JP2008184969A - ガソリンエンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】HCCI燃焼の際に吸排気の負のオーバーラップ期間を設けて気筒内2の温度を高めることにより、予混合気の圧縮自己着火を促進するようにしたガソリンエンジン1において、その自己着火の安定性を高めるとともに、燃費等の改善効果をあまり損なうことなく、触媒27の昇温を促進できるようにする。
【解決手段】HCCI領域(I)では、吸気行程でポートインジェクタ19により燃料を噴射させて、気筒2内に略均一な予混合気を形成するとともに、圧縮行程で直噴インジェクタ18により少量の燃料を噴射させて、点火プラグ16周りに成層化混合気を形成し、これに点火して燃焼させることにより、予混合気の自己着火を誘発する。触媒27の温度が低い未活性のときは、HCCI領域(I)における中負荷ないし高負荷で且つ相対的に低回転側の特定領域において前記成層化混合気へのの点火を禁止する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、気筒内の予混合気を圧縮して自己着火により燃焼させるようにしたガソリンエンジンに関し、特に、自己着火の起き難い低負荷、低回転側の運転領域において、気筒の排気行程ないし吸気行程で吸排気弁の双方を閉じる負のオーバーラップ期間を設けて、気筒内の温度を高めるようにしたものに係る。
近年、ガソリンエンジンのさらなる燃費改善や排気清浄化を図るために、気筒内の予混合気を圧縮して自己着火により燃焼させるという新しい燃焼形態が提案されており、一般には、予混合圧縮着火燃焼(以下、HCCI燃焼ともいう)という呼称で知られている。この新しい燃焼形態では、従来一般的な火花点火による燃焼(以下、SI燃焼ともいう)とは異なり、気筒内の多数の箇所で予混合気が一斉に自己着火して燃焼を始めることから、熱効率が極めて高くなる。
また、従来のSI燃焼を実現できない超希薄な予混合気や多量のEGRによって希釈した予混合気であっても、ピストンにより圧縮された気筒内の温度が所定以上に高くなれば自己着火するようになり、燃焼期間そのものは短いものの激しい燃焼にはならないことから、窒素酸化物の生成も格段に少なくなる。
但しエンジンが相対的に低負荷、低回転側の運転領域にあるときには、圧縮上死点(TDC)近傍においても予混合気の温度が自己着火温度まで上昇しない可能性があり、これに対し特許文献1に記載のガソリンエンジンでは、気筒の排気行程から吸気行程にかけて吸気弁及び排気弁の双方を閉じる負のオーバーラップ期間を設け、多量の既燃ガスを残留させること(以下、内部EGRともいう)で、気筒内の温度を高めるようにしている。
また、前記従来例のエンジンでは、負のオーバーラップ期間中に燃料の一部を噴射することによって、自己着火し易い活性化混合気を形成するようにしている。すなわち、高温の既燃ガス中に噴射された燃料は直ちに気化するとともに、分子の鎖が切れてラジカルを生成したり、アルデヒド程度まで部分酸化反応したりして自己着火し易い混合気となり、これが圧縮行程終盤以降における予混合気全体の自己着火を促進すると考えられている。
ところで、前記のように熱効率の極めて高いHCCI燃焼では、その分、排気温度が低くなるため、例えばエンジンの始動時に触媒の温度が活性化温度に達していないときに、この触媒の温度を排気によって速やかに上昇させることができないという難がある。この点につき特許文献2に記載のエンジンでは、触媒の温度が低いときには本来、HCCI燃焼とする運転領域にあっても敢えてSI燃焼として、相対的に温度の高い排気によって触媒の温度上昇を促すようにしている。
特開2001−82229号公報 特開2002−47969号公報
しかしながら、前者の従来例(特許文献1)のように多量の内部EGRガスによって気筒内の温度を高め、さらに活性化混合気を形成するようにしていても、元々、気筒内の温度状態が低い低負荷低回転の一部の運転領域では予混合気を安定して自己着火させることができない場合がある。
また、後者の従来例(特許文献2)のように、触媒の温度上昇を促すために、HCCI燃焼とすることができる運転領域においてもSI燃焼とするのでは、HCCI燃焼による燃費やエミッションの改善効果を目減りさせることになり、好ましくない。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所謂負のオーバーラップ期間を設けて気筒内の温度を高めることにより、予混合気の圧縮による自己着火を促進するようにしたガソリンエンジンにおいて、その自己着火の安定性を高めるとともに、燃費等の改善効果をあまり損なうことなく、触媒の昇温を促進できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために本発明に係るエンジンの制御装置では、気筒内に圧縮行程で燃料を供給して点火プラグ周りに成層化混合気を形成し、これに点火して燃焼させることにより予混合気の自己着火を誘発するようにした。そして、その上で、特に触媒温度の低いときに限っては前記の点火を禁止するようにした。
