JP2008184477A - ポリ乳酸系可塑剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
ラクチドとポリエーテルグリコールとの重合反応によってポリ乳酸系可塑剤を製造するに際し、生産性よく、耐加水分解性、長期貯蔵時の品質安定性が良好で、かつ、ポリ乳酸との相溶性に優れたポリ乳酸系可塑剤を提供する。
【解決手段】
ラクチドとポリエーテルグリコールとからポリ乳酸系可塑剤を製造するに際し、触媒存在下、101.3kPaを超え、304.0kPa以下の範囲内の圧力で重合反応させた後、触媒失活剤を添加することを特徴とするポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
【選択図】なし
Description
ポリエーテルグリコールの数平均分子量は特に限定されないが、ポリ乳酸系可塑剤をポリ乳酸の可塑剤として使用した場合の成型品の柔軟性、耐加水分解性の点から2000〜20000であることが好ましく、より好ましくは5000〜10000である。数平均分子量が2000未満であると耐加水分解性が低下する場合があり、数平均分子量が20000を超えると柔軟性に劣る場合がある。
本発明の製造方法のラクチドおよびポリエーテルグリコールの含有水分率は特に限定されないが、重合反応率向上の点から、ラクチドまたはポリエーテルグリコールの少なくともどちらか一方が水分率3000ppm以下であることが好ましい。より好ましくはラクチドおよびポリエーテルグリコールともに3000ppm以下であり、さらに好ましくはラクチドおよびポリエーテルグリコールともに2000ppmである。ラクチドおよびポリエーテルグリコールの水分率が3000ppmを超えると、重合触媒の一部が失活するため重合反応の進行が妨げられたり、ラクチドの一部が加水分解して乳酸になり、得られるポリ乳酸系可塑剤の分子量が低下する場合がある。
重合反応温度は特に限定されないが、重合反応性や得られるポリ乳酸系可塑剤の耐加水分解性の点から、100〜180℃が好ましい。より好ましくは、熱劣化による分子量低下抑制の点から、145〜170℃である。180℃を超えると、ラクチドの重合−環化の平衡が環化側に偏り、ラクチドの平衡濃度が著しく高くなり、得られるポリ乳酸可塑剤の耐加水分解性、長期貯蔵時の品質安定性が低下することがある。ラクチドおよびポリエーテルグリコールの加水分解、重合反応触媒の失活を抑制するため、重合反応中の雰囲気は乾燥した不活性ガスが好ましく、特に窒素、アルゴンガスによって加圧条件とすることが好ましい。重合反応時間は特に限定されないが、ポリ乳酸系可塑剤の分子量やポリ乳酸との相溶性の点から1〜10時間が好ましい。
本発明における触媒失活剤を添加する温度は特に限定されないが、重合反応性や得られるポリ乳酸系可塑剤の耐加水分解性の点から、100〜190℃が好ましい。より好ましくは、熱劣化による分子量低下、ポリ乳酸系可塑剤の色調の点から、145〜170℃である。190℃を超えると、ポリ乳酸系可塑剤が熱劣化し、色調が悪化する場合がある。
触媒失活反応時間は特に限定されないが、5分〜2時間とすることがポリ乳酸系可塑剤の耐加水分解性、色調の点から好ましい。2時間を超えると、ポリ乳酸系可塑剤の色調が悪化する場合がある。
本発明の製造方法においては、減圧により残留ラクチドが低減されたポリ乳酸系可塑剤は、重合缶から取出し、ブロック状、シート状、ガット状、ペレット状などの目的とする形状に成形することができる。成形方法は特に限定されないが、得られたポリ乳酸系可塑剤の吸湿を避けるため、溶融状態のポリ乳酸系可塑剤を湿度・温度管理された雰囲気下に取り出し、迅速に冷却し結晶化させることが好ましい。吸湿するとポリ乳酸系可塑剤中にわずかに残存したラクチドが加水分解し、乳酸となり、ポリマーの加水分解を促進し、ポリ乳酸系可塑剤の長期貯蔵時の品質安定性が劣る場合がある。ラクチドおよびポリエーテルグリコールとの重合反応によって得られたポリ乳酸系可塑剤は、非常に吸湿性が高いため、成形時の吸湿防止管理は重要である。脱揮反応後のポリ乳酸系可塑剤を取り出す雰囲気は、相対湿度65%以下に管理されていることが好ましく、より好ましくは相対湿度50%以下である。相対湿度が65%より高くなると、ポリ乳酸系可塑剤を冷却、結晶化させる間に吸湿し、ポリ乳酸系可塑剤の貯蔵安定性が低下する場合がある。
本発明の製造方法によって得られるポリ乳酸系可塑剤の残留ラクチド量は、耐加水分解性、長期貯蔵時の品質安定性の点から、ポリ乳酸系可塑剤に対して3.0重量%以下にすることが好ましく、より好ましくは2.5重量%以下である。残留ラクチド量が3.0%を超えると、ポリ乳酸系可塑剤の耐加水分解性や長期貯蔵時の品質安定性が低下する場合がある。
・ 収率
重合反応缶から取り出したポリ乳酸系可塑剤の重量を測定し、下記式(1)から反応収率を算出した。
(2)水分率
ポリエーテルグリコール、ラクチド、ポリ乳酸系可塑剤の水分率は、カールフィッシャー水分計MKC−510(京都電子工業株式会社製)を使用して、窒素下、測定温度120℃にて測定した。
(3)数平均分子量
ポリエーテルグリコールおよびポリ乳酸系可塑剤の分子量測定は、ゲルパーミエーショクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン標準で実施した。
(4)融点
示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業製、RDC220)を用いて測定した。ポリ乳酸系可塑剤5mgを使用して、昇温速度20℃/分で20〜200℃の条件下で測定し、吸熱ピークを融点とした。但し、吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側の吸熱ピークのピーク温度を融点とした。
