JP2008185202A - 可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を持った状態で固着した場合であっても、可及的に他の変速比への変速を可能にする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】動力源と出力部材との間で複数の変速比を設定可能な2つの動力伝達経路と、圧力流体が相互に授受可能に連通された可変容量型流体圧ポンプモータとを備えた可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置において、前記動力伝達経路に作用するトルクを低減するリリーフ弁と、前記可変容量型流体圧ポンプモータの異常を検出するポンプモータ異常検出手段(ステップS2)と、前記可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着した場合に、異常側の動力伝達経路に作用するトルクを低減する異常時伝達トルク低減手段(ステップS3〜S7)とを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】動力源と出力部材との間で複数の変速比を設定可能な2つの動力伝達経路と、圧力流体が相互に授受可能に連通された可変容量型流体圧ポンプモータとを備えた可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置において、前記動力伝達経路に作用するトルクを低減するリリーフ弁と、前記可変容量型流体圧ポンプモータの異常を検出するポンプモータ異常検出手段(ステップS2)と、前記可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着した場合に、異常側の動力伝達経路に作用するトルクを低減する異常時伝達トルク低減手段(ステップS3〜S7)とを備えている。
【選択図】図1
Description
この発明は、動力の伝達状態を可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積に応じて変更できる少なくとも2つの動力伝達経路を備え、それらの押出容積を最大および最小ならびにその中間の値に設定することにより適宜に変速することのできる可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置に関するものである。
この種の変速機が特許文献1に記載されている。その構成を簡単に説明すると、一対の遊星歯車機構のそれぞれにおける反力要素に可変容量型流体圧ポンプモータが連結され、各可変容量型流体圧ポンプモータの吐出口同士、および吸入口同士が互いに連結されて閉回路が形成されている。また、各遊星歯車機構における入力要素にはエンジンなどの動力源が出力した動力が入力されるように構成されている。さらに、各遊星歯車機構の出力要素と一体の中間軸上には、いわゆる固定段を設定するための駆動ギヤが配置され、それぞれの駆動ギヤに噛み合っている従動ギヤが出力軸上に配置されている。そして、これらの駆動ギヤと従動ギヤとからなる各ギヤ対をトルクの伝達可能な状態とトルクを伝達しない状態とに切り替える同期連結機構(いわゆるシンクロ)が設けられている。
したがって、いずれかの可変容量型流体圧ポンプモータをロックして前記反力要素を固定すれば、動力源が出力した動力が、その反力要素を有する遊星歯車機構を介して一方の中間軸に伝達され、さらにその中間軸に対してシンクロによって連結されているギヤ対を介して出力軸に動力が伝達される。その場合の変速比は、動力の伝達に関与している前記ギヤ対のギヤ比に応じた変速比となる。
この場合の可変容量型流体圧ポンプモータのロックは、他方の可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積をゼロすなわち最小にすることにより設定される。すなわち、各オイルポンプモータは閉回路によって連通されているので、他方のオイルポンプモータの押出容積をゼロにすれば、圧油の流動が生じなくなるので、一方のオイルポンプモータの押出容積を最大にするなど、ゼロより大きい押出容積とすることにより、その一方のオイルポンプモータがロックされ、その回転が阻止される。
また、各可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積をゼロより大きくするとともに、一方の可変容量型流体圧ポンプモータ側のシンクロによって所定のギヤ対をトルク伝達可能な状態とし、かつ他方の可変容量型流体圧ポンプモータ側のシンクロによって他のギヤ対をトルク伝達可能な状態にすると、各ギヤ対のギヤ比に応じて決まる変速比の中間の値の変速比が設定される。すなわち、一方の可変容量型流体圧ポンプモータが圧油を発生させ、これが他方の可変容量型流体圧ポンプモータに供給されてこれがモータとして動作し、その動力が他方のギヤ対を介して出力軸に伝達される。その結果、出力軸には、このような流体を介して伝達された動力と、一方の可変容量型流体圧ポンプモータを介して機械的に伝達された動力とを合成した動力が現れる。そのうちの流体を介した動力は、各可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積を連続的に変化させることにより連続的に変化させることが可能であるから、結局、変速機の全体としての変速比を連続的に、すなわち無段階に設定することができる。
上記の特許文献1に記載されている変速機では、いずれかのギヤ対のギヤ比に応じた変速比(いわゆる固定変速比、固定段)を超えて変速する場合、シンクロを切り替え動作させることにより、動力の伝達に関与するギヤ対を変更することになる。より具体的には、一方の中間軸側のシンクロをいわゆる係合状態に維持したまま、他方の中間軸側のシンクロを一旦ニュートラル位置に移動させ、かつ他のギヤ対側に移動させてそのギヤによって動力を伝達するいわゆる係合状態に切り替える。その切り替えの過程では、一旦、固定変速比を設定し、その状態でトルクの伝達に関与していない方のシンクロを切り替えることになる。すなわち、押出容積がゼロの可変容量型流体圧ポンプモータに繋がっているシンクロを切り替え動作させることになる。
このような変速操作を行う場合の固定変速比は、その固定変速比を設定するためにギヤ対に連結されている一方の可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積をゼロより大きくし、かつ他方の可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積をゼロにすることにより、前記一方の可変容量型流体圧ポンプモータにおける圧油の給排を阻止して設定する。しかしながら、前記他方の可変容量型流体圧ポンプモータに、所定量の押出容積すなわちゼロでない所定の押出容積を持った状態で固着する異常が生じた場合、前記他方の可変容量型流体圧ポンプモータに繋がっているシンクロを切り替え動作させることが困難になり、シンクロを切り替えることによって設定される他の固定変速比への変速ができなくなる可能性があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、可変容量型流体圧ポンプモータを使用した無段変速機において、可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を持った状態で固着した場合であっても、可及的に他の変速比への変速を可能にする制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源と出力部材との間でそれぞれ互いに異なる複数の変速比を選択的に設定可能な少なくとも2つの動力伝達経路と、それら各動力伝達経路を介して伝達されるトルクを押出容積に応じて変化させるように前記各動力伝達経路毎に設けられかつ圧力流体が相互に授受可能に連通された可変容量型流体圧ポンプモータとを備え、それら各可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積を最大および最小ならびにその中間の容積のいずれかに設定して変速比を設定する可