JP2008185095A - 制振部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本制振部材100は、主体部101と、第1の粒子102と、第2の粒子103とを有している。主体部101は、鋼の焼結体により形成され、複数の空孔101aを有する。第1の粒子102と第2の粒子103とは、空孔101a内に保持されている。第1の粒子102は、制振合金により形成されている。第2の粒子103は、酸化鉄またはセラミックスにより形成され、第1の粒子102と空孔101aの内壁101bとの間に介在している。第1の粒子102が、相対的に小径の第2の粒子103を介して間接的に保持されるので、空孔101a内で移動し易くなり、これを通じて、振動エネルギーが消費される。
【選択図】図1
Description
制振合金は、当該制振合金が有する減衰能により振動エネルギーを消費する、いわゆるマテリアルダンピングにより制振効果を発揮する。
多孔質材は、複数の空孔を有し、空孔内に酸化膜や粘弾性部材を保持しており、例えば、多孔質材と酸化膜との間の摩擦により振動エネルギーを消費する、いわゆるストラクチュアルダンピングにより制振効果を発揮する(例えば、特許文献1,2参照。)。
また、特許文献1では、酸化膜が空孔内に直接に保持されるので、空孔内を移動し難く、その結果、制振効果が低くなる傾向にある。逆に、制振効果を高めようとして酸化物の含有割合を高めると、制振部材全体の強度を低下させてしまい、制振部材を構造部材として利用し難くなる。また、特許文献2でも同様の課題がある。
本発明によれば、第1の粒子が第2の粒子を介して間接的に保持されるとともに、この第2の粒子が第1の粒子よりも小径であるので、第1の粒子が空孔内を移動し易くなる。その結果、制振部材が振動を受けたときに、第1および第2の粒子が空孔内を移動し、これにより、振動エネルギーが消費される結果、高い制振効果が得られる。しかも、制振効果を第1の粒子および第2の粒子の移動により得るので、例えば、制振効果を得つつ、主体部に高剛性で高強度の材料を採用することが可能となる。従って、構造部材に適した制振部材を実現することが可能となる。
なお、上記の括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
図1A,図1B,図1C,図1Dは、本発明の第1の実施形態の制振部材およびその製造方法を示す模式図であり、図1A,図1B,図1Cに制振部材の製造途中の状態を、図1Dに完成状態の制振部材を図示している。
制振部材100は、多数の焼結粒子の集合体であり、焼結体からなる。制振部材100は、母材であり焼結体としての主体部101と、焼結された粒子である複数の第1の粒子102と、焼結された粒子である複数の第2の粒子103とを有している。主体部101には、複数の空孔101aが形成されている。主体部101の空孔101a内に、第1の粒子102および第2の粒子103が、保持されている。
主体部101は、互いに結合された複数の焼結粒子101cを有している。主体部101の材質は、金属としての鋼である。主体部101の材質としては、金属、セラミックスおよび樹脂材料のうちのいずれかを利用することができる。ここで、金属としては、純金属であってもよいし、金属合金であってもよい。主体部101が金属の場合には、制振部材100の強度の向上に寄与する。本実施形態では、主体部101が鋼の焼結体により形成されている場合に則して説明する。複数の空孔101aは、焼結されるときに、焼結粒子101cの間であって第1の粒子102の周りに、互いに連通して、または互いに独立して形成される。
第1の粒子102は、空孔101a内に収容されている。複数の第1の粒子102のうちの少なくとも一部の第1の粒子102が、空孔101aの内壁101bから離隔して、移動できるように支持されている。第1の粒子102の表面の一部が、第2の粒子103を介して空孔101aの内壁101bに間接的に連結されている。また、第1の粒子102の表面の残りの部分と、空孔101aの内壁101bとの間には、隙間が介在している。
