JP2020085004A - 金属制振材料 - Google Patents

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亮介 木村
雄太 長南
Yuta Naganami
雄太 長南
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Hiroshi Omori
洋 大守
筒井 唯之
Tadayuki Tsutsui
唯之 筒井
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Abstract

【課題】制振性能に優れる金属制振材料を提供することである。【解決手段】金属基地と、気孔部とを含む多孔質金属材料によって形成され、多孔質金属材料の気孔部に、金属基地と異なる無機材料が含まれる、金属制振材料である。金属基地と異なる無機材料は、黒鉛、セラミックス、又はこれらの組み合わせを含むことができる。【選択図】図3

Description

本発明の一実施形態は、金属制振材料に関する。
自動車、建築物、電気機器等の構造物からの振動及び騒音を低減するために、構造物に制振材料を取り付ける方法がある。例えば、自動車や鉄道車両の車体、エンジン、モータ、機械部品のワッシャー、電気機器のハウジング、流体輸送用ダクト、緩衝材等の用途に制振材料が用いられている。
制振材料としては、柔軟性を備える樹脂が広く用いられている。
特許文献1には、高度な制振性、制音性を有し、成形性に優れた制振材用複合樹脂組成物として、非極性モノマーをマトリックスとして、粘弾性ポリマーと固体粒子を含む複合樹脂組成物が提案されている。しかし、樹脂は、一般的に金属材料に比べて強度、剛性、耐久性等が劣るため、樹脂製の制振材料は、高負荷が掛かる用途や、耐久性が要求される用途には適さない問題がある。
一方、強度と耐久性に優れる鉄等の金属の鋳造品は、緻密体であることから、振動が伝達しやすく、制振性能が劣る問題がある。
このような背景の中、強度と制振性を両立する材料として近年、制振合金が提案されている。現在実用化されている制振合金は、その制振機構によって複合型、強磁性型、転位型、双晶型の4種類に大きく分類されている(非特許文献1)。
複合型は、一般に強くて靭性のある基地中に柔らかい第2相が混在した合金組織を有するものが属しており、振動が入力されると基地と第2相との境界面で塑性流動もしくは粘性流動が引き起こされ、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで制振性を担保している。代表的な材料としては片状黒鉛鋳鉄やAl−Zn合金等が挙げられる。
強磁性型は、磁区壁の非可逆移動に伴う磁気・機械的静履歴によるエネルギー消費を利用したものであり、代表的なものとしてサイレンタロイ(Fe−12Cr−3Al合金)やセレナ(Fe−2.4Al−0.54Si合金)等が挙げられる。
転位型は、結晶中のすべり転位の運動に伴う内部摩擦を利用した制振作用を有しており、代表的なものとしてMgやMg合金がある。
双晶型は、マルテンサイト変態に付随する格子不変せん断変形の一種として起こる内部双晶の境界が動くことにより制振性が発現する合金であり、典型的なものとしてM2052(Mn−20Cu−5Ni−2Fe合金)やニチノール(Ni−Ti合金)等が存在する。
複合型制振機構の一例として、多孔質金属材料に樹脂を充填することで、制振性能を付与・向上させる技術がある。この多孔質金属材料としては、例えば、粉末冶金法によって作製することができる。
粉末冶金法は、原料粉末を金型内で圧縮成形して得られた圧粉体を焼結する方法であって、ニアネットシェイプに造形できるので、後の機械加工による削り代が少なく材料損失が小さいこと、また一度金型を作製すれば同じ形状の製品が多量に生産できること等の理由から経済性に優れている。また、粉末冶金法は、通常の溶解によって製造される合金で得ることができない特殊な合金を製造できること等の理由から合金設計の幅が広い。
特許文献2には、気孔率が20〜50%の鉄基合金焼結体の気孔内に樹脂硬化物が充填されている複合材料であり、気孔率が20%以上であることで樹脂硬化物の量を多くして制振性能を得る制振材料が提案されている。
杉本孝一:「防振合金の最近の進歩」、鉄と鋼 第60年(1974)第14号、p127
特開2012−25830号公報 特開2000−9178号公報
鉄基焼結体は、原料粉末に由来して鉄基地に気孔部が含まれる構造であるが、鉄基地に空洞の気孔部が含まれるだけでは、振動を十分に吸収することができずに、制振性能が劣る問題がある。
特許文献2では、鉄基焼結体の気孔部に樹脂を含浸しているが、樹脂によって振動を吸収させるために樹脂の含浸量が多くなり、強度及び耐久性に問題が生じる。また、特許文献2の鉄基合金焼結体は、樹脂硬化物を充填させるために高気孔率であり、強度がさらに低下する問題がある。
本発明の一目的としては、制振性能に優れる金属制振材料を提供することである。
上記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
[1]金属基地と、気孔部とを含む多孔質金属材料によって形成され、前記多孔質金属材料の気孔部に、前記金属基地と異なる無機材料が含まれる、金属制振材料。
[2]前記金属基地と異なる無機材料は、黒鉛、セラミックス、又はこれらの組み合わせを含む、[1]に記載の金属制振材料。
[3]前記多孔質金属材料の気孔部に、樹脂がさらに充填される、[1]又は[2]に記載の金属制振材料。
[4]前記多孔質金属材料が金属焼結材料である、[1]から[3]のいずれかに記載の金属制振材料。
[5]前記多孔質金属材料は、前記気孔部が空洞の状態で、気孔率が7vol%〜20vol%である、[1]から[4]のいずれかに記載の金属制振材料。