具体的に請求項1の発明では、エンジンが所定運転領域にあるときに、気筒内に少なくとも吸気行程で燃料を供給して、略均一な予混合気を形成するとともに、該気筒の排気行程ないし吸気行程において吸気弁及び排気弁の双方を閉じる負のオーバーラップ期間を設け、残留する既燃ガスによって気筒内の温度を高めることにより、圧縮行程の終盤以降における予混合気の自己着火を促進するようにしたガソリンエンジンの制御装置を対象とする。
そして、エンジンの排気系に排気浄化用の触媒が設けられている場合に、気筒内に燃料を直接、噴射するように燃料噴射弁を設けるとともに、この燃料噴射弁により気筒内に圧縮行程で燃料を噴射させて、点火プラグ周りに偏在する成層化混合気を形成する成層化混合気形成手段と、該点火プラグにより所定のタイミングで成層化混合気に点火する点火制御手段と、を備える。その上さらに、前記触媒の温度が所定温度以下であることを検出する触媒温度検出手段と、これにより触媒温度の前記所定温度以下であることが検出されたときには、前記点火制御手段による点火制御を禁止する点火禁止手段と、を備える。
前記の構成により、まず、エンジンが所定運転領域にあるときには、気筒の排気行程ないし吸気行程において所定期間(負のオーバーラップ期間)、吸気弁及び排気弁の双方が閉じられて、気筒内に多量の既燃ガス(内部EGRガス)が残留するようになる。この内部EGRガスは吸気行程にて気筒内に吸入される吸気と混合されるとともに、少なくとも吸気行程で気筒内に供給される燃料とも混合されて、その気化霧化を促進する。すなわち、燃料は吸気及び内部EGRガスと混合されるとともに、ピストンの下降に伴い容積の拡大する気筒内に分散して、概ね均一な予混合気を形成する。
続いて気筒の圧縮行程におけるピストンの上昇に伴い予混合気が圧縮されて、その温度及び圧力が上昇する。そして、成層化混合気形成手段により燃料噴射弁が作動されて、気筒内に燃料が供給され、点火プラグ周りに成層化混合気が形成される。この成層化混合気がTDC近傍の所定のタイミングにて点火され燃焼すると、気筒内の予混合気の温度及び圧力がさらに上昇して、その自己着火が誘発される(HCCI燃焼)。
つまり、点火プラグ周りに形成した成層化混合気への点火を契機として、気筒内の予混合気を確実に自己着火させることができ、その自己着火の安定性を十分に確保できる。また、自己着火のタイミングを最適化して、燃費やエミッションの改善効果を高めることも可能になる。
その上さらに、排気系に設けられた触媒の温度が所定温度(例えば活性化温度)以下で、その浄化性能が不十分であると考えられるときには、前記した成層化混合気への点火が点火禁止手段によって禁止される。この成層化混合気内には濃度(A/F)のばらつきが在るため、気筒内の予混合気が自己着火して燃焼すると一部が不完全な燃焼状態になり、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が増大する。そして、それらCO、HCが触媒に供給されて酸化されることで、触媒の温度が速やかに上昇するようになる。
尚、前記のように成層化混合気内には濃度(A/F)のばらつきが在り、不完全な燃焼状態にはなるものの、例えば圧縮上死点後の膨張行程にて噴射した場合のように、気化霧化の不充分な燃料が蒸し焼きになって煤を生成するようなことはなく、増大した排気中のCO、HCも触媒にて酸化されることになるので、エミッションは悪化しない。
但し、仮に予混合気が自己着火しないとすれば、エミッションは大幅に悪化することになるので、失火の懸念があるときには前記のように成層化混合気への点火を禁止しない方がよい。つまり、点火禁止手段として好ましいのは、エンジンがHCCI燃焼の状態になる所定運転領域の中で相対的に高負荷側にあるときに点火制御手段による点火制御を禁止するものであり(請求項2)、こうすれば、エンジンの燃焼安定性を十分に確保しながら、触媒の昇温を促進することができる。
また、好ましいのは、成層化混合気形成手段を、エンジンが所定運転領域の中で相対的に低回転側にあるときに成層化混合気を形成するための燃料噴射を行うものとし、同様に点火制御手段も、エンジンが前記低回転側にあるときに前記成層化混合気に点火するものとすることがである(請求項3)。
すなわち、成層化した混合気に点火して燃焼させるようにすると、たとえその混合気の量が少しであっても窒素酸化物(NOx)が増えることになるので、気筒の温度が相対的に高い高回転側では成層化混合気の形成やそれへの点火は行わない方がよいからである。この点から、成層化混合気を形成するための燃料の噴射量は、それに点火して燃焼させる場合には、火花点火が可能な成層化混合気を形成するための必要最小量とするのが好ましい。
一方、触媒温度が所定温度以下で成層化混合気への点火を行わないときには、燃料の噴射量はさらに少ない方がよい。この場合には触媒温度の上昇に伴い燃料噴射量を減少させることが好ましく(請求項4)、こうすれば、触媒の昇温を促進しながらエンジン出力に寄与しない燃料噴射量を最小限に抑えて、燃費の悪化を可及的に抑制できる。
以上、説明したように本発明に係るガソリンエンジンの制御装置によると、吸排気弁の作動に所謂負のオーバーラップ期間を設けて、気筒内の温度を高めることにより、予混合気の圧縮自己着火を促進するようにしたガソリンエンジンにおいて、予混合気の形成のための燃料供給とは別に、気筒内に圧縮行程で少量の燃料を供給し、点火プラグ周りに成層化させた混合気に点火して燃焼させることにより、予混合気の自己着火によるHCCI燃焼の安定性を確保することができる。