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置において、前記各動力伝達経路に作用するトルクをそれぞれ低減するリリーフ手段と、前記各可変容量型流体圧ポンプモータの異常を検出するポンプモータ異常検出手段と、前記ポンプモータ異常検出手段により、いずれか一方の前記可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着する異常が検出された場合に、前記リリーフ手段を制御して前記異常が検出された可変容量型流体圧ポンプモータが設けられている前記動力伝達経路に作用する伝達トルクを低減する異常時伝達トルク低減手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記各可変容量型流体圧ポンプモータが、それぞれの吸入口同士を結ぶ第1流路と、それぞれの吐出口同士を結ぶ第2流路とにより互いに連通されているとともに、前記リリーフ手段が、前記第1流路と第2流路との間に設けられかつ前記第1流路の圧力が設定圧以上高い場合に開いて排圧する調圧可能な第1リリーフ弁と、前記第1流路と第2流路との間に設けられかつ前記第2流路の圧力が設定圧以上高い場合に開いて排圧する調圧可能な第2リリーフ弁と、これらのリリーフ弁の少なくともいずれか一方のリリーフ弁の調圧値を制御する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記異常時伝達トルク低減手段が、前記第1リリーフ弁および第2リリーフ弁の少なくともいずれか一方を開くことにより前記伝達トルクを低減する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記異常時伝達トルク低減手段により前記伝達トルクを低減する場合に、その伝達トルクを低減する制御に協調させて前記動力源の出力トルクを低減する動力源トルク低減手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、各動力伝達経路での伝達トルクが、それぞれの動力伝達経路に設けられている可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積に応じて変化するので、一方の動力伝達経路で伝達されるトルクをゼロとし、かつ他方の動力伝達経路のみで動力を伝達するようにすれば、その他方の動力伝達経路で決まる変速比が設定される。これに加えて、各可変容量型流体圧ポンプモータ同士が圧力流体を相互に授受できるように連通されているので、いずれか一方の可変容量型流体圧ポンプモータをポンプとして機能させることにより、その一方の可変容量型流体圧ポンプモータが設けられている動力伝達経路を介していわゆる機械的にトルクが出力部材に伝達されるとともに、他方の可変容量型流体圧ポンプモータがモータとして機能して他方の動力伝達経路を介して出力部材にトルクが伝達される。すなわち、流体を介した動力伝達が並行して生じ、しかも流体を介して伝達されるトルクは連続的に変化させることができるので、変速機の全体としてはいわゆる無段変速を実現することができる。
そして、一方の動力伝達経路を介していわゆる機械的にトルクを伝達することにより設定される変速比は、その一方の動力伝達経路で選択的に切り替えられて設定される変速比によって決まるが、その変速比の切り替えは、一方の動力伝達経路で伝達されるトルクをゼロにした状態で行われる。このとき、その一方の動力伝達経路に設けられている可変容量型流体圧ポンプモータが、所定量の押出容積すなわちゼロでない所定の押出容積を持った状態で固着してしまうと、その一方の動力伝達経路における変速比の切り替えが困難になるが、この請求項1の発明では、可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着した場合に、その固着した可変容量型流体圧ポンプモータが設けられている動力伝達経路に作用する伝達トルクが、例えばゼロに低減される。したがって、可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着する異常が生じた場合であっても、異常が生じた側の動力伝達経路における変速比の切り替えを可能にし、それ以降の変速を行うことができる。そのため、上記のような異常に起因する変速機の機能の低下を可及的に抑制することができる。
また、請求項2および3の発明によれば、各可変容量型流体圧ポンプモータの吸入口同士を連通させる第1流路と吐出口同士を連通させる第2流路との間に、第1流路の圧力を排圧する第1リリーフ弁、および第2流路の圧力を排圧する第2リリーフ弁が設けられる。そして、可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着する異常が生じた場合に、上記の第1および第2リリーフ弁が、あるいは異常が生じた可変容量型流体圧ポンプモータへ圧力流体を供給している流路の圧力を排圧する側のリリーフ弁が開かれる。そのため、上述した異常時の伝達トルクを低減する制御を、上記のようにリリーフ弁を開くことにより容易に行うことができる。また、この種のリリーフ弁は通常設けられるものであるから、装置の構成を複雑化することなく、いわゆるフェールセーフのための制御を行うことができる。
そして、請求項4の発明によれば、上述した異常時の伝達トルクを低減する制御が実行される場合、その制御に協調して動力源のトルクダウン制御が行われる。すなわち、伝達トルクの低減の開始および終了(復帰)に合わせて、動力源の出力トルクの低減が開始および終了(復帰)される。そのため、例えば、伝達トルクを低減するために異常側の動力伝達経路へのトルクの伝達を遮断した場合などのように、伝達トルクを低減することにより、動力源に対する負荷が低減されて動力源の回転が急増してしまういわゆる吹き上がりを回避することができる。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機について説明すると、この発明で対象とする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機は、少なくとも2つの動力伝達経路を備えており、それら両方の動力伝達経路を介して、動力源から出力部材にトルクを伝達できるように構成され、その結果、動力源と出力部材との回転数の比である変速比を連続的に変化させることのできる変速機である。より具体的には、各動力伝達経路は、ポンプおよびモータのそれぞれとして機能する可変容量型流体圧ポンプモータを備えており、この押出容積に応じたトルクを伝達するように構成され、さらにそれぞれの可変容量型流体圧ポンプモータが圧力流体を相互に授受できるように連通されている。したがって、一方の可変容量型流体圧ポンプモータがポンプとして機能することにより、その押出容積に応じたトルクが動力源から出力部材に伝達され、同時に、一方の可変容量型流体圧ポンプモータから他方の可変容量型流体圧ポンプモータに圧力流体が供給されて他方の可変容量型流体圧ポンプモータがモータとして機能する。すなわち、圧力流体を介した動力伝達が、並行して行われる。そのトルクが他方の動力伝達経路を介して出力部材に伝達される。その結果、出力部材に伝達されるトルクは、各動力伝達経路を介して伝達されるトルクの合計になり、しかも圧力流体を介して伝達されるトルクは、各押出容積に応じて変化するので、結局は、変速比が連続的に変化することになる。
各動力伝達経路は、それぞれ互いに変速比の異なるギヤ対や巻き掛け伝動機構などの伝動機構を備えることができ、一方の動力伝達経路のみを介して出力部材にトルクを伝達する場合には、変速機の全体としての変速比は、その動力伝達経路における伝動機構の変速比で決まる。このような変速比を仮に固定変速比と称すると、固定変速比を設定している状態では、圧力流体を介した動力の伝達が生じないので、動力の損失が生じにくく、効率のよい伝動状態となる。なお、いずれかの伝動機構のみをトルク伝達に関与させるようにするために、クラッチ機構などの切換機構を各伝動機構に含ませることが好ましく、あるいは動力源もしくは出力部材と伝動機構との間に切換機構を設けることが好ましい。
