あたりのモル分率が50%以上あることが好ましい。
これらの非イオン性水溶性高分子の分子量としては、好ましくは3万以上、より好ましくは10万以上である。この理由としては、エンドトキシンミセルは、分子量が数十万から数百万であるために、その構造を安定化するためには、水溶性高分子のほうも、ある程度の分子量が必要であるためと考えられる。
また、非イオン性とはpH4.5およびpH9.5のいずれにおいても、電荷が1meq/g未満であることをいう。
次に、陽イオン性水溶性高分子の場合について述べる。エンドトキシンミセルはマイナス電荷を帯びているため、静電相互作用により、陽イオン性水溶性高分子周囲に集積するのではないかと考えられる。ただし、陽イオン性が強すぎると、リムルス反応に影響を及ぼす。したがって、陽イオン性の水溶性高分子を添加した後、pH4.5における試料液の電荷は、好ましくは2meq/ml以下、より好ましくは0.02meq/ml以下である。陽イオン性水溶性高分子の分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは10万以上である。陽イオン性水溶性高分子の場合、非イオン性水溶性高分子よりも分子量が小さくてもよい。この理由としては、非イオン性水溶性高分子の場合と異なり、エンドトキシンミセルの構造を安定化させる必要はなく、エンドトキシンミセル同士を集積させるバインダーの役目を果たすだけでよいからではないかと考えられる。陽イオン性水溶性高分子の例としては、ポリエチレンイミンやポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジメチルアミノエチルデキストラン、イミダゾール基などを含有した水溶性の高分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、陽イオン性とは、pH4.5において、電荷が1meq/g以上であることをいう。
さらに、陽イオン性の水溶性高分子および、次に述べる放射線照射された非イオン性水溶性高分子は、エンドトキシンミセルを集積する役目を果たしているのではないかと考えられる。
さらに、非イオン性水溶性高分子は放射線照射して用いることが好ましい。ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの非イオン性水溶性高分子は、水溶液中で放射線照射されると、架橋反応が進行し、3次元網目構造を形成する。従って、エンドトキシンミセルが、このような網目構造にトラップされることで、より集積されやすくなるのではないかと考えられる。
ただし、3次元網目構造が進行しすぎると、ゲル化し、水に不溶となるため、本発明の方法には使用できない。したがって、非イオン性水溶性高分子水溶液を放射線照射する場合には、ゲル化が起きないように注意しなければならない。ゲル化が起きるかどうかは、放射線照射線量、高分子の種類、高分子の分子量、水溶液濃度などに依存するため、一概には規定できないが、放射線照射線量は、好ましくは15kGy以上、50kGy以下、高分子の分子量は、好ましくは200万以下、水溶液濃度は、好ましくは0.2重量%以下である。
また、これらの水溶性高分子を試料中に添加し、エンドトキシン活性を増加させるためには、添加後よく撹拌し、ある程度の時間をおくことが好ましい。これは、エンドトキシンミセルの構造が安定化するまで、もしくは、エンドトキシンミセルが集積するまで、時間がかかるため考えられる。放置する時間としては、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは12時間以上である。
さらには、医療用材料に吸着したエンドトキシンの抽出が困難な場合、本発明の方法を用いることができる。例えば、医療用材料をポリビニルピロリドン水溶液に浸漬することで、医療用材料に吸着したエンドトキシンが上記水溶液中に遊離してくる。これは、上記で述べたように上記水溶液中ではエンドトキシンの構造が安定化されるために、吸着したエンドトキシンが脱着しやすいことによると考えられる。
リムルステストの方法としては、ゲル化転倒法、比濁法、比色法等、現在実施されている方式のいずれも使用可能であり、既知の方法で測定でき、特に限定されない。リムルステスト試薬は和光純薬製「リムルス−ES−Test−Wako」や生化学工業製「エンドスペシー」など市販のものを使うことができる。測定試料を所定量分注しリムルステスト試薬に添加した後、試薬と試料をよく攪拌し速やかに測定を開始するが、攪拌後の放置が長いと試料とリムルス試薬との反応が進み正確な測定ができなくなるおそれがあるので、数十秒内で開始することが望ましい。当然のことながら、これらの処理は無菌且つパイロジェンフリー下で実施する。
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.エンドトキシン水溶液の調製
試料液をパイロジェンフリーの注射用水(日本薬局方注射用水:大塚製薬、以下同じ)に溶解したものを順次パイロジェンフリーの注射用水で希釈し、0.12EU/mlの濃度に調整した。
2.水溶性高分子水溶液の調整