第2の粒子103は、第1の粒子102よりも小径に形成されている。第1の粒子102の平均粒径D1と第2の粒子103の平均粒径D2との比の値(D1/D2)は、20〜200の範囲内の値とされている。特に、上述の比の値(D1/D2)は、40〜100の範囲内の値とされているのが好ましい。というのは、上述の比の値が40未満の小さな値になると、第2の粒子103により第1の粒子102を被覆するのが難しくなり、上述の比の値が100を越えて大きくなると、第2の粒子103による被覆が密になり過ぎて、第1の粒子102が内壁101bから離隔した状態を取り難くなるうえ、第1の粒子が動き難くなるからである。
制振部材100の製造方法は、第1の材料粉末104を得る第1の工程(図1A参照)と、第2の材料粉末105を得る第2の工程(図1B参照)と、第1の材料粉末104および第2の材料粉末105を互いに混合した状態で圧縮成形して圧粉体106を得る第3の工程(図1C参照)と、圧粉体106を焼結する第4の工程(図1D参照)とを有している。第1および第2の工程のうちのいずれの工程が先であってもよいが、第1および第2の両工程の後に、第3および第4の工程がこの順で行われる。
(2) 図1Bを参照し、第2の工程では、第1の粒子102を形成するための制振粉末と、第2の粒子103を形成するための微粉末とから、被覆粉末としての第2の材料粉末105が製造される。第2の材料粉末105は多数の材料粒子105cの集合体である。
圧粉体106は、複数の粒子、すなわち、第1の材料粉末104の材料粒子104cが圧縮されてなる粒子106cと、第2の材料粉末105の中心部105dの第1の材料粒子105aが圧縮されてなる粒子106aと、第2の材料粉末105の第2の材料粒子105bが圧縮されてなる粒子106bと、内部潤滑剤107とを含んでいる。圧縮されることにより、これらの粒子同士が互いに結合されるとともに、これら粒子間の隙間が小さくなっている。圧粉体106は、後述する適用部材と同じ形状か、この形状に近似した形状をなしている。
(4) 図1Dを参照して、第4の工程では、圧粉体106を所定の焼結条件(水素中の還元雰囲気、1100±100℃の焼結温度、所定焼結時間)で焼結炉により焼結して、焼結体として制振部材100を得る。制振部材100の上述の複数の焼結粒子101c,102,103同士は互いに結合されている。
また、焼結前の状態の圧粉体106では、中心部をなす粒子106aが、被覆層としての複数の粒子106bにより被覆されるとともに、粒子106bの表面が酸化皮膜または樹脂膜により被覆されている。このような圧粉体106に所定の処理、すなわち、所定の雰囲気に曝す処理を施すことにより、圧粉体106の粒子106bの体積および数の少なくとも一方が減少する。その結果、焼結処理後に、第1の粒子102を取り囲むように空隙が形成され、第1の粒子102が主体部101の空孔101aの内壁101bから離隔した状態で第2の粒子103を介して支持される。
また、第2の材料粉末105の第2の材料粒子105bが、高温で溶融する樹脂を含む場合には、圧粉体106の粒子106bも同様に樹脂を含む。圧粉体106が所定雰囲気としての高温に加熱されるときに、粒子106bの樹脂成分が溶融し、さらに消滅して、粒子106bが焼結されてなる第2の粒子103の体積や数が減少する。
本実施形態によれば、第1の粒子102が第2の粒子103を介して間接的に保持されるとともに、この第2の粒子103が第1の粒子102よりも小径であるので、第1の粒子102が空孔101a内を移動し易くなる。その結果、制振部材100が振動を受けたときに、第1の粒子102および第2の粒子103が空孔101a内を移動し、これにより、振動エネルギーが消費される結果、高い制振効果が得られる。
また、制振効果を、いわゆるストラクチュアルダンピングにより得るので、制振部材100への高価な制振合金の使用量を少なくしたり、無くしたりすることが可能となる。また、これに伴い、例えば主体部101へ、安価な材料、例えば鋼の使用量を多くすることが可能となる。その結果、安価な制振部材100を実現することができる。
図2、図3、図4は、図1Dの要部を拡大した模式図であり、第1の粒子102および第2の粒子103の粒径比および含有比率をそれぞれ変化させてある。図2に示すように、第2の粒子103が、第1の粒子102と空孔101aの内壁101bとの間に、比較的に詰まって収容されていてもよい。また、図3に示すように、第2の粒子103が、第1の粒子102と空孔101aの内壁101bとの間に、凝集した状態で、離散して配置されていてもよい。また、図4に示すように、第2の粒子103が、第1の粒子102と空孔101aの内壁101bとの間に、単一または2〜3個の少数ごとに離散して配置されていてもよい。図2および図4の場合には、図3の場合に比べて、第1の粒子102の支持剛性が相対的に高いので、高い周波数の振動を抑制するのに好ましく、図2および図3の場合には、図4の場合に比べて、相対移動する粒子102,103が多いので、減衰効果を高めることができる。