本発明の一実施形態によれば、制振性能に優れる金属制振材料を提供することができる。
図1は、固有減衰能の測定装置の模式図である。 図2は、引張り強さ測定用の試験片の側面図である。 図3は、実施例のサンプルの樹脂含浸なしの光学顕微鏡写真画像であり、(a−1)は例1−1の200倍、(a−2)は例1−1の500倍、(b−1)は例2−3の200倍、(b−2)は例2−3の500倍、(c−1)は例3−3の200倍、(c−2)は例3−3の500倍である。
以下、本発明の一実施形態について説明するが、以下の例示によって本発明は限定されない。
一実施形態による金属制振材料は、金属基地と、気孔部とを含む多孔質金属材料によって形成され、
多孔質金属材料の気孔部に、金属基地と異なる無機材料が含まれることを特徴とする。
これによれば、制振性能に優れる金属制振材料を提供することができる。
一実施形態による金属制振材料は、気孔部に金属基地と異なる無機材料が含まれることで、気孔部内の無機材料が振動を吸収し、制振性能を高めることができる。
気孔部の内周面に無機材料が接触することで、金属基地と無機材料との界面において摩擦・摺動が起こり、振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動が吸収されると考えられる。金属基地内に無機材料が固溶した状態では、金属基地と無機材料との界面がはっきりと表れず、又は、界面での固着又は結合が強くて、振動が十分に吸収されないようになる。
一実施形態による金属制振材料は、金属基地と、気孔部とを含む多孔質金属材料によって形成される。具体的には、多孔質金属材料を骨格として、気孔部に無機材料が含まれる材料である。
気孔部内に無機材料を含まない状態、すなわち気孔部が空洞の状態で、多孔質金属材料の気孔率は、20vol%以下が好ましく、18vol%以下がより好ましく、15vol%以下がさらに好ましい。これによって、気孔部に無機材料が含まれた状態においても、多孔質金属材料の強度を全体的に高めることができる。
この多孔質金属材料の気孔率は、5vol%以上が好ましく、7vol%以上がより好ましく、10vol%以上がさらに好ましい。これによって、気孔部に無機材料が含まれた状態においても、多孔質金属材料の減衰能を高め、制振性能をより改善することができる。
多孔質金属材料は、種々の製造方法に由来して気孔部が形成される金属材料を用いることができる。多孔質金属材料の製造方法としては、例えば、粉末冶金法、鋳造法、めっき法、溶融発泡法、ガス膨張法、鋳型合成法、プリカーサ法、中空金属焼結法、燃焼合成法、自己燃焼合成法、連続帯溶融法、スラリー発泡法、スラリー塗布法、スペースホルダー法、押出発泡法、MHS法、MIM法、3Dプリンター成形法、射出成形法、押出成形法、CIP法、プレス成形法、打ち抜き成形法、レーザ加工法等が挙げられる。
なかでも、粉末冶金法により得られる金属焼結材料を好ましく用いることができる。
以下、多孔質金属材料の一例として、粉末冶金法によって製造された金属焼結材料について説明する。金属焼結材料は多孔質であるため、溶融工程を経て形成される金属材料と比べて、ある程度の剛性を有する材料である。
金属焼結材料としては、鉄基、チタン基、ニッケル基、アルミニウム基、銅基、マグネシウム基、アルミナ基、ジルコニア基等の焼結材料、これらの単体金属を組み合わせた合金基、又はこれらの混合材料を用いることができるが、鉄基焼結材料を好ましく用いることができる。
金属焼結材料の気孔率は、気孔部内に無機材料を含まない状態で、例えば、5vol%〜20vol%が好ましく、7vol%〜20vol%がより好ましい。
ここで、金属焼結材料の気孔率は、金属焼結材料の密度から、金属の真密度を用いて計算して求めることができる。金属焼結材料の密度は、金属焼結材料の乾燥重量、油浸重量、水中重量を測定し、アルキメデス法に従って求めることができる。例えば、鉄基焼結材料では、鉄の真密度を7.87g/cmとして計算して求めることができる。
金属焼結材料の密度の詳しい測定条件は、以下の通りである。
試験機:電子天秤(株式会社エーアンドデイ製「GR−202」)
温度:室温(25℃)
油浸重量の測定条件は、以下の通りである。
油:キレスピンドル油(比重:0.856)
圧力:60kPa(真空度)
減圧時間:30min(気泡が出なくなるまで)
減圧解放後:油中で5min保持
表面の油を拭き取り、電子天秤を用いて、小数点4桁まで重量を測定する。
以下、金属焼結材料の一例として鉄基焼結材料について詳しく説明する。
鉄基焼結材料は、Ni、Mo、Cu、Mn、Cr、及びCからなる群から選択される1種以上を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる組成を有することが好ましい。
例えば、鉄基焼結材料は、質量%で、Ni:0.1〜20%、Mo:0.1〜5%、Cu:0.1〜3%、Mn:0.1〜5%、及びCr:0.1〜25%からなる群から選択される1種以上、及びC:0.1〜4.0%を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる組成を有することが好ましい。
以下、鉄基焼結材料の組成について説明する。
Ni:0.1〜20%
Niは、鉄基焼結材料の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結材料に焼入れ組織を含ませる作用とオーステナイトとして残留する作用を有する。Niは0.1%以上、好ましくは0.5%以上であることで、材料強度を高め、減衰能を改善することができる。Niは20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。Niは30.0%以下まで配合してよい。