また、予混合気の自己着火のタイミングを最適なものとして、燃費やエミッションの改善効果を十分に得ることができるとともに、HCCI燃焼を行うエンジン運転領域を従来よりも低負荷、低回転側に拡大することも可能になる。
その上で、触媒の温度が低くて浄化性能が不十分なときには、前記成層化混合気への点火を禁止することで排気中のCO、HCを増大させ、これにより触媒の温度上昇を効果的に促進することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(全体構成)
図1は本発明に係るエンジン制御装置Aの全体構成を示し、符号1は、車両に搭載された多気筒ガソリンエンジンである。このエンジン1の本体は、複数の気筒2,2,…(1つのみ図示する)が設けられたシリンダブロック3上にシリンダヘッド4が配置されてなり、各気筒2内にはピストン5が嵌挿されて、その頂面とシリンダヘッド4の底面との間に燃焼室6が形成されている。ピストン5はコネクティングロッドによってクランク軸7に連結されており、クランク軸7の一端側にはその回転角(クランク角)を検出するためのクランク角センサ8が配設されている。
前記シリンダヘッド4には、各気筒2毎に燃焼室6の天井部に開口するように吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。吸気ポート9は燃焼室6の天井部から斜め上方に向かって延びて、シリンダヘッド4の一側面に開口しており、排気ポート10は反対側の他側面に開口している。吸気ポート9及び排気ポート10は、それぞれ吸気弁11及び排気弁12によって開閉されるようになっており、これら吸排気弁11,12は、シリンダヘッド4に配設された動弁機構13のカム軸(図示せず)によりクランク軸7の回転に同期して駆動されるようになっている。
前記動弁機構13には、吸気側及び排気側にそれぞれ、弁リフト量を連続的に変更可能な公知のリフト可変機構14(以下、VVLと略称する)と、弁リフトのクランク回転に対する位相角を連続的に変更可能な公知の位相可変機構15(以下、VVTと略称する)と、が組み込まれており、それらの作動によって吸排気弁11,12のリフト特性を変更し、気筒2への吸気の充填量や残留既燃ガス(内部EGRガス)の量を調整することができる。尚、VVL14については例えば特開2006−329022号公報、2006−329023号公報等に記載されたものを使用すればよい。
また、各気筒2の燃焼室6の天井部に電極を臨ませて点火プラグ16が配設され、点火回路17によって所定の点火タイミングにて通電されるようになっている。一方、燃焼室6の吸気側の周縁部に先端を臨ませて気筒2内に燃料直接、噴射する直噴インジェクタ18が配設されている。この直噴インジェクタ18は、比較的少量の燃料を噴射するときに高い精度で流量制御が可能な小容量のものであり、これにより気筒2の圧縮行程の中盤以降に少量の燃料を噴射すると、点火プラグ16の電極近傍に偏在する混合気塊(成層化混合気)が形成される。
また、この実施形態では、吸気ポート9に臨んで燃料を噴射するようにポートインジェクタ19が配設されている。このポートインジェクタ19は、エンジン1の最大トルクに対応して多量の燃料を噴射可能な大容量のものであり、気筒2の圧縮行程から膨張、排気及び吸気行程にかけて燃料を噴射することで、高回転域でも十分な噴射時間を確保することができる。そうして噴射された燃料噴霧は吸気と共に気筒2内に流入し、ピストン5の下降に伴い容積の拡大する気筒2内に広く分散して、概ね均一な予混合気を形成する。
尚、前記各気筒2毎のインジェクタ18,19には、図示しないが、それぞれ高圧及び低圧燃料供給ラインが接続されている。低圧の供給ラインには低圧燃料ポンプにより燃料タンクから吸い上げられた燃料が供給され、この低圧の供給ラインから分岐した高圧の供給ラインには、燃料を昇圧させて送り出す高圧燃料ポンプが介設されている。
図においてエンジン1の右側に位置するシリンダヘッド4の一側には吸気系が配設され、各気筒2の吸気ポート9には吸気通路20が連通している。この吸気通路20は、エンジン1の各気筒2の燃焼室6に対して図外のエアクリーナにより濾過した空気を供給するためのものであり、サージタンク21の上流の共通通路には電気式スロットル弁22とが配設されている。サージタンク21の下流で吸気通路20は各気筒2毎に分岐して、それぞれ吸気ポート9に連通している。
一方、シリンダヘッド4の他側には排気系が配設され、各気筒2の排気ポート10にはそれぞれ、各気筒2毎に分岐した排気通路25(排気マニホルド)が接続されている。この排気マニホルドの集合部には排気中の酸素濃度を検出するセンサ26が配設されている。また、排気マニホルドよりも下流側の排気通路25には、排気中の有害成分を浄化するための触媒27が配設されている。
この触媒27は、例えば、ガソリンエンジンの排気中の有害成分として代表的な未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を浄化する三元触媒が好ましい。触媒27は、所定の活性化温度(例えば250°C)以上では十分な浄化性能を発揮する一方、活性化温度未満では十分な浄化性能を発揮できないので、この実施形態では触媒27のケースに温度センサ28(触媒温度センサ)を配設している。