(5)ラクチド含有量
(a)試料液の調整
粉砕した試料約1gを秤量し、別途調整した内部標準母液(2、6−ジメチル−γ−ピロンの塩化メチレン溶液(0.1mg/ml))1mlを添加し、塩化メチレンで20mlにフィルアップし、溶解液を調整する。次に、溶解液1ml、アセトン3mlをメスフラスコに秤量し、超音波攪拌しながら、シクロヘキサンを滴下していき、フィルアップする。これによりポリ乳酸とポリエーテルグリコールからなるブロック共重合体は析出、沈殿してくるのでディスクフィルター(PTEE0.45μm)で濾過し、試料液を調整する。
ガスクロマトグラフ測定装置(島津製作所製、GC−17A)に(a)の試料液1μlを注入し、80℃から200℃まで昇温測度10℃/分で昇温し、測定した。
(6)酸価
中和滴定法を用いて測定した。サンプル0.2gを秤量し、クロロホルムに溶解後、指示薬(1%ブロモフェノールレッド)を数滴滴下し、0.02mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。オレンジ色から青に変わるまで、0.02mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液を滴定し、次式(2)を用いて酸価を算出した。
酸価[eq/t]=[KOHmg/g]×1000/56.11・・・式(2)
A:サンプル滴定量(ml)
B:試薬ブランク滴定量(ml)
f:エタノール性水酸化カリウム溶液の力価
W:試薬採取量(g)
(7)ポリ乳酸との相溶性
ポリ乳酸系可塑剤30重量部とポリ乳酸樹脂(カーギルダウ社製:数平均分子量130000)70重量部の混合物を100℃で6時間減圧乾燥した後、シリンダー温度220℃の2軸混練押出機に供給して混練し、ペレットに成形した組成物を得た。得られた組成物を用いて、200℃の熱プレスで厚み150μmのシートに成形した。得られたシートを相対湿度65%、温度25℃で1週間保管した。保管後のシート表面(100cm2)をキーエンス社製デジタルマイクロスコープVH(450倍)で観察し、10μm以上の析出物の個数を相溶性の指標とした。
△・・・析出物個数が、11〜30個
×・・・析出物個数が、30個を超える
(8)ポリ乳酸系可塑剤の長期貯蔵時の品質安定性
ポリ乳酸系可塑剤を相対湿度65%、5℃の冷蔵庫にて1ヶ月間貯蔵した。貯蔵前後の分子量、酸価の差から品質安定性を判定した。
ポリエチレングリコール(数平均分子量:8300)59重量部を重合反応缶に添加したのち、140℃で加熱溶融し、攪拌しながら160℃、1.33kPaで90分間水分除去を行った。このときのポリエチレングリコールの水分率は850ppmであった。
高純度リン酸を高純度亜リン酸に変更し、重合反応圧力を120kPaとする以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を製造し、その後ポリ乳酸と混練し、シートを得た。原料組成と水分率を表1に、製造条件を表2に示した。得られたポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。ポリ乳酸系可塑剤の収率、ラクチド含有量、水分率、酸価とも良好であり、ポリ乳酸との相溶性、長期貯蔵時の品質安定性にも優れていた。
ポリエチレングリコール(数平均分子量:8300)を脱水処理をせずに使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸系可塑剤を製造した。その後、得られたポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。実施例1と比較して、分子量が低くなったが、酸価、ポリ乳酸との相溶性、長期貯蔵時の品質安定性も良好であった。
ラクチドの光学純度をL−ラクチド85%、ポリエーテルグリコールとしてポリプロピレングリコール(数平均分子量15000)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸系可塑剤を製造し、その後ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。ラクチド含有量、水分率、酸価、長期貯蔵時の品質安定性、ポリ乳酸との相溶性ともに良好であった。
ラクチドとポリエチレングリコールの添加量比、高濃度リン酸を0.3重量%添加し、重合反応圧力を182.3kPaに変更し、重合反応缶から得られたポリ乳酸系可塑剤を相対湿度60%の雰囲気に取出し、冷却し、結晶化させた以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系可塑剤を製造した。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果はいずれも良好であった。
水分率2100ppmのラクチドおよびポリエチレングリコールを使用し、触媒失活剤としてジメチルホスフェートを0.2重量%添加し、重合反応缶から得られたポリ乳酸系可塑剤を相対湿度70%の雰囲気に取出し、冷却し、結晶化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を得た。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。実施例1と比較して、可塑剤の分子量が低く、水分率が高くなったが、ポリ乳酸系可塑剤の評価結果はいずれも良好であった。
触媒失活剤として高純度リン酸の代わりにリン酸水溶液(85%水溶液)を0.2重量部添加する以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系可塑剤を得た。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。実施例1と比較して、ポリ乳酸系可塑剤の分子量が低く、ラクチド含有量が高くなったが、ポリ乳酸との相溶性、長期貯蔵時の品質安定性はいずれも良好であった。