Mo:0.1〜5%
Moは、鉄基焼結材料の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結材料に焼入れ組織を含ませる作用を有する。Moは0.1%以上であることで、材料強度を高め、減衰能を改善することができる。Moは5%以下が好ましいが、7%以下まで配合してもよい。
Cu:0.1〜3%
Cuは、Feに拡散して材料強度を高める作用を有する。Cuが0.1%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上であることで、Feへの拡散を促進することができる。Cuは3%以下が好ましく、これによって、軟質なCu相の発生を抑制して、材料強度の低下を防止することができ、また、焼結時にCu液相の発生を抑制して、製品全体の寸法精度を高めることができる。Cuは3%以下が好ましいが、4.5%以下まで配合してもよい。
Mn:0.1〜5%
Mnは、鉄基焼結材料の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結材料に焼入れ組織を含ませる作用を有する。Mnは0.1%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上であることで、材料強度を高め、減衰能を改善することができる。Mnは5%以下が好ましいが、7%以下まで配合してもよい。
Cr:0.1〜25%
Crは、鉄基焼結材料の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結材料に焼入れ組織を含ませる作用を有する。Crは0.1%以上であることで、材料強度を高め、減衰能を改善することができる。Crは25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。Crは25%以下が好ましいが、30.0%以下まで配合してよい。
C:0.1〜4.0%
Cは、その一部がFeに固溶して強度を向上し、他の一部が鉄基焼結材料の気孔部内に残留し、高減衰能に寄与する。Cは0.1%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上であることで、基地硬さの高い金属組織を生成して、材料強度を高めることができ、また、気孔部内に遊離グラファイトを生成して、高減衰能に寄与することができる。Cは、4.0%以下であることで、基地硬さの高い金属組織が過剰に生成することを抑制して、減衰能の低下を防止することができる。
Cは、成形体の圧縮性を高めるために、黒鉛粉末の形態で付与することができる。
鉄基焼結材料は、B及びAlの一方又は両方をさらに含むことができ、質量%でB:0.01〜1.0%、Al:0.001〜1.0%で含むことが好ましい。
B:0.01〜1.0%
Bは、Bの形態で添加する場合に、焼結中に500℃に達すると黒鉛粉末を覆い、黒鉛が基地中に拡散することを抑制して、焼結後の鉄基焼結材料の気孔部内に遊離グラファイトを生成させる作用を有する。Bが0.01%以上、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%以上であることで、鉄基焼結材料の内部に遊離グラファイトを生成させ、減衰能改善に寄与することができる。また、Bが1.0%以下、好ましくは0.5%以下であることで、Feに固溶するB量を制限して、強度の低下を防止することができる。
Bは、酸化ホウ素単体、または窒化ホウ素と酸化ホウ素の混合粉末の形態で混合粉末に添加することができる。
Al:0.001〜1.0%
Alは、高級脂肪酸のアルミニウム塩として添加した場合に出現する。例えば、Alは、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リシノール酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸のアルミニウム塩の形態で混合粉末に添加することができる。特にステアリン酸アルミニウムはその製造工程において不純物として硫酸ナトリウムが微量残留しており、その硫酸ナトリウムが焼結中に黒鉛が基地中に拡散することを抑制して、焼結後の鉄基焼結材料の気孔部内に遊離グラファイトを生成させる作用がある。Alが0.001%以上、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上であることで、鉄基焼結材料の内部に遊離グラファイトを生成させ、減衰能改善に寄与することができる。また、Alが1.0%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下であることで、余剰のAlがFeに固溶することを制限して、強度の低下を防止することができる。
また、鉄基焼結材料には、上記したB又はAlと同様の作用を及ぼす添加剤として硫酸ナトリウムを添加してもよい。
鉄基焼結材料は、残部Feであり、不可避不純物が含まれることがある。
以下、金属焼結材料の一例として鉄基焼結材料の製造方法について説明する。なお、一実施形態による金属制振材料において、多孔質金属材料は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
鉄基焼結材料は、目的とする組成となるように原料粉末をV型ミキサー等に投入して混合し、得られた混合粉を加圧して圧粉体を作製し、その圧粉体を焼結することで得ることができる。
圧粉体は、非酸化性雰囲気中で、最高保持温度が900℃〜1250℃となるように焼結することが好ましい。
この最高保持温度は900℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましい。これによって、Ni、Mo、Cu、Mn、CrのFe中への拡散を促進して、基地硬さが高い金属組織を生成させ、鉄基焼結材料の引張強さをより高めることができる。