上述の如く構成されたエンジン1の運転制御を行うために、パワートレインコントロールモジュール30(以下、PCMという)が設けられている。これは、周知の如くCPU、メモリ、I/Oインターフェース回路等を備えており、図2にも示すように、クランク角センサ8、酸素濃度センサ26等からの信号を入力するとともに、吸気通路20における空気の流量を計測するエアフローセンサ31からの信号と、図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ32からの信号と、車両の走行速度を検出する車速センサ33からの信号と、を少なくとも入力する。
そして、PCM30は、前記各種センサからの信号等に基づいて、エンジン1の運転状態(例えば負荷状態及びエンジン回転速度)を判定し、これに応じてVVL14、VVT15、点火回路17、直噴インジェクタ18、ポートインジェクタ19、電気式スロットル弁22等を制御する。すなわち、PCM30は、主にVVL14の作動によって吸排気弁11,12のリフト量を調整し、気筒2への吸気(空気)の充填量を制御するとともに、主にVVT15の作動によって吸排気弁11,12のオーバーラップ期間を調整し、内部EGRガス量を制御する。
それらVVL14及びVVT15の制御によって吸排気弁11,12のリフトカーブLin,Lexは、図3に模式的に示すようにそれぞれ最小リフトから最大リフトまでの間で連続的に変化する。吸排気弁11,12のリフト量は、エンジン1の負荷(目標トルク)や回転速度が高いほど大きくなり、これに伴いオーバーラップ期間(正のオーバーラップ期間)が生じるようになる。一方、相対的に低負荷、低回転側では吸排気弁11,12の双方が閉じる負のオーバーラップ期間が生じ、内部EGRガス量がかなり多くなる。
そうして主にVVL14の制御によって気筒2への吸気の充填量を広い範囲で変更することができるので、この実施形態のエンジン1ではスロットル弁22の制御によらず出力を制御することができる。よって、吸気通路20に設けられたスロットル弁22は、主にフェールセーフのためのものであり、通常はエンジン1の部分負荷域においても全開とされて、ポンピングロスの低減が図られている。
また、PCM30は、2つのインジェクタ18,19のそれぞれを、後述の如き所定のタイミングで作動させることにより、気筒2内の空燃比や混合気の形成状態を切換えるとともに、前記のように主にVVT15の作動によって気筒2内の内部EGRガス量を制御し、さらに点火プラグ16の作動状態を切換えることで、エンジン1の燃焼状態を以下に述べるHCCI燃焼とSI燃焼とに切換えるようになっている。
(エンジン制御の概要)
具体的には図4に制御マップの一例を示すように、相対的に低負荷且つ低回転側の運転領域(I)においては、気筒2内に形成した予混合気に直接は点火することなく、これをピストン5の上昇により圧縮して自己着火させるようにしている。このときには基本的に、気筒2の吸気行程においてポートインジェクタ19により燃料を吸気ポート9内に噴射させ、吸気と混合させながら気筒2内へ供給して、概ね均一な予混合気を形成する。
また、気筒2の排気行程ないし吸気行程において排気弁11が閉じてから吸気弁12が開くまでの期間(吸排気弁11,12の双方が閉じる負のオーバーラップ期間)を設け、多量の内部EGRガスによって気筒2内の温度を高めることにより、予混合気の自己着火を促進する。負のオーバーラップ期間が相対的に長くなれば内部EGRガス量も増大し、自己着火のタイミングが進角する。
そのような予混合気の圧縮による自己着火については従来よりHCCI(Homogenious Charge Compression Ignition)と呼ばれている。このHCCIによる燃焼は、図5に模式的に示すように、気筒2内の燃焼室6における多数の箇所で予混合気が略一斉に自己着火して燃焼を開始するものと考えられており、従来一般的な火炎伝播による燃焼(Spark Ignition:SI燃焼)に比べて燃焼期間が短くなって、熱効率が高くなる。
また、そうして予混合気が自己着火するHCCI燃焼は、SI燃焼の実現が困難な超希薄な予混合気や多量の内部EGRガスによって希釈した予混合気であっても実現可能であり、前記のように燃焼期間は短くても燃焼温度は低いことから、NOxの生成は非常に少なくなる。一方で、あまり希薄でない予混合気や希釈度合いの低い予混合気では自己着火のタイミングが早くなり過ぎて、HCCI燃焼を実現できない。
つまり、HCCI燃焼はかなりリーンな予混合気か、或いは多量のEGRによって希釈した予混合気において実現されるものであり、本来、あまり高い出力は得られないものなので、この実施形態においても、前記の制御マップ(図4)に示すように相対的に高負荷ないし高回転側の運転領域(II)においては、SI燃焼を行うようにしている。すなわち、ポートインジェクタ19により気筒2の圧縮行程ないし吸気行程で燃料を噴射させて気筒2内に概ね均一な予混合気を形成し、これに点火して燃焼させることになる。
ところで、前記したHCCI燃焼による熱効率が最も高くなるのは、図6(a)に模式的に示すように、予混合気が気筒2のTDC直後に自己着火して、それによる熱発生のピークがTDCよりも少し遅角側(例えばクランク角で2〜8°くらい)になるときである。このときにはHCCI燃焼による気筒2内の温度上昇とピストン5の下降に伴う気筒2内容積の増大とが相殺し合うことから、比較的燃料噴射量の多いときであっても燃焼が過度に激しくはならない、というメリットもある。