水溶性高分子をパイロジェンフリーの注射用水(日本薬局方注射用水:大塚製薬、以下同じ)に溶解し、0.1重量%の水溶液に調整した。その後、「ゼータポア(登録商標)」(0.2μm,キュノ社製)フィルターに通液して、エンドトキシンをカットした。
3.エンドトキシンの測定方法
リムルステスト用チューブ(透析液用リムルス試薬0.2ml用:和光純薬)に測定する試料液を0.2ml添加し、卓上ラボミキサーにて5秒間撹拌して試薬を溶解後、速やかにトキシノメーター(ET―301:和光純薬)にセットし、比濁法にてエンドトキシン活性の測定を行った。
[実施例1]
前記2.の水溶性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)を用いて、濃度を0.1重量%とした。該溶液と前記1.で作成したエンドトキシン水溶液を1:1(容積比)で混合させた後、15時間室温にて静置した。その後、エンドトキシンの測定を行った。その結果、エンドトキシン濃度は、0.09EU/mlであった。すなわち、比較例1におけるパイロジェンフリー水を用いた場合に比べ、エンドトキシン濃度の測定値が1.5倍と、リムルステストによるエンドトキシンの活性を1.5倍に増加させることができた。
また、このとき、上記のポリビニルピロリドン水溶液をパイロジェンフリー水に添加し、上記と同様の操作を行った結果、エンドトキシンは、検出されず、リムルス反応に対する影響も認められなかった。
[実施例2]
前記2.の水溶性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)を用いて、濃度を0.1重量%とした。水溶液を調整後、25kGyの放射線を照射した。該溶液と前記1.で作成したエンドトキシン水溶液を1:1(容積比)で混合させた後、15時間室温にて静置した。その後、エンドトキシンの測定を行った。その結果、エンドトキシン濃度は、0.12EU/mlであった。すなわち、比較例1におけるパイロジェンフリー水を用いた場合に比べ、エンドトキシン濃度の測定値が2倍と、リムルステストによるエンドトキシンの活性を2倍に増加させることができた。
また、このとき、上記の放射線照射ポリビニルピロリドン水溶液をパイロジェンフリー水に添加し、上記と同様の操作を行った結果、エンドトキシンは検出されず、リムルス反応に対する影響も認められなかった。
[実施例3]
前記2.の水溶性高分子としてポリエチレンイミン(和光純薬社製、分子量7万)を用いて、濃度を0.001重量%とした。該溶液と前記1.で作成したエンドトキシン水溶液を1:1(容積比)で混合させた後、15時間室温にて静置した。その後、エンドトキシンの測定を行った。その結果、エンドトキシン濃度は、0.08EU/mlであった。すなわち、比較例1におけるパイロジェンフリー水を用いた場合に比べ、エンドトキシン濃度の測定値が1.3倍と、リムルステストによるエンドトキシンの活性を1.3倍に増加させることができた。
また、このとき、上記のポリエチレンイミン水溶液をパイロジェンフリー水に添加し、上記と同様の操作を行った結果、エンドトキシンは検出されず、リムルス反応に対する影響も認められなかった。
[比較例1]
ポリビニルピロリドン水溶液の代わりに、パイロジェンフリー水と前記1.で作成したエンドトキシン水溶液を1:1(容積比)で混合させた以外は、実施例1と同様にして行った。その結果、エンドトキシン濃度は、0.06EU/mlであった。
[比較例2]
ポリビニルピロリドンの代わりに、ドデシル硫酸ナトリウムを用いて、濃度を0.01重量%とした以外は、実施例1と同様にして行った。その結果、エンドトキシン濃度は、0.03EU/mlであった。すなわち、リムルステストによるエンドトキシンの活性は0.5倍に減少した。これは、ドデシル硫酸ナトリウムは、界面活性作用があるため、エンドトキシンのミセル構造を不安定化させたのではないかと考えられる。
また、このとき、上記のドデシル硫酸ナトリウム水溶液をパイロジェンフリー水に添加し、上記と同様の操作を行った結果、エンドトキシンは検出されず、リムルス反応に対する影響も認められなかった。

Claims (5)

  1. 試料液中に水溶性高分子を添加してリムルステストにて測定することを特徴とするエンドトキシン活性の測定方法。
  2. 前記水溶性高分子が、陽イオン性水溶性高分子および/または非イオン性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載のエンドトキシン活性の測定方法。
  3. 前記非イオン性水溶性高分子が水溶液中で放射線照射された非イオン系水溶性高分子であることを特徴とする請求項2に記載のエンドトキシン活性の測定方法。
  4. 前記非イオン性水溶性高分子が、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項2または3に記載のエンドトキシン活性の測定方法。
  5. 前記水溶性高分子水溶液をエンドトキシシン抽出液として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエンドトキシン活性の測定方法。
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