また、この最高保持温度は、1250℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましい。これによって、その他の元素がFeに過剰に拡散することを抑制し、材料強度の低下を防止することができる。
圧粉体は、最高保持温度で、10〜90分間、保持されることが好ましい。
焼結後、焼結材料は、2℃/分〜400℃/分の冷却速度で冷却されることが好ましい。この冷却速度によって、最高保持温度から900〜200℃までの温度範囲を冷却することが好ましい。
この冷却速度は1℃/分以上であってよく、2℃/分以上がより好ましく、10℃/分以上がさらに好ましい。これによって、パーライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相、又はこれらの組み合わせを基地組織に適量で含ませることができ、材料強度を高めることができる。
この冷却速度は500℃/分以下であってよく、400℃/分以下が好ましく、200℃/分以下がより好ましい。これによって、マルテンサイト相が過剰に基地組織に含まれることを抑制し、材料の減衰能を改善し、また、材料強度を高めることができる。
上記の製造方法により得られる鉄基焼結材料は、上記の金属組織となり、そのまま使用可能であるが、マルテンサイト相が焼入れ直後のものと同様の硬い敏感なものであるため、150〜300℃の温度に再加熱して炉冷する焼き戻し工程を追加することが好ましい。なお、焼き戻し工程は焼結後の冷却過程において、100℃以下まで冷却した後、150〜300℃の温度に加熱し保持する工程としてもよく、また、焼結炉内で冷却中に150℃以上300℃以下の温度で保持する工程としてもよい。なお、保持時間は、例えば10〜180分とすることができる。
一実施形態による金属制振材料は、金属多孔質体の気孔部に、金属基地と異なる無機材料が含まる。
金属基地と異なる無機材料は、高温環境において、少なくとも無機材料の一部が金属基地から析出する無機材料、少なくとも無機材料の一部が金属基地に固溶しない無機材料、少なくとも無機材料の一部が金属基地に拡散しない無機材料、又は少なくとも無機材料の一部が金属基地と化学結合しない無機材料を好ましく用いることができる。
また、金属基地と異なる無機材料は、金属基地よりも融点が高い無機材料を好ましく用いることができる。
無機材料の具体例としては、黒鉛、セラミックス、及び金属からなる群から選択される1種以上を用いることができる。多孔質金属材料は、気孔部に、黒鉛、セラミックス、金属をそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでもよく、セラミックス、金属を含む場合は、それぞれ複数種のセラミックス、金属を組み合わせて含んでもよい。なかでも、黒鉛、セラミックス、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができる。
例えば、無機材料は、多孔質金属材料の原料に由来して気孔部に含ませることができる。また、無機材料は、多孔質金属材料の製造方法に由来して気孔部に含ませることができる。
また、無機材料は、多孔質金属材料を製造してから、外表面から気孔部に充填するようにしてもよい。例えば、後述する樹脂を気孔部に充填する方法において、樹脂に無機材料を配合しておくことで、樹脂とともに無機材料を気孔部に充填することができる。また、無機材料を含む有機溶剤を気孔部に充填し、その後に有機溶剤を除去することで、無機材料を気孔部に充填してもよい。
無機材料の含有量は、多孔質金属材料の体積全体に対して、5vol%〜20vol%が好ましく、7vol%〜15vol%がより好ましい。これによって、制振性能をより改善することができる。
金属制振材料は、気孔部内に無機材料を含む状態で、開放気孔率が20vol%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましく、5vol%以下がさらに好ましく、1vol%以下が一層好ましい。これによって、気孔部内に無機材料が十分な量で含まれて、制振性能に寄与することができる。
また、この開放気孔率は、これに制限されないが、0vol%であってもよく、0.1vol%以上であってもよい。
ここで、鉄基焼結材料の開放気孔率は、JISZ2501に準じ測定でき、試料の乾燥重量、油浸重量、水中重量を測定し、計算式にしたがって求めることができる。詳しい測定条件は、上記密度と共通する。開放気孔率の計算式は以下の通りである。以下同じである。
開放気孔率=(完全含浸後の試験片質量−脱脂、乾燥後の試験片質量)/(含油に使った油の密度×試験片の体積)×100
気孔部全体の体積に対して、無機材料が占める体積は、1vol%以上が好ましく、5vol%以上がより好ましい。これによって、気孔部内に無機材料が十分な量で含まれて、制振性能に寄与することができる。
また、気孔部全体の体積に対して、無機材料の合計が占める体積は、100vol%であってよく、90vol%以下であってもよい。
無機材料として、黒鉛を好ましく用いることができる。気孔部内の黒鉛の形状は、粒子状、塊状、薄片上、層状、無定形状、繊維状等であってよい。
気孔部内に含まれる黒鉛は、多孔質金属材料の原料に含まれるCに由来して、気孔部内に残留又は析出して、気孔部内に存在することができる。このような黒鉛を遊離グラファイトとも称する。この遊離グラファイトは、原料のC量によって、その量を調整することができる。
多孔質金属材料として鉄基焼結材料を用いる場合は、Cを含む原料粉末を圧粉成形し焼結する過程で、気孔部に遊離グラファイトが含まれるようになる。また、原料のCがFeに拡散することを抑制するB、Al等の成分を含む原料を用いることで、遊離グラファイトの量を調整することができる。