しかしながら、常にそうした適切なタイミングで予混合気を一斉に自己着火させることは非常に難しく、例えばエンジン1の負荷や回転速度が相対的に低くなって、その分、気筒2の圧縮温度や圧縮圧力が低くなると、該気筒2内の予混合気の自己着火のタイミングのばらつきが大きくなって、同図(b)に示すように熱発生のピークが低くなるとともに、それが遅角側に移動することになり、熱効率が低下してしまう。
そこで、この実施形態では、HCCI領域(I)においても低負荷ないし中負荷で且つ相対的に低回転側の領域(図4に右上がりの斜めハッチングを入れて示す領域)では、成層化混合気の燃焼によって予混合気の自己着火を誘発するようにしている。すなわち、図7に一例を示すように、吸気行程でポートインジェクタ19により燃料を噴射させ(第2噴射)、気筒2内に略均一な予混合気を形成した後、圧縮行程終盤に直噴インジェクタ18により少量の燃料を噴射させて(第3噴射)、点火プラグ16の電極周りに混合気塊(成層化混合気)を形成し、これにTDC直後の所定のタイミングで点火して燃焼させる。
こうして点火プラグ16周りの成層化混合気が燃焼すると、気筒2内の温度及び圧力がさらに上昇し、予混合気全体の自己着火を誘発することになるから、HCCI燃焼の安定性を十分に確保することができる。また、予混合気の自己着火するタイミングを前記図6(a)のように最適化することもでき、これによりHCCI燃焼による燃費やエミッションの改善効果を十分に得ることができる。
尚、図4には示さないが、HCCI領域(I)においても特に低負荷低回転の一部の領域では吸排気弁11,12の負のオーバーラップ期間中にも直噴インジェクタ18による燃料噴射(図7に破線で示す第1噴射)を行うようにしている。これは従来例(特許文献1)のエンジンと同様であるが、高温の内部EGRガスに曝された燃料噴霧においてはラジカルが生成されたり、部分酸化反応が進んだりして、自己着火し易い活性化混合気が形成されると考えられている。
さらに、この実施形態では本発明の特徴部分として、触媒27が未活性のときにはその活性化を促進するための制御を行うようにしている。すなわち、触媒27の温度が低くて未活性のときに、エンジン1がHCCI領域(I)における中負荷ないし高負荷で且つ相対的に低回転側の特定領域(図4に左上がりの斜めハッチングを入れて示す領域)にあれば、前記のように第3噴射を行って成層化混合気を形成する一方で、それへの点火は行わない。
こうすると、TDC後に気筒2内の予混合気が自己着火して燃焼するときに成層化混合気も燃焼することになるが、濃度(A/F)の濃い(リッチな)部位では不完全な燃焼状態になってCO、HCの生成量が増大し、これらが触媒27において酸化されることによって、該触媒27の温度を速やかに上昇させることになる。
尚、前記特定領域よりも負荷の低いときには気筒2の温度が低いため、たとえ触媒27の温度が低くて未活性であっても、前記のように活性化を促進するための制御は行わない。このように気筒2の温度が低いときには成層化混合気に点火しないと、予混合気が自己着火しない可能性があり、HCCI燃焼の安定性を十分に確保し難いからである。
(具体的な制御手順)
次に、エンジン制御の具体的な手順を図8〜11に基づいて説明すると、まず、図8のフローのスタート後のステップSA1では、クランク角センサ8、触媒温度センサ28、エアフローセンサ31、アクセル開度センサ32、車速センサ33等からの信号を入力し、ステップSA2ではエンジン1への要求トルク(負荷)とエンジン回転速度とを求める。エンジン回転速度はクランク角センサ8からの信号によりダイレクトに演算すればよく、要求トルクは例えば車速及びアクセル開度に基づいて、或いはエアフローセンサ31からの信号とエンジン回転速度とに基づき内部EGR量を加味して、演算すればよい。
そうして求めた要求トルクとエンジン回転速度とに基づいて、ステップSA3では、図4の制御マップを参照してエンジン1がHCCI領域(I)にあるかどうか判定する。この判定がNOであればSI領域(II)にあるので、詳しい説明は省略するが、通常のSI燃焼のための制御を実行する。つまり、ポートインジェクタ1により気筒2の圧縮行程から吸気行程にかけて吸気ポート9へ燃料を噴射し、気筒2内に略理論空燃比の均一混合気を形成して点火プラグ16により点火する。
一方、ステップSA3の判定がYESでHCCI領域(I)にあれば、ステップSA4に進んで、触媒温度が所定温度以下か、例えば活性化温度以下かどうか判定する。この判定がNOであれば後述のステップSA6に進む一方、判定がYESであればステップSA5に進み、今度はHCCI領域(I)における中負荷ないし高負荷で且つ相対的に低回転側の特定領域(図4参照)にあるかどうか判定する。
その判定がYESで特定領域にあれば、図11のフローへ進んで後述の如く触媒27の昇温を促進するための制御を行う一方、判定がNOであれば、以下のように通常のHCCI燃焼のための制御を行う。すなわち、ステップSA6においてVVL14及びVVT15の制御によって負のオーバーラップ期間が生じるように吸排気弁11,12の作動タイミングを制御する。例えば目標トルク及びエンジン回転速度に基づき、予め実験的に設定してあるマップを参照して、所要の内部EGR量となるような吸排気弁11,12のオーバーラップ量を決定し、そうなるように主にVVT15を制御する。