この発明で対象とする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機は、圧力流体を介して動力を伝達するように構成されているので、ハイドロスタティックトランスミッション(HST)として構成した変速機であってもよいが、上述したように機械的な動力伝達によって変速比を設定する機能を兼ね備えたハイドロスタティック・メカニカル・トランスミッション(HMT)として構成されたものであることが好ましい。そのメカニカルトランスミッションの部分は、必要に応じて適宜の構成とすることができ、常時噛み合っているギヤ対をクラッチ機構もしくは同期連結機構によって選択する構成の機構や、複数の遊星歯車機構もしくは複合遊星歯車機構によって複数の変速比を設定できる構成などを採用することができる。また、可変容量型流体圧ポンプモータは、動力源と出力部材との間に直列に介在させる構成以外に、反力手段として可変容量型流体圧ポンプモータを用いる構成とすることもできる。
つぎに、この発明で対象とする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の構成を具体例に基づいて説明する。図11に示す例は、車両用の変速機として構成した例であり、差動機構を動力分配機構として使用するとともに、伝動機構として複数のギヤ対を使用し、したがって可変容量型流体圧ポンプモータが反力機構となっている例であって、流体を介さずにトルクを伝達して設定できるいわゆる固定変速比として四つの前進段および一つの後進段を設定するように構成した例である。すなわち、図11において、動力源(E/G)1に入力部材2が連結されており、この入力部材2から第1遊星歯車機構3および第2遊星歯車機構4にトルクを伝達するように構成されている。
動力源1は、内燃機関や電気モータあるいはこれらを組み合わせた構成など、車両に使用されている一般的な動力源であってよい。また、この動力源1と入力部材2との間にダンパーやクラッチ、トルクコンバータなどの適宜の伝動手段を介在させてもよい。
第1遊星歯車機構3は、入力部材2と同一軸線上に配置され、第2遊星歯車機構4が第1遊星歯車機構3の半径方向で外側に離隔し、それぞれの中心軸線を平行にした状態で並列に配置されている。これらの遊星歯車機構3,4は、シングルピニオン型やダブルピニオン型などの適宜の形式の遊星歯車機構を用いることができる。図11に示す例はシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成した例であり、外歯歯車であるサンギヤ3S,4Sと、そのサンギヤ3S,4Sと同心円状に配置された、内歯歯車であるリングギヤ3R,4Rと、これらサンギヤ3S,4Sとリングギヤ3R,4Rとに噛み合っているピニオンギヤを自転自在かつ公転自在に保持したキャリア3C,4Cとを備えている。そして、第1遊星歯車機構3におけるリングギヤ3Rに前記入力部材2が連結され、このリングギヤ3Rが入力要素となっている。
また、入力部材2にはカウンタドライブギヤ5が取り付けられており、このカウンタドライブギヤ5にアイドルギヤ6が噛み合っているとともに、そのアイドルギヤ6にカウンタドリブンギヤ7が噛み合っている。このカウンタドリブンギヤ7は、前記第2遊星歯車機構4と同一軸線上に配置され、かつ第2遊星歯車機構4のリングギヤ4Rに、一体となって回転するように連結されている。したがって、第2遊星歯車機構4においては、そのリングギヤ4Rが入力要素となっている。各遊星歯車機構3,4の入力要素であるリングギヤ3R,4Rは、カウンタギヤ対がアイドルギヤ6を備えた構成であるから、同方向に回転するようになっている。
第1遊星歯車機構3におけるキャリア3Cは出力要素となっており、そのキャリア3Cに第1中間軸8が、一体になって回転するように連結されている。この第1中間軸8は中空軸であって、その内部をモータ軸9が回転自在に挿入されており、このモータ軸9の一端部が、第1遊星歯車機構3における反力要素であるサンギヤ3Sに、一体となって回転するように連結されている。
第2遊星歯車機構4も同様な構成であって、そのキャリア4Cが出力要素となっており、そのキャリア4Cに第2中間軸10が、一体になって回転するように連結されている。この第2中間軸10は中空軸であって、その内部をモータ軸11が回転自在に挿入されており、このモータ軸11の一端部が、第2遊星歯車機構4における反力要素であるサンギヤ4Sに、一体となって回転するように連結されている。
上記のモータ軸9の他方の端部が可変容量型ポンプモータ12の出力軸に連結されている。この可変容量型ポンプモータ12は、斜軸ポンプや斜板ポンプあるいはラジアルピストンポンプなどの吐出容量すなわち押出容積を変更可能な流体圧(油圧)ポンプであって、その出力軸にトルクを与えて回転させることによりポンプとして機能して圧力流体(圧油)を吐出し、また吐出口もしくは吸入口から圧力流体を供給することにより、モータとして機能するようになっている。なお、この可変容量型ポンプモータ12を以下の説明では、第1ポンプモータ12と記し、図にはPM1と表示する。
また、モータ軸11の他方の端部が、可変容量型ポンプモータ13の出力軸に連結されている。この可変容量型ポンプモータ13は、前記モータ軸9側の第1ポンプモータ12と同様の構成のものであり、したがって斜軸ポンプや斜板ポンプあるいはラジアルピストンポンプなどの吐出容量すなわち押出容積を変更可能な流体圧(油圧)ポンプを採用することができる。なお、この可変容量型ポンプモータ13を以下の説明では、第2ポンプモータ13と記し、図にはPM2と表示する。
各ポンプモータ12,13は、圧力流体である圧油を相互に受け渡すことができるように、油路14,15によって連通されている。すなわち、それぞれの吸入ポート(吸入口)12S,13S同士が、この発明の第1流路に相当する油路14によって連通され、また吐出ポート(吐出口)12D,13D同士が、この発明の第2流路に相当する油路15によって連通されている。したがって各油路14,15によって閉回路が形成されている。この閉回路での油圧制御のための機構については後述する。
上記の各中間軸8,10と平行に、この発明の出力部材に相当する出力軸16が配置されている。そして、この出力軸16と各中間軸8,10との間のそれぞれに、所定の変速比を設定する伝動機構が設けられている。この伝動機構としては、固定された回転数比(変速比)で動力を伝達する機構に限らず、変速比が可変な機構を採用することができ、図11に示す例では、固定された変速比で動力を伝達する複数のギヤ対17,18,19,20が採用されている。
具体的に説明すると、前記第1中間軸8には、第1遊星歯車機構3側から順に、第4速ギヤ対17の第4速駆動ギヤ17Aと第2速ギヤ対18の第2速駆動ギヤ18Aとが配置されており、第4速駆動ギヤ17Aと第2速駆動ギヤ18Aとは第1中間軸8に対して回転自在に嵌合している。その第4速駆動ギヤ17Aに噛み合っている第4速ギヤ対17の第4速従動ギヤ17Bと、第2速駆動ギヤ18Aに噛み合っている第2速ギヤ対18の第2速従動ギヤ18Bとが、出力軸16に一体回転するように取り付けられている。
さらに、上記の第4速従動ギヤ17Bに噛み合っている第3速ギヤ対19の第3速駆動ギヤ19Aと、第2速従動ギヤ18Bに噛み合っている第1速ギヤ対20の第1速駆動ギヤ20Aとが、第2中間軸10に回転自在に嵌合させられている。したがって、第4速従動ギヤ17Bが第3速ギヤ対19の第3速従動ギヤを兼ねており、また第2速従動ギヤ18Bが第1速ギヤ対20の第1速従動ギヤを兼ねている。ここで、各ギヤ対17,18,19,20の回転数比もしくは変速比(それぞれの駆動ギヤの歯数に対する従動ギヤの歯数の比)について説明すると、その回転数比は、第1速用ギヤ対20、第2速用ギヤ対18、第3速用ギヤ対19、第4速用ギヤ対17の順に小さくなるように構成されている。
さらに、発進用ギヤ対21が設けられている。この発進用ギヤ対21は、第1速用ギヤ対20と併せて出力軸16に動力を伝達することにより、発進時の駆動力を必要十分に大きくするためのものであって、前記第1ポンプモータ12側のモータ軸9に取り付けられた発進駆動ギヤ21Aと、出力軸16に回転自在に取り付けられた発進従動ギヤ21Bとを備えている。