ここで、Bは、窒化ホウ素、酸化ホウ素等として原料粉末に配合することができる。好ましくは、窒化ホウ素粉末と黒鉛とを原料粉末に配合しておくことで、窒化ホウ素粉末に微量に含まれる酸化ホウ素(B)が作用して、原料粉末中の黒鉛を覆い、焼結過程で黒鉛が鉄基地に拡散することを抑制し、気孔部内への遊離グラファイトの生成をより促進することができる。
また、Alもまた気孔部内への遊離グラファイトの生成を促進する作用があり、脂肪酸のアルミニウム塩等として原料粉末に配合することができる。脂肪酸のアルミニウム塩、好ましくはステアリン酸のアルミニウム塩を原料粉末に配合しておくことで、Alとともに、脂肪酸のアルミニウム塩に微量に含まれる硫酸ナトリウムが作用して、気孔部内への遊離グラファイトの生成をより促進することができる。
気孔部内に遊離グラファイトを含む鉄基焼結材料の製造方法としては、例えば、鉄粉に、C粉末とB粉末とを添加し、潤滑剤を添加して混合し、混合粉末を圧粉成形して、焼結する方法がある。C粉末には黒鉛を用いることが好ましい。B粉末としては、窒化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、又はこれらの組み合わせを用いることが好ましい。また、C粉末又はB粉末の代わりに、もしくはC粉末又はB粉末に加えて、C、B、又はこれらの組み合わせが含まれる鉄粉を用いてもよい。潤滑剤として、脂肪酸、特にステアリン酸を用いることで、脂肪酸に含まれる微量のAl、硫酸ナトリウムが遊離グラファイトの析出に寄与すると考えられる。
添加される黒鉛は粉末状で添加されることが好ましい。この場合、黒鉛の平均粒子径は2〜20μmが好ましい。
得られる鉄基焼結材料は、質量%で、C:0.1〜4.0%、好ましくはC:1.0〜4.0%、B:0.01〜1.0%、好ましくはB:0.1%〜1.0%を含み、残部鉄であることが好ましい。材料強度等を改善するために配合されるその他の金属成分、鉄紛に由来して配合されるその他の金属成分等がさらに含まれてもよい。
一形態では、遊離グラファイトの少なくとも一部は、多孔質金属材料の気孔部の内周面に層状に形成されるようになる。層状の遊離グラファイトは気孔部の内周面に対して化学的に結合せず、加熱工程で固溶もしない状態であるため、弱く堆積している状態となる。このような状態によって、遊離グラファイトと気孔部の内周面との界面において振動をより吸収することができる。
一形態では、遊離グラファイトの少なくとも一部は、多孔質金属材料の気孔部内に粒子状又は塊状で存在するようになる。粒子状又は塊状のグラファイトは、気孔部の内周面に接触している部分又は非接触の場合は空気を介して、気孔部の内周面からの振動を吸収することができる。
無機材料として、セラミックスを好ましく用いることができる。
気孔部内に含まれるセラミックスとしては、例えば、周期律表2a、3a、4a、5a、6a、1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b、8bから選択される1種以上の元素の炭化物、窒化物、酸化物、及びこれらの固溶体から選択される1種以上の無機セラミックス、鉱物等が挙げられる。具体的には、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、CaAlSiO、CrB、TiN、タルク、エンスタタイト、ステアタイト、カオリン、クレー、マイカ、ゼオライト、モレキュラーシーブ等が挙げられる。
セラミックスは、気孔部内に、粒子状、塊状、薄片上、層状、無定形状、繊維状等で存在することができる。また、セラミックスは、気孔部とほぼ一致する形状であって、気孔部に内包されて存在することができる。
多孔質金属材料として鉄基焼結材料を用いる場合は、セラミックスを含む原料粉末を圧粉成形し焼結することで、焼結工程で鉄紛が溶融する一方で、高融点のセラミックスは粒子状のままであり、鉄基地が生成されながら鉄基地にセラミックス粒子が残留して存在するようになる。すなわち、焼結後に、鉄基地のセラミックス粒子が存在する部分が気孔部になり、気孔部にはセラミックス粒子が存在するようになる。
このような鉄基地中のセラミックス粒子は、鉄基地に対して化学的に結合せず、加熱工程で固溶もしていない状態であるため、鉄基地に単に接触しているか、弱く固着している状態となる。このような状態によって、セラミックス粒子と気孔部の内周面との界面において振動をより吸収することができる。
添加されるセラミックスは粉末状で添加されることが好ましい。この場合、セラミックスの平均粒子径は2〜40μmが好ましい。
得られる鉄基焼結材料は、質量%で、セラミックス:0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%を含み、残部鉄であることが好ましい。材料強度等を改善するために配合されるその他の金属成分、鉄紛に由来して配合されるその他の金属成分等がさらに含まれてもよい。
気孔部全体の体積に対して、セラミックスが占める体積は、1〜100vol%が好ましく、50〜95vol%がより好ましい。
無機材料として、金属を好ましく用いることができる。
気孔部内に含まれる金属としては、単体金属、合金、又はこれらの組み合わせであってよく、多孔質金属材料とは異なる金属であって、例えば、
炭素鋼、合金鋼、特殊鋼、ステンレス鋼等の鋼材;
鉛(Pb)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)等の単体金属、又はこれらの金属の1種又は2種以上を含む合金等が挙げられる。
具体的な合金としては、Al−Zn系合金、Mg−Zn系合金、Ni−Ti系合金、Cu−Al−Ni系合金、Mn−Cu系合金等が挙げられる。