電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、歯車装置としての減速機19とを有している。本実施形態では、トルクセンサ16、電動モータ18および減速機19は、ステアリングコラム7に関連して設けられている。
ステアリングシャフト4は、軸方向下部として、入力軸22と、出力軸23と、トーションバー24とを有し、軸方向上部としての連結軸25を有している。入力軸22および出力軸23は、トーションバー24を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸22は、連結軸25を介してステアリングホイール3に連なっている。出力軸23は、中間軸6に連なっている。入力軸22に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー24が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸22および出力軸23が相対回転する。
ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、電動モータ18を制御する。
また、マウント部材としてのブラケット8Cや、ウォームホイール27の芯金27aを制振部材100により形成してもよい。さらに、これら以外の他の部品に制振部材100を適用してもよい。また、電動パワーステアリング装置1以外のステアリング装置、例えばマニュアル操舵のステアリング装置の部品や、ステアリング装置以外の機械や装置の部品に制振部材100を適用してもよい。
例えば、図6A,図6B,図6C,図6Dは、第2の実施形態の制振部材100とその製造方法を示す模式図である。本実施形態の制振部材100の第1の粒子102は、複数の粒子102aにより構成されている。また、第2の工程は、中心部105dを得る造粒工程と、中心部105dの表面105d1に被覆層105eを形成する被覆工程とを有している。造粒工程では、制振粉末であり且つ相対的に小さな粒子としての複数の第1の材料粒子105aを、樹脂バインダ(図示せず)により互いに結合して造粒し、これにより相対的に大きな粒子であり且つ造粒体としての粒状をなす中心部105dを得るようにしている。被覆層105eは、上述の第2の材料粒子105bに代えて、第2の粒子103を形成するための樹脂部材からなる複数の第2の材料粒子105fを有し、これら第2の材料粒子105fの微粉末により形成されている。被覆工程では、中心部105dに被覆層105eがコーティングにより被覆されてなる。中心部105dが、焼結されて、第1の粒子102になる。また、第1の材料粒子105aが、焼結されて、上述の粒子102aになる。第2の材料粒子105fが圧縮されて圧粉体106の粒子106bになり、さらに焼結されて、粒子106bの一部が制振部材100に残り、第2の粒子103になる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
Claims (4)
- 複数の空孔が形成された主体部と、
空孔内に保持された第1の粒子と、
空孔の内壁と上記第1の粒子との間に介在し、第1の粒子よりも小径の第2の粒子とを備えたことを特徴とする制振部材。 - 請求項1において、上記主体部は、鋼を含む焼結体からなり、上記第1の粒子は、制振合金を含む焼結体からなり、上記第2の粒子は、鉄またはセラミックスを含む焼結体からなることを特徴とする制振部材。
- 第1の粒子を形成するための制振粉末の表面を第2の粒子を形成するための微粉末で被覆してなる被覆粉末と主体部を形成するための母材粉末とを混合した混合材料を成形して、圧粉体を形成し、この圧粉体を還元雰囲気内で焼結することを特徴とする請求項1または2の制振部材の製造方法。
- 請求項3において、上記微粉末は、酸化物および樹脂部材の少なくとも一方を含むことを特徴とする制振部材の製造方法。
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