上述した各ギヤ対17,18,19,20,21を、いずれかの中間軸8,10と出力軸16との間でトルク伝達可能な状態とするためのクラッチ機構が設けられている。このクラッチ機構は、要は、選択的にトルクを伝達する機構であって、従来知られているドグクラッチ機構や同期連結機構(シンクロナイザー)などの機構を採用することができ、図11にはシンクロナイザーを採用した例を示してある。
シンクロナイザーは、基本的には、回転軸と共に回転するスリーブと、その回転軸に対して相対回転する他の回転部材に設けられたスプラインと、前記スリーブに押されて他の回転部材側に移動するシンクロナイザーリングとを有している。そして、スリーブを他の回転部材のスプライン側に移動させる過程でシンクロナイザーリングが回転部材に次第に摩擦接触することにより回転軸と回転部材とを同期させ、その状態でスリーブがスプラインに係合することにより、回転軸と回転部材とを連結するように構成されている。前記出力軸16上で、発進従動ギヤ21Bに隣接する位置に第1のシンクロナイザー(以下、第1シンクロと記す)22が設けられている。この第1シンクロ22は、そのスリーブを図11の左側に移動させることにより、発進従動ギヤ21Bを出力軸16に連結し、発進用ギヤ対21がモータ軸9と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
また、前記第2中間軸10上で、第3速駆動ギヤ19Aと第1速駆動ギヤ20Aとの間に第2のシンクロナイザー(以下、第2シンクロと記す)23が設けられている。この第2シンクロ23は、そのスリーブを図11の左側に移動させることにより、第1速駆動ギヤ20Aを第2中間軸10に連結し、第1速用ギヤ対20が第2中間軸10と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。また、反対にそのスリーブを図11の右側に移動させることにより、第3速駆動ギヤ19Aを第2中間軸10に連結し、第3速用ギヤ対19が第2中間軸10と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
さらに、前記第1中間軸8上で、第2速駆動ギヤ18Aと第4速駆動ギヤ17Aとの間に第3のシンクロナイザー(以下、第3シンクロと記す)24が設けられている。この第3シンクロ24は、そのスリーブを図11の左側に移動させることにより、第2速駆動ギヤ18Aを第1中間軸8に連結し、第2速用ギヤ対18が第1中間軸8と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。また、反対にそのスリーブを図11の右側に移動させることにより、第4速駆動ギヤ17Aを第1中間軸8に連結し、第4速用ギヤ対17が第1中間軸8と出力軸16との間でトルクを伝達するように構成されている。
またさらに、第2ポンプモータ13側のモータ軸11上で、第2中間軸10の軸端に隣接する位置に後進用のシンクロナイザー(以下、Rシンクロと記す)25が設けられている。このRシンクロ25は、そのスリーブを図11の右側に移動させることにより、モータ軸11と第2中間軸10、すなわち第2遊星歯車機構4におけるサンギヤ4Sとキャリア4Cとを連結して、第2遊星歯車機構4の全体を一体回転させるように構成されている。
上記の各シンクロ22,23,24,25は、手動操作によって切り替え動作するように構成することができるが、これに替えていわゆる自動制御するように構成することもできる。その場合は、例えば前述したスリーブを軸線方向に移動させる適宜のアクチュエータ(図示せず)を設け、そのアクチュエータを電気的に制御するように構成すればよい。
このように、図11に示す可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機は、動力源1が出力したトルクが、いずれかの中間軸8,10もしくはモータ軸9,11を介して出力軸16に伝達されるように構成されている。すなわち、動力源1から第1中間軸8もしくはモータ軸9を経由して出力軸16に至る動力伝達経路と、動力源1から第2中間軸10もしくはモータ軸11を経由して出力軸16に至る動力伝達経路との、動力源1と出力軸16との間でそれぞれ互いに異なる複数の変速比を、各シンクロ22,23,24,25の切り替え動作によって選択的に設定可能な2つの動力伝達経路が構成されている。そして、出力軸16には、歯車機構あるいはチェーンなどの巻き掛け伝動機構などの伝動手段26を介してデファレンシャル27が連結され、ここから左右の車軸28に動力を出力するようになっている。
さらに、変速機の動作状態を検出するためのセンサが設けられている。具体的には、前述した入力部材2もしくはこれと一体のカウンタドライブギヤ5の回転数Ninを検出する入力回転数センサ29、前記車軸28の回転数Noutを検出する出力回転数センサ30、第1ポンプモータ12の回転数NPM1を検出する回転数センサ31、第2ポンプモータ13の回転数NPM2を検出する回転数センサ32などが設けられている。また、各ポンプモータ12,13には、吐出容量が変更される際に押出容積の変化に応じて動作する部材のストロークを検出するストロークセンサ33,34がそれぞれ設けられている。
つぎに、上記の各ポンプモータ12,13を制御するための流体圧回路(油圧回路)について説明する。各ポンプモータ12,13を連通させている前記閉回路14,15には流体(具体的にはオイル)を補給するためのチャージポンプ(ブーストポンプと称されることもある)35が設けられている。このチャージポンプ35は、上記の閉回路からの漏れなどによるオイルの不足を補うためのものであって、前述した動力源1や図示しないモータなどによって駆動されて、オイルパン36からオイルを汲み上げて閉回路に供給するようになっている。
そのチャージポンプ35の吐出口は、前記閉回路における油路14と油路15とにそれぞれチェック弁37,38を介して連通されている。なお、これらのチェック弁37,38は、チャージポンプ35からの吐出方向に開き、これとは反対方向に閉じるように構成されている。さらに、チャージポンプ35の吐出圧を調整するためのリリーフ弁39が、チャージポンプ35の吐出口に連通されている。このリリーフ弁39は、スプリングによる弾性力とパイロット圧もしくはソレノイドによる押圧力との和より高い圧力が作用した場合に開いてオイルをオイルパン36に排出するように構成されており、したがってチャージポンプ35の吐出圧をパイロット圧に応じた圧力に設定するように構成されている。
さらに、第1ポンプモータ12の吸入ポート12Sと油路15との間に、この発明の第1リリーフ弁に相当するリリーフ弁40が設けられている。すなわち、第1ポンプモータ12と並列に、各油路14,15を連通させるようにリリーフ弁40が設けられている。このリリーフ弁40は、第1ポンプモータ12の吸入ポート12S、または第2ポンプモータ13の吸入ポート13Sから圧油を吐出する場合に、その吐出圧を予め設定した圧力に維持するように構成されている。言い換えれば、リリーフ弁40は、油路14の圧力が予め設定した圧力以上高い場合に開いて排圧するように構成されている。また、第2ポンプモータ13の吐出ポート13Dと油路14との間に、リリーフ弁41が設けられている。すなわち、第2ポンプモータ13と並列に、各油路14,15を連通させるようにリリーフ弁41が設けられている。このリリーフ弁41は、第2ポンプモータ13の吐出ポート13D、または第1ポンプモータ12の吐出ポート12Dから圧油を吐出する場合に、その吐出圧を予め設定した圧力に維持するように構成されている。言い換えれば、リリーフ弁41は、油路15の圧力が予め設定した圧力以上高い場合に開いて排圧するように構成されている。そして、これらリリーフ弁40,41は、それぞれ調圧可能な構成となっている。
上記の各ポンプモータ12,13の押出容積や各シンクロ22,23,24,25を電気的に制御できるように構成されており、そのための電子制御装置(ECU)42が設けられている。この電子制御装置42は、マイクロコンピュータを主体にして構成されたものであって、所定の回転部材の回転数や動作部材のストロークなどの検出信号が入力され、それらの入力された信号および予め記憶している情報ならびにプログラムに基づいて演算を行い、その演算結果に応じて指令信号を出力するように構成されている。