また、合金として、ろう材を用いてもよい。具体的なろう材としては、銅ろう、銀ろう等が挙げられる。
金属は、気孔部内に、粒子状、塊状、薄片上、層状、無定形状、繊維状等で存在することができる。また、金属は、気孔部とほぼ一致する形状であって、気孔部に内包されて存在することができる。また、金属は、気孔部の内周面を覆う層状に気孔部内に存在することができる。
例えば、多孔質金属材料の金属基地に加熱工程で固溶又は拡散しない金属を用いて、この金属を多孔質金属材料に溶浸させることで、気孔部内に金属を含ませることができる。金属の溶浸は、多孔質金属材料に金属を接触させた状態で、多孔質金属材料の溶融温度未満の温度で、かつ金属の溶融温度以上の温度で熱処理することで、多孔質金属材料の気孔部へ金属を含浸させることができる。
気孔部に金属を溶浸させる方法では、多孔質金属材料の金属基地に対して加熱工程で固溶量又は拡散量を低減できる金属として、Pb、Ag、Cu等を好ましく用いることができる。
このように溶浸された金属は、多孔質金属材料に対して化学的に結合せず、加熱工程で固溶量も少ない状態であるため、多孔質金属材料に単に接触しているか、弱く固着している状態となる。このような状態によって、金属と気孔部の内周面との界面において振動をより吸収することができる。
気孔部全体の体積に対して、金属が占める体積は、1〜100vol%が好ましく、50〜95vol%がより好ましい。
多孔質金属材料の気孔部に、樹脂がさらに充填されることが好ましい。
樹脂は、特に限定されないが、硬化性樹脂を好ましく用いることができる。樹脂としては、例えば、メタクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
硬化性樹脂の硬化前の粘度は、25℃で、11000mPa/s以下が好ましく、6000mPa/s以下がより好ましく、2000mPa/s以下がさらに好ましい。
また、硬化性樹脂の硬化前の粘度は、25℃で、4mPa/s以上が好ましく、20mPa/s以上がより好ましい。
硬化性樹脂の硬化後の硬さは、25℃で、ショアD硬度で90以下が好ましく、70以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。
また、硬化性樹脂の硬化後の硬さは、25℃で、ショアD硬度で、3以上が好ましく、15以上がより好ましい。
ここで、樹脂の粘度は、低粘度樹脂は東機産業(株)製のTV−22形粘度計、高粘度樹脂は東機産業(株)製のTV−33形粘度計を用い、コーンロータのサイズR14、角度3°、温度25℃、回転数5rpmの条件で測定することができる。
樹脂の硬化後のショアD硬度は、(有)今井精機製ショア式硬さ試験機D型を用い、JISZ2246に準じて試験を行った。
硬化性樹脂が、上記した硬化前の粘度範囲であることで、鉄基焼結材料の気孔部内への樹脂の含浸を促進させることができ、また、硬化後の減衰能を高めることができる。
硬化性樹脂が、上記した硬化後のショアD硬度範囲であることで、気孔部内に樹脂を含む鉄基焼結材料の減衰能を高めることができる。
鉄基焼結材料への樹脂の含浸は、未硬化状態の樹脂液に、好ましくは脱気及び減圧した状態で、鉄基焼結材料を浸漬させることで行うことができる。樹脂液の流動性を高めるために、有機溶剤をさらに添加してもよい。また、硬化を促進させるために、硬化剤、硬化促進剤等をさらに添加してもよい。
樹脂を含浸する工程は、真空度10−3MPa〜100MPaで、1分〜120分で行うことが好ましい。
樹脂液を含浸させた鉄基焼結材料は、さらに60〜120℃で加熱して、硬化を促進させることが好ましい。
樹脂の充填量は、多孔質金属材料の体積全体に対して、5vol%以上が好ましく、7vol%以上がより好ましく、10vol%以上がさらに好ましい。
また、樹脂の充填量は、多孔質金属材料の体積全体に対して、20vol%以下が好ましく、18vol%以下がより好ましく、15vol%以下がさらに好ましい。
これによって、制振性能の向上に寄与しながら、材料強度の低下を防止し、金属制振材料を提供することができる。
金属制振材料は、多孔質金属材料の気孔部内に無機材料とともに樹脂を含む場合、気孔部内に無機材料及び樹脂を含む状態で、開放気孔率が5.0vol%以下であることが好ましく、3vol%以下がより好ましく、1vol%以下がさらに好ましい。
また、この開放気孔率は、これに制限されないが、0vol%であってもよく、0.1vol%以上であってもよい。
金属制振材料は、多孔質金属材料の気孔部内に無機材料とともに樹脂を含む場合、気孔部全体の体積に対して、無機材料及び樹脂の合計が占める体積は、1vol%以上が好ましく、5vol%以上がより好ましい。
また、この気孔部全体の体積に対して、無機材料及び樹脂の合計が占める体積は、100vol%であってよく、90vol%以下であってもよい。
一実施形態による金属制振材料は、気孔部内に無機材料が含まれることで、振動をより吸収することができ、制振性能を改善することができる。また、金属制振材料は、樹脂製の制振材料に比べて、材料強度が高いため、高強度の材料用途に好ましく用いることができる。
一実施形態による金属制振材料が振動を吸収して制振性能を改善することができる。減衰能は、例えば、固有減衰能(Specific Damping Capacity, S.D.C)で考えると、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、2.5以上が好ましく、5.0以上がより好ましい。
金属制振材料において、多孔質金属材料に樹脂がさらに充填される場合は、金属制振材材料の固有減衰能は、3.0〜20が好ましく、5.0〜15がより好ましい。