その際、目標トルク及びエンジン回転速度に基づき、予め実験的に設定してあるマップを参照して、所要の吸気充填量となるような吸排気弁11,12のリフト量も決定し、そうなるように主にVVL14を制御する。この吸気充填量は、気筒2への燃料供給量に対応して適切な空燃比となるように予め実験等により求めて、前記マップに設定したものである。
続いてステップSA7では、インジェクタ18,19の各々による都合3回のそれぞれの燃料噴射量、即ち活性化混合気を形成するための直噴インジェクタ18による第1噴射量と、予混合気を形成するためのポートインジェクタ19による第2噴射量と、成層化混合気を形成するための直噴インジェクタ18による第3噴射量と、をそれぞれ予め実験的に設定してある噴射量マップから読み込んで、決定する。
この噴射量マップも、目標トルク及びエンジン回転速度に対応して第1、第2及び第3の各噴射量の最適値を予め実験等により設定したものであり、例えば図4のマップ上に示す等回転速度線a−aに沿って、要求トルク(エンジン負荷)の変化に対する第1、第2及び第3のそれぞれの噴射量の変化を見ると、図9に示すようになる。
図示の如く第1の噴射は相対的に低負荷側で行われる一方、第3の噴射は低負荷ないし中負荷域で行われる。第3噴射の量は一定であり、火花点火が可能な成層化混合気を形成するための必要最小量とされている。図の例では第1噴射の量も略一定とされているが、これには限らない。また、第2噴射はHCCI領域(I)の全域で行われ、その量は要求トルクの増大に応じて一様に増大する。
続いて図10のフローのステップSA8において、前記ステップSA7にて決定した噴射量(制御目標値)に基づいて第1噴射を行うか否か判定する。噴射量が0であれば(判定はNO)後述のステップSA11に進む一方、噴射量が0でなければ(判定はYES)ステップSA9に進んで、第1噴射のタイミングになったかどうか判定する。この判定がNOの間は待機し、判定がYESになればステップSA10に進んで直噴インジェクタ18を作動させる(第1噴射実行)。尚、第1噴射のタイミングは、直噴インジェクタ18の開弁期間が吸排気弁11,12の負のオーバーラップ期間内に含まれるように設定されている。
続いてステップSA11では、ポートインジェクタ19による燃料噴射(第2噴射)のタイミングになったかどうか判定し、NOの間は待機して、YESになればステップSA12に進んでポートインジェクタ19を作動させる(第2噴射実行)。尚、第2噴射のタイミングは、一例として気筒2の吸気行程の中期から吸気弁11が開かれるまでに設定すればよく、こうすれば、吸気弁11の傘部と吸気ポート9との隙間を通過する高速の吸気流によって燃料噴霧を気筒2内に勢い良く運送することができる。
続いてステップSA13では、前記ステップSA8と同様にして第3噴射を行うか否か判定し、噴射量が0であれば(判定はNO)リターンする一方、噴射量が0でなければ(判定はYES)ステップSA14に進んで、第3噴射のタイミング(気筒2の圧縮行程終盤)になったかどうか判定する。この判定がNOの間は待機し、判定がYESになればステップSA15に進んで直噴インジェクタ18を作動させる(第3噴射実行)。
そして、ステップSA16,SA17では、前記直噴インジェクタ18による第3の噴射によって気筒2内に噴射された燃料が点火プラグ16周りに形成した成層化混合気に点火する。すなわち、まずステップSA16ではTDC近傍(TDC直後が望ましい)の点火タイミングになったかどうか判定し、NOの間は待機して、YESになればステップSA17に進んで点火回路17を作動させ、しかる後にリターンする。
つまり、エンジン1がHCCI領域(I)にあって、触媒27が既に活性化しているか、或いは未活性であってもエンジン1が特定領域外にあれば、通常のHCCI燃焼のための制御を行う。その際、必要に応じて活性化混合気を形成するための第1噴射を行ったり、成層化混合気を形成するための第3噴射を行ったりして、HCCI燃焼の安定性を十分に確保するようにしている。
一方で、前記図8のフローのステップSA5においてYESと判定したとき、即ち、触媒27が未活性であって且つ、エンジン1がHCCI領域(I)における中負荷ないし高負荷で且つ相対的に低回転側の特定領域にあるときには、図11のフローのステップSB1に進んで、前記ステップSA6と同様にVVL14及びVVT15の制御を行う。
続くステップSB2では、前記ステップSA7と同様に要求トルク等に基づいて、直噴インジェクタ18による第1噴射量とポートインジェクタ19による第2噴射量とを決定し、続くステップSB3では触媒27の温度に基づいて直噴インジェクタ18による第3噴射量を決定する。これは、図12に一例を示すようなテーブルから触媒温度に対応する燃料噴射量を読み込むものであり、このテーブルにおいて燃料噴射量(第3噴射量)は、触媒温度が或る程度以上、高くなれば、その上昇に伴い徐々に減少するように設定されている。