つぎに、上述した変速機の作用について説明する。図12は、各変速段を設定する際の各ポンプモータ(PM1,PM2)12,13、および各シンクロ22,23,24,25の動作状態をまとめて示す図表であって、この図12における各ポンプモータ12,13についての「OFF」は、ポンプ容量を実質的にゼロとし、その出力軸が回転させられても圧油を発生することがなく、また油圧が供給されても出力軸が回転しない状態(フリー)を示し、「LOCK」はそのロータの回転を止めている状態を示している。さらに「油圧発生」は、ポンプ容量を実質的なゼロより大きくするとともに圧油を吐出している状態を示し、したがって該当するポンプモータ12,13はポンプとして機能している。また、「油圧回収」は、一方のポンプモータ13(もしくは12)が吐出した圧油が供給されてモータとして機能している状態を示し、したがって該当するポンプモータ12(もしくは13)は軸トルクを発生し、対応するモータ軸9,11および中間軸8,10に駆動トルクを伝達している。
そして、各シンクロ22,23,24,25についての「右」、「左」は、それぞれのシンクロ22,23,24,25におけるスリーブの図11での位置を示すとともに、丸括弧はダウンシフトするための待機状態、カギ括弧はアップシフトするための待機状態を示し、そして「○」は該当するシンクロ22,23,24,25をOFF状態(中立位置)に設定することにより引き摺りを低減している状態、「●」は該当するシンクロ22,23,24,25をOFF状態(中立位置)に設定して中立状態となっていることを示す。
ニュートラルポジションが選択されてニュートラル(N)状態を設定する際には、各ポンプモータ12,13が「OFF」状態とされ、また各シンクロ22,23,24,25のスリーブが中央位置に設定される。したがって、いずれのギヤ対17,18,19,20,21も出力軸16に連結されていないニュートラル状態となる。すなわち、各ポンプモータ12,13が、それらの押出容積(ポンプ容量)が実質的にゼロとなるように制御される。その結果、いわゆる空回り状態となるので、各遊星歯車機構3,4のリングギヤ3R,4Rに動力源1からトルクが伝達されても、サンギヤ3S,4Sに反力が作用しない。そのため、出力要素であるキャリア3C,4Cに連結されている各中間軸8,10にはトルクが伝達されない。
シフトポジションがドライブポジションなどの走行ポジションに切り替えられると、第1シンクロ22のスリーブが図11の左側に移動させられるとともに第2シンクロ23のスリーブが、図11の左側に移動させられる。したがって、発進駆動ギヤ21Aがモータ軸9に連結されて第1ポンプモータ12と出力軸16とが連結され、また第1速駆動ギヤ20Aが第2中間軸10に連結されて第2遊星歯車機構4の出力要素であるキャリア4Cと出力軸16とが連結される。すなわち、固定変速比である第1速を設定する状態となる。また、これと併せて各ポンプモータ12,13の押出容積がゼロより大きい容積に制御される。
したがって、第2ポンプモータ13は前記第2遊星歯車機構4によって分配された動力源1の動力によって駆動されてポンプとして機能する。したがって、第2ポンプモータ13は、油圧を発生させることに伴う反力トルクをモータ軸11およびサンギヤ4Sに与える。これを図12には「油圧発生」と記載してある。そのため、第2遊星歯車機構4の差動作用によってキャリア4Cにトルクが伝達され、そのトルクが第1速用ギヤ対20を介して出力軸16に伝達される。
一方、第2ポンプモータ13で発生した油圧がその吸入ポート13Sから吐出されて第1ポンプモータ12の吸入ポート12Sに供給される。その結果、第1ポンプモータ12がモータとして機能する。これを図12には「油圧回収」と記載してある。このようにして第1ポンプモータ12に伝達される動力が発進用ギヤ対21を介して出力軸16に伝達される。したがって発進から第1速までの駆動状態では、第2遊星歯車機構4を介したいわゆる機械的な動力の伝達と、油圧を介した動力の伝達との両方が生じ、これらの動力を合成した動力が出力軸16に現れる。また、この過程での変速比は、固定変速比である第1速より大きい値となり、その変速比は連続的に、あるいは無段階に変化する。
こうして動力源1の回転数や車速が変化して第1速の変速比になると、第1ポンプモータ12の押出容積q1がゼロに設定され、また第2ポンプモータ13の押出容積q2が最大に設定され、その結果、実質上、第2ポンプモータ13の回転がロックされる。すなわちモータ軸11およびこれに連結されている第2ポンプモータ13が固定される。また、併せて第1シンクロ22がOFF状態に設定される。その結果、第2遊星歯車機構4のサンギヤ4Sが固定され、また第1遊星歯車機構3は出力軸16に対する動力の伝達に関与しなくなるので、動力源1が出力した動力は、第2遊星歯車機構4および第1速用ギヤ対20を介して出力軸16に伝達される。すなわち、第1速用ギヤ対20のギヤ比で決まる固定変速比が設定される。なお、この場合、第1ポンプモータ12およびこれに連結されているモータ軸9が空転するので、第1中間軸8にトルクは現れない。
固定変速比である第1速からアップシフトする場合、第3シンクロ24のスリーブを図11の左側に移動させて第2速駆動ギヤ18Aを第1中間軸8に連結しておく。なお、Rシンクロ25は中立状態にしておく。また、第3シンクロ24のスリーブを第2速駆動ギヤ18Aに係合させる場合、第3シンクロ24のスリーブの回転数と第2速駆動ギヤ18Aとの回転数を一致させる同期制御を行う。その同期制御は、前記シンクロ22,23,24,25のスリーブを相手部材に係合させる場合にも同様に行われる。
この状態で、第1ポンプモータ12の押出容積q1を最大に向けて次第に増大させる。第2速へのアップシフト待機状態では、第1ポンプモータ12は逆回転しているから、その押出容積q1を次第に増大させることによりポンプとして機能する。すなわち、油圧を発生し(図12に「油圧発生」と記してある)、同時にそれに伴う反力トルクがモータ軸9に現れる。その結果、第1遊星歯車機構3および第2速用ギヤ対18を介した動力の伝達が次第に行われる。また、第1ポンプモータ12で発生した油圧が第2ポンプモータ13に供給されてこれがモータとして機能する(図12に「油圧回収」と記してある)ので、第2ポンプモータ13および第2遊星歯車機構4ならびに第1速用ギヤ対20を介した動力の伝達が生じる。そのため、第1速から第2速への変速の過程での変速比は、第1速の変速比と第2速の変速比との間の値となり、かつ連続的に変化する変速比となる。すなわち、変速比が連続的に変化する無段変速状態となる。これは、上述した発進から第1速の変速比に到るまでの間、および各固定変速比の間でも同様であり、したがって上述した変速機は、無段変速機として機能させることができる。
固定変速比である第1速を設定している状態では、第1ポンプモータ12の押出容積q1はゼロ(もしくは最小に近い所定値以下)に設定され、また第2ポンプモータ13の押出容積q2は最大もしくはこれに近い所定値以上になっている。したがって、第1ポンプモータ12およびこれに連結されているモータ軸9が空転し、また第2ポンプモータ13から第1ポンプモータ12に対して圧油が流動することができないので、第2ポンプモータ13はロックされた状態になる。この状態から先ず第1ポンプモータ12の押出容積q1が次第に増大させられる。その結果、第1ポンプモータ12で油圧が発生し、これが第2ポンプモータ13に供給されるので、第2ポンプモータ13がモータとして作用する。すなわち、各ポンプモータ12,13の間で圧油を介した動力の伝達が生じる。
こうして第1ポンプモータ12の押出容積q1が最大になると、各ポンプモータ12,13の押出容積q1,q2が共に最大もしくはこれに近い所定値以上となる。その後、第1ポンプモータ12の押出容積q1を最大もしくはこれに近い所定値以上に維持したまま、第2ポンプモータ13の押出容積q2が次第に低下させられる。そして、第2ポンプモータ13の押出容積q2がゼロ(もしくは最小に近い所定値以下)になることにより、固定変速比である第2速が設定される。すなわち、各ギヤ対のうち第2速用ギヤ対18のみを介して動力の伝達が行われ、第2速用ギヤ対18の回転数比に応じた変速比が設定される。