重合触媒としてブタン酸ジルコニウム0.05重量部を添加した以外は、実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を得た。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。実施例1と比較して、ポリ乳酸系可塑剤の分子量が低くなったが、ポリ乳酸系可塑剤の評価結果はいずれも良好であった。
ポリエチレングリコールの数平均分子量を16000、重合触媒のオクチル酸スズの添加量を0.4重量とし、重合反応圧力を182.3kPaに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を得た。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。実施例1と比較して、ラクチド含有量、酸価が高くなったが、ポリ乳酸との相溶性、長期貯蔵時の品質安定性はいずれも良好であった。
ラクチドとポリエチレングリコールの添加量比と、重合反応圧力を300.0kPaに、重合反応温度を180℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を得た。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。ラクチド含有量、水分率、長期貯蔵時の品質安定性、ポリ乳酸との相溶性ともに良好であった。
重合触媒としてオクチル酸スズを0.8重量%添加し、重合反応缶から得られたポリ乳酸系可塑剤を取り出す雰囲気を相対湿度50%とした以外は、実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を得た。その後、ポリ乳酸系可塑剤とポリ乳酸を混練し、シートを成形した。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。実施例1と比較して、ポリ乳酸系可塑剤の分子量が低下したが、ラクチド含有量、水分率、長期貯蔵時の品質安定性、ポリ乳酸との相溶性ともに良好であった。
重合反応時の圧力を常圧(101.3kPa)とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系可塑剤を得た。ポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表3に示した。ポリ乳酸系可塑剤の収率は73.0%であった。重合反応後に確認したところ、重合反応装置内にはラクチド昇華物が多数付着していた。ポリ乳酸系可塑剤のラクチド含有量は4.0%であった。長期貯蔵時の品質安定性も劣っていた。得られたポリ乳酸系可塑剤30重量部とポリ乳酸70重量部とをベント付き二軸押出機で混練したところ、混練することはできたが、ベント上部にラクチドと思われる昇華物が析出した。これを熱プレスでシートに成形後、相対湿度65%、温度25℃で1週間保管した。保管後のシート表面をマイクロスコープ(450倍)での析出物の有無を確認したところ、析出物を多数確認した。またポリ乳酸系可塑剤を相対湿度65%、5℃の冷蔵庫にて1ヶ月間貯蔵した。貯蔵前後の分子量、酸価を評価したところ、貯蔵後の分子量低下は20%以上で、酸価の増加は50%以上であった。
触媒失活剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法でポリ乳酸系可塑剤を得た。ポリ乳酸系可塑剤の収率は75.0%であった。反応終了後、重合反応装置内を確認したところ、ラクチドの昇華物が多量に付着していた。得られたポリ乳酸系可塑剤の評価結果を表1に示した。得られたポリ乳酸系可塑剤は、残存ラクチド量が多く、色調も黄色に着色していた。長期貯蔵時の品質安定性も劣っていた。得られたポリ乳酸系可塑剤30重量部とポリ乳酸70重量部とをベント付き二軸押出機で混練したところ、ベント上部にラクチドと思われる昇華物が析出した。ポリ乳酸との相溶性も不十分であった。
Claims (7)
- ラクチドとポリエーテルグリコールとからポリ乳酸系可塑剤を製造するに際し、触媒存在下、101.3kPaを超え、304.0kPa以下の範囲内の圧力で重合反応させた後、触媒失活剤を添加することを特徴とするポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
- ラクチドおよびポリエーテルグリコールのいずれか一方の水分率が3000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
- 触媒失活剤がリン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
- リン化合物がリン酸、及び/または亜リン酸であること特徴とする請求項3に記載のポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
- 触媒失活剤を添加した後、ラクチド含有量が3.0重量%以下になるまで、減圧とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
- ポリエーテルグリコールがポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
- ポリ乳酸系可塑剤を、相対湿度65%以下の雰囲気下で冷却し、結晶化させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリ乳酸系可塑剤の製造方法。
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