そうして触媒27の温度が高いほど第3噴射の量を減少させるのは、この第3噴射によって気筒2内に供給される燃料がエンジン1の出力に殆ど寄与しないからである。第3噴射された燃料は、前記したように点火プラグ16周りに成層化混合気を形成し、TDC後の予混合気の自己着火燃焼に伴い燃焼するものの、エンジン出力には殆ど寄与しない。そこで、このような無駄な燃料の量を触媒27の昇温促進のための必要最小量とすることで、燃費の悪化を抑制するようにしている。
前記ステップSB3に続くステップSB4〜10では、前記図10のフローのステップSA8〜12,15,16と同じ手順で必要に応じて第1噴射を行い、その後、第2及び第3噴射を実行した上で、点火制御は行わずにリターンする。
つまり、触媒27が未活性であり、しかもエンジン1がHCCI領域(I)においても相対的に中ないし高負荷側で予混合気が安定して自己着火する領域にあれば、第3噴射によって成層化混合気は形成するものの、これに点火はしないことによって触媒27に多量のCO、HCを供給し、その温度上昇を促進するものである。
前記図8のフローのステップSA4により、触媒温度センサ28からの信号に基づいて触媒27の温度が所定温度以下であることを検出する触媒温度検出手段30aが構成されている。
また、図10のフローのステップSA14,SA15と、図11のフローのステップSB9,SB10とによって、エンジン1がHCCI領域(I)における特定の領域にあるときに、直噴インジェクタ18により気筒2内に圧縮行程で燃料を噴射させ、点火プラグ16周りに成層化混合気を形成する成層化混合気形成手段30bが構成されている。
さらに、図10のフローのステップSA16,SA17によって、前記成層化混合気に点火プラグ16により所定のタイミングで点火する点火制御手段30cが構成される一方、図11のフローではステップSB10にて第3噴射を行った後に点火はせずにリターンすることで、前記触媒温度検出手段30aによって触媒温度が所定温度以下であることを検出したときに、前記点火制御手段30cによる点火制御を禁止する点火禁止手段30dが構成されている。
前記図8のフローの制御は、PCM30のメモリに電子的に格納されている制御プログラムの実行によって実現するものであり、その意味でPCM30は、前記触媒温度検出手段30a、成層化混合気形成手段30b、点火制御手段30c及び点火禁止手段30dをそれぞれソフトウエア・プログラムの形態で備えている。
したがって、この実施形態に係るエンジン制御装置Aによると、吸排気弁11,12の所謂負のオーバーラップ期間を設けて、気筒2内の温度を高めることにより、予混合気の圧縮自己着火を促進するようにしたガソリンエンジン1において、まず、予混合気の形成のための燃料供給とは別に、前記負のオーバーラップ期間において気筒2内のEGRガス中に燃料を噴射し、着火性の高い活性化混合気を形成したり、該気筒2内に圧縮行程でも少量の燃料を噴射し、点火プラグ16周りに成層化させた混合気塊に点火して燃焼させたりすることで、予混合気全体の自己着火を安定的に発生させることができる。
これにより予混合気の自己着火のタイミングを最適化して、HCCI燃焼による燃費やエミッションの改善効果を十分に得ることができるとともに、HCCI領域(I)を従来よりも低負荷、低回転側に拡大することも可能になる。
しかも、前記のように成層化混合気を形成するための燃料の噴射量は、エンジン1の目標トルクの大きさ(負荷状態)によらず、火花点火が可能な成層化混合気を形成するための必要最小量とすることで、その成層化混合気の燃焼に伴うNOxの生成は極力、抑えることができる。
さらに、前記成層化混合気の点火燃焼は、排気の流量が多くて相対的に気筒2の温度が高くなりやすいHCCI領域(I)の高回転側では行わないようにしており、このことによっても排気中のNOxの増大を抑えることができる。
その上で、触媒27が未活性であれば、前記のように成層化混合気を形成しつつ、それへの点火は行わずに一部を不完全な燃焼状態とすることで、排気中のCO、HCを増大させて触媒27の温度上昇を効果的に促進することができる。しかも、そうして不完全な燃焼状態となる燃料の量を触媒27の昇温促進のために必要な最小量とすることで、燃費の悪化も抑制できる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記した実施形態のものに限定されることなく、それ以外の種々の構成を包含する。すなわち、前記の実施形態では図4の制御マップに示すように、HCCI領域(I)における低負荷ないし中負荷で且つ相対的に低回転側の領域で第3噴射を行い、成層化混合気を形成するとともに、これに点火して燃焼させるようにしているが、この制御は、もう少し高負荷側まで或いは全負荷まで、また、さらに高回転側まで行うようにしてもよい。
また、前記の実施形態では、触媒27が未活性のときエンジン1がHCCI領域(I)における中負荷ないし高負荷で相対的に低回転側の特定領域にあれば、成層化混合気を形成し且つ点火しないことで、排気中のCO、HCを増大させるようにしているが、この制御も燃料性状によっては、より低負荷側まで実行可能である。
また、前記の実施形態では、HCCI領域(I)の一部において直噴インジェクタ18により活性化混合気を形成するための第1噴射を行うようにしているが、燃料性状によっては第1噴射は不要になる場合もあるし、反対にHCCI領域(I)の全域に亘って第1噴射が必要になることも考えられる。