第1ポンプモータ12の押出容積q1がほぼ最大になりその回転が停止し、もしくは停止に近い状態になることにより、モータ軸9が実質的に固定される。また、併せて第2ポンプモータ13がOFF状態に設定される。したがって、第1遊星歯車機構3では、そのサンギヤ3Sが固定されるので、リングギヤ3Rに入力された動力がキャリア3Cから第1中間軸8を経て第2速駆動ギヤ18Aに出力される。一方、第2ポンプモータ13はOFF状態となっており、これと同軸上に配置されているRシンクロ25および第2シンクロ23はOFF状態であってそのスリーブが中立位置にあるので、第2ポンプモータ13や第2遊星歯車機構4は動力の伝達に関与しない。したがって、第2速用ギヤ対18のギヤ比で決まる固定変速比である第2速が設定される。
以下、同様にして、第3速は第2シンクロ23のスリーブを図11の右側に移動させて第3速駆動ギヤ19Aを第2中間軸10に連結し、また第2ポンプモータ13の押出容積q2を最大にすることにより、第1速の場合と同様に、モータ軸11および第2ポンプモータ13を固定し、さらに他のシンクロ22,24がOFF状態に設定される。したがって、第3速用ギヤ対19を介して出力軸16に動力が伝達され、固定変速比である第3速が設定される。また、第4速は第3シンクロ24のスリーブを図11の右側に移動させて第4速駆動ギヤ17Aを第1中間軸8に連結し、また第1ポンプモータ12の押出容積q1を最大にすることにより、第2速の場合と同様に、モータ軸9および第1ポンプモータ12を固定し、さらに他のシンクロ23,25がOFF状態に設定される。したがって、第4速用ギヤ対17を介して出力軸16に動力が伝達され、固定変速比である第4速が設定される。
さらに、後進段について説明すると、リバースポジションが選択された場合には、第1シンクロ22のスリーブが図11の左側に移動させられ、またRシンクロ25のスリーブが図11の右側に移動させられ、さらに他のシンクロ23,24がOFF状態に設定される。したがって、Rシンクロ25によって第2中間軸10とモータ軸11とが連結されることにより、第2遊星歯車機構4のサンギヤ4Sとキャリア4Cとが連結されて第2遊星歯車機構4の全体が実質的に一体化される。また、発進駆動ギヤ21Aがモータ軸9すなわち第1ポンプモータ12のロータに連結される。
したがって、動力源1から第2遊星歯車機構4に伝達された動力がそのまま第2ポンプモータ13に伝達されてこれが駆動され、第2ポンプモータ13によって油圧が発生する。なお、第2シンクロ23がOFF状態であるから、第2遊星歯車機構4あるいは第2中間軸10から出力軸16に動力が伝達されることはない。一方、第1ポンプモータ12の押出容積q1がゼロより大きい容積、例えば最大容積に制御される。その結果、第2ポンプモータ13から供給された油圧によって第1ポンプモータ12がモータとして機能し、モータ軸9にトルクを出力する。その場合、第1ポンプモータ12にはその吐出ポート12Dから油圧が供給されるので、第1ポンプモータ12が逆回転する。そして、そのトルクが発進用ギヤ対21を介して出力軸16に伝達されるので、後進状態となる。すなわち、後進段では、油圧を介した動力の伝達が生じ、これを図12では、第1ポンプモータ12について「油圧回収」と記し、第2ポンプモータ13について「油圧発生」と記してある。
前述したように、上記のように構成されたこの発明で対象とする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機は、いずれか一方のポンプモータが所定量の押出容積を持った状態で固着する異常が発生すると、異常が生じたポンプモータが連結されている異常側の動力伝達経路が、所定のトルクを持ったままの状態に維持されてしまい、その異常側の動力伝達経路に設けられているシンクロを切り替えることが困難になり、異常側の動力伝達経路で設定する固定変速比を変更できなくなる可能性がある。そこで、この発明の可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置では、ポンプモータが所定量の押出容積を持った状態で固着する異常が発生した場合に、その異常側の動力伝達経路に作用するトルクを低減する、具体的にはゼロにすることにより、異常側の動力伝達経路におけるシンクロの切り替え動作が可能となるように構成されている。その制御例を以下に説明する。
図1は、この発明の制御装置による制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図1において、先ず、変速要求の有無が判定される。具体的には、いずれかのシンクロに対する切り替え要求があるか否かが判断される(ステップS1)。各シンクロ22,23,24,25に切り替えは、例えば、図4に示すように、目標変速比(変速比の指令値)が各固定変速比を示す閾値(図4では制御のハンチングを防止するためにヒステリシスが設けられている)を越えた場合に実行される。したがって、シンクロに対する切り替え要求の有無は、目標変速比に基づいて判断することができる。
いずれのシンクロに対しても切り替え要求がないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、図2のフローチャートのステップS11へ進み、各ポンプモータ12,13の押出容積に対する目標変速比追従制御が実行され、その後、このルーチンを一旦終了する。この場合の目標変速比追従制御は、例えば図5のブロック線図、および図6の制御マップ等で示すようなフィードバック制御が実行される。
これに対して、少なくとのいずれか1つのシンクロに対して切り替え要求があることにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進み、ポンプモータの容積固着の有無が判定される。すなわち、いずれかのポンプモータに、ポンプモータがゼロよりも大きい所定量の押出容積を持った状態で固着するいわゆる容積固着が発生したか否かが判断される。
ポンプモータの容積固着の有無は、例えば、各ポンプモータ12,13にそれぞれ設けられたストロークセンサ33,34の検出値を基に、ポンプモータの実際の押出容積を求め、その実押出容積と目標押出容積(押出容積の指令値)とを比較することで判断することができる。具体的には、目標押出容積が変化しているにもかかわらず実押出容積が一定で変動しない場合は、容積固着が生じていると判断することができる。すなわち、この例では、ストロークセンサ33,34と、その検出値を基に演算を行って指令信号を出力する電子制御装置42とが、この発明のポンプモータ異常検出手段として機能している。また、例えば、ポンプモータが、押出容積制御用に設けられているソレノイドバルブが断線した場合に押出容積が最大になる構成である場合には、ソレノイドバルブの断線を検出することによって、ポンプモータの容積固着の有無を判断することも可能である。
いずれのポンプモータにも容積固着が発生していないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、図3のフローチャートへ進み、容積固着の発生がない正常時のシンクロの切り替え制御が実行される。すなわち、図3において、先ず、ポンプモータ12側のシンクロ22,24に対する切り替え要求があるか否かが判断される(ステップS21)。シンクロ22,24のいずれか一方もしくは両方に対する切り替え要求があることにより、このステップS21で肯定的に判断された場合は、ステップS22へ進み、ポンプモータ12の押出容積がゼロ(0%)であるか否かが判断される。
ポンプモータ12の押出容積がゼロでないことにより、このステップ22で否定的に判断された場合は、前述の図2のフローチャートのステップS11へ進み、ポンプモータ12の押出容積に対する目標変速比追従制御が実行され、その後、このルーチンを一旦終了する。これに対して、ポンプモータ12の押出容積がゼロでであることにより、ステップS22で肯定的に判断された場合には、ステップS23へ進み、ポンプモータ12側のシンクロ22,24のいずれか一方もしくは両方に対する切り替え指令が出力され、シンクロの切り替えが実行される。そして、その切り替え指令に対するシンクロの切り替えが完了したか否かが、切り替えが完了するまで繰り返し判断される(ステップS24)。そして、シンクロの切り替えが完了したことにより、このステップS24で肯定的に判断されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