ここで、固有減衰能は、試料を板状の試験片に成形し、片端固定打撃加振法にしたがって、試験片の一方面に打撃を加え、反対側の面からの振動をレーザ変位計で読み取り、JISG0602「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」に準拠し、ヒルベルト法を用いて、読み取った振動波から固有減衰能を計算して求めることができる。詳細については、後述する実施例の通りである。
一実施形態による金属制振材料の引張強さは、150MPa以上であってよく、好ましくは200MPa以上であり、より好ましくは250MPa以上である。
金属制振材料の引張強さは、1000MPa以下が好ましく、900MPa以下がより好ましく、800MPa以下がさらに好ましく、700MPa以下が一層好ましい。
この範囲で、金属制振材料の減衰能の低下を防止しながら、十分な材料強度を得ることができる。
ここで、引張強さは、試料を引張試験片の形状に成形し、JISZ2241「金属材料引張試験方法」に従って測定することができる。詳細については、後述する実施例の通りである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に説明のない場合、配合割合の「%」は「質量%」を示す。
(評価方法)
実施例で用いた評価方法は、以下の通りである。
「密度、気孔率」
焼結後の鉄基焼結材料の密度は、試料の乾燥重量、油浸重量、水中重量を測定し、アルキメデス法にしたがって求めた。
測定条件は、以下の通りである。
試験機:電子天秤(株式会社エーアンドデイ製「GR−202」)
温度:室温(25℃)
油浸重量の測定条件は、以下の通りである。
油:キレスピンドル油(比重:0.856)
圧力:60kPa(真空度)
減圧時間:30min(気泡が出なくなるまで)
減圧解放後:油中で5min保持
表面の油を拭き取り、電子天秤を用いて、小数点4桁まで重量を測定した。
焼結後の鉄基焼結材料の気孔率は、上記して求めた密度から計算によって求めた。鉄の親密度を7.87g/cmとした。
樹脂を含浸した試料は、樹脂を含浸する前の鉄基焼結材料について、密度及び気孔率を測定した。
「焼結材料の固有減衰能」
焼結後の鉄基焼結材料の固有減衰能(Specific Damping Capacity, S.D.C)は、片端固定打撃加振法によって測定した。固有減衰能の計算方法は、JISG0602に準拠して、ヒルベルト変換を用いた「減衰法」を用いた。
図1に固有減衰能の測定システムの概略図を示す。図1において、1は試験片であり、2は高速・高精度レーザ変位計であり、3はハンマーである。板状の試験片の一方面にハンマーで打撃を与え、他方面からの振幅をレーザ変位計によって読み取り、振幅から固有減衰能を求めた。測定環境によって固有減衰能を測定する際の周波数は異なるため、表中に固有減衰能とともに固有減衰能の測定ごとの周波数を示す。
測定条件は、以下の通りである。
試験片形状:10mm×240mm×2.0mm(板材)
温度:室温(25℃)
打撃加振方法:ハンマー(土牛産業株式会社「伸縮式打音診断棒」を使用)
試験片固定方法:バイス
波形読み取り装置:株式会社キーエンス製 高速・高精度レーザ変位計(センサヘッド「LK−H008W」・コントローラ「LK−G5000Vセット」)
「焼結材料の引張強さ」
焼結後の鉄基焼結材料について、引張試験片形状に機械加工して引張試験を行い、引張強さを測定した。
図2に引張試験片の形状を示す。図2は、引張試験片の側面図であり、図中に寸法(単位はmm)を示す。引張試験片は、全長が60mmであり、標点距離が23mmであり、標点距離部分の直径が5mm±0.01mmである。
測定条件は以下の通りである。
試験機:株式会社島津製作所製 精密万能試験機「AG−10TB」
試験温度:室温(25℃)
試験速度:0.5mm/分
読み取り:平行部破断(23mmの範囲内)に限る
表1に、実施例及び比較例の製造条件及び評価結果を示す。
(実施例1)
実施例として、例1−1、1−2では、気孔部内に遊離グラファイトを含む鉄基焼結材料と、この鉄基焼結材料にさらに樹脂を含浸したものとを製造した。
表中に示す配合量になるように原料粉末を混合した。詳しくは、Ni、Mo、Mn、及びCuを含む鉄粉末に、B源としての窒化ホウ素と、C源として黒鉛とを添加し、潤滑剤として微量のAlを含むステアリン酸を添加して混合し、原料粉末を得た。
原料粉末を例1−1では250〜350MPa、例1−2では650〜750MPaで成形し、15mm×250mmで厚さ4mmの成形体を得た。1140℃で30分間、90%N+10%Hガス中で焼結し、30℃/分の冷却速度で冷却した。得られた焼結材料を加工し、固有減衰能を測定した。
引張強さ特定用の試料として、上記同様の手順にしたがって、10mm×60mmで厚さ10mmの焼結材料を作製し、得られた焼結材料を加工し、引張強さを測定した。
また、得られた焼結材料の密度を測定した。
上記して得られた鉄基焼結材料に、以下の手順で樹脂を充填した。樹脂には、ヘンケルジャパン株式会社の「レジノール90C」を用いた。
樹脂の含浸は、焼結材料を0.1MPaで減圧しながら樹脂液に浸漬させ、30分間保持した後、減圧を解除し、大気圧力下で樹脂含浸を行った。その後、焼結材料をヤマト科学株式会社製の高温槽「DP23」内に配置し、大気雰囲気中、100〜120℃で保持時間60分間加熱し、樹脂の硬化を促進させた。
樹脂含浸後の焼結材料を加工し、固有減衰能を測定した。
(比較例1、2)
表1に示す材料を用いて、密度、引張強度、固有減衰能を測定した。
表1に示す通り、実施例の例1−1、1−2の気孔部内に遊離グラファイトを含む鉄基焼結材料は、樹脂を含浸する前の状態において、十分な引張強さを有し、また、固有減衰能に優れることがわかる。例1−1は、例1−2に比べて気孔率が高く、固有減衰能がより高くなった。さらに、樹脂を含浸することで、固有減衰能がより向上することがわかる。