さらに、前記の実施形態では、予混合気を形成するための第2噴射を吸気行程で行うようにしているが、これはポートインジェクタ19によるものであるから、排気行程或いはそれ以前の膨張行程や圧縮行程で行うようにしてもよい。
或いはポートインジェクタ19を設けずに、直噴インジェクタ18のみにより第1、第2及び第3の噴射を行うようにすることもできる。但し、NOxの生成を抑制するという観点から第3噴射量は少量の方が好ましい一方で、エンジン1の最高出力を考慮して第2噴射量はかなり多くしなくてはならない場合があるから、両者を単一のインジェクタにより行うのは無理があり、前記実施形態のように流量特性の異なる2つのインジェクタ18,19を用いる方が好ましい。
さらにまた、前記の実施形態では、吸排気弁11,12のリフト特性をVVL14及びVVT15の作動によって連続的に変更するようにしているが、これに限らず、リフト量及び位相角のいずれか一方は段階的に切換わるような構造としてもよい。また、吸排気弁11,12を個別に電磁アクチュエータによって開閉するような動弁機構を用いてもよいことは言うまでもない。
以上、説明したように本発明は、低負荷低回転側でHCCI燃焼を行うようにしたガソリンエンジンにおいて、予混合気の圧縮による自己着火の安定性を高めることができるとともに、触媒の昇温を効果的に促進できるので、比較的停止する頻度が高く、触媒温度が低下しやすい自動車用のエンジンに好適である。
本発明の実施形態に係るエンジン制御装置の全体構成を示す図である。 制御の概略を示すブロック図である。 吸排気弁のリフト特性の変化を示す説明図である。 燃焼状態を切換える制御マップの一例を示す説明図である。 HCCI燃焼のイメージ図である。 HCCI燃焼における熱発生の状態を示す説明図である。 2つのインジェクタによる燃料噴射の態様を示す説明図である。 燃焼状態を切換える制御の手順を示すフローチャート図である。 要求トルクの変化に対する第1、第2及び第3のそれぞれの噴射量の変化を等回転速度線に沿って示した説明図である。 通常のHCCI制御の手順を示すフローチャート図である。 HCCI制御時に触媒の昇温を促進する場合の図10相当図である。 触媒の昇温に応じて第3噴射量を減少させるテーブルの説明図である。
符号の説明
A エンジン制御装置
(I) 所定運転領域
1 ガソリンエンジン
2 気筒
11 吸気弁
12 排気弁
16 点火プラグ
18 直噴インジェクタ(燃料噴射弁)
27 触媒
28 触媒温度センサ(触媒温度検出手段)
30 PCM
30a 触媒温度検出手段
30b 成層化混合気形成手段
30c 点火制御手段
30d 点火禁止手段

Claims (4)

  1. エンジンが所定の運転領域にあるときに、気筒内に少なくとも吸気行程で燃料を供給して略均一な予混合気を形成するとともに、該気筒の排気行程ないし吸気行程において吸気弁及び排気弁の双方を閉じる負のオーバーラップ期間を設け、残留する既燃ガスによって気筒内の温度を高めることにより、圧縮行程の終盤以降における予混合気の自己着火を促進するようにしたガソリンエンジンの制御装置であって、
    エンジンの排気系には排気浄化用の触媒が設けられ、
    気筒内に燃料を直接、噴射するように燃料噴射弁が設けられ、
    エンジンが前記所定運転領域にあるときに、前記燃料噴射弁により気筒内に圧縮行程で燃料を噴射させて、点火プラグ周りに偏在する成層化混合気を形成する成層化混合気形成手段と、
    前記点火プラグにより所定のタイミングで成層化混合気に点火する点火制御手段と、
    を備えるとともに、
    前記触媒の温度が所定温度以下であることを検出する触媒温度検出手段と、
    前記触媒温度検出手段により触媒温度が所定温度以下であることを検出したときには、前記点火制御手段による点火制御を禁止する点火禁止手段と、
    を備えることを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
  2. 請求項1の制御装置において、
    点火禁止手段は、エンジンが所定運転領域の中で相対的に高負荷側にあるときに、点火制御手段による点火制御を禁止するものであることを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
  3. 請求項2の制御装置において、
    成層化混合気形成手段は、エンジンが所定運転領域の中で相対的に低回転側にあるときに、成層化混合気を形成するための燃料噴射を行うものであり、
    点火制御手段も、エンジンが前記低回転側にあるときに、前記成層化混合気に点火するものであることを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つの制御装置において、
    成層化混合気形成手段は、触媒温度が所定温度以下で点火制御手段による点火制御が禁止されているときには、その触媒温度の上昇に伴い燃料噴射量を減少させるものであることを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
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