一方、シンクロ22,24のいずれに対しても切り替え要求がないことにより、前述のステップS21で否定的に判断された場合は、ステップS25へ進み、ポンプモータ13の押出容積がゼロ(0%)であるか否かが判断される。
ポンプモータ13の押出容積がゼロでないことにより、このステップ25で否定的に判断された場合は、前述の図2のフローチャートのステップS11へ進み、ポンプモータ13の押出容積に対する目標変速比追従制御が実行され、その後、このルーチンを一旦終了する。これに対して、ポンプモータ13の押出容積がゼロでであることにより、ステップS25で肯定的に判断された場合には、ステップS26へ進み、ポンプモータ13側のシンクロ23,25のいずれか一方もしくは両方に対する切り替え指令が出力され、シンクロの切り替えが実行される。そして、その切り替え指令に対するシンクロの切り替えが完了したか否かが、切り替えが完了するまで繰り返し判断される(ステップS27)。そして、シンクロの切り替えが完了したことにより、このステップS27で肯定的に判断されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
そして、前述のステップS2において、いずれか一方のポンプモータに容積固着が発生したことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進み、容積固着発生時のシンクロの切り替え制御が実行される。すなわち、先ずステップS3で、容積固着が発生したポンプモータ側のシンクロに対する切り替え要求があるか否かが判断される。容積固着側のシンクロに対する切り替え要求があることにより、このステップS3で肯定的に判断された場合は、ステップS4へ進み、リリーフ弁40,41の少なくともいずれか一方の設定圧が最低値に設定される。具体的には、リリーフ弁40,41の少なくともいずれか一方が開放される。また、そのリリーフ弁40,41の開放制御(リリーフ圧最低圧制御)に協調して、動力源1のトルクダウン制御が開始される。
例えば、ポンプモータ12に容積固着が生じた場合には、リリーフ弁40を開くことにより、ポンプモータ13からポンプモータ12への油圧の供給が遮断される。その結果、ポンプモータ12はフリー(OFF)の状態となり、そのポンプモータ12と連結されているモータ軸9および第1中間軸8および出力軸16が、ポンプモータ12側からのトルク伝達が遮断された状態になる。言い換えると、第1中間軸8およびモータ軸9および出力軸16により形成される動力伝達経路に作用するトルクが低減される。すなわち、この例では、リリーフ弁40,41が、この発明のリリーフ手段として機能している。
前述したように、ポンプモータに容積固着が生じると、それ以降その異常が発生したポンプモータの押出容積をゼロにすることができなくなり、そのままの状態では、容積固着側のシンクロに対する切り替え要求があった際にシンクロの切り替えを実行できなくなってしまう。そこで、上記のように、ポンプモータに容積固着が発生した場合にリリーフ弁の開放制御を実行することにより、容積固着側のシンクロであっても、シンクロの切り替えを行うことができる。例えば、図7に示すように、変速比が第1速(1st)と第2速(2nd)との中間の状態の時に、ポンプモータ12に容積固着が生じた場合は、上記のようにしてリリーフ弁の開放制御を行うことにより、シンクロ24を第1速での設定状態(目標状態)から第3速での設定状態(目標状態)に切り替えることができ、ポンプモータの容積固着に起因する変速比の使用可能領域の減少を、言い換えると、ポンプモータが容積固着した際の変速比の使用不可能領域を、最小限に抑えることができる。
また、リリーフ弁40が開放されて第1中間軸8およびモータ軸9および出力軸16により形成される動力伝達経路へのポンプモータ12側からトルク伝達を遮断するリリーフ弁40の開放制御に協調して、動力源1の出力トルクを低減するトルクダウン制御を行うことにより、動力源1のいわゆる吹き上がりを防止もしくは抑制することができる。なお、このトルクダウン制御におけるトルクダウン量は、例えばアクセル開度および出力軸16の回転数などに基づいて求めることができる。
続いて、容積固着側のシンクロに対する切り替え指令が出力され、シンクロの切り替えが実行され(ステップS5)、その切り替え指令に対するシンクロの切り替えが完了したか否かが、切り替えが完了するまで繰り返し判断される(ステップS6)。そして、シンクロの切り替えが完了したことにより、このステップS6で肯定的に判断された場合は、ステップS7へ進み、リリーフ弁40,41の設定圧がスイープアップされて、通常走行時の設定圧に復帰される。具体的には、開放されていたリリーフ弁40,41もしくはリリーフ弁40,41のいずれかが閉止される。すなわち通常状態に復帰される。また、そのリリーフ弁40,41の復帰制御(リリーフ圧復帰制御)に協調して、動力源1のトルクダウン制御が終了される。すなわち動力源1のトルク復帰制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
図8に、上記のリリーフ弁制御(リリーフ弁の開放制御,リリーフ弁の復帰制御)、および動力源1の出力トルク制御(トルクダウン制御,トルク復帰制御)についてのタイムチャートを示してある。リリーフ圧指令値が最低値(すなわちゼロ)に設定されると、同時に動力源1の出力トルク指令値も低下させられて、トルクダウンが開始される。リリーフ圧指令値がゼロに設定されることでリリーフ弁が開放されると、シンクロの切り替え指令値が出力されてシンクロの切り替えが開始される。そして、シンクロの切り替えが完了したことが判定されると、低下されていたリリーフ圧指令値および出力トルク指令値がスイープアップされて、それぞれ通常走行時の状態に復帰させられる。
一方、容積固着側のシンクロに対する切り替え要求がないことにより、前述のステップS3で否定的に判断された場合は、ステップS8へ進み、容積固着が発生していない正常なポンプモータの押出容積がゼロ(0%)であるか否かが判断される。
正常なポンプモータの押出容積がゼロでないことにより、このステップ8で否定的に判断された場合は、前述の図2のフローチャートのステップS11へ進み、この正常なポンプモータの押出容積に対する目標変速比追従制御が実行され、その後、このルーチンを一旦終了する。これに対して、正常なポンプモータの押出容積がゼロでであることにより、ステップS8で肯定的に判断された場合には、ステップS9へ進み、この正常なポンプモータ側のシンクロに対する切り替え指令が出力され、シンクロの切り替えが実行される。そして、その切り替え指令に対するシンクロの切り替えが完了したか否かが、切り替えが完了するまで繰り返し判断される(ステップS10)。そして、シンクロの切り替えが完了したことにより、このステップS10で肯定的に判断されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
図9および図10は、上記の制御を実行した場合におけるこの発明の可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の第1速から第3速にかけての変速動作を示す共線図であって、縦軸は回転速度を表し、また横軸には各遊星歯車機構3,4の各回転要素およびそれらに連結された回転部材および各ポンプモータの符号が記してある。ポンプモータに容積固着が発生していない正常時は、図9に示すように、ポンプモータ12の押出容積がゼロにされた状態(図9の(c),(d))で、シンクロ24が第1速での設定状態(図9の(c))から第3速での設定状態(図9の(d))に切り替えられる。これに対して、ポンプモータに容積固着が発生した場合には、図10に示すように、ポンプモータ12は押出容積A(α%)を持った状態のまま、シンクロ24が第1速での設定状態(図10の(b))から第3速での設定状態(図10の(c))に切り替えられる。