例1−1の樹脂含浸なしのサンプルについて、基地表面を5%ナイタール腐食液で腐食してから光学顕微鏡を用いて微細構造を観察した。図3の(a−1)に200倍の拡大写真、(a−2)に500倍の拡大写真を示す。拡大写真では、鉄基地が白から灰色の領域として観察され、気孔部の黒鉛が黒色に観察される。拡大写真から、鉄基焼結材料の気孔部内に黒鉛が析出していることが観察された。
(実施例2)
実施例として、例2−1〜2−3では、気孔部内に遊離グラファイトを含み、例2−2〜2−4では、気孔部内にさらにエンスタタイトを含む鉄基焼結材料と、この鉄基焼結材料にさらに樹脂を含浸したものとを製造した。
表中に示す配合量になるように原料粉末を混合した。詳しくは、Ni、Mo、Mn、及びCuを含む鉄粉末に、C源としての黒鉛と、エンスタタイトとを添加し、潤滑剤として微量のAlを含むステアリン酸を添加して混合し、原料粉末を得た。
原料粉末を250〜850MPaで成形し、15mm×250mmで厚さ4mmの成形体を得た。1195℃で30分間、90%N+10%Hガス中で焼結し、30℃/分の冷却速度で冷却した。得られた焼結材料を加工し、固有減衰能を測定した。
引張強さ特定用の試料として、上記同様の手順にしたがって、10mm×60mmで厚さ10mmの焼結材料を作製し、得られた焼結材料を加工し、引張強さを測定した。
また、得られた焼結材料の密度を測定した。
上記して得られた鉄基焼結材料に、以下の手順で樹脂を充填した。樹脂には、株式会社プラセラム製の「PS−901」を用いた。
樹脂の含浸は、焼結材料を0.1MPaで減圧しながら樹脂液に浸漬させ、30分間保持した後、減圧を解除し、大気圧力下で樹脂含浸を行った。その後、焼結材料をヤマト科学株式会社製の高温槽「DP23」内に配置し、大気雰囲気中、100〜120℃で保持時間60分間加熱し、樹脂の硬化を促進させた。
樹脂含浸後の焼結材料を加工し、固有減衰能を測定した。
表1に示す通り、実施例の例2−1の気孔部内に遊離グラファイトを含む鉄基焼結材料、例2−2、例2−3の気孔部内に遊離グラファイトとともにエンスタタイトを含む鉄基焼結材料は、樹脂を含浸する前の状態において、十分な引張強さを有し、また、固有減衰能に優れることがわかる。さらに、樹脂を含浸することで、固有減衰能がより向上することがわかる。また、エンスタタイトの添加率が多くなるほど、固有減衰能が向上することがわかる。
例2−3の樹脂含浸なしのサンプルについて、基地表面を5%ナイタール腐食液で腐食してから光学顕微鏡を用いて微細構造を観察した。図3の(b−1)に200倍の拡大写真、(b−2)に500倍の拡大写真を示す。拡大写真では、鉄基地が白から灰色の領域として観察され、気孔部のエンスタタイトが黒色に観察される。拡大写真から、鉄基焼結材料の気孔部内にエンスタタイトが析出していることが観察された。
(実施例3)
実施例として、例3−1〜3−4では、気孔部内に遊離グラファイトを含み、例3−2〜3−4では、気孔部内にさらにアルミナ繊維を含む鉄基焼結材料を製造した。
表中に示す配合量になるように原料粉末を混合した。詳しくは、Ni、Mo、Mn、及びCuを含む鉄粉末に、C源としての黒鉛と、アルミナ繊維(デンカ株式会社製「デンカアルセンバルク B80K2」)とを添加し、潤滑剤として微量のAlを含むステアリン酸を添加して混合し、原料粉末を得た。
原料粉末を250〜850MPaで成形し、15mm×250mmで厚さ4mmの成形体を得た。1195℃で30分間、90%N+10%Hガス中で焼結し、30℃/分の冷却速度で冷却した。得られた焼結材料を加工し、固有減衰能を測定した。
引張強さ特定用の試料として、上記同様の手順にしたがって、10mm×60mmで厚さ10mmの焼結材料を作製し、得られた焼結材料を加工し、引張強さを測定した。
また、得られた焼結材料の密度を測定した。
表1に示す通り、実施例の例3−1の気孔部内に遊離グラファイトを含む鉄基焼結材料、例3−2〜3−4の気孔部内に遊離グラファイトとともにアルミナ繊維を含む鉄基焼結材料は、樹脂を含浸する前の状態において、十分な引張強さを有し、また、固有減衰能に優れることがわかる。また、アルミナ繊維の添加率が多くなるほど、固有減衰能が向上することがわかる。
例3−3の樹脂含浸なしのサンプルについて、基地表面を5%ナイタール腐食液で腐食してから光学顕微鏡を用いて微細構造を観察した。図3の(c−1)に200倍の拡大写真、(c−2)に500倍の拡大写真を示す。拡大写真では、鉄基地が白から灰色の領域として観察され、気孔部のアルミナ繊維が黒色に観察される。SEM画像から、鉄基焼結材料の気孔部内にアルミナ繊維が析出していることが観察された。

Claims (5)

  1. 金属基地と、気孔部とを含む多孔質金属材料によって形成され、前記多孔質金属材料の気孔部に、前記金属基地と異なる無機材料が含まれる、金属制振材料。
  2. 前記金属基地と異なる無機材料は、黒鉛、セラミックス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の金属制振材料。
  3. 前記多孔質金属材料の気孔部に、樹脂がさらに充填される、請求項1又は2に記載の金属制振材料。
  4. 前記多孔質金属材料が金属焼結材料である、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属制振材料。
  5. 前記多孔質金属材料は、前記気孔部が空洞の状態で、気孔率が7vol%〜20vol%である、請求項1から4のいずれか1項に記載の金属制振材料。
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