以上のように、この発明の可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置によれば、いずれか一方のポンプモータ12,13が所定量の押出容積を有した状態で固着する容積固着が発生すると、リリーフ弁40,41が、もしくは容積固着が生じたポンプモータへ油圧を供給している油路の油圧を排圧する側のリリーフ弁が開放制御される。したがって、容積固着が発生した場合に、その容積固着したポンプモータが設けられている動力伝達経路に作用するトルクがゼロに低減される。そのため、容積固着が生じた場合であっても、その異常が生じた側の動力伝達経路における変速比の切り替えを可能にし、それ以降の変速を行うことができる。その結果、上記のような異常に起因する変速機の機能の低下を可及的に抑制することができる。
また、上記のように容積固着発生時のリリーフ弁開放制御が実行される場合には、その制御に協調して動力源1のトルクダウン制御が行われる。すなわち、リリーフ弁開放制御の開始および終了(復帰)に合わせて、動力源1の出力トルクの低減が開始および終了(復帰)される。そのため、例えば、リリーフ弁が開放されることによりオイルポンプ側から異常側の動力伝達経路へのトルクの伝達がなくなり、動力源1に対する負荷が低減されて動力源1の回転が急増してしまう現象、いわゆる吹き上がりを回避することができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS2の機能的手段が、この発明のポンプモータ異常検出手段に相当し、ステップS3ないしS7の機能的手段が、この発明の異常時伝達トルク低減手段に相当する。また、ステップS4,S7の機能的手段が、この発明の動力源トルク低減手段に相当する。
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、対象とする変速機は、図11に示す構成以外のものであってもよく、例えば、油圧のみによって動力を伝達し、かつ変速を行うように構成した変速機であってもよい。すなわち、静圧式変速機(HydroStatic Transmission:HST)であってもよい。また、歯車機構を主体とした変速機構と並列にHSTを設けて、全体として無段階に変速できるように構成した変速機であってもよい。また、図11に示す例では、前進4段・後進1段の固定変速比を設定できるように構成されているが、この発明で対象とする変速機は、固定変速比の数がそれよりも多くてよく、あるいは反対に少なくてもよい。
また、ポンプモータをシングルピニオン型遊星歯車機構やダブルピニオン型遊星歯車機構などの差動機構に対する反力機構として用いる場合、その押出容積をゼロから一方向にのみ増大できるいわゆる片振り型のものに限らず、正負の両方向に変化させることのできるいわゆる両振り型のポンプモータを使用することもできる。その場合、歯車機構は、図11と異なる構成とすることができる。
また、ポンプモータや差動機構ならびにギヤ対などの伝動機構の配列は、必要に応じて適宜変更することができ、いわゆるFR車に適するように配置した構成としてもよい。またさらに、動力源は一方の差動機構に直接連結する替わりに、前述したカウンタギヤ対のアイドルギヤに連結してもよい。さらに、ギヤ対に替えてベルトやチェーンなどの機構を用いてもよい。そして、この発明における動力源は、エンジンである必要はなく、電気モータであってもよく、あるいは内燃機関と電動機とを組み合わせたハイブリッド駆動装置であってもよい。
そして、異常時に動力伝達経路に作用するトルクを低下させる手段は、そのために設けた特定のバルブであってもよく、上記のリリーフ弁に限られない。また、上述した制御例では、主として、第1速からのアップシフトを例に採って説明したが、他の固定段からの変速(アップシフトおよびダウンシフト)も同様にして実行することができる。
1…動力源(E/G)、 2…入力部材、 3…第1遊星歯車機構、 4…第2遊星歯車機構、 8…第1中間軸、 9…モータ軸、 10…第2中間軸、 11…モータ軸、 12…可変容量型ポンプモータ(第1ポンプモータ,PM1)、 13…可変容量型ポンプモータ(第2ポンプモータ,PM2)、 14,15…油路、 16…出力軸、 17,18,19,20…ギヤ対、 22…第1のシンクロナイザー(第1シンクロ)、 23…第2のシンクロナイザー(第2シンクロ)、 24…第3のシンクロナイザー(第3シンクロ)、 25…後進用のシンクロナイザー(Rシンクロ)、 33,34…ストロークセンサ、 40…第1リリーフ弁、 41…第2リリーフ弁、 42…電子制御装置(ECU)。
Claims (4)
- 動力源と出力部材との間でそれぞれ互いに異なる複数の変速比を選択的に設定可能な少なくとも2つの動力伝達経路と、それら各動力伝達経路を介して伝達されるトルクを押出容積に応じて変化させるように前記各動力伝達経路毎に設けられかつ圧力流体が相互に授受可能に連通された可変容量型流体圧ポンプモータとを備え、それら各可変容量型流体圧ポンプモータの押出容積を最大および最小ならびにその中間の容積のいずれかに設定して変速比を設定する可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置において、
前記各動力伝達経路に作用するトルクをそれぞれ低減するリリーフ手段と、
前記各可変容量型流体圧ポンプモータの異常を検出するポンプモータ異常検出手段と、
前記ポンプモータ異常検出手段により、いずれか一方の前記可変容量型流体圧ポンプモータが所定量の押出容積を有した状態で固着する異常が検出された場合に、前記リリーフ手段を制御して前記異常が検出された可変容量型流体圧ポンプモータが設けられている前記動力伝達経路に作用する伝達トルクを低減する異常時伝達トルク低減手段と
を備えていることを特徴とする可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置。 - 前記各可変容量型流体圧ポンプモータは、それぞれの吸入口同士を結ぶ第1流路と、それぞれの吐出口同士を結ぶ第2流路とにより互いに連通されているとともに、
前記リリーフ手段は、前記第1流路と第2流路との間に設けられかつ前記第1流路の圧力が設定圧以上高い場合に開いて排圧する調圧可能な第1リリーフ弁と、前記第1流路と第2流路との間に設けられかつ前記第2流路の圧力が設定圧以上高い場合に開いて排圧する調圧可能な第2リリーフ弁と、これらのリリーフ弁の少なくともいずれか一方のリリーフ弁の調圧値を制御する手段を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置。 - 前記異常時伝達トルク低減手段は、前記第1リリーフ弁および第2リリーフ弁の少なくともいずれか一方を開くことにより前記伝達トルクを低減する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置。
- 前記異常時伝達トルク低減手段により前記伝達トルクを低減する場合に、その伝達トルクを低減する制御に協調させて前記動力源の出力トルクを低減する動力源トルク低減手段を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置。
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JP2007021947A JP2008185202A (ja) | 2007-01-31 | 2007-01-31 | 可変容量型流体圧ポンプモータ式変速機の制御装置 |
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JP2013096540A (ja) * | 2011-11-04 | 2013-05-20 | Honda Motor Co Ltd | 可変容量ポンプの部分容量運転状態固着判定装置 |
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2007
- 2007-01-31 JP JP2007021947A patent/JP2008185202A/ja not_active Withdrawn
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